【SS】しずく「千両役者」かすみ「三文小説」
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・アニメ時空です。
・栞子等のアニメ未登場キャラは登場しません。悪しからず。
・話の都合上、オリジナルのモブキャラが登場するので、苦手な人はブラウザバック推奨です。
・しずかすSS。アニメ13話でしずくとかすみが恋仲になったという前提。
以上、但し書きです。
書き溜めてませんのでゆっくり書いていく予定です。
よろしければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 『…………』
かすみ「……ごめん、しず子が今一番大事な時に、変なこと聞いて」
『…………もう』
かすみ「……しず子、怒ってる……?」
『……笑顔がステキなところ』
かすみ「…え?」
『表情豊かで、人懐っこくて、ワンちゃんみたいなところ』
『自分が一番かわいいって信念に真っ直ぐで、負けず嫌いで、努力家で、』
『自己中心的で生意気な人に見えるけど本当は人一倍優しくて、』
『私が挫けそうになった時は、すぐ駆けつけてくれて私を勇気づけてくれる』
『そんなあなたのことが好きです』
『━━━桜坂しずくは、誰よりも一番、中須かすみを愛しています』 作者のミスじゃなかったらこのしずく偽物だよな
>>192でかすみがしずくに告白したと言ってるんだから もうちょい待って指摘しないとミスじゃなかったらけっこうな邪魔してるぞ >>365
作者の記憶違いによるミスです……大変失礼しました
>>362の訂正です
誤『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?私からだもん』
正『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?かすみさんからでしょ』
一番間違えちゃいけなきゃ肝心な場面なのに申し訳ありません…
ご指摘ありがとうございました! やっぱりミスだったか
甘々な感じの描写だったからミスなのかなと思ったんだよ
応援してるぞ 雰囲気壊れるから訂正じゃなくて
>>362から書き直してほしい 応援ありがとうございます
せっかくなので>>362から書き直します
从cι˘σ ᴗ σ˘* 再掲だよしず子 『……? 私は私だよ……?』
かすみ「……じゃあ、かすみんとしず子、どっちから告白したか覚えてる?」
『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?かすみさんからでしょ』
かすみ「いつ?」
『去年のスクールアイドルフェスティバルの最中』
かすみ「どこで?」
『タイミングってこと?ヒーローショーが終わって、ベンチで一休みしてる時』
かすみ「……」
『合ってるでしょ?』
かすみ「……うん。全部あってる」
『……そんなこと聞いて、どうしたの?』
かすみ「……ねえ、しず子」
かすみ「しず子は、かすみんのこと、好き?」 『…………』
かすみ「……ごめん、しず子が今一番大事な時に、変なこと聞いて」
『…………もう』
かすみ「……しず子、怒ってる……?」
『……笑顔がステキなところ』
かすみ「…え?」
『表情豊かで、人懐っこくて、ワンちゃんみたいなところ』
『自分が一番かわいいって信念に真っ直ぐで、負けず嫌いで、努力家で、』
『自己中心的で生意気な人に見えるけど本当は人一倍優しくて、』
『私が挫けそうになった時は、すぐ駆けつけてくれて私を勇気づけてくれる』
『そんなあなたのことが好きです』
『━━━桜坂しずくは、誰よりも一番、中須かすみを愛しています』 かすみ「……!しず子……」
『……かすみさんは?』
かすみ「…え?」
『かすみさんは、私のこと、好き?』
かすみ「……うん。好きだよ」
『私のどんなところが好き?』
かすみ「……そんなの、選べっこない」
かすみ「全部。しず子の全部が好き」
かすみ「上手く言葉にできないけど……しず子のどんなところも好き」
『……嬉しい。ありがとう、かすみさん』 ドクンドクン
かすみ(……かすみん、こんなに高揚しちゃってる)
かすみ(胸の鼓動が速まって)
かすみ(顔が紅潮して)
かすみ(身体中が火照って)
かすみ(しず子のこと以外、考えられなくなってる)
かすみ(好き)
かすみ(しず子のことが好き)
かすみ(大好き)
かすみ(ずっと、しず子の隣にいたい)
かすみ(しず子の恋人として、しず子の幸せにしたい)
かすみ(……だけど)
かすみ(しず子は、本当に幸せになれるのかな)
かすみ(かすみんが他の誰かだったら、しず子はこんな辛い目に遭わずに済んだのかな)
かすみ(━━━本当に、このままでいいのかな) かすみ「…………」
『……かすみさん?』
かすみ「……あ、ご、ごめん」
『……やっぱり、今日のかすみさん 、なんかおかしいよ』
かすみ「お、おかしくなんかないよ」
『うそ。絶対おかしい。いつものかすみさんじゃないもん』
『どうかしたの?』
かすみ「……何でもないよ」
『何でもなくない』
『かすみさんにとっては些末な事かもしれないけど、私にとっては一大事なんだから』
『長くなってもいいよ。まだ開演まで時間あるから』
かすみ「ダメだよ……しず子は今、本番前の一番大事な時で
『こんくらいで演技に支障きたさないから。モヤモヤしたまま舞台に上がる方が支障きたすよ』
かすみ「…………」
『お願い、かすみさん。何があったの?』 かすみ「……かすみんは、しず子の恋人失格なの」
『…どうして?』
かすみ「……かすみんがおバカだから」
かすみ「部長さんがしず子に変装してても、気付けないような大バカだから」
『え…?』
かすみ「かすみんがあそこで気付いてたら、しず子が辛い思いしないで済んでたのに」
かすみ「それなのに、しず子を守るなんて……大バカもいいとこだよ……」
『えっと、ごめん、かすみさん……』
『どういうこと……?』
かすみ「……昨日、判明したの」
かすみ「写真を貼り付けた犯人は、演劇部の部長さんだったの」
━━━━━
━━━━
━━━
かすみ「……っていうのが、かすみんとしず子の秘密を知ることができたトリックだったの」
『……信じられない』 かすみ「……そう、だよね。しず子も幻滅するよね」
かすみ「恋人の顔も区別できないなんて━━━」
『違うよ、かすみさんじゃない。信じられないのは……部長の方』
かすみ「え…?」
『かすみさんを侮辱するような真似をして……』
『そんなの絶対に許せない……』
かすみ「し、しず子……?」
『かすみさん、今日の舞台しっかり見てて』
『本物の桜坂しずくを、魅せてあげる』
『最大限のしず子パワーを届けてあげる』
『嫌な記憶は、上から丸ごと塗り潰してあげる』
かすみ「……分かった」
『じゃあ、またね』
プーブープー
かすみ「…………頑張れ、しず子」 よく考えたらしずかすがイチャコラして何が悪いんだ
部長このやろう馬鹿野郎 >>389
節子、それこのSSやない、女優しずくとアイドルかすみの方や とくに似てないような。単に専ブラで両方見てて誤爆しただけじゃない 二つとも追ってるけどどっちも続きが気になるという点では似てる あれはこっちの部長と違って現実に近いものがありそうで嫌な気分になるし更新遅いからさっさと切ったな
そのうち思い出して完結してたら読むかもしれんが 【劇場会館 客席】
校内アナウンス『……ご案内いたします。間もなく、四校合同演劇祭、虹ヶ咲学園の部が開演となります。携帯電話をお持ちの方は……』
侑「……かすみちゃん、まだ来ないね。大丈夫かな……」
璃奈「遅れてきた時はいつものかすみちゃんだったけど、電話に出る時は表情が険しかった」
せつ菜「愛さんが『あたしが入口で待ってるから大丈夫』と言ってましたので、かすみさんがはぐれる心配はないと思いますが……」
歩夢「……」
タッタッタッ
「急げ急げ〜!間に合わないぞかすかす〜!」
「待ってください愛せんぱあい!速いですってば!あとかすみんです!」
せつ菜「あっ!来ました!」
侑「よかったぁ」ホッ かすみんも電話切れた時点ではまだ自分に納得した感じでもないのかな 愛「せーふ!いや〜危なかった!」
かすみ「はぁ、はぁ……だからって飛ばしすぎですよぉ……」
せつ菜「お二人がなかなか見えないのでどうなるかとヒヤヒヤしてしまいましたよ」
璃奈「かすみちゃん、長電話だったけど、どうかしたの?」
かすみ「え!?ま、まぁ、どうもしてないよ!だいじょぶだいじょぶ!」
璃奈「…そう。ならいいけど…」
かすみ「り、りな子は心配性なんだから〜、あはは…」
歩夢「……」
侑「まあ何はともあれ合流できてよかったよ。そろそろ始まるし、席つこっか」
せつ菜「そうですね!」
かすみ「かすみんは〜、侑せんぱいのお隣に座っちゃいま〜す!」
歩夢「……じゃあ私はかすみちゃんの隣かな」 ちょうど続きが。無言が続いてた歩夢が久しぶりに喋った 歩夢「……ねえ、かすみちゃん」ヒソヒソ
かすみ「?」
歩夢「さっきの電話の相手って……しずくちゃん?」ヒソヒソ
かすみ「……」
歩夢「……しずくちゃん、なんだよね?」
かすみ「……そうですよ」
歩夢「……昨日のこと、伝えたの?」
かすみ「……はい」
かすみ「部長さんが犯人だった事と、その手口、犯行理由もしず子に教えちゃいました」
かすみ「……本番前に、そんなこと言っちゃいけないのは、かすみんも分かってましたけど……」
歩夢「……昨日、私に言ってた、かすみちゃんの気持ちは、まだ伝えてないの?」
かすみ「……はい」
歩夢「……そっか」 別れる意思まで伝えてたらさすがにしずくちゃんでも影響出そうだし、そこで電話切れて良かったね。舞台どうなるのか楽しみ 歩夢「……考え直してほしい、なんて言うつもりはないよ」
歩夢「冷たいかもしれないけど、これはかすみちゃんとしずくちゃんの、二人の話だから」
かすみ「……」
歩夢「……でも、横槍を入れさせてもらえるなら」
歩夢「今日、しずくちゃんが舞台に立てたのは、かすみちゃんが一生懸命支えてくれてたから」
歩夢「しずくちゃんの恋人がかすみちゃんじゃやかったら、今日の舞台にしずくちゃんは居なかったかもしれない」
歩夢「そんなこと思いながら、これから始まる舞台の上のしずくちゃんを、見守ってあげてほしいな」
かすみ「……歩夢せんぱい」
ブーーー
『お待たせいたしました。ただいまより、虹ヶ咲学園の部、開演となります』
歩夢「……お節介、終わり。始まるみたい」
かすみ「……はい」
『演目は、『楼門五三桐』二段目の返し「南禅寺山門の場」です』 かすみ「……」
かすみ(舞台は青い幕が下りています)
かすみ(開演した……はずですよね?)
かすみ(幕が開かれる気配がありません)
かすみ(もしかして、しず子に何かあったんじゃ━━━)
ベンッ♪
かすみ「!」
ベンッベンッベンッ♪
ベンベンベンベンベンッ♪
ベンッ♪
かすみ「これは……三味線……?」
侑「だね。まさに歌舞伎って感じだよ」
ベンベンベンベンベンッ♪
侑「迫力ある音色だね。かっこいい」
かすみ「皆さん、聞き入ってますね……」
かすみ(あいかわらず幕は閉まったままですが…)
ベンッベンッベンッ♪
ベンッベンッ♪
ベンッ♪
…………
かすみ(幕が開かないまま……三味線の演奏が……終わっちゃいました)
バッ
かすみ(!) youtubeで楼門五三桐見て何となく雰囲気は掴めた かすみ(幕が一気に下がると、舞台の全貌が見えてきました)
かすみ(極彩色の門のてっぺん……を模した大きなセットが立っています)
かすみ(乱れ舞うは桜吹雪)
かすみ(そしてその真ん中に座している、豪華絢爛な衣装をまとった、セットをも上回る存在感を放つ人物━━━石川五ェ門)
かすみ(ただそこにいるだけなのに)
かすみ(この場を我が物顔で支配するかのように━━━)
しずく「…………」
かすみ(━━━桜坂しずくは、舞台上に君臨していました)
「しずくー!」
「しずくちゃーん!」
かすみ(ここにいる誰もがこの光景を楽しみにしていた事でしょう)
かすみ(客席がワッと沸き立ちます)
かすみ(会場が熱気に包まれる中、しず子の第一声への期待が高まっているのを肌で感じます)
しずく「…………ああ」
しずく「なんて絶景でしょう」
しずく「絶景じゃありませんか」 かすみ(しず子の第一声は、かすみんたち観客を大きくどよめかさせました)
しずく「この春の眺めが千両ばかりとは」
しずく「小さいこと小さいこと」
かすみ(普段のしず子とは大きくかけ離れた、獣の咆哮のような、勇ましく強かな口上でした)
しずく「この五右衛門からすれば」
しずく「まるで万両、万々両」
「よっ!千両役者ぁっ!」
かすみ(本物の歌舞伎のように、勢いのある掛け声が、ここぞというタイミングで入ります)
かすみ(会場の空気は更にしず子に支配されていきます)
しずく「日は西に傾いて雲と棚引く桜花」
しずく「茜く輝くこの風情」
しずく「なんて麗らかな眺めじゃあ、ありませんか」
「しずくさんっ!」
「千両役者ぁっ!」
パチパチパチパチパチ
かすみ(名口上の終わりとともに、あちらこちらから放たれる掛け声)
かすみ(地響きのように鳴りやまない歓声)
かすみ(溢れんばかりの万雷の拍手)
かすみ(まさに、圧巻です)
かすみ「……すごい。すごいよ、しず子」 その声。
その表情。
その立ち振舞い。
そのどれもが、あまりにも力強くて。
生命力に、満ち溢れていて。
いつも隣に居るしず子とは、まるで別人のように感じてしまいます。
かすみ「しず子……」
だけど、確かにそこに居るのはしず子で。
あの時、かすみんに弱い自分を曝してくれたしず子で。
あの時、かすみんに髪飾りを渡してくれたしず子で。
あの時、かすみんの告白を受け入れてくれたしず子で。
あの時、かすみんを抱き締めて、キスしてくれたしず子で。
あの時、かすみんだけに涙を見せてくれたしずの子で。
かすみ「声、聞こえたよ……」
かすみんの、最愛の人で。
かすみんの、自慢の恋人で。
かすみんを、必要としてくれる人で。
かすみんは、これからも、あなたの恋人であり続けたい。
かすみんの心に、消えかけていた炎を、あなたが再び灯してくれるから。
生命力を━━━希望を、届けてくれるから。
その美しき声と共に。 上から丸ごと塗り潰してあげるっていうのはこういうことか 「石川や」
かすみ「!」
かすみ(しず子だけだった空間に、別の人物が姿を現します)
かすみ(あれが石川五右衛門の敵役……真柴久吉)
かすみ(そして演者は━━━あの部長さん)
部長「浜の真砂は尽きるとも」
かすみ(豪華絢爛な衣裳のしず子とは対照的に、部長さんは質素な服装を着ています)
かすみ(……存在感は圧倒的にしず子の方が上)
かすみ(そのはずなのに)
部長「世に盗人の 種は尽きまじ」
かすみ(あの部長さんからも、ブラックホールのごとく吸い寄せられるような、そこ知れぬ不気味な存在感を放っています)
かすみ(しず子の存在感が、周囲を熱狂させる「炎」に例えるなら、)
かすみ(周囲を凍てつかせるような、部長さんの存在感は、「氷」と言ったところでしょうか) しずく「…………まさか、真柴久吉」
部長「巡礼、ありがとうございます」
しずく「…………」
ダンッ
かすみ(山門の屋上に座するしず子が立ち上がり、力強く足を柵に掛けます)
しずく「真柴、久吉」
部長「…………」
かすみ(上から部長さんを睨むしず子)
かすみ(下からしず子を見上げる部長さん)
かすみ(これが、有名な「天地の見得」の場面です)
しずく「……」
部長「……」
かすみ(しず子扮する五右衛門は、親の仇である真柴久吉に対して、憎しみの炎を燃やすように、強く睨み付けます)
かすみ(一方、部長さん扮する真柴久吉は、そのことを知りません。涼しい顔で、五右衛門を見下しています)
かすみ(台詞の応酬もなければ豪快なアクションもない。それなのに、)
かすみ(二人の睨み合いに、観客席の皆さんは息を呑んで見守っています。目が放せません) ベンッ♪
ベンッベンッベンッ♪
ベンベンベンベンベンッ♪
かすみ(鳴り響く三味線の音)
かすみ(お互いを睨み合い、微動だにしない二人の舞台に、幕が閉まっていきます)
かすみ(しず子の前を幕が横切る、その時━━━)
しずく「…………」チラッ
かすみ「!」ドキッ
しずく「…………」ニコッ
かすみ(今、一瞬しず子と目があって、微笑ってくれたような━━━)
ベンベンベンベンベンッ♪
パチパチパチパチパチ
ベンッベンッベンッ♪
パチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチ
ベンッ♪
パチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチ
かすみ(幕切れを告げる三味線と、割れんばかりの拍手)
かすみ(この臨場感は、かすみん達のライブとひけをとらないくらいです) 歩夢「……すごかったね。しずくちゃん」
かすみ「はい……」
かすみ「……歩夢せんぱい」
歩夢「?」
かすみ「……かすみん、不安でした」
かすみ「しず子、かすみんに話してくれたんです」
かすみ「舞台なんてもういいって」
かすみ「電源が切れちゃったって」
かすみ「電源を入れ直すのが、面倒だって」
歩夢「……うん」
かすみ「かすみんは何とかしず子を勇気づけようとしましたけど……今日までずっと、不安だったんです」
かすみ「しず子が、舞台に戻れるのか」
かすみ「かすみんの言葉が、しず子に届いたのか」
かすみ「しず子の恋人として、かすみんは無力なんじゃないかって」
歩夢「…………」 かすみ「でも、今日の舞台を見て……分かったことがあるんです」
かすみ「しず子は、こうして舞台に戻ってこれた」
かすみ「……かすみんのおかげだなんて言いたいわけじゃありません」
かすみ「侑せんぱいや皆さん、それに一番は、しず子自身の力で、舞台に復帰できたんだと思います」
かすみ「かすみんの力は1割くらいです」
歩夢「……1割だなんて、自己卑下し過ぎだよ」
かすみ「いえいえ、そのくらいですよ」
かすみ「……でも」
かすみ「たとえ1割でも、かすみんの言葉がしず子の支えになってくれたなら、それだけで嬉しい」
歩夢「……」
かすみ「かすみんは無力なんかじゃなかったって」
かすみ「しず子の恋人として、しず子に必要とされているって」
かすみ「そう思えるんです。今のかすみんは」
歩夢「……そっか」 かすみ「……今って、しず子、裏にいるんですかね?」
歩夢「う、うん。だと思うけど……」
ガタッ
かすみ「かすみん、今の気持ち、伝えてきます」
かすみ「別れようなんて、かすみん、間違ってました」
かすみ「頑張り屋さんのしず子を、恋人として、その特等席で、ずっと応援したい」
かすみ「そう伝えてきます」
歩夢「……!うん、頑張って」
かすみ「行ってきます!」
━━━━━━
━━━━
━━━ 【虹ヶ咲学園 楽屋前 廊下】
部長「……ふぅ」
「素晴らしい劇だったよ」
部長「……!」
「『山門』の出来映えは、石川五右衛門役の演者の力量に大きく左右される、独演に近い演目だ」
「並みの演者では見るに耐えられないだろう……しずくのような例外を除いてね」
「桜坂しずくという、うちの切り札を最大限に活かせる舞台として最適だ。つまり、題材選びがに優れていたわけだ」
部長「……」
「君の真柴久吉役も見事だったよ。衣装が質素で、台詞も少ないけど、五右衛門の放つ存在感に匹敵しなくちゃいけない」
「石川五右衛門以上に難しい役だからね」
部長「……ありがとうございます。部長」
「よしてよ。今の部長は君だろう?」
旧部長「私はもう、部外者同然さ」
部長「……」 旧部長「とりわけ良かったのは、最後の天下の見得」
部長「…………」
旧部長「あの説得力……リアリティーはかなりのものだった。仇敵である久吉と対峙した五右衛門の敵意……その憎悪が、観客のこっち側にも伝わってきた」
旧部長「まるで、しずくが本当に君のことを憎んでるかのような」
部長「…………!」
旧部長「私が在籍してた頃のしずくは、怒るとか、憎むとか、そういった演技はまだ改善の余地のある子だった」
旧部長「今日の彼女は、当時の彼女から想像もできない、見事なまでに怒りを表現できていた」
旧部長「どんな演技指導をしたんだろう? 気になるなぁ」
部長「……私は特別なにもしていませんよ。彼女の名演技は彼女による賜物です」
部長「なんせ彼女は『千両役者』ですからね」
旧部長「……ふーん、千両役者ねぇ」
旧部長「君の桜坂しずく評は、『大根役者』だったんじゃなかったっけ?」
部長「……!」 このためにあんなことしたという部分もあるのかな。だとしたら部長も演劇キチすぎるね 部長の悪行をお見通しとか旧部長の強者感えぐい
29秒のバリタチ女呼ばれるだけある 部長「どうしてそのことを……」
部長「まさか、同好会の人達があなたに喋って……」
旧部長「ああ、やっぱり君だったんだ」
旧部長「今回の一連の騒動を引き起こしたのは」
部長「……!鎌をかけた、わけですか」
旧部長「そう。私は演劇部の皆んなから話を聞いて、当てずっぽうで言ってみただけだよ」
旧部長「同好会? 何のことか、さっぱりだね」
部長「……嘘です。演劇部の部員のうち、ことの真相を知ってる人なんか居ないはずです」
部長「彼女達の話を又聞きしただけで、私を怪しいと思ったなんて、エスパーでもない限り不可能です」
旧部長「そうだろうね。普通の人間なら、そんな結論にはまず至らない」
旧部長「普通の人間ならね」
部長「…………」
旧部長「私は分かるよ。同業者だから」
旧部長「演劇に携わる人間だから、君の気持ちが手に取るように分かるんだよ」 旧部長「さて、せっかくだし、君の一連の行動に対する私なりの解釈を、この場を借りて聞いてもらおうかな」
旧部長「まず、犯行動機」
旧部長「去年の虹ヶ咲学園の好評を受けて、今年の演劇部部長である君は、去年を超える出来の舞台を目指そうとしていた」
旧部長「どうすれば去年を越えられるのか、君は考えに考えて……」
旧部長「桁違いの人気を誇る桜坂しずくに依存するという結論に至った」
部長「…………」
旧部長「となれば舞台の題材も、桜坂しずくが最も目立つことができるような作品が望ましくなる」
旧部長「そこで君は、『山門』が最適だと睨んだ……が、ある問題があった」
旧部長「桜坂しずくは怒りの演技が苦手だった、ということだ」 旧部長「『山門』の主役、石川五右衛門は、親の仇である真柴久吉に対して、激しい憤怒を向けている人物だ」
旧部長「物語終盤の『天地の見得』の場面も、五右衛門の強い憎しみがその背景にあるわけだからね」
旧部長「その点にかんして、五右衛門を演じるにあたって、桜坂しずくは力量不足だった」
旧部長「じゃあ、どうすればいいか。君はその演技指導を考えて、一つの結論に至った」
旧部長「簡単な話さ。桜坂しずくが君に怒りを覚えて、君が真柴久吉役を演じれば、桜坂しずくは五右衛門の憤りを追体験できる」
旧部長「だから君は、今回の事件を起こした」
旧部長「桜坂しずくから怒りを買うために、君は彼女のことを調べあげ、恋人の存在に目をつけた」
旧部長「恋人を捨てるように部長命令でも出せば、彼女から憎まれるのは当然のこと」
旧部長「そんなシナリオを目論んでいた……が、ここで思わぬ誤算が生じた」
旧部長「桜坂しずくが恋人の方を優先し、自主的に降板したからだ」 やり方はともかくしずくちゃんがこれで一皮むけたことは確かなのか これいい話風にしてるけど、やってること栞子やランジュと変わりないよな
人のためだからって本人に嫌がらせするの 旧部長「騒動に乗じてしずくを恋人と別れさせて、その怒りを舞台の上でぶつけてもらう」
旧部長「ところがしずくは恋人と別れず、舞台から降りてしまった」
旧部長「まさかしずくが自主降板するなんて思ってもいなかっただろうね。君は内心焦った」
旧部長「当然、舞台をおじゃんにする訳にもいかない。君自身が代役になって埋め合わせを図ったそうだけど……」
旧部長「正直な話、しずくが戻ってきたのは嬉しい誤算だったんじゃないかい?」
部長「…………誤算なんかじゃありません」
部長「彼女は必ず舞台に戻ってくると信じてましたよ」
旧部長「……」
部長「…スクールアイドル同好会の彼女がスクールアイドルとそのファンを信じていたように、」
部長「私も演劇部が舞台を捨てるはずがないと信じていましたから」
旧部長「……ふぅん?」 部長「確かに彼女の自主降板は意外でしたが……再登板する未来は目に見えてました」
部長「大方、私を犯人だと暴いて、犯行を明かさないことを交換条件に」
部長「なんせ私があの写真を仕掛けた張本人だと判明するのは、時間の問題でしたから」
部長「だってそうでしょう?」
部長「演劇部のインタビューが掲示されるあのタイミングで、わざわざ貼り出すなんて、犯人が身内だと言ってるようなものじゃないですか」
旧部長「……」
部長「あとは隙を伺って犯人しか知り得ない情報でも口に漏らせば……、私が怪しいという疑念は確信に変わります」
部長「ひどく疲れましたよ。降板を迫った立場である以上、桜坂さんの再登板を認めない演技をしながら、なんとしても再登板の流れに持っていく訳ですから」
部長「同好会の皆さんは本当によく立ち回っていだきました……。感謝しかありません」 この部長さんは演技のためなら殺人以外のことは大体やっちゃいそうだな 旧部長「……なるほど」
旧部長「君の行動理念は、今日の舞台の成功のために、か」
旧部長「今回の舞台『山門』は、君がしずくのために用意したようなものだ」
旧部長「この舞台にしずくが立つことが前提で、君はとある演技指導を試みた」
旧部長「演技指導━━━要するに、彼女の怒りの演技に説得力を持たせること」
旧部長「具体的には、騒動に乗じて恋人と別れるように強要し、やがてその騒動を起こしたのが自分自身だと明かすこと」
旧部長「そうすることで、しずくが君に憎悪の念を向けるように仕掛けた」
旧部長「その怒りを彼女なら、舞台上を演技に昇華すると、君は確信していたから」
旧部長「自主降板というアクシデントはあれど……結果的に彼女は舞台の上にあがり、素晴らしい演技を見せた」
旧部長「全ては君の計画通りだったわけだ」 旧部長「流石だよ。君に演技指導をさせたら右に出る者はいないだろうね」
旧部長「桜坂しずくも、スクールアイドル同好会も、そして観客も……全員が君の掌の上だったわけだから」
部長「……観客?」
旧部長「だってそうでしょう?」
旧部長「君が彼女の恋人の存在をああいった形で知らしめたことで、桜坂しずくに対する関心をさらに高めたわけなんだから」
部長「……」
旧部長「世間は、有名人の熱愛発覚だとか、そういった類いのスキャンダルが大好きだからね」
旧部長「演劇部の花形である桜坂しずくに恋人がいた、だなんて、そんなセンセーショナルな話題に飛びつかないはずがない」
旧部長「しずくの関心は虹ヶ咲のみならず他校にも広まっただろう。今日の観客席の盛り上がりを見れば明らかだからね」
旧部長「あっばれだよ、本当に」
部長「……お褒めに与り光栄です」 何があっぱれじゃ人の事なんだと思ってんだこいつら…… まあ旧部長さんも8話で降板ちらつかせてしずくを試してるしな
ここまで悪質じゃないけど ふたりとも一人の人間じゃなくて演劇マシーンとしか見てないよね……人として最悪だわ 旧部長「本当に尊敬しちゃうよ」
旧部長「君のように、そこまで舞台に情熱を注ぐことは私には出来ないからね」
旧部長「━━━役者の尊厳を踏みにじってでも、舞台の成功を優先する。そんな真似はね」
旧部長「演劇を志す者として、ほんと、あっぱれだよ」
部長「……」
旧部長「まあ実のところ、私も人のことは言えないけどね」
旧部長「去年の今頃……私が部長だった頃かな」
旧部長「主演を務める彼女の演技に関して、腑に落ちない部分があった。……だから私は、しずくに降板を伝えた」
旧部長「……あの時、しずくに辛い思いをさせたのは、今でも申し訳ないと思っているよ」
旧部長「だけど、彼女の殻を彼女自身で破るためには……彼女が演技を続けていく上では、そこが避けて通れない壁だったと思っている」
旧部長「怖かったよ。しずくに嫌われたんじゃないかってね」
旧部長「だから舞台が終わった後、しずく本人から感謝された時は、胸を撫で下ろしたよ」 旧部長「君がどう考えてるのかは知らないけど……少なくとも私は、しずくとの間に禍根を残したくなかった」
旧部長「一緒に活動するんだったら、ギスギスしないで、良好な関係の方がいいに決まってる」
旧部長「意味もなくギスギスしたり、グダグダとお互いを憎み合うだなんて、まっぴらごめんだね」
旧部長「そんなのは、三文小説の世界で十分さ」
旧部長「そう思わない?」
部長「……私のシナリオが、そうだって言いたいんですか」
旧部長「君のシナリオは完璧だよ。やや人間味に欠けている点を除けばね」
部長「あなたと私が、何が違うというんですか」
部長「やってることは、一緒でしょう」
旧部長「待って待って。君の大作と一緒くたにされるなんて恐れ多いよ」
旧部長「まあ、強いて言うなら……土台かな」
旧部長「しずくから好かれてるか、嫌われてるか。それだけじゃない?」
部長「……」
旧部長「…おっと、そろそろ時間かな」
旧部長「ごめんね。私はこれで、しずくの方に顔を出しに行くから、これで失礼するよ」
部長「……お疲れ様でした」
旧部長「うん、お疲れ」
旧部長「君が三文小説家でないことを、切に願うよ」 この部長を見てるとなぜかスラダンのエースキラー南を思い出す ━━━━━
━━━━
━━━
【桜坂しずく様 楽屋】
しずく「…………ふぅ」
しずく(楽屋へと戻ってきて、しばらくはあえて何も行動しない)
しずく(舞台上の興奮状態を冷ますのに必要なクールダウンの時間を取る)
しずく(それが私のルーティンワークになりつつある)
しずく「…………」
しずく(普段ならもう落ち着いてきてもおかしくない頃だけど……まだ体に熱を帯びている……)
しずく(やっぱり今日この日は……色んな意味でいつもと全然違う……)
コンコンッ
しずく「……!ど、どうぞ!」
ガチャッ
「やあ、しずく」
しずく「……!部長!……あ」
しずく「元…部長の方が適切でしたね」
旧部長「わざわざいいよ。しずくの呼びたいように呼んでくれれば」 部長も旧部長もしずくちゃんが化けてないでちゃんと本人で良かった 旧部長「お疲れ様。すごくいい舞台だったよ」
旧部長「しずくの演技も良かったよ。去年から更に磨きがかかっていた」
しずく「……ありがとうございます」
旧部長「……話は聞いたよ。大変だったね」
しずく「……!」
旧部長「頑張ったね。しずくは偉いよ」
しずく「……一時期は、本当にダメかと思いました」
しずく「全部投げ捨てたくなって、自分から役を降りたりして……」
しずく「目の前の世界が、灰色になってしまって」
旧部長「……」
しずく「だけど、私には……大切な人や、スクールアイドル同好会の皆さんが傍にいてくれて……」
しずく「そのおかげで、私の世界に彩りが戻ってきました」
旧部長「……そっか」
旧部長「しずくは愛されてるね」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています