しずく「『あなたの理想のヒロイン』」
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音楽科に転科した侑さんは、私たち同好会のメンバーそれぞれに曲を作っていた。
璃奈さんやかすみさん、何人かに曲を渡したあと、私にもその順番が来た。
しずく「あなたの理想のヒロイン、ですか……良い曲ですね」
侑「うん、作詞ってどうしたらいいのかまだわからなくて当て書き?みたいに書いてるんだけど……どうかな?」
しずく「とても素敵な歌詞だと思います。……侑さんには私がこんな風に見えているんですね」
侑「どっちかというとこんな風に歌っているしずくちゃんが見たい!っていうイメージで作ったけど……そうなのかも」
正直、私は同好会の中でも侑さんとはあまり関りがないほうなので、当て書きだとしても難しい作詞だったと思う。もちろん、侑さんは同好会みんなのためにいつも頑張っていてその中で比べると、という前提だけど。 しずく「そう思ってもらえて嬉しいですが…この曲を表現するのは少し難しいかもしれません」
侑「えぇっ?どこか分かりにくかったりしたかな……」
しずく「いえ、これは私の問題で……その、私……」
恥ずかしくて、少し言いよどんでしまう。
しずく「まだ、誰かを好きになったことがなくて……」
しずく「それで、恋をしている女の子の気持ちを想像して表現するのは少し難しそうだな、と思いまして」 侑「……そっかぁ」
しずく「すみません、私のために作っていただいた曲なんだと思うと、曲に込められた想いを全て表現したくて……そうすると恋をしたことがないのは、問題ですね」
侑「問題って……何事にも真剣なのはしずくちゃんのいいところだけどそこまで思わなくて大丈夫だよ」
しずく「私がこの曲を良いものにしたいんです!だから何か参考にしたり……あ」
侑「?」
しずく「侑さんは恋をしたこと、ありますか?」
侑「!!?!?///」ガタッ
しずく「……あるんですね」
わかりやすい。侑さん表情豊かで面白いなぁ。 そのクソきもい猛虎弁のノリやめろ
巣でやれ棲み分けろカス 侑と全く接点ないのにあなたと混ぜてるとか
早速しずく狂ってて草 侑「まぁ……ある、よ」
しずく「さっきの反応的に今も好きな人いるんじゃないですか?教えてほしいです」
侑「お、教えるの!?参考に話すのはまだいいけど誰が好きなのか教える必要なくない!?」
しずく「でもこの曲の女の子は先輩の理想のヒロインになろうとしてるんですよね?この詞を書いた侑さんにとっての理想のヒロインが知れれば参考になると思うんです」
侑「わかるような……わからないような…」
参考にしたいという気持ちもあるけど、単純に侑さんが誰を好きなのかは興味がある。恋愛をしたことはないけどこういう話を聞くのは面白いし、侑さんが恋をしているのは少し意外だったから。
しずく「この曲を作っている時は少なからず侑さん自身の恋愛を元にしているはずですし、侑さんがその人を好きになった理由も解れば、恋心の表現にも繋がると思います……どうでしょうか?」 私が絶対に引くつもりは無いと感じたのだろう。侑さんは唸って悩んで真っ赤になって、それから口を開いた。
侑「うぅ……内緒にしてよ……?」
しずく「はい!」
侑「…………歩夢だよ」
しずく「はい」
侑「薄くない???どういう反応なの?」
しずく「予想通りだな、って感じだったので……」
侑「そんなに分かりやすいかなぁ……えー、誰かにバレてたらどうしよう……」
しずく「大丈夫だと思いますけど……歩夢さんですか」
可愛らしくて、確かにヒロインという言葉はぴったりかもしれない。侑さんにとっては幼馴染なのだから尚更だろう。幼馴染という属性は強い。
侑「それであとは何が聞きたいの?歩夢のどこが好きかとか?」
少しやけになっている。今なら何を聞いても本当に答えてくれそう。
しずく「いえ、もう大丈夫ですよ。ありがとうございます」
侑「ちょっ…参考にするんじゃ」
しずく「参考にはしますよ、あとは歩夢さんにお願いしてみます」
侑「……え?」 歩夢「私を参考に?」
しずく「はい、詞を読んで思い浮かんだのが歩夢さんだったので、色々聞いてみたくて」
歩夢「えぇ…?う、嬉しいけど理想のヒロイン?そう言われてもよくわかんないよ……」
しずく「……」
侑さんには「絶対に私の名前は出さないでよ!」と言われたけど無理があると思う。
私は歩夢さんともあまり話したことがない。これは誰かと比べてじゃなく、実際にそうだ。
だから今二人でこうやって話していても、空気がぎこちない。
そんな後輩に理想のヒロインだと言われても、困って当然だ。
……じゃあ、こうしよう。 この時点ではしずくちゃんはまだ恋したことない、ということか ほらな?アニメ準拠にしようとすると絶対歩夢のせいでまともな侑カプができない しずく「歩夢さんのどこにヒロインらしさを感じたのかは自分でもわかりません。
ですが、一緒に過ごしてみることでそれがわかって、表現に繋がるのではないかと……いえ」
しずく「歩夢さん、私はもっと歩夢さんのことが知りたいんです。今回のことは
ただの口実……なのかもしれません」
歩夢「……!」
歩夢さんにヒロインらしさを感じているのは本当だし、理由としては自然なものになったはず。
歩夢さんのことを自分で知ってみて、どこに人を惹きつける魅力があるのか感じてこそ、
恋心の表現に活かせると思う。だから侑さんにその辺りのことは聞かなかった。
……少し語りたそうな顔をしていたけど。 侑ちゃんがあなたの理想のヒロイン書いてんのかよ
あなたちゃんじゃないのか 歩夢「そっか……私としずくちゃん、あんまりお話ししたことないもんね。
それなのに声をかけてくれてありがとう。ちょっと気を使わせちゃったかな?ごめんね」
しずく「大丈夫です。えっと、じゃあこのお話、ご協力お願いできますか?」
歩夢「うん!しずくちゃんの助けになれるといいな。よろしくね」
そう言って歩夢さんは柔らかく笑った。
この人のこんな笑顔を見たのは、たぶん初めてだった。 歩夢「それじゃあ、ごめんね」
侑「事情はしずくちゃんから聞いてたから大丈夫だよ……
私もしずくちゃんには納得いくように歌ってほしいからね」
歩夢さんが協力してくれることになって、つまり歩夢さんと私が今までより交流してみることになって、
今日は一緒に帰ることになった。
歩夢さんはバス通学、私は電車通学なので、一緒に行くのは歩夢さんの家の最寄り駅まで。
そうなると侑さんと三人で帰るはずだけど___ __
歩夢「侑ちゃんといると私、たぶん侑ちゃんとばっかり話しちゃうと思うんだ。
だから今日は侑ちゃんには悪いけど二人で帰らない?」
__
こう言ってもらえたことで、二人で帰ることになった。
思ったより積極的に協力してくれるつもりらしい。
距離感を掴みかねている後輩と二人で帰る提案なんて、なかなか出来ることじゃないと思う。
歩夢さん、優しいな。
好きな人との時間を奪われた侑さんからは当然、大丈夫ではなさそうな視線が向けられている。
いや「当然」なのかな?侑さんちょっと独占欲強くない?
恋愛のことはやっぱりまだわからない。 しずく「ありがとうございます侑さん。じゃあ歩夢さん……」
歩夢「うん、またあとでね侑ちゃん」
そうか。二人は家が隣同士だから家に帰っても話したり会ったりできるのか。
こんなことでも、二人の仲の良さや関係に改めて気づかされる。
私、本当に歩夢さんのこと知らないんだな……
今回のことはただの口実。
半分以上口から出まかせで出た言葉は、結構その通りだったのかもしれない。 いつものゆうしずSSに現れるキチガイ荒らしは無視で頑張ってくれ! 虹ヶ咲から歩夢さんの家までは歩いて30分程度。
そんなに長くはない時間だけど、
普段話し慣れていない人と喋りながら過ごすには、なかなか長いと感じる時間だ。
歩夢「しずくちゃんは電車通学なんだよね。どの辺りから通ってきてるの?」
しずく「はい、鎌倉から通ってきているので、同好会の中では一番遠いと思います」
歩夢「そんなに遠くから通ってきてるんだ!?
うわぁ……演劇部との掛け持ちだけでも大変そうなのに、しずくちゃんはすごいね」
しずく「演劇もスクールアイドルも好きでやっていることですから。
確かに大変ではありますけど、毎日とっても楽しいですよ」
歩夢「そっか……でも、今回みたいに何か困ったことがあればいつでも頼っていいからね。私、一応先輩なんだから」
しずく「ふふっ……はい、お願いします」 しずく「……なんか歩夢さん、変わりましたよね。
最近というか、スクールアイドルフェスティバルの頃辺りから」
歩夢「あ……そうかな?」
しずく「はい、その頃はあんまり関りがなかったので違うかもしれませんが……
以前の歩夢さんなら、頼ってほしいなんて言わなかったと思います」
歩夢「うぅ……私ってそんなに頼りなく見えてたのかな……」
歩夢さんがしゅんとする。
いつだったか、歩夢は表情がコロコロ変わって見ていて飽きないところが可愛い、
というようなことを侑さんが言っていた気がする。
確かにこういうところは可愛いかも。 歩夢「私がスクールアイドルに本気で向き合えたのって、その頃だったから。
……しずくちゃんにもわかっちゃうくらい変われてたなら、嬉しいかも」
しずく「私も、今の歩夢さんの方が良いと思います」
歩夢「ふふ、ありがとう」
ふわりと微笑む歩夢さん。うん、可愛い。
こういう柔らかな雰囲気がヒロインっぽいのかも。歌の中の「私」が目指すヒロイン像もこんな感じかな。
やっぱり歩夢さんと自分で接してみるという方法は正解だったみたいだ。 歩夢「スクールアイドルに出会うまでは毎日侑ちゃんとなんとなく過ごしていて、そんな時間も好きだったけど、どこかちょっぴり物足りなくて……
今、やっと真剣に出来ることが見つかって私も毎日楽しいんだ」
歩夢「こうやって真剣になれているのは、侑ちゃんや応援してくれるファンのみんなのおかげもあるけど……
同じくらい、ううん、私よりももっともっと頑張ってる同好会のみんながいるからなの。
私ももっと頑張らなきゃって思えて、いつも励まされてる。……だからしずくちゃん、ありがとう」
しずく「……!あ、ありがとう…ございます……」
不意打ちだ。照れくさくて何と返したらいいのかわからない。
私が会話を繋げなかったので歩夢さんも困っているみたいだ。
こ、この空気恥ずかしい……。こういう時、人と本心で接することを避けてきた自分を少し恨む。
うぅ、助けてかすみさん。 歩夢「……あ、あれが家から一番近い駅だよ。線はニジガク前の駅と同じだから、大丈夫だよね?」
しずく「!は、はい大丈夫です」
もうそんなに経っていたのか。30分も話せるのか不安だったけど、思ったより上手く話せたみたいで良かった。
……最後の間は仕方ない。
歩夢「じゃあしずくちゃん、また明日同好会で」
しずく「はい、お疲れ様でした。また明日」
駅の入り口で歩夢さんと別れる。
また明日。
まだ歩夢さんが見えなくなってもいないのに、歩夢さんと明日話すのが、今から待ち遠しくなっている自分がいる。
こちらを振り返らずに歩いていく歩夢さんの後ろ姿から、私はしばらく目が離せずにいた。 一旦ここまで
今日寝るまでにもう一回来ると思います ゆうしずじゃなくてあゆしずの可能性も
あるいは両方か 勝手に侑への片想いだと思ってたけどこれ歩夢のほうか 前どっかで話考えてるって言ってた人かな頑張れ あなたの理想のヒロインってあなたがしずく本人に対してこうなってほしいという意味で作詞してなければ歩夢なんだよな ビジュアルだけだと二人ともギャルゲの正ヒロインのお約束だな 翌日。
今日は三年生が学年全体で進路に関する集会があるとかで一、二年生だけの活動になって、
同好会を少し早く切り上げることになった。
というのも。
かすみ「しず子ぉ〜〜〜〜助けてよ〜〜〜〜」
せつ菜「いいえかすみさん!今回という今回は私が教えます!」
かすみ「なんでですかぁ!勉強だったら同じ一年生のしず子かりな子に助けてもらいますから!」
せつ菜「……いいんですか?あの先生、再試でも落ちたら一週間毎日土日も補習を組んできますよ?
試験問題の傾向を知っているのは、璃奈さんやしずくさんより、同じ普通科の二年生である私だと思いませんか?」
かすみ「うぐっ……」 かすみさんが明日小テストの再試験なのを隠していて。
このままではとても再試をパス出来ないかすみさんのためにせつ菜さんが勉強を見ると言い出し、
半数が今日は休みということでなんとなく解散になったのだ。
しずく「時間……結構早く終わっちゃいましたね」
今日は同好会の活動の予定だったので、演劇部の方には休むと伝えてある。
今から顔を出してもいいけれど……
歩夢「そうだね……」
侑「じゃあ歩夢、久しぶりにお台場寄って帰らない?珍しく今日は課題もなくてさ、私もちょうど暇なんだよね」
歩夢「……ううん、今日はしずくちゃんと行こうかなって」
しずく「!」
侑「えっ」 歩夢「まだ昨日の帰り道ぐらいでしか話せてないから。
しずくちゃんさえよければ今日もどうかなって思ったんだけど……このあと予定あったりしたかな?」
しずく「いえっ!私からもお願いします!」
つい勢いよく返してしまった。意外な提案で驚いたけど、嬉しくて声が大きくなった。
うん、わざわざ誘ってもらえるなんて、歩夢さんも私と仲良くしたいと思ってくれているってことだ。嬉しいに決まっている。
侑「…………」
侑さんが目を白黒させている。
いや分かりやすすぎでしょ。やっぱり勘のいい果林さん辺りにはバレているかもしれないなぁ。
しずく「……すみません侑さん、今日も歩夢さんお借りしますね」
侑「いや別に放課後誰と過ごそうが歩夢の自由だし……いいよ、楽しんできて」
拗ねている。あとで機嫌直すのは……歩夢さんの仕事なんだろうな。
ほんと、ごめんなさい。 歩夢「もう、侑ちゃんとはまたいつだって遊べるでしょ?埋め合わせは今度するから、機嫌直して?」
侑「……お土産にコッペパン買ってきて」
歩夢「はいはい」
まだ少し拗ねているけど、一旦収まったのかな。
子どもとお母さんのやり取りみたいで微笑ましい。
なんて言ったら、また侑さんの機嫌が悪くなるから黙っておこう。
しずく「……侑さん、私からも今日のお土産話くらいは出来ますから」コソッ
侑「好きな子と他の人の楽しい話なんて聞きたくないよもう!」
侑「…………やっぱり歩夢が可愛かった話とかは聞きたいからあとでお願い。
……もし撮ったら写真も」 赤くなってお願いしてくる侑さん。可愛いんですけど。
昨日から今までだけでも、二人の初めて見る表情がたくさんある。
歩夢さんはともかく、恋愛の話というだけでこんなに初めての一面を見せてくれる侑さんには驚く。
好きな人が他の人と仲良くしていることなんて知りたくないけど、
自分の知らない好きな人がいるのも嫌だ。
私も恋をしたら、こんな風になるのかな。
しずく「はい、わかりました。……では、お疲れ様です」
歩夢「じゃあね侑ちゃん」
侑「うん、お疲れ様―」
ガラガラピシャ
侑「……はぁ、ピアノの練習でもしてから帰ろうかな」 しずく「私、実はあんまりお台場で遊んだことってないんですよね」
歩夢「えっ、そうなの?」
しずく「放課後は部活と同好会で基本いつも予定は埋まっていますし、家が遠いので休みにここまで来ることもなくて……」
歩夢「そっか……私は家もこの辺りだからもう昔からずっと来てるなぁ」
歩夢「うん、じゃあ今日はしずくちゃんが楽しめるように、色んなところ見て回ろうよ」
しずく「はい、お願いします」 歩夢「あ、見てあのわたあめ。虹色だ、どうやって作るんだろう」
しずく「ほんとですね。……以前かすみさんが作ってきたコッペパンみたいです」
歩夢「あはは、そういえばそうだね。おいしかったし見た目も可愛かったよね」
しずく「うーん……味はおいしかったんですけど、私には食べ物を虹色にするという感性はよくわかりません……」
歩夢「私は好きだけどなぁ」
しずく「虹色といえばかすみさん璃奈さんと食べたパンケーキも虹色でしたね……流行ってるんでしょうか」
歩夢「そうなのかも。私も食べてみたいな。そのパンケーキ食べに行く?」
しずく「ふ、二人で食べきれる量じゃないのでやめておきます……」
歩夢「じゃあまた今度食べに行こうか」
しずく「!は、はい!」 しずく「あれ、このパスケース歩夢さんのものと同じじゃないですか?」
歩夢「あ、そうだよ。このお店で買って侑ちゃんとお揃いにしたんだ」
しずく「そういえば侑さんも色違いでつけていたような……仲良しですね」
歩夢「えへへ、でもお揃いのものってあんまりなくて、渡すときは緊張したな」
歩夢「その直前に私はスクールアイドルやってみたい、って言って侑ちゃんの前で歌ったの。それもアカペラで。
ちょうど同好会が廃部になっていた頃だから、二人で新しく始めてみようよって想いを込めてパスケースを渡したんだけど……今思うとすごい度胸だよね」
しずく「えぇっ、歩夢さんがそんなことするなんて意外というか……歩夢さんから言い出したんですね。
てっきり、歩夢さんがスクールアイドルをやっているのは侑さんの影響かと思っていました」
歩夢「もちろんそれもあるんだけどね。でも、あの時スクールアイドルを始めようって思ったのは、私の意思の方が大きかったかな」
しずく「そうだったんですか……」
自分のためだけに向けられた想い人の懸命な初めてのステージ。
侑さん、その時感動して言葉も出なかったんじゃないかな。
想像できる。
私も観てみたかったかも。 文章のせいか二人のキャラのせいか、雰囲気がすごく独特でいいなあ 歩夢「しずくちゃん犬派なの?」
しずく「はい!うちでもオフィーリアっていう犬を飼っていて、とってもかわいいんですよ!結構大きい身体なんですけど人懐っこくて……ふふ、顔を舐めてこようとする時もあるんですけどそういうところも可愛いんですよね。写真見ます?」
歩夢「……っふ、あはは、しずくちゃんほんとにその子のことが好きなんだね」
しずく「っす、すみません!いきなりこんな……」
歩夢「ううん、ちょっとびっくりしちゃったけど……しずくちゃんの初めて見る表情が見れて、嬉しかったよ」
しずく「う……そうですか……」
しずく「……ちなみに歩夢さんは犬派ですか?」
歩夢「うーん、私は……蛇が好きかな」
しずく「へび」
歩夢「昔は本当に蛇を飼おうとしていたこともあったんだけどね……。昔侑ちゃんと動物園に行ったとき蛇を身体に巻けるイベントがあって、私は楽しかったんだけど侑ちゃんはトラウマになっちゃったみたいで……歩夢が蛇飼うならもう歩夢の家に遊びに行けないよーって泣かれちゃったからやめたんだ」
しずく「えー、可愛いですね」
歩夢「ふふ、でしょ?」 歩夢「よかった、コッペパン屋さんまだいた……
侑ちゃんのお土産に買うけど……しずくちゃんも食べる?」
しずく「こんなお店あるんですね……。はい、何にしようかな」
私はさくらあんホワイトコッペパン、歩夢さんはイチゴにこにこコッペパンを頼んで、
侑さんにはたまごハンバーグコッペパンを買っていた。
イチゴにこにこコッペパン、名前も見た目も可愛いな……。
このお店には来慣れているみたいだけど、侑さんとよく来ているのかな。
歩夢「それ前に侑ちゃんが買ってた味だ。あの時一口くれるって言ったのに侑ちゃん結局一人で食べちゃったんだよね……」
しずく「よかったら一口食べますか?」
歩夢「あ!催促したみたいになっちゃった……そんなつもりじゃなかったんだけど、いいの?」
しずく「はい、どうぞ」 コッペパンを少し包みから出して歩夢さんに差し出す。
わ、髪を耳にかける仕草エッ…じゃなくて、綺麗……
パンを食べさせただけなのに、なんだかドキドキする。
今日長く隣で見ていて思ったことだけど、歩夢さんは仕草も可愛い。
歩夢「ん、これおいしいね!ありがとうしずくちゃん。私のも食べる?」
しずく「いいんですか?ありがとうございます」
歩夢さんもこちらにパンを差し出してきて、食べる。
あ、おいしい。ケーキはともかくイチゴの入ったパンって初めて食べたけど、お菓子に入っているものとはまた違った感じがする。
歩夢「あ、しずくちゃん……」
しずく「?はい…」 え。
歩夢さんの指が私の口元に触れて。
それから、歩夢さんが指についたクリームを舐めとっている。
あまりに自然な動きで、それに驚いている私がおかしいのかと思った。
しずく「ぁ、ぁゅむさん?」
歩夢「?……………!!!」
一瞬普通の顔をしていた歩夢さんだけど、すぐに気づいて真っ赤になる。
よかった。やっぱり今の行動は普通のことではなかったみたい。
歩夢「ごごごごごめんねしずくちゃん!!!!侑ちゃんには、小さいころからこうする癖みたいなものがついちゃってて!!
それで、なんか自然にやっちゃったんだけどふ、普通こんなことしないもんね!!!い、嫌じゃなかった?ごめんね……?」
大慌てで弁解してくる。
歩夢さんがあまりに慌てているので、私はなんだか落ち着いてきた。 妬いてる侑ちゃん可愛いしこの二人の組合せもすごくいいな… しずく「……大丈夫ですよ。舐めるのは……ちょっとびっくりしちゃいましたけど。クリーム、取ってくれてありがとうございます」
歩夢「……よかったぁ」
ほっとした様子の歩夢さん。
私にはよくわからなかったレインボーコッペパンを可愛いと言ったり、
本当に飼おうとしたほど蛇が好きだったり(あのあと少し語ってくれたが、ひんやりむにむにした感触が気持ちいいらしい)、
意外と大胆で驚くような行動をしたかと思えば、急に恥ずかしがったり。
歩夢さんがこんなに楽しい人だったなんて、知らなかった。
もっともっと、色んな歩夢さんのことが知りたい。
誰かのことを知りたいという気持ちがこんなに溢れ出してくるなんて、初めての感覚。
今度はさくらあんをわざと頬につけてみたけど、それを取ってもらえることはなかった。 一旦ここまで
しょっちゅう連投規制かかるのと、初SSなのでコメントありがたいです。
書き貯めがなくなったので、また貯まったら今日の夜辺りに来ます 連投規制本当に大変だね。一応クッキーを削除すると解除されることがあるらしい
雰囲気もたまに混じる小ネタもすごく好きだから楽しみ 起承転結の結がアニメなのに起承転結の起とかもうわけわかんねぇな 機嫌が悪い。
正確に言うと、元気がない。
私の話ではない。侑さんの話だ。
侑「…………」
ライブに向けての準備が進んでいることもあり、
歩夢さんと一緒に帰るようなことはあれっきりで、お台場で遊んだ日のように分かりやすく機嫌を損ねることもない。
だから他にこの異変に気付いているメンバーは歩夢さんぐらいだろう。
けれど、ここしばらく侑さんのことも観察している私にはわかる。
あれは歩夢さんのことを考えて落ち込んでいるんだ、と。
歩夢「しずくちゃん、走り込みお疲れ様。飲み物足りてる?」
しずく「は、はい、大丈夫です」
特別二人で行動するようなことはないけれど、以前よりも歩夢さんがよく話しかけてくれるようになった。
たぶん、一年生の中では一番話すようになっている。
そんなことを気にしている自分に少し驚く。
歩夢さんともっと仲良くなりたいって気持ちのせいかな。 しずく「じゃあ、ダンスレッスン行ってきますね」
歩夢「うん、いってらっしゃい」
今回のライブは、一年生だけのミニライブだ。
だから私たち一年生と二、三年生は練習のメニューを変えてある。
歌のイメージは、歩夢さんと、歩夢さんに恋をしている侑さんを見ることでつかめてきた。
あとは私がどう表現を高めていくか。
……良いライブが出来たら、歩夢さんは喜んでくれるかな。
頑張ったねって、言ってくれるかな。
歩夢さんは、頑張っている同好会のみんなに励まされていると言っていた。
だったら、私が頑張ることで、歩夢さんの喜ぶ顔が見たい。
侑「……あゆむ、ちょっといい?」
歩夢「……うん、なに?侑ちゃん」 今日の練習が終わって、解散になった後も私は一人で練習を続けていた。
新曲の歌やダンスは覚えた。少しでもステージを良いものにしようと努力している。
けれど、表現にはまだ納得できていないところがある。
それを埋めようと、居残って練習することが増えた。
他の皆に気を使わせるわけにはいかないので、部室から誰もいなくなったのを確認して練習をする。
一人での練習は自分の表現だけに集中できるので、嫌いではない。
しずく「うーん……」
続けていても、自分でどこに納得がいっていないのかわからないので、正直なところ、大した手ごたえは感じられていない。
やっぱり、誰かに見てもらった方がいいのかな。
でも、同じようにライブに向けて練習している璃奈さんとかすみさんには聞きづらいし、
前に彼方さんに見てもらったときはどこに納得いかないのかわからないくらいだよと褒めてもらった。
明日、誰か他の先輩に頼んでみようかな。 ふと、どこからか小さくピアノの音色が聞こえて来る。
まだ途切れ途切れだけど、優しい気持ちになれる音だ。
暖かくて、でも聴いていると頑張るぞって気持ちになれるような、
そう、まるで歩夢さんを思わせる____
歩夢「誰かいるの……って、しずくちゃん?」
しずく「わっ!?」
その時、歩夢さんがレッスン室に入ってきた。
ちょうど歩夢さんのことを考えていたので、かなりびっくりした。
もしかして私が残っているのを知って……
いや、今の言葉を考えると本当に偶然なんだろう。
部室には居なかったけど、帰ったかどうかは確認していなかったから何か用があって残っていたのかな。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています