侑「アイドル戦争?」
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侑「………………………………………」カタカタ
侑「ふぅぅ、これくらいで切り上げるかぁ〜」
侑「うわっ! 外もう真っ暗じゃん! ちょっと編集作業張り切り過ぎたかな〜?」ガビン
侑「学校、真っ暗だし。もうみんな帰っちゃったよね……なんだか怖いから私も早く帰ろっと」
侑「最近寒くなってきて辛いよぉ〜、さむさむ」 侑「……………?」
ガキン……キンキン……ドドーン……
侑「あれ、なにか聞こえたような?」
侑「うーん……こっちかな?」
ドドォォーン! ドンガラガッシャン!
侑「うわっ! やっぱり聞こえる! ……きっとグラウンドの方だ、行ってみよう!」 侑「はっ、はっ……!」
侑「い、勢いで校舎を飛び出してきちゃったけど本当に大丈夫かな……? 不審者とか……いやそんなわけないか」
侑「よーし。どれどれ、誰が何をしてるのかなっと!」ヒョイ
──ガキンガキン‼ ドジャアッ‼ ヒュドドッ‼‼
侑「え………………」 侑「な、なにあれ? 人が戦ってる? 嘘だぁ、見間違えじゃないよね……」ゴシゴシ
侑「本当に戦ってる。戦い続けて時間経ったかい? どっちかはこのまま戦いで他界、てか! ンフッフッフッwwww」
侑「って言ってる場合じゃないんだよ!」ビシッ
侑「やばいよやばいよやばいよ……絶対見ちゃいけないもの見てるよ……多分このままだとロクなことにならない展開だよ……」 侑「でも見ちゃうんだよね〜、トキメキという名の好奇心に負けて」ソッ…
???「────まさか、こうして貴女と戦うことになるとは思っていませんでした」ガキキン!
???「はっ! でもちょうどいい機会だわ! どっちがスクールアイドルとして優れているのか、ここで一つ決着といこうじゃない!」ガッ!ドガカッ!
侑(戦ってるのはどっちも女の人だ……どっちも黒髪だけど一人はロングで一人はツインテ……うわぁ、二人とも可愛いなぁ……)
侑(双剣と槍を持ってなかったらの話だけど) 侑「はぁ、どうしようかな。少し焦ったけど、な〜んか良い感じに盛り上がってるみたいだし。見なかったことにして帰ろっかなあ」
侑「あ、動画とか撮ってネットに投稿したらバズるかも。よーし、ちょっくらカメラを回しますか!」
侑「んー………………んっ⁉」
侑「えっ、ちょっ、ちょっと待って! 戦ってる黒髪ロングの人の後ろに立ってる子……あれは……⁉」
侑「かすみちゃんっ⁉」ガサッ
???「誰っ⁉」バッ! 侑(しまった! やばいっ、逃げないと!)ダッ
???「こら無視すんな〜っ! 待て〜!」ダッ
侑「ひぃ〜〜〜っ!」
〜学校内・廊下〜
侑「──────はあっ、はあっ、はあっ! なんなの、もー……一体……!」
侑「はぁ、はぁ……」ガクリ
侑「こんなことなら私も鍛えておけばよかった……でも、ここまで来れば安心だよね……」 ???「そんなことでこの矢澤にこから逃げられると思ったの?」
侑「え」ドスッ
侑「…………………………ぁ?」オナカカラヤリカンツウ にこ「安心しなさい。この戦いで命を落とすことはないわ。代わりに一週間くらいお腹を壊してブツが止まらなくなるっていう、アイドルにとってはかなり最悪の結末を迎えることになるけどね」
侑「あ、あ、ああああ、あ、」ゴロゴロ…
侑(おなかいたいおなかいたいおなかいたいおなかいたい⁉)
にこ「でもあんた、スクールアイドルじゃないみたいだし。なんでスクールアイドルしか参加できないこの戦いに部外者が紛れ込めたのか知らないけど…」ズボッ
侑「んほっ⁉」ビクンッ にこ「変なところに顔を突っ込んだ罰よ。高い勉強代になるだろうけど、せいぜいそこで漏らしてのたうちまわってなさい」シュン…
侑「い、意味わかんないし……というか、お腹がやばいっ! これはかつてない苦しみっ! と、トイレ、トイレに行かないと……」ピクピク
侑「うげぇーーーっ無理! 無理だ! こんなの一歩も歩けないぃーっ! たすけて歩夢ーっ‼」
侑「あ、やば」ブビュ
侑「────ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!) 侑「あ、ぁ────……」ガクン
侑(ごめん……ごめんね、みんな……わたし、ここまで、みたいだ……)ブリッ
侑(せめて……スクールアイドルのみんなが……こうならない、ことを……祈って…………)
侑(…………………………)
侑「」プ〜ン かすみ「はあっ、はあっ、はあっ!」
かすみ「さっき……巻き込まれた人が……こっちに……」
かすみ「!!!!!!」ザッ
かすみ「う……うそ、だ……そんな……なんで、先輩が……」
かすみ「いやぁぁ! 先輩! 先輩ぃっ!」ユサユサ
かすみ「くっさ‼‼」プ〜ン ???「仕方がありません、かすみ。アイドル戦争の敗者はこうなる定め。己の身を守る術を持たずこの戦いに踏み込んだ彼女に責任はあります」
かすみ「違うんです、違うんですよおっ。先輩はアイドルじゃなくて、戦えるわけがないんですっ! なのに、なのに、なんで……」グスッ
かすみ「……………………………」
かすみ「……まだ、手はあります」ゴソッ
???「かすみ、それは!」 かすみ「はい。かすみん特性、ウルトラジュエリーコッペパンです。食べても美味しいですし武器にもなりますし、魔術的なパワーで色んなことを出来ます」
???「ですがそれは二つしか用意できなかった虎の子。こんな序盤でその一つを使ってしまうのは得策では……」
かすみ「いいえ、違うんですっ。かすみんは確かに勝ち残りたいですが、同時に先輩のことも大切なんですっ! こんな先輩を放っていったら、きっと後悔が深く残って、それこそ勝てる戦いも勝てなくなっちゃいます!」
???「かすみ……」 かすみ「コッペパンよ私に力を! どうか先輩のお腹を元に戻し、ついでに消臭クリーンもお願いします〜っ!」キラキラキラー
かすみ「────────────」
かすみ「──────」
侑「んんっ……あれ、私……?」 侑「はっ⁉」ガバッ
侑「寝てた……あれは夢……?」
侑「そ、そうだよね。あんなのが現実のはずがないよね、別にお尻もいつも通りだし」
侑「あーあ帰ろ帰ろ、変な夢見た……」トボトボ 〜深夜・侑の自宅〜
侑「ただいまー……ああそうだった、お母さんとお父さんしばらく結婚記念日旅行でいないんだった。いいなぁ」
侑「それにしても疲れてるのかなあ。廊下でぶっ倒れてあんな夢見るなんて」
侑「それにしても、あの二人可愛かったなぁ…」
にこ「へぇ、なかなか見る目があるみたいね」
ガッシャーン!! 侑「な、なにっ⁉ 何事ぉ⁉」
にこ「やり損ねた獲物を仕留めに来たわ。取りこぼしなんて、にこの美学に反するから」
侑「えっ……こ、ここ何階だと思ってるの⁉ というか窓ガラスがーっ⁉」アワアワ
にこ「随分と余裕みたいだけど。あんたこれからどうなるか分かってるのよね? 覚悟は良いかしら。きっちりトドメを刺してあげるにこっ♪」
侑「ひっ……」
侑(に、逃げ場がないっ。いやそもそもこんな人から逃げ切れるわけがないっ! こ、ここまでか……‼)
にこ「──────じゃあねぇっ‼」 ドガァァァァァァァン‼‼
──……その瞬間、侑は信じられないものを目撃していた。
自分の部屋の壁が吹き飛んで、そこから何かが飛び出してきたのだ。目で追えぬほどの凄まじい速度だった。その人影は容赦なく黒髪の少女に躍りかかると、両手をぐんと引いて振り回す。
凄まじい轟音が連続した。黒髪の少女は何かに激突したかのように体を歪ませ、吹き飛び、瞬く間に破壊されたベランダから外へと放り出されていった。
にこ「くっ⁉」ガシャーン 侑「……は、え?」ポカーン
穿たれたベランダから、強烈な風が吹き込んでくる。侑は尻餅をついたまま、呆然とその姿を見上げることしか出来なかった。
あまりのことに言葉が出ない。
自分を救ってくれたもう一人の少女、ずっと一緒に生きてきた幼馴染を前にしても、頭を駆け巡る衝撃に言語機能は役割を果たしてくれない。
そんな侑を見下ろして、彼女は優しく呟いた。
歩夢「侑ちゃん。あなたが私のマスターだったんだね」 侑「へ? マスター………………?」
侑「いやいや待って待ってっ‼ なに⁉ なにしてんの歩夢⁉ ちょっ、わたしの部屋、どうやってこれ」
歩夢「えへへ。ついに繋がっちゃったね、私と侑ちゃんの部屋。明日からは直接起こしてあげられるよ♡」
侑「違うわっ‼ そんなこと言ってるんじゃなくて‼ あの槍持ってる人は誰で、なんで歩夢が、あれ、もう何から聞いたらいいのかわかんないよーっ‼‼」ワタワタ
歩夢「そうだよね、わかんないよね。でも、後で説明してあげるから────」ガシッ 侑「へっ?」
歩夢「いこっ♡」
侑「えっなんでなんでちょっと待っていやーーーッ⁉ なんで私と一緒に飛び降りるのお゛おおおおおおおおーーーーっ‼⁉」ブワッ
ドズン!
歩夢「着地成功〜! いつか二人でバンジージャンプとかやってみたいよね。あっ覚えてる? 貴女が幼稚園の時、高い木に登ったはいいけど降りれなくなっちゃって」
侑「今その話するの⁉ さっきの人いるけど‼ めっちゃ怒ってるみたいだけど‼」
にこ「あんたたち……このにこにーを前にしてコントかますとは良い度胸してんじゃない……‼」ズゴゴ かすみんのマスターが海未ちゃん?
マスターもアイドルなのか 侑「歩夢助けてーっ! よくわかんないけど助けてぇーっ!」ヒエェ
歩夢「もちろん。我が剣は貴女とともにあるんだよ、侑ちゃん♡」
にこ「なるほどね、あんたが「七人目」に選ばれたアイドルってわけ。面白いじゃない」
歩夢「……侑ちゃん、下がってて。あの人を倒すから」
侑「う、うん……」タジッ
侑(二人ともすごい気合……なんというか、オーラ的なものが出てる気がする……歩夢、どうしちゃったの……?) にこ「行くわよッ‼」ドンッ
歩夢「っ‼」バッ
──ガキィィィィンッ‼ ドンドンッ‼ ババッ! ガガァン‼
侑「すご。ていうか歩夢も強っ! あの人と互角に渡り合えてる! いけいけ! がんばれー!」
にこ「見えない武器とは小癪じゃないっ。どういうからくりか知らないけど、鬱陶しいわね‼」ガッドカッ!
歩夢「ふふっ、ありがとうございます。なんだと思います?」ガギンッ!
にこ「抜かしなさい剣使い! あんたみたいな正統派ヒロインっぽい子はねぇ、だいたいセイバーって相場が決まってんのよ!」ズガガッ!! ────ババッ! ザザアッ‼
歩夢(距離を取った?)
にこ「あんた、なかなやるじゃない。元々様子見が目的だったんだけど、いいわ。……これ以上舐めてかかるとやばそうだし、にこも本気を出してあげる」
歩夢「っ⁉」ゾワッ
にこ「この私を本気にさせたことを呪うのね」
歩夢「まさか……ッ⁉」
にこ「いくわよ、宝具────」キュゴッッ…‼
侑「ちょっ、歩夢、なんかやば」
歩夢「だめっ! 侑ちゃん離れてっ‼」バッ! にこ「『刺し穿つ』────『死棘の槍』ッッ‼‼」ギュゴァッッッ‼
その瞬間、あらゆるものが逆転した。
侑「────ばやかんな、むやあ、っょち」
歩夢「ってれなは、んゃちうゆ、っめだ────」
テープを巻き戻すように、時間が遡っていく。放たれた魔槍が因果を逆転させて、「投擲」という行為よりも前に「当たる」という結果を確定させたのだ。
それこそがゲイ・ボルク。使えば必ず心臓を貫く槍。 ────瞬きの後、侑の視界に映ったのは、槍に貫かれて遠く吹き飛ばされる歩夢の姿だった。
ドゴォォ……ン!!
侑「あ、歩夢っ⁉」
歩夢「うあああっ‼」ゴロゴロ
歩夢「……あ、あぐっ……うううっ⁉」ギュゴゴゴゴ……!
侑「あ、歩夢! お腹が…限界が近いんじゃ⁉」
歩夢「ま、まだ大丈夫だよ、侑ちゃん……! まだ私は、戦える……!」フラフラ
侑「で、でもっ!」 にこ「──躱したわね。にこの必殺の一撃を」ギリッ
侑「え………………?」
にこ「あーあ、なんかしらけちゃった。これを使う時はそれで終わらせるって決めてたのに。やる気失せたから、私帰るわ」
歩夢「に……逃げる気ですか……?」
にこ「別に追ってくるのなら構わないわよ? でもその時は、(肛門の)決死の覚悟を抱いて来ることね」ヒュンッ
歩夢「……はぁ、はぁっ。行ったみたい……」ドサッ
侑「歩夢っ!」ガシッ 聖杯戦争ではゲートオブオトノキザカとアイドルオンヘタイロイを使う高坂穂乃花に勝てる気がしない 歩夢「ごめんね侑ちゃん、私の幸運値が低いかったらあのまま心臓を穿たれて負けてたと思う。運任せなんて、私もまだまだだなぁ……」
侑「じょ、状況がよく分からないんだけど、とにかく今は休もう? もうお腹も限界なんじゃないの? ほら、肩貸してあげるからさ!」
歩夢「あ、ありがとう、侑ちゃ────」ハッ
歩夢「……敵が来る」
侑「えっ?」
歩夢「ごめん、侑ちゃん。でも私が、侑ちゃんを守らないと」 侑「ちょ、ちょっと、何言ってるの⁉ 歩夢────」
歩夢「っ‼」ドンッ
侑「な、何考えるの歩夢、まだ戦うだなんて……‼」
ガキンガキンッ…‼
侑「あっちだ!」
侑「歩夢、歩夢っ⁉」ダダッ
侑「え────────」 そこで侑が見たものは、双剣を持つ少女を容易く斬り倒し、そのまま奥に潜む誰かへと肉薄する歩夢の姿だった。
直後、数メートルはあろうかという巨大なコッペパンがどこからともなく現れ、歩夢を押し潰さんと迫る。しかし無意味だった。歩夢が片手を振り払うだけで、巨大コッペパンはゴム毬のように弾んで道路の端へと投げ捨てられた。
侑「なにあのコッペパン」 その奥にいる人影が尻餅をつく。今のコッペパンが精一杯の攻撃だったのか、もう対抗策はないらしい。
それを知ってか、歩夢は片手に持った「何か」をゆらりと振り上げて────、
歩夢「────────じゃあね」ユラッ
侑「いやいや、パンに気を取られてる場合じゃないっ! あれは……よく見えないけど……人っ⁉だめだよ歩夢、止まって……‼」
歩夢「私が──侑ちゃんを──守らないと──」
侑「止まってぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ‼‼」
歩夢「!」ビタッ 歩夢「……なんで止めるの、侑ちゃん」
侑「だめだよっ! 誰か知らないけど、多分それで傷つけたら漏らしちゃんでしょう⁉ うんこを! 私だって経験したんだから分かるんだよ⁉」
歩夢「でも、敵が」
侑「いいからっ……今は、お願い……歩夢」
歩夢「……わかった。侑ちゃんの頼みだもん」スッ
侑「ほっ……話を聞いてくれてよかっ」
???「せ、せんばぁぁぁぁ〜〜〜いっ‼‼」ダッ! 侑「えっ? か、かすみちゃん? かすみちゃんだったの⁉」
かすみ「────先輩っ! 先輩先輩先輩っ! さっきので漏らすかと思いましたぁぁっ‼」ビエーッ
歩夢「あれ、かすみちゃん。かすみちゃんだったんだ」キョトン
かすみ「なんでトドメ刺そうとしてたのに気付いてないんですかぁっ! 怖過ぎですよ! かすみんに敵対の意思はなかったのにいきなり斬りかかってきてぇ!」ガクブル
侑「あ、あはは、もうわけわかんないや………」
歩夢「……とりあえず、おうちに帰ろっか♡」 〜侑の自宅〜
侑「……あ、アイドル戦争っ?」
かすみ「はい。侑先輩は、それに巻き込まれてしまったんです」
侑「ちょ、ちょっと状況が読めないんだけど。えーっと、それがどういうものなのか説明してもらっていい?」
かすみ「はい。アイドル戦争とはその名の通り、不定期に開催されるスクールアイドル達の戦いです」
歩夢「……………………」
かすみ「と、いきなり言っても分かりませんよね……かすみんも一応参加者なんですが、先輩と敵対する気はないので安心してください。というかそんなことをしたら歩夢先輩にどうされるか……」ガタガタ かすみ「そうだ! こういう時、簡潔にルール説明をしてくれる監督役がいるのを思い出しました!」ポン
侑「えっ? そんなスポーツみたいな催しなの、これ?」
かすみ「まあ14人って決まっていたり、ルールもあるので、ある意味スポーツに近いかもしれませんね。負けた時の代償がデカ過ぎますけどぉ……」オシリサワ
かすみ「とにかく、教会に行きましょう! 監督役が先輩にこの戦いについて教えてくれるはずです!」
歩夢「そうだね。侑ちゃんも参加者に選ばれたんだし、監督役への挨拶くらいはしておいた方がいいかも」
侑「うーん、とにかく現状を知りたいのは確かだし。よし、教会とやらに行ってみよう!」オー 〜深夜・教会〜
ラーラーラー…(荘厳なBGM)
しずく「────あら? いらっしゃい、侑さん、歩夢さん、かすみさん」ニコッ
侑「って、監督役はしずくちゃんなの⁉」ガビン
かすみ「はい。監督役もスクールアイドルから選ばれるんですよ」
しずく「スクールアイドルじゃない侑さんも連れてきたってことは……かすみさん、もしかしてイレギュラーな事態が起きてるの?」
かすみ「うん。歩夢先輩のマスターが、なんでか侑先輩になっちゃったみたいで」 しずく「そういうことでしたか。それは確かにルール説明が必要ですね。承りました!」
侑「お願い、しずくちゃん。もうさっきからちんぷんかんぷんで困っちゃって……」ハァ
しずく「では、この虹ヶ咲で勃発したアイドル戦争について、簡単に説明させて頂きます」ホワイトボードドン
しずく「アイドル戦争とは、選ばれしスクールアイドルを決めるためのバトル・ロワイヤル。敗者はアイドルとしての尊厳を失う、過酷な生存競争です」メガネクイッ しずく「参加者は14人、全員がスクールアイドルの中から選ばれます。参加者はそれぞれ「マスター」と「サーヴァント」に振り分けられ、二人一組でタッグを組みます。あとはご存知の通り、他のペアと戦って、最後まで勝ち残った人が勝者となります」
侑「そ、それに勝ったらどうなるの?」
しずく「聖杯。手にした者をスクールアイドルの頂点へと連れていってくれる希望の杯が、勝者には与えられます」
侑「へぇ〜そんな凄いものが……聞いたことなかった……」
かすみ「これはスクールアイドルしか知り得ない、絶対の秘密ですから。かすみんも実は最近知りました」 しずく「……おほん。現状の説明に移りますが、侑さんは何故かアイドル戦争に巻き込まれてしまったみたいなんです。スクールアイドルしか参加資格を有さないはずなのに」
侑「それ言われたよ。あの槍の人が、スクールアイドルでもないのになんで参加してるんだって」
しずく「侑さん、右手を見てもらえますか?」
侑「右手? うわ、なにこれ⁉ 赤いタトゥー⁉変な形!」ギョッ
かすみ「それは令呪といって、「マスター」であることの証明です。また、従える「サーヴァント」への絶対命令権を有する刻印でもあります。3回しか使えないお助けアイテムだと思ってください」
歩夢「私は侑ちゃんの命令ならなんでも聞くのに……」 侑「ぜ、絶対命令権って物騒だなあ。例えば私が歩夢に今すぐ漏らせとか命じたら漏らすの?」
歩夢「侑ちゃん‼‼⁉⁉」ガビン
しずく「漏らします。アイドルが漏らしてしまった場合、それはこの戦いの敗北を意味しますが」
侑「冗談だよ冗談。あんまり有効的な使い方が思いつかないなあ」
しずく「まあ、命令権と言っても、サーヴァントの一時的な強化であったり、通常は不可能な瞬間移動などにも使えます。意外と応用の幅が効きますから、ピンチになったら頼ってください」 侑「わかりましたー。ところで、その「マスター」とか「サーヴァント」っていう単語なんだけど……」
しずく「あ、説明がまだでしたね」
歩夢「それは私が説明するよ」スッ
歩夢「──簡単に言うと、私みたいに戦う役目を担うのが「サーヴァント」。そして、それをサポートするのが「マスター」。侑ちゃんは、サーヴァントである私のマスターに選ばれたの」
侑「へぇ〜。サーヴァントって召使いみたいな意味だよね? 私が主人役ってことかあ」
歩夢「本来なら、どちらもスクールアイドルしか選ばれないんだけどね。多分、私達の絆が常識を破壊してしまうくらいに強過ぎて……」 かすみ「はいはい歩夢先輩に任せると暴走しそうなのでやっぱりしず子に任せてください!」ガタッ
歩夢「むー」プクゥ
かすみ「ちなみに補足すると、私も「マスター」です。自前のスクールアイドル力である程度は戦えますが、それでもサーヴァント役のアイドルには到底敵いません。アイドルじゃない先輩なら尚更です」
侑「ああ、あのコッペパンか……でも、そうだよね……あんなのに混ざるのは無理だよ…」ゾゾゾ 侑「かすみちゃんもマスターなら、サーヴァント……を従えてるんだよね? さっきの人はどこにいっちゃったの?」
かすみ「えと……あの時歩夢先輩にバッサリ斬られて……今ダメージを回復するためにトイレに篭ってます。二、三日は出てこれないかも……」
侑「えっ⁉ た、大変じゃん⁉」
歩夢「てへ♡」 侑「ごめんねかすみちゃん……うちの歩夢が……」
かすみ「いえいえ、不用意に接近したかすみんの落ち度でもありますので……」
歩夢「侑ちゃん? もしかしてサーヴァントのことをペットか何かみたいなものと思ってないかな?」
しずく「話が逸れましたが……今ここにいる侑さん、かすみさん。それ以外にも5人のマスターがこの街のどこかにいます。当然、それぞれが従えるサーヴァントも」
しずく「それら全員を打ち倒し、勝利する。それがこのアイドル戦争の全てになります。侑さん、かすみさん、聖杯を目指して頑張ってください」 侑「なるほどねぇ。と言っても参加者がスクールアイドルだけじゃあ、だいぶ人も限られそうだけどねえ」
しずく「あ、アイドル戦争は人目についてはいけないという暗黙の了解が存在します。だからと言って、昼間の学校で戦ったりはしないでくださいね?」
侑「うん。しずくちゃんもかすみちゃんも、今日のお昼は普通に過ごしてたもんね。私もそれに従うよ」
かすみ「同時に、お昼は「誰がマスターなのか」「誰がサーヴァントなのか」を探り合う頭脳戦でもありますから……侑先輩、気を付けてくださいねぇ?」
侑「えー、もし同好会のみんなが参加者だったら、戦わなくちゃいけないのか……」ユウウツ 歩夢「スクールアイドルの世界は厳しいんだよ、侑ちゃん。それに、見た目は物騒なことをしているようだけど、負けても死ぬわけじゃないから……」
しずく「ご理解いただけたようで何よりです。監督役の私は戦う術を持ちませんが、もしマスターがサーヴァントを失った場合、この教会が敗者を保護するセーフルームとして機能します。その場合はここを訪れて下さい」
侑「うん、ありがとう。二度とあんな思いはしたくないし、歩夢にもさせたくない。こうなった以上は頑張ってみるよ」フリフリ かすみ「さて、これからどうしましょー?」テクテク
歩夢「かすみちゃんは一応敵だから、侑ちゃんが言うなら今すぐここでかすみちゃんを敗退させてもいいけど」
かすみ「ちょっ⁉ あ、歩夢先輩⁉ 冗談ですよね⁉」
侑「うーん……まだ何も分からないことだらけだし、かすみちゃんは信頼できるし、ここは協力したほうがいいんじゃないかな? 別に協力しちゃいけない、なんてルールはないよね?」
かすみ「せんばぁい!」ギューッ
歩夢「そう言うと思った。じゃあかすみちゃんとは共同戦線だね」 かすみ「う……うぅ……歩夢先輩の笑顔が怖い……切り替えが早過ぎて怖い……」
侑「よーし! 聖杯っていうのが何なのかはよくわからないけど、負けるのは怖いし頑張ろう!」
歩夢・かすみ「「おーーーっ!!」」
〜一日目、終了〜 侑「おはよう……」チュンチュン
かすみ「おはようござま゛ぁず……」
侑「ふわぁ……昨日、壁を歩夢がぶち抜いた時はどうしようかと思ったけど……三人で行動するならちょうど良い広さかもね……」フラフラ
かすみ「そうですねぇ……」
歩夢「二人とも遅いよ〜? ほらほら、しゃきっとして! ご飯はできてるからね」
侑・かすみ「顔洗ってきま〜す……」バタン 侑「いやー、なんか普通に朝ごはん食べてるけど。私たち、いま戦争中なんだよね」モグモグ
かすみ「そうですよ侑先輩っ。学校にいようと気は抜けません。同好会の誰が参加しているかは分かりませんが、きっと覚悟を持ってこちらを倒しに来るはずです。隙は見せないようにしましょう」
侑「うん……ちょっと憂鬱だけどね……」
歩夢「私がいるから大丈夫。侑ちゃんはこの身に代えても守り抜くからね」
侑「ありがとう、歩夢。じゃあ今日はそれとなく同好会のみんなを観察して、ちょっと怪しい人を探してみようかな」 〜学校・放課後〜
侑「あれ? 璃奈ちゃん、愛さんは?」
璃奈「おやすみ。なんでも風邪引いちゃったらしい」
侑「えぇ〜っ、大変じゃん! お見舞いに行かないと」
璃奈「それが、私も行こうとしたんだけど。結構ひどい風邪みたいで、うつると悪いから合わない方がいいって」
侑「そっか……せめてメールくらいは送っておこう」
璃奈「うん」 侑「────じゃあ今日の練習はこれまで。みんな、お疲れ様!」
彼方「彼方ちゃん今日も頑張ったよぉ〜」
エマ「えらいねぇ彼方ちゃん。良い子にはなでなでしてあげるからねぇ」
彼方「えへへぇ〜っ」スリスリ
果林「もう。あんまり甘やかし過ぎちゃ駄目よ、エマ?」
彼方「えぇ〜っ果林ちゃんがそれ言うの〜? 毎朝起こしてもらってるくせに〜?」
果林「さ、最近は一人でちゃんと起きるようにしてるわよっ! もう!」ワタワタ しずく「うーん、今日はちょっとお洋服見てから帰ろうかな。最近あんまりいいのが無くて……」
璃奈「わたしもついて行きたい。最近ショッピング行ってないから」璃奈ちゃんボード『オレも行くッ! 行くんだよォ──ッ!』
侑(愛ちゃん以外は……みんな、いつも通りだな……)ウーン
せつ菜「…侑さん、ちょっといいですか?」コソッ
侑「あ、うん。どうしたのせつ菜ちゃん」
せつ菜「少々大事なお話ですので、こちらへ…」 〜生徒会室〜
菜々「侑さん。貴女は昨日、編集作業で夜遅くまで学校に残っていましたね? 監視カメラの映像を確認させて頂きました」
侑「……そ、それが?」
菜々「腹の探り合いはなしにしましょう、今くらい。これを見てください」ペロッ
侑「え、えっ⁉ せ、せつ菜ちゃ、なんで急に服脱いで────///」ドキドキ
侑「っ⁉」 菜々「見えますよね、これ。令呪です。侑さん…貴女と同じく、私もマスターだということです」
侑「せ、せつ菜ちゃんも。でもなんでバレて」
菜々「その右手。肌色の湿布で隠していますけど、そこに令呪がありますね? バレバレです。私の目は甘くありません」
侑「うぐぅーっ!」ギク
菜々「はぁ……侑さん、それにしても」メガネハズシ
侑「な、なに……?」ビクビク せつ菜「──────これって!!!!!! めちゃくちゃ燃える展開じゃないですか!!!!!!!!??????」ゴウッ
侑「いやうるさっ」
せつ菜「こんなのアニメですよアニメ!!!! こんなの!!!!! 夜と共に戦いが始まる!!!! 平穏の裏に潜む戦争の影!!!!!! マスター!!!!! サーヴァント!!!! かっこいいーっ!!!!!!!!!」
侑「あ、あぁそうだった、せつ菜ちゃんはアニメ大好きだもんね……そりゃテンションが壊れるわけだ……」
せつ菜「私嬉しいんですっ!! 人にはこの事を言えませんし!! この大好きを共有できる人ができて嬉しいんですよっ!!」
侑「あ、あはは……一応敵同士なんじゃなかったっけ、これ……まあいっか」 せつ菜「はっ、そうでした。私のペアも紹介しないとですね!」
侑「ペアって……そっか、サーヴァント。私は歩夢だったけど」
果林「せつ菜が使役するサーヴァント役……それは私よ、侑ちゃん」シュンッ
侑「か、果林さん⁉ あれ、いま何もないところから現れたよね⁉」ビックリ
果林「サーヴァント役のアイドルには、色々と能力が与えられるわ。今のもその一つ。姿を消すことができる「霊体化」よ。現れたんじゃなくて、透明になってそこにいただけ。といっても気配でバレるから、あんまり役には立たないけどね」 侑「凄っ。普通に人間やめてるよね、サーヴァント役に選ばれた女の子……」
せつ菜「まあ、戦争が終われば元の私達に戻りますから。期間限定のスーパーパワーですね」
果林「別に私は参加する気なんてなかったんだけどね……聖杯って勝手に参加者を選ぶらしくて、気がついたらこうなってて……」ハァ
せつ菜「私は嬉しいですけどね!!! 逆に選ばれなかったらどうしようかと!!!! まあ欲を言えばサーヴァント役に選ばれてスカーレット・ストームを実現したかったですが!!!!!」
侑「へぇ〜。意外とアバウトに決めるんだね」 侑「で、なんでせつ菜ちゃんは私にその事を話してくれたの? 確か、アイドル戦争に参加していることは秘密にしなきゃなんだよね?」
せつ菜「実は、同盟を組む人を探していまして……侑さんであれば問題ないのではと考えた次第です」
侑「同盟かあ。うーん……」
果林「悪い話じゃないと思うわよ? 情報も共有できるし、集中攻撃されるリスクも減るわ。同盟までは行かずとも、一時停戦という話でも良いのだし」
侑「…………………………」 侑「…………ごめんね、せつ菜ちゃん。果林ちゃん。でも私、そのお話には乗れないや」
せつ菜「えっ!」ガビン
侑「実は、もうかすみちゃんと同盟を組んでるんだ。これ以上組むのは良くないって歩夢にも言われてるし、かすみちゃんも同じ事を言ってた。今二人を呼んでもいいけど……多分、二人とも駄目だって言うと思う」
果林「あら、もうお手つきだったのね。残念」
せつ菜「そうでしたか……うぅ、折角マスター仲間ができると……しょんぼりです」ショボン 侑「ご、ごめんねぇ! でも、嫌いだからとかじゃないから、本当! 正直言えば私は誰とも戦いたくないし!」
せつ菜「いえ、侑さんにも立場がありますから。そうであれば仕方がありませんね。こうなれば同じ立場のライバルとして、正々堂々いつか決着を付けましょう!」
侑「せ、せつ菜ちゃん……!」
せつ菜「────ではまた。何事もなければ明日の学校で、もしくは夜の戦場で会いましょう」
果林「夜道には気をつけなさい? なんて」ウフフ
侑「うん! またねー!」フリフリ
侑「……よし、帰ろっと!」 〜夜・侑宅〜
侑「参ったなー、せつ菜ちゃんと果林ちゃんが参加者とは。二人は正々堂々戦おうって言ってたけど、私はまだ気が引けるよ……」ウーン
かすみ「あはは、そのうち慣れると思いますよ。みんなそこは割り切ってますから」ゴハンモグモグ
侑「そういえば……昨日戦った人とか、かすみちゃんのサーヴァントの人とかは虹ヶ咲のアイドルじゃないよね? どこから来た人なんだろう?」オショウユチョウダイ
歩夢「遠くのアイドルが魔術的パワーで召喚されることも多いみたい。だから、もしかしたら虹ヶ咲で参加している人は案外少ないのかも」
かすみ「かすみんのサーヴァントは、μ'sっていうアイドルグループから時空を超えて来てくれた人で……まあこの話は後々しましょう。問題は今夜どうすべきか、です!」 侑「ええっ? 別にこのまま寝ればいいじゃん」
かすみ「ダメですよ先輩っ。アイドル戦争が行われている以上、一日の本番は昼じゃなく夜です!敵を探して撃破する、サーチアンドデストロイなバトルが始まるんですよーっ!」
歩夢「そうだね。近辺の見回りくらいは済ませて、出来れば今夜中に一騎くらいは減らしたいね」
侑「あ、歩夢まで……」
かすみ「そうと決まれば出発しましょう! 大丈夫です、今日は私も協力しますから!」イキマショー 侑「────うぅう、寒いなあ。とりあえずどこに向かおう?」ザッザッ
かすみ「教会の方とかどうです? あそこは監督役の縄張りですが、同時にアイドル戦争の中心地でもあります。敵を見つけられるかも」
歩夢「いいと思う。任せてね、侑ちゃん」
侑「じゃ、じゃあそれで……怖いからあんまり敵には会いたくないけどね……」
かすみ「そういえば侑先輩、歩夢先輩の「宝具」が何か知ってるんですかぁ?」 侑「え? 宝具って?」
歩夢「宝具っていうのはね。サーヴァント役のアイドルが一つから複数個持つ、超強力な武器のことだよ。必殺技と言い換えてもいいかも」
侑「ああ、そういえば槍の人が使ってた、あれ! あのきゅごごーっ! ってなって歩夢を串刺しにした!」
歩夢「そうそう。簡単に言うと、ああいう強烈な必殺技をサーヴァントは一つ二つ有してるの。どんな宝具になるかは、その人によって決定されるらしいんだけど」
歩夢「ちなみに、私の宝具はね──────」 ???「お話の途中、ごめんね?」
途端、誰もいないと思われた夜の道路に、冷たく凍るような少女の声が響き渡った。
侑を除く二人が即座に戦闘体制を取る。煌々と輝く月が照らす中、張り詰めた緊張感はやけに鋭く肌を刺した。ごくりと唾を飲み込んで、侑は目前の乱入者に目を向ける。
──────そこには。
侑「えっ……」 巨大な影が、横たわっていた。
あり得ない大きさの剣がまず目に映った。刃渡りだけで侑の身長は軽く超えている。だというのに、さも当然とばかりにその人物はその大剣を背負い、こちらに獰猛な視線を向けている。
そしてその前に立つ、対照的に小さな人影。
璃菜「こんばんは、みんな。私だよ」
侑「り、璃菜ちゃんに……愛さんっ⁉」
かすみ「っ、りな子、まさか!」
璃菜「互いに見れば分かるよね。立場も役割も、これから何をすべきなのかも」
璃菜「だから、倒すね」璃菜ちゃんボード『覚悟の準備をしておいて下さい』 侑「ちょちょちょちょっと、待っ」ワタワタ
璃菜「────やっちゃえ、愛さん」
愛「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■────ッッッ‼‼」ビリビリ 歩夢「来る! 二人とも下がって!」
侑「な────どわぁぁっ⁉」
ガッキィィィィン! ズドォォォォーーン!
歩夢「つ゛、ぐぐぐっ、ぁ……‼」ギギギ!
愛「お前か?」ギョロリ
歩夢「なっ」
愛「りなりーをいじめるの、お前か?」ギョロギョロ
歩夢「まさかっ……正気を、失って……⁉」 愛「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■────ォォッッッ‼‼」ドゴォッ! ドゴンドゴンバゴォンッ!
侑「な、なんで、あれが、愛さん……?」
侑「どうしちゃったの⁉ 全然違うじゃん! あんなの愛さんじゃないじゃん⁉ 怖いよ⁉ なんか身長3メートルくらいあるよ⁉」
かすみ「説明してる暇はありません! 私が援護しますから、侑先輩は安全な場所へ!」ダッ
侑「え、援護って言ったって────」 >>92
訂正です
×侑「な、なんで、あれが、愛さん……?」
○侑「な、なんで、あれが、愛ちゃん……?」
×侑「どうしちゃったの⁉ 全然違うじゃん! あんなの愛さんじゃないじゃん⁉ 怖いよ⁉ なんか身長3メートルくらいあるよ⁉」
○侑「どうしちゃったの⁉ 全然違うじゃん! あんなの愛ちゃんじゃないじゃん⁉ 怖いよ⁉ なんか身長3メートルくらいあるよ⁉」 愛と呼ばれたモノが手にした大剣を振るうたび地面は粉砕され、電柱は叩き折られ、空気がびりびりと振動する。
スクールアイドルとはかけ離れた破壊の嵐がそこにはあった。愛の目には何も見えておらず、ただ眼前の敵を倒すことしか頭にないらしい。侑は自分の膝が震えて、一歩も動けなくなっている事を自覚した。
かすみ「コッペパン! えーい!」
愛「■■■■■■■■■■■■■■■ァッ‼‼」バコン
かすみ「え゛ぇーっ‼ 効いてないぃっ⁉」ガビン
歩夢「がっ、ぐっ、うううっ‼」ズガガガガッ‼
愛「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■────‼」
ドォンズドォンバゴォン! ガガガッ! ズザザ!
コッペパン! ギィン! ドンドンドンッ!ウワァァッ! 侑「歩夢! 歩夢っ!」
侑「う、うごけ、うごけないっ、動かなくちゃ、動かなくちゃ────」ガダガタ
愛「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ‼‼」
侑「ひ……っ」ビクッ
侑(怖い……怖い怖いっ! 死なないって分かってても怖いっ! なんで歩夢は戦えるの……? あんな大きな剣を振り回す愛ちゃんに、なんで立ち向かえるのっ⁉)
侑「わたし──なにも、なにも知らずに──」 歩夢「ううぁぁぁぁぁああああっ‼‼」ガキン‼
歩夢「────はぁ、はァッ! あ、やば……⁉」
愛「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■────────ッッ‼‼」バゴォン!
歩夢「あ──が、ふ……っ」ゴロゴロゴロ…ドサッ
侑「あ、あ……歩夢ーーーーーーっっ‼‼‼」 歩夢「………………」ギュルルル…!
歩夢「は、はぁっ……はぁ、はぁ……お腹が……やばいっ、漏れ……う゛」フラフラ
璃菜「……愛さんには勝てないよ。愛さんはフィジカルで見れば最強のサーヴァント。それに加えて、理性を自ら捨てたことで異常な身体能力を有してる」
歩夢「う゛、ううう……‼」ガクッ
璃菜「終わらせて、愛さん」
愛「お前か? お前か?」ズンズン 侑(ダメだ、歩夢が負けちゃう、歩夢がっ)
侑(なんでまだ戦おうと、逃げなくちゃ、みんなで逃げないと、なんで、なんでまだ立とうと)
────『ごめん、侑ちゃん。でも私が、侑ちゃんを守らないと』
侑「‼」ハッ
侑「まさか……歩夢は……私を守るために……? だからあんなになっても戦おうとするの……? だから、まだ立ち上がれるの……?」
侑「…………………………歩夢っ!」ギュウ 愛「■■■■■■■■■■■■■〜‼‼」ユラッ
侑(……もしそうなんだとしたら。歩夢が私のために戦ってくれているのなら。私はなんだ。震えて何もできない私はなんなんだ! 動けっ、走れっ! 歩夢のところに今すぐ走れっ……‼)
侑「……の、」
侑「こんのおおおおおおおおおおっっ‼‼」ダッ
──────ズバンッッ‼ 歩夢「え、」
かすみ「あ」
璃菜「っ!」
侑「…………………………」
歩夢「侑、ちゃん?」
侑「あ、は……だめだ……歩夢を、かっこよく助けるつもりが……結局、盾にしか、なれな────」フラッ
侑「────」ゴロゴロゴロ…ドサッ… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています