鞠莉「ライフイズビューティフル」
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……風の音だけが聞こえる。
人の声は聞こえず、ただただ自然から発生する音だけが耳に入り、目を開ける。
鞠莉「……あれ」
どこでもない、木の下で私は目を覚ました。
鞠莉「……私、何をしていたんだっけ」
思い出そうとして見ても、何も頭には浮かんでくることはなかった。
見渡すと、錆びた自転車、広がる自然。遠くには真ん中が抜け落ちたアーチ橋が見える。
鞠莉「……そうだ」
みんなは…どこにいるんだろう。 千歌「鞠莉ちゃん」
鞠莉「あ……千歌っち。いたのね」
千歌「うん、ずっといたよ」
鞠莉「他のみんなは?」
千歌「皆は少し離れたところのホテルにいるよ」
鞠莉「ホテル?」
千歌「あれ、また忘れちゃったの? まあいいや、そういう事もあるよね」
鞠莉「…?」
千歌「とりあえず行こう、みんな待ってるよ」 鞠莉「…なんだか静かね」
千歌「そりゃそうだよ」
千歌「もう誰もいないんだから」
鞠莉「……誰も?」
千歌「あぁ、本当に忘れちゃったんだね」
千歌「鞠莉ちゃん、人はもう、みんな死んじゃったんだよ」
鞠莉「……え?」
千歌「まあ厳密には、ここに残ってるいるのが、人類の生き残り、ってところかな」
鞠莉「……なに、それ」
鞠莉「冗談、きついわよ……千歌」
千歌「冗談じゃないよ」
鞠莉「……」 ☆
千歌「みんな、鞠莉ちゃんが戻ったよ!」
果南「あ、鞠莉…やっと帰って来た」
ダイヤ「みんな心配していたんですよ?」
鞠莉「あなたたち……」
善子「ずいぶん疲れてるみたいね」
鞠莉「…そりゃ、疲れるわよ…」
ここに来るまでに、聞かされた話。
人類がここまで追い詰められたのは、全世界を巻き込んだ大戦争。
第三次世界大戦。
人類史最低最悪の大戦争だったという。
鞠莉(だからって……人と、人の戦争で……本当に約70億人もの人が死ぬの…?)
千歌「……」
花丸「まるたちが生きてるのは、それこそ奇跡ってことずら」 ルビィ「うん…」
鞠莉「……」
梨子「それに、大丈夫ですよ、だって私達……あれ? なんだっけ…」
曜「どうしたの?」
梨子「何か忘れちゃって…どうしてかな、さっきまで憶えてたのに」
千歌「まあでも、いいよ。ここにいれば、なんとかなるよ…」
鞠莉(…ここに?)
ずっと…こんなところで?
鞠莉(…そんなの) 鞠莉「いいえ……ここを移動して、他に誰か生存者がいないか探すべきよ」
ここで退廃的に終わるより、何か未来を探す方がきっといい。
元より、じっとしているのは苦手なの。
千歌「…本当に?」
鞠莉「ええ。…でも、私はみんなに強要は出来ない。……だから、来てくれる人がいるなら、来てくれたら良い」
千歌「……」
☆
案外みんなついてきてくれることになった、
ビックリはしたけど、少し嬉しくなった。
鞠莉(でも、記憶が全くないのは、どうしてなんだろう…) 人がいなくなった、という世界は皮肉なことに、とても綺麗だった。
自然で溢れ、空気もガス臭くない。
いない方が良い惑星になることは、嘘ではなかったみたい。
鞠莉「みんなは…なんとも思わないの?」
ダイヤ「思わない、といえばもちろんに嘘になってしまいますが…」
ダイヤ「いまは、せめてこの九人でいられることが不幸中の幸いなのです」
果南「うんうん」
鞠莉(…そうかもしれない)
鞠莉「……ほんとう、全員残ってるなんて、奇跡ね」 千歌「……」
曜「千歌ちゃん? どうしたの、ホテルの方ばっかり見て…」
千歌「……ううん」
千歌(…、なんだろう。私も何かを忘れている)
千歌(核心に触れることを、覚えていたはずなのに……あのホテルに…いなきゃいけない気が…)
☆
鞠莉「それにしても、本当、すごいことになってるのね
曜「うん、空気が美味しいって言うか」
梨子「天気もいいし」
花丸「嫌に、ね」 ナチスのアレじゃないんか…あのペテン師じみた親父と鞠莉は似通ってるトコあって良かったんだが ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています