善子「ねぇ、運命ってあると思う?」
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花丸「急にどうしたずら」
ルビィ「占い? 黒魔術?」
善子「ふと思ったのよ」
花丸(そうつぶやいた善子ちゃんは)
花丸(少し気怠そうに突っ伏していた体を起こして、ぐっと伸ばす)
善子「恋愛の話になると、運命の相手って言葉が出てくることがあるし」
善子「感動系の生死に関わることにも、これは運命だから。みたいなことって偶にあるでしょ?」
花丸「うん」
善子「でもさ、運命ってどこからが実際に運命なんだろうって思ったわけ」
ルビィ「?」
花丸(難しい話だと察したのか)
花丸(少し顔を曇らせながらルビィちゃんは首をかしげる)
花丸(それを見て、善子ちゃんは例えば……と返されたばかりの小テストを見せてきた) ルビィ「わぁっ48点っ!」
花丸「………」
花丸(50点満点の小テストで、48点)
花丸(実際のテストに近い内容で行われる小テストと言うだけあって、その点数は十分に良い部類で)
花丸(それの自慢がしたかったのかな。と、何となく思って目を逸らす)
花丸(……マルは、40点だった)
花丸「それがどうしたずら?」
善子「このテストに運命を当てはめるとしたら?」
花丸「絶対に間違える運命とか?」
ルビィ「良く分からないけど、花丸ちゃんと同じ……かな」
善子「本当に?」
善子「じゃぁ、私がこのテストを受けるのを避けたら?」
善子「運命であるはずのテスト結果は絶対に間違える。から、0点になると思わない?」 ルビィ「た、確かに……」
花丸「でも、小テストを受けなかった理由にもよるけど」
花丸「放課後に再テストを受けさせられることがあるずら」
花丸「もしもテスト結果が間違えることに収束するのだとしたら」
花丸「善子ちゃんは再テストを受けることになって、そこで間違えるんじゃないかな?」
善子「……なるほどね」
善子「結果が運命であるなら、私の行動に関わらずテストを受けることになって」
善子「私はそこで失敗することになるってわけね」
ルビィ「???」
善子「じゃぁ、間違えるという結果を知っているうえでその対策をしていたらどうなる?」
善子「それでもテストを間違えるって結果は変わらない?」 花丸「変わらない」
花丸「だって、それを知っていて勉強を頑張ったとしても」
花丸「時間切れでの回答不足、誤字脱字」
花丸「間違える。というものではないにしても、満点を取れないと言う結果に収束することは出来る」
善子「でもそれだと間違える運命ではなくなるんじゃないの?」
花丸「そもそも間違える運命ではなく、満点を取れないという運命かもしれないずら」
花丸「……今みたいな思い込みが、その結果に収束する可能性もあるずらよ?」
善子「何よ。脅してんの?」
花丸「別に」
花丸(マルよりも点数の高い小テストをひらひらと振った善子ちゃんは)
花丸(にやっと笑って、ため息をついた)
善子「本題に戻るけど、ずら丸はどこからが運命だと思う?」
花丸「テストで考えるなら、テストを受ける。という過程からかな」 花丸「テストを受けるっている前提がなければ」
花丸「テストで満点を取れない。という結果に収束することは出来なくなっちゃうからね」
善子「まぁ、そうでしょうね」
花丸(善子ちゃんはなぜか不満そうで)
花丸(話についていけないからと)
花丸(机に突っ伏したルビィちゃんを一瞥する)
善子「じゃぁルビィがこれからダイヤに怒られることになる運命だとして」
ルビィ「えっ!?」
善子「それを回避する方法ってあると思う?」
花丸「怒られる理由は?」
善子「んーそれは不明」
善子「ただ、テストのように”怒られる”という結果に収束する」 ルビィ「それじゃ情報が少ないよぉ」
花丸「これから起こることなら、漠然としていても仕方がないずら」
花丸「むしろ、”怒られる”結果があるという前提で考えられることを有利に考えたほうが良いよ」
花丸「怒られることは結果だけど、それは未来だから結果なのであって」
花丸「過去のマル達が考えるのなら、それは前提条件として考えの材料にすることが出来る」
ルビィ「も、もう少し分かりやすく……」
善子「プリンを食べることに変わりはないけど、プリンが食べられる。という未来を知ってる感じ」
ルビィ「それは嬉しいねっ!」
花丸(ニコニコとするルビィちゃん)
花丸(ちらっと見るとわくわくしてるのが分かって、思わずほころんでしまう)
花丸「怒られる結果が分かってるなら、怒られない結果を用意するのはどうずら?」 花丸「例えば、怒られる理由を考えて」
花丸「思い当たる点を正直に話して、お詫びの気持ちを用意する」
善子「無理ね」
善子「思い当たる点を口にした結果、そんなこともしていたの? という流れがうまれて」
善子「それによって”怒られる”という結果に収束するはずよ」
花丸「確かに」
ルビィ「ルビィはそこまで悪いことしてないよっ!?」
花丸「そうずらね」
善子「でも、些細なことで怒られるかもしれないでしょ」
善子「例えば、ダイヤが少し不機嫌で癇に障ったりしてね」
ルビィ「お姉ちゃんはそんな短気じゃないもん」
花丸「あくまで例えだよ。例え」 花丸「善子ちゃんは何を考えたいずら?」
花丸「運命が何を過程として結果に収束しようとするのか?」
花丸「それとも運命を避ける方法?」
善子「両方」
善子「でも、気になってるのはどこを起点としてその運命が生じるのか」
善子「ずら丸が言うように、テストという過程がなければ、満点を取れないと言う結果は必然的に生まれないわけだけど」
善子「じゃぁ、その満点を取れないという運命はいつ定まって、テストを受けるという過程を欲するんだと思う?」
花丸「大雑把に捉えていいのなら、学生を経験する。という根本的かつ必然的な事象」
花丸「マル達は高校生で、義務教育を過ぎてるからそれは確定ではないけれど」
花丸「義務教育と同等であると考えられておかしくない高校生でのテストと言うのは」
花丸「マル達が生きていく上での運命だととらえてもいいと思うずら」 善子「スケールが大きすぎるんじゃないの?」
花丸「でも、それこそが運命だと言えるんじゃないかな?」
花丸「絶対に避けることのできない原因と結果」
花丸「だからこそ、その避けようのない収束を運命とすることで」
花丸「それが悪いことであるのなら、諦めるための条件にするずら」
善子「そう……」
善子「まぁ、そんなものかぁ」
花丸(少し難しい顔をして)
花丸(どこか納得がいかないと言うような雰囲気で)
花丸(善子ちゃんは諦めたように笑う)
善子「でもそういう絶対に無理だってものに抗ってみたいとか思わない?」
花丸「犯罪でも犯すつもりずら?」
善子「まさか」 善子「ヨハネ的には、そういう大きな――」
花丸「はいはい」
善子「何よその反応っ!」
花丸「凄いずらねぇ〜」
善子「赤ちゃんに話すような言い方止めてっ!」
花丸(よしよしと、何もない場所を撫でる素振りをすると)
花丸(善子ちゃんは怒ったように言う)
花丸(難しい話だとポヤポヤしていたルビィちゃんも)
花丸(怒っているようで怒っていない善子ちゃんの反応には、嬉しそうだった)
善子「今に見てなさいよ」
善子「このヨハネが大いなる偉業を成し遂げて見せるんだから」 花丸「はいはい」
花丸「せっかく練習お休みなんだから、帰るずら」
善子「………」
善子「せっかく練習休みなら、明日土曜日だし家に来ない?」
花丸「え?」
花丸(さりげなく)
花丸(席を立ちながらの自然な誘いに、思わず聞き返してしまう)
花丸(明日休みだから、今日来ないか)
花丸(その前提あっての誘いは……)
花丸(嬉しいけど)
花丸「今日は用事があるから無理ずら」
善子「……そっ」
善子「用事があるなら仕方がないわね」 ルビィ「花丸ちゃんおうちの手伝いがあるんだよね?」
ルビィ「ルビィ達も手伝えたら良かったんだけど……」
花丸「さすがにそんな迷惑はかけられないずら」
花丸「檀家さん達もいるから大丈夫」
花丸(申し訳なさそうなルビィちゃんに首を振る)
花丸(お寺であるマルの家には、仏像などが置いてあって)
花丸(毎日手入れしているとはいっても)
花丸(日に日に痛んでいくから、手入れをしようという話になって……)
花丸(でもさすがに、ルビィちゃんたちの手は借りられない)
花丸「その気持ちだけで嬉しいずら」 善子「――そうだ、ずら丸」
花丸「?」
花丸(善子ちゃんは少し口元を絞めると)
花丸(マルのことを見て、はにかむ)
花丸(言いたくても言えないことがあると示す谷の眉に目が移る)
善子「さっきの話の続きなんだけど」
花丸「運命の話?」
善子「それ」
善子「ずら丸は運命って、信じてたりする?」
花丸「さぁ? どうだろう」
花丸「あると思っているし、ないとも思ってるずら」
花丸「だって、本当に運命というものがあるのなら、”今の”マル達にそれを認識することは出来ないはずだから」 ルビィ「あるのにないの?」
花丸「うん」
花丸「だって、運命は過去ではなく、未来のことに当てはめるものだから」
花丸「”今の”マル達が運命だって言えるのは返された小テストや、善子ちゃんが筆箱を忘れたことに対してしかない」
花丸「つまりは、過去の事象にのみ、あれは運命だったんだ。と言える」
花丸「善子ちゃんが最初に言ってたことだけど」
花丸「感動系の”運命なんだ”や、恋愛物の”運命の出会い”はあくまで、起きた結果に対してそう捉えただけ」
花丸「未来におこることに関しては”推測”であって、”運命”じゃない」
ルビィ「えっと、うん?」
花丸「つまり、”結果として確定していない事象”は、運命と断定することは出来ないってことずら」
ルビィ「でも、お姉ちゃんが怒るって話は?」
善子「あれはあくまでたとえ話よ。私達がその結果を知っているという前提での話」
善子「結果を知ってる……つまり認識してると言う仮定で、運命であるとしてただけ」
善子「つまり、花丸は運命を信じてないってことで良い?」 花丸(なぜか食い下がる)
花丸(その善子ちゃんからはごり押しするような空気が感じられた)
花丸(運命があると言わせない。そんな雰囲気)
花丸(だからあえて……首を振る)
花丸「あると思ってるずら」
花丸「善子ちゃんの不運は、もはや運命レベルだから」
善子「っ」
善子「……まぁ、そうかもしれないわ」
花丸「?」
花丸(不服そうに)
花丸(でも、善子ちゃんは反論することなく頷く)
花丸(振り返る背中からは、少しだけ失望が感じられた気がした) ――――――
―――
―
花丸(運命を気にする善子ちゃんのことが少し気がかりなまま、吸う時間)
花丸(おうちの手伝いもひと段落して、戻ってきた部屋で一息つく)
花丸(善子ちゃんと違って)
花丸(雑学と言うべきか、専門書と言うべきか)
花丸(今読みたいオカルト関連のような話題の載っている本は手元にない)
花丸(仕方がなく、なんとか繋がる携帯で検索する)
花丸「……運命」
花丸(運命:人間の意志にかかわらず、身にめぐって来る吉凶禍福。めぐり合わせ。転じて単に、将来)
花丸(検索してすぐ出てくる一文に目を通す)
花丸(運命とは天命であり、人間の抗える領域には存在しない確定した事象)
花丸(避けることも変えることも叶わず、絶対に通らなければならない)
花丸(線路が人生、電車が自分)
花丸(運命は電車の停まる駅のようなもの) 花丸(いろんな人の意見や、考え)
花丸(色々めぐって、考えてみて)
花丸(偶像的な運命の存在に、頭が痛くなっていく)
花丸「つまりどういうこと。って、言いたくなるずら」
花丸(話についてきていなかったルビィちゃん)
花丸(何となくその気持ちが分かったと)
花丸(ちょっぴり申し訳なく思って、携帯の電源ボタンを軽く押す)
花丸(暗くなった板のような携帯をベッドにほっぽって、一息)
花丸「考えるのはやめた」
花丸(ここから先は泥沼だと)
花丸(嫌な予感がして考えを振り払ってベッドから起き上がる)
花丸(少し皺になったスカート)
花丸(そのファスナーを降ろした瞬間、部屋のドアが開いた) ――――――
―――
―
朝
花丸「けほっけほっ」
善子「……おはよ」
花丸「ぅー」
花丸(元気のない善子ちゃんに、唸って答える)
花丸(朝起きた時点で痛みのあった喉)
花丸(熱を測っても平熱で健康、風邪でもなさそうだと登校してきたは良いけれど)
花丸(やっぱり辛くて、早退を考えながら善子ちゃんに目を向ける)
善子「辛そうね。風邪?」
花丸「の゛どがいだい」
善子「……なるほど」
善子「そういうことか」 花丸(何かを納得したかのような反応を見せた善子ちゃんは)
花丸(少し申し訳なさそうに顔を顰めて、自分の鞄をあさる)
善子「これでも使っとく?」
花丸「……?」
花丸(喉に良いお薬のようなやつ)
花丸(箱から出したばかりの新品)
花丸(それを使うのは……と首を振る)
花丸「よ゛く持っでたね」
善子「色々あるから常備してるのよ」
花丸(ほかにもいろいろ)
花丸(そう言いながら、善子ちゃんは鞄の中からたくさんの薬を出して机に並べた) 一旦ここまで、寝ます
朝からやるべきだった落ちたらまた今度 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています