真姫「ダイヤモンドプリンセスの憂鬱」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
1943年10月、第二次世界大戦末期・米国。
後に日本・広島/長崎への原子爆弾の投下という帰結を迎える「マンハッタン計画」はちょうど中盤に差し掛かっていた。
科学部門責任者、Dr.ニシングストンはマンハッタン計画に自身の優れた頭脳を提供する事と引き換えに、莫大な研究資金は勿論、その他予備費の名目でその年の科学研究予算の2割程度を彼個人が受け取ったとまで囁かれた。
そんな噂を知ってか知らずか、彼はロサンゼルスの一等地に豪奢な屋敷を建てる。
ただ、彼自身は研究の為ロス・アラモスに赴いている今、屋敷では1人のメイドと暇を持て余した令嬢が静かに映画を観るだけである。 ノゾミ「ふーん、(あのソ連人もマキちゃんに相談されたんかな?…まぁ、今はどうでもいいけど…いやてか、なんであいつから伝言が届くんや…)じゃあここは?」グイッ
マキ「…………」フルフル
ノゾミ「(近い…?いや、わからんなぁ…)」
ニコ「…………」チラッ
ハナヨ「…………」マダデス
ノゾミ「…………ここ」グイッ
マキ「…………」フルフル
ノゾミ「(………怪しかった。今のは、嘘の目だった)」グイッ
ノゾミ「ほんとに、ここやない?」
ニコ「…………」チラッ
ハナヨ「…………」ハイ
ニコ「…………そのマキの顔、嘘よ」
マキ「!?」 ノゾミ「ほぅ……根拠は?」
ニコ「信じても信じなくてもいいわ。でも、私はあんたよりマキの事を知ってる。それだけよ」
ノゾミ「(これ以上嬲られるマキちゃんを見たくないんか…?まぁ、ウチもそろそろ飛行機の時間が丁度いい…乗りかかった船やん?賭けよ…)」
スーーーーーッ ジワァァ
マキ「!?っ……………(痛いっ……!こんなに痛いの!?)」
ニコ「(悪いわね…マキ)」
ハナヨ「(ごめんね、ごめんね)」
ノゾミ「(これか………)」グリッ
マキ「ぁっ……ぅわぁっっっ!………」
ノゾミ「はーい、回収完了…マキちゃん、ほんまにごめんな?マキちゃんの事、後は頼むわ…じゃ、御三方とも、お元気で!」タッ
ハナヨ「マキちゃん!」
マキ「ぷはぁ!はぁ…はぁ…やっと息が…」
ニコ「待たせたわね…」
マキ「ほんとよ、でもどうするの?アイツ、あのデータ持ったままドイツ帰っちゃうわよ」
ハナヨ「良いんです。これが“ウミちゃんメモ”の計画通りですから」
マキ「可愛い名前ね?」
ニコ「そ……そうね!」
ハナヨ「そうだね…そうかも」 −−−−−ロサンゼルス国際空港-発着場
ノゾミ「はぁ…はぁ…(この技術…これさえあればドイツはまた…!)」タッタッタ
ノゾミ「やっほーー!気分最高やわぁ!」
ゴオオオオオオオオオ ゴオオオオオオオオオ
ノゾミ「飛行機のおかげでいくら叫んでも聞こえへんし…叫び放題やなぁ」タッタッタ
ゴオオオオオオオオオ“パァン!”ゴオオオオオオオオオ
ノゾミ「っぅぁあっ!!!っつ!(なんや!?撃たれた!?)」バタッ
エリ「……………」
海未「良く来てくれましたね、ノゾミ」
ノゾミ「(エリ…海未ちゃん……何で!?)」
海未「確かに貴女の計画は緻密で、合理的でした。しかし、いささか合理的過ぎましたね」
海未「正直、貴女がどこで作業を進めるかというのがネックでした……そこは完全に不確定。もしかしたら私たちの選んだ3つの空き部屋でない可能性すらあった」
海未「しかし、一度居場所が確定すれば、後の貴女の行動は自ずと決まってくる……
鍵となったのは、“飛行機の出発時刻”それと“逃走経路”です」
ノゾミ「……!!」 海未「わかってきましたか?幸いこの空港は短間隔で飛行機の出る場所ではありません」
海未「その為貴女が何時に発着場に行こうとするかは把握していました…16:00発、15:45分には発着場に着いていたかったはずです」
海未「そして“逃走経路”…几帳面な貴女の事、多数の経路を用意していたはず…私たちに追われる事も想定したルートもあったはずです。撒く事を想定した複雑な…」
海未「だから私達はその可能性を潰すことにした、時間をギリギリまで引き伸ばし、“最短距離で発着場に着くルート”だけを貴女が走るようにしたんです」
ノゾミ「…………………(くそっ…こんな所で)」
エリ「そして、私たちがここに張り込んだ…“外れ”組の私たちがね。ここなら飛行機の発着音で銃声も聞こえない…急拵えの割には良い作戦だったわね」
ニコ「…………残念だったわね。私たちはあんたの計画を阻止しに行った訳じゃない、成功させたかったのよ」 マキ「そのせいで私、すごい足痛いんだけど」
ハナヨ「大丈夫?」
海未「お、無事でしたか」
エリ「良かったわね」
ニコ「悪かったわよ、マキには…じゃあ、ノゾミ、これ貰うわね」サッ
ノゾミ「あっ………(データ…)」
ニコ「ほら。持ってきなさい。データとチケット」
マキ「え………?」
海未「貴女がDr.ニシングストンの娘という事実は変わりません…今回のようなことがまたいくつあるか…わかりません」
エリ「足の療養ついでに、身隠してなさい」 ニコ「ほら行きなさい。これチケット2人分」
マキ「ニコちゃん…」
ハナヨ「いいんですか。貴女はこんな結末が、貴女の…!」
ニコ「私たちには戻るべき現実がある。それがマキにとっては貴女との未来なのよ」
ハナヨ「そう…ですか。そうですね。いえ、そうします」
ニコ「それで良いのよ。時期戦争も終わる。カンザス辺りで平和に暮らしなさい」
マキ「……いつかは帰るわ。私の家は、サンタモニカだもの」
ニコ「そう…ま、良いわ。行きなさい」
マキ「あ…でも、コトリ……」
ニコ「…………」ヒョイッ
マキ「えっ……何これ」キャッチ!!
ニコ「開けなさい…コトリからよ」
マキ「“マキお嬢様へ……”」
『マキお嬢様へお小遣い、10ドルです。ハナヨさんとの飛行機の中でのお菓子でも買って下さい。 p.s お嬢様のすることなら私、何でもわかってるんですよ?』
ニコ「こういうこと。良いメイド…いや、友人に恵まれたわね…え、何?5ドル要らないの?」
マキ「……空港で何か買っておいて。コトリへの置き土産にするわ」
海未「ほぅ……メイド孝行ですね…では、そろそろ……」
ノゾミ「待てぇ!!」
マキ「………ノゾミ」
海未「貴女の麻酔銃、ポンコツですか」
エリ「おかしいわね、日本製かしら」
海未「……………」 ノゾミ「ウチは……!ウチはまだ!!
わかっとる、わかっとるんよ、ドイツは負ける…」
ノゾミ「そして大戦全ての責任を押し付けられ“悪夢の独裁者”アドルフヒトラーを生み出した狂気の国家として語られる…二度と立ち直れないかもしれんのや…」
ノゾミ「だがあれが!UFO兵器のあの技術さえ隠し通し、更に更に進化させれば……!!世界を空から支配する…!ドイツ第四帝国の誕生や!!」 マキ「………ダメよ。貴女には気の毒だけど、ドイツはやり過ぎた。一回頭を冷やすことね。いつかきっと、やり直せる日が来るわ」
戦後ドイツは様々な国に分割管理され、もはや原型を留めないまでになる。
その後一部統合されるも、東西ドイツの二分割という悲運からは逃れられなかった。
しかし、西ドイツはやがて「奇跡の復興」を成し遂げみるみる発展。
著しい経済成長を遂げることとなる。 ノゾミ「っ………!海未ちゃんは、日本はこれで良いの!?」
海未「日本は今後、長い長い戦後を生きることになるでしょう」
海未「おそらく連合国のどこかの統制下で…しかし“下からの改革”によって近代を迎えなかった我々は、市井の人々の本気を未だ見ていません」
海未「例えその力の源泉が奴隷道徳であったとしても、日本はまた前を向けます」 ノゾミ「何なんよ…海未ちゃんまで!!………マキちゃん!動かないで!!!」チャキッ
プシュッ ドスッ
ノゾミ「うっ…」
エリ「…やめなさい。往生際、悪いわよ」
海未「……まだ隠し持っていたんですね」
マキ「というか、貴女はそもそも何で…協力してくれてる意味が良くわかんないんだけど…」 エリ「諦めたの。アメリカの核開発が進むのはもう良いわ。でもドイツの復活は困る」
エリ「(ていうか、うちの核開発結構進んでるみたいなのよね。
アメリカの開発状況も調べたけど…あんまり進んでないし…危険を侵してまで止めるリターンが無いのよ…あぁ、こんだけ調べて「必要ありませんでした」って…なんかドッと疲れたわ。私何しに来たのよ…まぁ、でも…)」 警官隊「「どうかされましたか…!」」
海未「!…ロス市警のソノダです。同じくロスのトージェル警部補が撃たれました(ちょうど良いタイミングですよ、さすが野生の勘)」
海未「彼女が犯人です。連行して下さい」
エリ「ちょっと…海未…辞めてよ…」
海未「…!馴れ馴れしく下の名前で呼ばないでください!!」
警官?「さ!行くにゃー!」
エリ「あ…そういう事…はいはい、面倒ね………」
ニコ「あんたエリと初対面よね…?なんかあったの?」
海未「………何もありませんよ……それより、ほら」 マキ「………」
ハナヨ「………」
マキ「私の事…好きだった?」
ニコ「……えぇ。だけど、ここに引き止めては置けない。私、あんたの為に自分を傷つけられるくらいには大人だけど、あんたの為にあんた自身を傷つけられるほど、大人じゃないわ」
マキ「そ…」
ニコ「“君の瞳に乾杯”(Here’s looking at you.)」
マキ「………///」
ニコ「一度言ってみたかったのよ…いい顔見れたわ。じゃあね、二人とも」 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ニコ「(プロペラ旅客機・DC –3が、雲に消えてゆく。もう5時半だ。
朱より紅い空の色に、何かを思い出す。夢を見ていたのは私だ。見させてくれたのがあの子だ)」
海未「楽しかったですね」
ニコ「……はぁ?」
海未「場違いなセリフだと思いますか?でも私は楽しかったです。
“夢を見ているような現実”でしたよ…こんなご時世です。少しくらい、そんなものを楽しんでも誰も怒りませんよ」
ニコ「…そうね。でもあの子には、“真っ当な現実”を生きて欲しいわ」
海未「そのつもりですよ。彼女は“夢”と“現実”に揺れ、“現実”を取った。でもそれは“夢”を諦めたわけじゃない。時々、“夢にも思わないこと”が起こる。その“現実”の可能性を信じたんです」
ニコ「あんた、良いやつね」
海未「ええ。しばらくはロス市警としてサンタモニカに居ます。仲良くしましょう」
ニコ「“海未、これが私たちの友情の始まりね”」
海未「“カサブランカ”ですか?」
ニコ「……えぇ。」
ーーーーfinーーーー これに終わりです。「ダイヤモンドプリンセスの憂鬱」の勝手な解釈をしてしまいました。読んでくれた人、ありがとう。 >>83
あ、前も見てくれてましたか。
ありがとう。 乙乙、当分はあんな超大作見れないと思ってたらまさかね
いやはや流石 本格派はもっと評価されてほしいな
こういうの読みたい >>88
次はLoveless worldでやろうと思ってます >>85
>>86
>>87
堅苦しい部分も多いので、受け入れられにくいかと思っていました。
そういって頂けるとありがたいです。 次はベトナム戦争かキューバ危機か、或いは中東戦争か・・・・ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています