あやせ100％
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絵里「はあ」
夕暮れ時の誰もいない屋上で私はひとり下に広がる景色を眺めている
絵里「いい眺め、ほんと絵になるわ」
手元にビデオカメラがあればおさめたいぐらいだ
スマホの動画撮影では味気ないだろう
？「きゃーーー！」
絵里「え」
ドシン、と鈍い音がする
何かが突然上から降ってきた
？「あたたた……」
それはなんと女の子だった
大丈夫、と声をかけたがその子は慌てふためくばかり
絵里「ねえ、キミ」
？「ひゃああああ」
悲鳴を上げて彼女は去っていった
一体何だったのだろう
絵里「でもさっきの子、かわいかったなあ」
あんな子この中学校にいたかしら
あんなに綺麗なら噂になってもおかしくないはずだけど
その時、私の中で何かが弾けた
あの子を映像におさめたい
どうしても撮りたい
そんな欲求が芽生えて押さえられなかった 絵里「あら？」
女の子がいた場所から遠くないところに一冊のノートが落ちていた
絵里「忘れ物なのね。えっと、あった名前」
絵里「３年４組東條希……」
《翌日》
穂乃果「おっはよー絵里ちゃん」
絵里「おはよう」
海未「どうしたのですか、浮かない顔して」
絵里「ええ、実は――」
穂乃果「空から降ってきた美少女？」
海未「それはまた面妖な」
絵里「その子が落としていったノートを拾ったの。名前も書いてあったわ」
海未「誰ですか？」
絵里「３年４組東條希」
穂乃果「穂乃果たちのクラスじゃん。東條、そんな子いたっけ」
海未「うーむ」 絵里「東條さん」
希「え、あ、は、はい！」
東條希
とてもあの美人とは思えない少女だった
大きな黒縁メガネをかけ、長い黒髪を三つ編みにして両肩に垂らしている何とも地味な子だった
絵里「昨日、数学のノート落とさなかった？」
希「え、あ、あれ絢瀬さんが拾ってくれたの？」
絵里「ええ」
希「よかったあ。ずっと探してて見つからなかったんだ。ありがとう」
絵里「じゃあ返すわね、確かカバンの中に」
絵里「……あれ？」
希「まさか」
絵里「ごめん、忘れたみたい」
希「えー！」
絵里「で、でもいいじゃない、今日は数学ないし。明日は必ずもってくるわ」
希「あ、あのね絢瀬さん」
希「ノートの中身、絶対見ないでね」
絵里「え？ええ、分かったわ」 穂乃果「どうだった？」
絵里「あのノートはやっぱり東條さんのだった」
海未「では東條さんが絵里の言ってた美少女でしたか」
絵里「いや、似ても似つかないわ」
海未「では一体」
穂乃果「あーー！」
絵里「突然どうしたの穂乃果」
穂乃果「ねえねえ、絵里ちゃんが見たのって南ことりちゃんじゃない！？」
絵里「南ことり？」
海未「確かに、そんな美少女となると南さんしかいないかもしれませんね」
穂乃果「南ことりちゃんすごいんだよ！ほんとにかわいくて学校のアイドルって感じ！」
絵里「南ことり、そう言われてみればそんな気してきたかも」
穂乃果「でしょ！絵里ちゃんが見たのは南ことりちゃんだよ」
ことり「はぁい、呼びましたかぁ？」
海未「み、南さん！？」
ことり「えへへ、何でしょう」
穂乃果「ほら、絵里ちゃん」
絵里「え？ええ？」
海未「確かめてください」
絵里「あ、あの南さん。昨日屋上に行かなかった？」
ことり「屋上？うん、行ったよ」
絵里「あ、そう、そうなんだ、ありがとう、それじゃ」
ことり「？」 海未「やっぱり南さんでしたか」
穂乃果「どうするの絵里ちゃん」
絵里「私、告白する」
ほのうみ「へ？」
絵里「南さんに告白して付き合ってもらう」
絵里「そしてあの子をカメラにおさめる！」
海未「絵里……」
穂乃果「そんなむちゃな」
絵里「明日の放課後、決行する」
絵里「待ってなさい、南ことり！」 〈絵里の部屋〉
絵里「さて、東條さんのノートをカバンに入れてっと」
絵里「……」
絵里「中を見ないでと言われたものの」
絵里「そう言われたら見たくなるのが人のさがよね」
絵里「えい」ﾍﾟﾗ
絵里「うーん、特に変わったとこのない普通のノートじゃない」
絵里「ん？」
絵里「！」
絵里「こ、これは！」 《翌日》
絵里「……」
ｶﾞﾗﾗ
穂乃果「あ、絵里ちゃんおはよう」
絵里「おはよう」ｽﾀｽﾀ
穂乃果「ちょ、そんなに急いでどこ行くの！？」
希「あ、絢瀬さん、ノート――」
絵里「来て」ｶﾞｼ
希「え、ちょ、絢瀬さん！？」
〈屋上〉
希「どうしたの？」
絵里「東條さん……」
絵里「ハラショー！あなたすごいわ！」
希「え？」
絵里「このノートのこのオカルト小説！」
希「ええ！？ノート見ちゃったの！？」
絵里「もう夢中で読んじゃったわ。すごい才能よ」
希「き、気味悪がらないの。そんなもの書いてて」
絵里「どうして？すごいことじゃない！」
希「絢瀬さん……」
絵里「ねえ、ほかには書いてないの？あったら見せて！」
希「こ、これしかなくて」
絵里「そう、じゃあ新作は？できたら教えてね」
希「う、うん」
絵里「あ、そうだ、ついでだから訊くね」
絵里「東條さんはどんな告白されたら嬉しい？」
希「こ、告白！？うーん」
希「運動しながらとかどうかな。運動得意な人はモテるし」
絵里「運動……そっか、ありがとう！」 《放課後》
穂乃果「絵里ちゃん、本当にやるのかな」
海未「南さんを呼び出していましたし」
海未「それにしてもどうして絵里は鉄棒の前にしたのでしょう」
穂乃果「来た！南ことりちゃんだ！」
ことり「〜♪」
海未「絵里の姿がまだ見えませんが」
穂乃果「あ！見て！」
絵里「うおおおおおおお！南さあああああん」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ
ことり「ぴいっ！」
穂乃果「絵里ちゃんが走ってくる」
絵里「せい！」ｶﾞｼ
海未「今度は鉄棒にぶらさがった！？」
絵里「ふん！ふん！」
穂乃果「なにあれ……」
海未「懸垂でしょうか……」
絵里「南…ふん！……ことりさん！」
絵里「好きよおおおおお！」
絵里「私と、付き合ってくださあああい！」
ことり「……」
穂乃果「ちょ、ドン引きされてない！？」
海未「そんな告白の仕方がありますか！？」
絵里「はぁ、はぁ」
ことり「……ぷ」
ことり「あは、あはははは」
ことり「いいよ、付き合おう」
絵里「え？」
ことり「じゃ、一緒に帰ろ」
そう言って告白相手は私の手を握った
絢瀬絵里、初めて恋人をつくった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
