希 「ウチのビデオカメラ」
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穂乃果 『あれ? 希ちゃんまたカメラで撮ってるの?』
『ふふ、そうなんよ。でもあんまり気にしなくても大丈夫やで』
穂乃果 『いや流石に気になるよー。カメラで撮られたら少し緊張しちゃうし』
『もうでっかいライブだってしてるし、すっかりμ'sは有名人なんやから、こんなことで緊張なんかしないと思うけど……』
穂乃果 『うーん、それはそうなんだけど。ちょっと違うんだよね、希ちゃんに撮られるのって』
『ん? どういうこと?』 穂乃果 『なんていうか、希ちゃんに撮られてるときはアイドルとしてじゃなくて、素のままの穂乃果でいなくちゃなって。だけど、そのままの自分を見せるのはまた違った緊張があるわけで……』
『たしかにウチは素のままの穂乃果ちゃんを撮ろうとしてるけど、別にそんなに緊張しなくてもいいんよ。他の誰に見せるわけじゃないし』
穂乃果 『でも希ちゃんは見るんでしょ?』
『えっ』
穂乃果 『ならやっぱり緊張しちゃうなぁ……希ちゃんの気持ちが分かるからこそ』
『ウチの気持ち?』
穂乃果 『そう。希ちゃんの気持ち』 ポチッと押してみる。
海未 『穂乃果がそんなことを言ってたんですか……』
『そうなんよ。ウチの気持ちって言ってたけど、当の本人であるウチがさっぱり分からなくて……穂乃果ちゃんにはウチの気持ちが分かるんかなぁ』
海未 『まぁ得てして自分の気持ちなんてものは、自分よりも周りの人の方が理解しがちですから……そういうことでしょう。私もつくづく自分の気持ちを客観的に見れないなと思っています』
『海未ちゃんもそういうことがあるの?』 海未 『もちろんです。今は解決しましたが、穂乃果がスクールアイドルを始めたいと言ったときも、ことりが留学をすると言ったときも、私はいつだって迷っていました。自分の気持ちが分からなかったんです……ってなんで私にビデオカメラを向けているんですか!?///』
『それはもちろん後で見るためやけど』
海未 『け、消してください!!/// 流石に恥ずかしいです!!///』
『海未ちゃんには悪いけど、それはちょっと無理やね』
海未 『の、希!!』 ポチッと押してみる。
ことり 『その海未ちゃんが恥ずかしがってる映像……』
『分かっとるよ、後でことりちゃんに送っておくね』
ことり 『ふふ、ありがとう♪』
『それにしてもことりちゃんは、穂乃果ちゃんや海未ちゃんと違ってカメラを向けられても動じないんやね』
ことり 『うーん……動じなくはないけど、希ちゃんだからかな、安心しちゃうんだ』
『穂乃果ちゃんも似たようなことを言ってたなぁ……安心とは言ってなかったけど、ウチに撮られるのって他の人に撮られるのとは違う感覚なんだって言ってた』 ことり 『そうなんだ、ことりも穂乃果ちゃんの言ってること分かるよ♪』
『何が違うんやろ、やっぱり単純に知り合いに撮られてるから? あとアイドルとしてじゃなくて友達として撮られてるから?』
ことり 『それもそうだけど……多分、希ちゃんの気持ちかな』
『えっ、ウチの気持ち?』
ことり 『そう、希ちゃんの気持ち! それが分かってるから、撮られるときの気持ちも違うんだと思う』
『ウチの気持ちって、どういう気持ちのことを言っとるん? 後で映像を見せつけて、からかう気持ちとか?』
ことり 『うーん、どうだろ。自分の気持ちなんだし、もうちょっと悩んでみてもいいんじゃないかな?』 ポチッと押してみる。
凛 『凛を撮るよりかよちんを撮った方が需要があるんじゃないかにゃ?』
『そんなこと言わんといてよ、ウチにとっちゃ凛ちゃんはとっても可愛い後輩なんやから』
凛 『そこまで言われると照れるにゃ///』
『それにしても凛ちゃんは本当に花陽ちゃんのことが好きなんやね。もちろんウチも好きやけど、凛ちゃんには勝てそうにないなぁ』
凛 『好きって気持ちは別に勝負じゃないよ。かといって希ちゃんにかよちんを譲る気はないけどね!!』
『ふふ、強気やね』 凛 『凛はかよちんのためなら何でもできるにゃ!!』
『そこまで言ってくれたら花陽ちゃんも嬉しいやろうなぁ……うん、その意気や!』
凛 『そういえばその映像って他の人に見せるの?』
『えっ、えっと今のところ見せるつもりはないかな』
凛 『ふーん……じゃあ希ちゃんはとっても律儀なんだね』
『律儀?』
凛 『だってさ……あっ! かよちんだ!! おーい、かよちーーん!!』 ポチッと押してみる。
花陽 『ぴゃぁぁ! は、恥ずかしいです///』
『気持ちは分かるけど、これはアイドルの登竜門やから耐えるしかないんよ』
花陽 『ええっ!? で、でも』
『って花陽ちゃん……恥ずかしがりつつ、おにぎり片手に持ってるけど』
花陽 『あっ、これは少し小腹が減っちゃって///』
『花陽ちゃんは本当に美味しそうに食べるから、見ててすごく和むんよ。まぁ前のダイエットの時みたいなことになるのは困るんやけど』 花陽 『そ、そこは適度な食事と運動をしているので大丈夫です!!』
『なら大丈夫やね』
花陽 『あっ、そういえばひとつ希ちゃんに対して思ってたことがあって、この際だから聞いてもいいですか?』
『ん? もちろん! どんな質問でもこのスピリチュアル希ちゃんが答えてあげるで!!』
花陽 『あの、希ちゃんは……って凛ちゃん!? 急に腕を引っ張ってどうしたの!? ええっ!? アルパカが逃げちゃったのぉ!?』
『ええっ、大変やん!』
花陽 『ごめんなさい希ちゃん。少しこの場を離れますね、質問はまた後日にします』 ポチッと押してみる。
真姫 『……』
『……』
真姫 『……言っておくけど、私は本を読んでるだけで、面白いことなんか起きないわよ?』
『知っとるよ』
真姫 『ならなんでカメラを回すのよ……』
『別に映像って面白いから撮るってものだけじゃないと思うんよ。何気ない日常を撮ったりもいいなぁって』 真姫 『そう……』
『うん』
真姫 『……』
『……』
真姫 『希って寂しがり屋よね』
『えっ?』
真姫 『……花陽の質問したいことも、凛の発言の意味も、なんとなく分かったわ』
『本当? ウチは全然分からなかったんやけど、良ければ教えてくれん?』
真姫 『悪いけど教えないわよ。だってあなたの気持ちなんだから』 ポチッと押してみる。
にこ 『それでにこに聞きに来たってわけね……まぁでも、あの鈍感な真姫ですら分かったことが分からないなんて、やっぱり自分のことになると盲目になるのね』
『その感じだと、にこっちも分かってる感じ?』
にこ 『まぁね。ていうか自分の行動を見つめ直してみなさいよ。バレバレよ』
『ええっ……そんなにバレバレなん?』
にこ 『超バレバレよ!! あんたは心が読めてるのかってくらい人の気持ちが分かるのに、本当に自分の気持ちには気づかないのね』
『うーん。そこまで言われるとやっぱりどうしても知りたいなぁ。にこっちは分かってるんやろ? なら教えてよ!』 にこ 『うんとまぁ、ヒントくらいはあげるわよ。まず凛の発言……律儀って意味だけど。それはそうよ、だってその映像、希以外には見せる気ないんでしょ?』
『うん、そのつもりやけど』
にこ 『つまり後での自分の観賞用ってことでしょ? たしかに思い出を残すためにビデオを回すことはよくあるわね……でも旅行とかならまだしも、それを習慣的にやってる人はなかなかいないんじゃないかしら? それが律儀なんじゃないの?』
『言われてみるとそうやねぇ……』
にこ 『ってこれヒントじゃなくて答えね……。まぁ花陽の質問の方は希自身で答えを出してみなさい……もしくはあいつに教えてもらいなさい、応援してるから』
『あ、ありがとう……?』
にこ 『なんでそこで疑問系なのよ……照れてるの?』 ポチッと押してみる。
絵里 『あっ、希』
『あっ、えりち!』
絵里 『それまたビデオカメラ?』
『うん、そう!』
絵里 『μ'sとしての活動も結構長いから……映像の数も相当あるんじゃないの?』
『まぁね、でも全部かけがえのない映像だから、消したりはしないかな』 絵里 『ふふ、希らしいわね。そういえばひとつ疑問なんだけど』
『えっ』
絵里 『ちょっとカメラ借りるわよ』
『と、取らないでよえりち!!』 『よし、これでよし』
希 『うぅ……///』
『前から疑問に思ってたけど、なんで希は自分は撮らないのよ。声しか映像に入らないじゃない』
希 『こ、この映像はウチしか見ないんやから、ウチが映ってたって恥ずかしいだけやん!!///』
『そんなこと言わないの。せっかくμ'sみんなの映像なんだから、希も映ってなくちゃダメじゃない』 希 『でもやっぱり恥ずかしいんよ///』
『それにしても本当に希は律儀ね。こんなにたくさん映像を撮ってるなんて……寂しがり屋なのね』
希 『えっ』
『だってそうでしょ? 自分が見返すためだけにこんなに映像を残しておくなんて……そんなに将来、みんなが離れていくのが怖い?』
希 『……』
『……』 希 『……そりゃあ怖いよ。だってウチはずっと転勤族で、友達という友達もいなかったんだから。μ'sほど大切な仲間はいない、そんなみんなと離れ離れになる未来なんて考えたくもないもん』
『……そう』
希 『……』
『……でもまぁ悩む必要はないわよ』
希 『えっ?』
『だってそのために、こんなにたくさん映像を撮ってるんでしょ? それにいくら時が経ったって、希の隣はやっぱり誰にも譲れないし』 希 『えりち……』
『それにμ'sのみんなだって、さよならするわけじゃない。卒業したって、少し離れたって、またいつでも会えるわよ。そんな脆い絆なんかじゃないでしょ?』
希 『うん……』
『穂乃果が希の気持ちがどうのこうのって言ってたけど……今話してみて私もようやく分かったわ』
希 『ウチの気持ち?』
『そう。こんな仲間との思い出を一生懸命残そうとしてる希の気持ち……それを知っちゃったら、どんな些細な瞬間の映像でも、なるべく素のままでいようと気を張っちゃうわよね』
希 『……嫌?』
『ふふ、逆よ。そこまで私たちを想ってくれてありがとう、希。これからもよろしくね』 そして映像は止まる。
また別の映像も見ようと再生ボタンをポチッと押してみようとするが……。
絵里 「ちょっと」
希 「……なんで腕抑えるん? 再生ボタン押せないんやけど」
絵里 「流石にこれ以上は恥ずかしいというか何というか……」
希 「ふふ、えりちは変わらんなぁ」
絵里 「それは希もでしょ」 希 「まぁね。でも変わったところもあるよ、ビデオカメラを持ち歩かなくなった」
絵里 「そういえばそうね」
希 「こうして卒業してから時が経っても、えりちはもちろん、μ'sのみんなにも度々会えるし……なんていうか不安とかが無くなったのかな。映像を残さなくても大丈夫になったんよ」
絵里 「まぁ残すのに必死になる希も健気で可愛かったけど、やっぱり」
希 「後に残すのに必死で、今を楽しめないのは損やからね」
絵里 「……これからもよろしく、希」
希 「……こちらこそ」
おわり ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています