穂乃果「敗北を知りたい」千歌「シンクロニシティ?」
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鞠莉「そう」
鞠莉「シンクロニシティ」
鞠莉「一見無関係に隔絶された物質や生物、果ては思想が」
鞠莉「地球規模で同時同様の変化を起こす」
鞠莉「そういう現象よ」
千歌「…それが一体…」
鞠莉「ここ数日中にここ日本…いや内浦にとってもワンダフルな人達が上陸する」 ダイヤ「!!?」
ダイヤ「あ………」
ダイヤ「あれ………ッッ」
ダイヤ(ジャングルジムがないッッ)
※2018年現在ジャングルジムは危険遊具として続々と撤去され公園から姿を消しつつある。
ダイヤ(そんなッッ何故!?昔この公園で………ッッ)
ダイヤ(鎖鎌の対策はジャングルジムの前に立つしか考えていませんのにッッ)
海未「なんのつもりか知りませんが……敵に背を見せるなど………」ビュババババ
海未「愚の骨頂ッッ」バッ
ダイヤ「くっ」ブンッ
ガッ ダイヤは鎖分銅を投げ捨てて鎖に鎖を絡め、辛うじて刃から逃れた。
ジャランッ
海未「ホッ」
海未「お見事ッッ」ダッ
海未も鎌を捨て、両者手ぶらとなって海未が前に出る。
ダイヤ(相手は…園田海未…………ッッ)スッ…
ちゅどッッ
ダイヤ(肉体勝負(フィジカル)では とてもかないません…) ダッ…
ダイヤ(ちょ…海未さん………)
ガシッ
ダイヤ(海未さんて……)
グルッ
ダイヤ(止まりますでしょッッ普通は………ッッ)
ドシャァッ
海未は煙幕を意に介さず直進してダイヤの腕をつかむと、そのまま投げをうって頭から地面にたたきつけた。 ダイヤ「」
海未(惜しかったですね……ダイヤ…)
海未(火薬と目くらましはことりの十八番です……)
海未(それに慣れている私でなければ……少なくとも逃げることぐらいはできたでしょう…)
ボタ…
海未「ッッ」
日本刀が突き刺さっている海未の太ももから血が垂れる。
海未(曜には悪いですが、日を改めなければ…)ザッ…
海未は公園を後にした………。 ・鞠莉の家。鞠莉と5人。
千歌「………ダイヤさんが……ッッ」
果南「……やっぱり半端じゃないね…園田海未……」
鞠莉「……そこで一つ話があるんだけど………」
鞠莉「千歌っちと梨子は、もうこの闘いから下りて」
千歌梨子「!!」 千歌「えッ………」
鞠莉「私はダイヤと絵里さんの闘いを見てたけど、その時のダイヤの強さときたら見てて怖くなるぐらいだった」
鞠莉「そのダイヤですら海未さんには勝てない」
鞠莉「二人にとって、これからの闘いは危険すぎる」
千歌「でも…」
果南「私もそう思う」
果南「現に、千歌は一回私と組んで海未さんに負けてるしね」
千歌「……それは…」 鞠莉「ホントはね、安全にいくなら………善子も下りて欲しいんだけど、曜の負担とかを考えると、そういうワケにもいかなくて」
善子「私はまだ戦えます、数多のリトルデーモンの屍を越えて―――」
梨子「善子ちゃん、ちょっと不謹慎よ?」ジトー
善子「わッそんなつもりじゃ」
千歌「でもッッ」
果南「でもじゃないッ」
千歌「………ッッ」
千歌「…………曜ちゃんは」
千歌「…曜ちゃんはどう思う?」 曜「………」
千歌「曜ちゃんッッ」
曜「あ……ゴメン、何?」ニコッ
鞠莉「千歌っちと梨子にこの闘いから下りてもらおうってハナシ」
曜「あー…」
千歌「……そんなことな
曜「うん、それは私も賛成かな」
曜「アブないし……」
千歌「……………ッ」 梨子「でも、私たちでそんなこと言ってもむこうが許してくれないんじゃ…?」
鞠莉「たぶん大丈夫。海未さんも穂乃果さんも、『敗北を知りたい』わけだから、こちらから喧嘩を売らなきゃ、おそらく果南と曜しか相手にしないハズよ」
千歌「………ッッ」ギリ…
梨子「それもそうか……」
善子「私はどうなのよッッ私はッ」
鞠莉「じゃあそういうことで、千歌っちと梨子は、今後μ'sに接触するのは禁止」
鞠莉「善子も、普段からなるべく曜と一緒にいてね」
鞠莉「果南も……気は引き締めてね」 ・帰り道
千歌「……………」
梨子「私ね」
梨子「こうなったのはもちろん残念だけど」
梨子「ここまで頑張ってこれて良かったって思ってる」
千歌「…………………」
梨子「果南さんや曜ちゃんと違って、普通の私たちがここまでよくがんばってこれたなって」
千歌「………本気で言ってる?」
千歌「それ、本気で言ってるんだったら………私、梨子ちゃんのこと」
千歌「軽蔑する」 梨子「本気だよ」
千歌「…………………ッッ」
千歌「…………梨子ちゃんは良いよ」
千歌「絵里さん倒すのに貢献できたんだし」
梨子「ッッ!なんでそれを……」
千歌「鞠莉ちゃんから聞いた」
梨子「…そっか」フゥ
梨子(セーフ……ッあの戦いの内容については鞠莉さんにもバレてない……ハズッッ) 千歌「私はまだなんにもしてない」
千歌「0なんだよッッ」
千歌「悔しいじゃんッッ」ダッ
梨子「千歌ちゃんッ」
梨子(………こういう時は…曜ちゃんが寄り添ってあげると良いんだけど…)
梨子(曜ちゃんは曜ちゃんでだいぶ思い詰めてたみたいだったし……)
梨子(当たり前よね…私たちが抜けるぶん曜ちゃんはこれからの負担が増えるんだから…)
梨子(……その私から無責任に元気づけるなんて………流石にできない……)
梨子(善子ちゃん経由で何か……)
梨子(って、善子ちゃんも立場は曜ちゃんと同じだったわね………)
???「梨子ちゃん」
梨子「ハイ?」クルッ
!! ・バスの中
曜(私がもっと早く決闘に行ってれば……ダイヤさんは………)
曜(ダイヤさんだけじゃない…真姫ちゃんだって……私がもっとあの場に残ってれば……ッッ)グッ…
善子「……………」
善子(さっきからずっと曜の様子がおかしい………)
善子(ダイヤがやられたとはいっても命に別状はないって言うのに…流石に思い詰めすぎでしょ……)
曜「………………」ズーン…
善子(何か隠してるわね………) 梨子(嘘………ッ)
穂乃果「μ'sの高坂穂乃果です」ペコ
梨子「あ、ど、どうもっAqoursの桜内梨子です」ペコリ
梨子(違うでしょッッ敵ッッ)
梨子(お辞儀なんて隙だらけなッッ)
穂乃果「もう私と海未ちゃんしか残ってないんだもんねー」
穂乃果「Aqoursのみんな、強いねっ」ニコッ
梨子「そ、そんなことないですっ」
梨子(だから違うってッッ)
穂乃果「でも………もう負けないよ」
梨子「ハ…ハイ」
梨子(動けないッッ) 穂乃果「……海未ちゃんの強さってさ、ほんととんでもなくて」
穂乃果「いろ〜んな技を持ってるし…」
穂乃果「人間に倒すのは無理だと思うんだよねー」
梨子「ハイ………」
梨子(ハイ………じゃないッッ)
穂乃果「可能性があるなら、“内浦最強の生物”……果南ちゃんだけど……」
穂乃果「真姫ちゃんに眠らされてるようじゃあどうだろうねェ………」
穂乃果「いやぁ正直ビックリしてるよー」
梨子「ハイ………」
梨子(私は何をのうのうとこの人の話を……ッッ)
穂乃果「あ、私はどうなのかって?」
梨子「ハイ………」
梨子(〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ)
穂乃果「う〜〜〜ん」
穂乃果「海未ちゃんとは本気で戦ったことないし、戦えないけど………」 穂乃果「……うん、やっぱり海未ちゃんとは、戦えないや」
穂乃果「海未ちゃんだけじゃない」
穂乃果「μ'sのみんなとは、私は戦えない」
穂乃果「梨子ちゃんもそうでしょ?」
穂乃果「Aqoursのみんなと本気で戦える?戦えないよねー」
梨子「ハイ………」
梨子(………………………ッ)
穂乃果「そりゃそうだよね〜…………………」ウンタラカンタラ
梨子(全く…………ッッ動けない…………ッッッ)
梨子(この人を前にして…細胞が怖じけているっていうの………ッッ!?)ガクゼン
穂乃果「じゃあね梨子ちゃん、果南ちゃんと曜ちゃんによろしくッ」
梨子「ハイ………」
穂乃果は手を振って走り去る。その背中はすぐに見えなくなった。
梨子「私は…」
梨子「ホッッとしているのね私はッッ」アセダラ ・夜。公園。
海未(昨日よりもさらに早い時間に来てしまいました………)
海未(本来選外だったダイヤですらあの実力……曜や果南はどれほどの……)ゾクゾク
ザッ………
海未「!」
海未「貴方は……」
ルビィ「黒澤流三段―――黒澤ルビィです」 ルビィ「黒澤ダイヤ…お姉ちゃんとは同家の桜――」
ルビィ「ともにプリンを噛んだ間柄です――――」
ルビィ「今日は死んだっていい」
海未「内浦に来て初めて―――胸のサイズ的にはわたしと見合いますね」
ルビィ「ピッギィイイィィッ!!!!!」ビリビリビリ
海未「!!」
海未(聴覚を奪われたッッ!?)キーン
ルビィ「………こんなもんなの」
海未「………?」
ルビィ「ウワサの死刑囚っていうのは」
ルビィ「こんなもんなのッ」ダッ 海未(…せっかくですが……)
海未(これ以上曜との決闘を先延ばしするわけにもいきません)
海未(ここは遊ばず……最短最速でケリをつけますッッ)シュッ
ガッ
ルビィ「ッッ」
ズシャァッツ
ルビィ「ケハッ」
カウンターの手刀が喉に入り、ルビィは吹っ飛んで尻餅をついた。 海未「常軌を逸した声量による奇襲……見事でしたが」
海未「その後が良くありませんね」
ルビィ「………」
海未「真正面から突っ込んでは聴覚を奪った意味もありません」
海未「姉上のように煙幕でも使っていれば、多少なりとも結果は違っていたでしょう」
ルビィ「………」スクッ…
海未「その喉ではもうあれ程の声は出せない」
海未「今ので格闘に天地の差があることも分かったでしょう?」
ルビィ「昔から」
ルビィ「お姉ちゃんにイチバン叱られたのがルビィです………」 ルビィ「だからこそルビィがイチバン―――――」
ルビィ「お姉ちゃん思いッ」ダッ
海未「フンッ」ボッ
ゴッ
ルビィ「ッッ」ドッシャァァッ
今度は掌底が鳩尾に入り、ルビィは再び後ろに吹っ飛んだ。
海未「確かに出来が悪いですね」
海未「ダイヤも嘆くワケです」
ルビィ(いつだって…)ムクッ…
クイ…クイ…
海未「!」 ルビィはまた立ち上がると挑発するように両手でカモンのジェスチャーをしている……。
ルビィ(いつだって…)
海未「………」ザッザッ
ガコッ
ルビィ「〜〜〜〜〜ッ」ドサッ
海未「………」
海未「!」
ルビィ「………」ムク…
stand and fight(がんばルビィ!) ルビィ「………………」グッ
海未(手刀、掌底、膝蹴り………)
海未(私の打撃を三度もまともに喰らって……)
海未(ファイティングポーズとは……ッッ)
海未「…………………」
海未「ルビィ」ジャラ…
ルビィ「!!!」ビクッ
海未「今日は死んでもいい」ビュッ
海未「そう言いましたね………………」バババババ
ルビィ(鎖鎌……ッッ!) ルビィ(…そんな………)ブル…
ルビィ(ルビィ……死んじゃうじゃんッッ)
海未「ルビィ」ピタッ
海未「貴方が姉上のダイヤのために決めた覚悟―――」
海未「理解(わか)らぬワケではないですが……この現実はどうです」ジャラ…
ルビィ「……………ッッ」ゴクリ…
海未「家族を思いやるという人間的な感情――――」
海未「貴方の人生の途上でいつしか植え付けられた感情に比べ」ビュッ…
海未「続ければ四肢か、あるいは首を刈られて絶命するというこの現実は」
海未「あまりに原始!あまりに本能的(リアル)!」ババババババ
ルビィ「ひ………」 ルビィ(どうしよう………怖いよぉ…………)
ルビィ(でも………お姉ちゃんの仇を…………)グッ…
ダイヤ『もう良いですルビィ…………』
ルビィ「!!」
ルビィ「お姉ちゃんッッ!?」
海未「………?」
それは極限状態で姉を思うルビィが見た幻影か、あるいは入院中に妹を思うダイヤが飛ばした魂か―――ルビィの心の中に、ダイヤは優しく語りかける。
ダイヤ『もう良いのですルビィ………』
ダイヤ『よく頑張りましたね……』
ルビィ「お姉ちゃんッ……でもッッ!」 ダイヤ『どうなったら私が一番悲しむか……よくわかっているでしょう?』
ルビィ「そッそれは……」
ダイヤ『ルビィ……死んでもいいなんて言わないで…………』
ダイヤ『生きて……これからも私に元気な姿を見せてください………』
ダイヤ『それが私のたった一つの…………願……い……』
ルビィ「……………」
ルビィ「……そっかぁ………」
ルビィ「………そうだよね……………」
海未「……………?」 ルビィ「死ぬには良い日なんて―――死ぬまでないッッ!!」
ルビィ「いつだって今日を生きるしかない!!」
I live I live LoveLive! days !!
ルビィ(…だから……)
ルビィ(勝って生きるッッ!!!)グッッ
海未(私が思うより……あるいはもっと優秀な戦士なのでしょうか)
ルビィ「お姉ちゃんッッ」ダッ 海未(良いでしょう…………)ジャランッ
ルビィ「!」
海未は鎖鎌を投げ捨てた。
海未(ダイヤに免じて――――)
ガシッ
ルビィ「あ………ッ」
ルビィ(腕を………)グルッ
海未(ダイヤと同じように――――――)
ルビィ(お姉ちゃん……………………ごめん…………)
ドシャァッ……… ルビィ「」
海未「未熟ではあります……」
海未「しかし貴方はまちがってはいません」
ザッ…
海未「!」
海未の捨てた鎖鎌が何者かに拾われた。
善子「反吐が出る………ッ」ジャラ…
曜「ルビィちゃん………ッッ」
善子「もう生きて帰れないわよ」キッ
善子「アンタはこの世にいちゃいけないッッ!!」 海未「………私が呼んだのは曜だけですが……」
曜「……問い詰められて…バレちゃって……」
善子「……そりゃバレるわよ、あんだけ分かりやすく殺気だってりゃ」
海未「まあ良いでしょう、どの道同じことです」
善子「同じこと………ッ!?」
善子「何が同じ―――」
海未「足が震えてますよ」
善子「え…」フル…
曜「善子ちゃん……」
善子「できるッッ」 善子「わたしもやるッッ」プル…プル…
慣れない持ち方で両手に鎌を携えながら、先刻のルビィのようにファイティングポーズをとる善子。しかし涙目で震えながらのそれは余りに頼りない。
曜「ありがとう」
曜「危くなったらたのむね」
善子「……………!」
こたえる曜の顏には、逆にどこか落ち着きが戻っていた―――。
曜「始めよう」スッ
海未「ええ」スッ… 曜「……………」ジ…
開始の言葉の後、意外にも曜は構えたままその場を動かない。
善子(……カウンター狙いだ………ッッ)
善子(マッハ蹴りは果南すら真似できない曜のオリジナル………)
善子(最速である以上、後出しでも相手の攻撃より曜の足が先に届くッッ)
海未「………」ス…
曜(これは………弓道ッッ!?でも手に何も……ッッ)
曜(果南ちゃんが言ってたやつだッッ)
海未「ラブアローシュートッッ!!」パッ
曜(ヤバいッッ)ダッ 内容:
曜は飛び上がって見えない矢を躱した。が―――
曜「!!」
海未(今ですッッ)ザッ
善子(海未が詰めてきたッッ)
善子(着地を……………ッ)
曜(降りてからマッハじゃ流石に間に合わない……ッッ)
曜(このままドロップキックに切り替えるッッ)
曜「だおッ」パッ
海未「ハッ」ブンッ
パァンッ ドッシャァァァァッ
破裂音とともに、曜は吹っ飛んで地面に倒れ伏した。
善子(…………………ッッッ)ガクガク
善子(そんな………ッッありえない………ッッ)
善子(今の……今の音は……ッッ)
曜「…………ゴハァッ………………」ヨロ…
吐血しながらも曜が立ち上った。が、その目は虚ろでとてももう戦えそうにはない。
海未「蹴り技に使用される関節すべての同時加速…それが生むマッハの速度…」
海未「たかがスクールアイドル歴1年でそこまでたどり着いた努力は褒めておきましょう」 海未「ですが曜ッッ貴方のいる場所は既にッ私が3年前に通過した場所ですッッッ!!」
曜「ッッッッッ」
善子「〜〜〜〜〜〜ッッ」
海未「真姫すら一撃で気絶した私のマッハビンタを浴びて立ち上がったそのタフネスだけは称賛しますよ」
曜「………」フラ…
ドシャァッ
海未「勝負ありッッ、ですね」 海未(告白しましょう…)
海未(背スジが凍りましたよ)
海未(たった今曜に言った言葉に嘘はありませんが…)
海未(私ですらマッハの攻撃ができるのはほとんど演武の場に限られ…実戦で使えるのはビンタのみッッ)
海未(それをあろうことか蹴りで………ッッ)
海未(蹴りとビンタでは射程距離の差は明白ッッ)
海未(したがって撃ち合いにさえ持ち込めず奇策に走るしかありませんでした…)
海未(そもそもマッハの攻撃を習得している私でなければ曜の構えと微妙な重心の傾きからマッハのカウンターを予測することもできず、不用意に近づいて敗れていたでしょう……)
海未(貴方が天才と呼ばれる理由がわかりましたよ、曜………)
海未「さて―――」 海未「残るは貴方一人ですね……どうです?立ち合いますか?」
善子「…………ッッ」ブルブルブルッ
善子「や、や、や、やってや…」ポン…
なけなしの勇気を振り絞って戦おうとする善子を肩の上の手が制止した。
海未「!」
善子「果南!!」
果南「………曜でも歯が立たないとはね……」
善子「あんた……なんで……ッ」 果南「ちょっと近くに来ててね」
果南「ルビィの叫び声を聞けばイヤでも場所はわかるよ」
海未(なるほど、アレですか……)
海未(お手柄でしたね、ルビィ)
ルビィ「………」キゼツチュウ
善子「…なによこの手………」
善子の視線は自分の左肩に置かれた果南の手に移る。
善子「まさか『善子じゃムリだ私が変わる』なんて言い出すんじゃ…」
果南「善子じゃムリだ私が変わる」
善子「…………ヨハネよ…」シュン… 海未「Aqours一の超実戦派……環境利用闘法・ダイヤは潰され―――」
海未「その妹ルビィも一蹴」
海未「堕天流・善子は震えて動けぬ不戦敗―――」
海未「“飛び込み界の最終兵器”曜すら瞬殺ッッ」
海未「先日の高海千歌も合わせるならば―――」
海未「5対0」
海未「私という一個人に対し――9人中5人………過半数が敗北………」
海未「もはやチームとして…敗北は決定しているといえます」
善子「…………」グ…
海未「スクールアイドルAqoursの威信は」
海未「今年のラブライブ王者の称号は」
海未「それでもなお 地に落ちませんッッッ!!!」 善子「………ッッ!?」
海未「今ここに―――自分の肉体それのみを頼みにして」
海未「強さにおいて完全を成した奇跡が存在します―――」
果南「………」
海未「貴方達は誇っていい」
海未「松浦果南はスクールアイドルそのものです――」
海未「ここで私が敗れたなら―――」
海未「先に挙げた5勝など」
海未「なんの意味も持ちませんッッッ」
果南「大げさすぎるって……」
海未「開始めぃッッッ!!」ダッ キャラ誰が誰だか分からんくらい混ぜてるなw
穂乃果は勇次郎か 過大評価気味と思ってたけど、花山スペック戦の良さを再確認出来た 本部と勇次郎のギャグ回も再現してて良いね
ジャングルジムは知らなかったw パァンッ
善子(いっ……いきなりかいッ………)
開始一番、海未は果南の左頬にマッハビンタを放った。
海未「!」
果南「……………」グッ…
海未(倒……………れない…………ッッ)ザッ
直撃し、体勢を崩しながらも踏ん張った果南を見て、海未は即座にまた距離を取った。
ボタッ… 果南「人間の手で出血するのは…」
果南「いつ以来の事かな……」ヌグ……
海未(これが松浦果南………ッッ)
海未(ことタフネスにおいてはその他一切とは全くの規格外ッッ)
海未(…………ですが……)
海未(格闘の攻防においても…脚力においても…)
海未(スピードでは私の方が上ですッッ)ダッ
パァンッ
果南「ッ」ブシャッ
拭ったばかりの鼻血が、今度は顔じゅうに広がった。 果南「…………」ボタ…ボタ…
果南「ワカった」
果南「避けるのはヤメだね」ヌグッ
善子(避ける気はあったのね………)
海未「だったらどうしますッッ」ブンッ
パァンッ
海未「!」
果南「つーかまえた♡」ニギッ 果南「いくら早かろうと、来る場所が分かってるんだもの」
果南「ノロマな私でもつかめるよ」
善子(バカいうなッッ)
善子(来る場所が分かってようと……頬に来るころには加速は終了してるッッ)
善子(超音速のそれを片手で止められるのはアンタぐらいのもんよ……ッッ)
果南「もう、手のうちだ」ギュッ…
フワッ…
果南「あれ?」グルンッ…
ドシャァァッッ
善子(これは………ッッ)
合気!!! 果南「合気……それがあったね……」ムク…
海未「意外ですね……貴方が知っているのですか」
果南「あなたのおかげで体験済みだからね……ダイヤが教えてくれたよ」
海未「なるほど……流石はダイヤ……」
果南「ダイヤはこう説明していたよ」
ダイヤ『しょせんは護身技』
ダイヤ『貴方なら特に対策が必要なシロモノではありません』
果南「―――ってさ」ダッ
善子(今度は果南からいったッッ) 果南「ハッッ」ブンッ
海未「フンッ」カッ
フワッ
果南「ッと……」
ドシャァァッッ
善子(………ア……アレ…………?)
果南「…………」ムクッ
ダッ
果南「ムッッ」ブンッ
海未「…」
フワッ
ドシャァァッッ
善子(なにやってンのよ果南!!!) 果南「…」ムク…
果南「とうッッ」バッ
海未「…」
フワッ
ドシャァァッッ
ムク…
海未「……まさかとは思いますが………」
海未「マグレ当たりのラッキーパンチが出るまで…そうして延々と突進を繰り返すつもりじゃないでしょうね…」
果南「……どうだろうね…まあ……」
果南「私はこのまま何日やってもいいよ」
海未(何…………日……!?)
果南「根比べだね」ダッ フワッ
ドシャァァッッ
果南「………」ムクッ
海未(合気……相手の力を利用するといっても…無論こちらも全く無力でできるわけではありません…)
海未(立ち上がり、走り、殴り掛かり、飛ばされる………果南のそれとは比べるべくもありませんが……)
海未(例えば果南の使う体力を100とした時私のそれが1であっても)
海未(そもそもの果南の体力が私の100倍以上というなら……理論上はこのまま続けると私の方が先にバテます……)
海未(――――が)
果南「フンッッ」ダッ
海未(これが侮辱でなくてなんでしょうか!!?)
フワッ
果南「ん〜〜〜ッ」
ドシャァッッ………… ドシャァッッ
善子「……………ッッ」
果南「………」ムク…
海未「……………!」
善子(開始まってからいったい何分経った…?)
善子(5分……10…………イヤ………)
ドシャァッ
果南「……うん…」ムク…
海未(まだ果南は息を切らしてさえいない)
海未(…当然私もですが……)
海未(本気でずっとこうして…) ダッ
海未「………」
フワッ…
ブワッ
海未「!!?」
しかけた果南が飛ばされる―――今宵その数三桁に達しようかという現象が今また再現されようした瞬間―――逆に初めて海未の身体が宙を舞った。
ドッシャァァァッ
海未「ッッッ」
果南「このタイミングか………」 善子「今のは…………ッ!?」
曜「合気を返した」
善子「!」
善子「曜ッッ」
曜「さっきはゴメんね…………カッコ悪いとこ見せちゃったね……」
善子「そんなの全然……ッそれより合気を返したって……」
曜「もっとワカリやすく言うなら――――」
松浦果南がッ 合気を駆使った!!!
果南「あんだけ投げられてればね」
果南「バカでも身体で覚えるよ」
曜(フツーはその前に潰れるよ…)
海未「………ほう…」
海未「ならばここからは合気対決ですか………」 海未「私の合気とあなたの合気………」
海未「どちらがホンモノ…」
果南「心配しなくていいよ海未さん」
果南「合気は2度と使わない」
海未「…………」
果南「闘争っていうのは力の解放だよ」
果南「“力み”なくして解放のカタルシスはありえない…」
海未「…面白いですね………」
曜(“力”vs“技”………ッッ!!)
ググ…
海未との間合い1.8メートル―――果南は大きく振りかぶり始めた。
海未(な………ッッ)
海未(なにを考えているのです………!!!) グ…
海未(この構えからこのまま単純にパンチを繰り出そうというのですか…!)
海未(いかに打撃力が強かろうがこんな子供だましとさえ言えぬような………)
海未(しかも究極と呼んでもさしつかえないようなこの闘いのレベルで!!!)
ブンッ……
海未(来ましたッッ)
海未(合気で流し――ッいやッ万一また返されたらッッ)カッ
振りぬかれた果南の右腕を、海未は左の肘と膝で強烈に挟みこむ―――。
ガガッ
曜「蹴り足ハサミ殺しッッッ」
海未(え………)
ズドッ
海未「ガッハァッッ」
海未の放った超高等技術は、内浦最強の豪打にブチ抜かれた。 海未「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」ザンッ
海未(う……ッッ)
海未(防禦(うけ)が通用しないッッ)
ガシッ…
膝から崩れ落ちた海未を果南が髪をつかんで引き起こす………。
善子「よし…ッッとどめ…………ッッ」
フワッ
果南「うっそ……ッッ」
曜「合気ッあんな体勢からッッ髪の毛伝いにッッッ」
ドシャァッ
善子「もう……滅茶苦茶ね………ッッ」 果南「流石に…そう甘くないね………」ムクッ…
海未「………………」スッ
善子「あれはッ」
果南「弓道か………」
果南「無駄だよ」
海未「ラブアローシュートッッ」パッ
……………。
意外にもというべきか、当然というべきか………。海未はエアで弓を放ったが、射られた果南は無反応である。
果南「本物の矢でも私の腹筋は通さない」
海未(そ…………そこまで鍛えているのですかッッッ) 海未「…よくわかりました……」カチャ…
善子「刀!どこにあんなものをッ……」
ザンッ
善子「ッ!?」
海未は取り出した短刀を地面に突き立てた。
海未「気の毒ですが果南、これももう使いません……………」
海未「言っていることがワカりますか果南」
海未「私にとって武器の使用はむしろ相手に気遣ってるということです」
グッ
内浦で初めて―――海未は拳を握った。 果南「どういう意味かな」
果南「言ってることがワカらないや」ダッ
構えた海未に向って果南が突進する。
海未(ああ…………………………)
海未(一体何時以来でしょう……)
果南「!」
海未(他人を全力で殴るのは……………………)ゴッ
ドブォッ
果南「………………ッッ」
曜&善子「ッッッッ」ガバッ
ドシャァァァァァァァァァッッッッ
海未の正拳中段突きをまともに喰らうと、果南の身体は今日最長の距離を最速で舞った。 善子「果南ッッ」
果南はうつぶせの状態で地面に倒れ伏している。
果南「……………」モゾ…
曜(……大丈夫………)
曜(大丈夫…………ッッ)ギュッ
―
――
―――
曜「………ホントにいいの?」
鞠莉「大丈夫デース、果南にはそっちの気があ・る・し」
果南「鞠莉ッッ違うでしょッッッ」
ダイヤ「…先程伝えましたように、これからμ'sの皆さんとの戦いが始まります」
ダイヤ「私たちAqoursの戦力の把握は重要ですわ」
梨子「それにしても…わざわざ果南さんに撃たなくてもいいんじゃ…」
善子「果南の強さなんて、今更分かり切ってるでしょ?」 果南「私のじゃなくて、曜のを知りたいんでしょ」
果南「誰かが受けないと、どれぐらいの威力なのかわからないしね……」
ダイヤ「その通りです。それとも、梨子さん善子さんが受けてみますか?」ギロリ
善梨子「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ」ブンブン
曜「…うーん………でもやっぱり……」
ダイヤ「曜さん」
ダイヤ「くり返しになりますが、これから私たちはあのμ'sと戦うのですよ。最悪の事態を避けるためにも、今は目先のことを気にしているときではありません」
曜「………ッ」
曜「…ワカりました……」
曜「…じゃあ、いくね、果南ちゃん」
果南「うむ、よきにはからえ」
曜「ごめんッッ」パァンッ ドッ
梨子「ッッ!」
善子「果南が倒れたッッ」
ムクッ
善梨子「ああ…」ホッ
鞠莉「どう?」
果南「うーん………」
果南「よくわからなかったから、もう一回受けていい?」ケロッ
曜「〜〜〜〜〜ッッ」
善子「…果南を倒そうって思ったら………」ヒソヒソ
梨子「重火器で対応するしかなさそうね」ヒソヒソ
―――
――
―
果南「……………」モゾッ
海未「!」 ガクン
曜「ッッ!!」
起き上がろうと立てられた果南の右腕が目的を果たせず地面に伏した。
果南「…………カハッ……」
ムズ…ムズ…
果南の両手両足が力無く、泳ぎでもするように……というよりは溺れるように動いている。
果南「ハッ………ハッ…ハッ……」
果南(なんてパンチだ……)ダラダラ 海未「…私が“技”しか能のない蚊蜻蛉だとでも思いましたか……?」ザッ…
海未が前に出る。果南はいまだにうずくまって起き上がれない。
善子「なんでよッッマッハビンタではダウンさえしなかったのにッッ」
善子「今のパンチだってあれよりは遅いはずでしょッッ」
曜「スピードは打撃格闘技において重要な要素(ファクター)を占める…でもそれだけじゃない」
曜「パンチなら………」
握力×体重×スピード=破壊力!!
海未「これは“力”と“技”の戦いなどではありません…………」
海未「“力”と“技”を持つ者から……“力”しか持たない者への………」
海未「制裁ですッッッ」 ガシィッ……
果南「………ッッ」
今度は海未が果南の後ろ髪をつかんで引きずり起こす………。
海未「ひィ」
ドドドドッ
善子(せ……ッ正中線四連突き…………ッッ)
善子(あんな技(もん)……写真でしかみたことない…………………)サァ…
ドッッッシャアアァァァアアァァッッッ
果南「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
善子(ヤバい……………泣きそうよ…………)
海未「…………」ザッザッザ…
善子(果南が………ッッ)
善子(殺されるッッ)グス… 果南「うぅ……………」
薄れゆく意識との闘いの中で、果南は自らの失策を認めつつあった………。
果南(………ダメだ……)
果南(勝てないわけだ…………)
海未「………」ガシッ…
果南(この人は………命かけてるもの………)
ドドガァッ
果南「カハッ……………」ビチャ……
果南(私なんかのように…………………)
果南(明日を見てないもの……………)
ズサァァァァッ…
果南「………ッハァ…………ハァ……」
果南(私はいつも………)
果南(気づくのが)
果南(遅すぎるんだよなあ……………)ツー…… 曜「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
ルビィ「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
善子「!」
海未「!」
果南「!」
曜「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
ルビィ「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
果南(曜…ルビィ……)
善子「いつのまに………ッッ」
さっきまで善子の隣にいた曜が、復活したルビィの傍らに立ち、二人で、毎日数えきれないほど練習してきたステップを踏んでいる。
曜「こんなことやったって強くなんかなれないだろうけどさ」
ルビィ「はいッ」
曜「とりあえず練習だッ」
ルビィ「っハイッッ」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) 曜「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
ルビィ「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
海未「……………」ザッ…
曜「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
ルビィ「1ッ、2ッ、3ッ、4ッ」タンタンッ
果南「強くなれるさ………絶対に強くなる…………」
こんなふうに!!
ミシィ……
海未「…!!?」
うつぶせで倒れている果南の背中―――ダイビングスーツの下のそれが、唸りを挙げて変形を始めた………。 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) 善子「…………何よッ……アレ…………」
ルビィ「果南ちゃんの背中…………なんか……」
鬼の貌みたい………
曜(出た………ッッ)
曜(とうとう出た…………ッッ)
海未「…………ッッ」
ムク………
呆気にとられる海未をよそに、果南は久々に自分の足で立ち上がった……。
果南「海未さん…決着をつけましょう」 果南「園田海未という本物を相手に戦力を隠す愚を思い知った」
海未「……ほう………隠す……と」
果南「………まだ穂乃果さんも残ってるからね……」
果南「なるべく手は晒したくないと思ったけど………」
果南「それじゃダメだ」
ミシィ………
果南の背中がまた軋む。
ルビィ「………怖い…よぉ……」
善子「曜ッッッ」
善子「何なのアレッッ」
曜「…見たまんまだよ」
曜「異常なまでに発達した打撃用筋肉(ヒッティングマッスル)」
曜「筋肉のみで造りあげられた鬼の形相………!!!」 曜「海中の闘争は」
曜「いつだって絶望的だった」
曜「鋭い牙や毒を持った危険な生き物………」
曜「水温……水圧………呼吸…………そして違法漁船―――――」
曜「一つとして安易な敵はいない」
曜「幾多の海に潜りながら……武器と名を呼べるもの」
曜「銛一本すら拒みとおした……」
曜「自己(おのれ)を護るため肉体を武器化する戦慄の日々―――」
曜「果南ちゃんはその戦慄に慣れ始めたんだ……イヤ……生き甲斐(よろこび)すら感じていたようだった……」
曜「死と隣り合わせのはずの海中が………楽しい魚たちのパーティーの場になり始めたとき……」
彼女の背中に 鬼神(オーガ)が棲みついていた――――
曜「バーベルトレーニングなんかで造った不自然な筋肉じゃない………」
曜「闘いの中で淘汰され積み上げられた格闘(ダイビング)の結晶だよ」
ミシィッ……
海未「……これ見よがしに………………」 海未「強さとは力だッッ」
海未「強さとは筋肉だ」
海未「そう言わんばかりですね………………」
果南「そう…バカ力だけが自慢さ」
海未「……………良いでしょう」
海未「貴方が次に繰り出すであろう一撃………」
海未「“技”と…“力”と……私の全てを使って………」
海未「貴方以上の一撃で以て迎え撃ちます…………ッッ」グ……
曜「まだあるっていうのッッ!?この先がッッ」ガバッ
善ルビ「……………ッッ………」ガタガタ…
果南「…………」 海未(合気とは………相手の攻める力に自分の受け流す力を加えて返すもの………)
海未(ではありません)
海未(攻防の関係は重要でなく…重要なのは……)
海未(自分の力に相手の力を加える………)
海未(そこッッ)
海未(果南を撃つ私の拳の上に………)
海未(私を撃つ果南の拳の力を乗せるッッッ)
海未(守りの合気転じて…………)
攻めの合気!!!
海未(私にはできますッッ)
グ…
ズズ…
果南は既にゆっくりと振りかぶり始めている。海未はすり足で間合いを詰め始めた。 海未「……………」
ズズ…
果南「……………」グ…
ズズ…
ルビィ(………………ッッッ)ブルブル
ズズ…
善子(恐ろしい光景……………ッ)
善子(お互い……明らかに必殺の間合いに入ってる………ッッ)
善子(手を出せば必ず相手を倒せる距離………ッッ)ブルブル…
曜(よくやるよ二人とも………ッッ)ガチガチ…
果南「ッッ」ドバッ………
先に動いたのは果南だった――――。 海未(――この距離までよくガマンしましたね)
海未(松浦果――――――)バオッ
カッ
ズダアァァァッッッッ
お互いの右の拳がお互いの左頬を同時にとらえると、両雄は高速でほとんど真下に叩きつけられた。
曜「果南ちゃんッッ」
善子「果南ッッ」
ルビィ「果南ちゃんッッッ」
味方の名前を呼ぶ三人の声の後、気の遠くなる程の静寂―――。
モゾ………
三人「!!」
顔を上げたのは――――― 果南「……………」
善子「果南ッッ!!」
ルビィ「やったあッッッ」
曜「流石…………ッ」
ルビィ「果南ちゃあん!!」ダッ
曜「そりゃそうだ………」
曜(海未さんの最後の技がどんなのだったかはわからないけど………)
曜(“技”が想定してるのは人間だもの………)
曜(ライオンやトラぐらいだったら有効なのもあるかもしれない……)
曜(でも恐竜だったら?ゴジラだったら?惑星だったら?)
曜(鬼を出した果南ちゃんの打撃っていうのは…そのレベル……ッッ)
ルビィ「果南ちゃん?」
曜&善子「?」
三人はようやく、勝った果南の顔色が全く冴えないのに気付いた。 果南「………やっちゃった…」
ルビィ「え?」
善子「……何を…?」
曜「――――ッッ」
果南の返事を聞く前に、曜が答えに気づく。この中で最も果南の実力を知る曜が…………。
曜(そりゃそうだよ……………ッッッ)
ルビィ「え……………」
善子「嘘………ッッ」
倒れた海未の瞳孔は開いていた………。 善子「ま、ま、まだっ、心臓マッサージとかすればまだ間に合うかもッ」
果南「やった私がいちばんよくわかってるッッ」
果南「もう………終わってる」
果南「スクールアイドルが………人殺しなんて……」
敗北以下の敗北だ………
曜善ルビ「…………………」
果南「自首してくる」 果南は警察に出頭した。公園に取り残されたのは敗北者4人………。
曜「とりあえず、帰ろっか……」
善子「海未……さんは?」
ルビィ「……触らない方がいいんじゃないかなあ………?」
ムク…
曜善ルビ「」
海未「私の勝ち」 曜善ルビ「ワ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」
死んだはずの海未が起き上がって喋り出した。
海未「松浦果南…まさかこれ程とは………」ケホ…
海未「内浦最強の通り名……伊達ではないですね……」
曜「いやそういうモンダイじゃなくて…」
ルビィ「生きて……………たん…です…か……………」
海未「フフ…すごいでしょう…」
善子「イヤそうじゃなくて」
海未「確かに心臓は停止しました」
海未「瞳孔も開き」
海未「臨床学的には非の打ち所もなく 私の死亡は確認されたでしょう」 海未「その結果何が起こりましたか?」
『敗北以下の敗北だ………』
海未「戦った果南自ら認めたのです」
海未「私の勝利です」
曜「イヤ、それは海未ちゃんへの敗北じゃなくて」
ルビィ「勝負っていうか…」
善子「人間の道徳的な話で……」
海未「疑りますかァ!!!」
曜善ルビ「〜〜〜〜〜〜ッッッ」 海未「……………ならばよいでしょう」
海未「ここで貴方達を葬り去れば……」
曜善ルビ「!!」
海未「私の勝利に文句をつける者は消えます……」
海未「客観的に見ても…………せいぜい痛み分け」
曜「そんな身体じゃムリだよ」
曜「病院いこうよ」
海未「果南の精神的な敗北感に至っては今よりずっと――――」
曜「病院だよゥッッ!!!」ニギッ
フワッ
曜「!」
善子(合気……ッ)
ダァンッ 曜「ッッッ」
海未「ハッッ」ズチャ
倒れた曜の右足に海未は強烈な下段蹴りを入れた。
曜「ア˝ッッ」ビクン
善子「ちょ……」
ルビイ「ひぃっ………」
曜「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」ジタバタ
善子「ア、アンタ……ッッッ」フルフルッ…
海未「………武の本懐はたとえみっともなくとも勝つことです…」
海未「さァ」
海未「これでもう戦えるのは同じく身体の重いルビィと………」
海未「あとは貴方だけですよ………善子」
善子「ヨハネッッ!!!」 海未「…こんな時までその…」
善子「ヨハネ、ヨハネ、ヨハ、ヨハ、ヨハネッッ」ガクッ
海未「………!?」
曜ルビ「!!」
善子が突然頭を抱えて膝をついた。
ルビイ「どうしよぉッッこんな時に…ッッ」
善子「ヨハネッヨハネッヨハネッヨハネッッヨハネッッッ」ブルブル…
海未「なんです……?」
曜「海未ちゃん逃げろッッッ」 善子「」ピタッ
ぬ…
善子がゆっくりと、ゆっくりと立ち上がる。いや、それはもう善子ではなかった。
曜「ヨハネの…ッッご帰還だ……ッッ」
ヨハネ「気をつけいッッッッッ」ビリビリッ
曜ルビ「」ビシィッッ
海未「ヨハネ……ッッ!?」
海未(まさか………ッッ)
海未(二重人格……………ッッ!?) 希「そう、二重人格………猫かぶりとは違うよ?」
希「そりゃあ、裏表は誰にでもあるけど……」
希「そうじゃなくて、ほんとに、全然、別の人格なんよ」
希「例えば……うーん…そやなあ……」
希「あ、真姫ちゃんの話は、さっき花陽ちゃんと凛ちゃんに聞いたでしょ?」
希「あの真姫ちゃんも、むかーしは、全然別の人格があったんよ」
希「『彼氏いない歴17年』―――あの真姫ちゃんがそう言ったの………」
希「それが15歳の時………」
希「まあ、真姫ちゃんのソレは、もう完全に消えちゃったみたいだけど………」
希「ともかく、つまりもう一つの人格は……性格はもちろん、その人の意識の中では、年齢も、職業も何もかも…ふつうんときとは全然違うんよ」
希「だから、仮にその、もう一つの人格が……空手家だったり…軍人だったりしたら………」
希「そう、表に出てる人格が変わることで、その人の戦闘力が全然別物になるっていうことも、ありえるんとちゃう?」
希「…スピリチュアルやね………」 ルビィ「善子ちゃんが………ヨハネになっちゃった…………ッッ」
ヨハネ堕天!!
ヨハネ「ここは…………もしかして地上?」
ヨハネ「ということはあなたたちは下劣で下等な人間ということですか?」
曜 「…………ハイッ……」
曜(堕天使ヨハネ……不意に現れる善子ちゃんのもう一つの人格………ッ)
曜(その強さは……Aqoursで唯一“内浦最強の生物”果南ちゃんに匹敵するッッッ)
海未「フンッッ」
海未「たかが人格が入れ替わった程度で大した騒ぎようですね……」
ヨハネ「………」
海未「堕天使ヨハネさん……私と貴方の戦力差を例えるなら………」
海未「格兵器vs竹ヤリ……」ニヤリ
ヨハネ「あわれな少女…………」
ヨハネ「堕天使ヨハネに楯突く愚かを身をもって教えてあげましょう」 曜(駄目だ海未ちゃん……………ッッ)
曜(堕天使ヨハネは核をもってしたとしても殺せはしないッッ)
ヨハネ「どうあがいても堕天使には決して逆らえぬのが道理……………」
ヨハネ「さァ………いらっしゃい………」
ダッ
海未(貴方程度…拳を使うまでもありませんッッ)
海未「これですッッ」シュッ
フッ…
海未はヨハネの首にめがけて手刀を打ち込む。が、あろうことかそれはヨハネの足の下の空を切った。 海未「ッッ!?」
海未(飛………)
メギョッ
ヨハネは海未の顔面に着地した。
海未「〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
ダァンッ
海未(今のは……跳躍………ッッ!?なんという速さと高さ……ッッ)
海未(私としたことが…油断しました……ッッ)
海未(身体能力……少なくとも脚力はさっきまでの善子とはまるで違うということですか…ッッ)
果南戦のダメージも尾を引いている海未はうずくまり、身体を休ませながら思考をめぐらせる。その途中で気づく。
海未(追撃が………来ないッッ!?) ヨハネ「………」
見ると、ヨハネはすぐ傍らに立って海未を見下ろしている。その眼は冷たくもあり、温かくもある………。
ルビィ「ヨハネは……刃向かってきた人にしか攻撃しない………」
堕天使の美学!!!
海未「ふ…」
海未「フハハハハハハハハ」
曜ルビ「………ッッ」
海未「なんとも虫唾が走るような美学があったものです……………」
海未「貴方達堕天使に比べたら人間のほうがはるかにエゲツない…」
海未「とにかく貴方は最大にして最後のチャンスを失ったのですッ」スクッ
海未「ハアッッッ」ボッ
海未は立ち上がると目の前のヨハネに正拳を打ちこんだ。 スカッ
海未「!!?」
海未の攻撃はまたも空を切った。今度はヨハネはまだ目の前に立っている………。
海未「……………ッ」
海未「くッ」バッ
面食らいながらも海未は切り替えて左の掌底を繰り出す。が、ほとんど棒立ちのヨハネに対してこれも当たらない………。
海未「はッ」ゴッ
当たらない。
海未「ぐっ」ガッ
当たらない。
海未(な……ッッ)
海未(何故命中しないのですッッ!?)ダラダラ ヨハネ「何故命中しないのですッッ!?」
海未「!!?」ビクッ
ヨハネ「――――と………アナタは考えていますね………」
海未「―――ッッ」
ヨハネ「今こそ教えましょう」
ヨハネ「脳内に響く堕天の輝きが全て教えてくれるのです」
海未「………………ッッ」
ヨハネ「敵であるアナタの作戦・闘志・士気すべて」
堕天使ヨハネの魔眼が その全てを見通すのです!
海未「馬鹿な…………ッッ」
ヨハネ「堕天したばかりではありますが……………」 ヨハネ「堕天使の私にとって地上の輝きはあまりに眩しく…………」
ヨハネ「地上の人間とのかかわりはあまりに穢れを伴います……………」スッ…
海未「………!」
ヨハネは見とれる程美しい流れるような動きで海未の背後に回り込むと、腕を海未の首に巻き付けて足を絡めた。
ヨハネ「これ…最後の技です……………………」
海未「…くっ……」ガシッ…
ヨハネ「この技を最後に私……………津島善子に戻ります………………」
ヨハネ「その時あなたが立っていたら……………」
あなたの勝ちです!!
ギチィッ………
曜(堕天流奥義ッッ)
ルビィ(堕天龍鳳凰縛………ッッ!) ギュゥゥ〜〜〜〜〜ッッ
海未「………くっ…………」プルプル…
海未(こんなもの…………ッッ)
海未(こ……ッこん……な……ッッ)
海未「…………ッハァ………」ギリギリ…
曜(無理だよ……海未ちゃんにどんな技があっても…)
ルビィ(完全にキマった裸締めは絶対に逃げられない………ッ)
海未「…………」ダラリ………
返せる技が………ない……………
海未「」ガクンッ
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