曜「散った桜はまた春に咲き誇る」
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拝啓 曜ちゃん
おかえりなさい
今回の旅はどうだった?
キツかった?楽しかった?大変だった?
どんな事があっても、船の上のあなたはきっと世界で一番生き生きしてたのでしょうね
そんなあなたが世界で一番好き
迎えに行けなくてごめんなさい
あなたが元気でいてくれるなら、私は他に何もいらない
私は――― ーー
曜「お疲れ様でした」
オツカレー
曜「ふぅ……」
曜「もう9時か……」
曜「ご飯買って帰ろ」 曜「うぅ……寒い……」
イラッシャイマセー
曜(お弁当……あ、何も無い……)
曜(……どうしようかな……えっと……)
曜「……」
曜(……お酒飲も) 曜(んーと、んーと……どうしよっかな)
曜「……あ、みかんサワー……」
曜「……」
曜「これにしよ……えへへ……」
曜「あとはおツマミ……砂肝にしよっと」 アタタメマスカ?
曜「あ、いえ……大丈夫です」
サンビャクヨンジュウイチエンニナリマス
曜「はい……あれ……」
曜「……すみません、1万円からで」
曜(財布重くなっちゃうなぁ……)
曜「あ、レシート要らないです」
アリガトウゴザイマシター ー
ガチャガチャ
曜「ただいまー……」
曜「……」
曜「……誰もいないけど」
曜「ふぅ……」ガサガサ
曜「お酒冷やして……」
曜「シャワー浴びよっと」 シュルッ パサッ
曜「……」キュッキュッ
シャワァァァ
曜「うひぃ!?冷たっ!?」
シャワー「水やで」
曜「家のシャワーに殺される……」キュッキュッ
シャワー「お湯が出るまでちょっと待ってな」
曜「あー……早くしてよ……寒い……」 シャワァァァ
曜「……まだー?」
シャワー「せっかちは損やで」
シャワァァァ
曜「……」
シャワァァァ
曜「……ぬるい……」
シャワァァァ
曜「……え、これ以上熱くならないの?」
シャワー「今日調子悪いみたいや。堪忍な」
曜「何なのもう……いいよこのままで」
シャワァァァ
曜「……はぁ〜……」 曜「……うぅ……寒……」
曜「しっかり拭かないと……風邪引いちゃう……」フキフキ
曜「んー……」フキフキ
曜「よし……」
ガチャ
曜「えへへ……みかんサワーちゃん……」 曜「砂肝〜♪あっためて〜♪」
曜「えーと、1分半……」ピッピッ
曜「……あれ」ピッピッ
曜「……」ピッピッ
曜「……レンジが動かない……」ピッピッ
曜「おーい」ピッピッ
レンジ「」チーン
曜「うそ……壊れた……」
レンジ「」チーン
曜「えー……そんなぁ……」
曜「……このまま食べるかぁ……」 プシュッ
曜「んぐんぐ…………ぷはっ…………」
曜「……」パクッ
曜「冷たい……けど、美味しいかな……」
曜「……」ピッ
テレビ「漫才見せたるわ」ナンデヤネーン!
曜「はははは……」
曜「……んぐっ」
曜「……あ、洗濯機回すの忘れてた……」
曜「……」
曜「明日でいっか……」
曜「」ゴクッ
曜「……飲んだら寝よう」 ー
曜「お疲れ様でした」
オツカレー
曜「今日も遅くなっちゃった……」
曜「……コンビニでいいか」 曜「う〜さむさむ……」
「あ!よーちゃん!」
曜「ん?」
千歌「久しぶり!」
曜「千歌……ちゃん……?」
千歌「仕事帰り?」
曜「ど、どうしてここに……」
千歌「ちょっと用事があってね。飲まない?」ガサッ
曜「そんな……だって……」 千歌「もー!せっかく幼馴染みが会いに来たのになんだそのクソつまんない顔はー!元気だせー!」
曜「口が悪いよ……」
千歌「こっから近いの?」
曜「歩いて5分くらい」
千歌「じゃあ宅飲みだ!!行こ!!」
曜「わっ、引っ張らないで……」
千歌「ヘイタクシー!」
曜「何で?話聞いてた?」 ーー
千歌「おじゃマンゴスチン!」
曜「……」
千歌「何か言ってよ。虚しいじゃん」
曜「いや……」
千歌「つまんないのー」
曜「上がって。狭いけど」
千歌「ホントだ狭いね」
曜「ひ、一人暮らしだから……こんなものでしょ」 千歌「冷蔵庫開けていい?」ガチャ
曜「そういうのは聞いてから開けるんだよ」
千歌「気にしないのー。わっ、スッカラカンじゃん」
曜「最近買い物行けてないから」
千歌「仕事忙しいの?」ガサガサ
曜「うん、まぁ」 千歌「ふーん……レンジ借りるね」
曜「あ、レンジは」
千歌「あれ?動かない」ピッピッ
レンジ「」チーン
曜「壊れちゃったの」
千歌「えー?この砂肝どうすんのさ」
曜「そのままでも美味しいよ」
千歌「そうなの?私に冷えっ冷えの砂肝食べさせて面白い顔したところを写メ撮ろうとしてない?」
曜「してないよ。昨日食べたから」 千歌「……昨日も食べたんだ」
曜「あ……うん」
千歌「……なんかごめん」
曜「いいよ別に……」
千歌「の、飲もうか」
曜「うん」 千歌「カンパイパーイ!」
曜「カンパイパーイ」
千歌「あはははは!」
曜「はは……もう酔ってるの?」
千歌「んぐんぐんぐ……ぷはーっ!不味い!」
曜「えぇ……」
千歌「いやービールはやっぱ美味しくないね!」
曜「じゃあなんで飲んだのさ……」 千歌「ぷりんたい?とかいうやつが入ってるって聞いたから。もしかしたら甘いのかなーって」
曜「プリン体ってそういうのじゃないからね?」
千歌「曜ちゃんはビール飲めるの?」
曜「うんまぁ……少しだけ。職場の飲み会とかで飲まないといけないことがあるし」
千歌「そっかー……職場ねー……」
曜「うん」
千歌「……」ゴクゴク
曜「……な、なに?」
千歌「ん?なにが?」
曜「いや……」 千歌「最近どうなの?」
曜「どうって、特に何もないよ」
千歌「えー!つまんないなー」
曜「そんなこと言われてもなぁ……」
千歌「なんかあるでしょ?あむっ……美味しくないね」
曜「そう?私は好きだけどな」
千歌「砂肝の話はいーから最近あったこと!」 曜「えー?うーん……千歌ちゃんがうちに来たことかなぁ」
千歌「それ今の話じゃん!!」
曜「だってぇ……」
千歌「だってぇ……じゃないよ!つまんない女になっちゃったねーもー」
曜「うぅ……」 千歌「あれ」
曜「今度は何……?」
千歌「洗濯物溜まってる」
曜「ああ……また忘れてた」
千歌「一人暮らしの典型だね」
曜「いやまぁ、仕事で疲れててさ……」
千歌「仕事仕事って、倦怠期の夫婦の旦那じゃないんだから」
曜「私女なんだけど……」
千歌「そんな返しいらない!つまんない!」
曜「厳しいなぁ」 千歌「曜ちゃんが女なんて見なくても死ぬほど知ってるから!ほら脱いでみ!」グイグイ
曜「ちょ、何すんの!」
千歌「確かめてあげるから!」グイグイ
曜「見なくてもわかるんじゃないの!?」
千歌「はぁ〜あ……」パッ
曜「一体何しに来たの……怖いよ……」 千歌「……」ジッ
曜「な、なに……?」
千歌「んー……」キョロキョロ
千歌「……そこかな」
曜「! なにして」
千歌「ちょっと押し入れ開けるね」
曜「ダメっ!!」ガッ 千歌「あれれ〜? なんでダメなの?」
曜「ダメったらダメなの!」
千歌「あ、エロ本でも隠してるの?大丈夫大丈夫、幼馴染みがどんな性癖持ってても海より広い心で優しく解き放ってあげるから」
曜「それ言いふらす気満々じゃん」
千歌「ほーら、いい子だから手を放して」
曜「ダメだよ、ここは」
千歌「……どうして?」
曜「どうしても」 千歌「……」
曜「……」
千歌「……あ、そう」パッ
曜「……!」
千歌「ほんとーーーにつまんない女になっちゃったね、曜ちゃん」
曜「……うるさいな」
千歌「梨子ちゃんが見たらなんて言うだろうね」
曜「っ!!」ギロッ 千歌「この童貞ヨーソロー!」ビシッ
曜「ど、どうてっ……!?」
千歌「待ってろ、叩き直してあげるから!」
曜「わ、私処女なんだけど!」
千歌「そういう返しいらないから!じゃあ帰るね!!」
曜「あ!まだお酒残ってるよ!!」
千歌「あげる!」
ガチャ バタン
曜「……童貞って……」 ーー
曜「お疲れ様でした」
オツカレー
曜「やった。今日は昼で帰れたぞ」
曜「……まぁ、休日出勤なんだけど」
曜「帰って何しようかなー」
グゥ〜
曜「……お昼ご飯かな」
曜「何食べよ」
曜「……」
曜「……コンビニでいっか」 曜「やった……麻婆丼買えたぞ……」
曜「夜はいつも売り切れてるからね……えへへ……」
曜「なんとお酒も買っちゃったんだ……お昼から……」
曜「贅沢な休日の使い方だな……」
曜「……半日だけど」 曜「〜♪」
「こんにちは」
曜「?」クルッ
「お久しぶりですわね」
曜「え……ダイヤ……さん……?」
ダイヤ「お元気でしたか?」 曜「な、なんでここに……って千歌ちゃんか……」
ダイヤ「お昼でもご一緒にどうです?」
曜「あ……えと、買ってきちゃったんだ」
ダイヤ「あら、そうなんですの。残念」
曜「どうしてここに……? あ、中にどうぞ」
ダイヤ「ありがとうございます。お邪魔します」 曜「はい、お茶しかないけど」
ダイヤ「いえ、お構いなく」
曜「それで……その、何か用? わざわざ訪ねてきて」
ダイヤ「そうですね……説明より先に言いましょうか」スッ
曜「これは……?」
ダイヤ「紙とペンと封筒です」
曜「いやそれは見ればわかるけど……」 ダイヤ「曜さん、今から退職届を書いてください」
曜「え?」
ダイヤ「あなたには今の会社を辞めてもらいます」
曜「は? ちょ、ちょっと待って。何を言ってるの?」
ダイヤ「わたくしの言ってることが理解できませんか?」
曜「いやそういうことじゃなくて!」
ダイヤ「いいから早く書いて会社に叩きつけて来てください。全ての話はそこからです」
曜「どういうこと!?っていうかそんなすぐに辞められるわけ」
ダイヤ「そこは心配ご無用」
曜「何言って」 ーー
曜「失礼しました」
バタン
曜「……」
曜「……ほんと辞められた」 コツコツ
ダイヤ「どうでした?」
曜「受け取ってもらえた……あっさりと……」
ダイヤ「でしょう?」
曜「なんで……有給すらまともに取れなかったのに……定時で上がることも出来ない真っ黒な会社だったのに……」
ダイヤ「ふふ、良かったですね。晴れて自由の身ですよ」
曜「自由っていうか……無職になっただけだけど……」
ダイヤ「ではニート渡辺さん、改めてご飯に行きましょうか」
曜「変な名前で呼ばないでくれる?」 ーー
ダイヤ「お口に合いますか?ニート渡辺さん」
曜「やめてってその呼び方。美味しいけど……」
ダイヤ「良かった。なんでも好きなのを頼んでくださいな。遠慮はいりません」
曜「ひょっとしなくてもめちゃくちゃ高いよねこのお店……大丈夫?ニートだけど私……」
ダイヤ「あら自虐?」
曜「話が進まないんだけど」 ダイヤ「大丈夫です。わたくしが持ちますから」
曜「そんな……悪いよ」
ダイヤ「まぁまぁ。先輩の顔を立てると思って」
曜「奢られる意味も分からないのに味わえないよ」
ダイヤ「こういう時素直にご馳走になっておくのが礼儀ではなくて?」
曜「社会のルールをダイヤさんに説かれるなんて変な気分」
ダイヤ「こう見えて立派に社会人してるのですよ、わたくしも」
曜「へぇ……」
ダイヤ「なんですその心底興味ないような反応は」 曜「興味ならあるよ。私に今更どんな話があるのかとか」
ダイヤ「そうですね、そろそろ話しましょうか」
曜「……」カチャ
ダイヤ「箸を置かなくて結構。食べながら聞いてくださいな」
曜「気にしないで。続けてよ」
ダイヤ「そう……では遠慮なく」 ダイヤ「わたくしが会いに来た理由はひとつ」
ダイヤ「あなたに海の上に戻ってもらうためです」
曜「……え?」
ダイヤ「もう一度あなたを海に送り出すことがわたくし達の使命」
曜「何言って……」
ダイヤ「――梨子さんが亡くなってから二年」
曜「!」
ダイヤ「あなたは一体何をしていましたの?」 曜「何を……って……」
ダイヤ「今のあなたを梨子さんが見たら何て言うでしょうね」
曜「……さいな」
ダイヤ「何です?聞こえませんわよ」
曜「うるさいって言ったの!ダイヤさんには関係ないでしょ!」
ダイヤ「どの口が関係ないとか抜かしてますの?」
曜「っ!」ガタッ ダイヤ「食事中に立たない。行儀が悪いわよ」
曜「帰る!」
ダイヤ「……」パチン
ザザッ
曜「! な、何この人達」
ダイヤ「実はこの店、黒澤家御用達のお店でして」
曜「と、通してよ!」
ダイヤ「まだお皿に料理が残ってます。座りなさい」
曜「……!」
ダイヤ「座りなさい」
曜「……」ストン ダイヤ「いいですか、曜さん。これからあなたの生活習慣を改善します」
曜「生活習慣……?」
ダイヤ「ええ。その身体に染みきった不健康な独身社畜体質を根本から叩き直すのでお覚悟を」
曜「なにそれ……」
ダイヤ「文句は受け付けません。そういうことでひとつよろしくお願いしますわ」
曜「よろしくされたくないなぁ……」
ダイヤ「では、食事を再開しましょうか。たんとお食べなさい」
曜「問答無用か……」パクッ
曜(……味がわかんなくなっちゃった) ーー
ダイヤ「再びお邪魔します」
曜「家を見たいって……一体何するの?」
ダイヤ「まずは……」キョロキョロ
曜「ダイヤさん?」
ダイヤ「……そこですか」
曜「っ! ちょっと」
ガラッ
ダイヤ「ビンゴですね」 曜「何してんのさ!!やめて!!」
ダイヤ「ダメです。見えるところに飾りなさい。まずはそこからです」
曜「出来るわけないでしょ!!」
ダイヤ「じゃあなんのために、こんな後生大事そうに持っているんですか? 梨子さんの写真を」
曜「それはっ……」
ダイヤ「本当に目に入れたくないなら、意識していないなら梨子さんのご両親に返せばいい」
曜「……私は……」
ダイヤ「そういうことです。結局あなたは逃げるのも中途半端」 曜「……これは生活習慣改善と関係なくない?」
ダイヤ「いいえ、大アリです。早くどこに置くか決めなさい」
曜「……じゃあここに」
ダイヤ「この窓は日に何回開けますか?」
曜「……さ、3回くらい」
ダイヤ「へぇ……よっぽどホコリが溜まりやすい窓なんですね」
曜「……」
ダイヤ「違うところにしなさい」
曜「何なんだよ……もう……」
ダイヤ「文句を言わない」 曜「……じゃあここ」
ダイヤ「テレビの前……ふむ……」サワッ
曜「そんな……リモコンのホコリとかまで確かめなくても……」
ダイヤ「……まぁいいでしょう。とりあえず良しとします」
曜「とりあえずってなに……」
ダイヤ「では、次に。今生活で困ってることはありませんか?」
曜「収入源がなくなったことかな」 ダイヤ「心配ご無用。船員としての収入が入るまでわたくしが生活費を支援します」
曜「そんなっ。ダメだよそんなこと」
ダイヤ「いいから質問に答える!」
曜「ひぃっ、怒鳴らなくてもいいじゃん……おっかないなぁ……」ビクビク
ダイヤ「……」
曜「え、えと……レンジが壊れちゃってることくらいかな……」
ダイヤ「なるほど、じゃあ明日にでも買いに行きましょうか」 曜「一緒に行くの?」
ダイヤ「もちろん。他には?」
曜「一緒なのか……ええと……あとは特には……」
ダイヤ「……洗濯物が溜まってるようですが」
曜「ああ、これは……まぁあとでやるから……」
ダイヤ「今やりなさい」
曜「ええ……そんなに急がなくても……」
ダイヤ「いいから今やる!」
曜「は、はいぃ!」 ー
曜「お、終わりました……」
ダイヤ「まぁ、良しとしましょう。あとは部屋の掃除ですけど……」
曜「……」ビクビク
ダイヤ「……今日はもう遅いですし、また次にします」
曜「ほっ……」
ダイヤ「あからさまにホッとしない」
曜「す、すいません」 ダイヤ「怒ってないので、そんなに謝らないでください。なんだかわたくしが悪いことをしてるみたいです」
曜(あれで怒ってないとか……どんな基準なんだろ)
ダイヤ「何か?」
曜「い、いえ何でも」
ダイヤ「では、わたくしはここで失礼します。また近いうちに来ますわね」
曜「うん……」
ダイヤ「わたくしがいなくなったからと言って……写真を動かしたらどうなるか分かってますね?」
曜「だ、大丈夫だよ。そんなことしない」
ダイヤ「信じますわよ」
曜「……」 ダイヤ「……では、これで」
曜「うん……気をつけて」
ダイヤ「ああ、最後に一つ」
曜「なに?」
ダイヤ「今夜、このお店に行きなさい」カサッ
曜「……なんで?」
ダイヤ「あなたを待っている人がいます」
曜「待ってる人って……?」
ダイヤ「行けばわかります。まぁ、察しがいいあなたなら分かるかもしれませんが」
曜「……」
ダイヤ「では、ごきげんよう」
曜「……ダイヤさん」
ダイヤ「なんです?」
曜「……いや、何でもない」
ダイヤ「そうですか。では」
曜「……」 プルルル プルルル
ガチャ
ダイヤ「もしもし?」
ダイヤ「……ええ、何とか予定通りにしてます」
ダイヤ「そろそろそちらに向かわせますから、よろしく頼みますわよ」
ダイヤ「……は?」
ダイヤ「昆布とわかめ?そんなのどっちでもいいでしょう!……はぁ?また訳が分からないことを……」
ダイヤ「あーもうじゃあわかめで!全く、あなたと喋ってると疲れますわ……」 ーー
曜(……ここ、だよね)
曜(小さいけど、いい雰囲気……小料理屋ってやつかな)
ガララ
「いらっしゃいませ」
曜「あ、1人なんですけ、ど……!?」
花丸「あ、曜ちゃん来たよ」
ルビィ「いらっしゃーい」
曜「な、な、な……?」
花丸「奥の席にご案内して」
ルビィ「うん。こちらへどうぞ」 曜「なんで二人……?」
ルビィ「ここは私たちの店だよ」
曜「そ、そうなんだ……えぇ……」
ルビィ「お連れ様が参りました」
「待ちくたびれたわよー!」
曜「……やっぱり鞠莉ちゃんか」
鞠莉「あーら、寂しい反応してくれるわね」
曜「や、まぁ何となくそんな感じがしたから……」 鞠莉「まーさかダイヤがばらしちゃったの?」
曜「そんな感じがしたって言ったでしょ。別にダイヤさんからは何も聞いてないよ」
鞠莉「ふーん……ま、とりあえず何飲む?」
曜「……生で」
鞠莉「OK!ルビィ、生二つ!」
ルビィ「かしこまりました」
曜「……ここって花丸ちゃんとルビィちゃんのお店なの?」
鞠莉「そうよ?知らなかったの?」
曜「知らなかったよ」 鞠莉「ふふっ、でしょうね」
曜「……なにさ」
鞠莉「別に。なるほど、千歌っちの言う通りね」
曜「千歌ちゃんから何か聞いてるの!?」
鞠莉「ステイステイ。そう前のめりにならないの」
曜「……!」
鞠莉「特に何か聞いたってわけじゃないわ。今のあなたの様子くらいよ」
曜「あ、そう……」 ルビィ「生二つお持ちしました」
鞠莉「サンキュー!」
曜「ありがとう」
鞠莉「ルビィも一緒に飲まない?」
ルビィ「そうしたいけど、仕事中だから」
鞠莉「あら残念。フラれちゃったわ」
ルビィ「ふふっ、また今度飲もうね」 曜「……なんだかルビィちゃん変わったね」
鞠莉「そうね、みんな変わったわよ。曜がフラフラしてる内に」カチッ シュボッ
鞠莉「ふぅー……そして、あなたもね」
曜「……別に私は……」
鞠莉「……どうして今日呼んだかわかる?」
曜「……話があるんでしょ?」
鞠莉「ええ。さてそれは一体なんでしょう」 曜「なんでクイズ形式?めんどくさいなぁ」
鞠莉「いいじゃない。マリーの遊びに付き合ってくれない?」
曜「……分からn」
鞠莉「『分からない』は無し」
曜「っ……」
鞠莉「簡単なクイズよ。1+1 より簡単な」
曜「じゃあ言わなくても分かるんじゃ……」
鞠莉「あなたは素直じゃないから、『田んぼの田』とか答えるかもしれないでしょう?」
曜「別にそんなことは……ない……」 鞠莉「じゃあ答えて。自分の声で、言葉で、はっきりと」
曜「り……」
鞠莉「……」フゥー
曜「……梨子、ちゃんのこと」
鞠莉「……Very good. よく言えました」 曜「なんなの……急にみんなして……私のところに来て……」
鞠莉「あなたが逃げたからよ」
曜「逃げてなんかっ……!」
鞠莉「逃げたわよ。あなたは、梨子から逃げた」
曜「そんなことない!!皆に一体何がわかるっての!?私は!!」
鞠莉「Shut Up!!」
曜「っ!!」 鞠莉「キーキー喚くんじゃないわよ……もっと惨めになりたいの?」
曜「……!!」
鞠莉「いい?曜、あなたはここで振り返らないといけない。梨子ともう一度向き合わないといけない」
曜「……無理だよ」
鞠莉「無理もクソもないわ。絶対にやらないといけないの」
曜「無理だって」 鞠莉「聞き分けのない子ね……いいわ、これを見なさい」カサッ
曜「……?」
鞠莉「これがなんだか分かる?」
曜「手紙……?」
鞠莉「そうよ、手紙。宛名は」
曜「!!」
『曜ちゃんへ』
曜「その字……!」
鞠莉「そう、梨子からあなたへ向けた最後の手紙」 曜「そんな手紙知らない……!」
鞠莉「いい目付きになったわね」
曜「……!」バッ!
鞠莉「ダメよ」ヒョイ
曜「貸してって!」
鞠莉「近付かないで」シュボッ
曜「な、何して!」
鞠莉「今の曜には渡せない。それ以上近づいたら燃やすわよ」
曜「鞠莉ちゃん……!」 鞠莉「読みたいなら、立ち止まりなさい。フラフラしてないでしっかり立って、振り返って、ちゃんと歩く準備をしなさい」
鞠莉「梨子の思いを背負って」
曜「私は……」
鞠莉「自分の胸の中の想いを、二人分の想いを、もう一度」
『行ってらっしゃい、曜ちゃん』
鞠莉「あなた達の想いを」
『気をつけてね』
曜「私は……!」
『ちゃんと帰ってきて、約束よ』
曜「梨子ちゃん……!!」 ☆ーーーー☆ーーーー☆
曜「一緒に住む!?」
梨子「うん」
曜「いや、そんな急に……」
梨子「大丈夫、曜ちゃんのお母さんには許可とってるから」
曜「いやまず私に取ろうよ」
梨子「夢の同棲生活……!毎日10回……!」
曜「桜内さーん?おーい」 梨子「……あ、ごめんね。曜ちゃん10回ももたないね」
曜「何言ってるの? そんなことより大学は……」
梨子「曜ちゃんと同じ大学だから大丈夫よ」
曜「はっ?や、梨子ちゃん音大受けたんじゃ」
梨子「変えたの」
曜「いやいやいや、聞いてないよ!」
梨子「驚かせようと思って」 曜「確かに驚いたけど……でもそれって」
梨子「心配しないで。ちゃんとピアノは続けられるところだから」
曜「ホントに?」
梨子「ホントよ。曜ちゃんにウソはつかないって」
曜「……」ジーッ
梨子「……」
ブッチュゥゥ
曜「んぐっ!? な、何すんの!?」
梨子「美味しそうな唇だったから、つい」
曜「もう、真面目に話してるんだけど!」
梨子「曜ちゃんリップ変えた?」
曜「梨子ちゃん!」 梨子「ふふっ、ごめんね。大丈夫だから」
曜「もう……信じるからね」
梨子「うん、ありがとう」
曜「……ところでそのポケットからはみ出してるのは何?」
梨子「ああっ! しまったさっきタンスからくすねた曜パンが!」
曜「前言撤回していい?」 曜「よしこちゃーん……」
善子「なによ、辛気臭い空気かもし出して。鬱陶しいわね」
曜「辛辣でありますなぁ津島後輩」
善子「先に帰るわよ」
曜「わ、ちょっと待ってよ。曜ちゃんのお話聞いて!」 善子「はいはい……なに?またリリーのこと?」
曜「またってなにー?私そんなに梨子ちゃんのこと話してる?」
善子「話してる話してる。ウンザリするほど」
曜「辛辣ゥー!」
善子「じゃあね。お疲れ様」
曜「わー!待ってってば!」
善子「早く話しなさいよ」 曜「う、うん、わかった……」モジモジ
善子「なにモジモジしてんの気持ち悪いわね」
曜「ヒドイ!」
善子「声大きいし先に進まない」
曜「い、いやだってさ……えへへ」
善子「なによもうじれったい!」
曜「あ、あのね……卒業したら梨子ちゃんと同棲することになったの」
善子「へぇ……同棲……同棲!?」
曜「わ、善子ちゃん声大きい!」
善子「ヨハネ!」
曜「大きいって!」 善子「同棲ってあんた……ウソでしょ?」
曜「ほ、ホントだよ」
善子「だってあんたとリリーは別の大学に進学するんじゃ……」
曜「なんか梨子ちゃんがいつの間にか私と同じ大学にしてて……」
善子「えー……信じられない……ってリリーならやりかねないか……」
曜「納得しちゃうんだ……」
善子「いやまぁ、あの様子見てたら納得もするでしょ。引くほどあなたに愛をぶつけてるじゃない」
曜「引くほどって……大げさだなぁ」
善子「えぇ……」
曜「普通だよ普通」
善子「あんたのキャパどうなってんの?」
曜「なにが?」 善子「まぁいいわ……超がつくニブチンヨーソローに言ってもしょうがないわね」
曜「誰がニブチンだ!」
善子「あんたよあんた!私たちがどんだけ呆れてたか知ってるの!?」
曜「ええと……3ミリくらい?」
善子「なによ3ミリって!3億キロくらいよ!」
曜「何言ってるの善子ちゃん?」
善子「しばくわよ!」
曜「そこはヨハネよ!って言わないんだ」
善子「」バシーン!
曜「いたい!」 善子「ったくもう、肝心なことは言わないくせに余計なことばっか言うんだから」
曜「津島後輩に言われたらおしまいでありますなぁ」
善子「」ツネー
曜「いひゃいいひゃいいひゃい!!ごめんなひゃい!!」
千歌「どーん!!」
善子「きゃあ!!」
曜「もっと痛い!」 千歌「やぁやぁお疲れ様じもあい諸君」
善子「何すんのよ!危ないじゃない!」
千歌「私実はアブナイ女目指してるんだ……」
善子「意味違うから」
千歌「何話してたの?」
善子「このヘタレヨーソローがついにエロエロな生活手にしたってこと」
曜「語弊しかない言い方やめて!」
千歌「おー!梨子ちゃんと同棲することになったの!?言ってよー!」
曜「なんで伝わってるの?」 千歌「大丈夫!曜ちゃん体力あるし!」
曜「なんの話?」
千歌「そっか、良かったねぇ曜ちゃん」
曜「そ、そんな急に……」
千歌「ふふ〜」ニコニコ
曜「……あ、ありがと」
千歌「照れてる〜」
善子「照れてる〜」
曜「うるさい津島後輩!」
善子「なんで私だけよ!」 ーー
梨子「曜ちゃんとの新生活〜ドキッ☆春なのにアッツアツの初夜〜」パチパチパチ
曜「馬鹿な事言ってないで早く片付けて」
梨子「下着はどこに入れる?」
曜「なんで最初に下着を片付けようとするの?」
梨子「勝負下着がスっと出てこなかったらカッコ悪いじゃない」
曜「そんなどうでもいいこと喋る前に手を動かしてくれる?」
梨子「分かった」モミモミ
曜「……」ペシッ
梨子「ああん、辛辣……」ピクピク >>111
ーー
梨子「曜ちゃんとの新生活〜ドキッ☆春なのにアッツアツの初夜〜」パチパチパチ
曜「馬鹿な事言ってないで早く片付けて」
梨子「下着はどこに入れる?」
曜「なんで最初に下着を片付けようとするの?」
梨子「勝負下着がスっと出てこなかったらカッコ悪いじゃない」
曜「そんなどうでもいいこと喋る前に手を動かしてくれる?」
梨子「分かった」モミモミ
曜「……」ペシッ
梨子「ああん、辛辣……」ピクピク
曜「もう、ちゃんとやってってば!!」 ーー
曜「梨子ちゃん何してるの?」
梨子「……」カリカリ
曜(……?何か書いてる……なんだろ)
梨子「……」カリカリ
『曜ちゃんの敏感なところランキング。3位 左太もも付け根 2位……』
曜「……」バッ!
梨子「あっ!」
曜「没収」
梨子「ああ、返してー!今夜以降必要なの!」
曜「なおさらダメ!」 ーー
梨子「よいしょ……」
曜「わっ、随分大荷物だね。何買ってきたの?」
梨子「この表紙の女の子、曜ちゃんに似てると思って」
曜「ん?」
梨子「これなんかそっくり。こっちは私に似てると思わない?」
曜「梨子ちゃん?」
梨子「いやー捗るわね……今夜はこの本と同じ内容」
曜「明日廃品回収だから出しといてね」 ーー
曜「そろそろシーツ洗わないと……」
梨子「洗わないで!」
曜「今日は天気がいいからね、よく乾くぞー」
梨子「干さないで!」
曜「よいしょっと……」
梨子「曜ちゃんの匂いが消えちゃうー!」
曜「梨子ちゃーん、いいから早くパジャマ着替えようねー」 ーー
曜「曜特性ハンバーグだよー!」
梨子「……」
曜「どうかな?」
梨子「……」モグモグ
曜「美味しい?梨子ちゃん?」
梨子「……これって」
曜「うん?」
梨子「どれくらい曜ちゃんの手汗が染み込んでるの?」
曜「は?」
梨子「レシピの1番重要な部分だから教えて」
曜「あのさ……」
梨子「早く!」
曜「怖い怖い!」 曜「もう……ちゃんと味わってよ」
梨子「ふふ、美味しいよ」
曜「ホント?」
梨子「ホントホント。曜ちゃんの味がする」
曜「もう!梨子ちゃん!」
梨子「ふざけてないよ」
曜「んん……」
梨子「曜ちゃん食べないの?私が食べちゃうわよ」
曜「むぅ……食べるよ」
梨子「そんな顔しないの」フフッ ☆ーーーー☆ーーーー☆
曜「……鞠莉ちゃん」
鞠莉「ん?」
曜「タバコ一本頂戴」
鞠莉「……はい」
曜「……」カチッ シュボッ
曜「うっ!げほっ、げほっ」
曜「……美味しくない」
鞠莉「曜には早かったかしら」
曜「こんなの吸ってるなんて、変なの」
鞠莉「失礼ね」 曜「……ふぅー……」
鞠莉「マル、熱燗二合頂戴」
花丸「かしこまりました」
曜「……日本酒久しぶりだなぁ」
鞠莉「あら、そう」
曜「梨子ちゃん、日本酒苦手だったから……」
鞠莉「そういえば、梨子はワインが好きだったわね」
曜「……うん……」 ルビィ「お待たせしました」
鞠莉「ありがと」
曜「注ぐよ」
鞠莉「んーん、私が注ぐ」
曜「でも……」
鞠莉「いーから、ね? ほら」
曜「あ、ありがと……」
トクトク
鞠莉「んー美味しい!」
曜「うん……」 鞠莉「すっかり涼しくなったわね」
曜「だね……」
鞠莉「こーんな時期に海で待ってるバカがいるわ」
曜「……!」
鞠莉「会いに行ってあげてくれる?」
曜「……」
鞠莉「私からのお願い」
曜「……うん、分かった」 鞠莉「ありがとう、曜」
曜「ううん……」
鞠莉「この手紙は、あなたがしっかりと立つことが出来たら渡すわ」
曜「……」
鞠莉「いい?決して私は意地悪を言ってるわけじゃないの」
曜「そんなこと思ってないよ……」
鞠莉「……この手紙はね、梨子からの願いなの」
曜「願い……?」
鞠莉「ホントはすぐに話そうと思ってた……けど、あなたは私たちの前から消えてしまったから」
曜「……」
鞠莉「ん、まぁ、こんな話してもお酒が不味くなるだけね。今日はここまでにしましょう」 轢き逃げ前科一犯曜「散った桜はまた春に咲き誇る」
轢き逃げ前科一犯曜「過失運転致傷と負傷者救護義務違反の罪を償ったら、きっとまたみんなと・・・」
https://i.imgur.com/13nJyRS.png
完 ーー
曜「本当にいいの? こんないい電子レンジ買ってもらって」
ダイヤ「いいんです。心配しないでください。それより……」
ダイヤ「ちゃんと梨子さんの写真はそのままにしてますか?」
曜「し、してるよ」
ダイヤ「本当?」
曜「大丈夫だってば!」
ダイヤ「まぁ、今から確かめに行くのでいいですけど」
曜「だったらそんなにしつこく聞かなくても……」
ダイヤ「今のあなたは信用ならないからです」 ーーー
千歌「……」
果南「外は冷えるから中に入りなよ」
千歌「……曜ちゃんなんて言ってた?」
果南「別に、何も」
千歌「何もって……」
果南「私何も聞いてないからね」
千歌「なんのために会ったの?」
果南「言ったでしょ? 曜の顔を見るためだって」 千歌「なんのために苦労して曜ちゃん探したと思ってんのさ……だったら私だって」
果南「よく見つけたね。偉い偉い」ナデナデ
千歌「茶化さないで!」ベシッ
果南「別に茶化してないよ。よく曜を見つけられたね」
千歌「旅館娘のコネ舐めないでよ」
果南「ふーん……鞠莉にいくら払ったの?」
千歌「お金なんかあげてないよ! ちゃんと頼んで……あっ」
果南「まぁ、そんなことだろうと思った」 千歌「ちょっとだけしか手伝ってもらってないもん。あとは自力だもん」
果南「そっかそっか」
千歌「馬鹿にしてるでしょ」
果南「してないよー」
千歌「……はぁー……」
果南「ため息は幸せが逃げるよ」
千歌「幸せねー……」
果南「よいしょっと……」スワリ
千歌「おじさん臭いよ」
果南「失敬な」 千歌「……ね、果南ちゃん」
果南「んー?」
千歌「何で梨子ちゃんはさ、曜ちゃんに言わなかったのかな」
果南「病気のこと?」
千歌「うん」
果南「さぁ……それは梨子に聞かないと分かんないなぁ」
千歌「普通はさ、大切な人にはちゃんと伝えないといけないよね」 千歌「……ね、果南ちゃん」
果南「んー?」
千歌「何で梨子ちゃんはさ、曜ちゃんに言わなかったのかな」
果南「病気のこと?」
千歌「うん」
果南「さぁ……それは梨子に聞かないと分かんないなぁ」
千歌「普通はさ、大切な人にはちゃんと伝えないといけないよね」 果南「大切な人だから……ってこともあるんじゃない?」
千歌「それは言い訳だよ。伝えない方が曜ちゃんを悲しませることになる。現になってるし」
果南「んー……なんていうかさ。あえて言わなかった気がするけど」
千歌「あえて? 何で?」
果南「分かんないけど……何となく」
千歌「そんな無責任な……」 果南「それは私より千歌の方が分かるんじゃないの。私は曜とは幼馴染だけど、梨子とは同級生じゃない。二人の近くにいたのは千歌でしょ」
千歌「分かんないよ……分かったらこんなに悩んでなんか……」
果南「考えすぎじゃないかなぁ。そのクセ直らないね」
千歌「だって……」
果南「空っぽでいいんだよ。一旦リセットして空っぽにして、もう一度考えてみな」
千歌「空っぽ……果南ちゃんみたいに?」
果南「ゲンコツするよ」 千歌「んー……分かった」
果南「うん。千歌がしなくても、ゴチャゴチャ考えてる子達がいるから。それに……」
千歌「……? なに」
果南「アレを渡すのは千歌じゃないと」
千歌「……そう、だね。うん、そうだ」
果南「笑顔の千歌から笑顔の曜に、でしょ? 梨子との約束は」
千歌「うん!」 果南「よし、じゃあ飲もうか! 寒くなってきたし熱燗にしよう」
千歌「私日本酒苦手だからビールがいいな」
果南「ビールあったかなー」
千歌「え、この前たくさん買ったじゃん」
果南「飲んじゃったかも」
千歌「えー! あんなにたくさん買ってきたのに!」
果南「いやだってある分だけ飲まないと失礼だし」
千歌「意味わかんないよ!」 ☆ーーーー☆ーーーー☆
ダダダダダ
バタン!
鞠莉「ワオ!」
曜「まままま、まま、鞠莉ちゃん!」
鞠莉「どうしたの曜?」
曜「大変! 大変だよ! 大変なことになった!」
鞠莉「落ち着きなさい。Be cool」
曜「あのあの、あのね! えっとね!」ズイズイ
鞠莉「ち、近い」 曜「梨子ちゃんにね! 言っちゃったんだ……!」
鞠莉「Oh、何を?」
曜「だーーーいすきって……」
鞠莉「梨子はなんて?」
曜「私もって」
鞠莉「良かったじゃなーい!」
曜「で、でも……」
鞠莉「あら、何を困ってるの?」 曜「だだ、だって、これからどんな顔して会えば……」
鞠莉「普通通りでいいんじゃない?」
曜「無理だよ! 恥ずかしい……」
鞠莉「恥ずかしいの? どうして?」
曜「だから……えと……」
鞠莉「梨子を好きっていう気持ちは恥ずかしいの?」
曜「そ、そんなことない!」 鞠莉「だったら堂々としてなさい。ほら、耳を済ませて」
曜「……?」
……〜♪
曜「……ピアノ……」
鞠莉「行ってくれば? 待ってるんでしょ?」
曜「ま、鞠莉ちゃんも一緒に……」
鞠莉「ダーメ。私が行ったら台無しでしょう?」 曜「そんなぁ……」
鞠莉「泣きそうな顔しないの。可愛いわねぇ全く」
曜「まりちゃ〜ん……」
鞠莉「ほら行った行った!」ドン
曜「わっ、わっ!」バタン
鞠莉「……ふふっ、良かった」 ー
曜「なんで……鞠莉ちゃんのいじわる……」ブツブツ
曜「どんな顔したら……んん〜……」
〜♪
曜「……近くなってきた」
曜「……」ドキドキドキ
曜「……ドキドキしてきた……」
曜「……」ソローッ 梨子「〜♪」
曜「わぁ……!」
曜(綺麗だ……!)
梨子「〜♪……?」
曜「!」
梨子「曜ちゃん?」
曜「えっ」
梨子「曜ちゃんでしょ?」
曜「……なんで分かったの?」
梨子「うふふ、何ででしょう」
曜「えー……」 梨子「どうだった?」
曜「すごく良かった。今度の新曲?」
梨子「ううん、違うわ」
曜「そうなの? じゃあなんの曲?」
梨子「んーなんだろ……名前もない曲なの。でも、たまに弾く」
曜「へぇ……」
梨子「気分転換の時に、なんでもない時に、落ち込んだ時に……そういう時弾きたくなる曲」
曜「そう……なんだ……」 梨子「今は……曜ちゃんが来るかなって思って弾いてたの」
曜「な、なにそれっ」
梨子「ホントよ」フフッ
曜「もう! 恥ずかしいこと言わないでよ!」
梨子「顔真っ赤にしちゃって……可愛い」
曜「梨子ちゃん!」 梨子「この曲ね、まだ完成してないんだ」
曜「そうなの?」
梨子「うん。ちょっと足りないの」
曜「何が……って聞いてもいい?」
梨子「もちろん。それはね……」
梨子「曜ちゃんの」
曜「わ、私の?」
梨子「あ・え・ぎ・ご・え♡」
曜「は?」
梨子「録音させてくれない? 今夜」
曜「梨子ちゃん?」
梨子「うちに誰もいないの」
曜「ウソでしょ、そんなに台無しにする誘い方ある?」
梨子「勝負下着もつけてきたから、ほら」
曜「最悪だこの子」 梨子「うふふ……よし、決めた」
曜「何を?」
梨子「これからこの曲は曜ちゃんと一緒にいる時に弾く」
曜「私といる時……」
梨子「そう、曜ちゃんといる時。曜ちゃんの前で曜ちゃんの為だけに弾くね」
曜「な、なにそれ……」
梨子「そしたら、この曲もいつか完成する時が来るかもしれない」
曜「……梨子ちゃんたまにすごく恥ずかしいこと言うよね」
梨子「そうかな? 私は曜ちゃんの恥ずかしい姿見たいけど」 ちょっと待ってごめん
>>131 から >>151のやつ間違えた
開いたメモ帳間違えた
そこ1回無しにしてくれ すまん、日付変わったらもう1回>>130から投下し直す
とんでもなく見にくくなってすまん >>122の続きから
ーー
曜「本当にいいの? こんないい電子レンジ買ってもらって」
ダイヤ「いいんです。心配しないでください。それより……」
ダイヤ「ちゃんと梨子さんの写真はそのままにしてますか?」
曜「し、してるよ」
ダイヤ「本当?」
曜「大丈夫だってば!」
ダイヤ「まぁ、今から確かめに行くのでいいですけど」
曜「だったらそんなにしつこく聞かなくても……」
ダイヤ「今のあなたは信用ならないからです」 ーー
ダイヤ「ここを……こうして……」
曜「いやそれは右の穴じゃ……」
ダイヤ「ここ? あ、ハマった……」
曜「よし、繋げられたかな」
ダイヤ「出来ましたわ!」フンス
曜「テンション高いね」
ダイヤ「新しい家電というのはいいものですね」
曜「そう……かな?」 ダイヤ「早速なにか温めてみましょう!」キラキラ
曜「え、なんで?」
ダイヤ「物は試しです! 誤作動とかあってはいけませんから!」
曜「ダイヤさんがやりたいだけだよね……いやでもおつまみに買ったシューマイくらいしかないよ」
ダイヤ「それでいいです! さぁ早く!」
レンジ「出来たで」チーン
ガチャ
ダイヤ「おぉ……」
曜「そんなに珍しい? どこの時代からやってきたの」
ダイヤ「早速食べましょう!」
曜「熱いよ、気をつけて」
ダイヤ「ぅあつぅ!!」
曜「バカなの?」 ダイヤ「ふぅーふぅー……はむっ」
ダイヤ「ん、美味しいですわね」
曜「最近の冷凍食品は美味しいよね」
ダイヤ「ところで気になったのですが……あなた、食生活はちゃんとしてますの?」
曜「えと……まぁ、コンビニとかで済ましてるかな」
ダイヤ「そんなんではダメです! 見たところ冷凍食品ばっかで、生鮮食品が見受けられませんでした。栄養が偏ってしまいます」モグモグ
曜「今のダイヤさんには説得力無いよ……」
ダイヤ「あなたは料理が得意でしょう? 自炊をしなさい」 曜「いやだって……一人だと面倒だし、仕事で時間もなかったから……」
ダイヤ「今は時間が沢山あるでしょう。やりなさい」
曜「わ、分かったよ」
ダイヤ「肉、野菜、魚……栄養豊富にバランスよく」
曜「うんうん……」
ダイヤ「量も程々にしっかりと」
曜「はいはい……」
ダイヤ「お酒もたまにはいいですが、飲み過ぎないように」
曜「うっ……」
ダイヤ「ところで、昨日は何を食べましたか?」
曜「昨日は……えっと、レトルトの生姜焼き……?」
ダイヤ「つまり肉、ですわね。じゃあ今日は海鮮を食べに行きましょう」
曜「……なるほど、そうきたか」
ダイヤ「車を待たせてます。行きますわよ」 ーー
ザザーン……
果南「……ん、今日もいい天気だね」
果南「絶好のダイビング日和!」
果南「ちょっと涼しいけど」
果南「……そろそろかな」
ザリッ
果南「や、久しぶりだね」
曜「……果南ちゃん」 果南「なんか痩せた?」
曜「少し」
果南「そっか、ちゃんと食べないとダメだよ」
曜「……」
果南「ダイヤは?」
曜「仕事あるからって帰ったよ」
果南「ふーん、相変わらず忙しそうだねぇ」
曜「……話があるんでしょ? 早く済まそうよ」 果南「別に?」
曜「え?」
果南「話なんかないよ。ただ曜の顔が見たかっただけ」
曜「何それ……」
果南「ま、とりあえずちょっと来てよ」 果南「はい」
曜「え、これって」
果南「水着。泳ぐよ」
曜「ちょっと待ってよ果南ちゃん!」
果南「どうして?」
曜「どうしてって私はもう……」
果南「なに、泳げなくなったの?」
曜「そういう訳じゃ……」
果南「じゃあ大丈夫でしょ。ほら、早く着替えて」 曜「でもっ」
果南「でももだってもない。自分で着替えないなら私が着替えさせてあげよっか?」
曜「わ、分かったよ」
曜「着替えたよ」
シーン
曜「あれ、果南ちゃん?」
曜「いない……」
果南「こっちだよ」 曜「何して……」
果南「曜、しっかり準備運動して」
曜「言われなくてもするけど」
果南「念入りに。ブランク長いでしょ?」
曜「ん?」
果南「あそこに浮島があるの見える?」
曜「うん……」
果南「あそこまで私と勝負」
曜「へ?」 果南「曜が勝ったら今日の夕飯、私の奢りで豪華なご馳走振舞ってあげる。だけど私が勝ったら――」
果南「ご飯とわかめの味噌汁ね」
曜「ちょ、ちょっとそんな」
果南「なに?」
曜「勝てるわけないじゃん!」
果南「お、弱気だねぇ。曜らしくない」
曜「そういう問題じゃないって!」
果南「クレームは受け付けないよ。さ、やろうか」
曜「果南ちゃん!」 果南「……」ガリガリ
果南「よし、ここからスタートね。走って海に入って泳いで浮島まで」
曜「まだやるって……」
果南「行くよー。曜のタイミングでスタートして」
曜「話聞いてよ!」
果南「それは私たちのセリフだよ」
曜「!」
果南「さ、早く」 曜「……よーい」グッ
果南「……」グッ
曜「スタート!」ダッ
果南「んっ!」ダッ
ダダダダッ ザブン!
曜(冷たっ!)
曜(こんな時期に海なんて……!)
曜(って、果南ちゃんもうあんな所に……!) 曜「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」ザブザブザブ
曜(か、身体が動かない……)
曜「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」ザブザブザブ
曜(く、苦しくなってきた……)
曜(海ってこんなに重かったっけ……)
曜「はぁっ……!」ザブッ
『泳ぎを練習したい?』
『うん』
曜「……!」 『どうして?梨子ちゃん充分泳げるじゃん』
『水中での曜パイも堪能したいから』
曜「がぼぼっ!」
『あのさぁ……』
『っていうのは冗談で』
『最初から真面目に言ってよ』
曜「げほっ……はぁ……!」ザブザブ 『曜ちゃんを助けるため』
『私を助ける?』
『うん。ほら、曜ちゃんおっちょこちょいな所があるから。間違って海に落ちちゃうかもしれないでしょ?』
『そんなことないよ!そもそも私泳げるし!』
『んもう、そういうことじゃないの!ニブチンね』
『に、ニブチン……』
曜「はぁ、はぁ、はぁ……!」
『あなたと一緒に海が見たいのよ』
曜「……!」ザブッ
『私は一緒に船に乗れないけど、ここに帰ってきた時に』
曜「……はぁっ!」ザバッ
『曜ちゃんと同じ海を見るため』
曜「はぁ!はぁ!はぁ……」
果南「――ご飯とわかめの味噌汁だね」ニコッ
曜「無理に決まってるじゃん……」 ーー
曜「」ズズッ
曜「はぁ……あったまる……」
果南「美味しいかな?」
曜「うん」
果南「昆布の酢漬けとわかめの味噌汁で迷ったんだけどね。わかめの味噌汁になったの」
曜「どっちも出せばよかったのに」
果南「ダイヤに聞いたらわかめでいいって」
曜「何でダイヤさんに聞いたの……」 果南「どうだった?久しぶりの海は」
曜「キツかったよ。溺れるかと思った」
果南「アレくらいの距離で情けない。曜も落ちたね〜」
曜「だから私は……」
果南「曜、おかわりいる?」
曜「まだ半分しか食べてないよ」
果南「……」モグモグ
曜「……」モグモグ
果南「……」ズズッ
果南「あつっ」 曜「……ねぇ、本当に何も話は無いの?」
果南「ないよ。言ったじゃん」
曜「いやでも、わざわざ呼び出しといて何もなしって……」
果南「お説教でもして欲しい?」
曜「そういうわけじゃ」
果南「話すことがないってわけじゃないけど、私は鞠莉やダイヤみたいに上手く話せないからね」
曜「うん、知ってる」
果南「ぶつよ」
曜「自分で言ったんじゃん!」 果南「ははっ、まぁゴチャゴチャ言うより体動かした方が楽しいし」
曜「楽しい……かなぁ」
果南「楽しいよ、海は。いつだって」
曜「……」
果南「それは曜が一番分かってるんじゃない?」
『変なところ触らないで!』
『事故よ事故。水中って手が滑るから』
『もう教えないよ』
曜「……そう、だね」 果南「あ、一つだけ話すことあった」
曜「なに?」
果南「曜、君がいなくなったあの日から千歌はずっと曜を探してたんだよ」
曜「!」
果南「知ってるかもしれないけど」
曜「……」
果南「梨子とのことは曜が決めることだと思ってるから、それについてとやかく言うつもりは無いけど」
果南「千歌をもう一度泣かせるようなことしたら、グーで殴るからね」
曜「……うん」ズズッ 果南「よし、じゃあ酒飲もうか。いい焼酎をダイヤに貰ったんだ〜」
曜「なに?芋?」
果南「麦。飲める?」
曜「大丈夫。ロックでお願い」
果南「おっけー」 ーー
曜「すー……すー……」
果南「……」
果南(……ちょっと風邪にあたってこよ)
サァァァ
果南「ふー……」
ダイヤ「そんな薄着で出たら風邪引きますよ」
果南「お疲れー」
ダイヤ「お疲れ様」
果南「ごめん、少し飲ませ過ぎたかも。曜潰れちゃった」
ダイヤ「まぁそうなるだろうとは思ってましたので問題ありません」
果南「どういう意味さ」
ダイヤ「そのまんまです。お酒に関してあなたはあまり信用してませんから」
果南「ひどいなぁ」 ダイヤ「事実でしょう。まぁ、ある意味信用してますけど」
果南「ふぅん……」
ダイヤ「……なんですニヤニヤして。気持ち悪いわね」
果南「うわ、ヒドイ! 気持ち悪いって言った!」
ダイヤ「静かにしなさい! 夜です」
果南「あーあ、大人になってダイヤは優しくなくなったなぁ……昔は可愛かったのに……」
ダイヤ「悪かったですね、可愛くなくて」
果南「頭も相変わらずカチカチだし。ほら」コンコン
ダイヤ「……」ベシッ
果南「いたっ」 鞠莉「そ〜〜よ、胸はこんなに柔らかいのに」モミモミ
ダイヤ「……」ゴスッ
鞠莉「おうふっ!」
果南「うわっ、肘」
鞠莉「みぞおちは……だめよ……みぞおちは……」
ダイヤ「また仕事を抜け出してきたんですか?」
鞠莉「夕食のエスカルゴが出る……」
ダイヤ「吐くんなら海に。いい撒き餌になりますわ」
果南「やめてよ」
鞠莉「またってなによまたって。いつもサボってる言い方みたいじゃない」
ダイヤ「間違ってないでしょう」
鞠莉「失敬な!」 果南「まーた善子に怒られるよ?」
鞠莉「もー果南まで!」
ダイヤ「何しに来たんです。早く戻りなさい」
鞠莉「心配ゴムヨー! 善子が何とかしてくれてるから」
ダイヤ「あなたは……!」
鞠莉「そんな怖い顔しないの! ねぇ、果南」
果南「いやまぁ、鞠莉が悪いからしょうがないでしょ」
鞠莉「やぁん、果南も敵なの? 人生敵だらけね〜」
ダイヤ「自分で敵を作ってるんでしょうが」
鞠莉「はいはいパイパイ」
ダイヤ「……」ベシッ
鞠莉「アウチ!」 果南「ところで、連絡船とっくに終わっちゃってるけどダイヤ帰りどうするの?」
ダイヤ「コレのホテルに泊まりますからご心配なく」
鞠莉「コレって何? そんな言い方する子は泊まらせません」
ダイヤ「はぁ?」ギロッ
鞠莉「怖い怖い! 泊まらせてもらう人の態度じゃないわよぉ」
ダイヤ「別に構いませんよ。力づくで泊まらせてもらいますから」
鞠莉「やり方ヤクザじゃない」
ダイヤ「ハッキリ言わない」 鞠莉「果南はどうする? 久しぶりにうちで三人で飲まない?」
果南「んー私はいいかな。もう結構飲んでるし、曜もいるし」
鞠莉「そう? じゃあ曜をよろしくね」
ダイヤ「明日の朝、また迎えに来ます」
果南「おっけー」
ダイヤ「そういえば鞠莉さん。あの手紙は曜さんに?」
鞠莉「んーん、まだ私が持ってるよ。人質として使えるから」カサッ
ダイヤ「人質って……」
果南「人が悪いねぇ鞠莉」 今日はここまで
大きなやらかし申し訳ねぇ
今回>>131から>>151は飛ばして見てくれ スレタイ見て
散った花びらは後は土へと還るだけ
それならばいっそ斜めを見ずに
お天道さんを仰いでみようか
って歌を思い出した 最後まで書ききったらまとめて投下する
今日中にはできるからちょっと待ってくれ ーー
ガララッ
ルビまる「いらっしゃいませー!」
善子「生と唐揚げ一つ」
花丸「なんだ善子ちゃんか……」
善子「客に対してなんだってなによ」
ルビィ「申し訳ありません、本日はもうお冷しかないんです」
善子「どういうことよ!」
花丸「鶏肉切れてるから衣だけでいい?」
善子「どーなってんのよこの店! クレーム入れてやる!」 ルビィ「他のお客様の迷惑になるのでお静かにして貰えますか?」
善子「私しかいないじゃない!」
花丸「文句言うやつに出す酒はねぇ!」
善子「何キャラよ! とっとと酒出して!」
ルビィ「横柄だなぁ……はい」
善子「いやあんた達の方がでしょ……ありがと」
花丸「どうしたの、ずいぶんお疲れようだけど」
善子「いや半分あんた達のせいなんだけど」
ルビィ「私たち何かしたかなぁ」
花丸「さぁ……また見えない敵と戦ってるんじゃない?」
善子「ビールぶっかけるわよ」 花丸「うふふ、ごめんね。善子ちゃんだからついつい」
善子「どういう意味よ……んぐんぐ……ぷはっ、美味い」
ルビィ「お仕事忙しいの?」
善子「別に〜」
花丸「じゃあなんでそんなに疲れてるずら?」
善子「あんのシャイニー金髪のせいよ! ったく、何も言わずに勝手にほっつき歩いて……私がどんだけ方々に頭下げたか」
ルビィ「あはは……お疲れ様。はいお通し」
善子「もずくとは分かってるじゃない」
花丸「唐揚げもう少し待ってね。大企業の社長秘書は大変ずらねぇ」
善子「全くよ……ん、最高ね」ズズッ ルビィ「この前曜ちゃん来たよ」
善子「知ってる。鞠莉から聞いたわ。どうだった?」
花丸「少し痩せてたよ。ちゃんと食べてるのかな」
善子「そう……」ゴクゴク
ルビィ「梨子ちゃんの手紙は渡してもらえてなかった」
善子「んー……ま、鞠莉の話によるとそうみたいね。あいつ、この二年何してたのかしら」
花丸「……もう二年になるんだ……時間が経つのが年々早くなってる気がする」
ルビィ「そうだねぇ……」 善子「過ぎ去った時間は等しくそう感じるのよ。その時をどう過ごそうと」
ルビィ「そういうものかなぁ」
善子「そういうもんよ」
花丸「はい、唐揚げ」
善子「サンキュ。あんた達も飲みなさいよ。もう終わりなんでしょ?」
ルビィ「んーどうしよっかな……」
花丸「まだ片付けが終わってないし」
善子「いいじゃない。明日休みなんでしょ?それとも私のお酒が飲めないっていうの?」
ルビィ「えーなにそれ……」
花丸「パワハラずら」
善子「やかましい。私が奢ってあげるから、ね?」
ルビィ「おー太っ腹だね」
善子「給料だけはいいからね。ブラックだけど」
花丸「鞠莉ちゃんにいいつけるずらよ」
善子「ゴタゴタ言ってないではやく!ほら!」
花丸「もーせっかちなんだから」
ルビィ「ふふっ」 よしまルビィ「「カンパーイ!」」
花丸「んぐ……ぷはっ! 美味しい!」
ルビィ「おいしー!」
善子「いい飲みっぷりね」
花丸「はぁー……」
ルビィ「あむっ」
善子「それ私の唐揚げ!」
花丸「……ねー善子ちゃん」
善子「なに」
花丸「……最近どう?」
善子「さっき言ったでしょ」
花丸「いやまぁそうなんだけど……」 善子「別に言いにくいなら言わなくてもいいけど」
花丸「んー……」
善子「……」グビッ
ルビィ「曜ちゃん変わったね」
花丸「! ルビィちゃん」
善子「さぁ、私はまだ会ってないから分からないわ」
ルビィ「変わった……と、ルビィは思ったな」
花丸「……」グビッ
ルビィ「二年ってそんなに長いかなぁ」
善子「……だからさっき言ったでしょ。過ぎた時間は短く感じるもの」
善子「そう簡単に人間変わらないわよ」
花丸「やっぱまだ堕天ごっこするの?」
善子「ごっこってなによごっこって! バカにしないで!」
花丸「いやどっからどう見てもバカずら」
善子「あんたちょっとは変わりなさいよ!」 ルビィ「ふふっ、相変わらずだね善子ちゃん」
善子「どういう意味よ! ったくルビィあんたも大概ね」
ルビィ「そうかな……」
善子「……人は変わらない。変わるのはその人の在り方だけ」
花丸「在り方……」
善子「ええ。曜は自分の在り方を捻じ曲げた。自分で」
善子「だから、何も見えてないのよ。梨子の想いさえ」
花丸「……」
善子「自分で目をつぶってちゃあ世話ないわね。でしょう? ルビィ」
ルビィ「うん、そうだね」
善子「梨子のためにも、あのバカ先輩の目をこじ開けないといけないわね」
花丸「てこの原理で?」
善子「物理的にじゃないわよ! 怖いわ!」 ーー
曜「……んぅ……?」
曜「……ふぁ…………」
果南「起きた? おはよ」
曜「おふぁよ……」
果南「朝焼けが綺麗だよ。今日はいい天気になる」
曜「ええ……? 今何時……?」
果南「五時」
曜「はや……まだ眠い…………」
果南「早起きは三文の徳。さ、朝ごはん食べよっか。ダラダラしてると鉄鉱石おばさんが来るよ」
曜「鉄鉱石おばさん?」
ダイヤ「誰が鉄鉱石ですか。誰がおばさんですか」
果南「でたぁ!!」
ダイヤ「やかましい!」
果南「曜! 塩持ってきて!」
ダイヤ「呪い殺すわよ!」
曜「朝からテンション高い……」 ダイヤ「いただきます」
果南「いただかないでください」
ダイヤ「うるさい」
曜「……」カチャ
ダイヤ「曜さん、いただきますは?」
曜「い、いただきます」
ダイヤ「よろしい」
果南「うるさいねぇダイヤは」
ダイヤ「当たり前のことです」
果南「はいはい……いただき!」
ダイヤ「ちゃんと言いなさい!」
曜(なんでこの二人朝っぱらからこんなに賑やかなんだろ……おばあちゃんなのかな)
ダイヤ「失礼なこと考えてるでしょう」
曜「考えてないよ」 果南「ねーおばさん」
ダイヤ「あなたは口に出すことを躊躇いなさい」
果南「何時に出るの?」
ダイヤ「朝ごはん食べたらすぐに……と思ってますが」
果南「ちょっと待ってくれない?」
ダイヤ「構いませんけど」
果南「曜、少し走りに行こう」
曜「えっ」
果南「大丈夫。昨日みたいに勝負とかしないから」
曜「うーん……」
ダイヤ「付き合ってあげなさいな」
曜「分かった」
果南「よし、じゃあ食べたら行こうか」 ーー
タッタッタッタッ
曜「ふっ、ふっ、ふっ……」
果南「〜♪」
曜(果南ちゃん全然息切れしてない……すごい……って思ったけど私の体力が落ちただけか……)
果南「気持ちいいねー」
曜「う、うん」
果南「キツイ? もうちょっとペース落とそうか?」
曜「いや大丈夫……」
タッタッタッタッ
曜「はっ、はっ、はっ……」
曜(潮風が染みる)
曜(この匂いは……)
タッタッタッタッ 果南「ふぅ」
曜「はー……はー……」
果南「大丈夫? 曜」
曜「な、なんとか……」
果南「はい、水」
曜「ありがと……」
果南「今日は波も穏やか。いいダイビング日和だ」
曜「……」ゴクゴク 果南「……よく覚えてるんだけどね」
曜「……?」
果南「昔梨子が言ってたんだ。内浦に来てから海が好きになったって」
曜「……!」
果南「私はね、それがとても嬉しかった。だって自分が好きなものを好きって言ってくれるのはこれ以上になく嬉しいでしょ?」
曜「……うん」 果南「でね、なんで好きになったかも教えてくれた」
曜「……」
果南「曜のおかげなんだって」
曜「私の……」
果南「うん。曜のおかげ」
曜「どうして……」
果南「さぁね。でも、梨子がそう言ったんだ。だから私は曜に感謝してる」
曜「感謝?」
果南「この世に海が好きな人を一人増やしてくれたから」ニコッ
曜「果南ちゃん……」
果南「制服姿で船の上で敬礼する曜は、私でも惚れ惚れするくらいカッコいいんだよ」
曜「…………私は……」
果南「あはは、なんだか照れくさいや」
曜「……」 ーー
ブゥゥゥウン
ダイヤ「では、帰りますわよ」
曜「うん……」
ダイヤ「眠たいですか?」
曜「少し……」
ダイヤ「朝早かったですからね。着くまでゆっくりしててください」
曜「……ん……」
曜(……) ☆ーーーー☆ーーーー☆
曜「……え……?」
鞠莉「……」
曜「うそ……でしょ……?」
鞠莉「こんなうそつかないわよ」
曜「どうして……出発したときは……」
鞠莉「梨子は……病気だったの。余命も宣告されてた……」
曜「……は?」 鞠莉「私たちも……この前知ったの。隠してた、ずっと。誰にも言わずに」
曜「なんだよそれ……なんだよそれ……!」
鞠莉「宣告された余命はまだ先だったけど、二週間前、急に容態が急変して…………昨日!」
曜「……」
鞠莉「航海中だと連絡がつかないから……ホントはすぐに知らせようとしたんだけど……」
曜「……うそだ……」
鞠莉「曜!」
曜「うそだ……うそだうそだうそだ」
鞠莉「……私だって……うそだと思いたいわよ……!! でも、もう梨子は……!」
曜「……!」
鞠莉「……帰ってこない……!」 曜「……っ!!」ダッ
鞠莉「曜!!」
バン!
曜「はぁ……!はぁ……!」
千歌「……よーちゃん……」
曜「ちかちゃん……」
千歌「よーちゃん……あのね……」
曜「……!」
『行ってらっしゃい、曜ちゃん』
曜「……どうして……」
千歌「よーちゃん聞いて!」
『ハンバーグ作って待ってるね、私の手汗がたっぷり染み込んだ』
曜「どうして……!」
『ちゃんと帰ってきてね』
曜「どうして!」
『新しい勝負下着買って待ってるから』
曜「どうして! 梨子ちゃん……!」 千歌「曜ちゃん!」
曜「……千歌ちゃん……わたしは……」
千歌「あのね、曜ちゃん。梨子ちゃんは」
曜「くそっ! 私は……!」バン!
千歌「曜ちゃん待って!!」 ザザーン
曜「はぁ……! はぁ……!」
曜「はぁ……!」
曜「……うわぁぁあああ!!」
曜「どうして……! 私は……!」
曜「ああっ! はぁっ!」
『曜ちゃん』
曜「私は……!」
『行ってらっしゃい、曜ちゃん』
曜「私はっ!!」
『三ヶ月後、また迎えに行くからね』
曜「私はっっ!!」
曜「げほっ! げほっ!」
曜「はぁっ! はぁっ!」
曜「……梨子ちゃん……!」
『行ってらっしゃい』
曜「ぁぁああああ……!!」 ☆ーーーー☆ーーーー☆
曜「はっ!」ガバッ
曜「はー……はー……」
曜「……いつ寝たんだっけ……」
曜「……ん……メモ……」
『冷蔵庫に食材があるので、ちゃんと作って食べること』
曜「ダイヤさん……」
曜「……」 曜(またこの夢……)
曜(あの日のことが……ずっと頭から離れない……)
曜「……」コトッ
曜「……梨子ちゃん……」
『これ曜ちゃんに似合うと思って』
『エプロン? ありがとう!』
『裸専用なんだけど』
『どこにそんなの書いてるの?』
曜「……」
曜「……私は……」
曜「……」ギュッ トントントン
ジュワー
曜「いい頃具合かな……あとはサラダと」
曜「ちょっと味見……ん、美味しい」
曜「よし! できた!」
曜「いただきます!」パン!
曜「あむっ」
曜「……」モグモグ
曜「んー! 最高!」
曜「……」モグモグ 曜「……」モグ…
曜「……美味しくない」
曜「美味しくないよ……」
曜「……」 ーー
ダイヤ「おはようございます」
曜「……おふぁよ……」
ダイヤ「さぁ起きなさい。散歩に行きましょう」
曜「おばあちゃんじゃん……」
ダイヤ「いいから早く!」バッ!
曜「うひぃ!」 ダイヤ「今日は少し曇ってますわね……」
曜「うん、ごめんね。昨日は寝ちゃって」
ダイヤ「気にしないでください。それより、夕飯はちゃんと食べましたか?」
曜「う、うん……」
ダイヤ「ちゃんと食べないといけませんよ」
曜「分かってる……分かってるけど」
ダイヤ「けど?」
曜「……作る意味がわからないんだ」 ダイヤ「意味? 生きるために必要です」
曜「そういう事じゃなくて……あのね」
ダイヤ「……」
曜「……美味しくないんだ」
ダイヤ「調味料の分量間違えたとか?」
曜「違うよ! もう!」
ダイヤ「ふふ、ごめんなさい」
曜「茶化さないでよ……」
ダイヤ「……一人だから、ですか」
曜「……うん……別に料理が面倒になったわけじゃないんだ。そりゃ、疲れてる時もあるけど……それよりも」
曜「……美味しくないものを……わざわざ時間をかけて作ることの方が……無駄だと思わない?」
ダイヤ「……一理ありますね」 曜「私ね、ダイヤさん」
ダイヤ「……!…」
曜「許せないんだ自分が、どうしても」
ダイヤ「……それは、梨子さんが」
曜「ううん、そんなの関係ない。梨子ちゃんが病気を隠してたとかそんなのは言い訳だ」
ダイヤ「曜さん」
曜「気づけなかった。ただその紛れもない自分の不甲斐なさを私は一生許すことが出来ない」
ダイヤ「……」
曜「何も見えてなかった。大好きな人のことが何も」 ダイヤ「……梨子さんは笑顔で海に向かうあなたを笑顔で見送っていました。そこに他のことなんて何も無い」
曜「その笑顔の裏には何があったの?」
ダイヤ「曜さん……! あなた」
曜「関係ないって言ったでしょ。これは私自身の問題」
曜「どうしてダイヤさんたちが入ってくるの?」
ダイヤ「……あなた……」
曜「入ってこないで。迷惑だよ」
ダイヤ「……そうですか……そこまで……」
曜「……」 ダイヤ「いいですか、曜さん」
曜「……なに」
ダイヤ「わたくしはあなたを仲間だと思ってます」
曜「はっ……なにそれ」
ダイヤ「私だけではない。果南さんも鞠莉さんも、善子さんも花丸さんもルビィも」
ダイヤ「千歌さんも、梨子さんも」
曜「……!」
ダイヤ「仲間が仲間のための行動を、あなたは迷惑に思うと言うのですか?」
曜「……」
ダイヤ「許しませんわよ、そんなことは決して」
曜「……だったら……」
ダイヤ「縁なき衆生は度し難し」
曜「は?」
ダイヤ「人の忠告を聞き入れない人は救えないという意味です。本当にあなたはつまらない人になってしまったようですね。失望しました」 曜「ははっ、言いたい放題だね。だったらもうほっといてよ」
ダイヤ「なりません。仲間ですから」
曜「……!! 人の話聞かないのはどっちだよ」
ダイヤ「言ったでしょう。あなたをもう一度海に送り出すのがわたくし達の指名。そしてそれが」
ダイヤ「梨子さんからわたくし達への最後の頼み」
曜「!」
ダイヤ「仲間の最後の頼みを聞かないなんて、黒澤ダイヤの人生に一生汚点として残ります。あなたがなんと言おうと、あなたがどんなことを今思ってようと必ずわたくしはあなたを海に戻す」
曜「ダイヤさん……!」
ダイヤ「覚悟なさい。あなたはまだ梨子さんのことを分かってない」
曜「なん……だって?」 ダイヤ「三日後、また迎えに来ます。大人しく待ってなさい」クルッ
曜「どこ行くの!?」
ダイヤ「仕事です。あなたと違って暇ではないので。では」
曜「……仕事やめろって言ったのは誰だよ……」
曜(……梨子ちゃんのことを分かってない……? そんなことは自分が一番わかってる……!)
曜「……くそ……」 ーーー
鞠莉「……」ズズッ
トントン
鞠莉「はーい」
善子「鞠莉、そろそろ出る時間よ」
鞠莉「OK」
善子「何考えてたの?」
鞠莉「エロいこと〜」
善子「あ、そう。じゃあいいわ」
鞠莉「興味ある? 教えてあげようか?」
善子「いいって言ってるでしょ。早く準備して。また遅刻するわよ」
鞠莉「興味津々のくせに〜このエロ堕天使〜」ツンツン
善子「うっざ! 離れなさい!」 鞠莉「冷たいわねぇ。秘書が冷たくて仕事のモチベダダ下がりだわ……」
善子「バカ言ってないで早く準備しなさいって!」
鞠莉「はいはい……あら」
善子「なに」
鞠莉「その花は?」
善子「ああ、この前の取引先から貰ったのよ」
鞠莉「へぇ……珍しいわね」
善子「これ彼岸花よね。贈り物でこの花を選ぶなんて大したセンスだわ」 鞠莉「……」カチッ シュボッ
鞠莉「……ふぅー……ねぇ善子、この花の言葉知ってる?」
善子「え? ……知らない」
鞠莉「あら、地獄に咲く花の言葉を知らないなんてそれでも堕天使?」
善子「やかましい。もう堕天使は卒業したのよ」
鞠莉「つまんなーい」 善子「いいから早く教えなさいよ」
鞠莉「『悲しい思い出』『あきらめ』」
善子「……!」
鞠莉「それと『再会』……あとは『思うはあなた一人』」
善子「へぇ……」
鞠莉「決してネガティブな花ではないのよ。とても一途な花なの」
鞠莉「ピッタリだと思わない? あの二人に」
善子「……そうね」 鞠莉「……」スパ…
『寂しい? ……最初はそう思ってました。一人で食べるご飯も美味しくなかった。でも』
『初めて知ったんです。待つことの楽しさに』
『知ってます? 鞠莉さん。曜ちゃんって毎回出発の時ときより帰ってきた時の方が違うんですよ』
『全然違う人みたいなんです。でも、確かに曜ちゃんなの』
『私、その顔を見るのが何よりの楽しみで。三ヶ月待つなんて苦にならなくなっちゃった』
『ふふ、惚気けじゃないですよ』
『それでですね、鞠莉さん。頼んでおいた媚薬は……ふふ、帰ってきたら楽しみね……』
鞠莉「……」フー 善子「ほら悠長に吸ってないで。遅刻するってば」
鞠莉「善子なんだか歳とる度にダイヤに似てきてない?」
善子「誰があんな石頭と!」
鞠莉「あーダイヤに言いつけてやろー」ツンツン
善子「そのうっざいノリやめなさい!」 ーーー
千歌「……」
果南「外は冷えるから中に入りなよ」
千歌「……曜ちゃんなんて言ってた?」
果南「別に、何も」
千歌「何もって……」
果南「私何も聞いてないからね」
千歌「なんのために会ったの?」
果南「言ったでしょ? 曜の顔を見るためだって」
千歌「なんのために苦労して曜ちゃん探したと思ってんのさ……だったら私だって」
果南「よく見つけたね。偉い偉い」ナデナデ
千歌「茶化さないで!」ベシッ 果南「別に茶化してないよ。よく曜を見つけられたね」
千歌「旅館娘のコネ舐めないでよ」
果南「ふーん……鞠莉にいくら払ったの?」
千歌「お金なんかあげてないよ! ちゃんと頼んで……あっ」
果南「まぁ、そんなことだろうと思った」
千歌「ちょっとだけしか手伝ってもらってないもん。あとは自力だもん」
果南「そっかそっか」
千歌「馬鹿にしてるでしょ」
果南「してないよー」 千歌「……はぁー……」
果南「ため息は幸せが逃げるよ」
千歌「幸せねー……」
果南「よいしょっと……」スワリ
千歌「おじさん臭いよ」
果南「失敬な」 千歌「……ね、果南ちゃん」
果南「んー?」
千歌「何で梨子ちゃんはさ、曜ちゃんに言わなかったのかな」
果南「病気のこと?」
千歌「うん」
果南「さぁ……それは梨子に聞かないと分かんないなぁ」
千歌「普通はさ、大切な人にはちゃんと伝えないといけないよね」
果南「大切な人だから……ってこともあるんじゃない?」 千歌「それは言い訳だよ。伝えない方が曜ちゃんを悲しませることになる。現になってるし」
果南「んー……なんていうかさ。あえて言わなかった気がするけど」
千歌「あえて? 何で?」
果南「分かんないけど……何となく」
千歌「そんな無責任な……」
果南「それは私より千歌の方が分かるんじゃないの。私は曜とは幼馴染だけど、梨子とは同級生じゃない。二人の近くにいたのは千歌でしょ」
千歌「分かんないよ……分かったらこんなに悩んでなんか……」
果南「考えすぎじゃないかなぁ。そのクセ直らないね」
千歌「だって……」
果南「空っぽでいいんだよ。一旦リセットして空っぽにして、もう一度考えてみな」
千歌「空っぽ……果南ちゃんみたいに?」
果南「ゲンコツするよ」 千歌「んー……分かった」
果南「うん。千歌がしなくても、ゴチャゴチャ考えてる子達がいるから。それに……」
千歌「……? なに」
果南「アレがあるでしょ」
千歌「……そう、だね。うん、そうだ」
果南「笑顔の千歌から笑顔の曜に、でしょ? 梨子との約束は」
千歌「うん!」 果南「よし、じゃあ飲もうか! 寒くなってきたし熱燗にしよう」
千歌「私日本酒苦手だからビールがいいな」
果南「ビールあったかなー」
千歌「え、この前たくさん買ったじゃん」
果南「飲んじゃったかも」
千歌「えー! あんなにたくさん買ってきたのに!」
果南「いやだってある分だけ飲まないと失礼だし」
千歌「意味わかんないよ!」 ☆ーーーー☆ーーーー☆
ダダダダダ
バタン!
鞠莉「ワオ!」
曜「まままま、まま、鞠莉ちゃん!」
鞠莉「どうしたの曜?」
曜「大変! 大変だよ! 大変なことになった!」
鞠莉「落ち着きなさい。Be cool」
曜「あのあの、あのね! えっとね!」ズイズイ
鞠莉「ち、近い」 曜「梨子ちゃんにね! 言っちゃったんだ……!」
鞠莉「Oh、何を?」
曜「だーーーいすきって……」
鞠莉「梨子はなんて?」
曜「私もって」
鞠莉「良かったじゃなーい!」
曜「で、でも……」
鞠莉「あら、何を困ってるの?」 曜「だだ、だって、これからどんな顔して会えば……」
鞠莉「普通通りでいいんじゃない?」
曜「無理だよ! 恥ずかしい……」
鞠莉「恥ずかしいの? どうして?」
曜「だから……えと……」
鞠莉「梨子を好きっていう気持ちは恥ずかしいの?」
曜「そ、そんなことない!」
鞠莉「だったら堂々としてなさい。ほら、耳を済ませて」
曜「……?」
……〜♪
曜「……ピアノ……」
鞠莉「行ってくれば? 待ってるんでしょ?」
曜「ま、鞠莉ちゃんも一緒に……」
鞠莉「ダーメ。私が行ったら台無しでしょう?」
曜「そんなぁ……」 鞠莉「泣きそうな顔しないの。可愛いわねぇ全く」
曜「まりちゃ〜ん……」
鞠莉「ほら行った行った!」ドン
曜「わっ、わっ!」バタン
鞠莉「……ふふっ、良かった」 ー
曜「なんで……鞠莉ちゃんのいじわる……」ブツブツ
曜「どんな顔したら……んん〜……」
〜♪
曜「……近くなってきた」
曜「……」ドキドキドキ
曜「……ドキドキしてきた……」 曜「……」ソローッ
梨子「〜♪」
曜「わぁ……!」
曜(綺麗だ……!)
梨子「〜♪……?」
曜「!」
梨子「曜ちゃん?」
曜「えっ」
梨子「曜ちゃんでしょ?」 曜「……なんで分かったの?」
梨子「うふふ、何ででしょう」
曜「えー……」
梨子「どうだった?」
曜「すごく良かった。今度の新曲?」
梨子「ううん、違うわ」
曜「そうなの? じゃあなんの曲?」
梨子「んーなんだろ……名前もない曲なの。でも、たまに弾く」
曜「へぇ……」
梨子「気分転換の時に、なんでもない時に、落ち込んだ時に……そういう時弾きたくなる曲」
曜「そう……なんだ……」 梨子「今は……曜ちゃんが来るかなって思って弾いてたの」
曜「な、なにそれっ」
梨子「ホントよ」フフッ
曜「もう! 恥ずかしいこと言わないでよ!」
梨子「顔真っ赤にしちゃって……可愛い」
曜「梨子ちゃん!」 梨子「この曲ね、まだ完成してないんだ」
曜「そうなの?」
梨子「うん。ちょっと足りないの」
曜「何が……って聞いてもいい?」
梨子「もちろん。それはね……」
梨子「曜ちゃんの」
曜「わ、私の?」
梨子「あ・え・ぎ・ご・え♡」
曜「は?」
梨子「録音させてくれない? 今夜」
曜「梨子ちゃん?」
梨子「うちに誰もいないの」
曜「ウソでしょ、そんなに台無しにする誘い方ある?」
梨子「勝負下着もつけてきたから、ほら」
曜「最悪だこの子」 梨子「うふふ……よし、決めた」
曜「何を?」
梨子「これからこの曲は曜ちゃんと一緒にいる時に弾く」
曜「私といる時……」
梨子「そう、曜ちゃんといる時。曜ちゃんの前で曜ちゃんの為だけに弾くね」
曜「な、なにそれ……」
梨子「そしたら、この曲もいつか完成する時が来るかもしれない」
曜「……梨子ちゃんたまにすごく恥ずかしいこと言うよね」
梨子「そうかな? 私は曜ちゃんの恥ずかしい姿見たいけど」
曜「そういうことじゃないよ! もう、私の恥ずかしさどっかいっちゃった……」 梨子「ふふ、顔を赤くしてる曜ちゃんもエロいよ」
曜「可愛いって言うところじゃないの?」
梨子「あら、自分で言っちゃうのね」
曜「梨子ちゃん!」
梨子「可愛いよ、曜ちゃん」
曜「もう! いい加減にして!」 ーーー
曜「……」
曜(なんで今更この夢……)
曜「……あの曲って」
曜(完成したのかな……)
曜「……いや……もういいか。梨子ちゃんがいないならもう……」
曜「……」
曜「今日も晴れてるなぁ」 プルルルル
曜「もしもし」
ダイヤ『おはようございます。起きていましたか』
曜「うん、大丈夫だよ」
ダイヤ『今日はわたくし行けませんので。わたくしがいないからといってだらけた生活を送らないように』
曜「大丈夫だってば」
ダイヤ『信用してますよ、曜さん』
曜「うん……」
ダイヤ『では、また』
ガチャ
曜「ふぅ……」
曜「……何しようかな」
グゥ
曜「……お腹空いた」
曜「冷蔵庫に確か……」
曜「……」
曜「……めんどくさいや。今日くらいコンビニでもいいよね」
曜「……」 アリガトウゴザイマシター
曜(おにぎりと……サラダと……チキン)
曜(栄養バランスは大丈夫……)
曜(今日はゴミ出しだし……バレないよね)
曜「うっ、さむ……早く帰ろ」
「こんにちは」
曜「……?」
「お久しぶりね、曜ちゃん」
曜「え……」
梨子ママ「元気だった?」
曜「どうして……」
梨子ママ「ごめんなさい、千歌ちゃんに聞いたの。何か買っていこうと寄ったらちょうどでてきたから」
曜「……あ……」
梨子ママ「家に、行ってもいいかしら? お話があるの」
曜「……わ、わたし……」
梨子ママ「ね?」
曜「…………はい……」 梨子ママ「改めて、久しぶり。元気だった?」
曜「はい……ご無沙汰してます……」
梨子ママ「……」
曜「……」
梨子ママ「顔を上げてくれないかしら、曜ちゃん」
曜「……どうして……今さら私に会いに来たんですか……?」
梨子ママ「……」
曜「わたしは……逃げたのに……」 梨子ママ「似てるわね、梨子とあなたは」
曜「え……?」
梨子ママ「大事なことを全部自分の中に抱え込んじゃって……表に出さなくて……」
梨子ママ「でも、梨子はあなたと出会ってから少しずつ変わった」
曜「わたしと……?」
梨子ママ「曜ちゃんが海に出てる間、梨子はいつも曜ちゃんの話をしてたの。知ってた?」フフッ
曜「……! いや……」
梨子ママ「この前遊園地行ったとか。一緒にお買い物行ったとか。ご飯を作ったら美味しそうに食べてくれるとか。些細なことからたくさん」
梨子ママ「あの子があんなにお喋りだなんて知らなかったの。曜ちゃんのおかげ」
曜「そんなこと……ないです……」 梨子ママ「ううん、そんなことあるわ。たーくさんあなたの話をあの子から聞いた……その中でも一番多く話してたのはね」
梨子ママ「送り出す時と、迎えに行く時の話」
曜「……!」
梨子ママ「あのね、曜ちゃん。梨子は決して病気のことを話さなかったのは、あなたのせいではないの」
曜「それは……でも! 私はずっと隣にいたのに……!」 梨子ママ「ううん、これはあの子の自分勝手な願い。梨子はいつも言ってたわ」
梨子ママ「『船に乗る時と、降りる時の曜ちゃんの顔が一番好き』」
梨子ママ「って」
曜「…………なに、それ……」
梨子ママ「『あの子が気兼ねなく海を楽しむ顔に少しの曇りも入れたくない。私のせいで曜ちゃんの邪魔をしたくない』」
曜「……!……!」
梨子ママ「梨子は変わった……ってさっき言ったけど、一番根っこの部分はそのままだったわ」
曜「……でも、分かってなら! 教えてくれても…………いいんじゃ……! 私は……!」
梨子ママ「娘の願いを叶えない母親がどこにいるかしら?」
曜「っ!」 梨子ママ「娘を助けられないことに嘆くより……私は娘の願いを一つでも多く叶えたかったの」
曜「……」
梨子ママ「……でも、ダメだったみたいね……」
曜「違います……私のことは全部私のせいです……」
梨子ママ「ねぇ、曜ちゃん」
曜「……はい……」
梨子ママ「もう一度、海に戻りたくないの?」
曜「! ……それは」 梨子ママ「梨子の願いは、あなたがいつまでもあなたらしい笑顔を見せること」
梨子ママ「お願い。あなたの願いも教えてくれないかしら」
曜「でも……でも! 私は……!」
梨子ママ「あなたも、私の娘なのよ」
曜「わたし……も……?」
梨子ママ「ええ、当たり前じゃない」
曜「……!」ポロッ
梨子ママ「娘が苦しむ姿を見るのが、親として一番の苦しみよ……」
曜「……ごめんなさい……ごめんなさい……! 本当に……!」ポロポロ
梨子ママ「泣かないで……ほら……」
曜「ごめんなさい……!」 ーー
プルルルル プルルルル
鞠莉「……」
鞠莉「……出ない」
ダイヤ「そうですか……」
鞠莉「何かあったのかしら」
ダイヤ「千歌さんが梨子さんのお母様に連絡を取っていたらしいです」
鞠莉「んー……なるほど」カチッ シュボッ
ダイヤ「これは……どうしましょうか」
鞠莉「……ふぅー……善子」
善子「だと思った」 鞠莉「さっすが。行ってくれる?」
善子「言われなくてもそのつもりよ。言いたいこと腐るほどあるんだから。待ちくたびれたわ」
鞠莉「勝手に行っちゃってもよかったのに」
善子「タイミングってもんがあるでしょ。あんた達の様子を見てたのよ」
ダイヤ「言いすぎてはダメですよ……と言いたいところですが、多少言い過ぎなくらいが丁度いいかもしれません」
鞠莉「おー怖い怖い」
ダイヤ「もちろん、傷つけるようなことはダメです」
善子「分かってるわよ。そんな事しない」
鞠莉「善子は優しいからね〜よちよち」ナデナデ
善子「やめて」ベシッ
鞠莉「あーん! 手が折れたーー!」 善子「うるさいバカ社長。口動かすより手を動かしなさい」
鞠莉「ほーらやっぱりダイヤに似てきてるじゃない」
善子「似てない! 一緒にしないでって!」
ダイヤ「どういう意味です?」
善子「突っかからないで。この金髪の思う通りよ」
ダイヤ「全く……わたくしをどう思ってるんですか」
鞠莉「C」
ダイヤ「元素記号で呼ばないでください!」
善子「うるさいって!」
鞠莉「シャイニー!」
善子「はよ仕事しろ!」 ーーー
曜「……」
曜「……わたしは……」
ガチャ
曜「! だ、誰?」
善子「鍵空いてるじゃない……不用心ね」
曜「善子ちゃん……!?」
善子「うわっ、なによ真っ暗にして。辛気臭いわねぇ。入るわよー」
曜「な、何しに……」
善子「愚問ね。分かってるでしょ?」
曜「……!」 善子「はい、酒」ドン
曜「何でお酒……」
善子「分かんないの? 飲んで本音を言えってことよ」
曜「ほ、本音なんか……」
善子「ふーーーーーん……」
曜「な、なに」
善子「なるほどね……千歌や鞠莉達が言ってた通りみたいね」
曜「……どういう意味さ」
善子「まぁ、飲みなさいよ」トクトク
曜「……」 善子「いい酒よ。鞠莉から貰ってきたの」
曜「……そう」
善子「シケた顔してんじゃないの。酒が不味くなるわよ。ほら」
曜「……じゃあ」
善子「かんぱい」
曜「かんぱい……」
善子「んぐ……ぷはっ」
曜「んっ……」
善子「美味いわね」
曜「うん……」 善子「で、どうだったの」
曜「なにが?」
善子「梨子のお母さんが来たらしいじゃない」
曜「……! うん」
善子「何話したの」
曜「別に……」
善子「何もはないでしょ。そんな目ぇ腫らして」
曜「うそ」スッ
善子「うそ……じゃあないわね。残念ながら」
曜「……」グシクシ
善子「かかないの。もっと腫れるわよ」 曜「……何も言えなかった」
善子「! ……」
曜「何も言えなかったんだ……! 何も言えなかったし、何も聞けなかった……!」
曜「辛かった……! こんな私のことを、逃げた私なんかを、おばさんは許してくれてた……!」
曜「会って、欠片ほどあった心の平穏がなくなった……こんな私を娘って呼んでくれたんだよ!」
善子「……」グビッ 曜「どうしたらいいか分からなかった……だって私は裏切ったんだよ!? 梨子ちゃんも、おばさんも……どうしてまだ……!」
曜「ねぇ善子ちゃん! 私どうしたらいいの!? もう分かんないよ……! こんな辛い気持ちになるって分かってたのに、皆なんで私のことほっといてくれなかったの!?」
善子「……曜……」
曜「答えてよ! ねぇ! どうして! 私はもう仲間じゃないのに!」
善子「……」
パァン!
善子「……大人しく聞いてりゃゴチャゴチャと……」
曜「な、なにするの」
善子「うるさい!」ドン!
曜「!」ビクッ 善子「情けない顔で情けないことダラダラ抜かしてんじゃないわよ! いい加減にしなさい!」
曜「だって!」
善子「だってもクソもないわよ! いい!? あんたはなんっっっっにも分かっちゃあいないわね!! それでも梨子の恋人なの!?」ガッ!
曜「分かってるよ! 分かってるからこんなに!」
善子「いーーや分かっちゃいないわ!!梨子をバカにしてる!」
曜「はぁ!? バカになんかしてない!! 何言い出すんだよ!」
善子「してるわよ!! 千歌達がこれだけ言ってんのにまだ思い出せないの!? リリーがどれだけあんたのことを想ってたか!」
曜「そんなのっ……!」 善子「今のあんたはリリーの気持ちを踏みにじってる! いい!? あんたにとって恋人かもしれないけどね、リリーは私のリトルデーモンなのよ!」
善子「私のリトルデーモンをバカにするなら、たとえあんただって許さないから!!」
曜「じゃあ……じゃあ私はどうしたらいいのさ!!」
善子「自分で考えなさいよ!! いつまでも甘ったれてんじゃないわよ!!」
善子「一人だけ苦しんでると思わないでよ……!! そりゃ恋人だったあんたが一番辛いかもしれないけどね……!」グイッ
善子「こちとら仲間一人失ってるのよ……! それでも、それでもみんな前に進んでるのは! あんたを連れ戻しに来たのは!」ポロッ
曜「……!」
善子「みんなあなた達が好きだからよ……!」ポロポロ
曜「……! よしこちゃん……」 善子「目を開けなさい。瞑ったままじゃあ真っ直ぐ歩けない。このまま地獄の底へ向かっていくつもり? 立ち止まって、振り返って、横を見て。もう一度私たちの、リリーの想いをしっかり受け止めなさい!」
善子「……はぁ……はぁ……」
曜「……よしこちゃん……わたし……」
善子「……………った」
曜「……?」
善子「……ずっと……ずっと尊敬してた……あなたとリリーが…………付き合い始めたって……想いが通じ合ったって聞いた時…………本当に嬉しかった……!」
曜「! ……」 善子「大好きな二人が幸せそうにしてるって……本当に嬉しいのよ…………人の幸せでこんなに幸せになれるなんて初めて知った…………だから! だから、あなたがいなくなった時…………本当に悲しかった…………!」ポロポロ
曜「善子ちゃん……」
善子「……そりゃ、隠してたリリーも悪いわ。一発ひっぱたきたいくらいよ。でもね、聞いたんじゃないの? リリーの想い」
曜「……うん……」
善子「気づけなかった自分をあなたは許さないかもしれない…………でも、いつまでも後悔だけじゃあ世界は広がらない。そしてリリーはそんなこと望んではいない」
善子「リリーはあなたに広い広い海に笑顔で旅立つのを願ってる」
曜「……うん……」
善子「誰よりもリリーが好きなら……誰よりもリリーを愛しているあなたが、リリーの願いを叶えないで……誰が叶えるの?」
曜「……うん……!」
善子「お願い……曜……! リリーの想いを……!」
曜「うん……! うん……!」ポロポロ
善子「あなたも……!」
曜「うん……! ごめんね……! ごめんね善子ちゃん……!」ポロポロ ーーー
鞠莉「……」カチッ シュボッ
鞠莉「……ふぅー……」
花丸「はい、ビールおかわり」
鞠莉「サンキュー!」
花丸「千歌ちゃんはハイボール」
千歌「ありがとー!」
ダイヤ「もうそろそろ……ですかね」
果南「んー、まだもう少しかな」
ルビィ「こうして集まるのっていつぶりかなぁ」
鞠莉「多分、曜が最後に海から帰ってきた日の前日」
千歌「……」 ダイヤ「二年……経ってしまった時はいつでも早く感じるものです」
花丸「善子ちゃんもこの前似たようなこと言ってた」
鞠莉「んふふ、やっぱり似てきてるわね」
ダイヤ「似てません」
果南「いーじゃん似てても。嫌なの?」
ダイヤ「嫌です」
鞠莉「うわー善子かわいそー」
ダイヤ「はいはい……」
鞠莉「反応うすいつまらない」
ダイヤ「一々本気で相手にしてたら疲れますので」
鞠莉「はぁん、ダイヤも冷たくなったわね〜本物の石じゃない」
ダイヤ「はぁ?」
ルビィ「熱くなるの早いなぁ」 ガララッ
善子「遅くなったわ」
鞠莉「遅いわよー!」
善子「今言ったでしょ。ちょっと道が混んでたのよ」
鞠莉「もー何してるのよー」
善子「取引先の所寄ってから来るって言ったでしょうが!!」ツネー
鞠莉「アウチ! いたいいたい!」
花丸「善子ちゃーん、静かにー」
善子「ふん! うるさい!」
鞠莉「パワハラだわ……訴えないと……」
千歌「社長が……?」
善子「私生ひとつ」
鞠莉「下ネタ!?」
善子「……」パシーン!
鞠莉「いったーーー!?」
ダイヤ「今のは致し方ありませんね」 果南「ルビィーおかわりー」
ルビィ「はーい」
鞠莉「……覚えてる? あの日のこと」
ダイヤ「当たり前でしょう。誰が何を喋ったか一語一句覚えています」
果南「今でも夢に出てくる」
花丸「言葉は重ねるだけ軽くなるって言うけど……」
ルビィ「私、曜ちゃんが羨ましいって凄く思っちゃった」
鞠莉「私もよ……あのおバカさんは本当に幸せ者なんだから……」
善子「……」ゴクゴク
千歌「……うん」 ☆ーーーー☆ーーーー☆
梨子「……ごめんね、みんな……」
千歌「りこちゃん……!」
梨子「あー……もう少しもつかと思ってたんだけどなぁ……」
善子「なんで言わなかったのよ! こんの……!」
ルビィ「善子ちゃん!」
梨子「だって、言ったら曜ちゃんに伝えてたでしょ?」
果南「ダメなの? 隠しちゃいけないことだと思うけど」
梨子「ううん、ダメなんです。ワガママだけど、絶対に曜ちゃんに知られたくない」
ダイヤ「何故です!? 後になればなるほど曜さんへ重くのしかかるのですよ!?」
梨子「……」
鞠莉「梨子……! もう限界よ、曜を探して連れ戻してくるわ」
梨子「やめてください」 鞠莉「梨子! いい加減にしなさい!」
梨子「絶対しないでください。海の上にいる曜ちゃんは誰にも邪魔させない」
ダイヤ「しかし!」
梨子「あの笑顔が曇ったところを見て死ぬなんて絶対に嫌だ」
善子「リリー!」
梨子「世界で一番愛しい人が世界で一番愛しい姿でいてほしい……そうでしょう?」
ルビィ「梨子ちゃん……でも」
梨子「お願い……身勝手だって、ワガママだって分かってる。けど! 最後まで笑った曜ちゃんの記憶のまま私は逝きたい」
果南「梨子……」
花丸「……梨子ちゃん」 千歌「……分かった」
ダイヤ「千歌さん」
千歌「じゃあさ、梨子ちゃんがいなくなったあと私たちは何をすればいい? それを教えて」
梨子「……ふふっ、ありがとう。そうね……まずは曜ちゃんを助けて欲しいかな。曜ちゃん、一人だと無茶ばっかするから……」
善子「……言われなくても分かってるわよ、そんなこと」
梨子「ふふふ……もし、海から離れることがあったら、絶対それは本望じゃない……その時は戻してあげてくれる?」
ダイヤ「……はい…………」 梨子「あとは……鞠莉さん、そこの引き出し開けてください」
鞠莉「ここ? ……これは」
梨子「その手紙を、……鞠莉さんからお願いします」
鞠莉「私でいいの?」
梨子「ええ、鞠莉さんがピッタリ。あなたは曜ちゃんの話を一番深く聞ける……気持ちを引き出せる」
鞠莉「分かった。絶対に届けるわ」 梨子「ダイヤさん」
ダイヤ「はい」
梨子「曜ちゃんを……叱ってあげてください。もし、曜ちゃんが自分の気持ちに背いたら……お願いします」
ダイヤ「……なるほど、わたくしに適任ですわね」
梨子「信じてます」
ダイヤ「分かりました。責任もって承ります」 梨子「果南さん」
果南「はいよ」
梨子「たまに曜ちゃんの息抜きに付き合ってくれますか? 一緒に泳いだり、走ったり」
果南「おっけー、任せてといて。ダイヤが鞭で私が飴ってことだね」
ダイヤ「そんなこと一言も言ってませんけど」 梨子「善子ちゃん」
善子「……ん……」グシグシ
梨子「うふっ、曜ちゃんと沢山話してあげてね?」
善子「……うん……」
梨子「たくさんたーーくさん、ね?」
善子「分かった……!」 梨子「花丸ちゃん」
花丸「……はい」
梨子「ルビィちゃん」
ルビィ「はい……」
梨子「曜ちゃんを優しく見守ってくれる? 優しく、受け止めて癒してほしいな」
花丸「……うん……」
ルビィ「はい……!」
梨子「あなた達の優しい空気で曜ちゃんを包んでほしい」
花丸「……うん……!」
ルビィ「梨子ちゃん……!」 梨子「千歌ちゃん」
千歌「うん」
梨子「曜ちゃんをよろしく」
千歌「分かった」
梨子「曜ちゃん支えられるのは千歌ちゃんよ」
千歌「分かってる」
梨子「それと、もう一つお願い」
千歌「?」
梨子「あのね――」 ☆ーーーー☆ーーーー☆
鞠莉「千歌っち」
千歌「ん?」
鞠莉「どうなの? 梨子から頼まれたことは」
千歌「大丈夫だよ。梨子ちゃんほどじゃないけど」
果南「ん、それなら良かった」 花丸「……あ、来たよ」
ルビィ「来たね」
ガララッ
曜「――みんな」
花丸「いらっしゃいませ」
ルビィ「こちらへどうぞ」
鞠莉「さ、とりあえず駆けつけ一杯よ」
曜「ん、じゃあ……」グビッ
曜「ぷはぁっ、美味しい」 ダイヤ「……それで」
曜「うん……」
鞠莉「……ふぅー」
曜「まずは、みんなごめんね。本当に心配と迷惑をかけた」
善子「ホントよ」
花丸「善子ちゃん静かに」
善子「なんで私だけ」 曜「私、本当に自分ことし考えてなかった。本当にバカだ」
鞠莉「ばか曜〜」
ダイヤ「鞠莉さん」
曜「見えてなかった。心の奥底にしまってた。梨子ちゃんを、みんなを、私を」
ルビィ「……」
曜「でも、やっぱり私は――」
『曜ちゃん、いってらっしゃい。帰ったらお話たくさん聞かせてね』
曜「海が、好きだ」
鞠莉「……んふふ」
果南「うんうん」
ルビィ「……ちょっと待っててね」
曜「ルビィちゃん?」
花丸「曜ちゃん、おかわりいる?」
曜「あ、じゃあ、お願い」
花丸「かしこまりました」 花丸「はい、どうぞ」
曜「ありがとう」
花丸「それと、これはサービスずら」
曜「え?」
ルビィ「曜ちゃん」
曜「ルビィちゃん……?」
ルビィ「はい、これ」
曜「……これは……」
ルビィ「ふふっ、着替えてくれる?」 ー
曜「……ど、どうかな……」
鞠莉「Excellent!! 似合ってるわよ〜!」
ルビィ「うん! やっぱり曜ちゃんはこうでなくっちゃ!」
果南「カッコイイよ」
曜「なんで……私の船員制服……」
ルビィ「ちゃんと手入れしてるから、問題なく着れるはずだよ」
曜「ルビィちゃん……」
ダイヤ「この日のためです。言わなくてもわかりますわよね?」
曜「うん……うん!」 鞠莉「曜〜! ちょっとこっち見てくれる?」
曜「ん? ……梨子ちゃんの手紙?」
鞠莉「いくわよ〜ファイア!」ボッ
善子「え」
花丸「うそ」
曜「な、な、な……!」
果南「鞠莉!?」
ダイヤ「ま、鞠莉さん! あなた一体何をしてるのですか!?」
鞠莉「んふふ、よく燃えるわね〜」 曜「鞠莉ちゃん!!」ダッ
鞠莉「ストップ。胸ポケット探ってみて」
曜「!! ……あれ」ゴソゴソ
曜「……手紙だ」
鞠莉「ドッキリで〜した。こっちは偽物」
ダイヤ「……!」ゴチン!
鞠莉「いっったーーー!! な、な、にするの!?」
ダイヤ「やっていいことと悪いことがあります!! 全くあなたは!!」
鞠莉「そ、そんなに強く叩かなくても……だって梨子の手紙を私がずっと持っとくわけにも……それにこっちの方が面白いし」
善子「面白くないわよ! ばっっかじゃないの!?」
鞠莉「ひ〜ん! かな〜ん! ダイヤと善子がいじめる〜!」
果南「いやー今のはどう考えても鞠莉が悪いよ……」
花丸「ルビィちゃん知ってたの?」
ルビィ「あはは、うん、まぁね……」 曜「……」カサカサ
千歌「曜ちゃん、ちょっと待って」
曜「え?」
千歌「明日、梨子ちゃんの家に来てくれる? そこで読んで欲しいな」
曜「どうして?」
千歌「どうしても」
曜「……い、今読みたい」
千歌「お願い」
曜「わ、わかった……」 鞠莉「ふふっ、じゃあ今夜は飲み明かしましょうか!」
ダイヤ「あなたはダメです。バツとして烏龍茶にしなさい」
鞠莉「なーーーーんでよ!」
ダイヤ「当たり前でしょう!! 正座なさい!!」
鞠莉「鉄鉱石アラサー!」
ダイヤ「言ってはいけないことを言いましたわね!!」
果南「鞠莉、それ自分たちにも返ってくるからそれ」
善子「ずら丸ーハイボールー」
花丸「無いからソフトボールでいい?」
善子「いや飲めるか」
ルビィ「持ってくるねー」
千歌「曜ちゃん、はい」
曜「ありがと」
千歌「美味しいねぇ」
曜「うん……」 ーー
ピンポーン
梨子ママ「はい……あら」
曜「こんにちは」
梨子ママ「いらっしゃい。千歌ちゃん来てるわよ」
曜「はい。お邪魔します」 トントン
千歌「はーい」
曜「入るね」
千歌「別にノックしなくてもいいのに。私の部屋じゃないし」
曜「ん、まぁ、何となく」
千歌「ま、座ってよ」
曜「今なんて言ったか覚えてる……?」 千歌「さてさて……」
曜「そう、なんで梨子ちゃんの部屋に?」
千歌「……ん、大事なお願いをされてるから、それを果たしに」
曜「大事なお願い……?」
千歌「うん」
曜「? ……ピアノに座って何するの?」
千歌「決まってるじゃん、そんなの」
曜「え……」 千歌「曜ちゃん、私ね。曜ちゃんと梨子ちゃんのことが大好きなんだよ、知ってた?」
曜「な、なに急に……」
千歌「知らなかったでしょー。残念! 千歌は二人のことが大好きなのです!」
曜「な、ど、へ? 一体どうしたのさ」
千歌「そーーんな二人の距離が段々とおーーくになっちゃって、私はどんな気持ちだったと思う?」
曜「……!」
千歌「辛くて苦しくて悲しくて……ぐちゃぐちゃの気持ちを抑えられなくて、私は曜ちゃんを探しました。苦労したんだよ? まったくもー」
曜「ご、ごめん……」
千歌「許しません!」
曜「えっ」 千歌「……なーんて言いたいけど、曜ちゃん大好き梨子ちゃんに免じて、許してあげます! いやもーこれは梨子ちゃんのおかげだよ? 幼馴染み補正があっても許しきれなかった! 梨子ちゃんに感謝!」
曜(幼馴染み補正……?)
千歌「そしてそして、梨子ちゃんからの大事なお願い! ちゃーーんと心して受け取るんだよ!」スッ
曜「ん……?」
千歌「……ふぅ、ちょっと緊張する」 千歌「……」スッ
ーー♪
曜「……! この曲……」
ーー♪ーー♪
曜「千歌ちゃん……」
『これから、この曲は曜ちゃんと一緒にいる時に弾く』
ー♪ーーー♪ 『そう、曜ちゃんといる時。曜ちゃんの前で曜ちゃんの為だけに弾くね』
ーー♪ーーーー♪
『ただいまー! 梨子ちゃん、あの曲弾いてくれる?』
『帰ってきて早々それ? それより私とまぐわらない?』
『まぐわらない! いいから早く!』
ー♪ーーーーー♪
『曜ちゃん』
『ん?』
『あのね、最近思うんだ』
『何を?』
ーー♪ーーーー♪ 『このひろーーーーーい海からさ、曜ちゃんは私を選んでくれたんでしょ?』
『んー、また突拍子もないことを……』
『でしょ?』
『いや、まぁ、その……うーんと……』
『もう、はっきり言ってよ』
『そ、そうだ……よ……』
ーー♪ーー♪
『そっか、そっかぁ』
『な、なにさ急に……からかわないでよ』
『いや、嬉しいなぁって。これってキセキじゃない?』
『キセキ?』
『うん』
ーーー♪ーー♪
『だってこんなに海って大きいのに、私と曜ちゃんは出会った。そして、こうやって一緒の気持ちで』
『想いが通じあって、一緒にいる。キセキよ』
『うん……そうかも、ね』
『キセキ……キセキ……』
『……そうだ』
ーー♪ーーーー♪ 『どうしたの?』
『この曲のタイトル決まったよ』
『ホント?』
『うん。この曲は』
ーー♪ーーーー♪
千歌「"キセキヒカル"」
ーーー♪ …… 千歌「……ふぅ……」
千歌「!」クルッ
曜「……うっ……ひぐっ……」
千歌「……曜ちゃん……」
曜「ありがとう……千歌ちゃん……」
千歌「……ううん…………」ポロッ
曜「わたし……わたし、もう一度、海に……」
千歌「……うん……!」 ーーーー
果南「……綺麗な朝焼け」
果南「うん、今日もいい天気だ。最高の出港日和だよ」
曜「うん」
果南「乗船期間は?」
曜「三ヶ月。前と一緒」
果南「良かったね、すんなり決まって」
曜「鞠莉ちゃんが前の会社に頼み込んでくれたんだ。感謝してもしきれない」
果南「この前まで務めてた会社のことも聞いた?」
曜「鞠莉ちゃんの取引先だったんでしょ? 私がすんなり辞めれるように社長に言っててくれたみたい」
果南「いやー鞠莉は相変わらずそういうのが似合うねぇ。金の力ってやつか」
曜「ひどい言い草だなぁ……」 果南「……ん、やっぱ制服姿が似合うよ。カッコイイ」
曜「果南ちゃんに言われると……ちょっと変な気分」
果南「むっ、どういう意味さ」
曜「褒めなれてないだけだよ、果南ちゃんに」
果南「私だって褒めることくらいするよ」
曜「本当に? あんまり見た事ないけど」
果南「人間には言わないかな。魚によく言う」
曜「なんて?」
果南「その鱗イカしてんね! とか」
曜「それ楽しいの?」 果南「ほっといてよ。それより、行かなくちゃでしょ」
曜「あ、そろそろか……ちょっと行ってくる」
果南「ほいほい。んじゃ、よろしく言っといてよ」
曜「果南ちゃんは行かないの?」
果南「私が一緒だと雰囲気台無しでしょ。ほら、早く行った」
曜「……空気読めるんだ……」
果南「ぶつよ」 ーー
ダイヤ「今年の桜は遅咲きだそうですね」
花丸「そうみたいだね。タイミングぴったりで良かった」
ルビィ「うん」モグモグ
善子「あ! それ私の団子!」
ダイヤ「花吹雪をわざわざ用意しなくてすみました」
善子「いや花吹雪って……後で拾うの大変じゃない」 花丸「冷めてるなぁ。堕天使の頃の方が思いやりの心があったんじゃない?」
善子「社会の荒波には流石の堕天使も参るのよ……そりゃ心も荒むわ」
ルビィ「もっと明るい話しようよ二人とも……こんな日に……」
ダイヤ「そうですわよ、無粋ですね」
花丸「春は曙。早起きして見る桜も、趣があるずら」
善子「夜桜ならぬ朝桜……ん、たしかにいいものね」
ルビィ「なんか輝いて見えるかも」 ダイヤ「気のせい……ではないでしょう。きっと、世界で一番今日の桜は輝いている」
花丸「だねぇ……」
善子「……」
ルビィ「ふふっ……」
ダイヤ「……お気をつけて」 鞠莉「……」カチッ シュボッ
鞠莉「……ふぅー……」
千歌「ねー、鞠莉ちゃん」
鞠莉「んー?」
千歌「その胸についてるお花はなぁに?」
鞠莉「これ? 彼岸花よ」
千歌「ヒガンバナ……」
鞠莉「綺麗でしょ? 私この花好きなの」
千歌「へぇ……」 鞠莉「『悲しい思い出』『再会』……この花の言葉」
千歌「……なんだか曜ちゃんと梨子ちゃんみたい」
鞠莉「やっぱりそう思う?」
千歌「うん、鞠莉ちゃんも?」
鞠莉「ええ。あとね、もうひとつあるの」
千歌「なに?」
鞠莉「『思うはあなたひとり』」
千歌「おおー……ますますぴったりだ」
鞠莉「でしょー?」
千歌「うん!」 ーーー
『桜内家之墓』
曜「ごめんね、ずっと会いに来なくて」
曜「……ごめんね、梨子ちゃんの想いから逃げて」
曜「もう、大丈夫だから」
曜「……でも、梨子ちゃんもだからね?」
曜「大事なこと隠しちゃって……私本当に辛かったんだから」
曜「……ふふっ、おあいこだよ」
曜「……行ってきます」 梨子ママ「曜ちゃん」
曜「……はい」
梨子ママ「ありがとう」
曜「いえ、こちらこそ。本当に、ありがとうございました」
梨子ママ「気をつけてね。目一杯楽しんで」
曜「はい」
梨子ママ「――いってらっしゃい」
曜「――いってきます!」 曜「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」タッタッタッ
拝啓 曜ちゃん
曜「はぁ、はぁ……!」タッタッタッ
おかえりなさい
曜「はぁっ……!」 今回の旅はどうだった?
キツかった?楽しかった?大変だった?
どんな事があっても、船の上のあなたはきっと世界で一番生き生きしてたのでしょうね
曜「……!」タッタッタッ
そんなあなたが世界で一番好き 迎えに行けなくてごめんなさい
あなたが元気でいてくれるなら、私は他に何もいらない
私は
曜「……!」
今これを、曜ちゃんの下着を被って書いてます
ズデン!
曜「いたぁ!」
いやこれもうやばい脳がとろけちゃう文字が歪んできちゃった
曜「……! いてて……」
なんて言うのはどうでも良くて。 ちゃんと次の航海まで休んでね?
曜「ふぅ……」パンパン
行ってらっしゃいって、直接言えないのは残念だけど
曜「……」ダッ
あなたが海のように蒼いその瞳を輝かせて、いってきますって言い続けてくれるなら
曜「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」タッタッタッ
私はいつでもいってらっしゃいって言いに行くわ。
曜「はぁ……!」
大きな声でお願いね。
曜「いってきます!!」タッタッタッ
そして、全速前進
曜「ヨーソロー!」 終わり
見てくれた人、レスしてくれた人ありがとう
途中のミス申し訳ねぇ
ではでは >>332
ここまで読み終えたけど泣いてる
おれはあの頃のままだ… めざしは新垣結衣に似てるってレスを見たことある
俺は現物を見たことないから真偽は不明 悲しい話かと思いきやそれに負けない梨子ちゃんの存在感
おつ 梨子ちゃんがメノノリ寄りなところが趣深い
面白かった 気分最悪だヨーソローの人か?
とってもいい話だった!書いてくれてありがとう!ようりこの名作また生まれてしまった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています