曜「泥棒猫をぶっ飛ばせ!」
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私には大好きな人がいる。
この渡辺曜の人生において、こんなにも好きになれる人は将来においても
絶対に現れないと断言できるだけの人が。
私の最も古い記憶は、その人と一緒に笑っていたときのものだ。
本当に小さな頃の記憶だから、なぜ笑っていたのかといったことまでは
覚えていないけれど、すっごく楽しかったことは確かに覚えている。
私にとって、とても大切な思い出のひとつだ。
物心がついたときから、ずっと私はその人のことが大好きだった。
ううん、違う。きっと物心がつく前から、大好きだったに違いない。 大きくなったら私はその人と結婚するんだと昔はよく言っていた。
言うだけじゃなく本気でそうしたいと思っていたし、そうなるのが
当然だと心の底から信じていた。
小学生の低学年の頃に私とその人は結婚できないんだということを
知ったときは、世界が終わったかと思うくらいショックだった。
何日も落ち込んで思い出すたびにべそべそと泣いてしまい、友達にも
心配された。もちろん千歌ちゃんも心配してくれた。
今でも悲しくはあるけれど、さすがに泣いたりはしない。そもそも
結婚なんて、所詮は法律で定められた契約の一種にすぎないのだ。
そんなことができないくらいで、私のこの思いを否定することなんて
できるわけがない。ずっと一緒にいられれば、私はそれでいいのだから。
よく知らないけど最近はLGBTがどうとか言ってるし、いつかは結婚だって
できるようになるかもしれないもんね! そんな私の一番の心配事は、あの泥棒猫の存在だ。
私の大好きな人の周りをいつもうろちょろしているあの泥棒猫は、決して
油断できない存在なのだ。少しでも目を離すと、大切なあの人を私から
取っていってしまうに違いないのだ。
「ふふっ、取る? 初めから曜ちゃんのものなんかじゃないでしょ?」
なんてことをいい笑顔で言われたときは、頭に血が上って怒りのあまり
視界が真っ赤に染まるほどだった。
あの泥棒猫に手を上げなかった自分を褒めてあげたいくらいだ。 と言っても、私はあの泥棒猫のことを本気で嫌っているわけではない。
私の最愛の人を奪ってしまうことだけは断じて許しがたいが、それさえ
なければ仲良くしたいと思っている。さっきは手を上げるようなことを
言ってしまったが、本気でそうするつもりはない。
筋トレが趣味で体を鍛えている私は、女の子にしてはかなり力がある方だ。
そんな私が本気で暴力を振るったりすれば、あの泥棒猫が大怪我を負って
しまう可能性も十分にある。
それは私の望むところではない。間違いなくあの人を悲しませてしまう
だろうし、純粋に泥棒猫にだってひどい目にあって欲しくはないのだ。
だから、私が手を上げるだなんてことは実際には起こらないだろう。
まあ、それらもすべて「今のところは」だが。 今日は3人でお出かけだ。
もちろん本当は2人っきりで出かけたかったのだが、あまりわがままを言う
わけにもいかない。
みんなで一緒に出かけることを楽しみにしてくれていたらしいあの人を
困らせるだなんてあってはならないし、あの人に手を出さずに大人しく
してくれるなら、あの泥棒猫と出かけるのもやぶさかではないのだ。
こうやって私が譲歩しているのだから、今もあの人に腕を絡めて甘えた
雰囲気を出している泥棒猫には、そこら辺のことをもっと足りない頭に
しっかりと刻み込んで欲しい。
おい! 中途半端な胸を押しつけてんじゃねえぞ! このド腐れビッチが! あの人を真ん中にして3人で沼津の街を歩き、まずは映画館に向かった。
私には先月にやったライブのお礼として手に入れた割引券があるのだ。
この割引券は、今日みんなで出かけることを提案したときの口実にも
なってくれている。あのライブの主催者は、実にいいものをくれたものだ。
さて何を見ようかと私が悩んでいると、ある映画を見たいと泥棒猫が
提案してきた。なんでも好きな小説を映画化したものらしい。見た感じ
なかなか悪くなさそうだったので同意し、私の割引券を使って3人分の
チケットを購入する。
さらにポップコーンとコーラも買った。別にそんなに好きというわけでも
ないのに、映画を見るときにはポップコーンを食べたくなるのはどうして
なのだろう。ちなみに、私は家で映画を見るときはポテチを食べる派だ。 例のごとくあの人を真ん中にして3人で並んでシートに座り、始まった
映画を観賞する。その映画は見てみるとなかなかに面白いものであり、
泥棒猫もそこそこ役に立つなと思ったのだが、主人公であるピアニストの
心情が少し共感しにくかった。まったく分からないわけではないのだが、
主人公がこだわるポイントが私にはわがままに見えてしまうのだ。
まあ、芸術家ってこんな感じかもね。梨子ちゃんなら理解できるのかな
などと考えながら何とはなしに横を見ると、私と違って2人は映画に
集中しているようだった。
映画自体は普通に面白かったのだから、私も前を向いて映画に意識を
戻せばよかったのだが、それはできなかった。 映画の淡い明かりに照らされたあの人の横顔から、目が離せなくなって
しまったのだ。
あの人の顔なんて今まで何度も見ているのだから、今さら見蕩れるなんて
自分でもどうかしているとは思う。でも、私が視線をどうしても映画に
戻せなかったことは事実だ。
こういうとき、自分はこの人のことが本当に大好きなんだと実感する。
こういうことの積み重ねが、人を恋する乙女に変えていくんだなと
私はそう思った。 と言っても、そこから映画をまったく見ないというわけにはいかない。
この後は食事をする予定なのだが、そこでの話題の中心は、当然ながら
この映画のことになるだろう。そのときに、映画の内容があやふやでは
さすがに問題がある。
そこから私は隣に視線を送りつつも耳では映画の台詞や音を聞いて、
あの人の横顔に見蕩れながらも映画の内容を理解するという作業に
神経を注いだ。
その甲斐もあって、後半の内容もきちんと理解することができた。
昔から要領がいいとよく言われる私だが、そのことは自分の努力を
否定されているようであまり好きではなかった。だが、この場では
その生来の要領のよさに救われたと思う。2人に感謝したい。 映画が終わった後は、予定通りにファミレスで少し遅い昼食を取った。
ファミレスまで移動している道中や席について注文した料理が来るのを
待っている間にする会話の題材は、もちろん先ほど観賞したばかりの
映画についてだ。
その会話の中心は、残念なことに泥棒猫だった。
器用な私はしっかりと内容を把握できてはいたが、諸事情で集中できて
いなかったので細かいところまでは完璧ではない。そもそも泥棒猫は
原作の小説を読み込んでいるのだ。さすがに勝負にならない。 得意げに映画について解説する泥棒猫に、あの人が感心したように
相槌を打つ。そのとき泥棒猫が私の方を見て勝ち誇ったように笑った
ように見えた。曜だけに。
ああ、いけない。怒りのあまり、つい千歌ちゃんみたいにダジャレを
言ってしまった。いや、ダジャレを言うこと自体は別にいけなくはない。
千歌ちゃんは大切な幼馴染だし、その趣味に対して不満なんて何もない。
楽しそうな笑顔で色々とダジャレを言っている千歌ちゃんは可愛いしね。
ただ、私のキャラではないと思うのだ。
そんな益体もないことを考えながら、私も泥棒猫の解説に耳を傾けた。
泥棒猫の説明は分かりやすかったし、なるほどと納得できる内容だった。
また、話そのものも面白く、何より泥棒猫が今回の映画や原作の小説を
好きだということが強く伝わってくるものだった。
まあ、悪くはなかったと思う。 そうこうしているうちに私が注文した料理がやってきた。
もちろん大好きなハンバーグだ。それもキャンペーン中の大盛りのやつだ。
このファミレスのハンバーグは、そこらのものとは別格の味だ。噛めば
肉汁がジュワッと溢れ出て、口の中でホロッと崩れる柔らかさ。牛肉の
旨みが最大限に引き出された極めて濃厚な究極のハンバーグなのだ。
あの人も私と同じものを頼んでいることも実に嬉しい。これは間違いなく
私たちの勝利だ!
なんてことを考えながら至高のハンバーグをパクついていると、泥棒猫が
「2人とも、よく食べるわねえ」なんて称賛と呆れが入り混じったような
声で話しかけてきた。 まーたちかりこへのヘイト創作か…と思ったら泥棒猫=梨子ちゃんじゃない、だと? ハンバーグを食べている私たちとは違い、泥棒猫が頼んだメニューは
サンドイッチだった。そこまで少ないというわけではないが、私たちの
ものと比較すればその差は歴然だ。
少食の女の子アピールでもしたいのかもしれないが、それは悪手だと
私は思う。この令和の世に、そんな前時代的な価値観は通用しないのだ!
などと1人で勝った気になっていた私がバカだった。泥棒猫の真の狙いは
そんなことではなかったのだ。
泥棒猫が甘えた声で「でも、ハンバーグも美味しそうね。私にも一口だけ
分けてくれない?」と抜かしたところで私はやつの企みに気づいたが、
すべてはもう遅かった。 呆然とする私を尻目に、2人の間で料理の交換が行われる。あの人と同じ
メニューを頼んだ私には不可能な芸当だ。
無力な私をあざ笑うかのように、泥棒猫はあの人の手でハンバーグを
食べさせてもらっていた。地獄の時間はさらに続く。行われたのは
料理の交換なのだ。無駄におしゃれな雰囲気のサンドイッチを親指と
人差し指で摘んだ泥棒猫は、「はい、あ〜ん❤︎」と媚びた声を出して
あの人の口に手を接近させていく。
いや、サンドイッチを手で摘んでいるのはいいよ。そういう料理だもんね。
だけどさあ、ちょっと指を口に近づけすぎなんじゃないかなあ。
あっ、おい! 今、指で唇に触ったろ! ふざけんなよ、ぶっ飛ばすぞ!
これだから恥知らずのビッチは! おまえが処女じゃないって、私は
知ってるんだぞ! 証拠だってあるんだからな!
これが経験の差というやつなのだろうか。私のような小娘には、決して
届かない領域があるということなのだろうか。
失意の中で食べた残りのハンバーグは、それでもやっぱり美味しかった。 希望と絶望の昼食が終わった後は、3人でふらふらといくつかの店を
回った。今は服を見ているところだ。
私たちは服の好みがみんなバラバラなので、同じ店内にはいるものの
全員が別々に行動している。各自が自分の服を探しているというわけだ。
特に目的もなく店の中をうろうろしていた私は、とある服に目を止めた。
それはセーラー服だった。私のような女子高生が着るものではなく、
水兵さんが着る類のものだ。それもコスプレ衣装というわけではなく、
普段から着ていても特におかしくない程度の意匠に抑えられた逸品だった。
手に取って調べてみると大きさもちょうどいい。こんな掘り出し物が
見つかるなんて、今日はついているのかもしれない。 そもそもAqoursとは限らないのか
いい感じに進んで面白い いや、先ほどのレストランにおける惨状を考慮すれば、これでやっと
トントンと考えるべきところか。けれど、そもそも今日こうしてあの人と
お出かけできている時点でラッキーだとすべきではなかろうか。
そんなことをつらつらと考えながらレジへと向かう。
まあ、今日の私が幸運に恵まれているかどうかは議論の余地があるが、
この服に出会えたことが喜ばしいのは間違いない。
思えば私がコスプレというか制服を好きになったきっかけは、パパが
着ていた船員さんの制服に憧れたからだった。普段からかっこいいパパを
さらに魅力的にしてしまう制服に惹かれた私は自分でも着てみたくなり、
いつしか様々な制服を作るのが趣味になっていたのだ。 そういった経験があるからこそ、Aqoursの衣装でも色々と凝ったものを
作れてるんだもんね。やっぱりパパのおかげなんだよなあなどと1人で
気分をよくしていた私は、そんな弾む気持ちを吹き飛ばすような光景を
目の当たりにした。
いつの間にかあの人と合流していたらしい泥棒猫が、あの人の逞しい体に
服を当てている。とても仲がよさそうなその2人の様子は、誰が見ても
恋人か夫婦にしか見えないだろう。
いや、まあ、実際に夫婦なんだけれども。 曜「ちょっと! 2人で何やってるの!?」
曜「私のことほったらかしにして、いちゃついたりしちゃダメでしょ!」
曜パパ「ああ、ごめんな。ちょっとママに服を見繕ってもらってたんだ」
曜パパ「曜は水兵服を買うのか? きっと似合うと思うぞ。可愛いな」
曜「えっ、そうかなあ」テレテレ
曜ママ「ねえ、その服は私が買ってあげてもいいわよ?」
曜ママ「曜ちゃんは、映画の割引券を出してくれたものね」
曜「あ、いいの? だったら、お願いしようかな」
曜ママ「パパの服が決まったら一緒に買うから、ちょっと待ってなさい」
曜ママ「ほら、素敵でしょ? さすがは私の旦那様よね♪」
曜「もう、ママったら何を言ってるの!」
曜「パパは私のものなんだからね!」 曜ママと曜ちゃんに迫られるパパってどんな努力したらなれるんだ まさかのだった
いつものメンツと思っていたら……やられた 何年か前にもAqoursで似たようなSSあったな
スレタイ忘れたけど パパだいすきなよーちゃんええぞ
ただママに泥棒ネコは苛烈だなw なんだこれ…
千歌や梨子の名前が出てくるからこの2人ではないんだろうと思ったけど、中途半端な胸、サンドイッチで梨子だと勝手に思ってた
完全に騙された。面白かったぞ >おまえが処女じゃないって、私は知ってるんだぞ! 証拠だってあるんだからな!
ここワロタ >>45
「転校生をつかまえろ!」だろ
ぶっとばせとかどんなアニメだよ 曜が母親のことを泥棒猫って言うSS別のでも見たけど同じ人かな?
ルビィのお姉ちゃんは厳しいとか、そんなタイトルだったと思うけど
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