遥「私、アルバイトがしたい!」
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果林「で、ほかの女ですけど? 何か文句ある?」
彼方「むぅ……」
彼方「果林ちゃんだと文句は言えない……」
果林「ふふっ、それはどうも」
果林「でも……」
果林「彼方だって、いっつもほかの女の話ばっかり」
彼方「へっ?」
サワ....
果林「遥ちゃん遥ちゃん遥ちゃんって」
果林「私といても、いっつも言ってるじゃない」
彼方「え〜?」
彼方「……」
彼方「姉妹なのに、何言ってんのよ」
ペシッ
彼方「ぁぅ」
果林「下手な真似しないで」 果林「……」
果林「それで? 聞きたくないの? 遥ちゃんの目的」
果林「遥ちゃんから口止めはされてないから」
果林「教えてあげようと思えば、教えてあげられるけど?」
彼方「ん〜……」
彼方「でも……」
モゾモゾ
彼方「遥ちゃんと約束したから」
彼方「果林ちゃんには聞かないよって」
果林「聞いてないわ。聞かされたのよ」
果林「それなら、仕方がないと思わない?」
彼方「悪い女だねぇ」
果林「噂の女だもの」 彼方「でも、聞かない」
彼方「聞いちゃったら、遥ちゃんを裏切ることになっちゃう」
果林「……そう」
果林「相変わらず、遥ちゃんのことに関してはいつも以上に真面目なんだから」
果林「けど」
サワサワ
彼方「っ」ピクッ
果林「……もう、裏切っちゃってるんじゃない?」ボソッ
彼方「そんなことないよ」
彼方「裏切ってるのは、果林ちゃんだよ」
果林「……」
果林「……」フイッ
果林「そうかしら」
彼方「……この泥棒猫」グイッ
果林「まだ盗んでないでしょ」 彼方「……遥ちゃんのこと、よろしくね?」
彼方「しばらくは、失敗もしちゃうかもしれないけど」
果林「大丈夫よ。彼方の妹だもの」
彼方「えへへ……そうかなぁ」
果林「間違いないわ」
果林「……どうせなら、姉妹で雑誌のモデルになってみてもいいと思うけど」
彼方「え〜?」
彼方「買いかぶりすぎだよ〜」
果林「頬が緩んでるわよ」
果林「……」
果林「ねぇ、彼方」
彼方「ん〜?」 果林「最近、家で遥ちゃんの様子はどうだった?」
果林「バイトの件はあるとしても、それ以外で何もなかった?」
彼方「そうだねぇ……」
彼方「ん〜」
彼方「……なにも、なかったと思うよ〜?」
果林「そう……」
彼方「なにかあった?」
果林「ううん」
果林「なんでも」
果林「何もなかったなら、それでいいわ」
彼方「……?」 ――――――
―――
彼方(家での遥ちゃんかぁ……)
彼方(……)
彼方(別に、おかしなところは何もないと思うけど……)
彼方(ん……)
彼方(遥ちゃんが悪いことをするわけがないから……)
彼方(なんだろう?)
彼方(歩夢ちゃんたちみたいに、こっそりゲームをやってるとか)
彼方(せつ菜ちゃんみたいに、こっそりアニメや漫画を見てるとか)
彼方(それとも機械工学に目覚めて夜な夜な有事の際のロボット開発してるとか……)
彼方(……)
彼方(うん。ないねぇ〜)
彼方(ロボットはともかく、ほかのことは彼方ちゃんと一緒にやろうとするから……)
彼方「……あっ!」ビクッ
彼方(まさか……果林ちゃんみたいにいやらしいことじゃないよね?) 彼方「なっ……ないないないない!」
彼方「まさか……まさかねっ」
彼方「だって……」
彼方(そんな)
彼方(遥ちゃんが、そんなこと……)
.....ギシッ
彼方(遥ちゃんは良い子だもん)
彼方(いやらしいことなんてするわけがないよね?)
彼方(でも、だったら何を隠してるんだろう?)
キシッ....
ギシッ
彼方(いうのも恥ずかしいようなこと)
彼方(私には絶対に言えないようなこと)
彼方(自分のお金じゃなくちゃいけないようなこと)
彼方(何かのプレゼントって、どうしても黙ってなくちゃいけないようなことなのかな……) 彼方「気になる……」
彼方(うぅ……)
ギシッ
ポフッ
彼方(遥ちゃんには約束したし)
彼方(果林ちゃんにも聞きたくないって念押ししちゃったけど)
彼方(果林ちゃんが変なこと言うから……)
彼方「……」
キシ.....
ギシッ
彼方「....スンスン」
彼方(やっぱり、果林ちゃんはいやらしい子だ……)
彼方(どうしよう、遥ちゃん……本当に変なことじゃないよね?)
ギシッ....
キシッ
彼方「んっ……」ピクッ
――ガチャッ
彼方「っ」ガタッ
遥「ただいまー……?」 彼方「お、おかえり〜」
遥「ただいま」
遥「お姉ちゃん、また私のベッドにあがって……」
遥「……別に良いけど」スンスン
遥「危なくない? 軋むでしょ」
彼方「うんっ、そうみたい」
彼方「そろそろ買い替えが必要かもしれないね〜」
ギシギシッ
遥「そうだね……あ、お姉ちゃんが高校卒業したら買い替えようよ」
遥「私も高校生だし、二段じゃなくて一段で」
彼方「一段のを二つ?」
遥「ん〜……」
遥「キングサイズを一枚」
彼方「部屋が埋まっちゃうから無理だと思うよ〜」
遥「そっかぁ」 彼方「そういえば、アルバイトの日程は?」
遥「そうだった……今日のお昼に連絡があって」
遥「さっそく明日どうかなって」
遥「果林さんに連絡したら大丈夫だって言ってたから、明日一緒に行ってくるね」
彼方「……果林ちゃんにはすぐ連絡したんだ」
遥「え?」
遥「あ、うん。そうじゃないと言う機会がないし、一緒に来てもらうから早い方が良いかと思ったから」
遥「……」
遥「もしかして、怒ってる?」
彼方「……怒ってないよ」
遥「じゃぁ、拗ねてるんだ」
ギシッ
キシッ
遥「……お姉ちゃんとはこうやって話せるから、いいと思った」
ギュッ
彼方「……」
遥「ごめんね」 彼方「……別に拗ねてないよ〜」
遥「え〜?」
遥「……私だったら、拗ねてる」
ゴソゴソッ
彼方「なのに、すぐに教えてくれなかったんだ」
遥「うん」
モゾモゾ
ギシッ
キシッ
遥「その方がお姉ちゃん可愛いから」
彼方「……お姉ちゃんは遥ちゃんが嫌いです」
遥「えへへっ」
遥「……」
スッ.....
――チュッ
遥「ごめんねっ」
彼方「だ〜めっ」プイッ
遥「……明日果林さんのところに泊まっちゃおうかな」ボソッ
彼方「怒るよ〜?」
遥「冗談だよ」
遥「ちゃんと、帰ってくるよ」ギュッ 彼方(遥ちゃんは、いつも通り)
彼方(私に隠し事があっても、平然としてる)
彼方(大したことじゃないからなのかな)
彼方(遥ちゃんは気にしてないからなのかな)
彼方(それとも……)
彼方「……」
彼方「遥ちゃん」
遥「ん〜?」
彼方「いやらしいことじゃ、ないよね?」
遥「……違うよ」
遥「いやらしいことじゃないよ」
遥「……でも、すっごく大切なこと」 彼方「そっか」
彼方「そっか……」
彼方「なら、いいけど」
遥「……」
遥「お姉ちゃんに迷惑かけないから、大丈夫だよ」
ギシッ
キシッ
遥「悪いことじゃないって、約束する」
彼方「うん」
彼方「……」
遥「今日は一緒に寝よ?」
彼方「ん〜……」
彼方「いいよ」
遥「やった〜」ギュッ かなはる普通にキスする仲なんかい
もう恋人だろこれ ――――――
―――
彼方「今日はよろしくねぇ〜」
果林「ええ。任せて」
果林「と言っても、私がどうこうするわけじゃないけどね」
果林「彼方が見たこともない男達が、相手するのよ」
彼方「言い方」
果林「ふふっ、冗談よ」
果林「みんながみんな男ってわけじゃないわ」
果林「今回は、たぶん、カメラマンは男性だろうけどアシとかは女性だろうし」
果林「時々、女性のカメラマンもいるのよ? 男の人よりも見栄えする指示してくれるんだから」
彼方「そっか……」
彼方「果林ちゃんは、撮られ慣れてると思うけど」
彼方「撮る方はどう? 普通の人よりはいい写真、撮ったりできる?」 果林「ん〜……どうかしら」
果林「まぁ、撮れる……かもしれないわ」
果林「……」
果林「撮られたいの?」
果林「それとも」
スッ.....
クイッ
果林「……盗られたいのかしら?」
彼方「……」チラッ
彼方「今、侑ちゃん居ないよ?」
果林「ギャグじゃないってば」 彼方「え〜? じゃぁ……」
彼方「彼方ちゃんの心は遥ちゃんに盗られちゃってるから駄目だよ〜」
果林「あら、なら空っぽってこと?」
果林「……だとしたら、ここには何が詰まってるのかしら」
サワサワ....
彼方「んっ……」ピクッ
彼方「優しさ……かな?」
果林「私の心を入れる隙間はある?」
彼方「……」
彼方「どうかなぁ」フイッ
彼方「……どうだと思う?」
果林「ふふっ、なにそれ」
果林「試しにねじ込んでみてもいいの?」 グッ.....
彼方「だ〜めっ」
果林「誘っておいて?」
彼方「学校だよ〜?」
果林「……」
果林「でも校舎裏だし」
彼方「外だよ?」
果林「……解放感も、たまにはね」
彼方「ダメなものはダメ〜」
グイッ
彼方「果林ちゃんはエッチだなぁ……」
ゴロンッ
果林「そんな人の膝を借りて無防備なのは許されないと思わない?」
彼方「許して?」
サワサワ.....
スッ
果林「 だ め 」ボソッ 果林「……そうだわ」
サワサワ....
ペシッ
彼方「っ……おさわりはダメ」
果林「もうっ……」
果林「で、彼方、遥ちゃんのお財布ってチェックしてる?」
彼方「えっ……そんなことするわけないよ」
果林「そう……」
果林「やっぱり、普通はチェックなんてしないわよね」
果林「だから……」
彼方「だから、なに?」
彼方「遥ちゃん、何か隠してるの?」
果林「ううん。何でもないわ」
果林「遥ちゃんは、いい子だもの」ニコッ 果林「良い子だから、私のところに泊めても――」
彼方「それはダメ」
彼方「果林ちゃん、いやらしいことするから」
彼方「遥ちゃんが垢抜けちゃう。悪い方向に」
果林「……」
果林「ねぇ、前々から思ってたんだけど」
果林「彼方、私のこと嫌いでしょ?」
彼方「え〜……」ゴロンッ
彼方「好きだよ?」
果林「その割には評価が酷いわ。好きならもうちょっと贔屓して欲しいものね」
果林「彼方と遥ちゃんのこと、私甘く見てるのに」
彼方「甘く見てるから……駄目なんじゃないかな〜」ギュッ
.....ナデナデ
果林「帰りに、寄り道するから帰すの遅くなるかも」
彼方「警察に電話する前に帰してね」
果林「もうっ、それじゃ私犯罪者になっちゃうじゃない」 果林「……」
果林「彼方も大変ね」
彼方「なぁに? 急に」
果林「……別に」
果林「ただ何となく」
果林「……いえ」
果林「朝忙しかった?」
彼方「あ〜……」
彼方「ほら、他の女のにおいがするでしょ?」
果林「遥ちゃんね」
彼方「それで、ちょっと寝坊した」
果林「そう……」
果林「まぁ、別に良いんだけど」
果林「というより、もう気付いてるとは思うんだけど」
果林「ブラ……つけてないでしょ」
彼方「……へへっ」
彼方「触る?」
果林「やめてよ。本気にしちゃうでしょ」
果林「……」チラッ
ガバッ
彼方「わぁ〜っ」ドサッ ノーブラ彼方ちゃんとかエッッッッッッッッッッッッッ ――――――
―――
彼方「ん〜……」
彼方(遥ちゃん、今日は撮影だから……遅くなる)
彼方(でも、今まで部活の練習で遅くなることもあったから)
彼方(その代わりだと思えば、帰ってくる時間も変わりないのかな)
彼方「……」スッ
>遥ちゃん:今日は帰り、いつもより遅いかも
.....ポスッ
彼方「……はぁ」
彼方(遥ちゃんのしたいこと、欲しいもの、お金が必要な何か)
彼方(お財布……お財布に秘密があるのかな)
彼方(聞いたことあるのは、お守りだったかな。金運とか……一緒に初詣行ったときに買う……)
彼方(あとおみくじ……ポイントカードとか……でも、それだけじゃないだろうし)
彼方(……もやもやする)
彼方(テレビでも、見ようかな)
ピッ..... 『でも私産みたい!』
『大変なことは分かってるよ! 分かってるけどっ、でも……!』
『お前はまだ高校生なんだぞ!』
ガタンッ!!
彼方「……」
彼方「ぁ……」
彼方(え、え……いや)
彼方「……ふぅ」
彼方(落ち着こう。まさか、うん)
彼方(これはドラマだから。うん、遥ちゃんが、そんな……)
彼方「……」
彼方「お財布……診察券……」
彼方「は、ははっ……まさか……」
彼方「まさか、ね……あはは……」 彼方(遥ちゃんが妊娠した?)
彼方(病院行くために、バイトを始めたの?)
彼方(中絶費用を貯めるため?)
彼方(それとも……)チラッ
『この子は何も悪くないの!!』
彼方(産んで、育てたいから?)
彼方「……」
彼方(悪いことでもいやらしいことでもないけど、恥ずかしいこと)
彼方(私に迷惑をかけたくないこと……)
彼方「……」ポロッ
彼方「え、あ……」ポロポロ....
彼方(違う、違うっ)
彼方(遥ちゃんがそんなことになるわけないっ!) 彼方(でも、ないとは言い切れない)
彼方(遥ちゃんかわいいから、引く手数多だろうし)
彼方(遥ちゃんが合意するとは思えないけど……)
彼方(え……でも、だったら……)
ガタンッ!!
彼方(無理矢理?)
彼方(嘘だよね……違う。ありえない)
彼方(そんなこと、あるわけない……)
彼方(遥ちゃんに、確かめてみなきゃ) ――――――
―――
遥「ただいま〜」
彼方「お帰り〜」
彼方「どうだった?」
遥「ん〜……あれも違うこれも違うっていっぱい駄目だしされちゃった……えへへ」
遥「でも、上手くいくとみんな喜んでくれて、凄い凄いって褒めてくれて」
遥「大変だったけど、やっぱり楽しかった」
遥「スクールアイドルじゃなくて、一人の人だったけど」
遥「でも、なんだか……アイドルみたいだなって、思っちゃった」
遥「失礼かな、本当のモデルさんやアイドルの人に」
彼方「感じ方は人それぞれだよ〜」
彼方「良いんじゃないかな……遥ちゃんがそう感じたなら、貶してるわけじゃないんだから」
遥「そっか……」
遥「お姉ちゃんは? また、私のベッド上がったの?」
彼方「そんな常習犯みたいに〜」
彼方「珍しく暇だったから、久しぶりにドラマ見ちゃった」
彼方「……」
彼方「最近って、色々あるんだねぇ。女子高生が妊娠するようなものとか」チラッ
遥「あーあるよ。クラスでもたまにそういうドラマの話題上がることある」
彼方(普通だ……) 遥「でも、そういうのって身近にはいないかなぁ……」
遥「隠してるのかもしれないけど、聞いたことないよ」
遥「やっぱり、大変だし怖いし、何よりいろんな人に迷惑かけちゃうから」
彼方「そうだよねぇ」
彼方「……」
彼方「遥ちゃんも、いつかは……とか、考えてるの?」
遥「お付き合い? 子供?」
彼方「ん〜両方……」
遥「……」
遥「子供は、どうだろう……たぶん、できないんじゃないかな」
彼方「えっ」
彼方(まさか、不妊治療?)
遥「だって――」
.....スッ
遥「お姉ちゃん、その為のものがないでしょ?」ボソッ
彼方「え、あ、まっ……」
遥「お風呂よりもご飯よりも、まずはお姉ちゃん。かなっ」ニコッ
彼方「わ〜っ!」
ドサッ 遥「……え、お財布?」
彼方「うん」
遥「お財布の中なんて、大したもの入ってないよ」
遥「果林さんにからかわれてるよ。お姉ちゃん」
彼方「うぅ……やっぱり?」
遥「私、お姉ちゃんに後ろめたいことなんて何にもない」
遥「アルバイトしたいのは、欲しいものがあるから」
遥「ただ、その欲しいものはお姉ちゃんに教えたくないし、私が自分のお金で買いたいなって思ってる」
遥「教えたくないのだって、意地悪とかじゃないんだよ?」
.....チュッ
遥「私が、まだ知られたくないだけ」
彼方「……ほんと?」
遥「お姉ちゃんは私のこと信じられない?」
彼方「信じられる。けど」
遥「だったら……そんな不安にならないで」ギュッ
遥「大丈夫だから」 これ描写がないだけで果林ちゃんとも遥ちゃんともヤッてるよね… ――――――
―――
彼方「というわけで、彼方ちゃんは果林ちゃんが嫌いになりました」
果林「……そう」
果林「一方的な愛情って、暴走すると危険なのよね」
果林「夜道に気を付けた方が良いわ」
彼方「怖いよ……」
果林「まぁ仕方がないわ。自業自得だもの」
果林「だから、バイト帰りに背後の電信柱の影で私を見ても近づいたら駄目よ」
彼方「ホラーだ……」
果林「でも、よかったじゃない」
果林「遥ちゃんがちょっとだけでも教えてくれたんだから」
果林「私のおかげよね」
彼方「ん〜?」 果林「というか、本気で遥ちゃんが妊娠したとか思ったの?」
彼方「ちょっと不安になった」
果林「遥ちゃんよ? 襲われたならともかく」
果林「合意でそんなことになるとか地球の自転と公転が止まってもあり得ないでしょ」
果林「遥ちゃんは大丈夫よ。一生、男なんて作る気ないわよ」
彼方「それはそれで、どうなのかなぁ……」
果林「逆に、彼方はどうなの?」
果林「遥ちゃんのことばかりだけど、男性とお付き合いする気はあるの?」
彼方「そうだねぇ」
彼方「……今のところ、何にも考えてない」
果林「告白されたら?」
彼方「断っちゃう……かな」
彼方「だって、今はまだ……彼方ちゃんの時間を割いてあげる余裕がないから」 果林「そこよそこ」
果林「遥ちゃんのために使ってる時間を、自分のために使うって発想はないの?」
彼方「ない」
果林「早いわね」
彼方「だって、どっちにしろ自分のためだから」
彼方「あとは、そこにだれが関わるか」
彼方「好きになった……? 男の人と、遥ちゃん。どっちを優先するのかなんて、考えるまでもないよね」
果林「よね? って聞かれてもね」
果林「それって結局、好きになった相手がいないから言えることだと思わない?」
果林「恋人が出来たら、ぐるりと変わるわよ」
果林「……」
果林「というわけで、どう? 私と付き合ってみる気はない?」
彼方「なぁに言ってるの〜」 果林「つれないんだから……」
果林「彼方ってば、後々刺されるわよ?」
彼方「え〜……ないない」
彼方「彼方ちゃんはどちらかと言えば地味な子なので」
果林「いや、男って意外性もなく彼方みたいな家庭的な子に惚れるわよ?」
彼方「その言い方はどうだろう?」
彼方「彼方ちゃんより果林ちゃんはどうなの〜?」
果林「ふっ……私に聞く?」
彼方「興味ないんだ」
果林「あったら、読モの仲間内で開かれる合コンに参加してるわよ」
彼方「……え、待って、何それ。遥ちゃんが危ない!」
果林「大丈夫だってば」
果林「遥ちゃん、そういうの絶対断るタイプでしょ」
彼方「むぅ……そういうデメリットを説明しないから、果林ちゃんはお付き合いできないんだよ」
果林「あら酷い」 果林さんからのアプローチをひらひらと躱す彼方ちゃんとそれにめげない果林さんによるかなかり好き かりかなはる三角関係いいぞ
かりはるは結託してそうだが 果林「行き遅れになるまで囲っておいて、ほっぽり出すなんて彼方ってば罪な女ね」
彼方「囲われてた方が悪いんだよ〜」
果林「ほら、やっぱり刺される」
ググッ
彼方「あっ」ビクッ
ググ.....
グイ......
彼方「痛っ……背中っ」
グリグリグリ
彼方「いたっ……いたたたたたたたたたっ!」
果林「罪には罰が与えられるのよっ!」
グリグリグリ
彼方「やっ……痛っ……痛いっ、ホック外れちゃう!」
果林「……」
....スッ
――プツッ
彼方「なんで外すの!?」
果林「大丈夫よ。屋外だから」
グィッ
彼方「果林ちゃ……果林ちゃん!?」 ――――――
―――
遥「……ねぇ、お姉ちゃん」
彼方「ん〜?」
遥「お姉ちゃんはさ、自分が温泉に行くのと、お母さんが温泉に行くの。どっちを優先する?」
彼方「なぁに〜その質問」
彼方「心理テスト〜?」
遥「ううん、ただの質問」
彼方「そうだねぇ……彼方ちゃんなら、お母さんに温泉に行って貰うかなぁ」
彼方「いつも頑張ってお仕事してくれてるから」
彼方「その疲れを癒してくれたらいいな〜って」
遥「……でも、お母さんはお仕事があるし、予定があるし」
遥「早番も遅番も分からないから、温泉に行って貰うのは難しいと思う」
彼方「遥ちゃん、狡いなぁ……」
遥「えへへ」 遥「私からしたら、お姉ちゃんもお母さんもすっごく頑張ってる」
遥「……毎日お仕事に言ってるから、お母さんの方が頑張ってるかもしれない」
遥「けど、お姉ちゃんだってお仕事、お勉強、部活、おうちのこと……たくさん頑張ってるよ」
彼方「頑張りすぎてる。かなぁ?」
遥「……前よりは、私に手伝わせてくれてるけど」
彼方「もしかして、だからアルバイトしたいって言ったの?」
彼方「それで、私のアルバイトの負担を減らそう。みたいな」
遥「ううん、違うよ」
遥「あっ」
遥「減らせたらいいなって思ってはいるけど、今回は違うの」
遥「だって、1週間に3回くらいあれば良い程度じゃ、そんなにお金は稼げないと思うし」
遥「とにかく、まだまだお姉ちゃんは頑張ってるって、私は思う」 彼方(もしかして、一緒に温泉行こう……みたいな?)
彼方(遥ちゃんと一緒に行きたいって言うと思ってたのかな……)
彼方(だったら少し、悪いことしちゃったかも……)
彼方「はるk――」
遥「だから、いつもよりちょっといい入浴剤を果林さんがくれたの!」
彼方「果林ちゃんっ」
遥「えっ?」
彼方「あはは……なんでもないよ〜」
遥「そう? 果林さんがね、疲れが取れるし、気持ちいいからって入浴剤を分けてくれたんだ」
遥「肌もすべすべになるって」
彼方「遥ちゃん、温泉の話は……えっと、何だったの?」
遥「あれは、お姉ちゃんも疲れてるんだよってことで……」
遥「あっ、温泉……お姉ちゃん行きたかったり?」
彼方「そういうわけじゃ、ないけど」
彼方(ちょっと残念)
遥「そっか……ごめんね。変な期待させちゃって」
彼方「ううん。入浴剤も嬉しいよ〜」
彼方「明日にでも、果林ちゃんにお礼しなきゃ」 遥「……」
遥「じゃぁ、そうだ。ねぇ、今日は一緒にお風呂入ろうよ」
彼方「ん〜……」
遥「だめ?」
彼方「遥ちゃんと一緒に入ると、倍の時間かかるからなぁ」
遥「それはそうだけど、考えてみて」
遥「いつも、平均すると私とお姉ちゃんでそれぞれ30分くらいでしょ?」
彼方「そうだねぇ」
遥「だから、30分と30分で合わせて1時間かかるのは普通だよ?」
彼方「そっかぁ」
彼方「ん〜……そうかなぁ?」
遥「なら、洗いっこしようよ。ねっ? それならいいでしょ?」
彼方「仕方がないなぁ〜今日だけだよ〜?」
遥「やった〜」
遥「お姉ちゃん大好きっ」ギュッ この彼方ちゃんほぼ毎日果林ちゃんと学校内でこっそりヤってそう ――――――
―――
彼方「果林ちゃん、ありがと〜」
果林「えっ? なに、急に」
彼方「入浴剤、遥ちゃんに分けてくれたんでしょ〜?」
彼方「あれ、使ってみたけどすっごくよかった〜」
彼方「香りもそうだけど、上がった後に見違えるくらいにすべすべお肌だったよ〜」
果林「入浴……あ、あぁ、そう」
果林「喜んでもらえたならよかったわ」
果林「けど、急にありがとうなんていうから驚いたじゃない」
果林「明日から転向とか言われるのかと思ったわ」
彼方「え〜……しないよ〜」
果林「わからないじゃない」
果林「ドラマでよく聞いたわ。夜逃げとか」
彼方「近江家は夜逃げするような状態じゃないよ〜」
彼方「大丈夫、果林ちゃんのお財布を盗むほどじゃない……」
.....スッ
果林「こらこら」 果林「……まぁ、私のお財布なんて大したお金入ってないわよ」
彼方「そうなの?」
スッ
果林「ほら、千円札数枚くらいでしょ?」
彼方「……彼方ちゃんのお財布の中身と勝負したいのかな?」
彼方「良いよ〜見せてあげるよ〜」
果林「ちょ、ちょっと」
サッ
彼方「……果林ちゃんの半分くらい」
彼方「ジャンプした方が良い?」
果林「カツアゲじゃないんだから……」
果林「飲み物分けてあげる」
彼方「ありがと〜」
彼方「ゴクゴク....」
彼方「あ、お財布の中身は少ないけど電子マネーにはちゃんとチャージしてあるよ?」
果林「だろうと思った」 果林「そうだ。彼方って、土日にバイト入れることもあるわよね?」
彼方「ん〜……時々」
彼方「土日一回も入れませ~ん。だと、なんというか、色々ねぇ」
果林「でも、事前に言っておけば臨時で呼ばれたりもしないわよね?」
彼方「うん」
果林「そしたら、来月の……ここ」
果林「この週の土日空けて貰えないかしら」
彼方「えっと……」
彼方「良いけど、何かあるの?」
果林「……土日空けてって言ったら、デート以外にあると思う?」
彼方「デート? え、果林ちゃんが? 誰と?」
果林「大人げもなく泣くわよ」
彼方「ごめんごめん」
彼方「わかった、空けておくね〜」
果林「約束だからね」 彼方「その代わり、果林ちゃんもちゃんと予定空けておいてね?」
彼方「先々月の、第三金曜日、彼方ちゃんは丑の刻参りが脳裏をよぎったんだから」
果林「わ、分かってるわよ……」
果林「あれは、ほんと、ごめんなさい」
果林「弁解の余地もないわ」
彼方「……藁人形は用意したからね。次は五寸釘を用意します」
果林「あ、彼方の顔も三度までなのね」
彼方「嬉しい?」
果林「怖いわよ」
ナデナデ
果林「でも、なんだかんだ許してくれるでしょ」
彼方「遥ちゃんは許すけど、果林ちゃんは許さないよ〜」プイッ
果林「……」
――チュッ
彼方「っ」ビクッ
彼方「果林ちゃんっ?」
果林「……なぁに? 頬にキス、して欲しかったんでしょう?」
グイッ
彼方「待っ……釘、釘用意しちゃ――……」
果林「ふふっ」 ――――――
―――
彼方「えっ?」
遥「来月のこの日、空けて貰えないかなって」
彼方「えっと、その日は……」
彼方「ちょうど、予定があるって言うか……」
遥「え、でも、バイトはなかったよね?」
遥「この週は、確か部活もお休みだって話になってなかったっけ」
遥「……え」
遥「あれ? 私の勘違い?」
彼方「遥ちゃん、怖い怖い」
遥「えへへっ、迫力あった?」
彼方「あったあった」
彼方「……」
彼方「それはそうと、本当にその日は予定があって……果林ちゃんと」
遥「そっか」
遥「……」
遥「私よりも果林さんの方が大事なんだね……良いよ。別に、その程度だったんだね」フイッ
彼方「遥ちゃん?」
遥「実家に帰りたい」
彼方「もう帰ってるよ〜」ナデナデ 彼方「どうしたの〜?」
彼方「急に、独占欲発揮しちゃって」
遥「いつもならいいよ〜って言ってくれるのに、その日は予定があるなんて言うからだよ」
遥「……果林さんには、やっぱり予定があって無理だって言うこともできるのに」
彼方「そんなことするお姉ちゃんだったら、遥ちゃんもこんな距離近くなかったでしょ」
遥「そうだけど」
遥「でも、私のために融通を利かせてくれたことに、ドキドキしちゃうかも」
彼方「なぁに言ってるのかな〜」ムニムニ
遥「ふへへ……」
彼方「遥ちゃん、その日しか駄目なの?」
遥「う〜ん……」
遥「尾根ちゃん、果林さんと用事があるんだよね?」
彼方「うん」
遥「……」
遥「その日じゃないとやだ」
彼方「こらこら」 >>111
誤字修正
彼方「どうしたの〜?」
彼方「急に、独占欲発揮しちゃって」
遥「いつもならいいよ〜って言ってくれるのに、その日は予定があるなんて言うからだよ」
遥「……果林さんには、やっぱり予定があって無理だって言うこともできるのに」
彼方「そんなことするお姉ちゃんだったら、遥ちゃんもこんな距離近くなかったでしょ」
遥「そうだけど」
遥「でも、私のために融通を利かせてくれたことに、ドキドキしちゃうかも」
彼方「なぁに言ってるのかな〜」ムニムニ
遥「ふへへ……」
彼方「遥ちゃん、その日しか駄目なの?」
遥「う〜ん……」
遥「お姉ちゃん、果林さんと用事があるんだよね?」
彼方「うん」
遥「……」
遥「その日じゃないとやだ」
彼方「こらこら」 遥「……むぅ」
彼方「果林ちゃんが先約だよ?」
遥「でも、私が筆頭株主だよね?」
彼方「彼方ちゃんの筆頭株主はお母さんかな」
遥「……」
遥「……いじわる」プイッ
彼方「果林ちゃんと遥ちゃん」
彼方「どっちが大事なの〜って言われると、私はたぶん、迷いなく遥ちゃんだよって、答えちゃうと思う」
彼方「ずっと一緒だったし、私の妹だし、可愛いし」
彼方「果林ちゃんも可愛いところはあって、一緒に過ごした親友みたいなもので、大切だけど、でも、遥ちゃんにとって変えられるかって話は別になる」
....サワサワ
彼方「だから、大丈夫」
彼方「体は果林ちゃんのものになっても、心は遥ちゃんのものだよ」
遥「ちっともよくないよっ!」
遥「……もうっ」
遥「変なこと言わないで」 遥「どこにお出かけするとか、決めてるの?」
彼方「ううん。全然」
彼方「ただ、この日は空けておいて〜ってお願いされただけだから」
彼方「だから、もし何か、予定が変わったり」
彼方「早めに済むことだったら、そのあと遥ちゃんとデートできるよ?」
遥「……へぇ」
彼方「なぁに?」
遥「舌の根も乾かないうちに、私とするんだ」
彼方「……」
スッ
彼方「どこで覚えてきたの? そんな言い方」
遥「ネットで調べた、本で読んだ、友達から聞いた……ほかの人にされたことがある」
遥「どれだと思う?」
彼方「ん〜……最後のだったら、彼方ちゃんは世界を許さないかな」
.....ぎゅ〜
遥「正解は……お姉ちゃんをドキッとさせたくて考えた」ボソッ
彼方「そのまま心停止するから止めてね〜」
サワサワ
ギシッ
キシッ
遥「えへへっ、お姉ちゃんもね」 遥「お姉ちゃん……というか、虹ヶ咲の3年生は卒業ライブみたいなことってするの?」
彼方「あ〜……」
彼方「まるで考えたことなかった」
遥「えーっ」
遥「東雲だと卒業生のライブがあるみたいで、応援してくれた学校のみんなにって……体育館でやるみたい」
彼方「外に披露しないの〜?」
遥「それは別でやるんだって」
遥「だから、お姉ちゃんもやるのかなって思ったんだけど」
彼方「ん〜話してみようかな」
彼方「3年生、東雲は2人だっけ? 2人だけでやるの?」
遥「ううん、その二人を中心としたライブやるみたいだよ」
遥「2人組ユニットも悪くないと思うけどね。姉ちゃんは、3人でやってみるのはどう?」
彼方「ん〜……そうだねぇ」 ――――――
―――
果林「なぁるほど。それであんなこと言いだしたのね」
彼方「えへへ〜」
果林「彼方がそんなアイディア出せるわけないわよね。安心した」
彼方「もぅっ」
グリグリグリッ
果林「いっっった!?」
果林「わき腹抉らないでっ!」ペシッ
彼方「彼方ちゃんを何だと思ってるの〜?」
果林「っ……」スリスリ
果林「悪い男に捕まりそうな女の人」
グリッ
果林「ひにゃっ!?」
彼方「それはさすがに酷いよ〜」
果林「わ、悪かったわ……」 彼方「果林ちゃんこそどうなの?」
彼方「この前は興味ないって言ってたけど、接点なくて頃っと騙されちゃうんじゃないかな?」
果林「ん〜……言われてみると、そこまではっきりとした接点はないのよね」
果林「こっちに来る前は、同年代が多かったかって言われるとそうでもなかったし」
果林「どちらかというと、お父さんお爺ちゃん世代って感じで」
果林「モデルのアルバイトしてても、やっぱり、お兄さん世代だから」
彼方「果林ちゃんはもし付き合うとしたら、年上? 年下? 同い年?」
果林「そうねぇ」
果林「……」
果林「やっぱり、同い年……いや、少し上、かしら」
果林「地元基準になっちゃうけれど、子供っぽくて」
彼方「そっかぁ……」
彼方「彼方ちゃんも、同じか少し上が良いかなぁ」
彼方「バイトしてても、きびきびお仕事してる人、格好いいなぁって思ったりするし」
果林「へぇ……」 果林「彼方ってば、そう……バイト先に好きな人がいるのね」
彼方「好きか嫌いかで言われればね〜」
彼方「お付き合いしたいかどうかはまた別の話だよ〜」
彼方「だって、それはそれ。これはこれだから」
彼方「……」
彼方「遥ちゃん、撮影の時に声かけられたりしてない?」
果林「まぁ、されてるわね」
彼方「え゛っ゛」
果林「……すごい声ね」
果林「……」
果林「男の人ってだけじゃなくて、女の人からも」
果林「遥ちゃん、東雲学院のセンターも任されてる新進気鋭のスクールアイドルだから」
果林「スクールアイドルってどういうものなのかとか、かなり話されてるの」 視聴率稼ぎたく犯人の正体をなかなか出さず逆に視聴率下げて打ち切りになるアメリカのドラマみたいだな 彼方「そっかぁ……」
果林「ふふっ、嬉しそうね」
彼方「それはそうだよ」
彼方「妹を褒められて嬉しくないお姉ちゃんなんてお姉ちゃんじゃないよ」
果林「……それは、どうかしらね」
果林「中には、それに嫉妬する人もいると思うわ」
果林「彼方だってスクールアイドルでしょう?」
果林「自分よりも優秀な妹……焦ったり、不快に感じたりしない?」
彼方「私は、遥ちゃんがどれだけ優秀になっても嬉しいだけだよ〜」
彼方「彼方ちゃんなんて置いて、ぐんぐん成長して欲しいって、思ってる」
彼方「……」
彼方「んー……」
彼方「でも……嫉妬とかはしないけど、焦ったりは、しちゃうのかなぁ」
彼方「もう、彼方ちゃんは要らないのかなって」 果林「遥ちゃんはそんなこと言わないと思うけど」
果林「むしろ、遥ちゃんが彼方に負けないように焦ってる……かもね」
果林「愛想つかされちゃうんじゃないかって」
果林「だから……」
彼方「そんなことは、きっと、一生ないけどねぇ」
彼方「……ん」
彼方「ないない」
彼方「逆に彼方ちゃんが愛想つかされちゃうかも、果林ちゃんのせいで」
果林「なんでまた」
彼方「ほら、昨日空けて置いてって言われた日」
彼方「遥ちゃんも予定空けて置いてって言ってたから……」
彼方「果林ちゃんの先約があるからごめんねって断っちゃった」
果林「……あぁ、なるほど」
果林「まぁ、大丈夫よ。気にしなくても」
果林「私のために空けておいてさえくれればね」 彼方「予定空けておくのは良いけど……何をするの?」
果林「デートよ。デート」
果林「せっかくだから、少し遠出したくない?」
彼方「遠出?」
果林「ええ。温泉行きましょ。温泉」
彼方「なんでまた、温泉?」
果林「入浴剤で思い出したのだけど、美容に良い温泉に入れる旅館があるの」
彼方「え、待って……それは」
果林「大丈夫。ね? 1泊くらい、したって怒られないでしょ?」
彼方「怒られはしないけど、でも、未成年2人だよ?」
果林「平気よ。大丈夫、そこはちゃんと手をまわすから」
彼方「……なんか、怖いけど」
果林「別に怪しいことはしてないわ」
果林「でも、彼方も一応、お母さんに話は通しておいてね」
彼方「う、うん……」 ――――――
―――
彼方「あれ? 遥ちゃんも一緒に出るの?」
遥「ん〜」
遥「お姉ちゃんは、果林さんが迎えに来てくれるとかじゃないの?」
彼方「……果林ちゃんが迎えに来るのは難しいかなぁ」
遥「あははっ、そうだよね」
遥「……」
遥「1泊だっけ」
彼方「うん……」
彼方「遥ちゃんは……」チラッ
彼方「遥ちゃんも、なんだか荷物多いねぇ」
彼方「合宿だっけ」
彼方「この前話してた、3年生のライブの練習?」
遥「えへへっ」
彼方「?」 .....スタスタ
彼方「遥ちゃん、モデルのアルバイトはいつまで続けるの?」
遥「需要がなくなるまで?」
彼方「生涯現役だねぇ」
遥「えへへ……今は、東雲のスクールアイドルとしての人気もあって、活用して貰えてるけど」
遥「来年はどうなるか分からないし、長くても今年いっぱいかなって思ってる」
彼方「……果林ちゃんみたいにモデルをしっかりやってみようとか、思ってたりしないの?」
遥「果林さんに比べると、モデルをやるには体系がちょっと」
彼方「じゃぁ、アイドル」
遥「養成所とか、すっごいお金かかるから」
彼方「……そっか」
遥「だけど、スクールアイドルから芸能界に入る人もいないわけじゃないんだって」
遥「……だから、ちょっとだけ、なれたらいいなって、思ってたり」フイッ
彼方「そっかぁ〜」
.....スタスタ
果林「……来たわね」
果林「おはよう。彼方、遥ちゃん」
彼方「おはよ〜」
遥「おはようございます」 彼方「遥ちゃんはどこで集合なの?」
彼方「東雲学院? 現地集合? 駅?」
遥「えへへ」
彼方「遥ちゃん?」
彼方「……?」チラッ
果林「ふふっ」
果林「遥ちゃんも一緒に行くのよ。旅行」
彼方「えっ!?」
遥「お母さんには、お姉ちゃんと一緒って言ってあるから大丈夫だよ?」
遥「……へへっ」
彼方「まさか……このためにアルバイトを始めたの?」
遥「うんっ」
遥「でも、それだけじゃないよ?」
遥「欲しいものがあったし……」
遥「思っていたよりも人気が出て稼げたから、お姉ちゃんを温泉に誘えたらいいなって思ったの」
遥「だから今日は、全力でおもてなしするからねっ」
果林「あ、私は帰った方が良いかしら」
彼方「うん」
果林「彼方!?」 SS荒らしの茸は無視して好きなように書いてくれ
読んでるから 彼方ちゃん即答で草
このはるかなかりの距離感めっちゃ好きだわ 彼方「……つい」フイッ
果林「ついって何よついって。失礼しちゃう」
果林「ったく……」
彼方「えへへ〜ごめんね〜」ギュッ
遥「ごめんなさ〜い」ギュッ
果林「……」
果林「両手が遥か彼方だわ……」
彼方「両手に花だよ〜?」
遥「花束だね〜」
果林「もう……」
果林「しかたがないわね。許してあげる」
彼方「やった〜」
彼方「……」
彼方「そういえば、人によっては太っ腹だねって言うと怒るけど、果林ちゃんも言われたくない?」
果林「なんなの突然、そんなことで怒らないわよ」
彼方「そっか〜」
彼方「……知らない方が、幸せだよね」
果林「体重は毎日量ってるんだから、騙されないわよ」 果林「えぇっと……」
果林「ここで、乗り換えするから」
果林「……遅延とかがなければ、問題なく電車間に合うわね」
彼方「着くのお昼前だけど、お昼どうする?」
彼方「遥ちゃん居るなら、お弁当作ってきたのに」
果林「私にふるまってくれる気はないの?」
彼方「え〜」
彼方「だって、果林ちゃんのプロポーション管理できる自信ないもん」
彼方「……ちょっと、輪郭太めにしちゃっていいの〜?」
果林「それは困るけど、遥ちゃんだって標準というか、プロポーションは良いじゃない」
果林「それを維持してるのが彼方でしょ?」
遥「そうですよっ」
遥「お姉ちゃん、毎日いろいろ考えてご飯作ってくれて……」
遥「栄養一番でも、とっても美味しいんです」
果林「……ますます、食べてみたくなるわね。愛妻弁当」
彼方「え? 野菜弁当?」
果林「……野菜も大事よ。野菜もね」 彼方「でも、まさか3人で旅行に行くことになるとは思ってなかったよ〜」
彼方「遥ちゃんも、言ってくれたらよかったのに」
遥「えへへっ、びっくりさせたくて」
果林「本当は、近場のホテルでもいいかもって思っていたんだけど」
果林「せっかくならちゃんとお出かけしたいって、遥ちゃんが」
遥「モデルのアルバイトしてた時にね、こういうところが良いんだよ〜みたいなお話とかいろいろ聞けたし」
遥「お姉ちゃんにも、たまにはゆっくりして貰いたいなって思ったの」
彼方「そっかぁ」
彼方「お母さんには、本当に言ってあるんだよね?」
遥「うんっ」
彼方「……ところで、果林ちゃんは、エマちゃんには言ってあるの?」
果林「エマはお母さんじゃないんだけど……」
果林「でも、言ってあるわ」
果林「土日は私、いないからって」 彼方「エマちゃんに、日ごろのお世話頼んでるの?」
果林「まさか」
果林「まぁ、多少……片づけを手伝って貰ったりはしてるわね」
果林「なんていうか、雑誌とかが増えて言いちゃうのよね」
遥「分かります」
遥「私も、始めたころに参考として古いのを貰えたりしたんですけど」
遥「気づいたら机の上に一杯だったりして」
彼方「遥ちゃん、果林ちゃんのそんなところまで学ばなくていいんだよ〜?」
果林「学ばせた覚えはないわよ……」
果林「そういえば、お母様……」
果林「……お義母様は何か言ってなかった?」
彼方「ううん……ん〜……いや」
彼方「思えば、何か、ほほえま〜って感じだった気がする」
彼方「遥ちゃんが話してたからだったんだ〜」
彼方「ちょっと……あることないこと考えちゃったよ〜」
遥「あることないこと?」
彼方「……新しい家族が増える。的な」
果林「あぁ……それは、ちょっと、悪かったわ。今度から事前に話すわね」
彼方「気にしてないよ〜」 まるで今まで荒らしてなかったかのような口ぶりはよせ ――――――
―――
彼方「とうちゃ〜く」
果林「疲れた?」
彼方「ううん、大丈夫〜」
彼方「果林ちゃんこそ、あんまり座らなかったけど平気なの?」
果林「大丈夫よ」
遥「ここまで20駅くらいだったから……特急とか、新幹線とかそういうのが乗れたらよかったんだけど」
彼方「新幹線まで使わなくても……」
果林「新幹線、あるにはあったのよね。ただ、2駅分しか乗らないし、そのくせ乗り換え一回増えるし」
遥「果林さんが途中で乗り換えミスするかもって言うから、乗り換えの少なさで選んだんだ」
果林「ちょっ……ちょっと、それは言わなくたっていいじゃない」フイッ
彼方「たとえ十字路だったって、道を間違ったりしないよ〜」ギュッ
果林「ふふっ、そうね。頼りにしてるわ」
果林「……」
果林「さっそくで悪いんだけど、改札……どこかしら」
遥「えぇっと……こっち、ですね。上の看板に書いてあるので」
遥「タクシー乗り場の案内表示もあるので、間違いないかと」 彼方「すぅ……はぁ……」
彼方「ん〜……駅から出ると、よりいっそう温泉の香りが……」
彼方「……」
彼方「いうほど、しないねぇ」
果林「まぁ、駅前はね」
遥「人、多いですね……タクシー乗れるかな」
彼方「駅前にもいろいろあるから、あとで戻ってきたいなぁ」
果林「そうねぇ」
彼方「果林ちゃん的に、温泉と言えばおまんじゅう? それとも玉子?」
果林「よく聞くのは、やっぱり玉子じゃないかしら。私も好きよ」
果林「ただ……人も日焼けするとあんな肌色になるって思うと、怖いわね」
彼方「日焼け止めがあれば大丈夫じゃないかな? あそこまでひどくはならないと思う」
彼方「あ、遥ちゃん待って」ギュッ
遥「わっ」
彼方「一人で動くと危ないよ。一緒にいこ」
遥「あ、うん。そうだね」
果林「……私の手を握らないなんて、迷子になっても知らないわよ」
彼方「果林ちゃんってば、嫉妬深いねぇ」ギュッ 彼方(3人で仲良くタクシー乗り場の並びに加わって、待つこと数分)
彼方(私たちの番が来て、タクシーの運転手さんに手伝ってもらいながら、荷物を積んで出発)
果林「この旅館まで、お願いします」
「了解しました。あ、後ろの方も、すみませんが、シートベルトの方お願いしますね」
彼方「は〜い」
遥「果林さんって、なんだか助手席にいる姿映えて見えるね」
彼方「確かに〜」
彼方「隣に座ってくれてるだけでワンランク上に見える」
果林「急に何言ってんのよ」
「いやいや、本当に素敵だと思いますよ」
果林「もうっ」
遥「果林さん、スタイル良くて大人びて見えるからかな」
彼方「生半可な気持ちじゃ付き合えない、高根の花だよねぇ」
遥「うんうん」
果林「ちょっとっ!」
果林「もうっ、後ろに乗ればよかった!」 「きをつけてね〜」
果林「ありがとうございました」
遥「ありがとうございましたっ」
彼方「ありがとうございました〜」
彼方「……」
彼方「運転手さん、果林ちゃんが隣で嬉しそうだったね〜」
遥「ね〜」
果林「部屋に行ったら覚えてなさいよ……」
彼方「褒めてるのに」
遥「果林さんなら、助手席でも運転席でも似合いそうな感じします」
果林「そうかしら?」
遥「はいっ」
遥「サングラスとかけて、オープンカーに乗ってるみたいな……」
果林「嬉しいけど、ちょっと複雑になる感じだわ」
彼方「胸元にサングラス差し込んでるイメージある」
果林「そういうのはエマの役目でしょ」 彼方「それにしても……すっごい、趣のある旅館なんだけど……」
果林「まぁそうね。それなりに良いところに泊まりたいって思ったから」
彼方「宿泊費用……」ガサッ
遥「大丈夫っ」
遥「お姉ちゃんの分は、私と果林さんで半分ずつってしてるから」
彼方「でもっ」
果林「大丈夫だから心配しないの」
果林「いつも、彼方に苦労欠けてるからお礼がしたいって遥ちゃんの気持ち、受け取ってあげないの?」
彼方「うぅ……」
彼方「う〜……」
彼方「……」チラッ
遥「お姉ちゃんだって、アルバイトの最初のお給料でお母さんにも、私にも、お礼だって良いことしてくれたでしょ?」
彼方「う、うん……」
遥「だから、ね?」
遥「いこっ」グイッ
彼方「うん……ありがとねぇ」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています