ルビィ「ルビィのむかしばなし」
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ルビィにはお姉ちゃんがいます。
お姉ちゃんはルビィのお姉ちゃんなので、
当然お姉ちゃんはルビィが生まれた時からずっとルビィのお姉ちゃんなのです。 小さい頃──それも、うんと小さい、4.5歳ごろの、かすかに覚えている切れ切れになった光景の中にはいつもお姉ちゃんがいました。
お琴をしているお姉ちゃん。踊りをしているお姉ちゃん。
そういう記憶の断片や、お母さんたちに聞いた話から考えると、
その頃のルビィは家にいる間はお姉ちゃんにべったりだったようです。 それらの光景を思い出してみたら、お姉ちゃんがお琴を奏し、踊りを舞うと先生がにっこりと微笑んでいました。
そして、お姉ちゃんが学校から持って帰ったテストや通信簿をお父さんとお母さんに見せると、これもまた2人を喜ばせるのでした。
何かをすると周りの人が喜ぶようなお姉ちゃんはルビィの憧れでした。
そして、ルビィもお姉ちゃんのようになれると、その頃は信じて疑ってなかったのです。 ルビィは小学校に上がり、
当然マルちゃんとも同じクラスになって、
多少の環境の変化はあったものの楽しく過ごしていました。 それは梅雨の季節でした。
その日はバケツをひっくり返したような雨だけでなく、
地面を鳴らすような雷が落ちている
恐ろしい日だったのでよく覚えています。
ルビィはその日、
お姉ちゃんが七五三で着ていたようなお着物を着て、
初めての習い事を受けました。
その時のルビィはただただ外の様子が恐ろしくて、
先生の言う事なんて耳に入らず、
その日のお稽古は途中で切り上げになりました。
今考えてみると、
これはルビィのこれからを暗示していたのかもしれません。 その日を境に、ルビィの生活の中心は、お稽古に変わってしまいました。 それまでは、よくマルちゃんのお家に遊びに行って
おやつを食べさせてもらったりしていたのですが、
そんな暇もなくなったし、
お稽古の時間が宿題をする時間を押しやって、
結果として本を読んだり、自由に使える時間が少なくなったのです。 それにお稽古の時間は
どうしてもカチコチに緊張してしまうものだから、
一日中時計を見ては、
あとどれくらいでお稽古の時間だ、
と気になってしまい、
ずっと気が滅入ってしまい
学校でもぼんやりしてしまうことが多くなりました。
そうしたら、宿題にも時間がかかってしまい、
息抜きに使える時間が減っちゃう。
また気が滅入ってぼんやりしちゃう。
こうしてルビィはだんだんと
生活を回すことが難しくなってしまいました。 その頃のルビィは、そのようなストレスをアイドルに癒してもらいました。
沼津の本屋で買った雑誌の中のアイドルは
当時のルビィとは正反対に
キラキラと晴れるような笑顔をしていました。
大好きだったアイドルに、
更に憧れを抱いたのはこの時が初めてかもしれません。
この子のようになりたい、強くそう思いました。 それからしばらくして、
気づいたことがあります。
お稽古の最中にルビィはもたついてしまうことがあり、
その度に一旦中止してしまうのです。
だからといって強く怒られたりすることはなく、
優しく "それではもう1回今のところをやりましょう" と言われます。
そういう先生の顔は微笑んではいるものの、
少し眉を下げて困ったような表情をしていたことを子供ながらに覚えています。 お稽古の先生だけではありません。
学校の先生も、
よく家に来る大人の人たちも。
みんなルビィに向かって
同じような表情をするのです。
みんな、お姉ちゃんのことを知っていて、
そして口を揃えたような心の声が聞こえるのです。 それだけではありません。
海の日のころ、1学期の終わり。
ルビィに渡された通信簿が良いものではなかったことくらいは
当時のルビィにもわかりました。
学校に入る前、お姉ちゃんがお母さんたちに見せていた通信簿には、
枠の左側の1列一直線に丸が並んでいました。
ルビィが手にしているものには
ガタガタの不格好の模様がスタンプされていて、
いくつかは『がんばりましょう』の列にもありました。
それを見てルビィはあぁ、怒られてしまう、
と死んでしまいそうな気持ちになりました。 家にも帰りたくなくて。
それでもお稽古の時間までに帰らないと怒られてしまうから。
せめてもの抵抗でギリギリの時間に家へ帰り、
そのままお稽古に行きました。
そんなことをしてもただの問題の先延ばしであって、
お稽古の最中も、終わらないで、
と思いながら、気分は最悪に沈んでいました。 お稽古が終わったあとも
コソコソと逃げるような真似をしていたのですが、
そんなことが通じるわけがなく、
結局お母さんに通信簿を見せるように言われました。
ルビィはどうすることもできずに半べそをかいて手渡しました。
当然、お母さんの顔なんか見ることはできません。
ただ、涙を堪えながら床を眺めるだけなのでした。 お母さんは『ルビィ、学校は頑張ったの?』と言ったのですが、
ルビィにはそれが怒られていて言われたのか分からず、
どう答えるのかも分からずに泣いてしまいました。
お母さんはルビィを抱きしめて撫でてくれました。
その様子を見かけたお姉ちゃんもルビィの背中を撫でてくれました。
2人とも、あの困った表情はしてませんでした。 その事はたしかに嬉しかったのですが、
学年が上がってもルビィの成績も良くなることはなく、
お稽古の飲み込みも良くなるわけでもなく、
ルビィはいつまでも劣等生のままでした。
一方でお姉ちゃんはクラスで成績もトップクラスだし、
中学校に上がって生徒会にも入ったりして
とにかく立派な人でした。
年を重ねるにつれてシッカリしていって、
人に期待されいくお姉ちゃんを見ていると
ルビィの存在がどんどん暗く見えてしまいます。 6年生冬も終わりかけ
春が訪れようとする季節のことです。
ルビィは酷く怒られました。
そのころ一番大好きだったスクールアイドルの子も卒業する季節で、
そのせいでグループが解散するというそんな時期でした。
どうしても情報を逃したくなくて、
その時期は学校の調べ学習だとか
適当な言い訳を並べてパソコンに張り付いたり、
CDを買ったり。
配信のためにお稽古をズル休みすることもありました。
その一連のことがお母さんにバレたのです。 別に、怒られることは慣れっこです。
今までに夜にテレビを見たり、
そんなことで怒られることは山ほどありました。
その日、たまたまお母さんの虫の居所が悪かったのでしょうか、
今となっては分かりえないことですが、
それはもう酷く怒られました。
今までどれだけ我慢したかと言わんばかりに、
前からもああだった、こうだったと
色んなことを言われました。
それを言ったらルビィだってそうです。
クラスの子はテレビだって見て、
前の日に見たドラマの話とかをしてるのに、
ルビィはその話に交じることができません。
マルちゃんのようにそうなりたくてそうなったわけじゃないのに。
友達と遊ぶ時間だったり、
自分の好きなことに使える時間を割いて
お母さんたちに言われたことをずっとずっと我慢してやってきたのです。 むかしむかしあるところに、ルビィちゃんとダイヤちゃんがおった pixiv小説に同じタイトルで載せてるぞ
説明文にエタったって書いてるからここに続きを投下する気はなさそうだ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています