かのん「海辺の旅館でリゾートバイト!」可可「楽しそうデス〜!」
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かのん(待っていてくれって…なんで?)
かのん(帰ってきたなら見せられるはずじゃないの…?)
坊さん「もちろんその話を聞いて村の者は不振に思ったそうですが、子を亡くしてからずっと伏せっていた母親を見てきた手前、強く言うことができずそのまま引き下がるしかできなかったそうです」
坊さん「しかし次の日、同じ事を言って喜ぶ別の母親が現れるのです。そしてその母親も、子の姿を見せることはまだできないという旨の話をする。
村の者達は困惑し始めます」
一同「…」ゾワッ
坊さん「前日の母親は既に夫が他界し、本当のところを確かめる術が無かったのですが、この別の母親には夫がおりました」
坊さん「そこで村の者達は、この夫に真相を確かめるべく話を聞くことになったそうです」
坊さん「するとその夫は言ったそうです。”そんな話は知らない”と。母親の喜びとは反対に、父親はその事実を全く知らなかったのです」 坊さん「村人達が更に追求しようとすると、”人の家のことに首を突っ込むな”とついには怒りだしてしまったそうです」
一同「…」
恋(まぁ、そうですよね…周りの人に家の中のことをごちゃごちゃ聞かれたらいい気はしないでしょう…)
恋(まして亡くなったお子さんのことなんて…)
坊さん「その後何日かするとある村の者が、最初に子が戻ってきたと言い出した母親が、昨晩子共を連れて海辺を歩く姿を見たと言い出します」
坊さん「暗くてあまり良く見えなかったが、手を繋ぎ隣にいる子供に話しかけるその姿は、本当に幸せそうだったと。」
坊さん「この話を聞いた村の者達は皆、これまでの非を詫びようと、そして子が戻ってきたことを心から祝福しようと、母親の家に訪ねに行くことにしたそうです」 坊さん「家に着くと、中から満面の笑顔で母親が顔を出したそうです。村の者達はその日来た理由を告げ、何人かは頭を下げたそうです」
坊さん「すると母親は、”何も気にしていません。この子が戻って来た、それだけで幸せです”と言いながら、扉に隠れてしまっていた我が子の手を引き寄せ、皆の前に見せたそうです」
坊さん「その瞬間、村の者達はその場で凍りついたそうです」
一同「……」
坊さん「その子の肌は、全身が青紫色だったそうです。そして体はあり得ない程に膨らみ、腫れ上がった瞼の隙間から白目が覗き、辛うじて見える黒目は左右別々の方向を向いていたそうです」
すみれ「…」
坊さん「そして口から何か泡のようなものを吹きながら母親の話しかける声に寄生を発していたそうです。それはまるでカラスの鳴き声のようだったと聞きます」
かのん「カラス…」
坊さん「村の者達は、子供の奇声に優しく笑いかけ、髪の抜け落ちた頭を愛おしそうに撫でる母親の姿を見て、恐怖で皆その場から逃げ出してしまったのだそうです」
千砂都(そりゃそうだよね) 坊さん「散り散りに逃げた村の者達はその晩、村の長の家に集まり出します。何か得体の知れないものを見た恐怖は誰一人収まらず、それを聞いた村の長は自分の手には負えないと判断し、皆を連れてある住職の元へ行くことにします」
すみれ「その住職って…」
坊さん「はい、私の御先祖に当たる人物らしいです」
一同「…」
坊さん「続けますね。寺に着くとまず結界を強く張った一室に母親を入れ、話を聞こうとします。しかし、一瞬でも子と離れた母親は、その不安からかまともに話をできる状態ではなかったと聞きます」
坊さん「ついには子供を返せと、住職に向かってものすごい剣幕で怒鳴り散らしたのだそうです」
恋「それで…どうなったのですか?」
坊さん「子を想う母は強い。住職が本気で押さえ込もうとしたその力を跳ね飛ばし、そのまま寺を飛び出してしまったのだそうです」 坊さん「その後、村の者と従者を何人か連れて母親の家に行きましたが、そこに母と子の姿はなかったそうです」
坊さん「そして家の中には、どこのものかわからない札が至る所に貼り付けられ、部屋の片隅には腐った残飯が盛られ異臭が立ち込めていのだとか」
すみれ(同じだ…あの時私が見たものと)
坊さん「そこに居た者は皆同じことを思いました。母親は子を失った悲しみから、ここで何かしらの儀を行っていたのだと」
坊さん「そして信じ難いことだが、その産物としてあのようなモノが生まれたのだと。その想いを悟った村の者達は、母親の行方を村一丸になって捜索します」
坊さん「住職はすぐさま従者を連れ、もう一人の母親の家に向かいますが、こちらも時既に遅しの状態だったそうです」
坊さん「得体の知れないモノに語りかけ、子の名前を呼ぶ母親に恐怖する父親。その光景を見た住職は、経を唱えながらそのモノに近づこうとしますが、子を守る母親は住職に白目を向き、奇声を発しながら威嚇してきたのだそうです」
一同「…………」 坊さん「村の者は恐れ、一歩も近寄れなかったと言います。しかし住職とその従者は臆することなくその母親とそのモノに近づき、興奮する母親を取り押さえ寺へ連れ帰ります。暴れる母親を抱えながら、背後から付いて来るモノに経を唱え、道に塩を盛りながら少しずつ進んだのだそうです」
坊さん「寺に着くと住職は母親をおんどうへ連れて行き、体を縛りその中に閉じ込めたのだそうです」
千砂都「そんなことを…」
坊さん「仕方がなかったのです。親と子を離すのが先決だった、そうしなければ何もできなかったのでしょう」
千砂都「っ……」
坊さん「……」
一同「……」 坊さん「母親の体には自害を防ぐための処置が施されたようですがその詳細は分かりません。その後、おんどうの周りに注連縄を巻きつけ、住職達はその周りを取り囲むようにして座り経を唱え始めたそうです」
坊さん「中から母親の呻き声が聞こえましたが、その声が子に気づかれぬよう、全員で大声を張り上げながら経を唱えたそうです」
坊さん「住職達が必死に経を唱える中、いよいよ子の姿が現れます。子は親を探し、おんどうの周りをぐるぐると回り始めます」
坊さん「何を以って親の場所を捜すのか、果たして経が役目を成すのかもわからない状態で、とにかく住職達は必死に経を唱えたのです」
可可「それで…どうなったデスカ…?」
坊さん「おんどうの周りを回っていたそのモノは、次第に歩くことを困難とし、四足歩行を始めたそうです」
坊さん「その後、四肢の関節を大きく曲げ、蜘蛛のように地を這い回ったそうです」
坊さん「それはまるで、人間の退化を見ているようだったと。その後、なにやら呻き声を上げたかと思うとそのモノの四肢は失われ、芋虫のような形態でそこに転がっていたのだとか」
坊さん「そしてそのモノは夜が明けるにつれて小さくすぼみ、最終的に残ったのが、臍の緒だったのです」 恋「なんか…不思議な感覚ですね」
恋「まるで自分たちの話に毛が生えて昔話として語られているかのような…」
かのん「ちょっと待って、ということはもしかしてその臍の緒って…」
坊さん「はい、今朝おんどう奥の岩の上に転がっていたものです」
かのん「マジか…」
すみれ「なんで、私たちなんですか?」
坊さん「詳しくはわかりません。この寺には、代々の住職達の手記が残されていますが、母親でない者にこのような現象が起きた事例は見当たりませんでした」
坊さん「何より、肝心の母親の行った儀式について。これがまだ謎に包まれたままなのです」 可可「母親に聞かなかったんデスカ?」
坊さん「聞かなかったのではなく、聞けなかったのです」
千砂都「…どういうことですか?」
坊さん「住職達がおんどうを開け中を確認すると、疲れ果ててぐったりした母親がいたそうです」
坊さん「子を求めて一晩中叫んでいたのでしょう。すぐさま母親を外に運びだし手当てをしましたが、目を覚ました時には、母親は完全に正気を失っておりました」
坊さん「二度も子を失った悲しみからなのか、はたまた何か禍々しいモノの所為なのか、それも分かりかねますが」
一同「……」
坊さん「そして村の者が捜索していたもう一人の母親ですが、一晩経を読み上げ疲れ果てた住職達の元に、発見の知らせが届いたそうです」
坊さん「近海の岸辺に遺体となって打ち上げられていたと。母親は体中を何かに食い破られており、それでいて顔はとても幸せそうだったとあります」
坊さん「何が起きたのかはわかりませんが、住職の手記にはこうありました。”子に食われる母親の最後は、完全な笑顔だった”と。」
一同「…」
坊さん「遺体となって見つかった母親の家は、村の者達による話し合いで取り壊されることとなり、その際に家の中から母親の書いたものらしいメモが見つかったそうです」 すみれ「メモ?」
坊さん「はい、簡単に言うと儀式を始めてからの我が子を記録した成長記録のようなものでした」
坊さん「内容を簡単にまとめたものをお見せします」スッ
○月?日 堂の作成を開始する
×月?日 変化なし
・・・
△月?日 △△(子の名前)が帰ってくる
△月?日 移動が困難な状態
△月?日 手足が生える
△月?日 はいはいを始める
△月?日 四つ足で動き回る
△月?日 言葉を発する
△月?日 立つ 一同「……」
住職「これは簡単にまとめたものですが、本来のものはこの成長記録に母親の心情がビッシリと書き連ねてあったらしいです」
坊さん「ちなみにもう一人の母親は、屋根裏に堂を作っていたらしく、父親はその存在に全く気づいていなかったらしいです」
坊さん「私もすべてを理解しているとは言えませんが、この母親の成長記録と住職の手記を見比べると、そのモノは自分の成長した過程を遡るようにして退化していったと考えられませんか?」
千砂都「本当だ…」
坊さん「これ以降手記には、非常に稀ですが同じような事象の記述が見られます。だがその全てに、母親達がいつどのようにしてこの儀を知るのかが明記されていないのです」
坊さん「それは全ての母親が、命を落とす若しくは、話すこともままならない状態になってしまったことを意味しているのです」
坊さん「早期に発見出来れば未然に防ぐこともできると思うのですが…」 坊さん「今回の現象は初めてのことで、私自身もとても戸惑っているのです。何故母親ではないあなたがそのモノを見つけてしまったのか。子の成長は母親にしか分からず、共に生活する者にもそれを確認することはできないはずなのです」
すみれ(ありなの?そんなデタラメな話…)
一同「……」
可可「あ、あの…」
坊さん「はい」
可可「あの、母親って…もしかして女将さんデスカ…?」
4人「!」
坊さん「…はい、その通りです」
一同「…」
坊さん「女将さんはこの村の者ではなく、旦那さんに嫁ぎこの村へやって来ました。」
坊さん「息子を1人儲け、非常に仲の良い家族でした」
坊さん「女将さんの息子も、漁に出るようになるのですが数年前のある日、海で行方不明になってしまいます」
坊さん「大規模な捜索もされたが、結局行方は分かりませんでした」
坊さん「悲しみに暮れた女将さんでしたが、周囲から慰めを受け、少しずつですが元気を取り戻していきました。」
坊さん「旅館もそれなりに繁盛し、周囲も事件のことを忘れかけた頃、急に旅館が2階部分を閉鎖することになりました」
坊さん「周りは不振に思いましたが、そこまで首を突っ込むことでもないと、別段気にすることはありませんでした」
千砂都(そしてこの結果か…)
坊さん「どこから情報を得たのかは不明ですが女将さんは2階へ続く階段に堂を作り上げそこで儀式を行っていました」
坊さん「そしてその産物が皆さんに憑いてきたという訳ですが、ここがこれまでの事例と違う点なのです」
一同「…」
坊さん「本来儀式を行った女将さんに憑くはずの子が、第3者のあなた達に憑いてしまった」
坊さん「考えられる違いは、女将さんは息子に臍の緒を持たせていなかったということです」
坊さん「村の人たちは昔からの風習で未だに続けている人もいますが、旦那さんが言うには女将さんはその風習すら知らなかったらしいのです」
坊さん「そして妙な話ですが2階を閉鎖したというのにバイトを5人も雇った」 坊さん「旦那さんも初めは反対したらしいのですが、『息子が恋しい。同年代くらいの子達がいれば息子が帰ってきたように思える』と泣きつかれ、渋々承知したそうです。」
坊さん「…これは私の憶測ですが女将さんは初めから、帰ってきた息子が俺達を親として憑いていくことを知っていたんではないんでしょうか…」
一同「…」
坊さん「…あなた達をあのおんどうに残したこと、本当に申し訳なく思います。」
坊さん「しかし、私は女将さんとあなた達の両方を救わなければなりませんでした」
坊さん「あなた達がここにいる間、私達は女将さんを本堂で縛り、先代が行ったように経を読み上げました。あのモノがおんどうへ行くのか、本堂へ来るのか分からなかったのです」
恋「つまり、アレは私達に憑いてきましたが、これまでの事例からいくと母親の女将さんにも危険が及ぶと読んでの行動だったのですね」
坊さん「その通りです。本当に申し訳ありませんでした…」
一同「…」 すみれ(べ、別にお坊さんが謝ることじゃないでしょ?私たちは命を救ってもらったわけだし…)
すみれ(可可だってきっと…)チラッ
可可「…いきません…」
すみれ「可可?」
可可「納得いきマセン…自分の息子が帰ってくれば人の命なんてどーでもいいのデスカ…」
坊さん「…」
可可「全部吐かせるのデス!なんでこんな目に遭わせたのか、それができないなら可可が直接会って聞いてやるデス!」
かのん「ちょっと可可ちゃん!」
恋「落ち着いてください!」
可可「旦那さんだって知っていたんデスよね?それなのになんで言ってくれなかったのデスカ?」
坊さん「…旦那さんは知らなかったのです」
可可「嘘つかないでクダサイ!知っているようなことを言ってイマシタ!」
千砂都「可可ちゃん!」
坊さん「この話は、この土地には深く根付いています。旦那さんが知っていたのは伝承としてでしょう」 可可「ふざけないでください!早く会わせるのデス!あの人たちに会わせるのデス!」
すみれ「そこまでにしなさい可可」
可可「すみれ…」
すみれ「お坊さんが嘘を言っているように見える?…気持ちは分かるけど少し冷静になりなさい」
可可「…すみませんデシタ。可可、命を救ってもらったのに…」
坊さん「いえ、可可さんの言い分ももっともです」
坊さん「この話をすると決めた時点で、あなた達には全てをお見せしようと思っておりました。女将さんのいる場所へ案内します」スッ
坊さん「ついてきてください」 ーーー
ーー
ー
坊さん「女将さんは本堂へはおりません、この渡り廊下を渡った先におります」
ーーー!ー!バタンッバタンッ
かのん「この音って…」
恋「今朝鳥居の家に向かう時に聞いた音と一緒ですよね」
千砂都「誰かのうめき声と何人かのお経?…それになにかが暴れているような音」
すみれ「かなり大きいわね」
可可「あの…お坊さん…さっきは」
坊さん「気にしていませんよ」
坊さん「さて、女将さんはこの中です」
ーーー!ー!ーーー!
バタンッ!バタンッ!バタンッ! 坊さん「開けますよ」スーッ
一同「ーーー!!」
バタンッ!バタンッ!バタンッ!
女将さん「ーーー!!ーーーーー!!!」
千砂都(なに…この状況)
千砂都(女将さんはいたよ、女将さんはいたけど…でも…)
恋(身体を縛られ、呻き声をあげながらエビのようにはねる女将さんに…)
恋(それを囲んでお経を唱えるたくさんのお坊さん)
可可「女将さん…」
坊さん「この状態が今朝から収まらないのです」
一同「……」
かのん「わたし、ここにいるのキツイです…」
すみれ「私も…」
坊さん「それでは一旦外に出ましょうか」 外
恋「なぜ…憑き物払いは成功したのではないのですか?」
坊さん「確かに、あなた達を親と思い憑いてきたものは祓うことができたのだと思います。現にあなた達がいて、ここに臍の緒がある。しかし…」
可可「そっか…可可が見たのはひとつじゃありませんデシタ…」
すみれ「そうね、たしか影は4つあったって言ってたわよね」
坊さん「ひとつではないのですか!?」
可可「は、はいデス…」
坊さん「……」
一同「…」
坊さん「あなた達は鳥居の家に行ってください。そしてあの部屋を一歩も出ないでください。後で人を行かせます!」ダッ
すみれ「ちょっ…」
一同「……」
かのん「もしかして私たち…置いてけぼりくらった…?」
千砂都「みたいだね…」 一同「……」
可可「あ、さっきのお坊さん達が出てきまシタ」
千砂都「ほんとだ」
恋「丸まった布団を運んでいますがあの中身は…」
一同「…」
かのん「…行こっか」
すみれ「ええ」 ー次の日の朝
すみれ「昨日はあれから何も無かったわね」
恋「別のお坊さんが来てここで一晩過ごすように言われただけでしたね、その後はトランプをやったりUNOをやったり」
かのん「えー、パーだよ〜」
可可「違うのデス=I今日は絶対グ=[デス!」
すみれ「なんか…昨日まであんなだったのに平和ね」
恋「女将さんはどうなったのでしょう…」
千砂都「その話は今はしないようにしようよ」
恋「そうですね、すみません」
かのん「あーーー!負けたー!!」
可可「可可は勝ったのデス!」
すみれ「あなたたち、さっきから何してるのよ」
かのん「めざましじゃんけん」
すみれ「……本当のんきね」 読んでて引き込まれる
Liella!の貴重なシリアスSS助かる ガラッ
坊さん「みなさんおはようございます。朝食を食べたら客間の方へ来てください」タタッ
かのん「あ、お坊さん…って行っちゃった」
恋「はやく朝食を食べてお坊さんの所へ向かいましょう」
千砂都「そうだね」
ーーー
ーー
ー 坊さん「それでは皆さん、昨日の話の続きをします」
恋「よろしくお願いします」
坊さん「みなさんの憑き物祓いは無事成功しました、完全に終わりました」
坊さん「可可さん達に憑いてきたモノは1匹で、それは退化を遂げて消滅しました」
かのん「よかった…」ホッ
坊さん「ですが、女将さんを救うことは出来ませんでした…」
一同「えっ…」
恋「救えなかったって…」
千砂都「女将さんは…亡くなったんですか…?」
坊さん「いえ、そうではないのです」
一同「……」
すみれ(どういうこと…ずっとあの状態なのかしら)
すみれ(エビみたいな…?) すみれ「ずっとあの状態なんですか?」
坊さん「…」
一同「…」
坊さん「…女将さんの今の状態は憑き物を祓うとかそういう次元の話でなく、もっと別のものに起因しているのです」
坊さん「女将さんが行った儀式は、この地に伝わる「子を呼び戻す儀」とは似て非なるものでした」
坊さん「どこかでこの儀の存在と方法を知った女将さんは、息子を失った悲しみからこれを実行しようと試みるのですが、肝心の臍の緒は自分の手にありました…」
坊さん「ここからは私の憶測ですが、女将さんはこれを試行錯誤しながら完成系に繋げたんだと思います」
坊さん「自分の信念の元に。しかしそこから得た結果は、本来のものとは別のものでしたが…」
可可「…堂の中にいたモノの中に息子さんはいたのデスカ?」
坊さん「それは…わかりません」
可可「…」 坊さん「この儀の結末は非常に残酷なものでしかないのですがそれを重々承知の上で、母親達は時にその禁断の領域に足を踏み入れてしまうのです」
坊さん「子を失う悲しみがどれ程のものなのか、我々には推し量ることしかできないが、心に穴の開いた母親がそこを拠り所としてしまうのは、いつの時代にもあり得ることだと思うのです」
坊さん「…これで私の話は終わりです」
恋「あの…」
坊さん「はい」
恋「女将さんは…もう助からないのでしょうか…」
坊さん「…すみません、私たちにもこれからのことはなにもわからないのです」
恋「そうですか…」
一同「…」
ガラッ
一同「!!」
かのん「旦那さん…」
旦那「…」
ーーー
ーー
ー すみれ「これ以降、私たちの身には何も起きないんですよね?」
坊さん「大丈夫です、それではあちらでもお元気で」
坊さん「アイドル活動も、頑張ってください」ニコッ
恋「タクシーまで呼んで下さって…ありがとうございました」
坊さん「いえいえ、一応昨日の夜みなさんに付き添った者を同乗させますので」
かのん「本当にお世話になりました。それでは…」
ーーー
ーー
ー 一同「…」
同乗したお坊さん「ペラペラ」
すみれ(お坊さんの話が終わったすぐ後に旦那さんが来たけど)
すみれ(やつれ切ってたわね…顔も土色になって…)
すみれ(その後私たちに泣きながら謝ってきたけど…正直泣きすぎて何言ってるのかよく分からなかったわね)
すみれ(それが私たちへの申し訳なさからくるものか、女将さんの招いた結果を思ってのことかはわからなかったけど…)
同乗したお坊さん「ペラペラ」
すみれ(てかこの人さっきからずっとひとりで話してるわね…空気読めないのかしら)
同乗したお坊さん「それにしても、子が親を食うなんて蜘蛛みたいな話だよな」
一同「…」
同乗したお坊さん「お前達、ここで聞いた儀法は試すんじゃねーぞ。自己責任だぞ」
すみれ(死にかけたのに試すわけないでしょ)
すみれ(私たちの気持ちを和らげようとしてるんだか本気でアホなんだか…)
すみれ(…でも、確かにひとつわかることがある。ひとつだけわかることが…) ー駅
かのん「…あのお坊さんずっとひとりで喋ってたね」
千砂都「そのことなんだけど、私ちょっとひっかかることがあって」
可可「なんデスカ?」
千砂都「あのお坊さん、車の中で『結果は自己責任』って言ってたよね」
恋「それがどうかしたのですか?」
千砂都「憑き物を祓ってくれたお坊さんも言ってたけどあの義の方法ってその結果と一緒にこの地に伝わってるんだよ」
千砂都「同乗してくれたお坊さん、義を試した人が最後どうなるのか知っているような口ぶりだった。でも憑き物を祓ってくれたお坊さんは女将さんのこれからのことは分からないって…」
千砂都「あの人が知っていて、憑き物を祓ってくれたお坊さんが知らないはずないよね」
一同「…」
すみれ(ひとつだけ、わかること。それはー)
すみれ「つまり私たちは、真実を隠されて教えられたってことね」
千砂都「…そういうこと」
一同「……」 恋「少し…ショックですね」
かのん「信頼してただけにね…お坊さんは『これからは大丈夫』って言ってたけど、それも本当かどうか…」
可可「……」
すみれ「そ、それは大丈夫でしょ!私も可可も何も見えないし感じないんだし!
そうよね、可可?」
可可「はい…」
すみれ「ほら、さっさと帰って残りの夏休み満喫するわよ!嫌な事件いつまでも引きずってられないでしょ!」
千砂都「そうだね、帰ったらスイーツ食べに行かなきゃだもん」
可可「そうデス!ジャンボパフェ食べに行くのデス!」
恋「ふふ、さすがに3つは食べないでくださいね」
かのん「さすがにお腹壊すからね」
可可「?」
すみれ「それじゃ、帰ろっか」
4人「うん!」
こうして、私たちの夏休みが幕を開けた。最初の1週間は終わっちゃったけど…夏休みはまだまだこれから!楽しいことがたくさん待ってるはず。…なんて、できるだけポジティブなことを考えながら私たちは海のそばにあるあの村を後にした。
かのん「海辺の旅館でリゾートバイト!」可可「楽しそうデス〜!」 [完] あ、短いですが後日談あります
朝起きたら書こうと思います 後日、かのんの家
この5人が揃うとどうしてもあの時の話になってしまう
すみれ「ほんと、あの時かのんが私たちを月明かりの方へ連れて行ってくれて助かったわ」
かのん「わたしはすみれちゃんや可可ちゃんと違って何も見えなかったし聞こえなかったからね、その分少し余裕があったのかも」
かのん「ただ、アレがおんどうから離れていく時に変な声が聞こえたんだ。カラスの鳴き声みたいな…」
可可「可可はそれ、聞こえなかったのデス」
すみれ「私も」
恋「私も聞こえませんでした」
千砂都「私も聞こえなかったな」
かのん「そっか…じゃあ私だけだったんだね」
かのん「てか鳥居の家に着いた時のすみれちゃんも割と余裕あったよね、千砂都ちゃんと漫才してたし」
すみれ「漫才じゃないわよ…可可に少しでも元気になって欲しかったの。千砂都があそこでいじってくれたのはナイスだったわ」
可可「すみれ…」 千砂都「ねぇ、カラスで思い出したんだけどさ」
かのん「なぁに、ちぃちゃん?」
千砂都「私この前のこと、音楽科の子達に話しちゃったのね」
恋「それで?」
千砂都「うん、それでその子たち面白半分で旅館に電話したらしいの」
すみれ「…最低ね」
千砂都「まぁ話しちゃった私も悪かったよね…話を戻すんだけど、そしたら普通のおばさんが出たんだって」
千砂都「その子たち女将さんかどうか確認しろって言ってきたの。…そしてね、そのおばさんの後ろでずっとカラスが鳴いてたんだって」
可可「……絶対無理デス」
恋「ですね、女将さんが無事でも無事じゃなくても私たちにその後を知る勇気なんてありません…」
一同「……」
恋「そういえば」 恋「かのんさんの目覚まし…あれ自分の声ですよね…w」
千砂都「そうそうwリエラジの時のwww」
かのん「い、いいじゃん!気に入ってるんだから!!///」
かのん「そんなこと言ったらすみれちゃんだってグソクムシだったよ!!」
すみれ「なによ!悪い!?」
可可「グソクムシ言うなって言う割には気に入ってるんじゃないデスカ〜」ニヤニヤ
すみれ「うるさいわね!ニヤニヤしないの!」 恋「あ、もうひとつ話があるのですが」
すみれ「もういいわよ!グソクムシの話は!」
恋「違います!…東北に住んでる私の祖母にみなさんの話をしたら、祖母がみなさんに会いたいみたいで…」
恋「せっかくなので皆さんで東北へ遊びに行きませんか?」
千砂都「本当?行く行く!」
かのん「まだ夏休みは始まったばかりだしね!次は東北かー!」
可可「楽しくなってきたのデス!」
すみれ「それじゃ、明後日出発しましょう!」
かのん「随分急だね!?」
すみれ「どうせ予定ないでしょ?始まったばかりとはいえ夏休みは有限なのよ!」
千砂都「私もしばらくバイト休みだしね」
可可「よーし!」
恋「それじゃあ次は東北へ…」
一同「レッツゴー!!!」
すみれ「…ふふっ」
つづく 長くなってしまい申し訳ないです。とりあえず終わりです。SSを書くことがはじめてなので読みにくい部分もあったと思いますが最後まで見てくださった方はありがとうございました。シリーズ化しようと思っているので上で出た渦人形の話なんかもそのうち書こうかなと思います!それでは、ご縁がありましたらその時はまたよろしくお願いします。
一応過去作 澁谷かのん、ユキノオー説
https://itest.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1629852048/l50 こんなもん全然長いうちに入らないわ
長編読んだことないガガイなんかな SSで長い短いってのは文章量じゃない
話の内容(と書き手の筆力)に見合った長さかどうかが重用だろ
要はグダついてなきゃOK やはりホラー淫夢を思い出す
クゥクゥがKMRみたいだった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています