無知なフリをしてキスしてもらおうとするルビィvs魔力供給と称してキスしようとする善子
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ルビィ「………」
善子「………」
ルビィ「…えっと、具合は、どう?」
善子「…ああ、うん。朝よりはだいぶマシになったわね。でもまだ全然よ。喉は痛いし寒気はするし脚もダルい」
ルビィ「そうなんだ……ごめんね、ちゃんと休まなきゃなのに、お邪魔しちゃって」
善子「いいのよ、気にしないで」
ルビィ「………」
善子「………」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) ルビィ「…あ、そうだ。おみやげにアイス持ってきたんだ。下でお母さんに渡したから、あとで食べてね」
善子「…ん。ありがと」
ルビィ「………」
善子「………」
ルビィ「…あ、あとこれ。今日の練習で、フォーメーションがちょっと変わったから。そのメモね」
善子「ああ、わざわざありがとう。後で確認しておくから、そこの机の上に置いといて」
ルビィ「あ、うん」
善子「………」
ルビィ「………」 善子(……会話が、続かない)
善子(──ここ数日、私たちは顔を合わせれば、ほとんど真っ先に例の行為に及んでいたから)
善子(お互い、距離感が分からなくなっているのかもしれない)
善子(互いの距離が突然、ゼロ距離レベルに近付いて。なまじそのままで数日を過ごしてしまったものだから)
善子(もう感覚が麻痺してしまって、どこまで離れれば「自然」な距離になるのかが、分からなくなっているんだと思う) 善子「………」
ルビィ「………」
善子(……居心地の悪い沈黙)
善子(以前はもっと、なんてコトのない、とりとめのない話ばかり飽きずにしていて。話題を探す必要なんて、なかったはずなのに)
善子(なんで? どうして? 誰のせいで?)
善子(──胃のあたりが、もやもやして、ふつふつして、ぎゅーっとなる)
善子(吐き気とは違う感覚。私はこの感覚を知っている。これは──)
善子(……怒り、だ) 善子(出所の分からないそれは、私の中で少しずつ、少しずつ、為すがままに膨らんでいく)
善子(なんとかしてそれを抑え込もうと、両腕で腹部を抱えた途端)
善子(背中から覆われるような寒気が全身を走って、私は思わず身じろぎした)
善子「んっ…んん」
善子(…ハッとした。しまった、と思った。こういうことには目ざといルビィが、それを見逃すわけがなかった)
ルビィ「! どうしたの善子ちゃん!? 寒いの!? どこか痛むの!?」ガタッ
善子「…正直、平気とは言えないけど、大丈夫よ。ちゃんと暖かくしてるし、このまま寝てればそのうち治まるわ」
ルビィ「でも…」
善子「大丈夫。…大丈夫だから」 ルビィ「………」
ルビィ「……」ソッ
善子(頰に添えられる、ルビィの右手。少しひんやりしているように感じるのは、外が季節外れの寒さだからなのか、私の顔が熱を持っているからなのか)
善子「…ルビィ…?」
善子(言うが早いか、ルビィはもう一方の手も私の首元に添えると)
善子(ゆるく目を閉じ、そのまま私の方へ顔を近付けて──)
善子「ちょ──何してんのよアンタっ」
善子(思わず、ぐい、と。ルビィと私との間に、腕を割り込ませてしまう) ルビィ「何、って…魔力の供給だよ」
善子(そう言っている間も、ルビィの両手は私に触れたまま、離れない)
善子「アンタねえ、魔力を分け与えられるだけの余裕が、今の私にあると思う? もう少し考えて──」
ルビィ「違うよ」
善子(ぴしゃり、と。ルビィは静かに、言葉を放つ)
ルビィ「ルビィが、あげるの。ルビィの魔力を、善子ちゃんに」
ルビィ「ルビィにそんな事ができるのか、分からないけど。ルビィの魔力が無くなったら、どうなっちゃうのか、分からないけど」
ルビィ「でも、いいの。もともとは善子ちゃんのものなんだし。それに」
ルビィ「いつも、貰ってばかりだから。こんな時くらいは──善子ちゃんの役に、立ちたいんだ」ニコッ 善子(──ぷつり、と)
善子(身体の中のどこかで、そんな感触がした)
善子(よく言われてる、糸が切れたようなそれではなくて)
善子(たとえば、どろどろした液体をいっぱいに詰めたビニール袋に、小さな針で穴を開けたみたいに)
善子(ゆっくりと、着実に、じわり、とろりと、中身が染み出して、漏れ出していくような──そんな感覚)
善子(私はもう、その穴を塞ぐ気なんて、更々なかった)
善子(流れ出ていく、この感情の矛先は、どこ?)
善子(目の前にいる、あの子?)
善子(違う)
善子(──私だ) 善子「…………嘘よ」ボソッ
ルビィ「嘘じゃないよ? ルビィは──」
善子「違うわよ!」
ルビィ「っ!?」ビクッ
善子「嘘をついてるのは私! 魔力が足りてないって話もそう! 私が魔力を供給しないといけないって話もそう! キスじゃないと魔力を供給できないって話もそう! 全部ぜんぶ出任せのデタラメよ!」
善子「でも貴女はまんまと信じた! あろう事か私に相談を持ちかけてきた! だから利用したのよ!」
善子「それでも貴女が疑うそぶりも見せないから! 私は何度だって貴女の唇を奪った! 貴女を穢した! 何度も! 何度も! 何度もッ!」 善子「…はーっ、はーっ……」
善子「……そこまでしてでも、私は貴女とキスがしたかった。歪な手段でも、とにかく貴女に触れたかった。貴女が欲しかった。私は貴女を──貴女が──…」
善子「………」
善子「…もう分かったでしょ。私は最低な奴よ。自分の想いが伝えられないからって、その相手を騙して、欺いて、自分だけ愉悦を得ようとする人でなし」
善子「その人でなしが、自分は主だの、貴女はリトルデーモンだのと──笑っちゃうわよね」
善子「私には、貴女の主である資格なんて──ううん、こんなおままごとに、貴女を付き合わせる権利なんて、何一つ持ってないの」
善子「だから──私は、堕天使ヨハネの名の下に、ここに宣言するわ」 善子「黒澤ルビィ。現刻を以て、貴女からリトルデーモン4号の御名を剥奪……いいえ」
善子「貴女を、この愚かな堕天使の呪縛から──っ解放、しますっ…」
善子(…声が、震える)
善子(ああ、ダメだ、限界だ)
善子(こんな顔、ルビィには見せたくないから)
善子(私は布団を、顔まですっぽりと被った)
善子(ああ、なんて──あたたかい、闇)
善子「………契約、解消よ」 その状況でそんな突き放すようなこと言ったって全然不安にならんな!
だってもう元4号にしっかり捕まえられてる状態だからな! たこやきは乗っとったらシリアスかかなきゃ死ぬ病でも患ってるのだろうか 人のフリをした豚国木田花丸ははよAqoursから消えろ 善子「……もう用は済んだでしょ」
善子「…帰って。…悪いけど」
ルビィ「………」
善子(自ら視界を塞いだ私の耳に)
善子(ルビィの返事は、聞こえてこなくて)
善子(代わりに、すっ、と)
善子(あの子が立ち上がる、気配がした) 善子(…あの子は、落胆しているだろうか。それとも呆れているだろうか)
善子(けれど、それでいい。それがいい。そういう感情を向けてくれたほうが、私も気が楽になる)
善子(──花丸には、なんて説明しよう)
善子(明後日から、あの子とどう接すればいいだろう)
善子(私は、これからどうやって、あの子に──)
バサッ
善子「───」
善子(視界に、光が射す)
善子(力任せに剥ぎ取られた布団が、あの子の背後でバタバタとはためく)
善子(柔らかな窓明かりを背に立つ、あの子は)
善子(赤髪の──天使?)
善子(違う。あの子は──)
善子(…小悪魔、だ) ルビィ「──知ってたよ」
ルビィ「……知ってたよ! 全部!」
ルビィ「いくらルビィだって気付くよ! 魔力は揮発性だとか水に溶けやすいとか! 口の中には魔力がいっぱい溜まってるとか! へったくそな嘘ばかりついてさ!」
ルビィ「そのくせ変にマジメで! ルビィからちょっかい出さないとその気になってくれない! 花丸ちゃんが言ってたとおりだよ! このヘタレ堕天使っ!」
善子「んなっ…!? ア、アンタねえ──」
ルビィ「でも! でもね! それでもルビィは善子ちゃんの誘いに乗ったんだよ! 騙されたフリをしたの! だってルビィもキスしたかった! 善子ちゃんとキスしたかったから!」
善子「………!」 ルビィ「……ね? 分かったでしょ? ルビィ、こんなに悪い子なんだよ? 善子ちゃんが嘘ついてるのを知ってて、騙されたフリをするような──善子ちゃんよりも、ずっとずっと悪い子なんだよ」
ルビィ「……善子ちゃんのせいだよ? 善子ちゃんのせいで、ルビィ…こんなに、悪い子になっちゃったんだよ?」
ルビィ「正しいコトしか知らなかった、真っ当なコトしか教えられてこなかった、"いい子"だったルビィを──善子ちゃんが、悪い子にしちゃったんだよ!」
ルビィ「善子ちゃんが教えてくれるのは、ドキドキすることばかりで! ハラハラすることばかりで! あんなの知っちゃったら、もういい子のままじゃいられないもん!」
ルビィ「責任とってよ! もっと色んなこと教えてよ! そんな簡単に離れようとしないでよ! まだ、善子ちゃんの、リトルデーモンで…いさせてよ…! だから、だからっ…!」
ルビィ「…契約…解消とかっ、いわないでよお……」ボロボロ ──アンタも、変わってるわよね。
──? なにが?
──自分で言うのもアレだけど、勝手にリトルデーモンとか妙な設定付けられてさ。イヤじゃないわけ?
──イヤじゃないよ? カッコいいもん!
──…カッコいいって言われたのは、初めてだわ。
──そうなの? カッコいいのに。 善子(……私は、ルビィの何を見ていたのだろう)
──ルビィね、前から憧れてたんだ。
──ん? …ああ、リトルデーモンの話?
──……うん。…そうだよ。 善子(何を、恐れていたのだろう)
──そんなに気に入ったのなら、もっと上の階級にしてあげるわよ? ビッグデーモンとか。
──ううん。今のままがいい。
──…欲がないわね、アンタ。
──……そんなこと、ないよ。 善子(……どうして、忘れていたのだろう)
──だって、善子ちゃんが最初にくれた名前だもん。 善子(あの子は、最初から、言っていたじゃないか)
だからね、ルビィは、これからも──
ずっと、善子ちゃんのリトルデーモンだよ。 ルビィ「──ねえ、善子ちゃん」
善子「なに」グスッ
ルビィ「契約って、もう一度やり直せるかな?」
善子「当たり前よ。堕天使は来る者を拒まない主義なんだから」
ルビィ「ふふっ、良かった」
ルビィ「……あと、もう一つ、いいかな?」
善子「なによ」
ルビィ「…ちょっと、苦しいかなー、って」ギュウウ
善子「…ごめん」
善子(謝りつつも、私は抱きついた腕を緩めなかった)
善子(こんな顔、ルビィには見せられないし──それに)
善子(これから伝えること、とてもじゃないけど──面と向かってなんて、言えないもの) ……………
………
…
花丸「──わあ! じゃあ、ちゃんと告白してもらえたんだね! おめでとうずら〜!」
ルビィ「えへへ〜♪」ブイッ
花丸「このこの〜幸せ者めえ〜♪」ツンツン
ルビィ「えへへえ〜♡」ニマニマ
花丸「それでそれで、ぶっちゃけた話どこまで進んだずら〜?」ニヤニヤ
ルビィ「え? どこまでって、何が?」
花丸「またまたあ〜♪ キスよりももっとドキドキハラハラしちゃうコト、善子ちゃんに教えてもらったりしちゃったんでしょ〜?」ニヤニヤ
ルビィ「してないけど…」
花丸「は?」
ルビィ「してないよ? キスしか」
花丸「………」
ルビィ「………」
花丸「……あンのドヘタレ堕天使がァァァ〜ッ!」ガッタァァァァ!
ルビィ「花丸ちゃん落ち着いて! 図書室! 図書室だからー!」 おしまい。
お読みいただき、
ありがとうございました。 めでたしめでたし
国木田花丸は屠殺されてミンチにでもなってろ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています