にこ「そういえば穂乃果の家って行ったことないわね」
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練習終わり 帰り道
穂乃果「それで、海未ちゃんがまた怒ってさー……っと」
穂乃果「にこちゃんの家あっちだったよね、また明日ーっ!」
にこ「はいはい、また明日」
ダダダッ……
にこ「凄い勢いで走ってくわね……あんなハードな練習しといてよく体力残ってるわ」
にこ「さーて、私も帰ってこころ達にお夕飯作らなきゃ」
にこ「……」
にこ(そういえば私、穂乃果の家行ったことないわね) にこ(確か和菓子屋、って言ってたわよね……結構な人気店らしいけど)
にこ「饅頭でも買って帰ったらこころ達も喜ぶわよね。ちょっと穂乃果! おーい!」
シーン
にこ「もう見えなくなってる! しょうがないわねぇ……」
にこ(こっちに走っていったんだし、歩いてればそのうち着くでしょ)
にこ(海未とことりの家は行ったことあるんだし、あの二人と幼馴染ならそう離れてもない筈だし……)テクテク
にこ「っと」
『和菓子屋 穂むら』
にこ「ここよね? 穂の字が入ってるし」 にこ「にしても……」
『和菓子屋 穂むら』ドォォン
にこ(え、ここ私が入っていいところなの? 物凄く年季が入ってるというか高級そうというか)
にこ(財布の中800円ちょっとしか入ってないわよ? 大丈夫よね? いちご大福とか饅頭3つくらい買えるでしょ?)
にこ「ま、まぁ大丈夫よね。最悪穂乃果に用事がある振りして少し話して帰ったらいいんだし」
ガラッ
穂乃果「いらっしゃいませー! って、にこちゃん? どしたの、さっき別れたばっかじゃん」
にこ(良かった、合ってたみたいね)
にこ「何って、ふと和菓子食べたくなったのよ。そういうことあるでしょ?」
にこ「それにしても割烹着って……似合ってないわねぇ!」
穂乃果「言わないでよ! 制服だと衛生的にあれだって怒られるんだもん!」 にこ(さて、値段は……)
ほむまん 200円
いちご大福 300円
羊羹 8500円
にこ「意外と普通……えっ、羊羹めっちゃ高い」
穂乃果「えっ、羊羹買いに来たの? これめっちゃ高いよ」
穂乃果「お父さんが素材にこだわりすぎて、この値段で出さないと赤字になるけど高すぎて誰も買わない呪いの羊羹だよ」
にこ「買わないわよそんな恐ろしいもの! 来月のお小遣い前借りしても無理よ!」
にこ「そうね……ほむまん4つお願い」
にこ(こころ達とママの分でぴったりね。練習中にジュース我慢して良かったわ)
穂乃果「はいはい……っと、あれ。ちょっと待ってね、一個足りないや」 穂乃果「お父さーん! ほむまん足りないーっ!」
ほのママ「ちょ、ちょっとそんな大声で……! お客さんがびっくりしちゃうじゃない!」
穂乃果「大丈夫だよ、にこちゃんはμ'sの仲間だもん」
ほのママ「部活仲間でも店ではお客さんでしょ!? えっと、矢澤にこちゃんよね? 娘がいつもお世話になっています」
にこ「あ、いえ。そんな……」
にこ(この人が穂乃果のママ……綺麗な人だなぁ)
にこ(まぁ綺麗さならにこのママも負けてないけどね!)
穂乃果「それよりほむまんだよ! 4つ必要なのに3つしかないんだよ!」
ほのママ「はいはい。大丈夫よ、今新しいのを……」
ほのパパ「……」スッ
にこ「……っ!?」 穂乃果「お父さんありがとね、じゃあ4つで800円……」
にこ「……」
穂乃果「……にこちゃん? どしたの、お父さんの顔じっと見て」
穂乃果「あっ! まさか一目惚れ……駄目だよ! お父さんは穂乃果のお父さんだからね! なんちゃっ」
にこ「パパ……」グスッ
穂乃果「て?」
ほのママ「え?」
ほのパパ「……!? ……!!!?」
ほのママ「あなた?」
ほのパパ「……!」ブンブン
にこ「っ……」ダッ
穂乃果「ちょ、にこちゃん!? お、お母さん店番代わって! にこちゃん追いかけてくる!」 にこ「はぁ……はぁ……」
にこ(思わず逃げちゃったわ……あの人、穂乃果のパパよね?)
にこ(似てる……顔も、背格好も。死んだパパに生き写しだった)グスッ
にこ(もういないって分かってるのに……)
にこ「いけない、支払いまだなのに。お店に戻らないと……」
穂乃果「にこちゃーん!」グオオッ
にこ「へ?」
ドゴッ
にこ「がへっ!?」
穂乃果「やっと追い付いたよー。にこちゃん、さっきの何だったの……?」ギュッ
穂乃果「今頃多分お父さん死にかけてると思うよ。ママは浮気を疑うと容赦ないから」
にこ「も、戻るから放しなさいよ! こっちが死にそう……ぐぇっ!」ギュッ
穂乃果「あ、ごめん」パッ
にこ「はぁ……はぁ……背骨が折れるかと思ったわ……」 説明中
穂乃果「なるほど……」
ほのママ「にこちゃんのお父さんが、この人にそっくりだったと」
ほのママ「それでつい、パパって呼んじゃったのね」
にこ「はい……似ていたからとはいえ失礼なことを……」
ほのママ「いいのよ! あなたも疑ってごめんなさい、てっきり隠し子かと思っちゃって」
ほのパパ「……」
穂乃果「パパ大丈夫? 顔が引っかき傷だらけだけど……」
ほのパパ「……」シクシク
ほのママ「けど、どうして泣いたりしたの? いくら似てたからって……」
にこ「あ、いや……あはは。実はうちのパパ、三年前に……その、交通事故で……」 ほのママ「あ……あー……」
穂乃果「……地雷踏んだね。どうするのさこの空気」ボソボソ
ほのママ「仕方ないじゃない! 知らなかったんだから!」ボソボソ
にこ「あ、あははっ! 気にしないでください、三年も前のことなんだからもう吹っ切れてますし!」
にこ「さっきのもほら、不意打ちで……パパに似た顔が見えたから、だから……」
にこ「……い、妹達にご飯を作らなきゃいけないし帰りますね。お饅頭ありがとうございました」サッ
穂乃果「あ、にこちゃん!」
にこ「じゃあね、穂乃果。また明日学校で!」タッ
ほのパパ「……」
穂乃果「……にこちゃんのあんな顔、初めて見たよ」 穂乃果「吹っ切れたって言ってたけど、本当なのかなぁ」
ほのママ「多分嘘ね。だって、店に戻ってからあの子、一度もこの人の顔を見なかったもの」
ほのパパ「……」コク
ほのママ「そもそも……親の死なんてのは、そうそう吹っ切れるもんじゃないわよ。例えば、今日私が死ぬとするわね?」
穂乃果「うん……あんまり想像したくないけど」
ほのママ「三年後、穂乃果はどうなってる?」
穂乃果「大学生になってる」
ほのママ「そういうことじゃねぇんだよなぁ」
穂乃果「うーん……多分、普通にしてると思うよ。けど、毎日家に帰った時に、お線香あげたりするからその度に少し悲しくなったり、ふとした時に思い出したり……」
穂乃果「駄目だ、泣けてきた……」グスッ
ほのパパ「……」グスグス
ほのママ「あぁ、パパまで……大丈夫よ、私は死なないから。例え話よ例え話!」 穂乃果「……にこちゃんも、そんな気持ちで日々を過ごしてるのかな」
ほのママ「そんな境遇で、他人を笑顔にしようとしてるんだから立派よねえ。穂乃果も見習いなさい」
穂乃果「うん……」
穂乃果「けど、何だか悲しそうというよりは罰が悪そうというか後悔してそうというか……」ボソッ
ほのママ「何か言った?」
穂乃果「ううん、なんでもない」
ほのパパ「……」
ほのパパ「……」
ほのパパ「……」
穂乃果(パパも何か考え込んでるなぁ。無駄な「……」が多いし) 翌日
穂乃果「んー……」
海未「んー、じゃないですよ。練習サボって何処に行こうというんですか」
ことり「そうだよ、二年生だけ講習があるって言い訳で何とかなったけど……ラブライブもあるんだからしっかり練習しなきゃ駄目だよ」
穂乃果「いや、それはそうなんだけどさ。ちょっと気になることがあって……」
穂乃果「一人で行くには勇気が出ないというか何というか」
海未「それで、何処に行くんです」
穂乃果「にこちゃんの家」
海未「にこの家?」
ことり「こころちゃん達に何か用なの? またにこちゃんがバックダンサーだって仕込んでないか見に行くとか?」
穂乃果「違うよ! そういうのじゃなくてさ……」 ほのほのにこにこ
穂乃果「……ってわけなんだよ」
海未「にこがそんなことを……そうですよね。いつも明るく、ピエロのような役回りをしてくれていますが……」
海未「親を失う悲しみを、味わっていたんですよね」
ことり「泣くほどにパパに会いたかったんだねぇ。ことりもパパが死んだら泣いちゃうと思うもん」
穂乃果「うん、でもそれだけじゃない気がするんだよね」
穂乃果「何て言うのかな……にこちゃん、お父さんと何かあったんじゃないかなって」
海未「何か……破廉恥なっ!」バシンッ
穂乃果「痛っ! ち、違うよ! 海未ちゃんの想像してるようなナニかじゃないよ!」
ことり「海未ちゃんはすぐに破廉恥な方向に繋げたがるんだから……もう」 にこの家
ピーンポーン
穂乃果「……」
にこママ「はーい。……あら、どちら様?」
穂乃果「あ、えっと、その。私達は……」
海未「にこさんの部活の後輩です。いつも部活でお世話になっております」
穂乃果(海未ちゃん、こういう時は頼りになるなぁ……友達のお母さんって何か緊張しちゃうんだよね)
にこママ「あら、にこの? ごめんなさい、にこはまだ帰ってないのよ」
穂乃果「いや……実は、にこちゃんのママに聞きたいことがあって」
にこママ「私に? いいわよ、立ち話もあれだし上がって上がって」
ことり「いいですか?」
にこママ「ええ。今日は仕事も珍しく休みだし、時間もあるから」 海未「確かに……にこの母親はいつも働いていると言っていましたし。もしいなかったらどうするつもりだったんですか」ボソボソ
穂乃果「そ、そこまで考えてなかったよ。いいじゃん、いたんだから結果オーライだよ」ボソボソ
にこママ「? どうしたの?」
ことり「い、いえ。あはは……何でもないです」
にこママ「それで、私に聞きたいことって……?」
穂乃果「えっと。にこちゃんのお父さんのことなんですけど……」
にこママ「……」
穂乃果「この前、にこちゃんが私の家に来たんです。その時、私のお父さんの顔を見てにこちゃん泣いちゃって」
にこママ「泣いた? にこが?」
穂乃果「は、はい。これ、お父さんの写真なんですけど……」スッ
にこママ「……驚いたわね。あの人そっくりじゃない、顔も何もかも……洋服を着てたらうり二つよ」 にこママ「そうね、確かにあの人にしか見えない。気丈に振る舞ってるけれど、あの子もまだ子どもだもの」
にこママ「泣いても仕方ないわ……」ウルッ
穂乃果「……」
ことり「うぅ……なんだかこっちまで泣きそうだよ……」
穂乃果「ただ、少し違う気がするんです」
にこママ「違う?」
穂乃果「会えて嬉しいというよりは、戸惑っているような、罰が悪そうな顔を一瞬したんです」
穂乃果「ひょっとして何ですけど、にこちゃん……お父さんが死ぬ前にお父さんと何かあったんですか?」
にこママ「……あの人が、死ぬ前」
海未「そ、そんな直接的な言い方! 失礼ですよ、穂乃果!」
ことり「そうだよ! 旦那さんが亡くなった時のこと思い出させるなんて……」
穂乃果「そ、そうなんだけど気になっちゃって……」 にこママ「確か……あの日、あの人が交通事故にあった日……」
にこママ「原因は覚えてないんだけど、朝からにことパパが言い合いをしてたわ。多分些細なことだったと思うんだけど」
にこママ「あの子も反抗期だったから、散々パパを罵って。最後に「死んじゃえ」って吐き捨てて家を出ていったの」
にこママ「その日の昼、あの人は車に轢かれて死んじゃったのよ。「死んじゃえ」って、相手が死なないと思ってるから言える言葉よね……」
穂乃果「……」
にこママ「もしかしたら、その言葉を謝れなかったことを今でも気にしてるのかもしれないわね……」
海未「……にこさんは」
にこママ「……?」
海未「にこさんは、いつも皆を笑顔にしようとしています。わざと滑稽に振る舞ったり、ファンへのサービスもかかしません」
ことり「贖罪なのかな……父親を笑顔に出来なかったことの」
穂乃果「……」 にこママ「言われてみれば、そうかもしれないわね……昔から人を楽しませるのは好きだったけど」
にこママ「あの人がいなくなってから、余計にそうやって振る舞うことが多くなったかもしれないわ」
穂乃果「……」
にこママ「バカねぇ……気にしたって、もう謝ることなんて出来ないのに」
穂乃果「……あの」
にこママ「うん?」
穂乃果「一つ、提案があるんですけど……」
ボソボソ……ゴニョゴニョ……
海未「……そ、それは」
ことり「実現……できるの?」
にこママ「……」
穂乃果「分からないけど……にこちゃんがこれで吹っ切れるなら、やってみる価値はあると思う」
穂乃果「私の自己満足かもしれないけど……」
にこママ「……分かったわ」 にこママ「私も協力する。けど……いいの?」
にこママ「穂乃果ちゃんのお父さんに、あの人の演技をしてもらうなんて……」
穂乃果「大丈夫だよ、お父さん何だかんだお願い断れない性格だから」
海未「今から説得しに行くんですか!?」
ことり「そ、そもそも穂乃果ちゃんのパパって凄い無口じゃなかった!? ちなみににこちゃんのパパも無口だったり……?」
にこママ「あの人は口から先に生まれてきたようなタイプだったわね……」
海未「駄目じゃないですか!」
ことり「声聞いたこと二回しかないよ、私」
穂乃果「だ、大丈夫だよ! 喋れないってわけじゃないんだから!」 穂むら
ほのパパ「……」
穂乃果「ね、いいでしょ!? にこちゃんの後悔を断ち切る為に、手を貸してよっ!」
ほのママ「そういう事情なら私はいいけど……」
ほのママ「この人、ほとんど喋らないし大丈夫なの? 余計に気まずくなったりしない?」
ほのパパ「……」
穂乃果「そ、それはそうだけど……お父さん、やっぱり駄目?」
ほのパパ「……」
ほのパパ「ん……」
穂乃果「お父さん!? 喋った……お父さんが喋った!?」
ほのママ「まぁ……声を発したのは五年振りね」
ほのパパ「……その、子の。お父さんが話している、ビデオがあったら……持ってきて、くれ」
穂乃果「お父さん……それって!」
ほのパパ「……出来る限りは、協力する」
穂乃果「やったぁ! お父さん大好き!」ギュウッ 穂乃果(その日からお父さんの特訓が始まった)
にこパパ『やぁ、おはよう』
ほのパパ「や、やぁ……おはよう」
講師「発音が違う、もう一度。何度も言ってるでしょう」
穂乃果「き、厳しいねあの講師の人……」
ほのママ「お父さんの高校時代の同期で、桜坂さんっていうの。本人も舞台俳優だし、娘さんも舞台女優を目指してる筋金入りよ」
ほのパパ「ただいま、今帰ったよ」
講師「だからね、高坂。矢澤さんはただいま、の「い」にやや上振れのアクセントがあるんだって……君、もっと矢澤さんを観察しなさい」
ほのパパ「……はい」
穂乃果「何か予想よりとんでもないことになってきたぞ……!」 穂乃果(そして……)
ほのパパ「にこ、最近は……ええと」
講師「アドリブ力が足りない! 矢澤さんになりきればその後は自然に出てくる筈だ!」
穂乃果(店のこともほぼそっちのけの練習で……)
ほのパパ「こころ、ここあ。寂しかったか……?」
講師「うん、もう少し語尾を切り上げ気味にするとより矢澤さんらしくなるね」
穂乃果(一週間が過ぎたのだった)
ほのパパ「虎太郎、大きくなったなあ。お前のお父さんだよ」
ほのパパ「今まで寂しい思いをさせて悪かったな。いっぱい甘えてくれよ」ニコッ
講師「……ヨシ! 素晴らしい、今の君は高坂ではない。胸を張ってこう言いたまえ……私は矢澤だと!」
穂乃果(そして、ついにその日が来た。にこちゃんの家に、お父さんが向かう日が……) ほのパパ「……」
穂乃果「大丈夫? 緊張してない?」
ほのパパ「……」コクッ
穂乃果「隣の部屋にいるから、何かあったら一緒にすぐ謝るからね」
ほのママ「矢澤さんの旦那さんの振りしても、あなたは私の夫なんだからね? それを忘れてもし、雰囲気で矢澤さんとキスでもしようとしたら……折るから」
ほのパパ「……」ゾッ
穂乃果「だ、大丈夫だよ……今までの浮気騒動だって全部お母さんの勘違いだったし。お父さんはお母さん一筋だよ」
ほのママ「ならいいけど……」
ほのパパ「……」ドキドキ にこの家
ピーンポーン
ほのパパ「……?」
ほのパパ「……!」
にこママ「はいはい、いらっしゃい。……じゃなくて、おかえり」
ほのパパ「ただいま、久しぶりだね」ギュッ
にこママ「……! あはは……練習してきてくれたんですね、本当に……あの人、そっくりな言い方」
穂乃果「ちょ、役に入りすぎだってお父さん……! ママに叱られるよ!」
穂乃果「ところでにこちゃんは……」
にこママ「手筈通り、今はこころ達と買い物に行ってくれてるわ。もうすぐ帰ってくる筈よ」
穂乃果「じゃあ私は隣の部屋に隠れてるから……その調子なら大丈夫だと思うけど、しっかりやってよ!」
ほのパパ「分かってるよ。ありがとうね、色々と娘に気を回してくれて」
穂乃果(あの講師の人やりすぎだよ……役に入り過ぎちゃってんじゃん……) にこママ「今日はありがとうございます、娘の為にこんなに……」
ほのパパ「そんなに他人行儀なこと言わないでよ。今日は、僕が本当のお父さんなんだから」
にこママ「そう、よね……」グスッ
にこママ「ごめんなさい、本当に、本当にあの人に似てるから……」
ほのパパ「……大丈夫だよ。泣かないで」ナデナデ
にこママ「……」
にこママ(ああ……私が泣いていると、こうして頭を撫でてくれる)
にこママ(いつもあの人がやっていた癖。本当にあの人が目の前にいるみたい……)
穂乃果(わー……動画撮って後でママに見せてやろ)ジー ガチャ
にこ「ママーっ、帰ったわよー。ん……お客さん来てるの?」
にこ「ああ、こら。こころ、ここあ、虎太郎! ちゃんと靴を揃えて手を洗いなさい」
ほのパパ「しっかりした子になって……!」
ほのパパ「……」
にこ「ごめんなさい騒がしくっ……て……」
にこ「え……あ、ああ! 穂乃果のパパ、ですよね!? なんで私の家に……」
にこママ「この人はパパよ」
にこ「へ……?」
にこママ「にこ、パパに最後に言ったあの言葉……ずっと気にしてるんでしょ? だから、穂乃果ちゃんがこういう場を作ってくれたの」
にこ「……」
ほのパパ「……にこ、三年振りだね。あの頃より少し背が伸びたかな?」
にこ「……」
ほのパパ「にこ?」
にこ「……くだらない」 にこママ「ちょっと、にこ……!」
にこ「私のパパは……もういないの。偽物に謝ったって……何も変わらないのよ」
にこ「穂乃果、いるんでしょ?」
穂乃果「!」ギクッ
穂乃果(ば、バレてる……)
にこ「あんたが気を使ってくれたのは嬉しいわ。けど、何だか……ごめんなさい」
にこ「……気分が悪いわ、悪いけど先に部屋に行くわね。穂乃果のパパもごめんなさい、こんな私の為に付き合ってくれて」
にこママ「にこ? 待ちなさい、にこっ!」
タタタッ
にこママ「にこ……」
ほのパパ「……そりゃ、そうだよなあ。受け入れられないよな……」 こころ「お姉さまが怒ってましたけど、何が……お父さま!?」
ここあ「パパ!? えっ……本当にパパだー!」
ほのパパ「あぁ、こころとここあか。大きくなったなあ、たった三年のうちに随分身長が伸びたじゃないか」
ここあ「死んだと思ってたよー! 帰ってきたんだねっ!」ダキッ
こころ「えっ、あれ? だ、だってお父さまは……確かに私、お骨を拾って……あれ?」
虎太郎「ねーちゃー?」
ほのパパ「虎太郎! パパだよ、覚えてない……どころじゃないよな、あはは」
虎太郎「ぱーぱ? ぱーぱ!」
ほのパパ「どうした? こころもこっちにおいで、学校のこととか、色んなことを聞かせてほしいんだ」
ほのパパ「ずっと……離れ離れだったからね」
こころ「う……お父さま。私、私……寂しかったです……!」ギュッ
にこママ「……」グスッ
穂乃果(おかしいなぁ……私の想像だとにこちゃんもこうなる筈だったのに……) こころ「それで、跳び箱8段を飛べて先生に褒められたんです!」
ほのパパ「そうか……こころは運動神経が良いんだなぁ!」
ここあ「私はね、作文が銅賞取ったんだよ! あのね、皆の前で読んだんだよ!」
ほのパパ「ここあは文章を書くのが得意なんだね。将来は小説家かな?」
虎太郎「あー」
ほのパパ「おっ……この絵、パパかい!? 虎太郎は絵が上手いなぁ、嬉しいよ」
こころ「わ、私もお父さまの絵を描きます!」
ここあ「ここあも描くよー!」
アハハ……ワハハ……
にこ「……」 にこ「皆……楽しそうにしてるわね」
にこ「私もあんな風に楽しめたら……穂乃果のパパにも悪いことしちゃったわね。いつか謝りに行かなきゃ」
にこ「……パパ」グスッ
コンコン
にこ「……」バッ
ほのパパ「にこ、まだ起きてるかい?」
にこ「……」
ほのパパ「……ごめんね、そんな顔させるつもりじゃなかったんだ」
ほのパパ「少しでもママやにこ達が、心安らいでくれたら……そう思っただけなんだよ」
ほのパパ「僕も……会いたかったしね」ボソッ
にこ「……穂乃果のパパ、あなたの気持ちは分かるわ。私の為にやってくれてるってことも分かるけど……パパのことは、誰にも踏み入ってほしくないの」
にこ「ごめんなさい、皆みたいに……信じ込んで、楽しめればいいのに」 ほのパパ「……にこ」
ほのパパ「君ににこと名付けた理由、覚えてるかい?」
にこ「……」
ほのパパ「世界中を笑顔に出来るように……君の名前を呼ぶ人が、皆「にこっ」と笑えるように。僕はそう言ったよね」
ほのパパ「けどね、にこ。笑顔にならなきゃいけない人……世界中の人の中にはね、君も入ってるんだ」
にこ「……!」
にこ(この話……確か、聞いたことがある……けど)
にこ(ママが話した? いや、でも……)
ほのパパ「笑顔になる魔法はもう教えてるよね。にっこりの呪文、笑顔の呪文……皆が幸せになる呪文だ」
ほのパパ「……僕を信じてくれとはもう言わないから。一度だけ、一度だけでいいから……」
ほのパパ「パパに……笑顔を見せてくれ。お願いだから……!」グスッ
にこ(ママは知らない……知っているのは名前の由来だけ。これを考えたのがパパだってことは……知らない!)
にこ「パ、パ……?」
ほのパパ「……」グスッ にこ「まさか……本当に、パパなの?」
ほのパパ「そうだよ……本物のパパだ。僕にも何でこうなったかは分からないけど、家のチャイムをならした瞬間」
ほのパパ「僕はここに立ってた。自分が死んだってことも、三年ぶりに会えたってことも不思議とすぐに分かったんだ」
ほのパパ「……にこ、また会えて良かった。本当に……」グスグス
にこ「パパ……!」ギュッ
にこ「ごめんなさい……あの時、酷いこと言って! 死んじゃえ、なんて言って……!」
にこパパ『朝食はしっかり取りなさい! 成長期なんだから……』
にこ『うるさいなぁ……ダイエット中って言ってるでしょ!』
にこパパ『うるさいって……お前の体重でダイエットなんかいらないよ。身体を壊したら……』
にこ『何でパパが私の体重知ってんの!? キモい……死んじゃえ!』
にこ「パパはずっと私のことを大切に思ってくれてた! なのに……ごめんなさい、ごめんなさい……!」グスッ
にこ「うぁ……ぁぁん!」 ほのパパ「……にこ、泣かないで」
ほのパパ「いいんだ、僕は何も気にしてないから。君の健やかに成長した姿を見れただけで……嬉しいから」
にこ「パパ……」
ほのパパ「ほら、前に教えただろう? 笑顔になれる呪文……」
にこ「うん……パパ、一緒にやってくれる?」
ほのパパ「あぁ、勿論だよ。……せぇの」
にこパパ・にこ「「にっこにっこにー!」」
にこ「あは……あはは」
ほのパパ「……これから辛いことがあるかもしれないけど、挫けず前を向いて……笑ってくれよ、にこ」
ほのパパ「……!」ビクンッ
ほのパパ「……?」キョロキョロ ーーーーー
ーーーー
ーーー
にこママ「今日はありがとうございました、皆眠るまで遊んでくれて……」
ほのパパ「いえ……」
にこママ「……」
穂乃果「ふぇー……もう終わったの? 途中から寝てたよ……」
にこ「穂乃果」
穂乃果「ふぁっ! にこちゃん!? そ、その……ど、どうだったかな!?」
にこ「……ま、ありがとね。スッキリしたわ」
にこ「会いたかった人に会えたし、ね」
穂乃果「?」
ほのパパ「帰るぞ……」
穂乃果「あ、待ってよー! 置いてかないでぇ! にこちゃん、また明日ね!」
にこ「ええ、また明日」 穂乃果(あの後は特に何もありません)
穂乃果(けれど、にこちゃんはほんの少しだけ晴れ晴れとした顔をするようになりました)
穂乃果(お父さんは帰り道の車で、不思議な話をしてくれました)
穂乃果(にこちゃんの家に入った辺りから記憶が飛んで、気付いたらにこちゃんの部屋にいたそうです。多分若年性痴呆です)
穂乃果(可哀想に)
穂乃果(後、何でか分からないんだけど)
にこママ「美味しそうな和菓子ね……毎日生地を練ってるからこんなに腕が太いんだ」
ほのパパ「……」ドギマギ
ほのママ「近くない? すいません、人の旦那にあんまり近寄らないでくれます?」
にこママ「あぁ、そうですよね。まだあなたの旦那ですもんね」
ほのママ「まだ?」
穂乃果(にこちゃんのお母さんが、仕事終わりに毎日うちに来ます)
完 なんか規制されたんで茸で
探偵ナイトスクープ見て勢いで書きました
ありがとうございました 独りよがり過ぎない?
これ題材が穂乃果やにこの話じゃなかったとしたら自分で読んでみてどう?面白いと思える??
はっきり言ってつまんないよね ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています