【SS】 よしルビQUEST
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善子「A42tc5=ΩtWin21liguLl……」
ルビィ「……」カリカリ
善子「そこから外側に円を作って、チョークは赤色ね」
ルビィ「……」カッカッカッ…
善子「そう、その調子……ルビィ、貴女円を描くの上手ね」
ルビィ「えへへっ…そうかなぁ」
善子「はいそこでストップ、これで陣は完成よ……最後に」
ルビィ「真ん中のお皿に」ピッ
善子「お互いの血を一滴」ツゥー
ポタッ……
善子「さあルビィ、準備はいい?」
ルビィ「うん」
善子・ルビィ「……汝、常世の国に在らずレば。 我、現世にて己が姿をミたりて。」
故有りし世に糸重ね、一輪自≪かかぐ≫り下思ひて。 響かせたまへ
我、張り者也─── ルビィ「死神…」
死神「……ほう、成程やはりか」
死神「どうやら選別の結果に誤りはなかったようだな」
ルビィ「あの、どういうことですか」
ルビィ「選別って、なに?」
死神「貴様は選ばれた人間ということだ、そう、あいつに」
死神「私の言葉が通じているのが何よりの証拠だ、他のものは会話すら成立しなかったからな」
ルビィ「それじゃ分からないよ…何の説明にもなってない」 死神「説明だと?」
ルビィ「そうだよ、だってまだ何も教えてもらってないもん」
死神「……」
ルビィ「ねえ、ルビィはどうしてここにいるの」
ルビィ「ルビィね、あの夜から何も覚えていないの……それって」
ルビィ「あなたがルビィたちに何かしたから? …もしそうなら」
ルビィ「みんなは、善子ちゃんはどこにいったの?」
死神「ふん…喧しいうえに図々しい、面倒な女だな」
死神「お前みたいな奴が一番相手にしていて疲れる、あの時もそうだった」ハァ 死神「だが」ジロッ
ルビィ「……」
死神「物怖じしないところを見る限り、それなりに胆は据わっているようだ」
死神(所詮消える命、文字通り冥土の土産に聞かせてやるのも悪くはないか)
死神「…いいだろうそこに座れ、一から教えてやる」
死神「まだ“その日”が来るまで時間はあるからな」 ──
曜「……つまり、その本に書いてある儀式を行ったせいであの事件が起きて」
曜「ルビィちゃんがいなくなっちゃったかもしれないってこと?」
善子「……その通りよ」
千歌「…梨子ちゃん、どう思う?」
梨子「可能性はかなり高いと思う、少なくともこの本に何かあることは確かだしね」
曜「どうしてそう言い切れるの?」
梨子「だってこの本、私には読めないから」
善子「えっ…嘘でしょ?」 梨子「嘘じゃないよ、分かるのは最後のページの魔法陣が描かれている図だけね」
曜「ちょっと見せて……本当だ、何が書いてあるのかさっぱり分からない」
曜「千歌ちゃんと花丸ちゃんは? 読める?」
千歌「ううん、全然読めない」ブンブン
花丸「右に同じずら」 善子「そんな…だってこれ、ルビィも読めてたのよ?」
善子「だから呪文の部分だって二人で」
花丸「ちょっと待ってよ」
花丸「ルビィちゃんが読めたって…善子ちゃんそれ」
善子「あっ…」
梨子「これで間違いなくなったわね」
千歌「……あれ?」 善子「…最低ね、私」
善子「自分の都合でルビィを巻き込んで、そのせいでっ」
千歌「待って善子ちゃん、梨子ちゃんと花丸ちゃんも」
千歌「なんかそれおかしくない?」
善子「…え?」
千歌「ルビィちゃんが消えたのが儀式のせいだっていうのに、その前から文字が読めるのって変じゃん」
千歌「なんで読めるの? それも善子ちゃんが何かやったことなの?」 梨子「どうなの、善子ちゃん」
善子「…あれ以外には何も手をつけていないわよ」
善子「だからこの本だってさっきの話を聞くまでは、誰でも読めるものだと思っていたし」
曜「じゃあ元々何もしなくても二人は読むことが出来たってこと?」
善子「そうなるわね」
千歌「だったら余計に変じゃん、それにずっと気になってたけど」
千歌「儀式のせいっていうなら、なんで善子ちゃんだけ何もないの」
善子「それは……」
花丸「確かに…可笑しいね」 善子「……」
曜「とりあえず、一回話を整理したほうがよさそうだね」
梨子「…そうね、お願いできる?」
曜「うん、じゃあ少し待って、まとめるから」 ……
曜「…よし、終わったよ」
千歌「お疲れさま曜ちゃん」
曜「うん、これは予測も含めてなんだけど」
曜「今までの話を粗方まとめるとこうなるよ」
曜「まず発端である女性が行方不明になる事件が起きたのが今から10日ほど前の6月28日」
曜「現在の時点でルビィちゃん以外の人は全員見つかっていて、でも見つかるまでの間の記憶は誰も覚えていない」 曜「で、その事件の原因はさらにそこから一ヶ月前にあった」
曜「善子ちゃんとルビィちゃんがやった魔術書に書かれている儀式のせいだと思われてる」
曜「実際にその魔術書に書かれている文字は二人にしか読めないわけだし」
曜「最終的に犠牲者がルビィちゃんだけになっていることも考えると、何か関係があるのは間違いない」
曜「だけど、そもそものきっかけ……原因の原因であるこの本を」
曜「どうして二人が読めたのかまでは分からないし、そこについては善子ちゃんも何もしていない」
曜「更に言うと、儀式を行ったのは善子ちゃんも同じはずなのに善子ちゃんには一切の影響がなくて」
曜「その理由も不明なまま今に至ると……こんな感じかな」 梨子「…こうして振り返ると違和感ばかりね、一番妙だと思うのはやっぱりこの本だけど」
花丸「どこで見つけたのこれ?」
善子「押入れの奥だったかしら、どこで手に入れたか、いつからあったのかはママも分からないって」
花丸「ちなみにお母さんは読めたの?」
善子「いいえ、全然」
花丸「親族も読めない…」
梨子「ねえ善子ちゃん、本の内容を訳して書き写すことって出来る? 何か分かることがあるかもしれない」
善子「やってみるわ」 善子「──ここが呪文の部分ね、こっちが私たちが唱えたほう」
梨子「…これ多分だけど西洋魔術よね? なんで古語が使われてるの?」
善子「私の意訳よ……その、そっちのほうが格好いいと思って…」
曜「…それ意味あるの?」
善子「ここでいうところの呪文っていうのは内容が大事なのよ」
善子「言語の表面じゃなく、その言葉にある真意を読み解くことが重要になるの…多分」
曜「多分って…」
善子「しょうがないでしょ、読めるって言ってもあくまでニュアンスとして何となく分かるって感じなんだから」 花丸「じゃあこっちが直訳したほう?」
善子「そうよ」
花丸「えっと……お前が望むところにいないのならば、今は私だけしかお前の存在を感じることが出来ないのだろう」
花丸「もしそうならば過ぎ行く世に想いを連ねて、いつか」
花丸「ただ一輪の花にすら縋りつくようなこの感情を解き放ってみせる」
花丸「私は愛を貫く者……か」 千歌「うーん、確かにこれだけ見たら告白の意味として取れなくもないよね」
曜「それに、2018年の6月28日に発動する…とも書いてあるし、余計そう思っちゃうんじゃないかな」
善子「だからって許されるわけじゃないけどね」
花丸「善子ちゃん、そのことよりも今は謎を突き止めるほうが大事だよ」
善子「……そうね」 梨子「そしてこっちが最近読めるようになったページの訳…どうして直っているのかは一先ず置いといて」
梨子「現世と冥府を繋げる器、それを為すもの、これ即ち命である」
梨子「器、暦、来るその時に導かれるようこの術を新たな世界創造に捧げる…ここがよく分からないわね」
花丸「あの世とこの世を結ぶために必要なものが命で」
花丸「その命と日が揃ったときに導く…導くって何を」
千歌「ルビィちゃんじゃないの?」
善子「ルビィは器のほうじゃないの? 命を使って繋げるんだから」 曜「いや、それも少し引っかかるかな」
曜「仮にだけどルビィちゃんが連れ去られた場所がここでいう冥府…あの世だとするよ? そうしたら」
梨子「もうその時点で現世と冥府は繋がっているわけだから、ルビィちゃんがその器っていうのはないかもね」
善子「冥府が個人によって違う存在で、一人ずつ命を使わなくちゃいけないような場合は?」
梨子「それこそ考えられないと思うけど、その理屈なら行方不明者全員が連れ去られた時点で死んでるし」
梨子「こっちに帰ってこられるわけがないでしょ」
善子「……」
梨子「とりあえず既に死んでいるって前提は無しにしましょう、大丈夫だから」
善子「…ええ」 千歌「じゃあ先に進めるよ、この世界創造っていうのはなんだろう?」
曜「多分条件が揃うと何かが生み出される、何かを創れるってことなんだろうけど…」
花丸「世界の意味合いによっても変わってくるから何とも言えないずら…」
善子「この術も、術<じゅつ>なのか術<すべ>なのか曖昧だしね」
善子「どちらに取るかで解釈が分かれるような含みが多すぎるのよこの本」
花丸「ちなみに善子ちゃんはどっちだと思う?」
善子「術<すべ>のほう、何となくだけど」
善子「あと世界っていうのは多分…世界観のことじゃないかしら」 千歌「世界観を創り出すってどういうことだろう?」
曜「あれじゃないの、衝撃体験で人生が変わったみたいなやつ」
千歌「ああ〜」
善子「まあ平たく言うとそんな感じじゃない? 生まれ変わると言ってもいいかもね」
梨子「ところで術の読みがすべの方だとすると、方法って意味になるから」
梨子「この呪文を指していない可能性もあるわね」
曜「そっか、別のやり方があるかもしれないわけだ」
千歌「うーん、今のところ分かるのってこれくらいかな」
梨子「本の内容についてはそうかもね、でもまだそれ以外に手掛かりがあるかもしれないわ」
花丸「善子ちゃん、他に何か気になったこととかない?」 善子「気になったことね…………そういえば」
花丸「なに?」
善子「いや、前にルビィを見送ったとき…その日は満月だったんだけど」
善子「あの子、三日月が綺麗だって言ったのよ」
花丸「三日月…」
善子「うん、その時は見間違いかちょっと変だなくらいで済ませていたんだけど」
曜「見えてたものが違ったってこと? それっていつのことか分かる?」
善子「確か4月の……20日、あたりだったと思う」
千歌「えーっと4月20日、っと」スッスッ 千歌「……ん? ねえ善子ちゃん、満月が見えてたのは善子ちゃんだったよね」
善子「ええ、間違いないわ」
千歌「それでルビィちゃんには三日月が見えてたんだよね」
善子「そうよ」
千歌「本当に?」
善子「だからそうだってば、どうしたのよ」
千歌「…合ってるよそれ、その日に見えるのは三日月で合ってる」
善子「え…?」
曜「ちょっと待って、それってつまり」
千歌「うん、満月が見えてるほうがおかしいってことになる」 善子「…おかしかったのは私のほうだったってこと? でも、この出来事自体は4月にあったもので」
花丸「儀式が行われる日のさらに一ヶ月前の話だよね……ということは」
善子「私は私でこの本から何かしらの影響を受けている…ルビィとは違った形で、しかもより早い段階で」
曜「それぞれ違う効果が表れているってこと?」
善子「違うわね、そういうものじゃなくて繋がりの差よ」
善子「ルビィと私では根本的にそこの部分の違いが……っ…!」ズキッ
花丸「よ、善子ちゃんどうしたの? どこか具合でも…」
善子「……まただ」
花丸「また、って何が?」 善子「たまにあるのよ、思考が乗っ取られるというか…ううん」
善子「私の知らない情報や記憶が突然頭の中に流れ込んでくるような、そんな感じ」
善子「そこから自然と答えが浮かんでくる、みたいな…上手くは言えないけど」
梨子「たまにってことは今までにもあったの?」
善子「何回かはね…でも」
善子「今回のはいつもよりも少し、強かったかも」 曜「繋がりの差、根本的に違うって答えてたけど」
千歌「それって本について言ってたの?」
善子「多分そうだと思う」
梨子「繋がり……ねえ、そうなると」
梨子「善子ちゃんは魔術書とより密接に繋がっているからこそ離れられないって考えも出来るんじゃないかしら?」
千歌「どういうこと?」
花丸「影響がないからここにいるんじゃなくて、影響を受けてるからここに留まっているんじゃないかということずら」
千歌「ふむふむ、成程ー」 梨子「どれも予想の域を出ないものだけどね」
善子「だけど間違ってるとも言えないわ…それに」
善子(……ページの修復とさっきの思考)
善子(それも私とこの本の繋がりに何か関係があるかもしれない)
善子(でもどうやって証明する? こうやって考えを出し合ってるだけじゃリリーの言う通り)
善子(予想ばかりで確実にそうだとはならないし…)
梨子「それに、なに?」
善子「…ああ、ごめんなさい何でもないの」 善子「うん、とりあえず私が気にした点はこれくらいね、他にはもうないわ」
曜「そっか、じゃあ今日はもうこれくらいにしておく?」
千歌「そうだね、続きはまた今度、何か分かったときに」
善子「ええ、今日は助かったわ」
曜「いいってば、でもさ」
曜「今日の話を聞く限りだと、どうしても善子ちゃんたちの儀式以外にも何かあるって思っちゃうよね」
千歌「うんうん、何か怪しいよね」 善子「儀式……」
善子「……あ…!」ハッ
善子(そうか、それがあった……)
善子「ねえ曜さん千歌さん、最後にちょっと頼みたいことがあるんだけど」
曜・千歌「ん?」
善子「二人の友達か知り合いに例の事件の関係者がいないか調べてほしいの」
千歌「いいけど、なんで?」
善子「ええ、ちょっと試してみたいことがあってね」
善子「その為にも行方不明になった被害者とコンタクトをとりたい」 ……
善子「…ふう、ここまでまどろっこしいと頭に入れるのも一苦労ね」コトン
善子「そろそろ休もうかしら」
善子「いや、その前に…」スッ
善子「…もしもし花丸? ごめん夜遅くに」
善子「図書館で調べてほしいものがあって……そう、アレ」
善子「参考文献くらいなら多分見つかると思うの、それでね」
善子「あとで写真の画像をいくつか送るから…うん、よろしく。じゃあね」 善子「さてと、あっちの判明は任せるとして」
善子「問題はこっちね」
善子「選別、繋がり、影響、記憶と……」トントン
善子「──魔術」
善子「ある程度のところまでは分かったけど、それでも」
まだ遠い気がする。
善子「…今日はもう寝よう」 ──
─
善子(…………ん…あれ……?)
善子(何、ここ…どこ?)
やけに暗い紫色の光が、周りを覆っていて……だけど
そこまで恐怖を感じない。
善子(なんでかしら……ん?) 善子(……よく聞くと話し声がするわね、誰かいる?)
……デ… ……ナノ
善子(いや…というかこれ、もしかして)
善子(私に向かって話しているんじゃ…)クルッ
ルビィ「え?」
善子(っ!! ルビィ!!? ルビィなの!?)
善子(どうして貴女がここに! ねえっ!!)
ズズズ…… 善子(──!? 何、急に体が引っ張られるような…いや違う、この感覚)
“引き剥がされる”っ…!
ルビィ「……」ジッ
善子(何でよ、このっ…ようやく……ようやく見つけたのにっ!!)ズズッ…
善子(あんた一体何だっていうのよ!!?)
善子(分かってるのよいるんでしょそこに! 出てきなさいよ!!)
グワンッ
善子(……ぁぐっ……くそ…まだ何も…してないのに!)ググッ
善子(こんなことで、私は……私はねえっ!!)
善子(ルビィっ!! 聞こえてるでしょ!?ルビ────)
プツンッ ルビィ「……」
死神「どうした」
ルビィ「…今、少しだけ善子ちゃんがいたような」
死神「ほう、そうか」
ルビィ「驚かないの?」
死神「その善子という娘はアレに書かれている儀式を行った者なのだろう?」
死神「ならばそういうこともある。いや、その娘がアレを傍に置いてある以上は」
死神「寧ろ必然とも言えるだろうな」 死神「だから私にとってはそこまで気にするほどのことでもない」
ルビィ「……」
死神「それよりも問題なのは、お前もあの儀式に手をつけたということだ」
死神「あくまでも補助とはいえ、あれは本来“一人”で行う予定のものだったというのに」
死神「唯一の見落としがあったとするならば、お前と奴がそれほど近い関係にあったという点か…」
ルビィ「見落とし…死神さんにとっては良くなかったってこと?」
死神「とはいえ、所詮それも僅かな不確定要素に過ぎん」 ルビィ「どうだろうね、まだ分からないよ?」
死神「無駄な希望に縋るのはやめておけ、打ちひしがれるだけだ」
ルビィ「ううん、やめない」
ルビィ「ルビィは信じてるから、善子ちゃんのこと」
死神「…馬鹿が。信じたところでどうにもならんわ」
死神「結局己が身を救うのは……己自身でしかないのだからな」
ルビィ「……」
ルビィ(ならどうして……矛盾してるよ…) =====
善子「……はっ…!! はぁっ…はぁっ!」ガバッ
善子「夢……じゃない…」
善子(あの感触、まだ残ってる…)
善子(じゃあやっぱりあれは、あの光景は、嘘じゃなくて)
善子(本当の……)
善子「……あぁ……よかった…」ギュ
善子「生きてた…っ…!」ポロポロ 善子「っ…」ゴシゴシ
善子「そうと決まれば、やることは一つだけ」
ブーッ ブーッ
善子「ルビィをあそこから連れ戻す」パシッ
善子「もしもし…ええ、わかったわ。すぐそっちに行く」
善子「皆も一緒に…そう、伝えたいことがあるの」 千歌「え!? ルビィちゃんを見たの!?」
善子「向こうは気付いていたか怪しかったけどね」
善子「私の声、聞こえてなかったみたいだし」
花丸「そっか、生きていたんだ…良かったあ……」
梨子「ねえ善子ちゃん、水を差すようだけどただの夢って可能性は…」
善子「もちろん考えたわ、でも私の考えが間違っていなければそれも否定できる」
曜「考えって?」
善子「それを今から証明しに行くのよ」 ─
千歌「この子だよ、中3なんだって」
女子「は、初めまして」
善子(初対面だからか、ちょっとおどおどしてるわね…それとも)
善子「やっぱり事件のトラウマとか…」
曜「あーそうじゃなくて、この子Aqoursのファンなんだ」
曜「特に善子ちゃんの」
善子「そ、そうなの?」 女子「はい、あの…大会を見て、好きになりまして…」
善子「あ、ありがと」
花丸「善子ちゃん、握手握手」
善子「え? ああそうだったわね、はい」
女子「いっいいんですか!? ありがとうございます!」ギュッ
─ ヴオンッ ─
善子「!!」
善子(思った通り…ビンゴだわ) 女子「…? あの、どうかしましたか?」
善子「…ううん、何でもないわ」
善子「こっちこそありがとね、わざわざ来てくれて」
善子「今年高校受験なんでしょ? 頑張ってね、応援してるから」サラサラ
善子「はいサイン、もう私はスクールアイドルやってないけど…よかったら」
女子「ほ、本当にいいんですか!?」
善子「もちろんよ」ニコ
女子「わぁ…ありがとうございますっ大切にします!!」ペコリ
女子「帰ったら皆に自慢しよう…!」タタタッ 千歌「よかったの帰しちゃって? まだ何も聞いてないけど」
善子「いいのよ、おかげで重要なことが分かったから」
善子「どうやら予想は的中したみたい」
梨子「それって……」
善子「ええ、他の被害者の顔写真ってある?」
善子「それも合わせて確認したい」 ─
善子「さっきの中学生の子と接触して、見えたものがあるの」
花丸「見えたもの?」
善子「彼女たちが失っているであろう、行方不明になっていた時の記憶よ」
「!!」
善子「あの事件がこれによって引き起こされたのはまず間違いないわ、儀式の有無は置いといてね」
善子「そしてその本と繋がりの深い私なら」
善子「もしかしたら、被害者を通して何か感じることが出来るかもしれないって思ったのよ」
梨子「成程……」
善子「結果は成功みたい」 曜「おーい持ってきたよー!」タッ
曜「公開されていたのを出来るだけ集めてみたよ、とりあえずこんなものかな」
善子「……」
曜「どう?」
善子「うん、やっぱりね」
善子「ここにいる全員、同じ場所にいたわ」
曜「ということは…」
善子「連れ去られた場所は予想通り冥府、そしてその場所は一つだけ、これが確定したわね」 曜「あの予想、合ってたんだ…」
善子「ええ…あと、分かったことがもう一つ」
善子「これは今日見た夢とさっきので気が付いたんだけど」
善子「ほぼ間違いないと思うわ」
千歌「どんなこと?」
善子「まずあの子と接触したときに見た景色で、おかしな点があったの」
善子「それは彼女の顔も“見えていた”っていうところ」 善子「普通彼女の視点で周りを見るのなら、そうなることはあり得ない」
千歌「鏡でもない限り自分で自分の顔は見えないもんね」
梨子「でも、それなら他の被害者の目線で見てるかもしれないわけだけど」
梨子「善子ちゃんはここにいる全員確認してって……まさか」
善子「そう、つまり彼女や他の被害者以外の第三者の目線で私はそれを見ていたということになる」
善子「そして今日見た夢でも…目の前にルビィがいて、私に向かって話していたのを見た」
善子「ルビィ以外いるはずのないあの場所で、私はそこにいたんだ」 善子「本の影響と私が見た景色とルビィの現在の状況、ここから私が導き出した答えはただ一つ」
善子「私の視点になってた第三者……そいつが彼女たちを連れ去った張本人で」
善子「その彼女らの中から何かしらの理由でルビィを選別して、今もまだあの子と一緒にいる」
善子「しかもその上で、私と本を通して繋がっている人物……こんなのもう一人しか考えられない」
「「…………」」
善子「そう、あそこにいた奴の正体は──」
善子「この魔術書を書いた作者、その人そのものよ」 明日更新します
それとAqours紅白出場おめでとうございます。 梨子「作者がこの事件の元凶ということ? でも何のためにそんな」
善子「さあね、目的までは分からないけど」
善子「ここに書かれている世界創造のための術…」
善子「これを実現させようとしているのは間違いないわ」
善子「その手段にルビィが必要だということも、今までのことで分かってる」
曜「それってかなり不味いんじゃ……」
善子「ええ、だからその前にルビィをあそこから連れ戻して救い出すのよ、何としてでも」 千歌「でもどうやって? ルビィちゃんがいる場所はあの世なんだよ?」
善子「……そこまでは、まだ思いついていないけど…」
花丸「…方法なら、あるかもしれないずら」
善子「本当に!? ねえ花丸、それってどんな方法なの?」
花丸「皆インターネットをやっているなら一度は見たことがあるはずだよ」
花丸「異世界、魔界、霊界…呼び名は色々あるけど」
花丸「今自分が住んでいる世界とは別の場所へ行く方法を」 梨子「まあ、確かに見たことくらいはあるけど…あれっててっきり都市伝説みたいなものだと」
花丸「そうだね、信憑性に欠けるものもある…だけどこの世の中に幽霊というものは確実に存在していて」
花丸「それらはここじゃないどこかから来ているというのもまた、事実ずら」
花丸「善子ちゃんが見た冥府がそこに含まれているようにね」
善子「……それで?」
花丸「今までの情報を全部まとめると、現世と冥府の道は既に繋がっていて」
花丸「だから影響を受けている善子ちゃんも向こうにあるものを見ることが出来た」
花丸「つまりは意識だけでもそっちに行けたということになるよね?」
善子「そうなるわね」 花丸「だとすれば答えは結構単純ずら……要はその道に行くための扉を開けばいい」
花丸「そしてその方法だけど、マルが知っている中で一番その効果が現れるのは……」
花丸「合わせ鏡」
善子「合わせ鏡……心霊現象やオカルトでも有名なやつね」
花丸「うん、でも今まで言われてきたであろうそれらの体験談と明確に違う点は」
花丸「もう行く場所がどこか定まっているっていうところかな」
善子「…成程ね、やってみる価値はあるかも」 花丸「ただ、そこまで備わっている状態でも危険なことに変わりはないよ、それでもやる?」
花丸「と言っても、答えは決まっていると思うけど」
善子「やるわ」
花丸「やっぱりね、千歌ちゃんたちは?」
千歌「当然私たちも行くよ!」
善子「ちょっと、流石にそれは……私以外は特に危ないわけだし」
梨子「何言ってるの、ここまで関わっておいて今更引き返すなんて出来るわけないでしょ」クスッ
曜「なんでも一人で抱え込むのはよくないよ、ま、経験談だけどさ」ニコッ
花丸「決まりだね、もちろんマルも行くずら」 善子「……ありがとう」
善子「ねえ花丸、具体的にはどうすればいいの?」
花丸「そうだね…まずは霊的な要素が強い場所、例えば跡地とか廃墟とかそういうところを見つける必要があるずら」
花丸「それと実行する時間は夜、大体0時か数字がゾロ目のときに出やすいって言われてるね」
曜「なら休日のほうがいいかもね、今日みたいな平日だと色々自由がきかないし」
梨子「そうだね、来週は14、15、16で三連休だし…そこに合わせるのがいいと思う」 千歌「じゃあ次の休みまでにそういう怪しい場所を探し出せばいいんだね」
千歌「うん、私に任せてよ」
善子「分かったわ、花丸もそっちの方を手伝ってくれる?」
花丸「いいけど、昨日の頼みごとはどうするの?」
善子「あっ…そうよね…」ウーン 曜「頼みごとって?」
善子「魔術書に書かれているこの文字、何語で書かれているのか調べてもらってたのよ」
梨子「成程ね、ならそっちは私と曜ちゃんで何とかしてみるわ」
曜「うん、忙しいから少し時間がかかっちゃうかもしれないけどね」
善子「十分よ、やってもらえるだけで助かるわ」
善子「私は道具の方を揃えるわ、一番影響が強い人間が使っているもののほうが効果が現れそうだしね」 千歌「よし大体決まったね、それじゃあ次の休みまでに各自やることをまとめるよ」
千歌「まず私と花丸ちゃんは廃墟探し」
千歌「曜ちゃんと梨子ちゃんは文字の言語を調べて」
千歌「善子ちゃんは必要な道具を用意すること」
千歌「日時は土曜日の夜、集合場所は私たちが見つけた廃墟の前で!」
千歌「みんな頑張ろう! Aqoursーー!!」
「「サーンシャイーーン!!」」 曜「…って言ってももう解散してるんだけどね」
千歌「いやー、つい癖で…」アハハ
梨子「フフッ、私たちもつい返しちゃったしね」
花丸「染みついたものはなかなか取れないものずら」
善子「ええ、そうね」クスッ
善子(…ルビィ待っててね、今迎えに行くから) ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています