かすみ 「かすみんは学びます!」
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短編三つ+αの四部構成になっています。
・かすみ 「かすみんは学びます!」
・歩夢 「笑いのレベルが赤ちゃんだから」
・果林 「また迷っちゃったわねぇ」
また、+αである4つ目の作品の題名は、展開上の都合で、三つ書き切るまで秘密とさせていただきます。
よろしくお願いします。 ―かすみ 「かすみんは学びます!」―
かすみ 「せつ菜先輩の眼鏡を無断で盗んじゃいました!」
侑 「また怒られちゃうよ?」
かすみ 「大丈夫です。その代わり新しいメガネを一から作ってせつ菜先輩にプレゼントしましたから!」
愛 「おおっー! さすがかすかすぅー!」
かすみ 「なっ!? かすかすじゃなくて、かすみんですぅ!!」
かすみ (って怒っても愛先輩は懲りもせず繰り返すことを学びました……なので)
かすみ 「愛先輩!」
愛 「えっ? どうしたの?」 かすみ 「かすかすは使ってる文字の種類は二種類ですよね?」
愛 「そ、そうだけど」
かすみ 「かすみんは四種類ですよね?」
愛 「それがどうかしたの?」
かすみ 「使ってる文字の種類の数が多い方がダジャレのレパートリが増えますよ?」 ニヤリ
愛 「!?」
かすみ 「かすみんって呼んでくれますよね?」
愛 「ふふっ、なるほどね! 愛さん、頭にかかった霞が一気に吹き飛ぶくらいの衝撃を受けたよ!! かすみんだけに!」
かすみ 「それでいいんですよ」 ニヤニヤ
かすみ (こうしてしっかり学んで、対策を講じれば全てうまくいくんです!) 侑 「なんか分からないけどかすみちゃんが嬉しそうで良かったよ!」 ニコッ
かすみ 「先輩……!」 ウルウル
かすみ (やっぱり先輩は優しいです!)
かすみ 「先輩、大好きっ!!」 ダキッ
侑 「ちょ、かすみちゃん?/// 急に抱きついてくるなんて恥ずかしいよ///」
かすみ 「大好きな先輩にくっつきたいかすみんのわがままを許してください!」
侑 「仕方ないなぁ///」 ?? 「……」 ギロッ
かすみ 「!?」
かすみ (恐ろしい殺気を感じる……!)
歩夢 「侑ちゃん? 何してるの?」 ニコッ
侑 「あっ、歩夢!」
かすみ 「ひぃっ!? く、黒幕!?」 ビクビク
歩夢 「ダメだよかすみちゃん、みんなが見てる前でそんなにくっついてたら勘違いされちゃうよ?」
侑 「勘違い……?」
かすみ 「それはきっと勘違いじゃないですよ!」 ドヤッ
歩夢 「はぁ?」
かすみ 「ひっ!?」 歩夢 「とりあえず侑ちゃんから離れようよ?」
かすみ 「い、いや離れる気はありません!」 ガクガク
侑 「どうしたのかすみちゃん!? 足が震えてるよ!?」
かすみ 「アイドル震いですよ……」
愛 「武者震い的な?」
かすみ (たとえ歩夢先輩に痛い目に遭わされても、先輩からは離れません!!)
歩夢 「なら仕方ないね。少し強引な手を使っちゃうけど」 トコトコ
かすみ 「ち、近づいてこないでください!?」 かすみ (考えろ、かすみん。ねばれよ、かすみん。諦めるな、かすみん!!)
かすみ (どうにかしてこの状況から抜け出す方法を考えるんだ! 今さっき学ぶことの大切さを学んだばかりじゃないか!)
かすみ 「かすみんは学びます!」
かすみ 「先輩! 歩夢先輩のことどう思ってますか!?」
侑 「えっ? 歩夢のこと?」
歩夢 「!?」
侑 「それはもちろん大好きな親友だよ! 歩夢はずっと前から、そしてずっとこれからも、大切な幼馴染として一緒に歩きたいって思ってるよ」
歩夢 「ゆ、侑ちゃん……///」 カァァ かすみ (よし! キザセリフbotの先輩と、すぐ浮かれる歩夢先輩だからこそ、成し得た作戦です! 今のうちに!)
かすみ 「先輩!! 歩夢先輩がモジモジしてるうちに二人でどっか行きましょう!」 ガシッ
侑 「えっ」
歩夢 「でもそれとこれとは話が別だよね」 ガシッ
侑 「えっ」
かすみ 「なっ!? 歩夢先輩も往生際が悪いですよ!!」 ググググ
歩夢 「かすみちゃんこそ、しずかすがあるでしょ?」 ググググ かすみ 「しず子は演技に夢中でよくかすみんと他の人の名前を間違えるからなしです!!」 ググググ
歩夢 「ならせつ菜ちゃんとかいるでしょ!」 ググググ
かすみ 「せつ菜先輩はアニメに夢中でよくかすみんとキャラクターの名前を間違えるからなしです!!」 ググググ
歩夢 「かすみちゃんの恋愛基準は名前を間違えないかどうかなの!?」 ググググ
侑 「いたたたたた!!」
愛 「取り合って二人で引っ張り合うなんて映画みたいだ!」
璃奈 「というより大岡裁きかもしれない」 ピョコ
愛 「あっ、りなりー!! えっと、大岡裁きって?」
璃奈 「簡単に説明すると……璃奈ちゃんボード『紙芝居』」 ――大岡裁き――
ある所に子供がいました。
子供の母親は一人ですが、どういうわけなのか、母親を主張する女子が二人いました。
双方共に「わたしこそがこの子の母親よ」と、頑として引かない様子です。
二人の争いはとうとう収まらず、大岡越前の奉行所でついに白黒付ける事になりました。
大岡越前は二人にこう提案しました。
『その子の腕を一本ずつ持ち、それを引っ張り合いなさい。勝った方を母親と認めよう』
その言葉に従い、二人の母親は子供を引っ張り合いました。
当然ながら引っ張られた子供はただではすみません。たまらず「痛い、痛い!」と叫びました。
すると、その声を聞いて哀れに思ったのか、片方の母親が手を離してしまいます。
引っ張り合いは終わり、引っ張りきった方の母親は子供を嬉々として連れて行こうとします。
が、大岡越前はこれを制止します。
『ちょっとまて、その子は手を離したこちらの母親のものだ』
引っ張りきった方の母親は納得がいきません。なんせ、自分は引っ張り合いに勝っているのですから。
当然、こちらの親は食い下がりました。しかし大岡越前は『わたしは「引き寄せた方が勝ち」などとは言っていない。それに、本当の親なら、子が痛いと叫んでいる行為をどうして続けられようか』と言いました。
大岡越前は、母の持つ愛情をしっかり見切ったのでした。
これにて一件落着。
――おしまい―― 愛 「良い話だねぇ」
璃奈 「この状況は大岡裁きにとても酷似してる」
愛 「なら手を離した方が真の愛を持ってるってこと?」
璃奈 「うん」
かすみ 「……」 ググググ
歩夢 「……」 ググググ
かすみ (そんな話を聞いちゃったら)
歩夢 (手を離すしかないよ……)
パッ
侑 「た、助かった……」 愛 「ありゃ? 同時に手を離しちゃったね」
璃奈 「二人とも愛がある」
歩夢 「ごめんね、侑ちゃん……痛かったよね」
かすみ 「先輩のことを考えないで自分のことばっかり優先して……本当にごめんなさい!」
侑 「二人とも謝らないで……たしかに少し痛かったけど、二人が喧嘩する方がもっと嫌だからさ」 ニコッ
歩夢 「侑ちゃん……!」 パァァ
かすみ 「先輩……!」 パァァ ガチャ
せつ菜 「侑さん!!」
侑 「せつ菜ちゃん?」
せつ菜 「以前二人で見に行った映画のイベントが、近くでやってるみたいですよ!! さぁ、行きましょう!!」
歩夢 「二人で見に行った映画?」
かすみ (歩夢先輩、目が笑ってない……!?)
侑 「えっ、あの映画の!? うん! 行こう!」
せつ菜 「では出発です!」 ガシッ
ガチャ 歩夢 「……」
愛 「あっという間にゆうゆうを連れて行っちゃったね……あんなに取り合ってたのに」
璃奈 「二人とも手繋いでた」
愛 「もう! ゆうゆうはかすみんと歩夢のものなんだよ!! 返せっつの! せっつーだけに!」 ドヤッ
しずく 「やっぱりゆうせつなんだよなぁ」 ガチャ
せつ菜 「忘れ物しちゃいました!!」
かすみ 「あの……せつ菜先輩」
せつ菜 「はい? なんでしょうか?」
かすみ 「以前は忘れてましたけど、私の名前今は覚えてますか?」
せつ菜 「カスミですよね!! オレンジ髪で覚えてます!」
かすみ 「それはポケモンの方のカスミですよね……カタカナ表記ですし」
\セツナチャーン/
せつ菜 「あっ! 呼ばれてます! すいません、早く行かないと!」
ガチャ 歩夢 「……」
かすみ 「歩夢先輩……」
歩夢 「ねぇ、かすみちゃん」
かすみ 「な、なんですか」 ドキッ
歩夢 「さっき侑ちゃんを利用して、二人で私から逃げようとしたよね?」 ゴゴゴゴ
かすみ 「ひぃぃ!!」
歩夢 「侑ちゃんが喧嘩するのやめてって言ったからやめたけど、今はもうせつ菜ちゃんと一緒にいなくなっちゃったし……」
かすみ 「うぅ……」 ガクガク
歩夢 「許さないよ?」 ボキッ
バキッ
ドドドドドドドド
かすみ 「うぎゃぁぁぁぁーーーー!!!」
璃奈 「二人とも愛があった。だからこそ拗れると厄介」
しずく 「私、演技でもここまでの迫力は出せません……! 勉強になります」
愛 「やっぱり呼び名は、かすかすの方がいいよ! 歩夢にボコボコにされてるし!!」
璃奈 (愛さん……辛辣……!)
おわり では短編二作目頑張ります。
― 歩夢 「笑いのレベルが赤ちゃんだから」―
かすみ 「おかしくないですか?」
愛 「何が?」
かすみ 「歩夢先輩の発言が、ですよ。だって赤ちゃんってダジャレで笑います?」
愛 「愛さんのダジャレが面白くないってこと?」
かすみ 「いやいやそういうことじゃなくて……赤ちゃんに言葉遊びの笑いが分かりますかね? 変顔とかなら笑うかもですが」
愛 「あーそれはそうかも! 愛さんも親戚の赤ちゃんを笑わせようとしたことがあるけど、すごく大変だったもん! ダジャレをいくら言っても笑わなかったのに、真顔のせっつーを見せたらすぐ笑ったんだ〜」 かすみ 「だから歩夢先輩の発言、少し違和感を感じたんです」
愛 「うーん、言葉の綾だと思うけどなぁ。そんなに気になるなら今日、歩夢をこっそり追跡しちゃおうよ!」
かすみ 「追跡ですか?」
愛 「そうそう! こっそりバレないようにゆっくり、ゆっくり、歩むんだ! 歩夢だけに!」
かすみ 「……」
愛 「……」
かすみ 「……あっ、あの」
愛 「ツボれよ、ほら」(低音)
かすみ 「ひっ」 かすみ (超怖い顔で睨まれてる……!? やっぱり愛先輩って髪染めてるし怖い人だったんだ……!?) ガクガク
かすみ 「ははは……愛先輩のダジャレ面白いなぁ……」
愛 「でしょーー!!」 ニコッ
かすみ 「そ、それはそれとして、追跡してみるのは良いかもですね! 思い立ったら吉日!! 今日の放課後やってみます!」
愛 「おおっー!! 応援してるよーー、かすかすぅ!」
かすみ 「だからかすかすじゃありません!!」 プンプン
…
…
… かすみ 「ってことでこっそり歩夢先輩を追跡しています……!」
かすみ (今日は侑先輩はせつ菜先輩と用事があって、歩夢先輩は一人で帰ってます……! 大岡裁き事件のこともあって、歩夢先輩とはギスギスしていますが、とはいえかすみんは怖気ついたりしません!)
プルプル
歩夢 「電話……? 侑ちゃんかな?」 チラッ
歩夢 「あっ、愛ちゃんだ」
かすみ (愛先輩?)
愛 『あっ、もしもし? 歩夢?』
歩夢 「どうしたの愛ちゃん?」 愛 『歩夢ゆうゆうの笑いのレベルが赤ちゃんだって言ってたじゃん』
歩夢 「うん、侑ちゃんは本当に笑いのレベルが赤ちゃんだからね」
愛 『かすかすがね、赤ちゃんはダジャレで笑わないのになんであのとき赤ちゃんなんて言葉が出てきたのかって疑問に思っててね』
歩夢 「あー……」
愛 『もしかして理由でもあるのかなって、愛さんも気になっちゃって電話しちゃった!』
歩夢 「うーん、理由は特にないよ。最近侑ちゃんに赤ちゃんのイメージがあって、ふと浮かんできちゃっただけ」
愛 『へぇ……ってなんで赤ちゃんのイメージが?』 歩夢 「あっ」
愛 『むむむ? 歩夢ちょっと怪しいぞ??』
歩夢 「な、なんでもない、切るね!」 ポチッ
愛 『ちょっと待っ』
ツーツー
歩夢 「危なかったぁ……」
かすみ (遠くてあまり聞き取れませんでしたが、歩夢先輩、少し焦ってる様子ですね)
ピコーン
かすみ 「あれ? 愛先輩からメール?」 かすかすへ
愛さんなりに探ってみたんだけど、特に理由はないんだって! 強いて言えば、ゆうゆうに赤ちゃんのイメージがあったから……らしい。
でも正直これって怪しいよね?
赤ちゃんのイメージがあるっていうのがそもそも意味が分からないし、焦って電話を切ったのも気になる。
もしかしてかすかすの推理通り、なにかあるのかも……!
かすみ 「赤ちゃんのイメージ? なんですか、それ……。むむ、これは調べ甲斐がありますね」 かすみ 「とりあえず情報提供もしてくれたし返信しないと。『かすかすじゃなくて、かすみんです!』……と」 ポチポチ
歩夢 「……」 クルッ
かすみ 「あっ、歩夢先輩が動き始めました! 見失わないようにしないと!」
かすみ (ってそこを右折!? 歩夢先輩の家は侑先輩の隣のはずですよね……ならそこは左折ですよ!? つまり、向かってるのは家じゃない? )
かすみ 「歩夢先輩……ますます怪しくなってきました。一体何を隠してるんですか……!」
…
…
… 歩夢 「……」 トコトコ
かすみ (ってずっと歩夢先輩についていってたら、いつのまにか見知らぬ森の中に入ってましたよ!?)
かすみ 「こんな森の中なんて、何もないはずなのにどうして……」
歩夢 「ここまで来るのは疲れるなぁ……だけどバレたら大変だもんね。仕方ないや」
ガチャ
かすみ 「って小屋がある!? しかも歩夢先輩、中に入っていって……!」
かすみ (こんなの怪しさてんこ盛りじゃないですか! まさか歩夢先輩の赤ちゃんレベル発言から、こんな展開になるなんて……) かすみ 「あの小屋の中に歩夢先輩のとんでもない秘密が……! で、でも、もしかすみんがこっそりついてきてたのがバレたらどうなるんでしょうか……」 ガクガク
かすみ 「歩夢先輩、怒ると怖いし……ただでさえ最近の歩夢先輩は侑先輩がせつ菜先輩に取られて機嫌悪いし……」
かすみ (むぅ……やっぱり痛い目にあいたくないし帰ろうかなぁ……)
かすみ (だけど気になるし、愛先輩にも真実を教えてあげたいしなぁ……)
かすみ 「こうなったら当たって砕けろだ!!」
ガチャ
かすみ 「って地下に続く階段!?」
かすみ (真っ暗……)
かすみ 「でも行くしかない!!」
…
…
… かすみ 「こ、これは……!」
ガラスのやつ 「ぶくぶく」
かすみ 「よくハリウッド映画とかSF漫画で見る、泡がぶくぶくしてる液体が入ってるガラスのやつだ……!」
かすみ 「これってもしかして、化学実験でもしてるんでしょうか……でも、森の奥地、しかも地下でわざわざする必要があるの?」
かすみ 「ん? 本が落ちてる」 スッ
本 「クローン人間の作り方」
かすみ 「ひっっ!? く、クローン人間の作り方!? な、なんでこんなものが!?」
かすみ 「ま、まさか……侑先輩に赤ちゃんのイメージがあるのって……!」 ガクガク
かすみ (ここでこっそり先輩のクローンを作ってるから!?) \オギャーー!/
かすみ 「って赤ちゃんの泣き声!?」
かすみ (あの部屋から声が聞こえました!)
かすみ 「歩夢先輩……! いくらせつ菜先輩に奪われたからってクローンは絶対ダメですよ!! そ、そんなの!」 タタタタ
かすみ (なんの法律に引っかかるかは分かりませんけど、絶対犯罪ですよね!? そんなに先輩のことが好きなんですか!? 歩夢先輩がもし逮捕されたら……悲しむのは侑先輩だけじゃないんですよ!!)
かすみ 「かすみんだって……かすみんだって……!」 タタタタ
かすみ 「歩夢先輩のことが大好きなんですぅ!」
ガチャ 歩夢 「おーい、よしよしー♪ 」 ナデナデ
人形 「」
テレビ 「オギャーー!」
かすみ 「はっ?」
歩夢 「ってかすみちゃん!?」
かすみ 「こ、これは一体……く、クローンは? 先輩のクローン赤ちゃんは?」
歩夢 「あ、えっと、そ、その」 アタフタ
…
…
… かすみ 「ええっ!? 人形ごっこしてた!?」
歩夢 「うん……最近侑ちゃんと距離が遠くなっちゃったからつい……」
かすみ 「で、その赤ちゃんの人形と、赤ちゃんの泣き声の映像ってわけですね」
歩夢 「うん……ちなみにこの映像は侑ちゃんの赤ん坊の頃の映像だよ。こっそり借りてきたんだ」
かすみ 「とりあえず良かったです……いや、良くはないんですけど! 結構犯罪スレスレですけど!? まぁ、それでも、犯罪を犯してなくて本当に良かったです……」 ホッ
歩夢 「かすみちゃんは私を心配してくれたの?」 かすみ 「そりゃあ心配しますよ!! 歩夢先輩がいなくなっちゃうかもって、本気で思ったんですからね!?」 ウルウル
歩夢 「ごめんね……かすみちゃん……」
かすみ 「うぅ……でも本当に良かったです……」 ポロポロ
歩夢 (まさか、かすみちゃんをここまで心配させちゃうなんて……悪いことしちゃったなぁ。しばらくここに来るのはやめておこう)
かすみ 「歩夢先輩……ギュッとしても良いですか?」 ポロポロ
歩夢 「ギュッ?」 かすみ 「遠くに行かないようにです!!」 ギュッ
歩夢 「えっ……///」 カァァ
かすみ 「うぅ、しばらく離しませんよ!」
歩夢 「……」
歩夢 (なんだか最近侑ちゃんのことしか考えてなかったけど……抱きしめられるとあったかいなぁ……)
かすみ 「歩夢先輩……!!」 ポロポロ
歩夢 「……」 ナデナデ
…
…
… かすみ 「……」 グスッ
歩夢 (泣き止んだかな……?)
かすみ 「歩夢先輩……ワガママ言ってごめんなさい」 パッ
歩夢 「あっ」
歩夢 (ハグ、終わっちゃった……)
かすみ 「ま、まぁ、元々は歩夢先輩が悪いんですけどね!」 プンプン
歩夢 「ふふっ、ごめんね、かすみちゃん」 ニコッ
かすみ 「少しは笑ってないで反省してください! もぅ!」 歩夢 (かすみちゃん、いつも通りになって良かった)
かすみ 「歩夢先輩……気持ちは分かりますけど、ちょっとは周りのことも考えてください!! 歩夢先輩が侑先輩を心配してるように、スクールアイドル同好会のみんなも歩夢先輩のことを心配してるんですから!」
歩夢 「そっか……みんな、いつも、心配してくれて……」
かすみ 「もちろんです!! それは今までも、そしてこれからも、変わりませんよ!!」
歩夢 「ふふっ、ありがとう、かすみちゃん」
かすみ (これでようやく万事解決ですね! あれ、そういえば……?) かすみ 「あのぉ……そういえば、あっちの方でクローン人間についての本がありましたけど……あれは何なんですか?」
歩夢 「クローン人間? あっ、それはね、ふふ、侑ちゃんとの将来を見通してね」
かすみ 「へぇ……」
かすみ (まぁともかく無事解決して良かったです……ってあれ? こんな施設作って、人形ごっこして、将来のためにクローン人間の勉強してるって……)
かすみ (それ十分怖くない!?)
歩夢 「ふふ」 ニコニコ
かすみ 「ひぃぃ!」 ビクッ
歩夢 「?」 キョトン
おわり では三作目参ります。
― 果林 「また迷っちゃったわねぇ」―
果林 「千葉に向かってたのに……東京ディズニーランドに着いちゃうなんて」
果林 「運がないわねぇ」
果林 「そういえば前に璃奈ちゃんがカーナビみたいなアプリを、スマホに入れてくれてたような……使ってみようかしら」
果林 「えっと『璃奈ちゃんカーナビ』これで大丈夫なの?」
ポチッ 璃奈 『起動してくれてありがとう。今、果林さんがこの映像を見ているということは……』
璃奈 『もう私はいないということだろう』
果林 (なに? ハリウッド映画でも始まったの?)
璃奈 『つまりver2.0の璃奈ちゃんカーナビからver3.0になるということだ。アップデートして、再起動してね』
果林 「あっ、アップデートのお知らせだったのね」 ―再起動中―
果林 「よし、アップデート終わったわ」
璃奈 『よろしく。ver3.0の璃奈です。この璃奈ちゃんカーナビはスクールアイドル同好会の九人分の性格をインプットしているんだ。機械に弱いであろう果林さんが親しみやすいように工夫した結果だよ』
果林 (なんか煽られてる……)
璃奈 『では下のボタンをクリックして、早速使ってみてね』
果林 「まずは誰が出るのかしら?」
ポチッ せつ菜 『こんにちは!!!! 果林さん!!!!』
果林 「……なるほど」ボリューム高速下げ
せつ菜 『まずは目的地を教えてください!!!!』
果林 「千葉よ」
せつ菜 『千葉? 千葉の具体的にどこに行きたいのですか?』
果林 「別に……ただ千葉に行ってみたかっただけだから、具体的な場所は決まってないの」
せつ菜 『なぜ千葉に行きたくなったのです?』 果林 「ふなっしーっているじゃない? 千葉の非公認ゆるキャラ。あれにハマっちゃって、千葉に興味が湧いたのよ」
せつ菜 『なら船橋に行ってみてはどうですか?』
果林 「別にそこまではこだわってないの。千葉ならどこでも良いのよ」
せつ菜 『では千葉に行ってみましょうか!!!! 位置情報サービスをオフにしてるみたいなので、それをオンにするか、もしくは自分の居場所が具体的に分かるなら教えてください!!!!』
果林 「居場所は東京ディズニーランドよ」
せつ菜 『東京ディズニーランドですか?』 果林 「ええ」
せつ菜 『ならもう千葉じゃないですか』
※東京ディズニーランドは千葉県浦安市舞浜にあります。
果林 「何言ってるのよ? まだ東京じゃない」
せつ菜 『?』
果林 「千葉に向かってたのに東京から出てないからカーナビに頼ったのよ? しっかりしてほしいわ。ここは東京よ」
せつ菜 『???』
果林 「もう一度言うわよ? ここは東京ディズニーランド。東京ってついてるでしょ? つまりDOWNTOWNってわけ!」
せつ菜 『?????』 果林 「もしかしてせつ菜……千葉をあまり知らないのかしら? あのね、勉強も大事だけど、実際に歩くことも大切なのよ? 文字からだけじゃ得ることのできない経験が世界には山ほどあるわ。例えば千葉には東京とドイツの人が一緒に住んでる村があるのよ? 国際都市よねぇ……」
せつ菜 『???????』
果林 「ふふ、せつ菜、分かるかしら?」 ドヤッ
せつ菜 『えっと……まさかそれって……東京ドイツ村のことを言ってます?』
果林 「そうよ。なかなかやるわね」
※東京ドイツ村は千葉県袖ヶ浦市にあるテーマパークのことである。ちなみに東京ドイツ村は全く国際都市ではない。そもそも都市でもない。東京アクアラインが開通した時にオープンした、ということで勢いで「東京」と付け、オーナーがドイツに寄せたデザインをしたため「ドイツ」と付けている。ちなみに、ドイツではやってないであろう「さつまいも掘り」や「落花生掘り」などのイベントがある。 せつ菜 『えっとまずどこから説明すればいいんでしょうか……』 アセアセ
璃奈 『タイムアップ!』 ピコーン
せつ菜 『えっ』
愛 『ってことで次は愛さんだよ!』
果林 「画面が愛に変わったわ」 ボリューム元に戻す
愛 『それでカリンはどこに行きたいのかな?』
果林 「千葉よ。どこでも良いからとにかく千葉よ」 愛 『なるほど〜。ナビゲーターなんて愛さん重要な立場だね! 千葉だけに!』
果林 「……」
愛 『……』
果林 「……えっ、あっ」
愛 『ツボれよ、ほら』(低音)
果林 「ひっ」
果林 (超怖い顔で睨んでるわ……。やっぱり愛って髪染めてるし怖い人なの……!?) ガクガク
果林 「あっ、たちばで千葉か! 私、鈍感だからすぐ気付かなかったわ……愛のダジャレは本当にクオリティが高いわね!」
愛 『でしょーー!!』 ニコッ 果林 「そ、それはそれとして、ナビゲーターを頼めるかしら? 愛?」
愛 『もちろんだよ! どこにも行けるし、どんな人にも会いに行けるよ! 愛だけに!』
果林 「ははっ、面白いわね」
愛 『ちなみに現在地は分かるかな、もしかして銀座1の料理店とか!? 現在地だけに!』
果林 「笑えるわね」
愛 『……ねぇカリン、なんか適当に相槌打ってない?』(低音)
果林 「ひぃぃ! そ、そんなわけないじゃない……笑いすぎて呼吸するので精一杯なのよ」 アセアセ
愛 『そっか! そんな笑ってもらえて愛さんも嬉しい!』
璃奈 『タイムアップ!』 ピコーン
愛 『えっ』 果林 (また道案内してもらえなかったわ……)
歩夢 『よろしくお願いします、果林さん』
果林 「あっ、歩夢! 歩夢なら安心ね!」
歩夢 『目的地と現在地を教えてくれるかな?』
果林 『目的地はどこでもいいからとにかく千葉で、現在地は東京ディズニーランドよ』
歩夢 『えっ?』
果林 (何かおかしなこと言ったかしら……?) 歩夢 『東京ディズニーランド……侑ちゃんと小学3年生の頃に行ったなぁ』
果林 (あっ、やばい)
歩夢 『途中で侑ちゃんとはぐれちゃったんだけど、しばらくして侑ちゃんが私を見つけてくれたんだ! それはもう、夕陽に照らされて笑う侑ちゃん、かっこよかったなぁ……』
果林 「あ、歩夢? 幼馴染トークも興味深いけれど、今はまず道案内をして欲しいなぁ……なんて」
歩夢 『だけどこれからはきっと、侑ちゃんはせつ菜ちゃんと二人でディズニーランドに行くんだ。そんなの夢の国じゃないよ! 私が侑ちゃんの隣にいれないなんて……!!』 ブツブツ
果林 「ひっ!」
果林 「こ、これは無理ね」 璃奈 『タイムアップ!』 ピコーン
果林 「ちょ、ちょっと待って、璃奈!」
璃奈 『……? どうしたの、果林さん』
果林 「正直このままじゃ誰も道案内してくれそうにないわよ!? それに、そのタイムアップって何なのよ?」
璃奈 『せっかくいろんなバリエーションを作ったから、果林さんには全部体験して欲しくて。だから、五分経つとメンバーチェンジする機能をつけた』
果林 「なるほど……」
璃奈 『ちなみに一周したら、二時間使えなくなる機能もある』
果林 「ええっ!? なんでそんな機能つけてるのよ!?」
璃奈 『スリルがあって良いかなって』 果林 「よ、良くないわよ!! 私が道案内される前に一周しちゃったら、私は迷ったままってことでしょ!?」
璃奈 『頑張って。次は私だから何とかする』
果林 「あっ、璃奈ちゃんが次なのね……ならなんとかなるかしら? えっと、千葉のどこかに行きたくて、現在地は東京ディズニーランドよ」
璃奈 『えっと、まずは東京ディズニーランドの場所から教えないといけない。実は東京ディズニーランドは……』
璃奈 『タイムアップ!』 ピコーン
璃奈 『あっ』 果林 「えっ?」
璃奈 『ごめん、タイムアップした』
果林 「な、なんで? まだナビゲート始めたばっかりじゃ……まさか私がいろいろ質問し始めた頃から時間を測ってたの!?」
璃奈 『うん。チェンジしてから五分だから』
果林 「そ、そんな!?」
かすみ 『ってことで次はかわいいかすみんですよー♪』
果林 (その後、かすみちゃんは可愛いアピールをしつこく間に挟んだために、結局役に立たないまま終わってしまった……)
かすみ 『ってかすみんはダイジェストで終わりですか!?』
…
…
… 果林 「しずくちゃんは私と一緒に迷ってる役を演じ始めて、結局、道案内をしてくれなかったわね……」
果林 「そして彼方はすぐに寝るし……」
果林 「侑は一番頼り甲斐があったけど、私が言ったことが偶然ダジャレになってしまって……そこからは五分間爆笑で喋れなかったわね……」
果林 「そして、ついに次で九人目。璃奈ちゃんの言ってることがもし本当だとしたら、次の人でも道案内してくれなかったら私はこのまま迷ったままでBADENDってことに……!」 ガクガク 果林 「せつ菜、愛、歩夢、璃奈ちゃん、かすみちゃん、しずくちゃん、彼方、侑……ってことは」
果林 「次はエマだわ!!」 パァァ
果林 「エマなら大丈夫!! きっといけるわ!!」
璃奈 『タイムアップ!』 ピコーン
侑 『ひぃひぃ……! ご、ごめんなさい、果林さん……笑いが止まらなくて……!』
果林 「まぁ仕方ないわ、気にしないで。でもあなたはもう少し笑いのツボを深くした方がいいと思うわ」
果林 (最後に賭けるわよ……エマ!!) 果林 『で、目的地はどこかしら?』
果林 「」
果林 『どうしたの? 早く言ってくれないかしら?』
果林 「え、えっと、エマは……?」
璃奈 『みんなの性格をインプットするために調査した期間がちょうどエマさんの里帰りに重なって、エマさんはできなかった』
果林 『いいの? あと少しで五分経っちゃうわよ?』
果林 (もう無理かも……) 果林 「えっと一応聞くけど、ここは東京ディズニーランドで、千葉に行きたいの。どうすれば行けるかしら?」
果林 『千葉? 千葉なら、えっと……あっち! あっちに行けばいいと思うわ!』
果林 「私そっちからここに来たんだけど」
果林 『……』
果林 「……」
璃奈 『タイムアップ!』 ピコーン
果林 『……』
璃奈 『今からこのアプリは二時間使えなくなるから気をつけてね』 ―停止中―
果林 「……」
果林 「エマにメールしようかな……」
エマヘ
私は今東京ディズニーランドにいます。
せっかくだからエマが食べたがっていたチュロスをお土産に買っていくわね。
でも出来立ては諦めてください。
おそらく数時間どころの話では済まないと思います。
ついでに綺麗な夜景も撮っておくわ。
きっと千葉の夜景って綺麗なのね。
行きたかった、千葉。
おわり ありがとうございます。
ようやく三つの短編を書き終わったので、+αである四作目を書かせてもらおうと思います。
しかし、申し訳ないのですが、書き溜めていたものが少ないのと、夜遅くなってしまったのもあり、今日はここまでで続きは明日にさせてもらおうと思います。土曜日なので早く更新できると思います。
四つ目の題名だけ先に伝えておきます。
かすみ 「またかすみんの名前を間違えたんですか!?」 画面に映った侑ちゃんにぶちゅっちゅして嫌がられたい 遅れてすいません。
また少しずつですが、更新させてもらいます。
なんとかアニメ放送には間に合いたいです。 では+αである四作目頑張ります。
― かすみ 「またかすみんの名前を間違えたんですか!?」―
せつ菜 「覚えてますよ!! ハルカですよね!!」
かすみ 「違いますよ!? またポケモンじゃないですか!? しかも前回より遠くなってるし!!」
彼方 「今遥ちゃんの名前呼んだ?」
かすみ 「呼んでないです!」
せつ菜 「えっと、ではヒカリですか?」
かすみ 「違いますよ!?」 せつ菜 「えっ!? じゃ、じゃあ、一体……!」 アセアセ
かすみ 「?」
せつ菜 「えっと……うーん……!」 ムムム
かすみ 「えっ? もしかして本当に思い出せないんですか?」
せつ菜 「……あの、その、ごめんなさい、本当に」
かすみ 「そ、そんな」
かすみ (仲間なのに、名前を思い出してくれないなんて……そ、そんなの……)
かすみ 「酷いじゃないですか……」 ポロポロ ガチャ
しずく 「みなさん、おはようございます」
かすみ 「あっ! しず子!! しず子なら分かるよね!? 私の名前!!」
しずく 「えっと……ハムレット?」
かすみ 「ハムレットはシェイクスピアの『ハムレット』の主役でしょ!?」
しずく 「じゃ、じゃあ春日さん?」
かすみ 「それはオードリーでしょ!?」
しずく 「あれ……なんでだろう、大切な人なのに……いつも一緒にいたのに……本当に……本当に、思い出せない……」
かすみ 「えっ……」
かすみ (そ、そんな……! しず子まで!? ど、どうして……) しずく 「どうして……どうして……思い出せないの!! 本当に忘れちゃいけないことなのに! なんで……」 ポロポロ
かすみ (しず子が泣いてる……)
かすみ 「……」
しずく 「ごめんなさい、すぐ、すぐ思い出しますから!」 ポロポロ
かすみ (何が起きてるか全然分かんない……でも、ここまで来たらきっと、しず子やせつ菜先輩が悪いわけじゃない……)
かすみ 「ごめんね、しず子」 ダキッ
しずく 「なんで、なんであなたが謝るんですか……! 悪いのは私なのに! 私なのに」 ポロポロ かすみ (私を名前で呼んでくれない……本当に思い出せないんだ、かすみんの名前)
かすみ 「ごめんね、しず子……!」 ポロポロ
ガチャ
愛 「ごめーん! アイス買ってたら遅れてきちゃった! 愛だけに! ……って、えっ?」
かすみ 「……」 ポロポロ
しずく 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 ポロポロ
せつ菜 「どうすれば、本当にどうすればいいんでしょうか……」 アセアセ
愛 「これはどういう状況……?」 愛 「えっと、かすみん? 泣いてるとこ悪いんだけど何が起きてるのか教えてくれない?」 ヒソヒソ
かすみ 「えっ……!」
愛 「?」
かすみ 「愛先輩は私の名前、覚えてるんですか!?」 ガシッ
愛 「へっ? そ、そりゃ、覚えてるよ。中須かすみ、でしょ?」
かすみ 「良かった……良かった……ちゃんとかすみんの名前を覚えてくれている人がいた……」 ポロポロ 愛 「何言ってんの、当たり前でしょ? 愛さん、かすかすのことはすごく印象に残ってるんだから。なんていっても、頭にかかった霞が一気に吹き飛ぶくらいの衝撃を受けたからね!! かすみんだけに!」
かすみ 「うぅ……良かったぁ……」 ポロポロ
愛 (ありゃ? かすかす呼びに怒らない? これ、思ったより重症かな)
愛 「ねぇ、みんな、今日かすかすどうしちゃったの……? ちょっと変だよね」 チラッ
愛 「って、えっ?」 せつ菜 「今日の練習メニューはどうしましょうか!!」 ワクワク
しずく 「昨日と同じで良いんじゃないでしょうか?」
彼方 「彼方ちゃんも賛成だよ〜」
愛 (あんなにさっきまでパニクっていたのに、もうみんな普通に喋ってる……!?)
愛 「ねぇ、みんな! 無視しないでよ!! かすかすが何で泣いてるのか教え……」
せつ菜 「あれ? 愛さん、いつの間にいたんですね! 良ければ一緒に練習メニューの話し合いをしてくれませんか?」 愛 「練習メニューの話し合い?」
かすみ 「うぅ……」 ポロポロ
愛 「そ、それも大切だけど、今はまずかすかすのことを……」 チラッ
しずく 「かすかす?」
彼方 「ん?」
せつ菜 「そのかすかすって誰のことですか?」
愛 「はっ?」
かすみ 「えっ……」 ポロポロ 愛 「かすかすはかすかすだよ!? えっと、つまり、かすみんのこと!!」 アセアセ
彼方 「かすみん……? 紅茶の名前かなぁ」
しずく 「それはジャスミンじゃないですか?」
せつ菜 「すいませんがその、かすみんのことなんですが分からないですね……」
愛 「はっ……?」
かすみ 「……」 ポロポロ
かすみ (三人とも嘘をついてるようには見えない。名前どころか存在すら忘れちゃったの? この一瞬で?) 愛 「いやいや!? こ、ここにいるじゃん! かすみんが!」 ユビサシ
せつ菜 「?」
彼方 「うーん……えっと……」
しずく 「申し訳ないのですが、どこにいるんですか? そのかすみんという……人? 物?」
せつ菜 「愛さんが指を指してるところには何もないのですが……」
愛 「えっ……!?」 ガチャ
エマ 「ごめんね、少し遅れちゃった!」
愛 「あっ! エマっち!! ねぇエマっちは分かるよね!?」 ガッ
エマ 「そんなに慌ててどうしたの愛ちゃん?」
愛 「中須かすみって分かるよね!? 大事な同好会メンバーだもん! 分かるよね!?」
エマ 「中須かすみ……? うーん、聞いたことないなぁ」
愛 「なっ」
かすみ 「っ!」 タタタタ
愛 (かすかす!!) ガチャ
愛 (今かすかす、泣きながら出て行ってた……)
せつ菜 「あれ? 今ひとりでに扉が開きませんでした?」
エマ 「それはないんじゃないかなぁ。気のせいじゃない?」
愛 (これって……さすがに嫌がらせにしても不気味すぎるよね。本当にみんな、かすかすのことを忘れてるし見えてないんだ……!)
愛 (って今はそんな場合じゃない!! かすかすを追わないと!!)
愛 「ごめん!! 少し外の空気吸ってくる!」
ガチャ
…
…
… 果林 「ねぇ、璃奈ちゃん。なんでカーナビ機能に制約なんてつけるのよ」
璃奈 「スリル楽しめた? 璃奈ちゃんボート『ワクワク』」
果林 「楽しめるどころかそのせいで大変だったのよ!?」
璃奈 「えっ、悪いことしてしまったなら謝る……ごめんなさい……」 シューン
果林 「って、あっ、そんなに謝らなくても良いのよ? なんていうか、迷うのもまぁ楽しかったし、璃奈ちゃんは悪くないというか」 アセアセ 璃奈 「ん? あそこにいるのって」 チラッ
果林 「あれはかすみちゃん?」
かすみ 「……」 グスッ
果林 「壁の角っこでうずくまってるわね」
璃奈 「なにかあったのかもしれない」
果林 「そんなところでどうしたのよ、かすみちゃん」 ヒョイ
かすみ 「えっ……!」
果林 「そんなに驚いた顔して……何があったのよ」 かすみ 「果林先輩……私が見えるんですか……!」 ポロポロ
果林 「ええっ!? 急に泣き出したわよ!?」
璃奈 「た、大変だー……! 璃奈ちゃんボート『オロオロ』」
愛 「かすかすーーー!!」 タタタタ
かすみ 「あっ、愛先輩……!」
愛 「良かった無事で!!」 ダキッ
かすみ 「うぅ……愛先輩……!」 ポロポロ 果林 「ちょ、ちょっと、愛!? かすみちゃんは泣いてるし、何があったのよ!?」
璃奈 「私にも教えて」
愛 「二人はかすかすのこと覚えてるの!?」
果林 「えっ、それはもちろん……当然じゃない。仲間なんだから」
璃奈 「仲間がつらいときは支え合うのが大事!」
かすみ 「りな子……果林先輩……!」
愛 「えっとね、じゃあ簡単に話すけど……」
…
…
… 果林 「今日ってエイプリルフールだったかしら」
愛 「本当なんだってば!!」
果林 「分かってるわよ……だけどいまだに信じられない……演技とかじゃないの?」
愛 「いや。いくらしずくが演技が上手いにしても、あれはさすがに……! それに、カナちゃんやせっつー、エマっちまで演技してるなんてありえないよ!」
璃奈 「……」 かすみ 「だけど少しホッとしました……愛先輩や果林先輩、りな子はちゃんと、私のことを覚えててくれましたから!」 ニコッ
果林 「ふふっ、かすみちゃんはやっぱり笑顔が一番素敵よ」 ナデナデ
かすみ 「ちょ……頭撫でないでください!!///」 カァァ
愛 (かすかす、少しは元気を取り戻せたかな……良かった……) 「もういい加減にしてよ、侑ちゃん!!」 ドンッ
愛 「って今の怒鳴り声はなに!?」
果林 「声的には歩夢だけど……」
璃奈 「あの歩夢さんが怒鳴るなんて……しかもよりによって、侑さんに怒るなんて、信じられない」
かすみ (歩夢先輩……!)
かすみ 「みなさん、歩夢先輩のところに行きましょう!」 果林 「ええっ!? もちろん歩夢のことも心配だけど……今は何より、かすみちゃんのことをどうにかしないと」 アセアセ
かすみ 「いや私は歩夢先輩のことが放っておけませんので行きます!」 タタタタ
愛 「かすかす!?」
かすみ (最初は侑先輩を取り合って喧嘩したり、仲も良くなかったです……でも、やっぱり歩夢先輩は私にとって最高の先輩で、憧れのスクールアイドルなんです! あの赤ちゃんレベル事件のとき、改めて私は歩夢先輩の大切さを知ったから! だから!!)
かすみ 「歩夢先輩! 今行きます!」 タタタタ
…
…
… >>88
>>89
応援ありがとうございます!
少しずつですが更新させてもらおうと思います。 侑 「あ、歩夢……どうしちゃったのさ!」 アセアセ
歩夢 「どうかしちゃったのは侑ちゃんの方だよ!?」
かすみ 「け、喧嘩はやめてくださいーー!」 サッ
愛 「どうしたのさ、二人とも!!」
歩夢 「……!」
侑 「愛さん……!」
愛 「とりあえず、喧嘩は良くないよ! 意見が合わないなら、ちゃんと冷静に話し合いをしなくちゃ!」 侑 「……そうだね、怒鳴り合うなんて私たちらしくないや。ごめんね、歩夢」
歩夢 「わ、私だってごめんなさい……侑ちゃん……」
愛 「うんうん、それでこそゆうゆうと歩夢だよ……えっと、それで何があったのかな?」
侑 「歩夢が急に怒ったんです。でも今思えば、歩夢があんなに怒るなんて滅多にないことだから、きっと私が酷いことを言ったんだと思います」
かすみ 「先輩たちも喧嘩することがあるんですねぇ……侑先輩は何を言っちゃったんですか?」
侑 「……」
かすみ 「えっ、スルー?」 愛 「ねぇ、ゆうゆうってば、答えてよ。何を言っちゃったの?」
侑 「知らないって言ったんです」
愛 「知らない?」
かすみ (ま、まさか)
侑 「歩夢が友達の話をし始めたんですけど、私の知らない人の話で。でも知らない素振りを見せたら怒っちゃって……」
かすみ 「そ、そんな……侑先輩まで……」 ―――――
―――
―
かすみ 「先輩、大好きっ!!」 ダキッ
侑 「ちょ、かすみちゃん?/// 急に抱きついてくるなんて恥ずかしいよ///」
かすみ 「大好きな先輩にくっつきたいかすみんのわがままを許してください!」
侑 「仕方ないなぁ///」
―
―――
――――― かすみ 「あんなに仲が良かったのに……先輩のおかげでかすみんは自分の好きを見つめ直せたのに……!」 ポロポロ
歩夢 「か、かすみちゃん……!」
かすみ 「ごめんなさい、愛先輩……少し誰もいない場所に行ってもいいですか?」
愛 「……」
愛 「うん、いいよ」
かすみ 「っ!」 タタタタ
歩夢 「かすみちゃん……」
歩夢 (私、またかすみちゃんを泣かせちゃった……) 歩夢 「侑ちゃん……今日ばかりは侑ちゃんのこと、好きになれないよ……」 ボソッ
侑 「歩夢?」
愛 (まずはゆうゆうをこの場から帰ってもらって、歩夢に事情を説明する必要があるな)
愛 「ゆうゆう、悪いんだけど先に部室に行ってくれないかな? 歩夢と二人っきりで話したいんだ」
侑 「えっ? ……うん、分かった」
歩夢 「……」
愛 「歩夢、こっちに来てくれる?」
…
…
… 果林 「気まずすぎて外からこっそり見ていることしかできなかったけど……侑の様子を見るに、愛の言ってたことは本当みたいね」
璃奈 「あっ、こっちに二人来る」
歩夢 「果林さんに、璃奈ちゃん……」
愛 「かすかすの様子は分かる?」
果林 「かすみちゃんはあっちの空き教室の方に向かったわ……でも今は一人にさせてあげて」 璃奈 「歩夢さん。まず一言言わせて。侑さんを憎まないで欲しい、今回のことは侑さんだけのことじゃないから」
歩夢 「えっ? どういうこと?」
愛 「実は、かすかすの存在を忘れて、なおかつ姿さえ見えなくなっちゃう現象は、ゆうゆうだけじゃなくて……せっつー、カナちゃん、しずく、エマっち。つまりここにいるメンバー以外みんなに起きてるんだ」
歩夢 「そ、そんな……!」
果林 「原因は今のところ不明よ。でもかすみちゃんの心は相当傷ついてるはず……私たちでできるだけ支えなくちゃいけないわ」
璃奈 「原因は分かるかもしれない」
愛 「えっ!? そ、それ本当!?」 璃奈 「うん……だけど、それを調べるにはかすみちゃんの協力が必要」
果林 「だけどかすみちゃんはしばらく一人にさせてあげるべきよ」
璃奈 「そうだけど……もしかしたらそんな時間はないかもしれない」
果林 「……どういうこと?」
璃奈 「歩夢さん」
歩夢 「!」
璃奈 「きっと今一番かすみちゃんに寄り添えるのは歩夢さんだから、お願い。かすみちゃんをここに連れてきて欲しい」
歩夢 「……」
璃奈 「お願い」
歩夢 「……うん、分かった。行ってくる」 タタタタ
…
…
… かすみ (こうして窓際の机に突っ伏してると……怖気ついてたときのしず子を思い出す……)
かすみ (でも今のしず子はすごく輝いてる……大きな壁を越えたんだ)
かすみ 「だけどそんなしず子の輝く場所に、かすみんの居場所はない……!」 グスッ
かすみ 「いや、侑先輩にも忘れられて、同好会の半数にも忘れられた今じゃ……同好会にすら居場所はないかもな……はは寂しいなぁ」
かすみ 「なんて……簡単に、簡単に……!!」 グググ
かすみ 「諦められるわけないよっ!!! せっかくここまで来たのに!! こんな今まで幸せだったのに!! なんで!! なんで!!」 ポロポロ ガチャ
歩夢 「かすみちゃん!!」
かすみ 「えっ……歩夢先輩」
かすみ (そっか、そういえばさっき歩夢先輩は私のことを覚えてた……。あの歩夢先輩が侑先輩に怒るんだもん、きっと、私が傷つかないように、一生懸命頑張ってくれていた……なのに私は……)
かすみ 「あはは、どうしたんですか、歩夢先輩。そんな怖い顔して。そんなんじゃ、せっかく可愛い顔が台無しですよ! まぁかすみんの方が可愛いですけどね!」 ニコッ
歩夢 (涙の跡でバレバレだよ……かすみちゃん……) ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています