璃奈「重ねてきたら」愛「ここにいたの」
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りな「なんで!?やだっ!!!」
母「ごめんね……お父さんもその日はちゃんと休める予定だったんだけど……」
りな「うそつき!!!!」
母「ほら…わがまま言わないで……来週は絶対みんなで行けるようにするから、ね?」
りな「もういかない!!!せんしゅうだっていけるっていってたのにあそびにいけなかったもん!!!おとうさんもおかあさんも!りなよりおしごとのほうがすきなんでしょ!?」
母「そんなことない!!お母さんもお父さんも璃奈ちゃんが一番大切で……」
りな「もういい!!」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
愛「おばーちゃん?もう動いていい?」
祖母「もうちょっと……よし」
愛「ふぅ」
愛「これ毎年書かなきゃダメ?」
祖母「そらそうだよ、愛ちゃんの成長記録だからねぇ」
祖母「この柱を見るたんびに、愛ちゃんは大きくなったねぇ……って思うんだよ」
愛「なんかハズい……」
祖母「ここが小学校に入学したときのだ、こんときはまだまだばあちゃんより背が低かったのにねぇ……6年でずいぶん伸びたもんだ」
愛「も、もういいじゃん///」
祖母「そうかい?……じゃあ、制服の写真を」
愛「入学式の前も撮ったじゃん!」
祖母「あら、そうだったかい……」
祖母「入学式はどうだった?」
愛「うーん………あ!聞いて!もう友達できたんだ〜!」
祖母「そら良かったねぇ、さすが愛ちゃんだ」
祖母「………にしても、まったく、こんな祝いの日にも休めないなんてねぇ………」
愛「………」
愛「……いーよ別に、おばーちゃんがいてくれれば十分十分♪」
愛「ほらなんか、甘いもの食べ行こ?おごるよ」
祖母「何を言ってんだい、中学生が奢るなんてなぁまだまだ早いよ」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「算数理科は相変わらず素晴らしい理解度ですね。学力調査も全国上位に入ってますよ」
母「そうですか」
「……ただ、文系科目の方はあまり芳しくないですね……璃奈さんは、成績が極端と言いますか……」
璃奈「………」
「お母様は中学受験など考えていらっしゃいますか?」
母「中学受験、ですか」
母「……璃奈ちゃん、どこかいきたい中学はある?」
璃奈「……特にない、です」
「では、進学はそのまま持ち上がりということで……」
母「……」
母「どこか、理系が得意なことを活かせるようなところはありませんか?」
「………そうですねぇ………少々お待ちください」
「………あ、あった……近い場所ですと、ここですかね。資料どうぞ」
母「あ、どうも」
「これは内部進学後の高等部の話になりますが、情報処理学科という全国でもレベルの高い理系の学科がありまして」
「璃奈さんの学力なら十分狙えると思いますよ。もちろん、多少は文系科目の成績も上げていかなければいけませんが」
母「………わかりました、ありがとうございます」
「はい、宜しければご検討ください」
璃奈「………」 ──────
────
璃奈「……お母さんは、その中学に行って欲しいの?」
母「え?……ああ……そういうわけじゃなくてね」
母「せっかく璃奈ちゃんには得意なことがあるんだから、どうせ勉強するなら得意なものの方がいいかなって思って」
母「………」
母「璃奈ちゃんが決めることよね、ごめんね、お節介だっわね……」
璃奈「………」
璃奈「………ううん、そんなこと、ないよ」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「……うん、いいよ」
璃奈「その中学、行く」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
美里「もう友達できたの?」
愛「うん、おもしろそーな子いっぱいいるんだよ〜!」
愛「ずっとダンスやってた子でしょ?乗馬が趣味の子でしょ?あとあと、論文読むのが好きな子とか!」
美里「あはは、随分個性的だね」
愛「でしょでしょ?でも、面白いけどみんないい子なんだ♪」
美里「ふふ、愛ちゃんがいい子だから、友達もいい子なのね」
愛「あはは、そうかな?」
美里「そうよ」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はー、ひま」
「なんか涼しくなったね」
「なんかやろー」「なにする?」
「あ、トランプあるよ」「うぇーいやろやろ」
「日当たりいいとこでやろ」
「どこ?あの机?」「あれ、だれの机?」
「さぁ」「真顔でしょ」「あー」
「休み時間いっつもいないね」
「前図書室いるのみたよ」
「なんかべんきょーしてたよ」
「うえーまじめ〜」
「しばらく戻ってこないっしょ」「使っちゃえ」
──────
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「(……休み時間は、図書室に行って)」
璃奈「(放課後も、塾に行って)」
璃奈「(べんきょうのこといっぱい考えてれば……)」
璃奈「………」
璃奈「(………さみしくない、さみしくない)」
璃奈「(……さみしく、ない)」
璃奈「………」
璃奈「………」カキカキ ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はーい、HR始めるから席ついてー」
「今日は………あいつらまた欠席かぁ」
愛「………」
──────
────
「そこの席の人よく休んでんね」
「まー不良だからね」
愛「知ってんの?」
「あ、うん。小学校同じだったけど、その頃からよくサボってたよ」
「今も他のクラスの子とつるんで夜とかでも遊んでるみたい」
「へー、この学校にもそういうのいるんだ」
「ねー」
愛「……ふーん」
「なんか親が厳しいらしくてさー、嫌になってグれたっぽいよ?よく親の文句言ってたし」
愛「親の………」
愛「そっか、そうなんだ」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
璃奈「………」カチカチッ
璃奈「………」
璃奈「………」ジーー
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「…………あ」
璃奈「(……あった、受かってた)」
prrr!
璃奈「!」
璃奈「……もしもし」
母『もしもし!おめでとう璃奈ちゃんっ!!』
璃奈「うん、ありがとう」
母『今日は早く帰るから、待っててね!』
璃奈「うん」
母『おめでとう璃奈ちゃん、よく頑張ったね、すごいね』
母『あっ、もう切らなきゃ……じゃあね!おめでとう!』
璃奈「うん、じゃあね」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「(……お母さんの前で、ちゃんと嬉しそうな顔、できるかな……)」 ──────
────
母「ただいまーっ!!」
母「ごめんねっ、遅くなっちゃって!」
母「………あれ?」
母「………璃奈ちゃん……?」
母「………」
母「………部屋かしら」
ガチャ…
母「……璃奈ちゃーん………?」
璃奈「………」
母「寝ちゃった……?」
璃奈「………」
母「………」
璃奈「………」
母「………はぁ……ごめんね……」
母「………」ナデナデ
璃奈「………」
璃奈「………」
あんなにお母さんと一緒にいたいって、お話したいって思ってたのに、
面と向かってこの顔を見られるのが、見せるのが
なんだか、怖かった。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
母「愛ー?いるでしょー?」
母「愛ー?」
愛「……ふぁぁ……なに………?」
母「お父さんが風邪だからちょっとお店手伝って、今日暇でしょ?」
愛「………」
愛「(店休めばいーじゃん……)」
母「お小遣いあげるから」
愛「……」
愛「……チッ…」
愛「………」
愛「わかった」 ──────
────
──
─
愛「いらっしゃいませ〜!」
愛「お好きなお席へどうぞ〜」
──────
────
母「はい、これ5番テーブル、お願いね」
愛「ん」
愛「お待たせ致しました!チーズミックスもんじゃです」
──────
────
愛「少々お待ちくださいっ」
愛「………お会計だって」
母「はいはーい」
母「あ、3番テーブル、お皿下げてきて」
愛「……ん」 ──────
────
──
─
母「お疲れ」
愛「うん」
母「……お父さん、だいぶ良くなったから明日は大丈夫そう」
愛「……あっそ」
母「ちょっとは心配したら?」
愛「全然休まないからそーゆーことになるんでしょ」
愛「自業自得じゃん、バッカみたい」
母「ちょっとあんたなんでそんなこと言うの!?」
愛「なに!?ほんとのこと言っただけじゃんっ!!」
母「お父さんはね「はいはいお父さんもお母さんもお店支えて頑張ってるから我慢しろっててんでしょもう聞き飽きたよそれ!!!」
母「っ!!」
愛「……チッ」スタスタ…
母「……」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
璃奈へ
合格おめでとう!!!
直接祝ってあげられなくてごめん。その代わり、お祝いのプレゼントを何箱か送るから、お楽しみに!
そうそう、工具はお父さんの部屋にあるの使って。部品が欲しいならいつもみたいに注文していいからね。なにに使うかは………それもお楽しみ!
璃奈の夏休みまでには帰れるようにするから、それまで最初の中学生活楽しんで!
────────
璃奈「っと……」
璃奈「(2箱……)」
璃奈「こっちは……」
璃奈「!」
璃奈「………ワンちゃん」
璃奈「……」
璃奈「型ロボット?……ロボットだ……!」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「(……ワンちゃんか………どうせなら……)」
璃奈「(ううん、せっかく送ってくれたんだから、文句はなしっ)」
璃奈「……で、こっちは………」
璃奈「あ、服だ」
璃奈「………?」
璃奈「………あれ」
璃奈「………おっきい……」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「わぁ……ぶかぶか……」
璃奈「………」
璃奈「(えへへっ、ぶかぶか〜……)」 ──────
────
母「………ただいまー………」
ガチャ…
璃奈「…………すぅ……」
璃奈「……すぅ………」
璃奈「………」
母「………」
母「………」ナデナデ
璃奈「………」
母「………」プニプニ
母「……?」
母「……あら……これって」
母「(………こんなの着てたことあったかしら……何だろう……いつの間に……)」
母「(……あ、あの段ボール)」
母「(そういうことね)」
母「(はぁぁ〜、まったくやだわあの人全然サイズ合ってないじゃない)」
母「(さては、自分の服がそうだからって娘の服までネットで買って送ってきたわね……!)」
母「(サイズ指定ミスるくらいならちゃんと直接店行って買って送ってこいってのよ!!)」
母「(今度帰ってきたら絶対文句言ってやるんだから……!)」
璃奈「………」
璃奈「……ん……」
璃奈「………」
璃奈「……♪」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あー、だりぃ」
「それな」
「3時間目行く?」
「行くわけねーじゃん」
「だよねー」
「はぁ……まーたクソババアにどやされたし、やってらんねー」
「あ、最近さー、8時過ぎぐらいに教師がゲーセンとか見廻ってんの、知ってる?」
「あたし見たことあるわ」
「は?ウザ」
「クソだわぁ」
「カラオケは?」
「たまにいるらしーよ」
「はーー、ウッザ」
「夜遊べねーじゃん」
「あんたん家行こーぜ」
「むりむり、あーしの家もクソババアがうるせーし」
「………」
「ねぇねぇ」
「アタシ、いいとこ知ってるよ」 ──────
────
──
─
「おらっ!」
「チッ」
「しゃっ」カキーーン
「おーー」
「当たった当たった!」
「はっ、あいつガチってんじゃん、ウケるw」
「にしても、バッセンは思いつかなかったわ」
「頭いーね、あんた」
「へへへ、どうも」
「でもあんた、あーしが言うのもアレだけどさ、こんなんとつるんでていーわけ?」
「こんなん言うなしw」
「………いいよ。なんかさ、楽しそうだったから」
「………」
「ふーん」
「あ………そういや名前も聞いてなかったわ」
「なんてーの?」
「アタシ?」
「んー……」
「愛さん、って呼んでよ」 ──────
────
──
─
愛「ただいまー」
祖母「あ、やっと帰ってきたよ。おかえり愛ちゃん、随分遅かったねぇ」
愛「……あー、ちょっとね」
祖母「……?」
祖母「ご飯は?」
愛「食べる!」
祖母「そう、じゃあ温め直すかね」
愛「あ、いいよ、自分でやっとく」
祖母「そうかい?」
愛「うん」 ──────
────
──
─
愛「それでね、先生まで笑っちゃっててさ」
美里「ふふふ………あ」
美里「よし、できた」
愛「みせてみせて!」
愛「わっ、すごい……ホンモノのお花みたい……!」
美里「そう?ありがと」
美里「はー、もうやることなくなっちゃった、明日はどうしようかしら」
愛「明後日だっけ、退院」
美里「うん」
愛「そっか」
美里「………あ、もうこんな時間」
美里「愛ちゃん、そろそろ」
愛「えー」
愛「……もう少し居ちゃダメ?」
美里「ダメよ、おばあちゃん心配するでしょ?」
愛「おばーちゃん今日老人会で帰り遅いもん」
美里「……ほら、お父さんとお母さんも心ぱ」
愛「しないよ」
美里「!」 美里「……そんなこと、ないわ」
愛「……」
愛「………あるよ」
愛「アタシのことなんてどーでもいんだよ」
愛「アタシだって向こうのことどーでもいいし」
愛「………」ムスッ…
美里「愛ちゃん………」
美里「………」
愛「………」
美里「ちょっと、こっち向いてくれない?」
愛「え?」
美里「……よいしょ、っと」
美里「ん、いい感じ」
愛「このお花……いいの?」
美里「うん、愛ちゃんにあげるわ」
美里「ふふ、いくつになっても寂しがり屋さんなんだから」
美里「この花を私だと思って、ね?」
美里「そしたら、寂しくない?」
愛「さ……寂しいとか……もう中学生だよ?」
美里「ふふ、いくつになっても、愛ちゃんは愛ちゃんよ」
美里「あ、差し込んだだけだから、取れやすいかも」
愛「……ありがと」 ─────
────
──
─
「よっ」ゴロゴロゴロ………カコーーン
「うぇーいストライク〜」
「うぇ〜い、やるじゃん」
愛「ナイスー!」
「いやー、ほんと、穴場よく知ってんね」
「このボーリング場とか潰れてんのかと思ってたし」
「よっ、愛さん!」
愛「ふっふっふっ、愛さんに任せなさい!」
「ふぅーー!かっけー!w」
prrr! prrr!
「誰か電話なってない?」
「あーしじゃないよ?」
「誰のー?」
愛「……あっ……」
「愛さんのやつか」
愛「………」
愛「………」
愛「……いいや」
愛「続き、やろ」
「おー」 ──────
────
──
─
美里「愛ちゃん、大丈夫?」
愛「え?」
美里「ここのところ、なんだか元気ないみたい」
愛「そんなことないよ?」
美里「……そう?」
愛「うん」
美里「………」
美里「……最近はどんなことしてるの?」
美里「なにか、楽しかったことはあった?」
愛「んーとね、あ、みんなでボーリング行ったよ!」
美里「……そう」
美里「……無理、してない?愛ちゃん」
愛「えっ……?」
愛「………」
愛「……してないよ」
愛「……あっ!もうこんな時間だ!そろそろ行くね!」
愛「じゃあね、おねーちゃん」
美里「あっ」
美里「………」
美里「………」
美里「………愛ちゃん……」 ──────
────
──
─
愛「ただいまー」
母「愛……!」
愛「!」
母「最近ちょっと帰りが遅すぎるんじゃないの?」
愛「……」
愛「……何、急に。おばーちゃんに聞いたの?」
母「そうだよ」
母「おばあちゃん心配してたよ?」
愛「………」
愛「……おかーさんは心配してないんでしょ」
母「何バカなこと言ってんの!心配してるよ!」
愛「………」
愛「はっ、どうだか」
母「!」
愛「何にしたっておかーさんには関係ないし」
母「っ!……関係ないわけ……」
母「ちょっと!愛!待ちな!」
母「愛!!………」
母「………」
母「………まったく」 ──────
────
──
─
「しゃあー!1位〜!」
「はぁ〜?もっかいもっかい!もう1レース!」
「やだし」
「あー?やろーぜー?」
愛「………」
「……てかあいつ遅くね?」
「あー、また親に捕まったんじゃね」
「うわ、サイヤクじゃん」
「親ってなんでどこもクソみたいなのしかいないんだろーね」
愛「!」
「ほんっとそれなぁー」
「親とか無視してみんなでこういうことしてんのが1番楽しいわ」
「ね?」
愛「えっ?う、うん」
愛「………」
これって
楽しい、のかな ──────
────
──
─
愛「………」ソー…
母「愛!!」
愛「っ!!……」
愛「……」
母「今何時だと思ってんの……!?」
愛「………」
愛「……」スタスタ…
母「待ちなっ!!!」グイッ
愛「っ!」
母「愛、あんた最近何してんの?」
母「どこに行ってんの?」
愛「………」
母「言えないようなとこなの?ねえ?」
愛「………」
母「答えな!!」 愛「………」
愛「………」
愛「……関係、ないでしょ」
母「関係ないって……あんたねえ!!」
愛「うるさいんだよっ!!!!」
母「!」
愛「今更っ……今更構ってこないでよ………!!!」
母「っ…!」
愛「離して!!」バッ
母「あっ、ちょ……愛!!」
タッタッタッ……
母「………」
祖母「……帰ってきたのかい?」
母「あ、お義母さん……うん、帰ってきた、けど……」
祖母「そうかい」
祖母「……愛ちゃん、大丈夫かねぇ……」
母「…………」 ──────
────
──
─
「今日は?またカラオケ?」
「えー、こないだも行ったじゃん、ダルくね?」
「じゃー、ファミレスか?」
「いんじゃね」
「……あー、そろそろまた髪染めねーと」
「ハゲない?」
「は?そっちこそ染めないん?」
「普通にめんどいでしょ」
「あー、ね」
「愛さんは?」
「染めねーの?」
「逆に色抜くとか」
愛「………」
愛「……そーだね、面白そう」 ──────
────
──
─
母「お義母さん、愛は?」
祖母「まだ帰っとらんよ」
母「そう……どこでなにしてんだか……」
愛「ただいまー」
母「!!!」
母「……………」
母「……愛………どうしたの……」
母「その髪………!」 愛「………」
愛「チッ…」
母「待ちな!!!」
愛「離して!!!」
母「あんた最近……何にも言わないじゃない……!!」
母「せめて一言くらい相談「相談したら、」
愛「私のことみてくれたの?」
母「!」
愛「……みて、くれたの」
母「……っ…」
愛「…………ご飯、いらないから」
母「…………」
母「……愛………」 ──────
────
愛「………」
愛「………」
愛「………」
愛「………はぁ……」
愛「……もう……もうっ!」
愛「……なんなの……」
愛「(………頭……ぐちゃぐちゃする)」
愛「(……楽しくない)」
愛「(ずっと……もうずっとこんなのばっかり)」
愛「………」
愛「(みてくれたの、なんて……なんでそんな言葉言ったんだろ、アタシ)」
愛「(これじゃ、みて欲しかったみたいじゃん)」
愛「(……構って欲しかった……みたいじゃん………)」
愛「(全然そんなこと……思ってないのに)」
愛「(……全然………)」
愛「…………」
──『ふふ、いくつになっても寂しがり屋さんなんだから』
愛「………」 愛「…………」
愛「(………そっか)」
愛「(ほんとは……)」
愛「……っ…」
愛「(ほんとは、アタシ……っ)」
愛「(みて、ほしかったんだ……)」
愛「(………寂しかったんだ)」
愛「………」
愛「……っ…」ポロポロ
愛「……っ…ぐすっ……」
──『そしたら、寂しくない?』
愛「……」スッ…
愛「(おねーちゃんがくれた、お花……)」
愛「………」
愛「……おねー、ちゃん……っ…」
愛「…………うぁ……っ…」
愛「…………っ……」
愛「…っ………寂しい、よ……」ポロポロ 「愛ちゃん?」コンコン
愛「!!!」
「愛ちゃーん?」
愛「………」クシクシ
「入るわよー?」ガチャッ
愛「……おねー、ちゃん………」
美里「ごめんね、勝手に入って」
美里「……愛ちゃん?」
愛「………」
愛「……うぅ…」
愛「……おね゛ぇちゃん……!」
美里「あら……ふふ、おいで」
愛「……ん…っ……」ギュッ…
美里「よしよし」ナデナデ 愛「………」
愛「………」
愛「……どーして、きてくれたの?」
美里「んー?」
美里「超能力者だから」
愛「……ふふ、なにそれ」
美里「……うん」
美里「前の笑い方に戻ったみたい」
愛「……前、の?」
美里「うん」
美里「最近の愛ちゃん………なんだか目が寂しそうだったから」
愛「……!」
愛「……そっか……」
美里「……うーん」ジーー
愛「……どーしたの?」
美里「その髪、ちょっといじってみてもいい?」
愛「えっ?」
愛「………」
愛「……いいよ」
美里「じゃあ遠慮なく♪」 美里「できたっ♪あ、こっちの髪色の方が花に合うわね」
愛「………うん……」
美里「………」
美里「おばーちゃん、心配してたよ」
愛「………」
美里「それに、お母さんも」
愛「………そうかな」
愛「………」
美里「普段とやかく言わないのは、それだけ愛ちゃんが健康で元気いっぱいだからよ」
美里「私と違って、ね」
愛「……!」
美里「ふふ、なんてね。これ言うの、ちょっとずるいかしら」
愛「………」
美里「……本当はおばーちゃんもお母さんも、それにお父さんだって、いつも愛ちゃんのこと、気にかけてるのよ」
美里「当たり前よ、大事な大事な一人娘なんだから」
愛「………」
美里「これ、ヘアスタイルの雑誌。この間買ったんだけど、私不器用だからひとつ覚えるのも一苦労なのよね」
美里「その髪型だって最近やっと作れるようになったんだけど、愛ちゃんに似合うからちょうど良かったわ」
愛「………」
美里「愛ちゃんなら自分でいろいろセットできそうだし、これ置いていくわね」
愛「………」
美里「ふぅ、じゃあそろそろ行くね。ふふっ、ちょっとお節介しちゃった」
愛「………」
愛「………」
美里「……これからは、もう少し早く帰ってきてね」
愛「……うん」
美里「じゃあ行くね。またね愛ちゃん」
愛「うん、またね」 ──────
────
母「………はぁ……」
母「………」
母「……あっ……」
母「これ……」
祖母「大丈夫かい」
母「!……お義母さん……」
祖母「やっぱり、それ、かいてて正解だったねぇ、一目でよくわかる」
祖母「大きくなったろう、ほらここ、小学校に入ったときゃこんなに小さかったのに」
母「………」
母「………」
母「……みて、なかった……か」
母「あっはは………ほんと、その通りだ……」
母「お義母さんがいてくれるからって、甘えすぎてたかな……」
祖母「………」
祖母「ばあちゃんは、結局、ばあちゃんでしかない。母親はあんたただ1人さ」
母「………」
祖母「あの子にはまだ………いや、ずっとあんたたち親2人が必要なんだ」 母「………」
母「……愛は、愛は強い子だから……だから別に、必要ないんじゃないかって……もう、遅いんじゃないかって、いつからか、思っちゃって……」
祖母「そんなことないさ」
母「……!」
祖母「親が必要ない子なんていない」
祖母「親が一緒に居なくても大丈夫なんて子は、そうそういやしない」
祖母「もしいたとしても、必ずどこかで歪みが生まれちまうもんさ」
祖母「強い子って言ったって、限度があるからねぇ」
母「………」
母「……まだ、間に合う、かな……」
祖母「ああ」
祖母「でも、焦ったらいけないよ。ゆっくりでいい」
母「………」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「────、えー、全国から、夢、そしてさまざまな想いを胸に、我が虹ヶ咲学園へ入学された皆さんは、この中等部でこれからたくさんのことを学び、経験することになります」
「私たちは、皆さんがここで学んだことを力に変え、やがて社会へと羽ばたき、さまざまな分野で活躍する人間へと成長していくことを、心より願っております。改めまして、ご入学おめでとうございます。それでは、これにて────」
璃奈「………」
──────
────
「次は、天王寺さん」
璃奈「はい………天王寺璃奈です。よろしくお願いします」
パチパチパチ…
「じゃあ次、────」 ──────
────
「ねえねえ」
璃奈「?」
「私たち、塾一緒じゃなかった?」
璃奈「そう、だったかな」
「私、天王寺さん見たことあるよ」
璃奈「えっと………ごめんなさい、覚えてなくて」
「ううん、全然!これからよろしくね」
璃奈「よ………よろしく」
璃奈「えっと、あの」
璃奈「今、嬉しい、よ」
「えっ?あ、うん……」
「?………」
璃奈「……ごめん、なんでもない」 ──────
────
──
─
璃奈「………」
璃奈「………うーん……」
璃奈「………やっぱりネコちゃんかな………」
璃奈「(……改造とか、できるかな)」
璃奈「………」
璃奈「……よし」
──────
────
璃奈「………」カチャカチャ
璃奈「ふぅ……よし、できた………かな」
璃奈「(起動!)」ポチッ
「………」
「………」
「ワンッ!」
璃奈「あっ……鳴き声………」 ──────
────
──
─
「天王寺さん!おはよー」
璃奈「おはよう」
「今日ちょっと暑いよね〜」
璃奈「そうだね」
「……あれ、あんまり暑くない?」
「っていうか、体調悪い?」
璃奈「え……ううん、平気だよ」
璃奈「暑い、ね」
「……?……そうだね……」
璃奈「……」
璃奈「……あ、」
璃奈「あのね」
「ん?」
璃奈「えっと……」
璃奈「……」
璃奈「……」
璃奈「……なんでもない」 ──────
────
──
─
「あ、天王寺さんだ」「ほんとだ」
璃奈「!」
「お昼、よく中庭で食べてるの?」
璃奈「たまに」
「そーなんだ〜、学食混むもんね〜」
璃奈「うん」
「一緒に、いい?」
璃奈「うん」
「……別に、嫌ならいいんだけど……ね?」
「うんうん、1人で食べたい時もあるもんね」
璃奈「!」
璃奈「い……嫌じゃない、嬉しい、一緒に食べたい、ほんとだよ」
「?そ、そっか」
璃奈「……」
璃奈「………」
「「……?」」
璃奈「……」
璃奈「……私ね、……私、」
璃奈「気持ちを上手く、顔に出せなくて。こんな顔でも、ほんとに怒ってないの」
璃奈「勘違いさせちゃって、ごめんなさい」
「……そっか、そういうことだったんだ」
「……?……つまり、一緒に食べてもいいってこと?」
「良いってさ、ね?」
璃奈「うん」
「やった〜」 ──────
────
──
─
璃奈「もしもし」
父『あ、璃奈?』
璃奈「お父さん、どうしたの?」
父『来週用事で少しそっちに戻るんだけど、土曜日にお父さんとお母さん、両方とも休みが取れそうなんだ』
璃奈「……ほんと?一日中?」
父『うん、そうだよ』
父『それで、どこか行きたいところとか、ない?』
璃奈「どこでもいいよ」
父『そっか、よしじゃあ買い物にでも行こうか』
璃奈「うん」
父『あ、そういえば、犬のロボットはもう作れた?」
璃奈「あっ……」
父『?』
璃奈「……ネコちゃんに改造しちゃった」
父『あー、ネコの方がよかったかぁ』
父『すごいなぁ、改造しちゃったのか。じゃ、犬はお父さんが作ろうかな』
璃奈「うん」
璃奈「あ、そういえば、ちょっと部品が足りないんだった」
父『そっか、ならそれも一緒に買いに行こう。お母さんは退屈かもしれないけどね』
璃奈「お母さんが行きたいところも、行けばいいよ」
父『そうだね』
璃奈「楽しみに、してるね」
父『ああ!』 ──────
────
──
─
「天王寺さーん、チョコあげる」
「はい!」
璃奈「あ、ありがとう」
「……」
「嬉、しい……で合ってる?」
璃奈「うん。嬉しい。チョコ、好きだから」
「よしっ!当たった」
璃奈「(♪)」
「天王寺さーん!はい!私からも!親戚から送られてきたやつ」
璃奈「ありが……」
璃奈「(あ、このお菓子)」 ──────
『はい、おみやげ!いやー涼しくていいねー北海道は』
『……璃奈ちゃん、そのおかし、きらいだった?』
『いや……えっと……』
『なんか怒ってる?』
『………ほんとに?』
『そっか…………』
──────
璃奈「(小学生のときの……)」
「あれ、嫌いだったかな?」
「いや、喜んでるよ!多分」
璃奈「……」
「天王寺さん?」
璃奈「え?」
「ね?」
璃奈「あ、うん。ありがとう」
「よかったぁー♪」 ──────
────
──
─
「ねーねー今度映画観に行かない?」
「いいよー、何観る?」
「今って何やってるっけ?」
「なんかアニメのやつとー、あ!ホラーやってるじゃん」
「えー?他にないの?」
「他はー……なんかドキュメンタリーとか続編とかばっかだなぁ」
「行ってから決めよー」
「そだね」
「てか天王寺さんも行こ?」
璃奈「えっ……う」
「来週の土曜ね」
璃奈「(!……来週の、土曜って)」
璃奈「あの」
「んーと、その顔はぁ……楽しみ?」
「………じゃなかった………?」
璃奈「……」
璃奈「ううん、楽しみ」
「えへへ、私も♪」 ──────
────
──
─
璃奈「もしもし、お父さん」
父『お、璃奈、どうした?』
璃奈「……」
父『……?』
璃奈「……あのね」
父『うん』
璃奈「来週の……土曜日、ね」
璃奈「……」
璃奈「やっぱり、行けなくなっちゃった」
父『………そうかぁ……』
父『友達と遊ぶ?』
璃奈「うん」
父『そっかそっか』
璃奈「……ごめんなさい。せっかく時間、作ってくれたのに」
父『いいよ、気にしなくても』
父『また今度……うん、また今度行けばいいよ』
璃奈「………うん……」 ──────
────
──
─
「どれ観る?」
「んー、そうだなぁ」
璃奈「………」
「ホラーいく?」
「やだよCMめっちゃ怖かったもん、やだやだ」
「天王寺さんも嫌がってるじゃん」
璃奈「え、あ」
璃奈「怖いのは、嫌じゃないよ」
「あ、そ、そうなんだ」
「嫌がってないじゃん」
「ごめん……」
璃奈「ううん……」
璃奈「(嫌がってる顔、しちゃってたのかな)」
璃奈「(誤解させちゃった……ごめんなさい)」
「……まあ、ホラーはやめとこっか」
「ねぇ今さぁ、あらすじ読んでたんだけどこれ面白そうじゃない?」
「………ふーん」
「いいんじゃない?」
璃奈「うん、観たい」
「じゃあ、これにしよう」
「おー」 ──────
────
「はぁー、いやー笑ったわ」
「よくあんな声出せるよね(笑)」
「『ア゜ッ!!?』とか言って」
「やめてってw」
「映画館であんな笑ったの初めてだわ〜」
「それな〜」
璃奈「……」
「……」
「……つまんなかった……?」
璃奈「え」
璃奈「ううん、とっても面白かった」
「そ、そっか。なら、うん、良かった」
璃奈「……うん………」
「ってか主題歌は謎にめっちゃ良い曲使ってんのね」
「ねー」
璃奈「………」 ──────
────
「何食べる?」
「まだそんなお腹空いてないなぁ」
「あ!クレープある!」
璃奈「クレープ………私、食べたい」
「よしっ決まり」
「……♪」パシャッ
「いっただっきまーすっ」ハムッ
「ん〜、おいし」
璃奈「……」モグモグ
「それにしてもさー、あの主演の人あんな顔芸して大丈夫なんかね?」
「白目剥いてたしね(笑)」
「あそこヤバかったわ(笑)」
「でもどっかで見たことある気すんだけどなー」 璃奈「CMに出てる人、じゃないかな」
「CM?」
璃奈「不動産かなんかの」
「………あ、あー……?……あー!!」
「いたわそんな人!」
「え、え、どれだ……?」
「パンフ見せて!名前調べればわかるよ」
「………」ポチポチ
「……いたかなー……そんな人……」
「………あれ」
「?どした?わかった?」
「……違くない?」
「違うわこの人」
「違うんかいっ!!!ww」
「違うんかいっ!!……ッッ……!!」
「……ッ!」
璃奈「………」
璃奈「………」
「っ!」「!!」
「あっ、ごめん、別に笑うつもりは、その」
「わ、私も勘違いしてたし……」
璃奈「え?」
「気悪くしたら、ごめんね?」 璃奈「?気にしてないよ」
璃奈「2人が楽しそうで、よかった」
「………」
「………」
璃奈「どうか、したの?」
「……」
「あの、さ」
「天王寺さんは、楽しい?」
璃奈「………!」
───『わたしたちと話しててほんとに楽しい?』
璃奈「た……っ楽しいよ」
璃奈「一緒に映画観られて、お話しできて、とっても嬉しい」
「………」 「……天王寺さん」
璃奈「?」
「その……えっと……」
「嘘、じゃ、ないんだよね……?」
璃奈「!」
璃奈「……………」
璃奈「う…そ……」
───『うそつき』
「無理して付き合ってるなら、その、全然言ってくれていいし」
璃奈「ち、違うよ、本当に」
───『うそつき』
璃奈「………」
───『うそつき』
璃奈「………」
璃奈「…………」 璃奈「(また、だ)」
璃奈「(また、うそつきになっちゃった)」
璃奈「(また、不安にさせちゃった)」
璃奈「(嫌な気持ちに、させちゃってたんだ)」
璃奈「………」
「えっと……」「天王寺さん……」
璃奈「ごめんなさい。たくさん、気を遣わせちゃって」
璃奈「ごめんなさい」
「え、や、そんなこと」
璃奈「今日は、ありがとう」
璃奈「……っ」
璃奈「……さよならっ…」タッタッ……
「あっ……!」 ──────
────
──
─
父「お!おかえり〜」
母「あら、早かったわね」
父「ロボットの部品、買っておいたよ。部屋に置いてるから」
母「夕ご飯、どこに食べに行……え?」
母「あ、ちょっと」
母「……?」
父「……どした?」
母「……ご飯いらない、って……」
璃奈「(やっぱり、口だけじゃダメなんだ)」
璃奈「(言葉だけで気持ちを伝えても、意味、ないんだ)」
璃奈「(表情がついてこない、言葉だけの気持ちなんて、うそだから)」
璃奈「(だから、ちゃんと……)」
璃奈「ちゃんと、笑わなきゃ」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
愛「……ふぁぁ……」
母「おはよー」
愛「……!」
愛「………」
愛「……おはよ」
愛「……お店の準備は?」
母「開店前だけおばあちゃんに代わってもらってる」
愛「……」
愛「……なんで?」
母「えっ……まぁ、たまには、ね」
愛「……」
愛「……ふーん」
母「ほら、座って」
母「朝ご飯冷めるよ」
愛「……」
愛「……うん」 愛「……」モグモグ
母「あ、そうだ」
母「成績表とか、そろそろ貰うんじゃない?」
母「前のテストはどうだったの?」
愛「……」モグモグ
愛「……」
愛「……なに?朝から、急に」
母「……あ、いや、別に………」
愛「……」
愛「……」
愛「5位だった」
母「クラスで?」
愛「学年」
母「学年!?……すごいじゃん!」
愛「……別に」
愛「……ごちそーさま」スタスタ…
母「あ、うん」
母「………」
母「………」
母「………」
母「はぁ………」 愛「………ねぇ」
母「!……ん?」
愛「……その」
母「……?」
愛「髪、似合うかな……」
母「………」
愛「………///」
母「……んーー」
母「ちょっと待ってな」
愛「?」
──────
────
母「うん、いい感じ、似合うじゃん」
愛「このスカーフ、おかーさんの?」
母「あげるよ、昔使ってたやつ」
愛「……あ、ありがと………」
母「はーあ、あたしも金髪に戻そっかなー」
愛「!!?え!?金髪だったの!?」
母「あれ?言ってなかったっけ」
愛「知らないよ……」 ──────
────
──
─
母「愛ー?」
愛「なに?」
母「またお店手伝って欲しいんだけど?」
愛「……えー……」
美里「私からもお願い♪」ヒョコッ
愛「わっ!?おねーちゃん!?」
美里「わたしも手伝うからっ」
美里「今日はなんだか身体の調子が良いの」
美里「愛ちゃんが一緒なら、もっと元気になる、かも?」
愛「………」
愛「……おねーちゃん出すのは反則じゃん………」
美里「ふふふっ♪」 ──────
────
愛「ありがとうございました〜!」
美里「ありがとうございました〜」
愛「……ふぅ」
母「愛、美里ちゃん、そろそろ上がっていいよ」
美里「あ、はーい」
母「2人とも好きな席座って?美里ちゃん、もんじゃ食べてきなよ」
美里「いいんですか?」
母「もちろん!」
母「……おとーさーん、焼いてあげてーー」
父「おう」 父「注文は?」
美里「……えっと」
愛「コーン」
愛「ベーコン」
愛「明太子」
愛「ウィンナー」
愛「チーズ」
愛「あと、おもち」
美里「ちょっと愛ちゃん、そんな」
父「ああ、いいからいいから」
父「今持ってくる」
美里「もう、愛ちゃん?」
愛「いーのいーの」 父「はい、お待ちどう」
父「……」ザバッ……ジュゥゥゥウ……!
父「……」ジュージュー!
美里「わぁ、いい匂い……」
父「……」トポトポトポ……ジュゥゥゥウ
父「……」カチャカチャ
父「……」
父「……」
グツグツ……
父「……よし」 父「はい、これ使って」
美里「ありがとうございます」
美里「いただきますっ」
愛「………いただきます」
愛「……あっっつ!」
父「……」
父「……気をつけてな」
愛「あ………うん」
美里「大丈夫?」
愛「ヘーキヘーキ」
父「……」
父「愛」
愛「……なに」
父「今日は、ありがとな」
愛「え」
愛「……ああ、うん」
愛「……」
美里「ん〜〜♪」モグモグ 母「ふふふっ♪」
父「……なんだよ」
母「んー?別に?」
父「………」
母「………」
母「また、手伝ってくれるかな、あの子」
父「………」
父「………」
父「……だと、いいな」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「(せっかく、話しかけてくれたのに……あの日からもう、ずっと話してない)」
璃奈「(……でも、私と一緒にいて、嫌な気持ちになるよりは、いい)」
璃奈「………」 ──────
────
──
─
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」カキカキ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
「おー、感心感心」
璃奈「!………先生」
「ありゃ、あんま驚かないね?こうやっていきなり声かけると、みんなびっくりするんだけど」
「よくここで勉強してるの?」
璃奈「……はい」
「そっか〜」
「邪魔しちゃったね、なんかわかんないとこあったら先生のとこ来なね」
璃奈「はい、ありがとうございます」
璃奈「………」
璃奈「(びっくりした……)」 ──────
────
──
─
「平均いった?」
「ギリいったけど……」
「みんなそんなにできてないっぽい」
「なに、聞いて回ってんの?やらし〜」
「こうなったらクラス最高点探し出してやるわ」
「なんのために……」
「あとは………あっ、天王寺さん!何点だった?」
璃奈「えっ、えっと、92点」
「………」「………」
「平均いくつつったっけ」「52」
「………」「………」
璃奈「あの……」
「すごいね!多分クラスで一番じゃないかな?!」
「わ、この問題わかる人いるんだ……よく解けたね」
璃奈「そうかな」
「そうだよー」「すごーい!」
「(………)」「(………)」
「(……あー、そういう感じか)」
「(できて当然て感じ?……私苦手かも……)」 ──────
────
──
─
「どういう子なの?」
「さぁー……」
「同じ小学校だった人とか、いないん?」
「あー、どこ小だったっけかな、知ってる?」
「知らん」
「そいえばテストのことで話してたでしょ」
「あー、『こんなのできて当然でしょ』みたいな」
「うわ」
「あー、あーそういう、ね……」
「つまんなそーーな顔してたよ」
「なんかさ、ロボットみたいだよね、あの顔」
「目、怖くない?」
「あー、わかる」 ──────
────
──
─
「そんでその後さー」「うんうん」スタスタ………ポトッ
璃奈「!」
璃奈「……」ヒョイッ
璃奈「………」
璃奈「っ……」
璃奈「あ、あの、」
「え?」
璃奈「これ、落ちたよ」 「あ、ああ、ありがと……」
「………」
璃奈「(怖がられてる……)」
璃奈「………」
璃奈「……っ…」
「?」「……?」
璃奈「……」
璃奈「(……笑わ、なきゃ)」
璃奈「(笑わなきゃ、笑わなきゃ)」
璃奈「(笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ)」
璃奈「(笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ、笑わなきゃ)」 璃奈「……」
璃奈「……」ニィ…
「ひっ…!」「っ!?」
「い、行こっ」「うんっ」スタスタスタ
「……ヤバ……」
「…………キモ……」
璃奈「…………」 ──────
────
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「(……また、嫌われちゃった)」
璃奈「………」
璃奈「(痛い、苦しい……)」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「(………本当に?)」
璃奈「(痛い顔も、苦しい顔もできないのに)」
璃奈「(涙も、流れないのに)」
璃奈「(本当に……痛い……?)
璃奈「(……苦しい……?)」
璃奈「……………」
璃奈「………」
璃奈「………私…は………」
璃奈「………」
璃奈「………」 お父さんの工具箱、どれも使いやすくて良いものが揃ってる
そのうちのひとつを取り出して、机に向かう
薄い暗がりの中、机のライトをつけると、その周りだけがぼんやりと照らされる
左手を机の上にそっと置くと、光のせいか、その手はいつもよりいっそう白く見えた
まるで、冷たい光が、手の熱をどんどん奪っていくみたい
右手で握り締めたものから、チキチキと音がなって、少しずつ刃が伸びる
左手首にその刃を押し付けて、
少しずつ、
少しずつ力を入れていく。
そのまま、手前に少し引いた
璃奈「っ……」
痛い……痛い
良かった、ちゃんと流れてるんだ
私は、ロボットじゃないんだ ──────
「ただいまー……」
──────
璃奈「!」
ガチャ…
母「……ただいまー………」
璃奈「………」
母「………」
璃奈「………」
母「………」ナデナデ
母「……おやすみ」
璃奈「………」
母「………あら」
母「(工具箱?何か作ってたのかしら)」
母「(これなんか、刃も出しっぱな……し……)」
母「……!!」
璃奈「………」
璃奈「(………もう、眠いや……)」 ──────
────
──
─
璃奈「………」
璃奈「……んぅ……」パチ…
璃奈「………ふぁぁ……」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「……あれ」
璃奈「(……包帯、巻いてある)」
璃奈「………」
──────
母「あ、おはよう璃奈ちゃん。朝ごはん、ちょっと待ってて」
璃奈「!」
璃奈「………仕事は……?」
母「ないわよ〜」
璃奈「でも、いつもは……」
母「……いいのよ、今日は休みっ」
璃奈「……?」
母「朝ごはん食べたらお出かけしましょ」
璃奈「……この、包帯」
母「ん?あー、ちょっと目立つわね。あ、そうだ、お父さんに貰ったあのパーカーなら隠せるんじゃないかしら」
璃奈「えっと、そうじゃなくて」
母「さ、できた。食べましょ?」
璃奈「あ………うん」 今日は、珍しく電車で出かけた
お父さんに文句言いそびれちゃったからって、洋服を買いに行った
雑貨屋さんを見て回ったりもした
お昼ご飯に寄ったお店で、
お母さんは、昔の私の話、自分の子どものときの話、お父さんの話、親戚の話、いろんなお話をしてくれた
少し無理して、たくさん話してるみたいだった
午後は、久しぶりに一緒に観れるねって、映画を観にいった
映画の途中、ふと隣にいるお母さんの方を見たら、ちょうどお母さんも私の方に顔を向けた
暗くてよく見えなかったけど、その顔はなんだか悲しそうだった
映画の後は、しばらく歩いて、早めの夕食を食べにまたお店に寄った
お母さんは、お昼のときよりも口数が少なくなったけど、時折私の方を見て、嬉しそうに笑っていた
帰りにショートケーキを買って、そうして家に帰ってきた
お母さんと1日ずっと一緒にいられた、それだけですごく嬉しくて、だけど
だけど私は今日、お母さんの目から、顔から、自分の顔を逸らすように俯いていた
電車の中でも、歩いているときでも、私の左手はずっと、お母さんの右手に包まれて暖かかった
家に着いたとき、お母さんが私の手を握る力が、
少し、強くなった 璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「……なにか、あったの」
母「………」
母「……ううん、何も」
璃奈「………」
璃奈「……やっぱり、お母さん今日、変だよ」
母「そう?」
璃奈「……うん」
母「………」
母「………そうね、変だったかしら」
璃奈「………やっぱり、なにかあったの」
母「………」
母「………」
母「お母さんね、」
母「仕事、辞めようと思うの」 璃奈「……どうして」
母「璃奈ちゃんとずっと一緒にいるためよ」
母「………ごめんね、ごめんね璃奈ちゃん、もっと早くこうするべきだったのにね」
母「もっと……早く気づいてあげなきゃいけなかったのに……」
母「……璃奈ちゃん」ギュウ……
璃奈「……お母…さん」
母「ごめんなさい……っ…親、失格よね……」
母「ごめんね、こんなになるまで……っ…放っておくなんて……っ…ごめんね……」
璃奈「……どうして、謝るの」
璃奈「お母さんは、何にも悪くないよ」
母「………」
母「………」
母「その手首の傷、自分でやったでしょ」
璃奈「……!」
母「傷痕なんて仕事で何度も診てるもの。すぐわかったわ」
母「……お母さんが、傷つけたようなものよね……」
璃奈「違う……!」 璃奈「お母さんは悪くない、私が、私が頑張れなかったから、お母さんも、お父さんも頑張ってるのに、私が頑張れなくて、うそつきで、弱かったから」
璃奈「私が自分でやったの、お母さんは悪くないの」
璃奈「全部、私が悪いの」
母「違うわ!璃奈ちゃんこそ何にも悪くないっ…!!」ギュッ
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「………」
璃奈「ねえ、お母さん」
璃奈「お仕事、辞めないで」 母「……!」
母「どうして……」
璃奈「……お母さんのことも、お父さんのことも、すき」
璃奈「それに、たくさんの人を助けるために頑張ってる、かっこいい2人がすきなの」
璃奈「私の、自慢なの」
母「!!」
璃奈「お母さんも、助けたい人がたくさんいるから、お仕事続けてるんでしょ」
璃奈「私は、大丈夫だから」
母「………」
母「………」
母「……ほんとに、いいの……?」
璃奈「うん」
母「………」
母「……璃奈ちゃん………」
母「…………璃奈ちゃんは……本当に優しいのね」
母「お母さんも、優しい璃奈ちゃんが大好きよ……!」ギュウ……
璃奈「……お母さん……」ギュウ……
璃奈「……心配しないで。もうあんなこと、2度とやらないから」
母「……うん」
璃奈「それにね、今は前よりは寂しくないよ」
ニャー、ニャー
母「……あの子は?」
璃奈「あたらしい家族だよ」
璃奈「お父さんがくれたの」
母「……」
母「ふふ、そう……♪」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
美里「あ、愛ちゃんいらっしゃい……ごほっごほっ」
愛「ああ!!起き上がらなくていいって!!」
美里「……うん………」
愛「いろいろ買ってきたよー、飲み物と、ゼリーでしょー、あとあとー……」
美里「……ごめんね……」
愛「あ!もー!謝んのナシ!っていつも言ってんじゃん!」
美里「ふふっ、そうだったね」
愛「あ!それよりさ、みてみて!」
愛「じゃーん、お土産!木刀!」
美里「あ、修学旅行の?」
愛「うん、しゃきーん!とりゃっ、とうっ!」
美里「ふふふ、もう、愛ちゃんったら」
美里「っ!ごほっごほっ!……けほっ」
愛「おねーちゃん!!!大丈夫!?」サスサス
美里「はぁっ……はぁ……」
美里「………ごめん、ね……」
愛「…っ……」
愛「大丈夫……?」
美里「うん、もう平気」 美里「……ふふ、でも、愛ちゃんが修学旅行楽しめたみたいでよかった」
美里「私の分も楽しんできてって言ったもんね」
愛「!」
愛「………」
愛「……ごめん……1人だけ、はしゃいじゃって……」
美里「……もう、どうして愛ちゃんが落ち込むの?」
愛「だって……」
美里「愛ちゃんが楽しかったなら、私も嬉しいのよ?」
美里「仕方ないわ、ほら、私、こんなんだしね」
美里「…………」
愛「………」
愛「………」 愛「……じゃあさ」
愛「はいこれ!」
美里「え?」
愛「この木刀で病気なんかボックボクにしてトーウってやっつけてよ!」
美里「………」
美里「……ふっ、ふふっあははっ!」
愛「!」
美里「もう、どうしたの急に?」
愛「え、いやさ……おばーちゃんがたまーにダジャレ言うからさ」
愛「……えへへ、言ってみただけ!」
美里「ふふ、そうなの?」
愛「うん!」
愛「……♪」 ──────
────
──
─
「それでは、午後からは中学校ごとに別れて自由に見学してください。わからないことがあれば、担当の生徒に聞いてください」
「どこか行きたいとことかあるかな?」
愛「はいはい!向こうのおっきい建物行きたいです!」
「あー、部室棟か」
「オッケー、じゃあみんなで行こうか」
──────
愛「………」
愛「………」
愛「広っっ!!!」
「あははっ、部室棟の敷地だけでそこらの高校ひとつ分の面積あるらしいよ?」
愛「へぇー……!」
愛「部活ってどれくらいあるんですか?」
「そりゃもういっぱい、としか言えないかな」
「同好会だけでも、もう少しで100超えるとか言われてるし」
愛「100!?」
愛「……楽しそー……!!!」
「見て回るだけでも大変だけど、ウチに入ったら色々体験入部とかしてみるといいよ」
愛「はいっ!」 愛「そーいえば、学科もいっぱいあるんですっけ」
「そうだよ。あー、でも、一般受験枠はほぼ普通科だけどね」
愛「そうなんですか?」
「うん。普通科じゃないとこは、ほぼ内進組か編入組が占めてる感じ」
「普通科以外の学科にも、一般の筆記とか実技とかの試験で入ってくる子も一応いるにはいるけど、倍率高いしやめたほうがいいよ?特に理系の方とか」
愛「……理系……」
愛「……ふふっ」
「?……どうかした?」
愛「え?ああ、いえっ、なんでも」
愛「あ、じゃあ」
愛「この学校でいっちばん理系っぽいのって、どこですかね?」 ──────
────
──
─
「たり〜」
「てか、どした?それ」
「ブたれた」
「親?」
「ん」
「は?クソじゃん」
「な〜」
「今日どうする?」
「ファミレス?」
「もう金ねーわー」
愛「………」
愛「………」
愛「……あ、あのさっ」 「ん?」
愛「えっ……と」
「どした?」
愛「……これから先、さ、ちょっと、付き合い悪くなるかもしんない」
「………」
「ふーん」
愛「……ごめん」
「別に謝るとこじゃなくねw」
愛「……そう?」
「ね」
「バイトとかで?」
愛「いや……勉強する!」
「真面目かw」
「真面目かww」
「やっぱ愛さんてほんとは頭いーでしょ」
「お前と違ってなw」
「は?うっせ黙れ」
「www」
愛「ふふっ」
「まあ、でもほら、息抜きとかしたくなったらまた遊ぼ?」
「うんうん」
「べんきょー頑張って〜」
愛「うんっ、ありがと♪」
愛「(やっぱり、おねーちゃんの言った通り、アタシの友達はみんないい子、かな?……♪)」 ──────
────
──
─
愛「………」カキカキ…
愛「………」
愛「………」
美里「………」
美里「……私の部屋なんかで集中できる?」
愛「うん」
美里「……ほんと?やっぱり出ていこうか?」
愛「やだ、わからないとこあったらおねーちゃんに教えてもらいたいし」
美里「ふふ、わからないとこなんて特にないんでしょ?」
愛「うっ……今のところは……」
愛「でもでもっ、後から出てくるかもしれないし……」
愛「だからその時は教えて!この問題の答えは?こんなもんだいっ!って」
美里「うふふっ、わかったわ」
美里「………ねぇ、愛ちゃん」
愛「ん?」
美里「ひとつ聞いてもいい?」
愛「なーに?」
美里「どうして情報処理学科なのかなーって」
愛「んー、それはねぇ〜」
『愛ちゃん算数得意なんだ、すごいね!』
『じゃあ愛ちゃんは将来理系かな?』
愛「ふふふっ!内緒♡」 ──────
────
──
─
愛「………」ジーーー
愛「………」
愛「………」
愛「………」
愛「ん〜〜〜〜〜………?」
愛「………」
愛「………!」
愛「……!!」
愛「あっ、あっ!あった!!」
愛「あったあったあった!!!」
愛「おばーちゃーーーん!!!!!あった!!!受かってたよっ!!!」
祖母「おや!そうかい!良かった良かった」
愛「おばーちゃぁん……!!」
祖母「すごいねぇ、よく頑張った!」
祖母「流石ばあちゃん自慢の孫だ」
祖母「……おや、もう少しで撫でるのもできなくなっちまいそうだ」
祖母「大きくなったねぇ」
愛「あははっ、大袈裟だなぁー」
愛「でも、大きくなれたのはおばーちゃんが作ってくれるご飯のおかげ!」
愛「私が今までいーーろんなことができてたのも、この体が……」
祖母「あったカラダっ!、かい?」
愛「あっ!!もー!!取らないでよぉ〜」
祖母「あっははは!」
愛「あははははっ!♪」
愛「………ありがとね、おばーちゃん」 ──────
────
──
─
「────、では最後に、改めて入学おめでとうございます。明日はオリエンテーションと全校集会があるので、8時50分までには教室にいてくださいね」
「では、また明日」
「「「「「さよーならー」」」」」
「このあとどうする?」
「どっか行く?」
愛「じゃあカラオケ行かない?」
「いーね!」
「どこのカラオケ?」
「ここだとひとつくらいしかなくない?」
「そーなんだ。私この辺あんま知らないんだよね」
愛「家遠い感じ?」
「うん」
愛「あ!じゃあさ、今度みんなでお台場巡りしよーよ!」
「いいねいいね」
愛「あ、でもでも」
愛「お台場巡りのお代は高いぞ!なんちゃって!」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………え、なに言ってんの?」
愛「え!?」 ──────
────
──
─
「バスケ部でーす!お願いしまーす!」
「一緒にバレーやりませんかー?」
「テニス部でーす!初心者も大歓迎ーー!」
愛「うわー、やっぱり多いなぁ」
「宮下さんはやっぱ運動部?」
愛「うーん、どうだろ?」
「違うの?」
愛「違うっていうか、どれもやりたいんだけどー……」
「あー、迷っちゃうよね」 ──────
────
──
─
「どこ入った?」
「私?バスケ部」
「へー」
「そっちは?」
「流しそうめん同好会」
「……………?……………あ、そー…なんだ……へぇ……」
愛「……部活ってほんといろいろあるんだね〜」
「ねー」
「でも、多すぎて人が分散しちゃってたりして、試合出れないとこもあるらしいよ」
愛「そういうときってどうするの?」
「運動できる子に声かけて、助っ人とか頼むみたい」
愛「……へえー、助っ人かぁー」
愛「いいこと聞いちゃった……♪」 ──────
────
──
─
美里「愛ちゃんはもう部活とか入ってるの?」
愛「ん?入ってないよ」
美里「え?そうなの?」
愛「うん」
美里「そう……なんか意外ね。てっきり運動部とかに入ると思ってたわ」
愛「あ、でも助っ人ならしてるよ!」
愛「バスケ部にハンドボール部に、テニスとサッカーでしょ、あとバレーとかも!」
美里「ふふ、いろいろやってるのね」
愛「うん!」
愛「………約束、だからね」 ──────
────
──
─
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
愛「勝ったー!」
「お疲れ様ー」
「いつもありがとね愛ちゃん」
愛「いいっていいって!」
「それにしても、ほんと足速いよね」
「うんうん!」
愛「そう?そんなことないって」
「………」
「ねえ、そろそろさ、正式に部に入らない?」
愛「………」
「どう……?」
愛「……」
愛「んー……」
愛「ごめんっ!」
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