かすみ 「かすみんは学びます!」
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短編三つ+αの四部構成になっています。
・かすみ 「かすみんは学びます!」
・歩夢 「笑いのレベルが赤ちゃんだから」
・果林 「また迷っちゃったわねぇ」
また、+αである4つ目の作品の題名は、展開上の都合で、三つ書き切るまで秘密とさせていただきます。
よろしくお願いします。 歩夢 「かすみちゃん!!」 ダキッ
かすみ 「へっ……歩夢先輩……?」
歩夢 「無理して笑わないで、つらいときは泣いていいんだよ」
かすみ 「な、何言ってるんですか……歩夢先輩……それに急に抱きつかれたら、恥ずかしいですよぉ。いくらかすみんが可愛いとはいえ」 アセアセ
歩夢 「かすみちゃんは可愛いよ」
かすみ 「えっ」
歩夢 「そしてすっごく優しい……だから、そんなかすみちゃんが居なくなっちゃったら、私すごく悲しいよ」
かすみ 「歩夢先輩……」
歩夢 「かすみちゃん。今更だけど許可を取るね? ギュッとしても良いかな?」
かすみ 「ギュッ?」
歩夢 「遠くに行かないようにだよ」 ギュッ
かすみ 「歩夢先輩……///」 カァァ
かすみ (これって) ―――――
―――
―
かすみ 「歩夢先輩……ギュッとしても良いですか?」 ポロポロ
歩夢 「ギュッ?」
かすみ 「遠くに行かないようにです!!」 ギュッ
歩夢 「えっ……///」 カァァ
かすみ 「うぅ、しばらく離しませんよ!」
―
―――
――――― 歩夢 「かすみちゃん、絶対私たちがかすみちゃんを助けてみせるからね……!」 ポロポロ
かすみ (かすみんのやったことをまんま返してくるなんて……)
かすみ 「ありがとうございます……先輩……」 グスッ
かすみ (歩夢先輩も粋なことをしますね……大好きですよ、先輩)
…
…
… >>105
>>106
そう言ってくださると嬉しいです。
ありがとうございます!
更新が遅れてすいません。明日には書き終わると思いますので、最後まで読んでくださると嬉しいです。 >>108
>>109
>>110
>>111
待っていただきありがとうございます。
また少しずつですが、更新させてもらいます。
保守、ありがとうございます。 トコトコ
愛 「あっ、歩夢……! かすかす……!」 パァァ
歩夢 「みんな、ただいま!」
かすみ 「今、みんなの可愛いかすみんが、帰ってきましたよ〜♪」
果林 「ふふ、かすみちゃん、元気になったみたいで良かったわ」
かすみ 「先輩たちのおかげですよ……! たしかにすごくつらくて、今も胸の奥がずっと痛いですけど、だからって泣いてても何も変わらないですから。みんなが協力してくれるならもう怖くありません!! 絶対に解決しましょう!」
愛 「かすかす! その意気だよ!!」 璃奈 「……」 カタカタ
かすみ 「ってりな子は何をしてるんですか?」
璃奈 「パソコンいじり。正確にはハッキング」
かすみ 「ええっ!? ハッキング!?」
歩夢 「璃奈ちゃん、さっき原因が分かるかもしれないって言ってたけど、もしかしてそれを調べてるの?」
璃奈 「そう。でも、そのためにはかすみちゃんの個人情報が必要。生年月日や住所、諸々教えてほしい」
かすみ 「えぇ〜? アイドルの個人情報は重要機密ですよ!」 プンプン
果林 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
かすみ 「うぅ……ごめんなさい……」 愛 「あはは、いつものかすかすに戻ったなら戻ったでテンションが高すぎて大変だね」
果林 「それよりハッキングって、一体どこにしてるのよ?」
璃奈 「市役所」
愛 「えっ? 市役所!?」
璃奈 「かすみちゃん、私に耳打ちでいいから個人情報を教えてほしい」
かすみ 「あっ、はい! 分かりました!」
かすみ 「……」 ゴニョゴニョ
璃奈 「……」 カタカタ
璃奈 「よし、確認できた」 カタッ 果林 「えっと、戸籍を確認するだけならハッキングなんてしなくても良かったんじゃ……」
璃奈 「違う。あることを確認するのは簡単、でも、ないことを確認するにはくまなく調べる必要がある。だから個人情報を聞いてキーワード検索をした。関係者しか見れないところも確認したけど、どこにもなかった」
歩夢 「えっ? それってつまり……」
璃奈 「今、かすみちゃんは戸籍すら存在してない」
かすみ 「ええっ!?」
璃奈 「正確に言えば、生まれたことになっていない。過去が変わってる」 果林 「えっ? つまりどういうことなの?」 キョトン
璃奈 「誰かがかすみちゃんが生まれるキッカケとなる過去を変えて、かすみちゃんの存在をなかったことにしたっていうこと」
愛 「それって、犯人はタイムトラベラーってこと?」
果林 「ええっ? 戸籍がないのは大問題だけど、そこからタイムトラベラーなんてそんな流石に非現実的な……飛躍しすぎじゃない?」
璃奈 「ここに時空間連続体計測装置がある」
果林 「……なんて?」 璃奈 「簡単に言うと、時空の乱れを波として観測できる装置。趣味で作ってた」
かすみ 「趣味でって」
璃奈 「これで調べると、明らかにかすみちゃん周辺の時空だけ歪んでる。何者かの、干渉があったのは間違いない」
愛 「うーん……愛さん、さすがにそこまで難しいことは分からないけど、りなりーが言ってるならきっと本当だよ! 信じる! すごいなぁ、タイムトラベラーが本当にいたなんて」
かすみ 「ってことはそのタイムトラベラーが未来からやってきて、過去を変えて、私をいなかったことにしたってことなの?」
璃奈 「うん」 かすみ 「で、でも! じゃあ、今ここにいるかすみんは一体誰なんですか!? 私は戸籍もないし、生まれたことにもなってないんですよね!?」
璃奈 「それはおそらくタイムラグがあるから」
果林 「タイムラグ?」
璃奈 「まだ影響が、パラドックス修正が、完璧には入ってないということ。いずれ修正は完璧になって、ここにいるみんなもかすみちゃんのことを忘れてしまって、かすみちゃん自身も消えてしまうと思う」
かすみ 「えっ……」
璃奈 「だけどそうならないために私たちがいる。璃奈ちゃんボート『任せて』」 キリッ
かすみ 「りな子……!」 パァァ 璃奈 「まずはみんな最近あったことを思い出して。それがそのタイムトラベラーの正体に繋がるかもかもしれない」
歩夢 「でもタイムトラベラーって未来から来たんだよね? なのに最近のことを思い出すの?」
璃奈 「過去を変えられてるなら、あらゆる時系列でその反応が出てもおかしくない。でも、ここにいるかすみちゃんは記憶の中では今日まで生きてきてるはずだし、異常があったのも最近から。なら、最近に何か大きなポイントがあると考えられる」
かすみ 「むむっ……! 最近ですか、最近あったことって……」 ムムム
愛 「あっ、大岡裁き事件」
歩夢 「そういえばあのときかすみちゃん……」 ―――――
―――
―
かすみ 「なっ!? 歩夢先輩も往生際が悪いですよ!!」 ググググ
歩夢 「かすみちゃんこそ、しずかすがあるでしょ?」 ググググ
かすみ 「しず子は演技に夢中でよくかすみんと他の人の名前を間違えるからなしです!!」 ググググ
歩夢 「ならせつ菜ちゃんとかいるでしょ!」 ググググ
かすみ 「せつ菜先輩はアニメに夢中でよくかすみんとキャラクターの名前を間違えるからなしです!!」 ググググ
歩夢 「かすみちゃんの恋愛基準は名前を間違えないかどうかなの!?」 ググググ
―
―――
――――― 歩夢 「って言ってたような……」
かすみ 「そっか、あの時点でもう、しず子やせつ菜先輩には影響が出てたんだ……」
愛 「他には……うーん、あれじゃない? 赤ちゃんレベル事件!」
果林 「赤ちゃんレベル事件? 大岡裁き事件は小耳に挟んだけど、それは知らないわね」
歩夢 「あっ……」
かすみ 「そ、それはちょっと色々あったんですよ!」 アセアセ かすみ 「あ、愛先輩! それは秘密にしておいて、って言ったじゃないですか」 ヒソヒソ
愛 「あっ、忘れてた」
果林 (あのかすみちゃんの焦り様に、歩夢の顔面蒼白なところを見ると、歩夢にとってよっぽど知られたくないことなのね……なら詮索しないのが先輩ってものよね)
果林 「へぇ……色々ね。詳しくは聞かないけどもしかしたら関係あるかもしれないから、頭の隅には置いておきなさい」
かすみ 「も、もちろんです!」
歩夢 (良かった、バレなかった……) ホッ 璃奈 「その事件の内容については話さなくていいけど、日付だけ教えて。その時間の波の様子を確認してみる。大岡裁き事件に関しては私も一緒にいたから分かる」
かすみ 「分かりました!」
かすみ 「……」 ゴニョゴニョ
璃奈 「……」カタカタ
愛 「えっとじゃあ、他に今回のかすかすの件に関係ありそうな最近の出来事ってあった?」
かすみ 「むぅ……これ以外はこれと言って目立ったことはないような……思い出せないだけかなぁ」 ムムム
歩夢 「うーん、私も思い出せないや……」 果林 「あっ!」
かすみ 「えっ!? 果林先輩なにか思い出したんですか!?」
果林 「まさか私が千葉で迷ったのも関係あるの!?」
璃奈 「いや関係ない」
果林 「あっ……そうなの……」
璃奈 「……」 カタカタ
かすみ (えっ、なに、この気まずい空気……) かすみ 「えっと、果林先輩? ちなみにその千葉で迷ったっていうのは……」
果林 「千葉に行きたかったのに東京ディズニーランドに着いちゃったって話よ」
かすみ 「えぇ……」
かすみ (東京ディズニーランドは千葉じゃないですか……)
果林 「あっ、ちなみにそのときに使ったアプリがあるんだけど……これ『璃奈ちゃんカーナビ』って言うんだけど」 スッ
愛 「おおっ、同好会のみんなが道案内をしてくれるんだ!」
歩夢 「わぁ……みんな可愛くて、素敵だね」 果林 「だけど一人五分で交代して、一周したら二時間っていう制約があるのよ。おかげで何時間も彷徨ったわ」
璃奈 「じゃあ貸して」 シュッ
果林 「えっ」
璃奈 「……」 ポチポチ
璃奈 「はい。今自動解析中で手が空いてたから、ささっと設定を変えてみた。自由にメンバーを選べるし、制約は消したから、これで安心して使えるよ」
果林 「あっ、ありがとう」 かすみ 「それにしてもりな子は面白いものを作るよねぇ〜。あっ、そういえば、かすみんもいるんですよね!?」
果林 「ええ、いたわよ」
果林 (可愛さアピールばかりだったけど)
かすみ 「どれどれ〜? かすみんをモデルにしてるくらいですから、人工知能とはいえ可愛さ抜群のはずです!!」
かすみ 「ふんふんー♪」 ポチポチ
かすみ 「ってあれ?」
果林 「?」
かすみ 「……かすみんがどこにもいない」 愛 「ええっ!?」
歩夢 「もしかしてアプリ内にすら影響が出始めてるの……?」
かすみ 「あっ……」 ポロポロ
かすみ (さっき歩夢先輩に励まされて、ようやく泣き止んだのに、また涙が……! 止めなくちゃいけないのに、全然止まらないよ……)
かすみ 「うぅ……」 ポロポロ
果林 「かすみちゃん……」
歩夢 「かすみちゃん!!」 ダキッ
かすみ 「歩夢先輩……?」 ポロポロ 歩夢 「さっきも言ったでしょ? 絶対私たちが助けるからって。ねぇだから、泣くのは大事だけど、心配はしないでよ。元気でいて。お願い、かすみちゃん……!」
かすみ 「歩夢先輩……」 グスッ
かすみ 「そうですよね……みんなが頑張ってくれてるのに、一人不安に潰されてる場合じゃありません……!」
かすみ 「かすみん、今度こそ強い気持ちで頑張ります!!」
果林 (かすみちゃん……)
果林 「私もできることは全力でやるわ、大切な後輩のためだもの!」
愛 「もちろん愛さんもだよ!」 ピコーン
果林 「えっ? 今の音は?」
璃奈 「分析が完了した」
愛 「ど、どうだった!?」
璃奈 「やっぱりその二つの出来事は関係あるらしい。果林さんのは関係ない」
果林 「そ、そうなの……」 ショボーン
璃奈 「そしてもう二つ重要なニュースがある」
かすみ 「もう二つですか?」 璃奈 「一つ。解決法が見つかった」
果林 「えっ、本当なの!?」
璃奈 「過去改変の影響の波が徐々に来ている。でも、波には波で対抗すれば良い」
愛 「ぶつけて収束させるってこと?」
璃奈 「うん。この装置で人工的な時間の波を作って、過去改変の影響による波とぶつける。そうすれば改変の波はその時点に戻っていって消えてゆき……過去改変をなかったことにできる」
かすみ 「ってことはかすみんが無事に生まれて、みんな元に戻るってことですよね!?」 パァァ
璃奈 「そう。だけど一つ問題がある。それが二つ目のニュースにも繋がる」 果林 「問題って?」
璃奈 「そのタイムトラベラーがまた過去を変えたら、また同じ対策をしないといけないということ。何回も過去改変をやられてしまったら、いつか対抗に失敗して過去改変を成功させてしまうかもしれない」
愛 「つまりまずはタイムトラベラー本人の意志を変える必要があるってことか……!」
歩夢 「でも未来の人なんでしょ? 説得するにしてもどうやって……」
璃奈 「それが二つ目のニュース。今、大きな時空の歪みを確認した。おそらく、過去を改変し終えて未来に帰ろうとしてるところなんだと思う……。そして、この装置を使えば、タイムマシンをハッキングしてここに連れてくることが可能」 かすみ 「つまりちゃんと面と向かって説得できるってことですね!! このかすみんを悲しませたこと、絶対に許しませんよ!!」 ムムム
果林 「だけどかすみちゃん、覚悟はできてるの……?」
かすみ 「えっ、覚悟?」
果林 「相手はあなたの存在を消そうとした人間なのよ? それに……」
璃奈 「一個人にここまで攻撃を仕掛けるなんて、普通ありえない。タイムトラベラーは、かすみちゃんの知り合いの可能性が大きい」
かすみ 「えっ……!」
愛 「つまり同好会の誰かかもしれないってこと!?」
歩夢 「そ、そんな……」 璃奈 「もちろん未来の時点で知り合った人の可能性もある。だけど、今のかすみちゃんにとって大切な人の誰かである可能性も十分ありえる……覚えておいて」
かすみ 「……」
かすみ (私を消そうとした人が私の知り合いである可能性……!? そ、そんなの……)
果林 「だから覚悟はあるの、って聞いたの。説得するなら強気でいなくちゃいけない、あなたが、ぶれちゃだめだから」
かすみ 「……」
かすみ (真実を知って……この先どんなつらい思いをしたとしても……それがどんなに後悔することであったとしても……それでも、かすみんはここにいたい。スクールアイドルとして輝いて、同好会のみんなと一緒にいたい!!)
かすみ 「覚悟はあります。りな子、タイムトラベラーを呼んでください」
璃奈 「……分かった」
ポチッ ピピピピピ
果林 「なんか光ってるけど大丈夫なの?」
璃奈 「みんな。タイムマシンが出てくるから少し離れてて」
ピピピピピ
ピピピピピ
ピカーーーーーーン
ドンッ
シューシュー…
愛 「なんかでっかい乗り物が現れた……!」
果林 「これが未来のタイムマシンなのね」 ウィーン
トコトコ
かすみ (誰か降りてきたけど煙がすごくてシルエットしか見えない……!)
果林 (背は私より小さいかしら……)
愛 (女性の人かな……?)
シューシュー…
歩夢 (煙がなくなってきた……! 見える!) 歩夢 「えっ」
?? 「……」
果林 「な、なんであなたが……!」
愛 「そ、そんな!? 嘘でしょ!? 嘘って言ってよ!!」
璃奈 「……信じられない」
かすみ 「本当の……本当に……そうなんですか? ねぇ、答えてくださいよ!!」 歩夢 「そんな、嘘だよね」
?? 「……」
歩夢 「ねぇ」
歩夢 「侑ちゃん……!」
…
…
… なんとなく侑ちゃんな気がしたけどマジで侑ちゃんだとは… ピチピチの銀色矢印スーツ(肩リング付)を華麗に着こなす侑ちゃん >>140
>>141
>>142
>>143
応援および感想ありがとうございます。
更新が遅れて申し訳ありません。今日中に終わらすつもりだったのですが、申し訳ないです。
しかし、結末はしっかり決めてますので、なるべく早く投稿させてもらいます。頑張りますので、優しい目で見守ってくれると嬉しいです。 >>145
>>146
そう言ってくださると嬉しいです。
少し更新します。 侑 「……」
果林 「まさか侑だなんて……!」
かすみ 「侑先輩……嘘ですよね……!?」
歩夢 「侑ちゃん……」
愛 「ゆうゆう……」
愛 (ゆうゆうがかすかすの存在を消した犯人……!? 信じられない……信じたくない。でも、悩んでる場合じゃない。りなりーは言ってた、時間がないって……! なら一刻も早く説得しないといけないけど……)
璃奈 「……」 カタカタ
愛 (りなりーは時間の波を作るのに集中させたい。それに、何より相手がゆうゆうなら) 愛 「ねぇみんな、説得は誰が行くべきだと思う?」
果林 「侑なら歩夢が適任じゃないかしら」
愛 「私も同じ考え。どう、歩夢? いける?」
歩夢 「えっ……」
歩夢 (私が侑ちゃんを説得……? いつも侑ちゃんを肯定してきた私が……?)
愛 「もし無理なら私が行く。でもできるなら、歩夢が適任だと思う」
歩夢 (私が、侑ちゃんを止めて、侑ちゃんに反抗して、侑ちゃんを説得なんて……本当にできるの?) かすみ 「いや……歩夢先輩は行かなくても大丈夫ですよ、かすみんが行きます」 スッ
歩夢 「えっ、かすみちゃん!?」
かすみ 「任せてください、元々はかすみんの問題ですし、かすみんの説得ならきっとうまくいくはずです!」 ニコッ
歩夢 「あっ……」
歩夢 (あの笑顔は……あのとき見た……) ―――――
―――
―
かすみ 「あはは、どうしたんですか、歩夢先輩。そんな怖い顔して。そんなんじゃ、せっかく可愛い顔が台無しですよ! まぁかすみんの方が可愛いですけどね!」 ニコッ
歩夢 (涙の跡でバレバレだよ……かすみちゃん……)
―
―――
――――― 歩夢 (同じだ……またかすみちゃんは、私のために、無理矢理笑ってる……! そんなの……そんなの……絶対だめっ!!)
歩夢 「いや私が行くよ、かすみちゃん……!」
かすみ 「えっ……歩夢先輩?」
歩夢 「言ったでしょ? 私たちがかすみちゃんを助けるって。それに、侑ちゃんのことなら私が一番分かってるから」
かすみ 「歩夢先輩……」
歩夢 「大丈夫。ねっ?」 ニコッ
かすみ 「……」
かすみ (ありがとうございます、歩夢先輩……)
かすみ 「はい……歩夢先輩になら、安心して任せられます!!」 ニコッ
歩夢 「うん、任せて!」 果林 「うーん、それにしても、あれって本当に侑なの? 見た感じそっくりだけど、ただのそっくりさんって可能性はない?」
歩夢 「それはないですよ。見た目や骨格、スタイル、全部私の知ってる侑ちゃんと一致してますから」
果林 「そうなの……」
果林 (ってなんでそんな詳しいのよ!?)
愛 「でもそれっておかしくない?」
歩夢 「えっ?」 愛 「あそこにいるゆうゆうって、ゆうゆうはゆうゆうでも、未来から来たゆうゆうなんでしょ? なのに今の姿と全く変わってないのはおかしくない?」
かすみ 「あっ、たしかにおかしいですよね……!」
果林 「よくよく見てみると、年齢も私たちに近そうよね……? 未来から来た侑なら私たちより年上でもいいはずなのに……」
歩夢 「でも別人だとしたらあまりに侑ちゃんにそっくりすぎるよ……」
果林 「そういう変装の技術が未来にあるのかしら?」
愛 「だとしてなんでわざわざ、ゆうゆうに変装してくるのさ」 かすみ 「うーん、侑先輩にそっくりだけど、年齢的には侑先輩じゃない……?」
かすみ 「むむむ……なんですか、それ! さっぱり分かりません……」
かすみ (ん? 待てよ?)
かすみ (もしかして、いやいや、でも……!)
かすみ 「ま、まさか!?」 アセアセ
果林 「えっ!? かすみちゃん、あの侑の正体が分かったの!?」 かすみ 「で、でも、信じられないというか」
愛 「合ってなくてもいいからとりあえず言ってみてよ!! それが何かヒントになるかもしれないし!!」
かすみ 「えっと、じゃあ言いますよ?」
歩夢 「う、うん!」
かすみ 「あの侑先輩の正体は……!」
果林 「正体は……!?」 ドキドキ
愛 「……」 ドキドキ
歩夢 「……」 ドキドキ かすみ 「侑先輩のクローン人間じゃないかって」
果林 「はぁ?」
愛 「えっ」
歩夢 「!?」
果林 「あのねぇ……未来から来たからって流石にそれは無理があるわよ。そもそも侑のクローン人間なんて誰が作るのよ」
愛 「誰が作る……? うーん」 チラッ
歩夢 「えっ」
愛 「むっ……」 ジッー
歩夢 「な、なんでこっち見るの、愛ちゃん!?」 かすみ 「歩夢先輩……見損ないましたよ」
歩夢 「ええっ!? かすみちゃんまで!? い、いや違うよ! 私が侑ちゃんのクローン人間を作るなんて、そんな!」 アセアセ
侑 「……よく分かったね」
歩夢 「!!??」
侑 「その通りだよ。私は高咲侑であって、高咲侑じゃない。高咲侑を元にして作られたクローン人間なんだ」
果林 「クローン人間!? ええっ!? 本当に!?」 愛 「えっと、ちなみに君を作ったのはどこの誰か教えてくれる?」
侑 「そこにいるよ」
歩夢 「えっ、もしかして愛さん……!?」
愛 「ここに来て白々しいなぁ」
侑 「会いたかったよ、歩夢お母さん」
かすみ 「歩夢お母さん!!?」
歩夢 「っ……」 ダラダラ
かすみ 「ねぇ、先輩。私言いましたよね? クローン人間のことはもう諦めてって!? 周りに心配をかけないためにって!! なのにまさかの私の存在のピンチを招いたのが、歩夢先輩ってどういうことですか!?」
歩夢 「うぅ……ごめんなさい……」 愛 「まぁまぁ、かすかす、許してあげてよ。そもそも今の歩夢がやったことじゃないじゃん。未来の歩夢がやったことなんだし」
かすみ 「それはそうですけど、こちとら正真正銘人生懸かってるんですよ!? そりゃあ怒りますよ!?」
果林 「話が全然分からないけどつまり元凶は歩夢ってこと?」←悪気のない天然の刃
歩夢 「うっ!」 グサリ
愛 「いやぁ……それにしても、本当にゆうゆうのクローン人間作っちゃうなんて、歩夢の愛は重いなぁ」←追撃
歩夢 「ぐっ!」グサグサ かすみ 「しかし今は歩夢先輩への説教は後回しです! 高咲侑さん……あなたはなんでかすみんの存在を消そうとするんですか!? そんなに未来のかすみんは、あなたの恨みを買うことをしたんでしょうか……」
侑 「……」
かすみ 「……」
侑 「ちょうどいいや。なぜか分からないけどこの時間に到着してしまったのもきっと何かの運命だよね。私の昔話をするよ」 ニコッ
歩夢 「クローン侑ちゃんの昔話……」
歩夢 (それって未来の私との話ってことだよね……) 侑 「みなさんの言う通り、私は歩夢お母さんが作った高咲侑のクローン人間なんだ。私も最近知ったんだけど、璃奈さんに協力を得たらしい」
愛 「えっ」
璃奈 「……」 カタカタ
愛 「りなりーが?」
璃奈 「……私は今最新式の透明なイヤホンを耳につけてるから会話は聞こえてない」 カタカタ
愛 (聞こえてるじゃん……) 侑 「でも歩夢お母さんや璃奈さんを責めないでほしい。私も一時期は認められなかった、自分がクローン人間だなんて。そして、お母さんを心から憎んだときもある。だけどそれでも愛してくれた……大切に育ててくれた……そんなお母さんをどうか責めないでほしい」
かすみ 「……もちろんですよ、誰が責めるんですか、仲間を」
歩夢 「かすみちゃん……」
かすみ 「さっきは驚いたのもあって怒っちゃいましたけど、クローン人間なんてよっぽどのことです。きっと、歩夢先輩もすごく悩んだんでしょう。そして出した結論がどうであれ私は歩夢先輩を責めません」
愛 「かすかす……そうだね、愛さんも同じだよ」 かすみ 「もちろん、りな子にも同じ気持ちです。きっと、歩夢先輩の覚悟を知って協力したんでしょう。それを責めるなんてことしませんよ」
璃奈 「……ありがとう」 ボソッ
果林 「ふふ、イヤホンしてたんじゃなかったのかしら?」
璃奈 「別に……たまたま取ってただけ」
侑 「それにしても、みなさんに会える日が来るなんて思いませんでした……映像や写真でしか見たことがなかったので」
歩夢 「えっ?」
かすみ 「えっと、あなたって歩夢先輩と一緒に暮らしてるんでしょ? ならクローン元である侑先輩はともかく、かすみんたちなら一度くらい会ったこととかなかったの?」 侑 「たしかに私は歩夢お母さんとずっと暮らしてました。だけど、歩夢お母さんは私を作った後は行方をくらまして、みなさんとはそれから一度も会ってません」
歩夢 「私が行方をくらます……!?」
果林 「えっ!? なにかショックね……歩夢とは仲良くなれたから、これからも同好会みんなで会うもんかと思ってたのに」
侑 「歩夢お母さんはいつもみんなに会いたがってましたよ。私がみなさんを知ってるのも、お母さんがいつも同好会のみなさんの写真や映像を私に見せながら、思い出を語ってくれたからです」
愛 「ならなんで歩夢は行方をくらましちゃったのさ!」
侑 「……では、私が歩夢お母さんから聞いた、上原歩夢の半生を話しますね」
―――――
―――
― >>166
反応、ありがとうございます。
話もようやく結末が見えてきました。ここからどうなっていくのか……!
是非見守ってくれると嬉しいです。 歩夢 (分かってた……)
歩夢 (こうなることは分かってたけれど……)
せつ菜 「侑さんと結婚することになりました!!」
侑 「付き合ってから結構経ったし、私たちも高校、大学と卒業して社会人になったから、ちゃんと向き合わなくちゃ……って! だから決意したんだ!」
愛 「おおっ!! そろそろかな、って思ってたんだけど本当に結婚するんだね、おめでとう!!」 パチパチ
果林 「ふふ、めでたいわね」 かすみ 「もぅ! せつ菜先輩! 侑先輩ったら、可愛いかすみんに目もくれずに、せつ菜先輩を選んだんですから、絶対幸せにしてくださいね!?」 プンプン
せつ菜 「もちろんです!!」
彼方 「結婚かぁ……いつか遥ちゃんも結婚しちゃうのかなぁ」 グスッ
しずく 「ふふ、彼方さん、気が早すぎますよ」
エマ 「本当におめでとう!! 二人とも!」
璃奈 「結婚式楽しみにしてる。璃奈ちゃんボード『いい夢見ろよ』」 歩夢 「おめでとう、侑ちゃん!」
侑 「うん! ありがとう、歩夢!」 ニコッ
歩夢 「……」 ピクッ
歩夢 (侑ちゃんの笑顔、たくさん見てきたけど……あんな笑顔は見たことないや。侑ちゃん、本当にすごく幸せなんだね)
愛 「それにしても突然みんな集合なんて言うからどうしたのかなぁ、って思ったら結婚報告なんて……ゆうゆうも洒落たことするねぇ」
侑 「えへへ、いち早くみんなに知らせたくてつい」
愛 「あっ、良ければ、二次会は愛さんの実家のもんじゃ屋でやらない?」 果林 「愛の家のもんじゃ、美味しいのよねぇ……ええ、賛成よ」
せつ菜 「良いですね!! さぁ、侑さん!! 二次会に行きましょう!」
侑 「うん! えっと……みんなは大丈夫かな?」
かすみ 「かすみんもオッケーです!!」
璃奈 「私も大丈夫」
しずく 「私も大丈夫ですよ」
エマ 「私も大丈夫だよ!」 彼方 「ごめんね〜、彼方ちゃんは遥ちゃんが家で待ってるから」
歩夢 「あっ、侑ちゃん。ごめん、私も明日早いから……」
歩夢 (嘘だけど……)
侑 「それなら仕方ないね……二人がいなくて少し寂しいけど、またみんなで一緒に会おうよ!」
彼方 「もちろんだよ〜」
歩夢 「うん」 ニコッ
歩夢 (分かってた……)
歩夢 (分かってたけれど……やっぱり耐えられないよ。侑ちゃんが、いつも隣で笑っていた侑ちゃんが、私から離れていっちゃうなんて)
歩夢 「じゃあね、侑ちゃん」
侑 「うん! またね、歩夢!」 かすみ 「む?」
かすみ (歩夢先輩……少し表情が暗いような……? 気のせいかなぁ)
かすみ 「ねぇ、りな子」
璃奈 「なに? かすみちゃん?」
かすみ 「もし歩夢先輩が悩んでたら力になろうね」
璃奈 「もちろん! 璃奈ちゃんボード『にっこり』」
璃奈 「でもなんで急にそんなことを聞いたの?」
かすみ 「いや……別に理由はないんだけど……」
かすみ (この胸騒ぎ、気のせいかなぁ)
…
…
… 歩夢 「侑ちゃん……」 ペラッ ペラッ
歩夢 (アルバムの中にいる侑ちゃんは、いつも私の隣にいる……だけど、今の侑ちゃんはせつ菜ちゃんの隣……)
歩夢 「って! こんなこと考えちゃダメだよね……二人の幸せが嬉しいのは、本当なんだから」 アセアセ
歩夢 「で、でも、あれ……なんでだろう、涙が……あれ……止まらない……」 ポロポロ
歩夢 「侑ちゃん、侑ちゃん……!」 ポロポロ
歩夢 (分かってる。侑ちゃんはもう大切な人がいて、私を一番に思ってくれる侑ちゃんじゃないこと)
歩夢 (だけど、だけど、それでもやっぱり私には、侑ちゃんがいなくちゃ……侑ちゃんがいなくちゃダメなんだよ……)
歩夢 「侑ちゃん……!」 ポロポロ
…
…
… 歩夢 「……」ボッー
歩夢 「あっ、眩しい……」
歩夢 (あれからずっと泣いてて、結局眠れずに夜が明けちゃった……今日は仕事は休みだから別に大丈夫だけど、でも、すごく胸が苦しい)
歩夢 「一時期本気で研究してた、クローン人間……やってみようかな」
歩夢 「そしたら侑ちゃんに……侑ちゃんに」
歩夢 「って、そんなこと、ダメだよ!? なに考えてるんだろう……私……」
歩夢 (だけど、あの侑ちゃんの笑顔……せつ菜ちゃんに向けたあの笑顔を……私に見せてくれるなら。私のために見せてくれるなら)
歩夢 「やってもいいかもしれない……」
歩夢 「たしか以前の結果をまとめた資料がバッグにあったはず……」 サッ
歩夢 (侑ちゃん……私は許されないことをするかもしれない。ごめんね。でも、やっぱり侑ちゃんがそばにいてほしいから……)
…
…
… 璃奈 「……」 カタカタ
プルプル
璃奈 「電話……? 歩夢さんからだ」
歩夢 『もしもし? 璃奈ちゃん、今電話できるかな?』
璃奈 「うん、大丈夫。仕事も大体終わったから。どうしたの、歩夢さん」
歩夢 『璃奈ちゃんって、理系だけど、生物学の方も詳しいかな?』
璃奈 「生物学……? 専門ではないけど、できないこともないかも……」 歩夢 『ならお願いがあるんだ』
璃奈 「お願い?」
歩夢 『実は私も個人でずっと研究してて、あと少しのところまで来てるんだ。あとはもう一人、詳しい人が必要で』
璃奈 「ちょっと待って。その研究ってなんの研究?」
歩夢 『……人間の研究だよ』 ボソッ
璃奈 「えっ? ごめん、今なんて言って……」
歩夢 『クローン人間の研究』
璃奈 「えっ?」
歩夢 『侑ちゃんのクローン人間を作りたいんだ』
…
…
… 璃奈 「……本気なの、歩夢さん?」
歩夢 「うん。私には侑ちゃんがいなくちゃダメだから」
璃奈 「侑さんのクローン人間は、見た目や声は侑さんと全く一緒だけど、それでも別人だよ?」
歩夢 「……分かってるよ」
璃奈 「クローン人間が仮に作れたとしても、それは立派な犯罪。そしたらその生まれた子も、歩夢さんも、正しい生き方はできなくなる。それでも望むの?」
歩夢 「……」
歩夢 (そういえば昔、かすみちゃんに止められたことがあったなぁ……悲しませたくないってあのとき強く思ったんだ) 歩夢 「もうここにはいられない。同好会のみんなとも会えなくなる。それは覚悟してるよ」
璃奈 「!」
璃奈 「歩夢さん。それは違う。たとえ歩夢さんがここにいられなくなっても、私たちは仲間。歩夢さんと会えなくなるわけじゃ」
歩夢 「心配をかけたくないの、みんなに。特にかすみちゃんに」
璃奈 「……!」
歩夢 「だからこっそり消える。連絡も少しずつ頻度を減らしていって、自然に消える。そしたらきっと」 璃奈 「……」
璃奈 (それは違う。歩夢さんと会えなくなる、それをどんなに自然な状況にしたとしても、みんなつらい思いをするのは変わらない。でも……)
璃奈 (きっと歩夢さんは、侑さんにもせつ菜さんにも、迷惑をかけたくないんだ。だけど自分は侑さんがいないと耐えられない……。だからこんな決断を……)
歩夢 「璃奈ちゃん。もし罪に問われても、全て私に目が行くようにしておく。だけど、それでもきっと、抵抗があると思う。だから嫌なら断ってもいい、警察に言ってもいい、止められたら止められたでそれも正解な気がするから……」
璃奈 (こんなに覚悟がある……それを私が止められる?) 璃奈 「正直に言えばやめてほしいと思ってる」
歩夢 「……」
璃奈 「だけどまず、警察に突き出すことは絶対にしない。歩夢さんの人生は、もう、歩夢さんだけのものじゃない。みんな……もちろん私も、歩夢さんが幸せであることを願ってる」
歩夢 「璃奈ちゃん……」
璃奈 「だけどやっぱりクローン人間なんて、間違ってると思う……だから止めなくちゃいけない」
歩夢 「!」 璃奈 (そう。私は止めるべきなんだと思う。でも私は約束してしまった。かすみちゃんと……)
璃奈 「でも、歩夢さん」
歩夢 「……なにかな、璃奈ちゃん」
璃奈 「そんなことはしない、できないよ。その代わり、遠くに行っても私たちのことを忘れないでほしい……!」
歩夢 「えっ……それって……!」
璃奈 「止めるべきだと思う。だけど、歩夢さんが悩んでたら力になる、って言ってしまったから。その気持ちは今も嘘じゃないから」
璃奈 (後悔なら仲間のためにしたい) 璃奈 「よろしくね、歩夢さん」
歩夢 「璃奈ちゃん……」 ポロポロ
璃奈 「その涙は嬉し涙? 悲し涙?」
歩夢 「どっちもかな……ごめんなさい、でも、ありがとう……」 ポロポロ
璃奈 「歩夢さんにはこれからも笑ってほしい。璃奈ちゃんボード『にっこり』」
璃奈 (これが間違っててもいい……歩夢さんの笑顔を今見たいだけだから……)
…
…
… かすみ 「ねぇ、りな子?」
璃奈 「……どうしたの、かすみちゃん」
かすみ 「最近、歩夢先輩と連絡が取りにくいんだ。なんでか知ってる?」
璃奈 「……」
かすみ 「りな子?」
璃奈 「ごめん。分からない」
かすみ 「うーん……そっかぁ……ならメールでも送ってみようかなぁ。ありがとう、りな子」 ニコッ
璃奈 (ごめんなさい、かすみちゃん……) プルプル
かすみ 「電話?」
璃奈 「うん。少し外に出るね」
ガチャ
かすみ 「……」
かすみ 「りな子は何を隠してるんだろう……」
かすみ 「こっそり追跡して調べたりもできるけど……うーん……」
かすみ (だけど、しっかり約束したもん。だから大丈夫だよね、ねぇ、りな子?)
…
…
… 歩夢 「ついにこの日が来たね、璃奈ちゃん……」
璃奈 「うん。そして別れの日」
歩夢 「……」
璃奈 「……」
歩夢 「今まで、ありがとう璃奈ちゃん」
璃奈 「こちらこそ。歩夢さんと一緒に研究してるとき、とても楽しかった。やっぱり歩夢さんは大切な人の一人だから」 歩夢 「……」
璃奈 「ねぇ、歩夢さん。歩夢さんはこれからどこに行くの?」
歩夢 「人が少なくて、自然がたくさんあるところ……かな」
璃奈 「この侑さんは、これからどうやって育ててゆくの?」
歩夢 「私が働いて養うよ。そして、周りには侑ちゃんの存在は絶対に気付かれないようにする。いつ、どこから情報が漏れるか分からないから」
璃奈 「学校とかはどうするの?」
歩夢 「私ができるだけ教えるよ。侑ちゃんには優しい人になってもらいたいなぁ……」 璃奈 「……」
歩夢 「……もう質問はないの?」
璃奈 「……そろそろ別れの覚悟を決める方に時間をかけたいから」
歩夢 「……そっか」
ピピピピピ
璃奈 「!」
ピピピピピ
歩夢 「侑ちゃん……!」 \オギャーー!/
璃奈 「……生まれた!」
歩夢 「だっ、抱っこしていいかな!?」 パァァ
璃奈 「もちろん」
歩夢 「よいしょ……! うわ、軽い」
歩夢 「そして可愛いや……」
璃奈 (歩夢さん、とても嬉しそう……ならきっと、この選択も悪くなかったんだと思う)
歩夢 「私、この子を絶対育てるよ」
璃奈 「……信じてる」
歩夢 「うん」
璃奈 「……」 ピコーン
璃奈 「メール?」
歩夢 「あっ……多分チケットが取れた連絡だと思う。じゃあそろそろ行くね」
璃奈 「もう、行っちゃうの?」
歩夢 「うん。きっと、ここで立ち止まったら決意が揺らいじゃうから」
璃奈 「そう……」
歩夢 「……」
歩夢 「じゃあね」
璃奈 「……」
璃奈 「うん……!」
璃奈 (バイバイ、歩夢さん。どうか幸せで)
…
…
… 歩夢 「メールを確認しとかないと」
ポチポチ
歩夢 「あれ? 新着メールが二件?」
歩夢 「一つが飛行機会社でもう一つは……あっ」
歩夢 「……」
歩夢 (ありがとう、かすみちゃん)
歩夢 (そして、さようなら……)
―
―――
――――― >>192
もちろんです! 更新が遅れてしまっていますが、しっかり結末も考えており、完結もさせますので、どうか優しい目で見守ってくれると嬉しいです。
>>193
そこまで言ってくださると本当に嬉しいです、ありがとうございます。モチベーションになります。 ここまでだとクローン侑ちゃんにかすみんを消す理由はないように思えるけど…どうなるか全く分からん。
楽しみに待ってます。 >>195
保守ありがとうございます。
>>196
ありがとうございます。また書き溜められたので、更新していこうと思います。
>>197
クローン侑ちゃんの想いとは……そして結末はどうなるのか。優しく見守ってくださるととても嬉しいです。 侑 「それから、お母さんは自分を知ってる人とは二度と会いませんでした。そして、私は生まれてからお母さん以外の人と殆ど会ったことがありません。幽閉されていた、と言っても過言ではないでしょう」
果林 「ゆ、幽閉……!?」
侑 「でも、部屋に閉じ込められていたというわけではなくて、家の周りの森で遊ぶことはよくありました。単に、誰にも会わないように暮らしてただけです」
かすみ 「なんでそこまで……」
侑 「もちろん私のために……です。クローン人間は認められない存在だから、バレてしまえば歩夢お母さんは犯罪者になってしまうし、なにより私は遺伝子研究者の的になってしまうでしょう。そうならないために、お母さんは一人になる道を選びました」
愛 「そ、そんな……そんなことって……」
かすみ 「そ、そんなの……あなたは嫌じゃないんですか!? だってそんなの! おかしいじゃないですか!?」 侑 「たしかにおかしいと思います。ただ、それでお母さんを憎んだりしません。そして、お母さんも私という存在を生み出したことを後悔したりはしなかった。一生懸命、愛してくれました」
かすみ 「……!」
侑 「お母さんは侑さんとせつ菜さんが結ばれたことに耐えられなかった、そして私を作った。だけどお母さんはそこで投げやりにならなかった。その行動に後悔する前に、私をしっかり育てようとしてくれたのです。いつも顔はやつれてました、だけど私には一番笑顔で……」
歩夢 「……」
歩夢 (きっと、未来の私は、本当にこの子のことを愛してたんだ……最初は侑ちゃんの代わりだったのかもしれないけど、時が経って気持ちに整理がついて、そして、侑ちゃんじゃなくて何より大切な自分の子として、この子のことを心から愛したんだ……) 侑 「お母さんはいつも働きに行っていて、私を養ってくれました。合間には勉強を教えてくれましたし、感謝しかありません」
かすみ 「……」
愛 「……ねぇ、じゃあ一つ聞いていい?」
侑 「なんでしょうか」
愛 「それで、なんでかすかすの存在を消そうとするのに繋がるの?」
かすみ 「そ……そうですよ!? なんでそれでかすみんの存在が消えることになるんですか!?」
愛 「歩夢にそこまで愛されて、それほど愛情を知ってるはずの君が……こんな残酷なことをなんで……!」
果林 「そうよ! 今の話で歩夢が侑のクローンを作るまでの過程や気持ちはよく分かったわ。だけど、そこからなんで今回の事件に繋がるのかが理解できない……なぜそこでかすみちゃんなの?」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています