璃奈「愛さんボード『しくしく』」
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――――――
7月 教室の外
愛「失礼しました〜っ!」
愛「ふぅ〜……キンチョーしたなぁ……」
愛「……はぁ」
愛「……辞めなきゃ、かも」 ――――――
教室
―――「じゃね、璃奈〜、また明日!」
璃奈「うん。璃奈ちゃんボード『バイバイ』!」
……最近話せる友達が増えた。
まだ表情は硬いままだけど、普通だったらこんな時に嬉しくなって思わずにやけたりするのかな。
きっとそれもこれもスクールアイドルを始めたから。
私は天王寺璃奈。虹ヶ咲学園の1年生。
こんな私を一言で表すなら、無表情。
望んでこんな表情をしてる訳じゃないけど、どうしても変えられない。
……無愛想でいつも不機嫌な顔をしてるように思われる。
だから今まで友達なんて、ほぼいなかった。誰かから声援を貰う事なんてなかった。
だけど今の私は、昔じゃ想像もできない日々を、私は過ごしている。
いつも無表情で、愛想のない私。
そんな私の手を引いてくれたのは…… ――――――
部室
璃奈「こんにちは」ガラガラ
かすみ「やっほー! りな子!」
歩夢「こんにちは。今日、愛ちゃんは?」
璃奈「愛さんは二者面談。進路のことで先生と話してる」
侑「あー……そっかぁ、二者面談かぁ」
侑「私、進路希望の紙、どこやったかな……」
せつ菜「……侑さん、なくしたんですか?」ギロッ
侑「ヒッ! こっ、怖いよせつ菜ちゃん〜、会長の顔になってるぅ〜……」
せつ菜「もう侑さんっ! スクールアイドルに熱が入るのはいいですけどそこをおろそかにしてはだめですよ!」
侑「さ、探せばあるから〜……」
歩夢「あはは……」
果林「愛、確かそのあとバスケ部の助っ人に行くみたいなこと言ってたわ」
果林「いつも引っ張りだこで忙しそうよね」
彼方「頑張り屋さんだなぁ……彼方ちゃんが代わってあげたいねぇ……」
しずく「思ってもないことを……寝ながら言われても説得力ありません」
彼方「そんなことないよ〜、ダムダムしちゃうよ〜♪ ダムダムきゅっ、ダムダム〜♪」
……愛さん。宮下愛。
同好会の元気印で、楽しいことにいつも全力な笑顔の天才。
私ともっとも遠くて、私と最も近い人。 愛「……」
愛「……ふーっ」
愛「そんな難しい顔すんな、アタシ」
愛「……よしっ!」
———……
愛「おいーっす!」ガラガラ
エマ「あ、愛ちゃん! チャオ〜♪」
かすみ「あれぇ? バスケの助っ人、行かないんですか?」
愛「あはは! いやーシューズ部室に忘れちゃってさー」
愛「1時間くらいしたら練習に戻るよ!」
せつ菜「進路面談どうでしたか?」
愛「いや〜、別に問題なかったよ! アタシはこの通り! ブイッ!」
歩夢「ふふ、さすが愛ちゃん。成績いいもんね」
璃奈「……愛さんはすごい」
璃奈「情報処理学科2年、前期中間テスト総合1位」
果林「えええええっ!?!」
かすみ「そんな頭いいんですか?! 愛先輩って!」
愛「アハハ……たまたまだよ」
愛「アタシ、見た目こんなんだからさ……中身くらいしっかりしないと思って!」 愛「んじゃっ! 今日はごめんね果林。帰ってきたら約束通りフリ合わせよーね♪」
果林「え、えぇ。ま、待ってるわ」
愛「そいじゃまたねー」ガラガラ
愛さんはシューズだけ取るとそのままそそくさに部屋から出て行ってしまった。
しずく「……愛さんってかっこいいですよね」
しずく「見た目がギャルだなんて謙遜して、中身もしっかり磨こうとしてて」
彼方「勉強もできて、助っ人できるくらいスポーツもできるもんねぇ……」
かすみ「も〜〜〜愛先輩っていろいろずるいです! ギャップ萌えって奴ですか?!」
エマ「おばあちゃんのことも大切にしてるしね〜♪」
果林「なんなの……完璧じゃない……っ!」ボーゼン
同好会の愛さん評価はまさにオーバーフローしそうな勢い。
本当に欠点が見当たらない人だと、私も思う。
明るくて、頭もよくて、スポーツ万能で、家族想い。
何よりいつも周りを元気にする、楽しいの天才。みんなの人気者。
初対面の人もすぐに愛さんのことを好きになる。
だから、私は疑問に思う。
なんで愛さんはこんな無愛想な私と、仲良くしてくれるんだろう?
だけどそう疑問に思うたび、私はこう思うんだ。
「愛さんにとって私は単なる一人の友達」
「深く考えるだけ無駄」って。 ……——————
帰り道
愛「りなりー、最近楽しそうだね!」
璃奈「うん。この前のライブをきっかけに友達、できたから」
璃奈「お弁当、一緒に食べてる」
愛「そうかそうか! 愛さん、嬉しいなー!」
愛「大好きなりなりーが楽しそうにしてて!」
璃奈「……ぜんぶ愛さんのおかげ」
愛「あはは、そんなことないよ!」
同好会のあとの帰り道は大体愛さんと一緒に帰っている。
愛さんと一緒にいるのは本当に退屈しなくていつも楽しい話をしてくれる。
楽しい。
でも私は楽しい表情ができないから、時々申し訳なくなる。
愛さんはこんな私といて、楽しいのかなって。
愛「……りなりー、なんか難しいこと考えてたでしょ?」
璃奈「え……そんなことない」
愛「うそっ! なんかそんな表情してたもん」
璃奈「……なんでわかるの」
愛「わかるに決まってんじゃん!」ギュー
璃奈「わっ……!」
愛「いっつも一緒にいるんだからさ!」
……愛さんは不思議な人だ。
私の表情で気持ちがわかる人なんて、今までいなかった。 璃奈「あ、愛さん……恥ずかしいよ。こんな人の通りで、だ、抱きしめられて……」
愛「んー、聞こえない〜!」
愛さんは私の言葉に反して、もっと強く抱きしめてきた。
璃奈「……いじわる」
いやだ……なんかもう、ひたすらに恥ずかしい。
だって愛さんにとって私は単なる友達の一人。
きっと私だけが、変に意識してるんだ。
璃奈ちゃんボード、使いたい……顔赤くなってるかも……
ってあれ? 用途変わってる……?
愛「だからさ……りなりー」ギュッ
愛「りなりーは、スクールアイドル頑張るんだよ」
璃奈「……え?」
璃奈「……愛さん?」
愛「……なーんてねっ♪」
愛「ほらっ、暗くなる前に帰ろ!」
愛「今日のぬか漬けは〜〜〜なっにかな〜〜〜〜〜!」
璃奈「……」
恥ずかしさで動揺していたから、聞き間違えたのかと思った。
でも確かに、愛さんは言ったハズ。
……りなりー……「は」? ――――――
愛の自宅
愛「ただいま〜! おばーちゃん!」
愛「おっ! 今日のごはんも美味しそう!」
愛「あむっ……う〜〜〜ん、サイコー!」
愛「やっぱりおばーちゃんのぬか漬け食べたら疲れも吹っ飛ぶな〜!」
愛「えっ、なに?」
愛「……えぇっ?! お店のバイトが一気に3人も辞めちゃったの?」
愛「人手、足りてないんだ……」
愛「……ん、わかった。店番もっと出れるようにすんね!」
愛「うん、だいじょーぶ! そんな気使わないでよ!」
愛「おっけーおっけー!」
……——————
愛「……えぇっと、こんなもんかな」
愛「今月までに2年の範囲は全部終わらせて……」
愛「最低4時間くらい勉強しないと……ってカンジかなぁ」
愛「それで土日はもんじゃ焼きの手伝いして……」
愛「……」
愛「うん。それだけ勉強すれば、両立したって問題ないよね」
愛「……だから踏ん張る」
愛「うしっ! 気合い入れてがんばるぞ〜〜〜! よぉっしゃ〜〜〜!」 ――――――
部室
彼方「すやぁ……」
愛「ねぇカナちゃ〜ん」
彼方「おや……どうしたのかな愛ちゃん。エマちゃんの膝枕は渡さないぜぇ?」
エマ「うふふ♪」
愛「カナちゃんってさ、何時間くらい勉強してるの?」
彼方「勉強? うーん……学校とかバイトある日は5時間、休みの日は7.8時間くらいかなぁ……?」
彼方「とはいっても結構波があるからねぇ……」
彼方「受験直前とかテスト直前になったらもっとしてると思うよぉ」
果林「彼方ったら。そんな勉強したら頭爆発するわよ」
エマ「果林ちゃん」
エマ「しないよ?」
愛「果林」
愛「しないね」
果林「な、なによ二人で……ちょっとした冗談……っ」
愛「でもそっかぁ……いやぁカナちゃんはそれでいてバイトもしてるっていうんだから偉いよね!」
彼方「えへへ〜、照れますな♪」
彼方「まぁ3年生だしぼちぼちねぇ……」
歩夢「愛ちゃん、勉強時間増やすの?」
愛「ま、まぁ進路希望面談もあったから、周りはどうなんだろうってね〜」
愛「まだまだ全然先の話!」
かすみ「うぐぐ、また愛先輩が完璧超人に近づこうとしている……」
しずく「かすみさんじゃ頑張っても届かないから悔しがっても意味ないよ」
かすみ「ぐ、ぐああああ〜〜〜!!! しず子ぉ〜〜〜!!」ポカポカ
愛「あはは……てかごめんごめん! 部活中に勉強の話しちゃって!」
愛「よーしっ! とりあえず練習練習! 今日も愛さん、がんばるぞー!」
璃奈「……」 はじめまして!よかったら、よろしくお願いします。
明日また更新します。
以下は以前に作ったSSです。
ご興味あったらどうぞ!
エマ「ただいま果林ちゃん」エマ「おかえりエマ」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1610486893/l50 いいぞいいぞ期待してる
でももうちょい伸ばさんと落ちるから保守 皆さま保守等ありがとうございます。
ほとんどここで書き込んだ経験ないので
非常に助かります! ――――――
7月 校内食堂
愛「はい、りなりー! あーん♪」
璃奈「あむっ……」パクッ
愛「おいしー?」
璃奈「うん」
愛「よかった〜♪」
愛「あっ、そういえば今日ね、おねーちゃんに会うんだよ!」
璃奈「……美里さんって人?」
愛「そうそう、急に呼ばれて! 久しぶりにご飯なんだー♪」
璃奈「そうなんだ」
……正直うわのそらで話を聞いていた。
ずっとあの時の言葉が引っかかっている。
「りなりーは、スクールアイドル頑張るんだよ」
どういうことなんだろう。愛さんは、どうなの?
璃奈「……愛さん」
愛「んー? どしたん?」
璃奈「……最近、忙しい?」
愛「えっ?」
璃奈「……彼方さんに勉強のこととか聞いてたから」
璃奈「忙しいのかな、って」
愛「あはは……そっかぁ、心配させちゃったか〜」
愛「だいじょーぶ! ちょっと受験のことでいろいろ考えてただけだから!」
璃奈「……スクールアイドル、やめるの?」
愛「えっ……?」 愛「……い、いやいや〜! なんでそうなるのさ〜!」
愛「やめないよ! だってスクールアイドル愛してるもん! 愛、だけにっ!」
愛「……それに愛さん、人を笑わせたり楽しませるの、スキなんだ」
愛「ずっと続けるよ」
愛さんはニカッと笑顔を見せてそう言った。
いつも隣で見てきた頼もしい笑顔。
璃奈「……ごめん」
璃奈「なんか、心配になっちゃったの」
愛「あはは〜、りなりーは寂しがり屋だな〜」
愛「心配しないで。絶対辞めないから」
璃奈「……ホント?」
愛「当たり前だよ〜!」
愛「愛さんはりなりーに、嘘つかないよ」
璃奈「……うん」
本人の口から「辞めない」と言ってもらえて私は心底安心してしまった。
愛さんはいつだって自分に正直で、前向きになんでも乗り越えようとする強い人。
きっと私が弱い人間でいつも愛さんに頼りっぱなしだから、余計に心配しちゃったんだ。
こんなんじゃ私、ダメだな……
とにかく、うん。愛さんは辞めない。
よかった。 ――――――
ファミレス
愛「……あー! おねーちゃん! こっちこっち!」
愛「いやぁ、久しぶりだね〜! 元気してた?」
愛「うんっ! スクールアイドルも高校も楽しくやってるよ!」
愛「もう毎日楽しいことばかりってカンジ! あはは!」
愛「おねーちゃん、何食べる?」
愛「アタシは今日りなりーとハンバーグ食べちゃったから……」
愛「そうそう、ボードつけてる子!」
愛「同好会に入ったタイミングも一緒だったからねー」
愛「可愛くて素直で、本当にいい子なんだ♪」
愛「もしかしたら今一番、一緒にいる時間多いかも!」
愛「妹がいたらこんなカンジなのかなー、とか思うよね〜」
愛「……まぁでも」
愛「おねーちゃんの前だと、アタシ、ちょっと甘えたい気分だったりして」
愛「えへへ……」 愛「うん……うん、そうなんだよ」
愛「先生ね、スクールアイドルも部活動もみんな辞めなさいって言ってきたんだ」
愛「も〜〜〜! なんでだよっ! ってツッコミたくなったよ!」
愛「たまたま成績トップ取っちゃったからかわかんないけどさ」
愛「部活とか全部辞めて勉強一本にしなさいって言うんだよ?」
愛「“2年生の今から勉強すればどんな最難関大学も受かる”って」
愛「勉強は好きだし言われた通り頑張りたいけど、自分が大好きなことを犠牲にするのは嫌なんだよねぇ……」
愛「だからスクールアイドルは絶対に辞めないよ」
愛「いい成績を残し続けて先生、黙らせちゃうもんねー!」
愛「……でもさぁ、うちのもんじゃ焼き屋さんもバイトが一気に辞めちゃってさぁ」
愛「お店の手伝いもしなくちゃいけないんだよねー……」
愛「さすがのアタシもちょっと大変だな〜って思っちゃった……」
愛「いや〜〜〜愛さんが3人くらいいれば解決なのにな〜! 残念〜♪」
愛「……ま、でも頑張るっきゃないからね! とにかくやるよ!」 愛「……あっ! ていうかごめん!」
愛「こっちばっかり話しちゃって!
愛「しかも愚痴とか弱音みたいになっちゃった……」
愛「ら、らしくないよね〜! あたしのキャラじゃないっていうか! ごめんごめん♪」
愛「で、おねーちゃんも話あったんだよね?」
愛「なになにー? もしかして結婚とか?!」
愛「あはは〜! なんてジョーダン、ジョーダン……」
愛「……」
愛「そっかぁ……また検査入院するんだね」
愛「体調、あんまよくない?」
愛「……そんなの心配に決まってるよぉ。入院に慣れるなんてある訳ないじゃんか〜」
愛「……えっ?」
愛「しゅ、手術するの……?」 愛「な、なんで……?」
愛「……うん……うん……」
愛「……そっか。将来的にどこかでやった方がいい手術、なんだ」
愛「そんな重そうな手術じゃなくて安心したよ」
愛「……心配は心配だけど……」
愛「とりあえず手術の日までお見舞いに行くね!」
愛「……えっ? 勉強も店番も大変そう?」
愛「そんな事ないよ、いまはおねーちゃんが心配なんだから」
愛「……じゃーね、お姉ちゃんっ! 話せてよかったわ〜〜〜」
愛「手術、頑張ってね! とっておきのダジャレでいっぱい笑わせにいくかんね〜〜〜!」
愛「それで元気になったらもっとたくさんお話ししよ! 約束だよ♪」
愛「ウチのもんじゃ焼きも久々に食べに来てよ!」
愛「それで、えっと〜……」
愛「……えっ?」
愛「……うん」
愛「アタシはだいじょーぶだよ」
愛「だいじょーぶ」
愛「だいじょーぶだって」ニコッ ――――――
帰り道
愛「……」
愛「ははは……あーっはっはっはっは!」
愛「らしくない、らしくないっと!」
愛「なんていうか、いろいろ重なるな〜。運勢悪いのかな? アタシ」
愛「あははは……」
愛「……こんな顔してアイドルなんてダメだよ」
愛「うんっ、へーきへーき。きっとみんな、うまくいくって」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています