彼方「穂むらで一日バイト?」
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穂乃果「そう!お盆の土曜日に、穂むらで働いてくれる人を探してて」
穂乃果「その日はす〜っごく忙しいから、毎年ことりちゃんか海未ちゃんが来てくれるんだけど」
穂乃果「今年はふたりとも、忙しいみたいで」
彼方「へ〜…」
彼方「彼方ちゃんもお盆が意外と暇だから、バイトでもしようと思ってたところなんだ〜」
穂乃果「ほんと!?じゃあ、ウチ来てよ!」
穂乃果「彼方さんって穂乃果の家、来たことないでしょ?」
穂乃果「いつか来て欲しいって、ずっと思ってたんだ〜!」 彼方「でも彼方ちゃん……お饅頭作ったことないけど、大丈夫かなぁ」
穂乃果「大丈夫だよ!実際にお饅頭を作るってよりも、お父さんのお手伝いをしてもらいたいんだって!」
穂乃果「出来たお菓子を箱に詰めたり、運んだりとか」
彼方「あ、それなら大丈夫そうかも〜」
穂乃果「でしょでしょ?」 穂乃果「え〜と、時間は8時半から16時、実働6時間で1万円!」
穂乃果「どう?」
彼方「う〜ん、穂乃果ちゃんの家からそんなに貰うのは気がひけるけど……」
穂乃果「だいじょうぶだいじょうぶ!お盆は、お客さんたくさん来るんだから!」
彼方「・・・うん」
彼方「いっかい、穂乃果ちゃんのおうちも見てみたかったし。それに、プロの職人さんを近くで見れるチャンスかも」
彼方「ぜひ、お願いするよ〜」
穂乃果「やったー!じゃあお母さんに、そう伝えておくね!」
〜〜〜〜〜 AM8:20
彼方「えぇと、ここが『穂むら』か」
彼方「わ…いかにも、老舗って感じのお店だ」
彼方(正直、よその家に上がるのって得意じゃないんだよね……いかん、緊張してきた)
彼方「ここから入ればいいのかな…?」
彼方「お邪魔しま〜す」ガラガラ
雪穂「わっ!!?///」ビクッ
彼方「うわっ!!?」 彼方「…あっ!え〜と雪穂ちゃん、だよね?」
雪穂「はっ、はい!!/// 高坂穂乃果の妹の、高坂雪穂です!」
雪穂「お姉ちゃんの知り合いの彼方さん、ですよね?」
彼方「そうだよ〜。近江彼方って言います。はじめまして」ニコッ
雪穂(うわ〜、きれいな人…)
雪穂「あの、不束者の姉がいつもお世話になってます!」
雪穂「たいへん、ご迷惑をおかけしていると思いますが///」
彼方「ふふふ、そんなことないよ〜。今日は、よろしくね」
雪穂「はいっ」
雪穂「お姉ちゃ〜ん!おかあさん!彼方さん来たよ〜!!」 穂乃果「待って待って!すぐ行くから!!」
ドタドタ
雪穂「ごめんなさい…騒がしい家で///」
雪穂「お姉ちゃんってば…彼方さんが来るからって、早起きして部屋の掃除しだして…」
雪穂「雨でも降るんじゃないかーって、噂してたところなんですよ」
彼方「ふふ。そうなんだ」ニコニコ
雪穂(・・・それにしても)
雪穂(もしかしてこのひとが、お姉ちゃんの…?///)ジーッ
彼方「?」
彼方「雪穂ちゃん…どうしたの〜?」
雪穂「いえっ。すみません、なんでも!」 ドタドタ
雪穂「あ、来た」
穂乃果「いらっしゃい、彼方さん!」
彼方「穂乃果ちゃん。今日はよろしくね〜」
穂乃果「うんっ!」ニコッ
ほのママ「あら、あなたが彼方ちゃん。よく来てくれたわねぇ」
彼方「はじめまして。近江彼方と言います」ペコリ
彼方「お台場の虹ヶ咲学園に通っています。同じスクールアイドルの馴染みで、今日は穂乃果ちゃんに紹介してもらいました」
彼方「よろしくお願いします」ペコリ ほのママ「あら、礼儀正しい子ねぇ。それに・・・」
彼方「?」
ほのママ「すっごい美人さん!」
彼方「いや、そんなこと…」
雪穂「ねっ!お母さんもそう思うよね!?」
穂乃果「…」ウンウン
彼方「あはは…」
彼方(こういうの、なんか恥ずかしい〜…///)モジモジ ほのママ「ほんと、穂乃果の言ってた通りだわ。お人形さんみたい」
雪穂「うん、うん!」
彼方(・・・えっ)
彼方(穂乃果ちゃんって、ふだん彼方ちゃんの事そんなふうに言ってるの〜…?)ジーッ
穂乃果「……あはは///」モジモジ
彼方(恥ずっ///)
ほのママ「今日は厨房でお父さんの手伝いをしてもらおうかと思ってたんだけど…」
ほのママ「穂乃果の代わりにお饅頭売ってもらおうかしら」
穂乃果「えぇっ!?」 雪穂「うん。それがいいと思うよ」
彼方「私は、どこでも大丈夫ですけど〜…」
穂乃果「だ、だめだよ!!」
ほのママ「どうして?」
穂乃果「彼方さんは、お父さんがお菓子を作るところを間近で見れるからって、来てくれたんだから!」
ほのママ「あら、そうだったの」 穂乃果「それに……今日来てくれたお客さんが今度来たときにだよ?」
穂乃果「 “なんだ、この間の娘じゃなくて穂乃果ちゃんかぁ” ってなっちゃうじゃん!!」
穂乃果「そんなのやだよ!」ブーブー
ほのママ「はぁ…」
雪穂「…ぷぷっ」
ほのママ「結局、アンタが困るってだけじゃない…」
彼方「・・・くすっ」
彼方「今日せっかく穂乃果ちゃんの顔を見に来たお客さんを、がっかりさせちゃうかもね」
穂乃果「そうそう!」 ほのママ「そんな人、いるかしらねぇ…」
穂乃果「いるよ!裏のおばあちゃんとか!」
雪穂「あはは…」
ほのママ「はいはい。じゃあ彼方ちゃんには、厨房をお願いするわ」
彼方「わかりました」
ほのママ「案内するから、こっちついてきてね」
彼方「はいっ」 彼方「じゃあ、また後でね〜。穂乃果ちゃん、雪穂ちゃん」
穂乃果「うんっ。がんばってね!」
雪穂「」ペコリ
彼方「♪〜」スタスタ
雪穂(後ろ姿まで、ほんとうに綺麗なひとだ…)
雪穂「・・・」 穂乃果「さてと〜、今日くらいは頑張って働こうかな…」
雪穂「・・・」
雪穂「ねぇ、お姉ちゃん?」
穂乃果「ん。な〜に?」
雪穂「さっき彼方さんに接客を任せるのさ、反対してたけど」
穂乃果「うん」 雪穂「もしあのまま話が進んでたらさ、彼方さんが穂むらの割烹着つけて、お饅頭売ることになるわけじゃん」
穂乃果「…そうだね?」
雪穂「もしかして〜……それ見るのが、照れくさかったんじゃない?」ニヤニヤ
穂乃果「!!?///」 穂乃果「ちょっと。それ、どういう意味!?///」
雪穂「さぁね〜」
雪穂「さてと、仕事仕事〜っと…」
穂乃果「ねぇ!ゆきほ!?///」
雪穂(…どうやら、当たりっぽい)
雪穂(う〜ん。お姉ちゃんが、ねぇ…)
雪穂(世のなか、何があるか分からないなぁ・・・)
〜〜〜〜〜 AM8:30 厨房
ほのママ「ここが、彼方ちゃんにお手伝いしてもらう厨房ね」
ほのママ「お父さん。この子が彼方ちゃんよ」
ほのパパ「…」
彼方(わっ。いかにも職人さんって感じ)
彼方「初めまして、近江彼方と言います。頑張って働くので、よろしくお願いします」ペコリ
ほのママ「ふふふ。いかにも怖そうな見た目だけど、優しい人だから大丈夫よ」
彼方「は、はい」
ほのパパ「…」コクリ
彼方(穂乃果ちゃんとは…あんまり似てる感じしないなぁ) ほのママ「じゃあ、あとはよろしくね」
ほのパパ「…」コクリ
彼方「…よろしくお願いします」
ほのパパ「・・・」
ほのパパ「…よろしく頼む」
ほのパパ「…今日頼む仕事だが、実際に饅頭を作ってもらうって訳じゃなくてな」
ほのパパ「…俺が作った饅頭を包装したり、店頭に持って行ったり、容器を入れ替えたり」
ほのパパ「…割りあい地味な仕事になると思う」
彼方「なるほど」
彼方(う〜ん、渋い声…) ほのパパ「…いつもは一人でやっているが、お盆みてぇな忙しい日は、それだと回らなくてな」
ほのパパ「…それで手を貸してもらうって次第だ。体調には気をつけて、何かあったらいつでも言ってくれ」
彼方「はい。わかりました」
ほのパパ「…じゃあ早速だが、饅頭の包装から教えようと思う」
彼方「よろしくお願いします!!」
〜〜〜〜〜 AM9:00
イラッシャイマセー!!/
彼方(あ、穂乃果ちゃんの声)
ほのパパ「…たった今、店が開いたみたいだな」コネコネ
彼方「たくさんお客さんが入ってますね…」
ほのパパ「…ああ、ありがてぇ限りだな」
ほのパパ「…じゃあ次は、こっちの饅頭の包装を頼む」
彼方「はい!」
ほのパパ「…」コネコネ
彼方「・・・」テキパキ AM10:00
アリガトウゴザイマシタ-!/
彼方(たまに聞こえてくる店先の声は、忙しそうだけど楽しそう)
彼方(お客さんも穂乃果ちゃんたちも、みんな笑ってる)
彼方(・・・それにひきかえ、職人は孤独だなぁ)チラッ
ほのパパ「…」コネコネ
彼方(たまにおばさんが出来上がったのを取りに来るくらいで、あとは一人で作ってるんだもんね)
彼方「・・・」テキパキ 彼方(それにしても…このお仕事、割りとヒマかも)
彼方(お給料もらうからには、たくさん働きたいけど〜…)チラッ
ほのパパ「…」テキパキ
彼方(素人が出しゃばっても、効率が下がるだけだよね〜…)
彼方(とりあえず、おじさんの仕事を見てるとするか…)ジーッ ほのパパ「…」テキパキ
彼方(うわ〜。当たり前だけど、ものすごく丁寧で、早い)
彼方(なんというか、全ての作業が洗練されていて、無駄がないというか)
彼方(料理するときの、参考になりそう…)ジーッ
ほのパパ「…」コネコネ
彼方(う〜ん、かっこいい…)
ほのパパ「・・・」
ほのパパ「…ふっ。そんな見られると、少し恥ずかしいな」
彼方「あっ、すみません。気をつけます」
ほのパパ「…あぁ別に構わねぇんだ、慣れてねぇってだけで」 ほのパパ「…それにしても、時間を持て余しちまってるか」
彼方「あ、はい…正直なところ」
ほのパパ「…器量がいいんだな。じゃあ彼方ちゃんには、新しい仕事を頼むとするか」
彼方「はいっ。なんでしょう?」
ほのパパ「この蒸し上がった饅頭にだな…ポンと、焼き印をつけて貰いたいんだ」
彼方「ええっと…それって、『ほ』の字のことですよね?」
ほのパパ「…」コクリ
彼方「そんな大事な仕事、私がやって大丈夫ですか…?」
ほのパパ「…まぁ大事には違いねぇがな、丁寧にやってくれさえすれば大丈夫だ」
ほのパパ「…とりあえず一つ、やってみてくれ」
彼方「は、はい」 ほのパパ「…当然だが、先端は熱いから気をつけるように」
ほのパパ「…饅頭の真ん中に、焼金を数秒押し当てる」
彼方「はいっ」
彼方「…」ジューッ
彼方(おぉ。出来た)
ほのパパ「…やはり器用だな」
ほのパパ「…その調子で、このあとも頼む」
彼方「はい!」
彼方(この仕事は、責任重大かも〜…)
彼方(でも、和菓子屋で働いてるって感じがする・・・よしっ、がんばらなきゃ)
彼方「…」ペッタンペッタン
ほのパパ「…」フフフ AM11:30
ほのパパ「…」コネコネ
彼方「…」ペッタンペッタン
彼方「…」ジュゥゥ
彼方「あっ」
ほのパパ「…大丈夫か」
彼方「あ……若干、失敗しちゃいました」
彼方「文字の端っこが欠けて…うぅ、すみません」
ほのパパ「…まぁ、この程度なら店頭に並べても大丈夫だが」
彼方「本当ですか…?」
ほのパパ「…それじゃあ彼方ちゃんの気が済まねぇか」
彼方「はい…」コクッ
ほのパパ(…職人気質の嬢ちゃんだな) ほのパパ「…どうだい、食っちまうか」
彼方「え?」
ほのパパ「…今日の菓子の出来栄えを確認するのも兼ねてな」
ほのパパ「…どうだ。半分食べるかい」
彼方「あ。じゃあ…」 彼方(わ、あったかいや)パクリ
彼方「…!おいしいです」
ほのパパ「…出来立てがおいしいのは、食いもんの常だな」
彼方「はいっ。そうですね!」
彼方(やっぱりおじさん…優しいひとだ) ほのパパ「…さて、一時間ほどで昼休憩だから、もうひと踏ん張りだな」
ほのパパ「…じゃあ次は、さっき出来あがった饅頭を店先へ運んでくれ。嫁か娘か、暇そうにしてるやつに渡してくれればいい」
彼方「はいっ。分かりました」
〜〜〜〜〜
彼方(よいしょ、っと〜…)トテトテ
彼方(この箱の中に、彼方ちゃんが『ほ』の字をつけたお饅頭が入ってるのか)
彼方(簡単な作業だけど、感慨ぶかいものがある……) 彼方「さてと。誰に渡そうかな〜…?」
穂乃果「…」ボーーッ
彼方「あ、穂乃果ちゃんが店番してる」
彼方(…割烹着、すっごく似合ってるなぁ) 穂乃果「…」ボーーッ
彼方「穂乃果ちゃん?」コソッ
穂乃果「…は、ひゃい!?」
彼方「お〜ごめん。驚かすつもりは無かったんだ〜」
彼方「おじさんに頼まれて、お饅頭を運びにきたよ〜」
穂乃果「あっ。ありがと!」
穂乃果「えへへ。少しお店が静かになったから、ちょっと寝ぼけてたみたい」
彼方「ふふ。あと一時間くらいで休憩らしいから、頑張ろ〜」
穂乃果「うんっ!」 穂乃果「…それにしても」
彼方「?」
穂乃果「彼方さんが厨房からおまんじゅう持ってきてくれるのって…その〜、なんか、いいねぇ」
穂乃果「なんていうか、その……」
穂乃果「…///」
彼方「・・・うん」
彼方「彼方ちゃんも〜、今おんなじこと思ってたよ」
穂乃果「ほんと…?」 穂乃果「そうなんだ……えへへ///」
彼方「・・・///」
彼方(おっと、いけない/// )
彼方「…そろそろ戻らなきゃ。また、お昼のときにね」
穂乃果「うん。……あ、お昼は別々に食べるかも」 穂乃果「こっちとそっちで、忙しい時間帯が違うから」
彼方「あ、そうなんだ」
彼方「ん。じゃあ、また後でね〜」
穂乃果「うん。お仕事、頑張ってね!」
彼方「ありがと〜」 彼方(多分おじさんも…たまにこんな風に家族と顔を合わせて)
彼方(それで頑張ろう、って思ってるんだろうな)
彼方(彼方ちゃんで言うなら・・・遥ちゃんが職場にいるようなものだよね〜)
彼方(……最高か?)
彼方「・・・」
彼方(ん〜、いけないいけない。お仕事に集中しなきゃ)ブンブン 彼方「ただいま戻りました!」
ほのパパ「…あぁ、助かった。ここに出てる生地だけ仕上げたら、休憩に入る」
ほのパパ「…もうちょっとだけ頑張ってくれ」
彼方「はい!!」
〜〜〜〜〜 PM0:50
彼方「よいしょっと…」
ほのパパ「…お疲れさま。午前はこれでしまいだ」
彼方「はいっ。お疲れさまでした!」ペコリ
ほのパパ「…昼は素麺でも茹でるつもりだが、苦手だったりしないか」
彼方「お昼までいただいてすみません…素麺は好きです」
ほのパパ「…そうか。じゃあ茹でてくるから、リビングで待っていてくれ」
ほのパパ「…あとすまないが、昼飯は俺と2人で食べることになるから、そのつもりで頼む」
彼方「いえいえ!お構いなく」 15分後
ほのパパ「…あんま大した料理でもねぇが、好きなだけ食べてくれ」
彼方「お言葉に甘えて、いただきます」
彼方「…」ズルズルズル
ほのパパ「…」ズズズズーッ
彼方(ん、この素麺…!)
彼方「すっごく、おいしいです!」
ほのパパ「…そうか、そりゃよかった」 ほのパパ「…実はお中元で、割といいやつが送られてくるんだ」
彼方「へぇ〜…」ズルズル
ほのパパ「…まぁ、美味いには美味いんだが」ズルズズーッ
ほのパパ「…正直、ウチだけじゃかなり持て余すんでな」ズズーッ
ほのパパ「…押し付けるようで悪いが、もし気に入ったならいくらか持って帰ってくれ」ズズズーッ
彼方「ふぁい、ありがたくそうさせてもらいます」ズルズル ほのパパ「・・・」ズズズーッ
彼方「・・・」ズルズル
ほのパパ「……良かったら、こっちの揚げ物なんかも食べてくれ」
彼方「あっ、はい。ご馳走になります」 彼方(…この天ぷら。すごいサクサクしてる)
彼方「これも、すっごく美味しいです」
彼方「おじさんが揚げたんですか?」
ほのパパ「…まぁ、食べ物の火の入れ方については、一家言あるつもりだ」
彼方「へぇ〜…」
彼方(う〜ん、かっこいい…) 彼方「…」ズルズルズル
ほのパパ「…」ズズズズーッ
彼方「・・・あ」
ほのパパ「?」
彼方「おまんじゅう作るの、すごく速くて、正確で、びっくりしちゃいました」
ほのパパ「…この道に入って四半世紀になろうってところだ。流石に、目を瞑ってでも出来らあ」
彼方「はぁ〜…四半世紀、ですか」
彼方「職人さんって、すごい…」
ほのパパ「…」ズルズル 彼方「…」ズズズズーッ
ほのパパ「…彼方ちゃんも、職人気質だろう」
彼方「え?」
ほのパパ「…どれだけ単純な仕事でも、その丁寧さを見りゃ分かる」
彼方「う〜ん。あまり自分のことを、職人だと思ったことはないですけど…」
彼方「さっきだって、一つおまんじゅう駄目にしましたし…」 ほのパパ「…いや、あれだけやって一つで済むなら大したもんだ」
ほのパパ「あれをウチの娘になんか任したら…あぁ、大きい方の娘の話だがな」
ほのパパ「『ほ』の字がすぐ『は』になったり……ひでぇ時は『ま』になったりする」
彼方「ふふっ・・・」
ほのパパ「…」フッ ほのパパ「…それにしても良い仕事ぶりだった」
ほのパパ「…あれかい、お父さんかお母さん、なんかの職人だったりするのかい」ズルズル
彼方「あ〜…」ズズズズ
彼方「別に、お母さんはそういう仕事ではないですし」 彼方「父は・・・実は今いないんですけど、特にふつうの会社員でした」
ほのパパ「…」
ほのパパ「…」ズルズル
彼方「…」ズズーッ
彼方「ただ…妹のために料理を作ってあげるのが好きなので」
彼方「丁寧に何かを作ろうって思いは、人よりあるのかもしれないですね」
ほのパパ「…そうか」 ほのパパ「・・・」
ほのパパ「…立ち入ったこと聞いちまったな、済まなかった」ペコリ
彼方「わっ。頭なんて下げないでください〜…」
彼方「そういうのを、今さら気にするような歳でもないですし…」
ほのパパ「…悪いな」 彼方「……」ズズズーッ
ほのパパ「……」
彼方「……」チラッ
彼方(…いかん、気まずい)
彼方(このやたらおいしい素麺に、集中するとしよう……)
彼方「……」ズルズルズル
ほのパパ「……」 彼方(う〜ん。このつゆも、明らかに手間がかかってるし)
彼方(このかき揚げなんかも、さっきの短時間で作って持って来てくれたってことは)
彼方(たぶん前もってタネを仕込んでおいてくれたんだよね)
彼方(いいお父さんだなぁ)
彼方「……」パクパク
ほのパパ「…」
ほのパパ「…まぁ、あれだ」
彼方「?」 ほのパパ「…こんな家で良かったら、いつでも遊びに来てくれ」
ほのパパ「…良ければ妹さんも一緒にな」
彼方「はい。ありがとうございます」
ほのパパ「ウチの娘は、たいそう彼方ちゃんの厄介になってるらしいな」
彼方「いや、それほどでも〜……」
彼方(なんか、恥ずかしいな///) ほのパパ「…どうやら、ずいぶん気に入ってるらしい」
彼方「は、はぁ…」
ほのパパ「…今朝なんか、彼方ちゃんが来るからってんで、早起きして部屋の掃除なんかして」
ほのパパ「…滅多にねぇ事だから、雨でも降るんじゃねぇかと家中で噂してたところだ」
彼方「あはは……」 ほのパパ「…さて。もうちょっと食べるかい?」
彼方「あ、私は十分いただきました。おいしかったです」ペコリ
ほのパパ「…そうか、そりゃ良かった」
ほのパパ「…10分ほど経ったら再開するつもりだから、それまでくつろいでいてくれ」
彼方「は〜い」 彼方「あ、洗い物のお手伝いなんかは・・・?」
ほのパパ「…いや、流石にそこまでさせる訳にはいかねぇな。午後に備えて休んでてくんな」
彼方「分かりました。ごちそうさまでした!!」ペコリ
ほのパパ「…おう、作った甲斐があったってもんよ」 穂乃果「あ〜、彼方さん!」テクテク
彼方「あ、穂乃果ちゃん。お疲れさま〜」
彼方「今からお昼?」
穂乃果「うん!お母さんたちと代わりばんこで、ご飯食べるんだ〜」
穂乃果「おとうさ〜ん、今日のお昼なに?」 ほのパパ「…素麺茹でとくから、そこの揚げ物と一緒に食ってくれ」
穂乃果「えぇ〜、また素麺……?」
穂乃果「せっかく彼方さん来てるのに〜……」
ほのパパ「…」ヤレヤレ
彼方(ふふふ、おじさんも大変だ) 彼方「でもでも〜、すっごく美味しかったんだよ」
穂乃果「ほんと〜?」
彼方「うん。つゆも手作りだし、かき揚げもサクサクでね〜」
彼方「彼方ちゃんじゃ、あんなに上手に作れないよ〜」
穂乃果「へぇ〜…」
穂乃果「だって〜、おとうさん?」 ほのパパ「・・・」
ほのパパ「…ありがとよ」
穂乃果「ふふ。照れてる照れてる」
穂乃果「ねぇねぇ、それにしても」ヒソヒソ
彼方「?」
穂乃果「お父さんとふたりっきりってさ…気まずくなかった?」ヒソヒソ 穂乃果「お父さんって、な〜んにも話さないでしょ!」ヒソヒソ
彼方「う〜ん・・・」
彼方「別に、そんなことなかったけど〜…」
穂乃果「え?」
彼方「仕事は手取り足取り教えてくれたし、割と楽しくお喋りできたよ?」
穂乃果「ええ?」
彼方「気さくで優しいお父さん、って感じ」
穂乃果「え〜〜〜〜?」 穂乃果「ちょっと、お父さん!!」
ほのパパ「…」
彼方「穂乃果ちゃん?」
穂乃果「彼方さんに、下心とか持ってないよね!!?」
彼方「・・・ぷふっ」
ほのパパ「……やれやれ」
穂乃果「どうなの!?」 彼方「ふふっ、穂乃果ちゃんは、おじさんのことなんだと思ってるの〜…?」
穂乃果「だって!あのお父さんだよ!?」
穂乃果「いつもみんなでご飯食べてても、黙っててな〜んにも喋らないんだから!!」
ほのパパ「……」
彼方「くすっ。そうなんだ」 ほのパパ「…おかしなこと言うやつは置いて、そろそろ厨房に戻るか」
彼方「あっ、は〜い」
穂乃果「ちょっと!」
彼方「ふふ、午後も頑張ろうね。穂乃果ちゃん」
穂乃果「う、うん。彼方さんもファイトだよ!」 彼方「またね〜」スタスタ
穂乃果(・・・)
穂乃果(まぁ、お父さんと仲良いのは、悪いことじゃないか…)
穂乃果(それにしても、どんな話してるんだろ……?)
穂乃果(う〜ん、気になる〜〜〜……!!)
〜〜〜〜〜 PM 4:00
彼方(ふ〜っ……)
ほのパパ「…お疲れ様。今ので最後だ」
彼方「はい、お疲れさまでした!」
彼方(午後は、なんだかあっという間に終わった)
彼方(ミスらしいミスも無かったし……良かった〜) ほのパパ「…本当に、よく働いてくれた」
彼方「あの〜、調理場の片付けとかって……」
ほのパパ「あぁ、気持ちはありがてぇが…機械だったりが意外とデリケートでな」
ほのパパ「…掃除なんかは任せて、彼方ちゃんは先に上がってくれ」
彼方「分かりました」 彼方「一日、お疲れさまでした」ペコリ
ほのパパ「…」ウム
ほのパパ「娘はあと一時間くらいで上がると思うから、それまで部屋で…」
ほのパパ「…いや」
彼方「?」 ほのパパ「…良ければだが、和菓子作ってみるか」
彼方「え?本当ですか!?」
ほのパパ「…せっかく和菓子屋に働きに来てくれたのに、雑用ばかりじゃなんだからな」
ほのパパ「…菓子作りが得意と聞いている。簡単な練り切りくらいなら、教えられるが…」
彼方「は、はい!ぜひやってみたいです!」
ほのパパ「…そうか、じゃあこっちに来てくれ」
〜〜〜〜〜 彼方「お、おお〜…!!」
ほのパパ「それで…こんな具合にピンセットで摘むとだな…」テキパキ
彼方「すごい、綺麗なお花になった…!!」パチパチパチ
ほのパパ「あんまり見せびらかすもんじゃねぇんだがな…」
彼方「いやいや!すごいです…!」パチパチ
ほのパパ「…」テレテレ ほのパパ「…まぁ難しく考えすぎず、やってみてくれ」
彼方「はい!」
ほのパパ「…さて、いくつ作ろうか」
彼方「えぇと。私と穂乃果ちゃん…それから家にいる妹の分で、3つは作りたいです」
ほのパパ「…じゃあ俺も、たまには家族に向けて作るとするか」 ほのパパ「…俺が作ったところで、『洋菓子の方が良かった』なんて言われるのが関の山だろうがな」
彼方「あはは……」
ほのパパ「…彼方ちゃんが作れば、きっと娘も喜ぶだろう」
彼方「はいっ!」
〜〜〜〜〜 何故か俺くんがほのパパとホモセックスするSSを思い出して脳が拒否反応出してる PM5:00
彼方「ここが穂乃果ちゃんのお部屋か〜、失礼しま〜す・・・」キィ
彼方「って、そりゃ誰もいないよね〜」
彼方(うわっ、すごい数の少女漫画。本当に好きなんだなぁ)
彼方(さっき掃除したって言ってただけあって、すごい片付いてる)キョロキョロ
彼方「ベッドに座って、待ってようっと……」 彼方(それにしても、さっき作らせてもらった和菓子……)
彼方「お〜〜っ…何度見てもよくできてる……」
彼方(やれば出来るものだなぁ…ちゃんとお花に見える)
彼方(ひとつ目は少し失敗しちゃったけど、ふたつ上手にできたから、いいよね〜…)
彼方(・・・) 彼方(・・・)
彼方(穂乃果ちゃん、まだかなぁ)
彼方「う〜〜〜〜ん……」ノビーー
彼方「うん〜〜〜〜??……」
彼方(いかん、眠くなってきた) 彼方(でも人様の家で勝手に眠りこけるわけにもいかないし……)
彼方(それに、、、これ穂乃果ちゃんのベッドだし……///)
彼方(う〜〜〜ん……なんとなく、穂乃果ちゃんの匂いがする)クンクン
彼方(あれ……なんか、ヘンタイっぽい?今の彼方ちゃん)
ガラッ
穂乃果「彼方さんっ、お待たせーー!!!」 穂乃果「……って、うわぁ!!!?」
彼方「あ、穂乃果ちゃ〜ん……」
穂乃果「彼方さん、だいじょうぶ!!?」
彼方「う〜〜〜ん、少しだけ、眠くなっちゃって〜」 彼方「うん〜……別に、大丈夫だよ」
穂乃果「そっか。お仕事、おつかれさま」
穂乃果「熱いお茶もってきたから、良かったら飲んで!」
彼方「おーっ。ありがと〜」 彼方「ズズズーっ…はぁ、沁みるねぇ」
穂乃果「えへへ、このお茶、穂乃果が淹れたんだよ」
彼方「ほんと?いや〜、彼方ちゃんは恵まれてるなぁ」
彼方「ありがとねぇ」ナデナデ
穂乃果「・・・うんっ///」
彼方「・・・あ、そうだ」
穂乃果「?」
彼方「見てみて〜、これ……」
穂乃果「あっ、うちの和菓子?」 彼方「ふふふ〜。実はこのお花、彼方ちゃんが作ったんだ〜」
穂乃果「えっ。これを!?すごい!!」
彼方「まぁ餡作りとかは、おじさんにやってもらったんだけどね〜…」
彼方「ほら、穂乃果ちゃんの分も作りました〜」ジャジャーン
穂乃果「わーい、やったー!!」
彼方「せっかく穂乃果ちゃんがお茶入れてくれたから、一緒に食べよっか」
穂乃果「うんっ!」 穂乃果「…」パクッ
彼方「うん、おいしい〜」パクッ
穂乃果「ほんと!和菓子はもう飽きたと思ってたけど、すっごく美味しい!」
彼方「ふふふ。それは良かった」 彼方「それに、熱いお茶がよく合うねぇ…」ズズズ
穂乃果「そうだねぇ…」ズズズズ
彼方「あ〜・・・」
彼方「…すっごい幸せ」
穂乃果「…うんっ」 穂乃果「…もう食べ終わっちゃった」
彼方「今度、家でも頑張って作ってみるよ〜」
彼方「お菓子で花を作る作業、けっこう好きかも」
穂乃果「そうなんだ」
穂乃果「そういえばお父さんがね、『あの子はきっと良い和菓子職人になる』ってさっき言ってたよ!」
彼方「え〜。ほんと〜?」
彼方「おじさんにそう言ってもらえるなんて、光栄だなぁ」 穂乃果「穂乃果なんて、そんなこと一回も言ってもらったことないよ!」
彼方「でも穂乃果ちゃんは、すごく良い看板娘だと思うな〜」
彼方「厨房からでも、穂乃果ちゃんとお客さんの楽しそうな声が、いっぱい聞こえてきたよ?」
穂乃果「うんっ。お客さんとお話ししたりするのは、けっこう好きかも」
彼方「へぇ〜……」 穂乃果「そういえば彼方さん、今日ご飯食べていく?」
穂乃果「聞いてこいってお母さんに言われてたの、忘れてた」
彼方「あ〜…すごいありがたい話だけど」
彼方「遥ちゃんにご飯作ってあげないといけないし、今日は遠慮させてもらうよ〜」
穂乃果「ん、わかった!」
穂乃果「お母さんに伝えてくるね」
彼方「よろしく〜」 〜間〜
穂乃果「ただいま〜…」
彼方「……っ、おぉ〜。おかえり〜〜」
彼方(いかん、危うく眠るところだった)
穂乃果「…だいじょうぶ?やっぱり眠い?」
穂乃果「お父さんに、散々こき使われて……」
彼方「あはは…そんなことないってば〜」 彼方「穂乃果ちゃんが帰ってきた瞬間、目が覚めたよ〜」
穂乃果「あんまり、無理しないでね?」
彼方「うん。わかってるよ〜」
彼方「・・・それにしても穂乃果ちゃん。なんで割烹着つけてるの〜?」
穂乃果「あっ、これはね!」 穂乃果「せっかくだから、彼方さんと写真を撮ろうと思って!」
彼方「写真?」
穂乃果「そう。お仕事中は忙しくて、写真撮る暇なかったでしょ?」
穂乃果「彼方さんが着てた厨房服も持ってきたよ!」ジャジャーン
彼方「なるほど〜、じゃあもう一回着るね」
穂乃果「うん!」
彼方「よいしょ〜っと、、、」イソイソ 彼方「こんな感じかな……?」
穂乃果「おぉ…やっぱり彼方さん、似合うねぇ」
彼方「うむ、我ながらよく似合ってる…」
穂乃果「さすが、料理上手だね!」 彼方「それを言うなら穂乃果ちゃんも、割烹着すっごく似合ってるよ」
彼方「昼間お店の中で会ったとき、可愛くてびっくりしちゃったもん」
穂乃果「ほんと?」
彼方「うん」
穂乃果「ありがと///」エヘヘ 穂乃果「…はい、チーズ」
彼方「いえ〜い」
カシャ
彼方「ん…どれどれ」
穂乃果「あ、いい写真」
彼方「そうだねぇ」
穂乃果「・・・」ジーッ
彼方「?」 穂乃果「なんか、この写真…」
彼方「うん」
穂乃果「・・・」
穂乃果「夫婦……みたい、だね?」
彼方(あっ、とうとう言った) 彼方「そうだねぇ」
穂乃果「・・・///」
彼方「うん、なかよし夫婦……」
彼方(・・・)
彼方(かお、熱いな///)パタパタ 彼方「…あ、服ありがと///」ヌギヌギ
穂乃果「あ、うん///」ヌギヌギ
穂乃果「今日は…何時くらいに帰るの?」
彼方「え?あっ、う〜ん……6時くらいかなぁ」
穂乃果「そっか」
彼方「・・・」
彼方「…ん。それまで、いちゃいちゃしよう?」
穂乃果「え?」 彼方「昼間いそがしかった分、できるだけ」
穂乃果「う、うん///」
穂乃果「あっ。でも、雪穂とかお母さんとか、もしかしたら来るかも…」
彼方「え?……あ、いや」
彼方「そんないやらしい意味で、なくてだね」
穂乃果「えっ?」 彼方「こんな風に、手を繋いだりとか〜…」ギュッ
穂乃果「あっ、そうだよね、ごめんね!」
穂乃果「う〜〜、変なこと言っちゃった…///」
彼方「ううん。彼方ちゃんの言い方が悪かったよ〜」
穂乃果「あ、あはは…///」
彼方「あはは……」
彼方(……どうしよう、押し倒してしまいたい///) 彼方(いや、でも、流石にいつ家族がドアを叩くかもわからない状況じゃ……ムリムリ)
彼方(う〜ん。これは、ヘタレなのか……?)
彼方(そんなに時間の余裕もないしな〜〜〜……)
穂乃果「あ、あぁー!そういえば!!!」
彼方「」ビクッ
穂乃果「ずっと、気になってたことがあるんだけどね!!?///」
彼方「ん〜…な、なぁに?」 穂乃果「お父さんと、割とおしゃべりしたって言ってたでしょ?」
彼方「う、うん」
穂乃果「いや〜。いったいなんの話してたんだろ〜って、ずっと気になってたんだ〜!あの、全然しゃべらないお父さんと!!」
彼方「あっ、えぇと〜……」
彼方(助かったぁ)ホッ
彼方(うぅ。ヘタレな恋人でごめんよ〜……) 彼方「まぁ主に…料理に関することかなぁ」
彼方「あんなにたくさん正確にお菓子を作れるなんて、感動しっぱなしだったよ」
穂乃果「まぁ、確かに……」
彼方「それと、意外とお茶目なおじさんだなぁって思った」
穂乃果「えぇ?そうかなぁ」
彼方「うん。けっこう話しやすくて、好きだな〜……」 穂乃果「へ〜……意外かも」
彼方「・・・」
彼方(彼方ちゃんのお父さんは、あんまり記憶ないからなぁ……)
彼方(どんな人だったんだろ。この歳になって、今さら興味が湧くなんて……)
彼方(今度、お母さんに聞いてみようっと〜……)
穂乃果「・・・彼方さん?」 彼方(…あ、いけない。考えこんじゃった)
彼方「ん〜、どうしたの?」
穂乃果「…あの。穂乃果の家でよかったら、いつでも遊びにきてね」
穂乃果「お父さんもお母さんも雪穂も、みんな楽しみにしてるんだから!」
穂乃果「もちろん、遥ちゃんも一緒に!」
彼方「うん、ありがとう。そうさせてもらうよ〜」 彼方(ふふふ。なんか穂乃果ちゃん、おじさんと同じこと言ってる気がする……)
彼方(・・・ん?)
穂乃果「?」
彼方「あっ、分かった」
穂乃果「…え。なにが?」
彼方「穂乃果ちゃんって〜・・・おじさん似なんだよ」
穂乃果「・・・」
穂乃果「え〜〜〜?」 穂乃果「そんなこと、初めて言われたかも…」
穂乃果「…いや。そう言えばお母さんが、たまにそう言ってるような・・・」
彼方「そうでしょ」
穂乃果「でも穂乃果、あんなにだんまりしてないよ?」
彼方「あ〜、えっとねぇ…」 彼方「さっき聞かせてもらった話なんだけど」
彼方「昔おじさんが和菓子職人の道に進もうって決めたときね、けっこう周りから反対されてたんだって」
穂乃果「へぇ〜……」
穂乃果(そんな話、一回も聞いたことないや) 彼方「でも、和菓子を極めたい!っていう熱意を持ってたら、最終的に周りの人も応援してくれて」
彼方「先代の『穂むら』の主人に認められて、婿養子に入ったらしいよ」
穂乃果「ほぉ〜……お父さんって、意外とすごいのかも」
彼方「うんうん」 彼方「だから、そういうところが穂乃果ちゃんに似てるなって思ったんだ〜」
穂乃果「なるほどなるほど…」ウンウン
穂乃果「……??似てるかな?」
彼方「似てるとも〜」ナデナデ
穂乃果「う〜〜〜ん……分かるような、分からないような」
彼方「ふふふ」 彼方「それで、雪穂ちゃんはお母さんに似てるんじゃない?」
穂乃果「あっ、それは確かに!」
穂乃果「ふたりとも穂乃果のこと、しょっちゅう叱ってくるんだよ!」
彼方「ふふ。穂乃果ちゃんのこと、心配してくれてるんだねぇ」
穂乃果「まあ、それはそうなんだけど〜……」
穂乃果「あっ。お父さんもお母さんによく、お小言いわれてる!!」
穂乃果「う〜ん。穂乃果やっぱり、お父さんと似てるのかも…」
彼方「あはは…」 穂乃果「そういえば……彼方さんは、穂乃果のこと怒ったりしないよね」
彼方「ん?うん。怒る必要も無いと思うけど〜」
穂乃果「そう言ってくれるの〜、彼方さんだけだよ……」アハハ
彼方「そう?……あと、彼方ちゃんは怒るってより、怒られる側だからね〜」
穂乃果「え?誰に?」
彼方「はるかちゃん」
穂乃果「…どんなふうに?」 彼方「『いいかげん、妹離れして!』とか」
彼方「『私のライブ中に、あんまり大きな声で呼ばないで!』とか〜……」
穂乃果「仲良しだねぇ」
彼方「まぁね〜……」
穂乃果「・・・」 穂乃果「仲良し、かぁ……」
穂乃果「・・・」
彼方「?」
彼方「どうしたの、穂乃果ちゃん」 穂乃果「……ねぇ、彼方さん?」
彼方「うん」
穂乃果「今日、ずうっと考えてたことなんだけど」
彼方「うん」
穂乃果「あの…ええっと・・・」 穂乃果「……///」
穂乃果「いつか……いつかね」
穂乃果「彼方さんと二人で、お店もてたらいいなぁ、って…」
穂乃果「そんなキモチばっかり、頭からはなれなくて」
彼方「・・・うん」 穂乃果「そんなに大きいお店じゃなくていいんだよ?」
穂乃果「彼方さんが料理を作って…それを私が運んで」
穂乃果「あっ。最悪、穂乃果が作ってもいいんだけど!」
彼方「ふふふ。料理は彼方ちゃんに任せといて〜」
穂乃果「…えへへ、お願いします」
彼方「・・・そういえば」 彼方「穂乃果ちゃんは、将来このお店を継ぐんだっけ?」
穂乃果「う〜ん…そういう話は今のところ、出たことないかも」
彼方「へ〜、そうなんだ」
穂乃果「和菓子飽きた〜〜って、いつも言ってるからかなぁ」テヘヘ 穂乃果「だから穂むらじゃなくても、レストランとか……パン屋さんとか!」
穂乃果「彼方さんがやりたいと思った店があったら、穂乃果、付いてくから」
穂乃果「そのかわり、穂乃果とずっと一緒にいてね?///」
穂乃果「……///」
彼方「ほのかちゃん……」
彼方(そんなこと、考えてくれてたんだ) 穂乃果「……」テレテレ
彼方(私がお店持つなんて、真剣に考えたことなかったなぁ)
彼方(けっこう大変な業界だって聞くし…穂乃果ちゃんのお父さんみたいに、覚悟決めないと務まらないよね)
彼方(・・・でも)
彼方(穂乃果ちゃんがいてくれるなら、不思議となんとかなる気がしちゃう) 穂乃果「…///」
彼方「・・・」
彼方「ねぇ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「?」
彼方「あの〜……」
彼方「ちゅー・・・していい?」
穂乃果「えっ///」 穂乃果「い、いいけど……!」
穂乃果「なんだか、急だね?///」
彼方「そうだねぇ」
穂乃果「え、え〜と///」ドキドキ
穂乃果「……いいよ?///」
彼方(…かわいい) 彼方「・・・ん」
チュッ
穂乃果「ん、んぅ……」
彼方(可愛い)
彼方「ん…もういっかい」
穂乃果「う、うん……///」 穂乃果「ん、ん〜……///」チュッ
彼方(……すき)
彼方(ふたりでお店開こうって、純粋に夢を語ってくれた穂乃果ちゃん)
彼方(その日が来るまで、一緒にいられるのかな)
彼方(どうかその時まで、この恋が続きますように) 穂乃果「ん……」
彼方「……ぷはっ」
彼方「恋人らしいこと、できてよかった」
穂乃果「うん///」
彼方(穂乃果ちゃんのことを、たくさん知ることができた)
彼方「こんな素敵な一日になるなんて、思わなかったよ」
穂乃果「うん……そうだねっ」 穂乃果「ずっと一緒にいようね。彼方さん」
彼方「そうだねぇ」ナデナデ
穂乃果「……///」
〜〜〜〜〜 PM6:00
彼方「それでは、お世話になりました」ペコリ
彼方「お饅頭に、おそうめんまで頂いちゃって……ありがとうございます」
ほのママ「ふふ、いいのよ」
穂乃果「またいつでも、遊びにきてね!」
ほのパパ「…」ウム
雪穂「またね、彼方さん」
彼方「うん、またね〜」 彼方「いや〜、楽しい一日だった」テクテク
彼方(穂むらのお饅頭、二箱も貰っちゃったし)
彼方(遥ちゃんとお母さんに、何か買って帰ろ〜っと)ルンルン
彼方「いただいたお金、さっそく使わせてもらおうかな〜…」
彼方「ふんふ〜ん……♪」ガサゴソ
彼方「・・・あれ?」 PM 6:10 穂むら前
彼方「はぁ、はぁっ」タッタッ
ほのママ「あら、彼方ちゃん。忘れもの?」
彼方「いえ……あの〜」
彼方「不躾ながら、いただいたお給料袋の中身を、見てしまったんですけど……」
彼方「聞いていた額より、五千円多く入っていて…」
ほのママ「あ〜……」 ほのママ「それは交通費と・・・う〜ん、暑中ボーナスってところかしら」
彼方「あ、え〜と、その……」
彼方「・・・あの、すみません」ペコリ
ほのママ「謝らなくてもいいのよ」
ほのママ「ほんとうによく働いてくれたって、主人も言ってたわ」
ほのママ「今日は、ありがとうね」
彼方「あ・・・こちらこそ、すごく良い経験になりました」 ほのママ「それと……これからも、穂乃果が迷惑をかけると思うけど」
ほのママ「良かったら、面倒みてあげてね」
彼方「は、はいっ。こちらこそ」
彼方(あれ、私たちの関係バレてる……?)
彼方(いや、まさか…そんなこと無いよね)
ほのママ「暗くなってきたから、気をつけて帰るのよ」
彼方「あ、はい…」 PM 6:20 帰り道
彼方「う〜ん、ありがたい……」テクテク
彼方「すっごく、ありがたいんだけど〜・・・」
彼方(素直に喜べないあたり、彼方ちゃんはひねくれているんだろうか)
彼方(…五千円、おじさんが入れてくれたのかなぁ)
彼方(・・・)
彼方(だめだ、変に疑っちゃう) 彼方(きっと穂乃果ちゃんなら、変に悩まないんだろうな〜……)
彼方(そう。穂乃果ちゃんなら、たぶん)
〜〜〜〜〜
穂乃果「ええっ!!?こんなに貰っちゃって良いんですか!?ほんとに!?」
穂乃果「やった〜、ありがとうございます!!!」
穂乃果「わーーーい!!」ピョンピョン
〜〜〜〜〜
彼方「……こんな感じかなぁ」 彼方(『すみません』じゃなくて、きちんと 『ありがとうございます』 って言うべきだったよね〜……どう考えても)
彼方(私も、穂乃果ちゃんを見習わなきゃ)
彼方(・・・)
彼方(それで……穂乃果ちゃんのことだから、その場でスキップなんて始めたりして)
彼方(…ふふっ) 彼方(満面の笑みで、こんな風に……トン、トン、って)
トンッ トン
彼方(うん、上手い上手い)
彼方「……なんか楽しくなってきた」 トンッ トン
彼方「とん、とーん♪・・・っと」
彼方「……うん」
彼方(こんな日くらい、浮かれてもいいよね) 彼方(たくさん発見があって、みんなに優しくしてもらえて)
彼方(めいっぱい穂乃果ちゃんとイチャイチャできた)
彼方(良いことが、いっぱいあったもんね〜) 彼方「遥ちゃんとお母さんに、なに買って帰ろうかなぁ〜……っと」
彼方「ふふっ♪」
終わり スレ立て代行してくれた方、見てくださった方、ありがとうございました! 良いSSだった...
こういう優しくて暖かい雰囲気好きよ 異色なように見えてすげー違和感のない良いカプやなぁ
最高やで >>155
草
>>1この二人でSS書いたの偶然なのか?すごいわ あ〜ほのかな予感に乙
なんというか、作者さんは不運だったと言うかドンマイとしか 穂乃果ちゃんは文春じゃなくてアサ芸じゃなかったかとどうでもいいツッコミしてみる 長いから読んでないけど、絶妙なタイミングで草なんだ 作者さんはもしかして関係者の方ですか?
ある意味伝説のSS >>164
週刊誌にすっぱ抜かれることを"文春砲"ってことで >>155
>>171
別スレでも見たなぁそんな気に入ってるのか
と思ったら、自分言われた側っぽいやん
104 名前:名無しで叶える物語(SIM)[] 投稿日:2021/08/17(火) 11:49:54.94 ID:JlUfw/ic
>>96
お前ん中では案件筆頭
言われて効いたこと連呼するようになるとか
どこぞの発達障害iPhoneみたいな痛いことやめろよ… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています