彼方「ぎゅっと、守りたいの」
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「そっちで引き取ってもらえない?」
「はぁ?嫌ですよ……うちにそんな余裕ありませんから」
「じゃあ……」
「うちも無理だよ……それにさぁ、子どもって、あいつらのだぞ……誰だって嫌だろ」
「まったく、いつの間に子ども作ってたんだ……」
「親戚っていってもあいつらほとんど疎遠だったじゃないのよ、なんだって娘だけ残して……」
「施設でいいでしょ、ねぇ?」
「ほんとにどこ行ったかわかんないの?」
「死んだんじゃない?」
「はぁ……まったく……」
「……で?どうする?」
「………」
「……………あの……!」
「……私に、引き取らせてください」
「私が育てます」
「………」
「………」
「……だ、そうだけど?」
「ウチは別に」
「いいんじゃない?」
「いやぁ、よかったよかった」
「……いいの?アレはまだ残ってるんじゃないの?」
「……大丈夫です。なんとかします」 「なるほどねー」ペラッ…
「ふーん、去年やっと返しきったのか」
「てか今までの分全部取っとくとかホント真面目だなー」
「でも、おかげで面白いことわかったね」
彼方「………」
彼方「(……私を引き取る前に、完済の目処がついてたんだ)」
彼方「(でも、私を引き取った後……返済用のお金と同じ額が積立金に移動してる)」
彼方「(私の教育費………元は借金を返すためのお金だったんだ………)」
彼方「(私を引き取らなかったら、とっくに借金はなかったんだ……)」
彼方「(やっぱり私を引き取ったから……いつもお母さんはお金のやりくりに悩んで……)」
彼方「(私を引き取らなかったら……もっとお金に余裕ができて、お母さんも楽できたのかもしれない)」
彼方「(そしたら……遥ちゃんはあの時……いじめられなかったかもしれない……)」
彼方「(私がいなければ……嫌な思いも、痛い思いも、しなくて済んでたのかもしれない……)」
彼方「(………私が、いなければ………)」 「あんた、この家の負担なんだよ」
「このまま負担になるか、それともうちで稼いで力になるか、選びな」
「もうその歳ならわかるでしょ?」
「……来週迎えに来るから、必要なものはまとめておいて」
「まー自分で稼げるようになれば好きなもの買えるし、なにも持って来なくてもいいけどね」
「じゃ、そういうことだから」
彼方「………」 「じゃーねー………おっと」
母「………!!!!!」
母「………なに、してるの姉さん……!!」
「ひさしぶりー」
母「今までどこにいたのっ!?!?」
「どこだっていーじゃん」
母「なにしにきたの!??」
「ん、娘を迎えに」
母「……彼方を……?」
母「させない、そんなことさせないわっ!!!」
「それは、本人が決めることだよ」
「ねー?」
彼方「………」
母「彼方ちゃん……?」
「じゃーまた来週♪」
母「っ!!待って!!!」
母「………」
母「………」
母「……なんで今さら…………」
彼方「…………」 母「彼方ちゃん、何話したの?」
彼方「………別に」
母「何言われても耳貸さなくていいからね」
彼方「……うん」
母「大丈夫、絶対渡したりしないから」
彼方「……うん」
彼方「(やっと、ちゃんと役に立てる時が来たのかな)」
彼方「(うん、きっとそうだよ)」
彼方「(高校卒業資格くらいは、って思ってたけど、必要ないなら別にいいや)」
彼方「(思ってたのとは違うけど、再来年には就職して働くつもりだったし、予定が1年早くなるだけ………それだけ)」 彼方「………」
遥「………」
遥「……お母さんから聞いたよ」
彼方「………そっか」
遥「………」
遥「……どこにも……いかないよね……?」
彼方「………」
彼方「………うん」
遥「………」
遥「ほんとに……ほんとにいなくなったりしない、よね……?」
彼方「……遥ちゃんが心配することなんて、なーんにもないよ」
彼方「大丈夫大丈夫」
彼方「そんな不安そうな顔しないで?」
遥「でも……」
彼方「ふふっ」ナデナデ
彼方「さ、そろそろご飯の準備しなきゃ。待っててね〜遥ちゃん」
遥「あ……」
遥「お姉ちゃん……」 ────────
────
──
─
遥「ただいまー」
「ありゃ、帰ってきちゃったかー」
遥「っ!?」
遥「………なんで……1週間後って……」
「それだとうるさいのが待ち構えてそーじゃん?」
遥「っ!!」
「さ、いこうか。準備できてるっしょー?」
彼方「………」
遥「………」ズイッ…
「……何?」
遥「お…お姉ちゃんは……渡しません……!」 「………」
「そいつが行きたがってるんだからいかせてやんなよ?妹ちゃん?」
遥「そんなはずないですっ!」
遥「どうして、どうして今になって連れ戻しにきたんですか!?」
遥「あなたになんの権利があって……お姉ちゃんを渡さなくちゃいけないんですか……!」
「権利……ねぇ、そりゃーあるでしょ」
「あたしの娘だからね」
遥「違うっ!!今はもう違いますっ!」
遥「帰ってください……!」
遥「帰ってっ!!!」
「……」
彼方「………」
遥「………?」
彼方「もういいよ、遥ちゃん」
遥「……え」 彼方「………」
遥「……お姉…ちゃん……?」
彼方「………」
彼方「………」
彼方「……遥ちゃん……いつか、うちは貧乏なのかって聞いたこと、あったよね」
遥「……え?」
彼方「………そのせいで、いやな思いしたよね」
彼方「………」
彼方「…………ごめんね……」
遥「……なんで……お姉ちゃんが謝るの……?」
彼方「………私が知らなかっただけかもしれないけど、うちには借金があったんだ」
彼方「それを返すためのお金、私に使わなければもうとっくの昔に返せてたの」
彼方「そうなってたら、遥ちゃんが傷つくこともなかった」
遥「違う……!お姉ちゃんのせいなんかじゃないよ……!!」
彼方「……だから、ごめんね」
遥「……待ってよ………」
彼方「でも、これから2人がもーっと幸せに暮らせるように、彼方ちゃん、頑張ってくるから♪」
彼方「……ごめんね、さよなら」
彼方「ありがとう、遥ちゃん」 遥「………」
遥「………」
遥「………」
遥「………お姉ちゃん……」
遥「……っ…お姉ちゃんの……」
遥「お姉ちゃんのバカッッッ!!!!!」
彼方「っ!?」
遥「………」
遥「………」
遥「……あのときは」
遥「……痛かったよ……っ…苦しかったよ……いやだったよ……」
彼方「………」
遥「………」
遥「……でも、」
遥「お姉ちゃんがいないほうが!!もっといやだっ!!!!!」
彼方「……!!」
遥「だからっ!!お姉ちゃんは行かせないっ!渡さないっ!!!」
遥「……今度は……私がお姉ちゃんを守るんだ……!」 「……またお姉ちゃんに守って貰えばいいじゃない」
「お姉ちゃんもそうしたいでしょ?」
「かわいい『妹』のためにも、ほら、おいでよ」
「あんたらの『お母さん』の助けにもなるし、ね?」
彼方「………」
彼方「………」
彼方「……」
彼方「……私、は……」
遥「お姉ちゃん、大丈夫だよ」
遥「ここにいていいんだよ」
彼方「………」
遥「家族でしょ?」
彼方「!!!」
『おなじいえにすんでたら、かぞくなんだって』
遥「ね?」
彼方「………」
彼方「………」
彼方「………」
彼方「ふふっ」
彼方「うん、そうだったね」
遥「!!……お姉ちゃん……!」 「あんたの家族は私でしょー?」
「ほらいくよ、まだこの家に迷惑かけたいの?」
彼方「………」
彼方「………」
彼方「行か、ない……」
「……………何?」
彼方「行かない……!」
遥「もう、私たちに関わらないでください」
遥「私の姉に、二度と近づかないでくださいっ……!!」
「………」
「………」
「………チッ」
「あーあ、絶対うちの看板張れると思ったのになー、せっかく思い出してこうやって迎えにきたのに」
「わかったよ」
「連絡先おいとくから、気が向いたらいつでも言ってねー」
「……でも勿体無いなー、なんなら遥ちゃんでもいいよー?」
「んー、その見た目じゃちょっと歳誤魔化しづらいかもしれないけどまぁ、そういうの好きな連中もいるしね♪」ジロジロ
彼方「……!」ギロッ
「はぁー、はいはいもう帰るよ」
「そんじゃ、またねー」 遥「………」
彼方「………」
遥「………」
彼方「………」
遥「………はぁ……」ヨロヨロ…ヘタリ…
彼方「遥ちゃん!?」
遥「……っ……っ…ひっ……」ポロポロ
遥「…っ…おね…ちゃんの……っ…ばかぁぁ…!!」ギュッ…
彼方「ごめんね……っ…ごめんね……っ…」ギュゥウ
遥「うぇぇん……っ……お姉ちゃぁん…っ……!」
彼方「ごめんね……っ……ごめんね……っ…」ポロポロ
遥「……っぐす……っ……」
彼方「……遥ちゃん……守ってくれて、ありがとうね」
遥「……っ…!」
遥「うん……っ……うん…っ…!」ニコッ ────────
────
──
─
彼方「……やっぱり、転入したい」
母「………」
母「やっぱりあの時何か言われたの?気にしないでいいのよ?」
彼方「ううん、そうじゃないよ」
彼方「自分で考えて、決めたの」
母「………そう……」
彼方「………前みたいに、反対しないの?」
母「………」
母「………そうね……」
母「………」
母「……本当は、彼方ちゃんがそう言ってくれて、少し嬉しいのかもね……」
母「ごめんね、情けないお母さんで……」
彼方「そんなこと言わないで。ずっとずっと、お母さんには感謝してるんだから」
母「……彼方ちゃんは、本当にそれでいいの?」
彼方「うん。私は、お母さんと遥ちゃんが1番大切だから」
彼方「2人のためにできることがあるなら、そうしたい」
彼方「それが、私のやりたいことだから」
彼方「それに、彼方ちゃんはお姉ちゃんだもん、ね♪」
母「………」
母「………遥ちゃんには、もう話したの?」
彼方「……まだ」
彼方「でも大丈夫、ちゃんと言うから」 遥「転入……?」
彼方「うん」
遥「どうして……」
遥「!………もしかして、学費のこと?」
遥「なら今からでも私が「ダメだよ遥ちゃん」
彼方「ずっと行きたかった高校でしょ?そのために遥ちゃんずっと勉強頑張ってきたんだから」
遥「でも!!」
彼方「いいの。遥ちゃんは気にしなくていいよ」
彼方「これは、彼方ちゃんのわがままだから」
遥「でも………」
遥「………」
遥「………」
遥「……待ってるって………言ってくれたのに………」
彼方「!」
彼方「………ごめんね……」
遥「………」
遥「……もう、決めたんだね」
彼方「……うん」
遥「………」
遥「………」
遥「じゃあ、私のわがままも……聞いてくれる?」
彼方「……ん、なーに?」
遥「………」
遥「あのね、お姉ちゃん──────────」
────────
────
──
─
彼方「………ここか」
彼方「……」
「……あ、あの」
「スクールアイドル同好会の方でしょうか……?説明会ってこの教室で合ってますか?」
彼方「え?いや……ちょぉっと来てみただけというか……」
「あっ!入部希望ですか!私と同じですね♪」
彼方「(聞いてない……)」
「私、この同好会に入るために編入してきたんです」
「そういう方、他にもいるって聞いてるんですけど、もしかして……」
彼方「えっ、えと………」
「………!」キラキラ
彼方「うっ………」
彼方「………そういうことにしとこうかなぁ」
「やっぱり!」 「………あ!こんにちは〜」ズイッ
「へ!?わっ、えっと……ハ、ハロー……?」
「ふふっ、日本語わかるよ」
「2人はスクールアイドル同好会の人?」
「いえ、まだです。これから入部しようと思ってまして」
「ほんと!?私もなの〜!」
ガララッ…
「………」ジトーーー
「あ、あの!私、私たち」
「ちょっと待って!!!」
「えっ」
バタンッッ
彼方「……?」「……?」「……?」 ────────────────────────
「たたたたいへんです!!!!」
「入部希望者来てくれましたよっ!!」
「本当ですか!!!」
「しかも3人!」「3人!?!?」
「………新たなる仲間……!これで5人……!」
「5人といえば………ふふふっ」
「まずは私が赤で……あと青、黄色は定番ですね……そして緑……と、黒?ピンク?いやここはあえて紫「資料とかもう全部そろってましたよね!?」
「あ、はい!用意してありますっ、50部ほど!」
「そんなに!?」
「よーっし!今日は思う存分スクールアイドルが大好きという気持ちを語り合い「とにかくっ!準備できてるならはやく呼んできてくださいっ!!」
「は、はいっ!」
────────────────────────
彼方「なんか……ずいぶんと賑やかだね……」
「あはは………」
ガララッ‼
「あぁ…良かったまだいた……」
「さぁ!どうぞっ!!」
「し、失礼しますっ」
「しつれいしまーす!」
彼方「お邪魔しま〜す」 「お待たせしてしまい申し訳ありませんっ……」
「せつ菜先輩がはしゃぐからですよぉ……」
「………う、すみません……」
「………くひひ、でもこれでかすみんの子分が3人です……♪」
「……かすみさん?」
「うぇ!?い、いえなんでもっ」
「では改めまして」「はいっ」
「「ようこそ!!スクールアイドル同好会へ!!!」」 乙です!!!彼方ちゃんの中学校の同級生いい奴!
すごく面白かったです!! 更新一日空けたの性格悪いわー
そのせいで昨日の夜から今日一日なんともいえない気分だったぞ 素晴らしSSだったわ乙乙
彼方ちゃん幸せになってくれ… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています