歩夢「愛ちゃんの髪が明るいワケ」
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皐月の頃、いたって普通の放課後だった
彼女の秘密を知ったのは──
愛「ねぇ歩夢、今日は一緒に帰らない?」
歩夢「愛ちゃんと帰るの、なんか珍しいよね。いいよ、帰ろっか」
愛「おっしゃー!歩夢と歩む帰り道なんつって!」
歩夢「ふふっそうやってすぐダジャレ言うんだから…」
愛「あ、ごめんごめん気をつけまーす」
歩夢「ううん、気にすることないよ」
歩夢「私は愛ちゃんのダジャレ、好きだから」
愛「か〜っ嬉しいこと言ってくれるね!愛さんもうハグしちゃうよハグ!」
歩夢「わわっ廊下で抱きついたら危ないよ〜」 愛「それでさ〜りなりーまた変な発明したんだけど、これがまた面白くてさ」
歩夢「ふふっそうなんだ」
歩夢「今度見せてくれたらいいね」
愛「う〜んでもやっぱり失敗作だからみんなには内緒だって!」
歩夢「内緒なのに話しちゃっていいの?」
愛「あっ…」
歩夢「ダメ、だったよね…多分」
愛「ま、まぁ歩夢になら大丈夫だよアハハ…」
歩夢「もうっ気をつけなきゃダメだよ?」
愛「は〜い!」
歩夢「そんな元気良く返事されても…」
愛「えっへへ…。歩夢はさ、なんだか同じ学年なのに話しやすいからつい色んなこと話しちゃうんだよね」
愛「なんかね…よくわからないんだけどみんなを包み込んでくれる優しさ?みたいなのがあってつい甘えちゃうのかも」
歩夢「そう言われるとなんか照れるね」
愛「だから、これからも同じ学年なのにお姉さん的ポジションでいてほしいかな!アタシ的には!」 歩夢(愛ちゃんと話してると、なんだか時間があっという間…いつも楽しい)
歩夢(愛ちゃんが底抜けに明るいのって昔からなのかなぁ…)
歩夢「ねぇ、愛ちゃん」
愛「んー?どうした?」
歩夢「あのね、私ひとつ気になったことがあって──
「おっあいつ宮下じゃね?」
愛「あっ…」
「やっべ〜久しぶりに見たわ」
愛「……」
歩夢「愛ちゃん…?どうしたの?」 「君宮下の友達?」
歩夢「はい…」
「マジか〜なんでつるんでんの?」
歩夢「つるんでるって…大事な友達…だからです」
「大事な友達とかウケる〜!」
愛「ね、ねぇ歩夢…もう行こう?」
「こいつ、中学の時友達いなかったんだよ」
「なんでかわかる?」
歩夢(なんて失礼な人なんだろう…)グッ
歩夢「そんなの…今の愛ちゃんには関係ない!」
歩夢「私は今の愛ちゃんのことが大好きだもん。だから友達でいることに理由なんていらないよ!」
「うわ…何こいつ」
「まぁ、一個だけ教えてやるよ。昔の宮下のこと」
愛「やめてよ…」
「こいつ、サセ子だったんだよ」 愛「もう行こう!ほら、この後予定あったじゃん⁉」
歩夢「そ、そうだよね…さようなら」
「あっ逃げた!」
「せいぜい、仲良くしてやんなよ!」
歩夢「なんなの…?最低な人たちだった」
歩夢「失礼だよね、突然会うなり…」
歩夢「愛ちゃん?」
愛「あーごめんごめん!ちょっとぼーっとしてただけ!」
歩夢「愛ちゃん、あの人達は愛ちゃんにとってどんな関係だったの?」
愛「いや〜まぁそれは…ね?」
歩夢「辛いことなら無理には聞かないよ。でも、友達だもん。悩みとか苦しいことがあるなら相談してほしいな…」
愛「ありがとう。心配してくれて」
愛「でも、ホントのホントに大丈夫だから!」
愛「あっもう家近くだ!愛さん帰らなきゃ!じゃあね!」
歩夢「…うん、バイバイ」 歩夢(心配するよ…するに決まってる)
歩夢(だって)
歩夢(あんな表情の愛ちゃん初めて見たんだから…ほっとけるわけないよ…)
歩夢(愛ちゃんには申し訳ないけれど、もっと愛ちゃんについて知らなきゃ) 「それでウチらを探してたんだ」
「ウケる〜」
歩夢「この前は話も聞かずに逃げるように帰ってごめんなさい」
歩夢「ただ、私はどうしても愛ちゃんのこと知らなきゃいけないなって思って…」
歩夢「こうして尋ねました」
「ふーん。まぁきた理由とかどうでもいいけど、宮下について知りたいなら教えてあげるよ」
「あいつさ、中学の頃サセ子だったの」
歩夢「サセ子…?なんですか?」
「知らんの?やば〜!」
「ウケる〜!なんですか…とかマジでウケるわ」
歩夢(2回も言うほどウケるの…?)
「マジで知らない?」
歩夢「ごめんなさい…無知で」
「サセ子ってのはね、金もらってやってあげんの」
歩夢「何を…?」
「エロいこと」 歩夢「え…えっ?」
「ヤらせてくれるんだよ。金払えばね」
「久々に見ても相変わらずエロい身体しててマジ宮下って感じだわ〜」
歩夢「あなたたち…愛ちゃんのことそういう目で見てたの?」
歩夢「最低…」
「だから、誘うのは向こうなの」
「宮下の方から、幾ら払えばヤらせてあげるよって言ってくんの。オヤジとかにね」
「最低なのはどっちかっていうと宮下の方だよ」
「こんなこと内緒にしてつるんでさ…」
歩夢「……ぐすっ」
「泣くくらいなら聞かなきゃよかったのに」
歩夢「泣いてない!」
「もっと話す?」
歩夢「…うん」
「いいよ、変なやつだけど君のこと嫌いじゃない」 それから私は、本当なのか嘘なのかわからない中学時代の愛ちゃんの話をいっぱい聞いた
中には…ううん、大抵が耳を塞ぎたくなるような話ばかりで聞いているのが辛かった
私には─想像もつかない世界にいたんだね 「でもあいつ、おばあちゃん子なとこは良いと思うよ」
歩夢「知ってる。だって、どこに行っても愛される人だから」
「あのさ…」
歩夢「うん?」
「なんつーか…ウチらも悪かったなって思うよ。本人の前で言って」
歩夢「反省してくれるなら嬉しいよ。でも、愛ちゃんは…」
「あいつあんなんだったけどさ、もしよかったら」
「この前も言ったけど、仲良くしてやれよ。これは本心だよ。宮下マジで独りだったから」
歩夢「わかった。今日はありがとう」
歩夢(ありがとうって言いながら、心の中で愛ちゃんの元同級生のことを恨む私、弱い人間だなぁ)
歩夢(愛ちゃん…)
歩夢(どうして…) 次の日、いつも元気な愛ちゃんが私の知る限り初めて欠席した
体調不良とだけ伝えられた
今日の同好会は、とても静かだった
知らないうちに下校時間になった かすみ「せんぱ〜い!帰りに寄り道しましょうよ〜!」
歩夢「かすみちゃん…」
歩夢「ごめんね、今日ちょっと用事があって」
かすみ「えぇーっ⁉かわいいかすみんより優先しなきゃいけない用事ですかぁ⁉」
歩夢「そうなの。また今度でいいかな?」
かすみ「仕方ありませんね…その代わり、次は一日中付き合ってもらいますから!」
歩夢「ふふっありがとう」
かすみ「ねぇしず子〜…」
歩夢「行かなきゃ…」
歩夢「愛ちゃんのおうち」 歩夢(確か学校から一駅の…)
歩夢(見慣れないお店の近くの…あっここだ!)
歩夢「愛ちゃんのおうち…初めて来た」
歩夢「なんだか緊張するなぁ…インターホン押すの」
歩夢(やっぱりやめようかな…)
歩夢(ううん、行かなきゃ!このままじゃダメなんだから!)
ピンポ-ン
「はーい?」
歩夢「あっ愛ちゃん?私だよ!歩夢!」
愛「来てくれてありがとう。どうぞ上がって」
歩夢「お邪魔します…」 あの金髪の白さ加減は3回はブリーチしないと無理よな
大変や 愛「ごめんね、心配かけて」
歩夢「ううん、いいの」
歩夢「体調悪そうじゃなくて何よりかな」
愛「嘘ついてずる休みしたってだけだから…」
歩夢「そんなこと言わないで。辛い時には休むことも大事なんだよ」
愛「……」
歩夢・愛「「あのね」」
歩夢「あ、先に言って」
愛「はは…ありがと」
愛「昔の事言われるの、やっぱり嫌…かな。ちょっと心にきたよ…」
歩夢「愛ちゃん…」
歩夢「私もね、言わなきゃいけないことごあるの」 愛「ん?何かな」
歩夢「実はね…」
歩夢「私、あの後愛ちゃんの同級生に会ってきたの」
愛「えっ⁉」
歩夢「ごめんね!勝手にこんなことして…本当に申し訳ないと思ってる」
歩夢「でもね、気づいたんだ」
歩夢「私は思っていたよりずっと愛ちゃんのこと知らなかった」
歩夢「だからこそ改めて思うの」
歩夢「愛ちゃんがいつも明るいのは、過去を乗り越えた強かさなんだなって。それって、スクールアイドルとして本当に素敵なことだと思う」
歩夢「愛ちゃん、頑張ったんだね」
愛「……‼」
愛「歩夢…」 愛「ダメだね愛さん!なんか久しぶりにあんまり思い出したくなかったもの思い出して、ちょっと重い想いを吐き出しちゃったね。おもいだけに」
歩夢「あ、珍しくキレキレだね」
愛「そっか。知ったんだね愛さんの…いや、宮下愛の秘密」
愛「もっと知りたい?アタシの秘密」
歩夢「…うん」
愛「明日から学校お休みだから、行こうか」
愛「昔のアタシの居場所へ」 歩夢「昔の居場所…」
歩夢「嫌じゃ…ないの?」
愛「うん。大丈夫!それにね」
愛「一度秘密を知った歩夢には、アタシのことぜーんぶ知ってほしいんだ」
愛「オッケー?」
歩夢「う、うん。オッケー」
愛「じゃあ決まりだね!集合場所どこにしよっか」
歩夢「ここでいいよ。愛ちゃんのおうちで」
愛「いいの?なんだか悪いね〜」
歩夢「いいの。一緒に歩こう?」
歩夢「昔の愛ちゃんの歩んだ道を」 歩夢(愛ちゃん、やっぱり強いな…)
歩夢(私に嫌な過去があったとして、もし誰かに知られたらああやって明るく振る舞えるのかな)
歩夢(それとも無理して笑ってたのかな…)
歩夢(ううん、そんなことはないはず。だったらまた昔の居場所に行こうなんて思わないよ)
歩夢(愛ちゃんのお部屋はヒョウ柄だったりピンクのものが多かったりして派手だけど可愛くて、同好会のみんなからしたら「愛さんらしい部屋」って感じると思う)
歩夢(だけどね、秘密を知っちゃうと気づくんだ)
歩夢(そんな愛ちゃんでも、未だに残る昔のクセが所々にあることに)
歩夢(話す時は手を前に組んで胸を寄せること)
歩夢(愛ちゃんが座ってて他の人が立っている時は必ず前髪押さえること)
歩夢(楽しそうに話す時は足のガードが緩いこと…) 帰ってから、また少し考え事をした
私のやれること、愛ちゃんの秘密にしていること
愛ちゃんの喜んでくれそうなこと
もしかしたらそんなことするのは傲慢な考えなんじゃないか…
ベッドに横たわりながら、ぐるぐると、同じような事を何度もぼんやりと考えていた
気がついたら目を閉じていた 歩夢(朝、決まった時間に起きられるようになったのは同好会のおかげかな)
歩夢(昨日、モヤモヤっとした事考えていたけど、眠れてよかった)
歩夢(ちょっと早いけど、準備できたら愛ちゃんのおうちに向かおう)
歩夢(おかしいな…仲の良い友達と遊びに行くってだけなのに、なんだか少しだけ緊張する…)
歩夢「目やにとか…ついてないよね?」
歩夢「行ってきます」
歩夢「いつもより少し長く鏡の前に立ってたから大丈夫、大丈夫…」 2日連続で友達のおうちに行くのはいつ振りなんだろう
道のりは同じなのに視界の情報が昨日とは全然違って見えてくる
ようやく辿り着いて、インターホンを鳴らす
「ごめーん!まだ準備中!入っていいよ!」
愛ちゃんの大きな声が聞こえた
元気そうで何よりだと思った
それと同時に「知らない人だったらどうするつもりだったのか」と問いただしたくなって愛ちゃんらしくて思わず笑みが浮かんでしまう
「お邪魔します…」
ああ、やっぱり。靴はどれも綺麗に揃って並んでいる 愛「おっはよー!ごめんね待たせちゃって」
歩夢「大丈夫だよ。どこにいるの?」
愛「こっちだよ、来て」
歩夢「……?」
歩夢「愛…ちゃん?」
愛「も〜どうしたの?そんな固まっちゃってさ」
歩夢「ちょっと…びっくりしちゃった」
歩夢「もしかして愛ちゃん…」
愛「えっへへ!びっくりしたっしょ⁉」
愛「大丈夫!カラートリートメントだから、すぐに落ちるって」
歩夢「すごい…こんなに印象変わるんだね」
愛「あははっまぁね!」
愛「ねぇ歩夢、一つお願いしていいかな?」
歩夢「いいよ、何かな?」
愛「今日は…アタシのこと“宮下”って呼んでよ」
歩夢「…行こっか、宮下さん」 歩夢「眼鏡…してたんだね」
愛「あ、これ?伊達メガネだよ。いい感じだったからすぐに買っちゃった。愛さん良いと思ったものには目がねー!なんつって!」
歩夢「話す感じはいつもと変わらないね」
愛「今はね」
歩夢「えっ?」
愛「多分…時間経ったら時期に前みたいな雰囲気になってるかも」
歩夢「そっか。ねぇ、最初はどこへ行くの?」
愛「ついてきて」
愛「行こう、数少ない昔のアタシの居場所の一つへ」 今年の仕事納めまで仕事が忙しくて書けないんだろうな
待とう 歩夢「図書館かぁ…こんなところにあったんだね」
愛「知らなかったでしょ?ここ、穴場なんだ」
愛「ぜんっぜん人いなくて、好きなんだよね」
歩夢「なんだか落ち着くね。あっ…でも、人少な過ぎて逆に落ち着かない気も…」
愛「わかる〜それ!」
愛「ね、テキトーに借りてちょっと読んでかない?」
歩夢「いいよ。じゃあ決まったらそこのテーブルで再会ね」
愛「オッケー!いや〜歩夢がどんな本選ぶのか楽しみだなぁ」
歩夢「そ、そんな大したチョイスではないと思うから…」 真剣な顔をして本を選ぶ愛ちゃんからは、いつもと違う雰囲気をより一層感じた
意外と普段から本を読む習慣があることは知っているのに
愛ちゃんには申し訳ないけれど、私は愛ちゃんの様子を見てから決めることにした
本を選び終えた愛ちゃんを見ていた時、一瞬目が合った
私は思わず目を逸らしたのに、愛ちゃんは何か誘い込むような眼差しでいた
そうだった。愛ちゃん、今日はあなたのことは宮下さんと呼ぶんだった… 愛「おっきたきた。思ってたより早く決めたね〜」
歩夢「うん、ある程度は決めておいたから」
愛「おおっやり手だね〜」
愛「それじゃあ何借りたか見せてよ!」
歩夢「はい、これ」
愛「……?」
愛「あれ…漫画?」
歩夢「ダメだった?」
愛「ううん、そんなことない!むしろ良いと思った!」
歩夢「ふふ、そう言うと思った」
歩夢「だからね、決めたの。借りた本交換しない?」
愛「お〜やろう!はいじゃあこれ、アタシの借りた本ね」
歩夢「ありがとう。面白そうだね!」
愛「でっしょー!じゃあ、読んじゃおうかな〜」
歩夢「ふふふっそれなら私も」 愛ちゃんの手に取った本のタイトル
『「いつものパン」があなたを殺す』…同好会のみんなを心配して選んだのかな
それとも、私やエマちゃんへの冗談なのかな
変わってるなぁ。とは思ったけれど、愛ちゃんらしいなと思う
読み終わって、まず、残念ながらやっぱり私はパンが身体に悪いとは思えなかった
でも、何か「かもしれない」ということを考えることの大切さだけはわかった気がする
こんな平坦な感想、愛ちゃん面白いと思ってくれるのかな
何か一つ、おかしなダジャレでも考えておこう… 愛「読み終わった?」
歩夢「う、うん。一応」
愛「感想は?」
歩夢「う〜ん…私は普通にパンを食べたいね…」
愛「あははっ!だよね〜」
歩夢「愛ちゃんは?感想、教えてよ」
愛「夏目友人帳、アタシ初めて読んだんだよね」
愛「燕のとこでアタシもう涙腺ちょちょ切れでさ〜!」
愛「ただね…感想の前に、まず漫画ってチョイスにびっくりだよね」
愛「質問を質問で返してごめんだけどさ、歩夢はどうして漫画にしたの?」
歩夢「それはね…後で教えるね」
愛「えぇーっ!?教えてくんないの?」
歩夢「しぃーっ静かに。人は少ないけど、一応図書館だよ?」
愛「あっごめんごめん」
愛「絶対教えてくれる?」
歩夢「うん、絶対」 まだ正午前、早めのお昼を済ませるために図書館を出る
読み終えた本を戻す時、愛ちゃんは困り顔をするも口元だけ少し笑っていた
それを見て私は心の中で勝ち誇ったような顔を浮かべる
次もこんな顔にしてやるぞと意気込んで 愛「うわぁ〜なーんか久しぶりに来た気がする!」
歩夢「お蕎麦屋さん…」
愛「意外だと思ってる?」
歩夢「うん」
愛「ここのお蕎麦についてくる漬け物が美味しくてさ〜!」
歩夢「そっち…なんだ」
愛「よーしお店入ろう!」
歩夢「宮下さんここに来るのはいつぶり?」
愛「…?あっ!えっとね、2年ぶりかな」
歩夢「ふふっそうなんだ。じゃあ結構楽しみだよね」
愛「そうかな。ね、そろそろ注文しようよ」
歩夢「そうだね。じゃあ私は…」 昼頃茸で再開
コミケ参加勢は天候に気をつけて
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