善子「わたしがヨハネにこだわる理由」
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わたし堕天使ヨハネの仮の名は津島善子
天界でもあまりに美しすぎたから嫉妬されて下界に堕とされて
そこでも不幸に見舞われるように運命付けられた薄幸の美少女 そんなわたしがいちいち呼び方を訂正することになった少しだけ奇妙な体験のお話 「ヨハネちゃん! 朝よ 起きないと学校遅刻しちゃうわよ」
ママが起こす声がする…
わたしはねむい目をこすりながらベッドから起き上がった
ん? ヨハネちゃん…?
いや確かにわたしは堕天使ヨハネなんだけど親にまでそう呼んでもらうように頼んだ覚えはない
さすがにせっかく名付けてくれた親に向かって名前がダサいからやめてくださいなんて言えないし まぁわたしが寝ぼけて聞き間違えたんだと思ってリビングに向かうと
やっぱり聞き間違えではないことがわかった
「ヨハネちゃん 今日から夏服でしょ? 出しておいたからそれ着て行きなさい」
善子「へ?」
思わずマヌケな声を上げてしまった
そこには真面目は顔でわたしをヨハネと呼ぶ母親と見たことのないグレーのセーラー服が置いてあったからだ 「それじゃママは先に出るけど朝ご飯はテーブルに用意してあるからそれを食べて学校に行くのよ?」
「えっ あっ うん」
戸惑うわたしを尻目にテキパキと支度を済ませてママは家を出て行った
どういうことなの…?
善子「まさか異世界召喚!? かっこいい!」
なんて考えられるところが堕天使のいいところだったりして
でもわたしが呼び出されたりここではヨハネって呼ばれてたり
こっちのヨハネの方が優秀な気がしてちょっとだけ嫉妬しちゃう
善子「パラレルワールドなら学校は一緒ってことでいいのよね?」
善子「とりあえず原因を突き止めてさっさと戻ることにしましょ」 曜「あ!ヨハネちゃん! おはよーそろー!」
善子「曜さん おはよう」
曜「えっ ねえわたしなんかヨハネちゃんを怒らせることしちゃったかな…」
善子「なに言ってるのよ してないわよ? それとも心あたりがあるの?」
曜「ないない! でもなんか怒ってる気がして」
善子「えぇ いつも通りじゃない」
そんなに怖い顔してたかな
バスの窓に映る自分をみてみたけど別にそんなことはない… と思った 曜「でも急に曜さんなんて呼ぶから…」
善子「えっ あぁ… そうよね」
善子「ごめん なんでもないのよ」
曜「そっか! それならよかった!」
そっか呼び方にも気をつけないといけないのね
こっちのヨハネがみんなをどう呼んでるかなんてわかんないし難しいわね…
まぁとりあえずさん付けはしないってことみたい
曜「ねーねー ヨハネちゃん 聞いてるのー?」
善子「ええっと なんだったかしら?」
曜「ひどーい! 昨日ルビィちゃんと花丸ちゃんと遊んだ話だよ!」
善子「へぇ 2人とねぇ 珍しいこともあるのね」
曜「たまたま昨日は飛び込みの練習が休みだったからね!」 そのあとはひたすら話続ける曜に適当に相槌をうちながら
こっちの曜も朝から元気いっぱいでいでいでいなのねなんて考えてたら降りるバス停についていた
曜「あっ! ダイヤちゃんとルビィちゃんだ!」
曜「おーい! ダイヤちゃん!ルビィちゃん! おはよー!」
バスを降りるなり曜は2人を見つけて駆け出して行った
ルビィ「曜ちゃん! それにヨハネちゃんも! おはよう」
善子「2人ともおはよ」
2人一緒に登校しててくれたおかげで呼び方には困らなくてすんだ
仲のいい黒澤姉妹に少し感謝していたら予想外の言葉が投げかけられた
ダイヤ「曜ちゃん ヨハネちゃん おはようございます」
ダイヤまで… まぁ親でさえそうだったんだから今更そこまで驚くことかって
内心自分にツッコミを入れながらそれでもちゃんづけでヨハネと呼ぶダイヤは少し新鮮な気がしてならなかった 善子「あれ? 下駄箱がない…」
曜「ヨハネちゃんなにしてるの?」
善子「いや下駄箱が…」
曜「ヨハネちゃんのはあっちだよ? なんか今日やっぱり変だね」
くすくすと笑いながら曜が指差した方をみると手招きをしているダイヤがいた
ダイヤ「なにしてるんですか… まったく ヨハネちゃんはここよ?」
善子「へ?」
ダイヤがわたしのところだと示したところはダイヤが靴を入れようとしてるところからほど近いところだった
善子「あれ そんなところだったっけ」 そういいながら歩いて行くと曜はさっきわたしがいたところ
つまり1-Aと書かれたプレートが吊るされているところの端っこに靴を入れていた
その横でルビィも同じところで上履きに履き替えていたのでそれは間違いないはずだった
そしてわたしの下駄箱は2-Bと書かれているところにあった 学年まで違うの…
ダイヤもわたしと同じ2-Bの下駄箱で靴を履き替えていた
朝を出る時には いやついさっきまで想定していなかった状況に混乱してきた
そしてここが間違いなくわたしの本来いた世界と違うことを実感した
思っていたより誤魔化しながら原因を探して元に戻るのは難しいかもしれない… 曜「やっぱり具合悪いの?」
さっきまで元気いっぱいだった曜が心配そうに顔を覗き込んできた
ダイヤ「顔色が悪いみたいね 無理せず保健室にいってみては?」
自分の置かれた状況に顔が青ざめていたのだろう ダイヤまで心配そうにしている
ここはせっかくなので教室には向かわず今後のことを考えるためにも保健室に行くことにした
善子「そうね 一応行っておくわ 先生には伝えておいて」
ダイヤ「わかりましたわ」 想定外の事態だった
パラレルワールドは並行世界と言われるだけに基本的は元いた世界とそう差異はないはずだ
でもここはわたしの呼ばれ方だけでなく周りの関係性まで大きく違ってしまっている
誰と誰が結婚してる世界とそうでない世界とかじゃないのだ
とにかく誤魔化しきれないことが1番の問題だけど…
まぁ言語もなにもかも違うそれこそ今流行りのなろう系みたいなところじゃないのは救いだった
あれだともう戻れるかさえもわからないもの
とりあえずこれならこっちの世界のヨハネがいて入れ替わってるか単にわたしだけが喚ばれたのかだと思う
入れ替わりだとまぁ 手詰まりなんだけど…
ここは後者にかけてこっちのヨハネを探すのがいいという結論に至った もし召喚ならいつもわたしが描いてる魔法陣みたいなところから出てくるんじゃないのかしら
わたしは起きたらベッドにいたし周りに召喚者も魔法陣も見当たらなかったし…
ちょっとだけ不安になりながらとりあえず保健室に行くと行ってしまった手前
ダイヤに嘘をつかせるのもよくないから保健室に向かった 善子「失礼します」
保健室の扉を開けると先生の姿はなかった
かわりにベッドから返事があった
「ヨハネ?」
善子「そうよ」
もう善子と呼ばれないことにも慣れてきた
ホントはわたしは堕天使ヨハネでいつもそう呼んでもらいたいんだから慣れてきたっていうのもおかしいんだけど
「じゃあ成功したってことだわ」
「わたしであってわたしでない そうあなたは善子ね」
善子「ヨハネよっ まぁそうね」
いつもの返しが懐かしく感じるほどこっちに来てから経ってないのだけれど
それでも懐かしさを感じながらあまりこじらせるのも悪いので善子といわれるのを肯定した 善子「あなたがこの世界のヨハネなの?」
善子「成功したってことはわたしを喚んだのもあなた?」
「そうよ でもわたしはあなたであってあなたでない」
「わたしは善子じゃないのよ」
善子「ヨハネも善子じゃなくてヨハネなんだけど!?」
善子「それにしてもホントにこんなことができるなんてすごいわね」
「あなたはヨハネなのにできないの?」
声の主はイタズラっぽく笑った
善子「なっ できるわよ! できるに決まってるでしょ!」
「そうね さすがヨハネ」 「そういえばまだ自己紹介をしてなかったわね」
善子「はぁ? この世界のわたしなんでしょ?」
「そうだけどそうじゃない」
「わたしの名前は二階堂夜羽」
二階堂夜羽と名乗ったわたしは
いやわたしじゃないのかな
とりあえずわたしそっくりな彼女はそう言ってベッドから起き上がった
善子「へ? いやどうみてもわたしじゃない」
善子「堕天使ヨハネはやめてそんな苗字までつけたの?」
夜羽「そんなわけないじゃない 堕天使ヨハネよ?」
夜羽「ただ名前も夜羽なだけ」
夜羽「ほらそのカバンの中の学生証を見てみなさい」 言われるままに学生証を取り出した
そこにはわたしそっくりの顔の横に『2-B 二階堂夜羽』と書かれていた
夜羽「ね? 津島善子じゃなかったでしょ」
善子「ぐむむ そうね ずいぶんオシャレな名前じゃない」
夜羽「ふふん うらやましいでしょ いい子の善子ちゃん」
善子「くっ まさかそんな自慢するために喚んだの!?」
夜羽「そうよ? だって堕天使はワルくなくちゃ」
夜羽「というのは冗談なんだけど…」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています