彼方「保健の先生はじめました」
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保健室
ガラッ
彼方「お邪魔しま〜す、ふあぁ〜」
彼方「ん?先生またいないのかぁ」
彼方「あの先生忙しいからよくいなくなるんだよなぁ」
彼方「私はお昼寝をしに来たからいいものの、本当に具合の悪い子が来たらどうするんだか」
彼方「仕方ない、彼方ちゃんが留守を預かるとしますか」
彼方「誰もいないのはかえって好都合、静かな所でゆっくり眠れる」ゴロン
彼方「あぁ、やっぱり保健室のベットは落ち着くよね〜」
彼方「くぁ……ふわぁ〜あ」ウトウト
彼方「おやすみなさ〜い」
彼方「……すやぁ」 彼方「すぅ……すぅ……むにゃむにゃ」
女子1「あの〜、失礼します」
女子1「あれ?先生?……誰もいないのかな」
彼方「……ん?」パチッ
女子1「困ったなぁ、どうしよう……」
彼方「んん……ふわぁ〜」ムクリ
彼方「―どうしたのかな?」シャーッ
女子1「わっ、びっくりした……近江先輩、いたんですね」
彼方「驚かしてごめんよ〜、ここでお昼寝をしていたのだよ」
彼方「先生ならいないよ、なにかあった?」
女子1「実はちょっと熱っぽくて寒気が……」
彼方「おや、それはいけないね」
彼方「ちょっと待ってね、確かこっちに体温計が」ガサゴソ
彼方「あったあった、これで熱を計ってごらん」
女子1「あ、ありがとうございます」 ピピッピピッピピッ
彼方「何度だった?」
女子1「37.5度です」
彼方「微熱だね、とりあえずベットに横になって様子を見よう」
彼方「私は保健の先生じゃないからこれ以上どうすればいいのかはわからないから」
彼方「まぁいざとなったらここに風邪薬もあるし」
女子1「はい、先生が来るまでそうさせてもらいます」
彼方「彼方ちゃんのベットを特別に貸してあげよう」
彼方「おいで、ゆっくりでいいよ」
女子1「すみません、先輩が使っていたのに」
彼方「いいんだよ、本来はあなたのような子の為のベットなんだから」ファサッ
彼方「―あ、ちょっと待っててね」スタスタ
彼方「私にはこんな事しか出来ないけど」ギュウ〜 ピタァッ
女子1「あ、冷たくて気持ちいい〜ありがとうございます」
彼方「いつも保健室のベットを使わせてもらってる分、少しは役に立たないと」
彼方「そこに座ってるからなにかあったら呼んでね〜」 彼方「よっこいしょ」ギシッ
彼方「誰もいないとここに来た子が戻っちゃうかもしれないから座ってようかね」
彼方「それにしても今日はいい天気でぽかぽか気持ちいいなぁ……」
彼方「……うん……んん〜」コックリコックリ
彼方「―はっ!?いけないいけない、つい睡魔に負けそうになった」
彼方「眠気覚ましにあの子の様子でも見ようか」ソーッ
女子1「すぅ……すぅ……」
彼方「うんうん、よく眠っているね」
彼方「熱も少し下がったかな?タオルもすっかりぬるくなっちゃったね、交換しよう」ギュウ〜 ピタァッ
女子1「ん……ふぅ〜」
彼方「ふふふ、まるで遥ちゃんの看病をしているみたいだねぇ」ファサッ ガラッ
女子2「すいませーん」
女子3「失礼します……」ヒョコヒョコ
彼方「やぁ、いらっしゃい」
彼方「―って、あなたケガしてるじゃない。大丈夫?」
女子3「体育の授業で転んじゃって」
女子2「そう言えば、なんで近江先輩がここに?」
彼方「今日は彼方ちゃんが保健の先生を代行しているのだよ」
彼方「見せてごらん」
女子3「は、はい……」スッ
彼方「ははぁ、擦りむいたみたいだけどこれくらいならなんとかなりそうだ」ジーッ
女子2「一応傷口は水で流しました」
彼方「ありがとう、あなたは友達想いのいい子だね」
彼方「今消毒してあげる」ガサゴソ 彼方「少ししみるよ〜」プシュッ
女子3「痛っ……!!」
女子2「痛い?大丈夫?」ギュッ
彼方「ふふ、そうやって手を握っててあげて」
彼方「さぁ、もう少しの辛抱だからね」チョンチョン
女子3「んっ……!!」
彼方「はぁいおしま〜い、あとは絆創膏を貼って」ペタリ
彼方「これでよし、と。お疲れ様」
彼方「お友達も一緒だから大丈夫だね、気を付けて」
女子3「助かりました、どうもありがとうございました」
女子2「近江先輩ってこんな事出来るんですね、すごくテキパキと手際がよくて感動しました」
彼方「普段先生がやっている真似をしただけだよ、簡単な処置だったし」
女子2「先輩、保健の先生に向いてますよ」
彼方「そうかぁ、保健の先生になったらお昼寝し放題だなぁ」
女子3「ふふふ、先輩ったら」クスッ 彼方「いやぁ〜あの2人かわいかったなぁ」
彼方「ケガした友達に付き添って連れて来てあげる、青春だねぇ」
女子1「―あの、すみません。近江先輩」
彼方「はいはい、今行きますよっと」
彼方「具合はどうだい?」シャーッ
女子1「おかげで大分よくなりました」
女子1「喉が乾いたのでお水をもらってもいいでしょうか」
彼方「それじゃちょっくらポカリでも買ってくるかね」
彼方「その間にもう1度熱を計っておいて」
彼方「おまたせ〜はいどうぞ」スッ
女子1「お水でよかったのに、わざわざありがとうございます」
彼方「いいんだよ、早くよくなって欲しいからね」
彼方「―お、37度か。いい調子だね」
彼方「念の為もうしばらく寝ているといいよ」
女子1「そうですね、お言葉に甘えてもう少し休ませてもらいます」
女子1「んくっ……んくっ……はぁ〜おいしい〜」
ガラッ
女子4「先生〜手切っちゃったよ〜」
彼方「やれやれ、今日は随分と患者さんが来るね」
彼方「寝る暇もないなこりゃ」スタスタ 女子4「あ、近江さんだ」
彼方「先生がいないから私が代わりに見てあげよう」
彼方「手を切ったって?なにをやったの?」
女子4「調理実習で野菜を切っていたら一緒に手まで切っちゃってさ……ぐすん」
彼方「どれどれ……おぉ、これは名誉の負傷だ。頑張って野菜切ってたんだね」
彼方「今処置してあげるからね」
彼方「おおげさかもしれないけど一応包帯を巻いておこう」グルグル
彼方「よいしょ」ギュッ
女子4「ちょ、痛い痛い‼もう少し優しくしてよ〜」
彼方「なんだい、さっき来た子達は1年生だったけどそんなわめかずにじっと我慢してたよ」
彼方「あなたも3年生なんだから我慢しなさい」
女子4「……うん、わかった」
女子4「3年生にもなって手を切るなんて恥ずかしいなぁ」
彼方「それは誰もが通る道だね」
彼方「彼方ちゃんも昔はよく指を切ったものだよ」
女子4「へぇ、近江さん料理上手なのにね。なんか意外」
彼方「私も最初から上手く出来た訳じゃないんだ、何度も指を切って何度も失敗したものさ」
彼方「さ、これに懲りずにケガが治ったらまたチャレンジしてごらん」
彼方「失敗は成功の元、次はきっと上手く出来るさ」
女子4「あはは、経験者は語るだね。ありがと、元気出た」
女子4「近江さんに処置してもらってよかったよ、バイバイ」
彼方「はいよ〜もうケガするんじゃないよ〜」 女子5「は〜あ、かったる……」ボリボリ
彼方「おや、お疲れのようだね」
女子5「―げっ、確か3年の近江……先輩」
女子5「ちっ……誰もいないと思ったのに」ボソッ
彼方「残念、彼方ちゃんがいました〜」
女子5「聞こえてたのかよ……」
女子5「しゃーない、出直すか」クルッ
彼方「おっと、ちょい待ち」ガシッ
女子5「なんだよ、離せよ」
彼方「あなた、お昼寝しに来たんだよね」
女子5「な、なんでそれを……」ドキッ
彼方「なぜなら私もお昼寝をしに来たから〜」
彼方「いいんだよ、ベットはもう1つ空いてるから寝て行きなよ」
女子5「―いいのかよ?私、どこも悪くないよ。ぶっちゃけサボりだよ」
彼方「彼方ちゃんだってぶっちゃけサボってるようなもんだよ」
彼方「お昼寝好きに悪い子はいない、たまにはゆっくり休みたい時もあるよね」
彼方「と言う訳でお1人様ごあんな〜い」グイッ
女子5「きゃあっ!?な、なにすんだよぉ!?」 俺君「せぇんせー、なんだかおちんちんビンビンに腫れて痛いんです、診て下さい」 ちょっとした気持ちの安心のために彼方先生に手握られたい ドサッ
彼方「さぁ、思う存分眠りたまえ」ファサッ
女子5「こんな無理矢理ベットに寝かされて眠れるかよぉ!!」
彼方「こらこら、隣には具合が悪くて寝てる子がいるんだから静かに」
女子5「誰のせいだよ、まったく……」
女子5「―いいよ、私やっぱり他に行く」
女子5「だってどこも悪くないのに具合の悪い子と並んで寝るなんて……」
彼方「いや、あなたここに入って来た時かったるいって言ったよね」
彼方「それも具合が悪いって事さ、なんなら彼方ちゃんが一緒に寝てあげよう」モゾモゾ
女子5「な、なんであんたまで」
彼方「私には疲れを癒す力があるのだよ、さぁ彼方ちゃんの胸で眠りなさい」ムギュウッ
女子5「むぐっ!?むむむむ〜」ジタバタ
彼方「暴れるな暴れるな、ほぉら……あなたはだんだん眠くな〜る〜」
女子5「ん……んむ……んん……」ウトウト
彼方「いい子だ、嫌な事は眠って忘れるに限る。ゆっくり休みな」
女子5「―すぅ……すぅ……」
彼方「ふふふ、いい寝顔だ。おやすみなさい」ナデナデ
彼方「さて、このまま一緒に寝ていたいけど私は起きないとね」ムクリ
彼方「そろそろ先生戻って来ないかなぁ」
彼方「なにやってるんだろ……ふわ〜あ」 彼方「ほうほう、家庭の医学ってこんなにあるんだ」
彼方「たまにはこういう本も悪ないねぇ」
彼方「ふぁ……本を読んだら眠気が」クシクシ
彼方「眠い……もう限界かも……」ウツラウツラ
ガラッ‼
女子6「大変です‼先生来てください!!」
彼方「はっ!?」パチッ
彼方「ど、どうしたのそんなに慌てて」
女子6「クラスの子が急に倒れちゃって、動かなくなっちゃったんです‼」
彼方「そ、それは大変だ」
彼方「もう説明するのも面倒だから先に言っとくけど今は私が保健の先生だから」
彼方「さぁ、連れて行って」
女子6「は、はい。お願いします」 昼休み 教室
ザワザワ……ガヤガヤ……
彼方「はいちょっとごめんよ通してねぇ〜」グイグイ
「あれ?先生じゃない」
「近江先輩だよね」
「なんで近江先輩が」
「大丈夫なの?」
彼方「ちょっと皆静かに、しぃーっ」
シーンッ
彼方「ふむ、よろしい。さて、この子か」スッ
女子7「」グッタリ
彼方「……」ジーッ
彼方「もしもし、聞こえる?もしもし」トントン
女子7「」
彼方「ふむ……」
彼方「……」スッ
彼方(呼吸をしていない……?)
彼方「ちょっとあなた、大至急保健の先生を呼んで来て、いなかったら他の先生でもいいから」
女子6「は、はい‼」タタタッ
彼方「―ふぅ……仕方ないね」
彼方「ぶっつけ本番だけど『アレ』をやるしかない」
彼方(どうか上手くいきますように……) 彼方(まずは気道を確保して)クイッ
彼方(胸骨の圧迫から)
彼方「確か、ここだったね」スッ
彼方(両手を重ねて手の平の付け根を押し当てたら垂直に……押す)グッ
彼方(これを30回やったら)グッグッグッ
彼方「すぅ……ふぅ〜、すぅ……ふぅ〜」
彼方(人工呼吸を2回)
彼方(あとはこれをひたすら繰り返す)
彼方「ふんっ、ふんっ、ふんっ」グッグッグッ
彼方「すぅ……ふぅ〜、すぅ……ふぅ〜」
彼方(頼むよ……目を覚まして……!!)
女子7「―ん……うぅん」
女子7「……はぁ、はぁ〜」
彼方「あ、気が付いた」
キャアァァァァー!!ヤッター!!コノエセンパイステキー!!
彼方「はぁ〜よかったぁ」ペタン
女子6「近江先輩〜先生連れて来ました〜!!」
彼方「ははは……来るの遅すぎるよもう……」 ピーポーピーポー
保健医「いやぁお手柄だったわね近江さん」
彼方「たまたま保健室で読んでいた家庭の医学に心肺蘇生法の事が書いてあったから」
彼方「初めてやったから緊張したよ」
保健医「救急隊員の方達も感心していたわよ、あなたが心肺蘇生をしていなかったら手遅れだったかもしれないって」
保健医「私の出る幕はなかったわね」
彼方「いやいや、私だってドキドキもんだったんだからね」
彼方「肝心な時にいないんだから先生は」
保健医「ごめんなさい、そこは反省しているわ」
保健医「他の子達の面倒も見てくれたみたいで」
保健医「近江さんのおかげで本当に助かったわ、ありがとう」
彼方「まったく今日はクタクタだよ」
彼方「おかげでぐっすり眠れそう……ふあぁ」
彼方(まぁでも、保健室の先生ってのも悪くはないかもね)
彼方(今度は白衣でも借りてみようかな) おっ待てい!人口呼吸は気休めで心臓マッサージが大事なんやで(唐突) 数日後
ガラッ
彼方「―先生……またいない」
彼方「はぁ、懲りないなぁあの人も」
彼方「まぁいいや、お昼寝しよ」
彼方「……」ゴロン
彼方「……」ゴロン
彼方「……眠れない」パチッ
彼方(この間皆の面倒を見たせいか誰かが来るような気がして)
彼方「ふわぁ〜あ、もう……」ムクリ
ガラッ
「あれ?誰もいない?」
「お腹痛いのに……参ったなぁ」
彼方「やれやれ、やっぱり来たかぁ」ニヤリ
彼方「はいは〜い、大丈夫かい?」シャーッ
彼方「あてにならない先生の代わりに彼方ちゃんが見てあげる」 これで終わりになります。支援、最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。 >>26
訂正
×彼方「たまにはこういう本も悪ないねぇ」
○彼方「たまにはこういう本も悪くないねぇ」
でした、失礼しました お疲れ様でした
読んでたら脳の応急処置をされたのでまだ生きられそうです ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています