希「ウチの喫茶店の味は」
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■Scene01
サァー…
カランコロン
希「いらっしゃいませー♪」
コト
希「急な雨で大変やったねぇー、何にするー?」
希「ふんふん…アイスコーヒー? それだけでええ?」
希「はーい、ちょっと待っててなー」
コポポ…
希「最近暑いから大変やんね、どう調子はー?」
希「夏バテはアカンよー。ご飯美味しく食べられへんもんー」
希「ちゃんと食べてるー?」
希「あーアカン、朝抜くのが一番アカンやん〜」
希「忙しいからって、倒れたら全部台無しになるんやからね?」
コト
希「はいアイスコーヒー♪」
希「あと、このサンドイッチとおかしも食べてき」
希「頼んでない? まぁまぁ、ええやん〜ウチからのサービスと思っとき♪」
希「あはは、確かに名古屋のモーニングみたいやね♪」
希「でも名古屋はもっといろいろつけてくれるんちゃうん?」
希「ええなぁ〜ウチも行ってみたいわぁ〜」 希「仕事で行く機会あるん? ウチも連れてってー♪」
希「えへへ、さすがに無理かぁー」
希「浮気とか思われるー? うーん、ウチにそんな魅力あるかなぁ」
希「そっかー、ありがとー♪ じゃあこれはおまけでー」
希「ウチが漬けたお漬物やで。あっつい日はこういうのが元気になるんよ」
希「うんうん♪ たくさん食べてなー♪」
ザァー…
希「雨、つよなってきたかもなぁ」
希「時間大丈夫?」
希「あ、サボりやん? サボりはアカンよー?」
ザァー…
希「…まぁでも、この雨じゃ出るに出られないやんね」
希「んー? ウチは全然♪ いつまでもいてくれて構わんよー♪」
希「こんな雨の日は一人だと寂しくなるからね。誰かいてくれた方が楽しいやん?」
希「あ、ひどいなぁ。そんないつも客がいない訳やないからねー?」
ザァー…
希「…」
希「コーヒー、おかわりいるー?」
希「ええよー♪」
コポポ…
希「はい、どーぞ♪」
希「なにもー。美味しいって特別なことなんもしとらんでー?」
希「…はいはい、そんなこと言ってると恋人にまた怒られるんちゃうん?」
希「ふふふ、仲良くて羨ましいなぁー♪」
ザァー…
コポポ…
コト
希「隣、失礼するでー♪」スト
希「仕事中に何してるかって? 休憩やん?」
希「サボるなって…キミに言われたないわー」 希「本来やったら休憩の時間なんやけど、こんな状況やん? 一緒にコーヒーのもー♪」
希「お客さん? こないやろー」
希「…自分で言ってて悲しくなったわ」
希「まぁ、一人やないし♪」
希「お仕事サボりもの同士、仲良くしよー♪」
ザァー…
希「…」
希「雨やまないねー…」
希「…」
希「お仕事、本当に大丈夫ー…?」
希「…」
希「そか」
希「…」
ザァー…
希「…」スースー
希「んぅ…」
希「…」スースー
ザァー…
希「…ん」
希「あれ…?」パサ
希「…」
希「ウチ、寝てしもたん…?」
希「あはは…これは怒られてもしゃーないやん…?」
希「さすがにもう帰っちゃったかぁ」
希「あ、メモ書き…」
希「…」
希「…」クス
希「言われんでも仕事に戻るよー、お節介さん…♪」チュ
ザァー…
■Scene02
カランコロン
希「いらっしゃいませー♪」
穂乃果「こんにちわーっ♪」
希「あ、穂乃果ちゃんやん♪」
穂乃果「きたよー♪」フリフリ
希「いらっしゃい、ゆっくりしていきー♪」
穂乃果「うん♪」
コト
希「はい、どうぞ♪」
穂乃果「ありがとー♪」
ゴクゴク
穂乃果「はぁー、お水おいしーっ!!」
希「あはは、ただのお冷やん?」 穂乃果「今日は走ってきたから喉カラカラなんだよぉー…」
希「全く穂乃果ちゃんは…こんな暑い日に無理したらアカンよー?」
穂乃果「ごめんなさーい」ペロ
希「そしたら、オレンジジュースとかでええかなぁ?」
穂乃果「うんうん、大丈夫!」
希「はーい、ちょっとまっててなー♪」
トクトク…
希「ところで今日はどしたんー?」
穂乃果「希ちゃんに会いにきたんだよ!」
希「えー本当ー? 嬉しいこと言ってくれるやん?」
コト
希「はい、オレンジジュース♪」
穂乃果「おぉー!」
希「喉乾いてるゆーたから、ちょっと多めにしといたでー」
穂乃果「本当!? ありがとー♪」
希「あとハンカチ。これでちゃんと汗拭いときー」
穂乃果「えぇ!? でも希ちゃんのだし、悪いよ…」
希「気にせんでもええよー」フキフキ
穂乃果「んっ…」
希「って、ウチが拭いてしもた…」
穂乃果「んー」
希「もう、穂乃果ちゃんは可愛えなぁ♪」フキフキ 希「…はい、こんなもんでええやろー」
穂乃果「ありがとー」
希「ちゃんとお化粧直しするんやでー?」
穂乃果「はーい」
希「穂乃果ちゃん、これからデートなんやろー?」ニシシ
穂乃果「う…な、なんで分かるの…?」
希「いつもよりお化粧が濃いからなぁ。すーぐわかるよ」
穂乃果「そ、そうかなぁ…?」
希「ふふふ、恋する乙女はいつだってそんなもんや♪」クスクス 希「それで、こんなとこに寄り道してて大丈夫なん?」
穂乃果「うんとね、希ちゃんとお話してからデートに行くとリラックスするんだー♪」
希「えーそうなんー?」
穂乃果「うんうん、希ちゃんなんでもお話聞いてくれるから楽しいし♪」
希「あはは、穂乃果ちゃんは上手いんだからー。はい、お菓子♪」
穂乃果「わーい、希ちゃん大好きー!」
希「まったく現金なんやから…」 穂乃果「でも、リラックスするのは本当だよ!」
穂乃果「告白する前の日だって、眠れなくてどうしよう〜!! ってなってたんだけど…」
穂乃果「デートの前にこのお店見つけて、希ちゃんに話しかけてもらって、いろいろお話してたら気が楽になって…」
穂乃果「それで、そのまま相手の人と会って…すぐに告白しちゃった!」
希「出会い頭に告白したん? すごい勇気やなぁ…」
穂乃果「あはは…相手の人もすごいびっくりしてた」
希「そりゃびっくりするよー。普通はデートのあと、いい雰囲気になってからーとかやん?」
穂乃果「あはは、おんなじこと言ってたよ」クスクス 穂乃果「でも、なんだかそれがおかしくて、可愛くて、付き合おうと思ったって言ってくれたんだぁ」
希「へぇ…なんだかすごい話やなぁ」
穂乃果「でもひどいんだよ、最初は断ろうかすごい悩んでたって言うんだもん!」
希「それはひどいなぁ、穂乃果ちゃんこんな可愛ええのに…」
穂乃果「えへへ…♪ そんなに可愛いって言ってくれるの希ちゃんだけだよ…///」
希「そんなことないと思うけど…。でもま、とりあえずおめでとな♪」
穂乃果「うん、ありがとー♪」
ジャー
カシャカシャ
穂乃果「希ちゃんって一人でお店やってるの?」
希「そうやよー」
穂乃果「全部一人でやらないといけないから大変そうだね…」
希「んー、そうでもないかなぁ。お客さんそんなおらへんし」
穂乃果「あー…」チラ
希「あーって、穂乃果ちゃんひどいなぁー」
穂乃果「あ、ううん、ごめん、そういう意味じゃないよ…!」アセアセ
希「あはは、わかっとるよー♪」クスクス 穂乃果「でも、希ちゃん可愛いし、お話楽しいし、もっと人気あってもよさそうなんだけどなぁ」
希「えー、ウチなんてそんな可愛くないよー」
穂乃果「そんなことないよぉ!」
希「ありがと♪ でも可愛いっていうならこの制服おかげかもなー」
穂乃果「あ、確かにこの喫茶店の制服可愛いよね! フリフリすごいし!」
希「なー♪ 知り合いにこういうの得意な子がいるんやよー。すごいよなぁー」
穂乃果「え、オリジナルなの!? ほぇーすごーい…」 希「この店の内装とか装飾とかも知り合いにやってもらってるんやけど、みんな才能あってすごいやねぇ」
穂乃果「すごい…っていうか、希ちゃんの人脈もすごい気がするんだけど…」
希「うーん、たまたまだと思うよー? まぁそんな偶然に感謝はしとるけどなー♪」
穂乃果「えっと…それで希ちゃんはなんで…」
ピピピ
希「? なんか鳴っとるでー?」
穂乃果「あ、ヤバ! 遅刻しちゃう!!」 希「そんなギリギリに設定しとるん…?」
穂乃果「あわわ…早くしないと…! あ、穂乃果行くね!」
希「あー、穂乃果ちゃん待ち、これ持っていき」
穂乃果「へ?」
希「恋愛成就のお守り♪」
穂乃果「え…これ、もらっていいの…?」
希「ええよー。穂乃果ちゃんの恋が上手くいくように応援しとるで♪」
穂乃果「…希ちゃん、ありがとう!」
穂乃果「それじゃ行ってくるねーーーっ!!」ブンブン
希「転ばないようになー」フリフリ
カランコロン
希「…ふぅ」
希「まったく、ああいう積極的な子が最後に勝つんやろなぁ…」クス
>朝抜くのが一番あかんやん〜
ごめん、えっちなこと想像しちゃった
■Scene03
カランコロン
希「いらっしゃいませー♪」
真姫「…」
コト
希「はい、どうぞ♪ これメニューやんね」
真姫「…?」
希「ん? どしたん?」
真姫「あ、いえ…」
希「何にするー?」 真姫「…えっと」
希「♪」
真姫「…」チラ
真姫「…ブレンド、お願いするわ」
希「はーい、ちょっと待っててなー♪」
カチャカチャ
希「お姉さん、ウチの店にきたん初めてやね? どこからきたん?」
真姫「…」
希「こんな寂れた喫茶店にお姉さんみたいなキレイな人が来てくれたら、ウチびっくりしてまうわー♪」
真姫「…」
希「お姉さんみたいな人はお仕事もすっごいできるんやろーなぁ。ウチとは大違いやね」
真姫「…」
コポポ…
希「もし疲れてるんやったら、ウチのコーヒーを飲めば元気になるでー♪」
真姫「…」
希「希パワー、たっぷり注入ー! …なーんてな♪」
真姫「…」
コト
希「はい、どーぞ」
真姫「…」
希「じっくり味わってなー♪」
ズズ…
希「どーう? 美味しい?」
真姫「…あの」
希「んー? なにー?」
真姫「さっきから、近くありません…?」 希「近い…? あ、ちょっと乗り出しすぎたかな…」ペロ
真姫「そうじゃなくて…!」
希「?」
真姫「その、店員さんとお客さんの距離が近すぎるっていうか…」
希「そーう…? あはは、あんまり気にしたこと無いからわかんないなー」
真姫「普通、店員はそんなに話しかけたりしてこないわ…」
希「そっかぁ、そういうもんなんや…ウチ、あんまり他の店のこと知らんしなぁ」
真姫「なんなのこの喫茶店…」 希「まぁまぁ、ええやん?」
真姫「良くないわよ…!」
希「だって――お姉さん話したがってたやん?」
真姫「…!」
希「そう思ったから話しかけたんやけど、ダメやったん?」
真姫「…」 希「ウチ、静かな空気が好きっていう人にはあんま話しかけたりしないんよ」
希「そういう雰囲気の人もおるからなー」
希「…でも、お姉さんは違う気がする」
真姫「…そんな…こと…」
希「ない?」
真姫「…」
希「…ふふ♪」
希「まぁとりあえずコーヒー飲も? 冷めてまうよー」
真姫「誰のせいよ…」
ズズ…
真姫「ん…」
希「どう? 美味しい?」
真姫「…」
ズズ…
真姫「…暖かいわ」
希「えー、なにそれ、ボケ? つまらんくない?」
真姫「はぁ!?」 希「だってホットなんやから暖かいの当たり前やろー? 何言ってるんー?」
真姫「そ、そういう意味じゃないわよ…! 私が言ってるのはそういうことじゃなくて…!」
希「…」
真姫「えっと、だから、その…///」
希「…ぷ、あはは、あははははは!!」
真姫「なによ!?///」 希「ごめん、冗談やよ、冗談! あはは、もーお姉さん可愛いわぁ…!」クスクス
真姫「〜〜!!///」
希「ありがとー♪ そういう感想が一番うれしいんよ」
真姫「…ふん! イミワカンナイ!」
希「ふふ…でも、元気出たんやない?」
真姫「ぁ…」 希「まぁ、こんなことで根本的な辛さが拭えるなんて思いはしないけど、ちょっとでもほっと一息つけたんなら幸いやよ♪」
真姫「…」
希「さすがにこれ以上はお姉さんの邪魔になりそうやから、ウチは引っ込んどる」
真姫「…」
希「なんかあったら呼んでな、お姉さん♪」
真姫「…」 希「ありゃ、穂乃果ちゃんいらっしゃーい♪」
穂乃果「希ちゃん希ちゃん! 聞いて聞いて! 大ニュース!!」
希「穂乃果ちゃん、しー…」ツンツン
穂乃果「ふぇ…?」チラ
真姫「…」
穂乃果「わ、穂乃果以外のお客さんてめずらしー…」
希「穂乃果ちゃん、両手あげてもらってええ?」
穂乃果「へ、こう?」 希「失礼な発言ばっかり続ける子はおしおきやん?」クスクス
穂乃果「あぅ〜〜…」
真姫「…」
希「あ、お姉さんごめんな、騒がしくしちゃって…。穂乃果ちゃんのせいやよ?」
穂乃果「そんなぁ…」
希「で、なにしに来たん? なんか飲む?」
穂乃果「あ、ううん! そう! 大ニュースなんだよ! 穂乃果、結婚するかかもしれないんだ!」
希「え、本当? すごいやん!」
穂乃果「うんうん! そうなの! すごいんだよ!!」 希「こないだ付き合い始めたばっかやったのに、すごいスピード結婚やねぇ」
穂乃果「えへへ、なんかつい勢いで言っちゃったんだ…」ペロ
希「穂乃果ちゃんは相変わらずやねぇ」
穂乃果「それもこれも、希ちゃんが話聞いてくれたからだよ!」
希「えー、ウチはなんもしてへんよー」
穂乃果「ううん! 希ちゃんのおかげ! だからこれからもよろしくおねがいします!」
希「あはは、なにそれー? こちらこそ、これからもウチの店を贔屓にしたってなー」
穂乃果「うん! あ、ごめんね、穂乃果これからデートだから今日はもう行くね!」
希「相変わらず忙しいなー穂乃果ちゃんは」 穂乃果「今度はちゃんと時間取ってお店にくるからね!」
希「うん♪」
穂乃果「あ、それとそこのお姉さんも!」
真姫「…っ」ビク
穂乃果「騒がしくしてごめんなさい! 希ちゃんはいい人だし、この喫茶店もいいお店だから嫌いにならないでね! それじゃあねー!!」ブンブン
希「転ばないでなー」フリフリ
カランコロン
希「…ふぅ。あはは、本当にごめんなーお姉さん」
真姫「別に…」
希「あの子、数少ない常連さんの一人なんよ」
希「可愛いくていい子なんやけど、騒がしすぎるのが玉に瑕やんね」
真姫「…」
希「あ、さすがにコーヒー冷めちゃったから、淹れ直そか?」
コポポ…
コト
希「はい、どうぞお姉さん」
真姫「…真姫」
希「へ?」 真姫「その…私の名前…」
希「名前…?」
真姫「お、お姉さんじゃなくて…わ、私も名前で…」
希「…」
真姫「…///」
希「…」クス
希「ええよ、真姫ちゃん♪」
……。
希「今日は来てくれてありがとう、真姫ちゃん♪」
真姫「あ…その…こちらこそ…///」
希「ふふ♪」
真姫「…///」
希「また来てな、いつでも待ってるよー♪」
真姫「…ええ、また来るわ」 真姫「えっと…」
希「?」
真姫「その…///」
真姫「な、なんでもないわ!」プイ
カランコロン
希「あー…」フリフリ
希「もうちょっとで名前呼んでもらえたのに、惜しかったなー」クス
めっちゃ通いつめたいけど下心ありきで来る男は見事にあしらわれそうな感じもする お前らならあの人コーヒー一杯でどんだけ居座るねんって思われそう
■Scene04
ジジジ…
希「…」
ジャッ!ジャッ!ジャッ!
希「…」
希「…ふぅ」
希「まぁこんなもんやろかー?」
希「真姫ちゃん、また来るとは言ってくれたけど…コーヒーは美味しくないってバッサリやったもんなぁ」
希「もっと豆を炒るところから頑張らななー…」
希「よーし」
カランコロン
希「あ、いらっしゃいませー♪」
絵里「希」
希「えりち…」
コト…
希「はい、お冷」
絵里「ありがと」
希「…今日はどうしたの?」
絵里「わかってるでしょ」
希「…」
絵里「ブレンドをお願いするわ」
希「うん」
カチャカチャ
絵里「…相変わらず、お客がいないわね」
希「あはは…今日のはじめてのお客はえりちだよ」
絵里「そう」
希「うん…」
コポポ…
コト
希「お待たせ」
絵里「ありがとう」
ズズ…
希「どう?」
絵里「…イマイチね」
希「そっか…」
希「あ、あはは…色々とそういう意見もあったから、今、豆を炒るところからちゃんと勉強してるんだ」
希「やっぱりコーヒーって難しいよね! 喫茶店なんだから、コーヒーが美味しくないと…」
絵里「希」
希「な、なに…?」
絵里「…そろそろ、やめにしない?」
希「…」
絵里「あなたもいい歳なんだから、いつまでもこんなことやってる場合じゃないのはわかるでしょう?」
絵里「いい加減、無駄な時間を過ごすのは――…」
希「無駄なんかじゃないっ!!」
絵里「…」
希「ウチがここで使う時間は…無駄な時間なんかじゃない…!」
絵里「希…これは幼馴染として心配するから言ってあげているの」
希「そんなこと、言われなくてもわかってるよ…」
絵里「ううん、希はわかってない」
希「…」
絵里「私がなんでここまで希のためにしてあげるか、わかる…?」
希「それは…」
カランコロン
真姫「…こんにちわ」
希「ぁ…」グイ
希「ぃ、いらっしゃいませー♪」
絵里「…」
希「ちょっとまってて…」ボソ
真姫「…?」
希「真姫ちゃん、また来てくれたんやー♪」
真姫「え、ええ…///」
希「今日は何にするー?」
真姫「えっと、ブレンドをいただくわ…」
希「うん、待っててなー♪」
絵里「…」
コト
希「はい、お待たせー♪」
真姫「ねぇ」
希「? なぁに真姫ちゃん」
真姫「あの人、お客さん?」
希「へ? あ、ああ…うん、お客さんやよ♪」
真姫「へぇ…」
絵里「…」
希「そ、それよりほら! 今日のブレンドはいつもと違うんよ? 豆の炒り方も変えたんやから! 味わってみてー」
真姫「え、ええ…頂くわ」
ズズ…
希「…どーう?」
絵里「…」
真姫「…前よりは美味しくなってるかも」
希「そ、そう…? よかったぁ…」
真姫「でも、まだまだね」
希「あはは、真姫ちゃんは厳しいなぁ…」
真姫「ちょっと焦がしすぎじゃないかしら? 風味が強すぎる気がするのよね…」
希「なるほどなるほど…」 真姫「あんまりクドすぎると、二口、三口と続き辛いわ。コクを出そうとするのは分かるんだけど」
希「真姫ちゃん、なんか専門家みたいやね…」
真姫「べ、別に…ただちょっと好きで調べてるだけだし…///」ズズ…
希「そうなん?」クス
真姫「――でも」
真姫「やっぱり希の淹れてくれるコーヒーは、暖かいわ…」
希「…!」 絵里「…」
希「真姫ちゃん…ありがとう…」
真姫「な、なによ…! 本当のこと言っただけなんだからね!///」
希「ううん、そうじゃなくて…名前…」
真姫「名前…? あっ!」
希「希って言ってくれて、ウチ嬉しいわぁ…♪」
真姫「///」カァー
希「真姫ちゃん、ありがとう♪」ホロリ
真姫「ち、違うんだから! 希の為じゃ無いんだから!!///」 真姫「…また来るわ、希」
希「うん、ありがとー真姫ちゃん♪」
真姫「…」チラ
絵里「…」 真姫「…希」
希「どしたん?」
真姫「気のせいかもしれないけど、何か希が泣かなきゃいけないようなことがあるなら…」
真姫「今度は私が話、聞いてあげるから///」
希「ぁ…」
真姫「そ、それじゃあね///」
希「うん、また来てな…♪」
カランコロン
希「…」フリフリ
希「ふぅ…」
絵里「希」
希「あ、ごめん、えりち…ずっと放ったらかしにしてて…」
絵里「大丈夫よ」
希「コーヒー、淹れなおそっか?」
絵里「遠慮するわ」
希「そっか…」
カチャカチャ
絵里「希…変わったわね」
希「ぇ…?」
絵里「コーヒー、ごちそうさま」ガタ
希「ぁ、えりち…」
カツカツ
絵里「…私はそのコーヒー、暖かいなんて思わないから」
カランコロン
希「えりち…」
カタ
ズズ…
希「…あはは、本当に美味しくないや」
■Scene05
キュッキュッキュ…
希「…」
カタン
希「…」
ジジジ…
希「…」
カランコロン
希「…」
海未「…あの」
希「ぁ…いらっしゃいませー…♪」
コト
希「飲み物は何にするー?」
海未「あ、ええと…コーヒーを…」
希「ホットでええ?」
海未「はい、それでお願いします」
希「うん、ちょっと待っててなー」
海未「…」
コポポ…
コト
希「はい、お待たせー」
海未「ありがとうございます」
希「ゆっくりしていきー♪」
海未「はい…」
ペラ…ペラ…
海未「…」
キュ…キュ…
希「…」
海未「あの…」
希「…あ、はーい、どしたん?」
海未「コーヒーのお代わりって、大丈夫でしょうか…?」
希「大丈夫やよ♪ 今持って来たるー」
海未「お願いします」
コポポ…
海未「…ここは良い喫茶店ですね」
希「へ…? そーう?」
海未「雰囲気がとてもいいです」
希「あはは、お客さんぜーんぜんおらんけどなー」
海未「それが私にとっては非常に心地いいんです」
希「そっか」
海未「あ、いえ、別に繁盛してないからとか、そういう意味ではないのですが…」
希「わかっとるよー♪」
海未「はい…」
コト
希「はい、どうぞ」
海未「ありがとうございます」
海未「…」ズズ…
希「…ていうかお姉さん、キレイやねぇ」
海未「ぶっ!」 希「わっ! あぁ…急にごめんな」フキフキ
海未「ごほっごほっ…い、いえこちらこそ、すみません…」
希「もしかして、モデルさんか何かだったりするん?」
海未「そ、そんなモデルだなんて…私なんかでは…///」
希「えーそうー? あんまそういうのわからんけど、お姉さんならいい線行ってそうやと思うけどなぁ」
海未「…ぁ…その…///」
希「どしたん?」
海未「じ、実は…お恥ずかしい話ではあるんですが、知人から声をかけられてはいるんです…///」
希「モデルの?」
海未「…///」コク
希「やっぱりー! すごいやん!」
海未「///」カァー 希「へぇ〜、モデルな〜…」ジー
海未「じ、じっと見ないでください…///」
希「ああ、ごめんごめん、本場のモデルさん見るなんて初めてやったから…」
海未「その、本場ではないんです…」
希「へ?」
海未「…いえ…断ろうかと、思ってまして…」
希「あ、そーなん?」
海未「はい…」
希「そっかぁ…それは残念やなぁ」
海未「うぅ…///」
コポポ…
希「ま、人それぞれいろいろあるわなー。ウチの淹れたコーヒー飲んで、気分転換しとき♪」
海未「ぁ…」
希「またお代わりしたくなったらいつでも呼んでな♪」
海未「はい…」
カタ
ズズ…
海未「…」
海未「…」アリガトウゴザイマス
……。
海未「そろそろお暇させて頂きますね。ご馳走様でした」
希「あ、今日はありがとうー。大した接客もできないで、ごめんなー」
海未「いえ…そんなことは…」
海未「…コーヒー、とても優しい味がして美味しかったですよ」
海未「それでは」ペコリ
カランコロン
希「…」クス
希「こちらこそ、ありがとう…♪」
■Scene06
カランコロン
カタカタ…
「本日・臨時休業(ごめんなー♡)」
タッタッタッタ…
穂乃果「のっぞっ!」ガコ
穂乃果「…あれ?」
穂乃果「んー…?」チラ
穂乃果「希ちゃーん…?」ジー
穂乃果「いない…」
穂乃果「はっ…まさか遂につぶれ…!」ハラハラ 穂乃果「穂乃果…最近来てなかったからな…」アセアセ
穂乃果「希ちゃん、早まっちゃダメだよ…!」ドキドキ
穂乃果「って、あ」
穂乃果「…」
穂乃果「ごめんなー♡ じゃないよーっ! 心配して損したーっ!!」
穂乃果「もう希ちゃんなんて知らないーっ!!」
タッタッタッタッタ…
スタスタ…
真姫「…ん」ガコ
真姫「あら…開いてないのかしら…」
真姫「…」
真姫「まさか、遂につぶれ…!」ハラハラ 真姫「そんな…確かにコーヒーは美味しくないけど…」アセアセ
真姫「希…早まったらダメなんだから…!」ドキドキ
真姫「って、あ」
真姫「…」
真姫「ふ、ふん! 気がついてなかった訳じゃないんだから!///」
真姫「っていうか、休むなら一言ぐらい言いなさいよね! せ、折角来てあげてるのに…!///」
真姫「別に希の為じゃないんだから…っ!!///」
スタスタ…!
トコトコ…
海未「…」ガコ
海未「ぁ…」
海未「…」
海未「〜」ハラハラ 海未「〜〜」アセアセ
海未「〜〜っ」ドキドキ
海未「…?」チラ
海未「…」ホッ
海未「…」キョロキョロ
海未「…」ペコリ
トコトコ…
カツカツ
絵里「…?」
絵里「臨時休業…」
絵里「…」カタカタ
絵里「…」〜♪
絵里「繋がらないわね…」 絵里「まぁ、私なんかからの電話、取らないか…」
絵里「希…」
絵里「…」
絵里「早く、私のところに戻ってきて…」ギュ
絵里「…」ゴシ…
絵里「…」クル
ドン
絵里「あっ、すみません…」
絵里「ああいえ、こちらこそ不注意でした…」
絵里「では…」
カツカツ
絵里「…?」クル 絵里「あの…この店は臨時休業中みたいですよ」
絵里「ええ、私も今日ここに来て知ったので…」
絵里「はい、おそらく潰れたとか、そういうことではないかと…」
絵里「希、ですか? はい、知ってますよ」
絵里「元気、だと思いますけど…」
絵里「ああ…辛くて自殺を考えてるなんていうのはさすがにないとは思いますよ」クス 絵里「はい…ああ、いえ」
絵里「希が…そんな風に心配してもらえてるのが分かっただけでも、良かったです」
絵里「ふふ…また来てあげてくださいね」
絵里「希も…喜ぶと思いますから」
絵里「それでは」ペコリ
カツカツ…
■Scene07
シュンシュンシュン…
希「…」
カタン
コポポ…
希「…♪」
ズズ…
希「うん、だいぶいけるんやないかなぁ?」
希「店休んでまで勉強に出向いた甲斐あったわー」
希「さすがに休むんは初めてだから不安やったけど…」
希「まぁー、こんな店に来るお客なんてそんなおらんから大丈夫やったやろー」
希「自分で言ってて悲しいわ…」
カランコロン
にこ「あら? いい匂いね…」
希「あ、いらっしゃいませー♪」
にこ「こっちの席でいいかしら?」
希「好きなところでええよー」
コト
希「はい、どうぞー」
にこ「…関西系?」
希「あーウチ? 違うよー。けど、気にせんといてー♪」
にこ「あっそ…」
希「でー、何にするー?」
にこ「…オススメは?」
希「よく聞いてくれたわお嬢ちゃん!」ズイ
にこ「は?」イラ 希「ウチの喫茶店の自慢はコーヒー! 今さっき、正に、コーヒーになったん!」
にこ「今さっき…?」
希「豆の炒り方やドリップの仕方だって勉強してきたんやよ! マズイなんて言わせないんやからね!」
にこ「マズイの?」
希「あぁーでも、せっかくのコーヒーもお嬢ちゃんのような若い子の口にはあわんかもしれへんなー…」
にこ「…」イライラ
希「残念やなぁー、美味しいのになぁー、でも飲めないんじゃアカンわなぁー」
にこ「…っ」ピキピキ
希「ごめんなー、オレンジジュースにしとく?」
にこ「だぁぁれがお嬢ちゃんよぉぉぉーーーーっっ!!!」ガシャーン
フキフキ…
希「…いやぁ、まさかおじょ…やない、お姉さんウチと同い年やなんて…。人は見かけによらんもんやなぁ」
にこ「悪い?」イラ
希「あ、ごめんごめん、これは完全にウチが悪いやんね。本当にごめんなさい」ペコリ
にこ「…ちゃんと謝ってくれるならいいけど」プイ
希「ありがとうな♪」
コポポ…
コト
希「お詫びにウチの特製ブレンド、サービスや♪」
にこ「ふぅん…入ってきた時の匂いはこれね」
希「あぁ、ちょうど練習で淹れてたからなー」
にこ「練習ねぇ…」
ズズ…
にこ「…ん、美味しいわ」
希「ホント? よかったぁ〜」ホッ
にこ「今までそんなにマズかった訳…?」
希「お恥ずかしい話…常連さん? にはエライ不評で…」
にこ「なんでそんなマズイ店の常連になるのかしら…そいつらの気がしれないわね」
希「むっ、それでも好きってみんな言ってくれてたんやよー」ムー
にこ「へぇ…」ズズ
にこ「でも、確かに…」カタ
希「?」
にこ「あ、いや…なんでもないわ」ズズ
希「…」
カチャカチャ
にこ「しかし、雰囲気のいい店ね」キョロキョロ
希「ありがとー♪」
にこ「これだけ内装しっかりして、味もしっかりしてるんだったら…もうちょっと繁盛してても良さそうなもんだけど」
希「それは言わんといてー」
にこ「あー、ごめん」
希「あはは、本当のことだからええんやけどねー。でも一人でやっていくにはこれぐらいで調度ええんよ」
にこ「そっか」
希「うん」
にこ「あ、お代わりお願い」
希「はーい♪」
コポポ…
希「そーいうお姉さんは、なんでこの店にー?」
にこ「にこでいいわ」
希「にこ?」
にこ「名前よ名前よ。お姉さんなんて呼び方、固っ苦しくて嫌よ」
希「そう? じゃあ…にこっち! あはは、可愛い名前やね♪」
にこ「バカにしてる…?」
希「そーんなことないよ♪」
にこ「アンタは?」
希「ウチは希♪」
にこ「…希ね」
希「えー、折角愛称で呼んでるんだから、にこっちものぞみん♪とか言ってみてよー」
にこ「ゼッタイにイヤ」
コト
希「どうぞ♪」
にこ「ありがとう」
ズズ…
にこ「…美味しい」
にこ「…ここのことは、えっと、知り合いから聞いてね」
希「知り合い?」
にこ「何でも…”なんでもお話を聞いてくれる面白いお姉さんがやってる喫茶店”ってさ」
希「へぇ…」
にこ「まぁそんな話聞いたから…興味もあったし、ちょっと寄ってみたってわけよ」
希「なーるほどな♪」 希「で、何かあったんー?」
にこ「はぁ…?」
希「何か話したいことがあったから、ここに来てくれたんやろー?」
にこ「…」
希「…まぁ、別に無理に話せとは言わんけどな」
希「話したくなったら話してくれて、ええんやよ」
希「ウチのコーヒーはいくらでもお代わりしてもええからな♪」
にこ「うん…」
カチャカチャ
にこ「…」ズズ
にこ「…」カタ
にこ「…」
コポポ…
コト
希「はい♪」
にこ「希はさ…」
希「うん?」
にこ「…もし本命じゃない後輩に告白されたら、どうする?」
希「えー、にこっち後輩に告白されたん? やるー♪」
にこ「例えばの話よ、例えば」
希「あー、例えばかぁ♪」クス
にこ「同い年なんでしょ? 同世代としての貴重な意見を聞かせてよ」
希「うーん、そうやなぁ…」
にこ「…」
希「ウチやったら、断るかなぁ」
にこ「…断るの?」
希「だって、本命やないんやろ? しょうがないやん?」
にこ「それは、そうなんだけど…。でも、相手だって本気なのよ?」
希「そうやろ? 本気やろ? だったら、いい加減な気持ちで返事したらアカンのとちゃう?」
にこ「それは…」
希「そんな中途半端な気持ちで付き合い続けて、ヘンに気持ち燻らせ続けて、お互いの心がすれ違ったら…それこそ悲劇になるんやない?」
にこ「…」
希「まぁあくまでウチの意見やけどな。にこっちとは違った?」
にこ「…そうね」
にこ「…正直、私もそう思ってた」
希「あ、やっぱり? さすが同世代。考え方が近いんかなー?」
にこ「そんなに特別好きでもないのに、好意を寄せられて、告白されて…ヘンに浮き足立って」
にこ「最初は断ろうと思ってたんだけど、勢いに負けて、返事をしちゃって…」
にこ「それでも、こんなにも想ってくれているならその子を好きになれるかもしれない」
にこ「そう思ってたんだけど…」
希「怖なった?」
にこ「…うん」
にこ「結婚、なんていう明確な答えを突き付けられたら…急に怖くなって」
希「せやね…結婚なんかしたら逃げ場なくなるやろしなぁ」
にこ「そう、よね…」
にこ「やっぱり私は、あの子から逃げた方がいいのかしら…」
にこ「それがあの子の為にもなるんじゃないかって」
にこ「そう思うのよ…」
希「でも、”穂乃果ちゃん”の想いはそれぐらいで離れるもんとちゃうんやない?」
にこ「希…」
希「穂乃果ちゃんは純粋で、真っ直ぐな想いを持った子やで」
希「きっと、にこっちの想いだって気がついてる筈」
希「その上で、どうしたら振り向いてもらえるのか、必死に、真剣に考えて…走ってるんやと思うよ」
にこ「…」
希「”ウチだったら”、断ろうと思う」
希「でも、”にこっちだったら”」
にこ「私だったら…」
希「まだ会って間もないけど、なんとなく分かるわ」
希「にこっちやったら、断らないって」
にこ「…」
コポポ…
希「だって、こんな真剣に考えてくれるんやもん」
コト
希「コーヒーを飲んだ数は、それだけ考えた証…」
希「もう7杯も飲んでるんよ?」
にこ「ぁ…」
希「こんなにウチのコーヒー気に入ってくれた人は初めてや♪」
にこ「…」クス
ズズ…
にこ「はぁ…っ」
にこ「本当に美味しいわね…」
希「ありがと♪」 にこ「こっちこそ、こんなどうしようもない話聞いてくれてありがと」
希「いーえ。だって、例え話やろ?」ニシシ
にこ「そうね、例え話よ。…穂乃果とのね」
希「ふふ…♪」
……。
にこ「そろそろ帰るわ。コーヒーご馳走様」ガタ
希「うん、ありがとー♪」
にこ「…まぁ、なんとなくこの店の需要がわかった気がするわ」
希「そう?」
にこ「私も常連になろうかしらね」
希「えー、そんなこと言ってくれるなんて嬉しいやんー♪」
にこ「ふふ」
にこ「でも、穂乃果と結婚したらもう来ないわよ」
希「…うん」
にこ「まだしばらくはかかりそうだけど、それまでは…」
希「ええよ、頑張ってにこっち♪」
にこ「…それじゃね」
希「待ってるよー♪」フリフリ
カロンコロン
希「…」
希「ウチなら断る…かぁ」
■Scene08
カランコロン
真姫「…」
希「あ、いらっしゃい真姫ちゃんー♪」
真姫「…」ホッ
希「うん? 人の顔見るなりホッとした顔してどないしたん?」
真姫「〜〜///」
真姫「なんでもないわよバカ!///」
希「えぇ…なんで怒られなあかんの…?」
コト
希「今日はどないするー?」
真姫「いつものを頂くわ」
希「あー…真姫ちゃんアカン」
真姫「どうしたのよ?」
希「いつものはもうないんよ…」
真姫「えっ…」 希「ゴメンな…」
真姫「えっと、その…わ、私がマズいって言ってたから…?」オロオロ
希「うん…」
真姫「あ、そ、べ、別に…そんなイヤって訳じゃなかったし、なにもそこまでしなくたって…」アセアセ
希「…ふっふっふっふ」
真姫「え…?」
希「いつもの美味しくないコーヒーはないけど、生まれ変わったのぞみんオリジナルブレンド(今決めた)ならあるんよー!!」バーン
真姫「は?」
希「だからぁー、真姫ちゃんらに散々マズイマズイ言われてたから改良したんやってー!」
真姫「はぁ」
希「だからウチの成果、飲んで飲んでー♪」
真姫「…心配して損した」ハァ
コト
希「どうぞ♪」
真姫「あら、ホントにいい香りね…」
希「そうやろー? 味もちゃーんと自信あるんよ♪」
真姫「ふぅん…」
ズズ…
真姫「ぁ…」
希「どうやー?」ワクワク
真姫「…美味しいわ」
希「ホント? あー良かったぁ〜…。真姫ちゃんにそう言ってもらえるとありがたいわ♪」
真姫「ん、でも…」ズズ
希「…でも?」
真姫「…いえ、なんでもないわ」 希「そこまで言っておいて言わないん…? 思ったことは全部伝えてくれてええんよ?」
真姫「えっと…」
真姫「その、なんというか…」
真姫「物足りない…って感じがして…」
希「物足りない…?」
真姫「か、勘違いしないで? 別に…マズイ訳じゃないのよ?」
希「マズくないのに、物足りないん…?」
真姫「…自分でも、言っててよくわからないわ」
希「…」
真姫「なんか、ごめんなさい…」
希「あ、いやいや、別に真姫ちゃんが悪いわけちゃうし! 別に気にせんでもー…」
カランコロン
海未「こんにちわ」ペコリ
希「…ぁ、いらっしゃいませー♪」
希「真姫ちゃん、ちょっとの間ごめんな…っ」
真姫「いいわよ、私に構わないで接客してあげて」
海未「あ…」
コト
希「お姉さん、久しぶりやね。また来てくれたんや」
海未「は、はい…覚えててくれたんですね」
希「あはは、お客さん少ない店やからねー」
海未「ぁ、でも…」チラ
希「んー? あー、今日は珍しく先客おるけどな」
海未「はぁ…」ソワソワ 希「ちょっと怖いお姉さんやけど、別に取って食われる訳じゃないから安心しー♪」
真姫「ちょっと、聞こえてるわよ希!」
希「おーこわ! ごめんなー真姫ちゃん」ペロ
海未「…」クス
希「ブレンドで良かった?」
海未「はい、頂きます…」
希「ちょっと待っててなー♪」
カチャカチャ
海未「…」チラ
真姫「…?」チラ
海未「…///」サッ
真姫「…っ」サッ
海未「…?」チラ
真姫「…」チラ
海未「///」ペコリ
真姫「///」ペコリ
コト
希「…なに二人でお見合いみたいことしてるんー?」
海未「い、いえ…」アセアセ
希「真姫ちゃんのこと、気になるー?」クスクス
海未「あ、その、とてもキレイな方だなと思いまして…」
希「あー、確かになー、真姫ちゃんってキレイやよねぇ」
海未「なにかそういう仕事をされているんでしょうか…?」
希「さぁ、あんまりそのへんは詳しくないから分からんけどなぁ」
海未「あ、そ、そうですよね…すいません」
希「別に気にせんでええよ−」
希「さ、それじゃウチのぞみんオリジナルブレンド…海未ちゃんも味わってみて?」
海未「は、はい…。のぞみんブレンド…?」
ズズ…
海未「…ぁ」
希「…」ドキドキ
海未「あの…」
希「…気がついた?」
海未「あ、はい…味が、違います」
希「…えっと、率直に聞いてええ? 美味しい?」
海未「はい、美味しいと思います…」ズズ
希「そっかぁ…」ホッ
海未「…?」 希「他には、なんかある…?」ドキドキ
海未「あ…いえ、特には…」
希「ホントに…?」
海未「え、えっと…何か、あるのでしょうか…?」
希「あ、ああいやいや、別にそんな何があるとか言うんちゃうんよ。うんうん」
海未「はぁ…」
希「そ、それじゃゆっくりしていきー、なんかあったら呼んでなー♪」
海未「はい…?」
カチャカチャ
真姫「希、お代わり頂けるかしら?」
希「あー、はいはい待っててなー」
コポポ…
コト
希「はい、どうぞ♪」
真姫「…あの子、キレイね」
希「あはは、二人しておんなじこと言っとるで?」クスクス
希「なんかあのお姉さんはモデルにならないかって、知り合いから声かけられてるんやって」
真姫「なるほどね…」
希「本人は断るつもりらしいけどな」
真姫「なんで? 勿体無いじゃない」
希「人それぞれ、色々あるってことやん?」
真姫「…そうね」
ガタ
希「あれ、真姫ちゃんもう帰るん?」
真姫「ええ、今日はもともとそんなにいるつもりはなかったから…」
希「そっかぁ」
真姫「の、希の顔も見れて、安心したし…///」ボソ
希「へ?」
真姫「な、なんでもないわよ…!///」
希「な、なんかよーわからんけど…ありがとな?」
真姫「その、さっきはヘンなこと言ってごめんなさい」
希「あ、ううん、別に平気やで♪」
真姫「だったらいいけど…決して、希のコーヒーを悪く言うつもりはないのよ?」
希「うん…わかっとるよ」
希「真姫ちゃんの優しい心は、ちゃーんと感じとる」
真姫「…///」
真姫「…」チラ
海未「…っ///」ペコリ
真姫「…それじゃあね」
希「またいつでもおいでな♪」
カランコロン
希「…真姫ちゃんは本当、優しいなぁ」
海未「あの…?」
希「あ、ああ…どーしたんお姉さん?」
海未「そろそろ帰ろうかと思いまして…」
希「ありゃ、二人共はやいなぁ…もっとゆっくりしていけばいいのに」
海未「私も、今日はそんなに長居するつもりはなくて…」
希「そっかぁ、残念やなぁ」 海未「えっと、希さん…でいいんですよね?」
希「あ、うん、希で大丈夫やよ♪」
海未「挨拶が遅くなりましたが、私は海未と言います」ペコリ
希「あはは、そんなお辞儀までして丁寧やなぁ…えっと、海未ちゃんでええかな?」
海未「はい。今日は希さんの顔が見れて安心しましたので…」
希「二人ともさっきからおんなじ様なことばかり言うなー」クスクス
海未「…///」
希「ありがとな、海未ちゃん♪」
海未「はい…」
海未「あの…なにか、あったのですか…?」
希「ぇ…?」
海未「その…さっき、希さんが聞いてきた理由が分かったというか…」
希「理由…?」
海未「なんというかその…最初に来たときと"表情"が、違う気がして…」
海未「コーヒーの…表情といいますか…変な話かもしれませんが…」
希「表情…」
海未「あ、いえ、決して悪いわけではないのですが――…!」アセアセ
希「…」
カランコロン…
……。
■Scene09
サァー…
カランコロン
希「あ、いらっしゃいませー♪」
コト
希「久しぶりやねぇー、元気?」
希「雨の日に来るのがお約束になってるんちゃうー? どーせサボってきてるんやろー?」
希「図星かぁ…まぁウチはええけど♪」
希「コーヒーでええ?」
希「うん、待っててな♪」
サァー…
カチャカチャ
希「最近キミがこない間に、ちょっとコーヒーの味改良したんよー」
希「飲んだらびっくりするでー?」
希「えー? だってみんなマズい言うんやもん。ウチかてショックなんよー?」
希「…ありがと♪ そう言ってくれるのはキミだけやで」
コポポ…
希「いい匂いやろー? お腹空いてきた?」
希「うーん、ちょっと今すぐに出せるのが…あ、ウチのこの食べかけのサンドイッチやったらあるけど」
希「汚いって、ひどいなぁ…。ウチ、女の子やでー?」
希「それに食べかけって、別にかじってるわけちゃうから大丈夫やよ♪」
コト
希「はい、どうぞ♪」
希「ふふ…いい顔しとる。努力した甲斐あるやん?」
希「…」
希「美味しい?」
希「そか♪」
サァー…
希「…なぁ、なんでキミはこの店に来てくれんの?」
希「んー…」
希「もしかして、ウチに会うため?」
希「わ、汚いなぁ…急に吹き出さんといてよ…」フキフキ
サァー…
希「でもそれって、図星ってことなん?」
希「そっかぁ…」
希「そう言ってもらえるのはありがたいけどな♪」
希「ふふ…」
サァー…
希「なぁ、何度も聞いてごめんな?」
希「この店の魅力って、どこやと思う…?」
希「ウチが作ったコーヒーなんかなぁ? それとも、ウチ自身なんかなぁ…?」
希「…」
希「そか…」
希「キミは優しいな…♪」
サァー…
希「ウチ、ちょっと自身なくなってきてん」
希「元々、ウチ自身が弱い子ってのもあると思うけど…」
希「こうやってお店やることが、怖くなってきてん…」
希「一人だからかなぁ…」
サァー…
希「…」
希「…」クス
希「分かっとるよ。キミを始め、色んな人に助けてもらってることは」
希「それじゃなきゃ、えりちの反対を振り切ってまでできないもん…」
希「あっ…なんでもない///」
サァー…
希「ウチに足りないものって、なんなんやろ…」
希「なぁ、キミに分かる?」
希「…」
希「あはは、困らしてごめんな…分かるわけないよな」
希「そんなこと、他人に分かるはずがないんよ…」
サァー…
希「って、ごめんなこんな感傷的な話しちゃって」
希「折角休憩する為に来てるんやもん、もっと楽しい話しないとアカンわ」
希「今日もまだまだ頑張らなー!」
希「ふふ…」
希「…うん、ありがとな♪」
……。
希「また来てな♪」
希「でも、あんまりサボるとお仕事クビになっちゃうから、程々に♪」
希「ふふ、行ってらっしゃい♪」
カランコロン
希「…」
サァー…
■Scene10
カランコロン
希「いらっしゃいませー♪」
ことり「のぞみちゃ〜ん☆」フリフリ
希「ぁ…」
コト
希「ことりちゃん、いらっしゃい」
ことり「あーダメだよぉ、希ちゃん〜」
希「へ…な、なにが…?」
ことり「スマイルスマイル〜☆ 折角の可愛い衣装が台無しだよぉ〜?」
希「あ…そんな仏頂面になってたウチ…?」
ことり「なってるよ〜、まるでことりが嫌なお客さんみたいだよ〜?」
希「あ、あはは…」 ことり「…なんて、別に意地悪しに来た訳じゃ無いんだけどね〜?」クスクス
希「…えりちに言われてきたんやろ?」
ことり「うーん、半分正解かなぁ?」
希「半分…?」
ことり「私も希ちゃんのコーヒー、飲みたいもーん♪」
希「ぁ…」
ことり「ことりの為にぃ、淹れてほしいなぁー?」
希「…ええよ」クス
コポポ…
ことり「あ、良いにお〜い☆」
希「ことりちゃんはコーヒーはよく飲むん?」
ことり「うーん、あんまりかなぁ。いつもは紅茶の方が多いかも」
希「あれ、じゃあ紅茶にするー? できるでー」
ことり「あ、ううん大丈夫、コーヒーが飲みたいー♪」
希「そか」
コト
希「どうぞ♪」
ことり「…わぁ♪ これが希ちゃんのコーヒーかぁ…」
希「うん…?」
ズズ…
ことり「…」
希「どーう?」
ことり「…美味しい」
希「良かった♪」
ことり「…あれぇ?」
希「なにー…?」
ことり「美味しくないって聞いてたんだけどなぁ…?」
希「えりち…?」
ことり「あ、あはは、な、ナンデモナイノヨナンデモー☆」 希「ことりちゃん、ことりちゃんには悪いけど…ウチ、この店辞める気ないからな」
ことり「…」
希「どんな風にえりちに言われて来たのか知らんけど、そう簡単にウチの想いは変わらへん」
希「ウチだけの大切な想いがある…」
希「それに、ウチかていつまでもえりちに甘えてる訳にはいかないんや。だから…」
ことり「――絵里ちゃんは寂しがってるよ?」
希「…」
ことり「…」
希「…そんなこと」
希「分かってるけど…」
ことり「…」
シュル…
ことり「ここ、ほつれてる」
希「ぁ…」
ことり「ここも、ここも…」
ことり「随分あらっぽい使われ方してるんだぁ…」
希「ご、ごめん…折角ことりちゃんに作って貰ったのに…」
ことり「ううん。ふふ、それだけ沢山使って貰えた証拠だもん、ことりは嬉しいよ…♪」
希「…」 ことり「ふふ…」ジリ
希「…?///」
ことり「希ちゃん…」
ことり「――脱いで?」
希「は、はぁ!?///」
ことり「ほぉら、脱ご…?」
希「ちょ…急に何言っとるん…!?///」
ことり「いいからぁー…♪」
希「こ、こんな店の中で脱げるわけないやろ!?///」
ことり「えー、なんでー? どうせお客なんてこないでしょー…?」
希「だ、だからって…///」
ことり「ことり、折角いいもの持ってきたのになぁ…♡」ジリ
希「いいものって…ことりちゃん、気でも狂ってしまったんとちゃう…?///」
ことり「ふふふ…♡」
ファサ
ことり「じゃーん、新しい制服でーす☆」
希「…へ?」
ことり「そろそろ痛んでる頃だなーと思って、勝手に作ってきましたぁ♪」
希「衣装…」ヘタ
ことり「もーう、希ちゃんったら何考えてたのぉ〜?」クスクス
希「〜〜///」
ことり「おっきなお胸と一緒で、えっちなんだぁー♡」
希「む、胸は関係ないやろ!!///」
ことり「もうー、このおっきなお胸を武器にすれば、いっぱいお客さんだって増えそうなのにぃ〜」
希「そんなことばかり言うんやったら帰ってもらうでー…!///」
ことり「ああ、うそうそぉ、ごめん希ちゃん〜!」
希「全く…!///」
パサ…
希(…それにしても、まさか新しい制服作ってくれるなんて)
希(今までの制服も可愛くて好きだったから、ちょっと寂しい…)
希(…でも、さすがことりちゃん。新しい制服も可愛いなぁ)
希(そりゃお仕事にしてるだけあるよね…)
ゴソゴソ…
希(…)
希(なんか、身体のラインがやたらくっきりと…///)
希(それに、やっぱり胸…///)ピト
希(ことりちゃんってばもう…///)
カシャア
希「ど、どうや…?///」
ことり「わぁ…! やっぱり希ちゃん似合う〜☆」
希「///」
ことり「希ちゃんってスタイルいいから、身体のラインが出る衣装が映えるんだよねぇ〜…♪」
希「ことりちゃん…胸のとこ露骨に強調してるの、ぜっっっっったいわざとやろ?」ジト
ことり「え〜そんなことないよぉ〜☆」クスクス
希「やっぱり確信犯や…///」
ことり「ふふ…♪」
サワ…
ことり「これ来て、もっとお仕事頑張ってね…♪」
希「ことりちゃん…」
ことり「…本当は希ちゃんが察してるように、絵里ちゃんに頼まれて説得するようにお願いされて来たんだけどね」
希「やっぱり…」
ことり「でもね、私は絵里ちゃんのお仕事仲間であっても、味方ではないの」
ことり「はいはい言うこと聞いてそれをやってあげると思ったら大間違い。私はそんなに、優しい女じゃない」
希「…」 ことり「とは言っても、絵里ちゃんとは若い頃から仲良しだし、できれば絵里ちゃんの意思も尊重してあげたい」
希「うん…」
ことり「だから…希ちゃんがどんなお仕事をしているか、それを自分の目で確認してから決めようと思ったの」
希「…」
ことり「私が作ってあげた制服…」ファサ
ことり「…すごい大事に使ってくれていたのが、痛みを見れば分かるから」
ことり「ありがとう…♪」
希「そんな…///」
カチャ
ことり「このコーヒーもとても美味しい。この喫茶店の雰囲気に恥じない位には、ね」ズズ…
希「…」
ことり「きっと…希ちゃんの気持ちが沢山こもってるんだろうなって思うよ」
ことり「――まだほんの少し、足りてないけど」
希「…っ」
ことり「でも、ことりの気持ちは充分に満たされた。だからその制服をあげるよ♪」
希「…」クル
ことり「うん、可愛い♪」 希「…ことりちゃん」
ことり「なぁに?」
希「…ウチに足りないものって、なんなん?」
ことり「…」
ことり「…その答えは自分で見つけよ?」
ことり「じゃなきゃ、また元通りだから――」
希「…」
ガタ
ことり「それじゃ、そろそろ帰ろっかなぁ。あーあ、絵里ちゃんに怒られちゃう〜」
希「ぁ…ご、ごめんな、ことりちゃん…」
ことり「ううん、これは希ちゃんのせいじゃないから〜。それに私は私で、可愛い希ちゃん見れたから満足だし〜☆」
希「…///」
ことり「はぁ〜私も恋人欲しいなぁ――…」
カランコロン
穂乃果「のっぞみちゃーん!! 今日はいるーっ!!?」
ことり「――っ!!?///」ドッキーン
希「あ、ほ、穂乃果ちゃんやん…いらっしゃいー♪」
穂乃果「もーっ、こないだは何でいなかったのー!? 臨時休業なんてー!」プンプン
希「ご、ごめんな、ちょっと色々あって…」
穂乃果「そういうのは事前に言っておいてよねー…!って、あれー!? 制服新しくなってるー!!」キラキラ
希「う、うん、急遽新調することになって…」チラ
ことり「――っっっ///」フンフン!
希「あー…えっと、そこのことりちゃんって言う子が作ってくれたんよ」
穂乃果「え!? もしかしてこの人が喫茶店の制服作ってくれた人なの!?」
ことり「は、はいぃ〜〜そうですぅ〜〜…♡」
希「どんな顔しとんねん…」 穂乃果「すごーい…! えっと、ことりちゃんさん!」
ことり「はいっ! あ…えっと、ことりちゃんで大丈夫だよっ!///」
穂乃果「じゃあことりちゃん! 本当に可愛いですよ! すっごく希ちゃんに似合ってます!」
ことり「う、うんうん、穂乃果ちゃんさん? にもきっと似合うよぉ〜…♡」
穂乃果「あはは、穂乃果も穂乃果でいいよ〜♪」
ことり「あぁ…穂乃果ちゃん…♡」
希「キモ…」 穂乃果「あ、そうだ、っていうか時間ないんだった!」
希「あはは、また時間ギリギリできたん?」
穂乃果「もぉー、こないだいなかったから心配したんだからねー!? だからちょっとでも顔見れないかと思って、合間を見計らって来たんだけど…」
希「…ありがと♪」
穂乃果「今度こそまたゆっくりくるからね! 希ちゃん、ことりちゃんも、またね〜!!」
ことり「またね〜〜っ!!♡」
カランコロン
希「…ことりちゃん」ジト
ことり「希ちゃん! ことりを雇ってぇ〜〜!!」ガシ
希「はぁ!?」
ことり「もしくは常連になるぅ〜〜!!」
希「なにバカなこと言っとるん…」
ことり「だってだって! なにあの子!? 可愛いぃぃん〜〜〜!!☆」
希「…恋人おるで、穂乃果ちゃん」
……。
■Scene11
カランコロン
「いらっしゃいませー♪」
希「…」
「んー?」
希「…」フルフル
「あらあら、可愛いお客さんやねぇ♪」
希「…ぅぅ」
「お嬢ちゃん、どこから来たんー?」
希「…」
「いくつかなぁー?」
希「〜」
「お父さんとお母さんはー?」
希「〜〜」 「うーん、だんまりかぁ〜。困ったなぁー」
希「〜〜」ウルウル
「あー、泣くんやない〜よしよしー♪」ナデナデ
希「…」グシュグシュ
「とりあえず、ジュースでも飲もっか?」
希「…」コク
コト
「はい、どうぞー。ウチの店自慢の特製ミックスジュースやでー♪」
希「…」チラ
「飲んでええよー? 勿論、タダ! おねーさんのおごりやん?」
希「…」
ゴク…
「どーう?」
希「おいしい…」
「そら良かったわぁ♪」
希「…」ゴクゴク
「おお、ぐいぐい行きよるなぁ」
希「…おかわり」
「あらあら、そんなに気に入ったー? ええよー♪」
カランコロン
絵里「ただいまー」
「おかえりー♪」
絵里「…あいかわらずお客さんいないね」
「あらー絵里ちゃんこそ相変わらず手厳しいなぁー。でも残念、今日は一人いるんやでー?」
絵里「え…?」チラ
希「…っ」ビク 絵里「…だれ、その子?」
「誰って、ウチの店のお客さんやん? な♪」パチ
希「…っ」ドキ
絵里「おきゃくさんって、私とあんまりねんれい変わらない気がするんだけど」ジロ
希「…」フルフル
「ちょっとー、あんまりお客さんのこと睨むのやめたってくれるー?」
絵里「お母さん、そのエセ関西弁やめてってなんどもいってるでしょ?」
「なんでー? 別にええやん可愛ええし。 なー?」
希「…?」
絵里「…」イライラ
希「…」ドキドキ
「絵里ちゃんはいっつもイライラやんなぁ」
絵里「だれのせいよ…」
「あんまりストレス溜めすぎたらアカンでー? いつもの飲むー?」
絵里「…のむ」
「…ふふ、素直な絵里ちゃんは可愛ええよー?」クス
絵里「っ」イラ
「おーこわ♪ それじゃあコーヒー出来上がるまで、その子の面倒みたってなー」スタスタ
絵里「え…面倒って…?」
希「…」アセアセ
絵里「やっぱりおきゃくじゃないの…?」チラ
希「〜〜」アワアワ
絵里「…」ジー
希「…」ソワソワ
絵里「あなた、何年生?」
希「…あぅあぅ」
絵里「どこの小学校?」
希「えぅ…」
絵里「どこに住んでるの?」
希「はぅ…」
バン!
絵里「もう、答えなさいよ! あぅあぅだとか、はぅ…だとかじゃ分からないわ!」
希「〜〜っ!!」ガタ
絵里「ぁ…」
「おー?」
希「〜〜」ダキ
「よーしよし、大丈夫やでー♪ 絵里ちゃーん、あんまり怒鳴ったらアカンよー?」
希「〜〜」フルフル
絵里「…」ムー 「あんなにぷりぷり怒っとるけど、絵里ちゃんホンマはいい子やからな? 怖がらんで大丈夫やよ?」
希「…?」チラ
「うんうん、心配せんでもええ。ゆっくり思ってることを伝えればええんよ?」
希「〜〜」ギュ
「あーそれと、一応今コーヒーもっとるからあんまり抱きつかんといてなー、危ないわぁ」アハハ
スト
絵里「…」
希「…」ドキドキ
絵里「…さっきはどなってごめんなさい」
希「あぅ…!」フルフル
絵里「えっと…その…」
希「…」
絵里「とりあえず…あなたの名前を教えてくれないかしら?」
絵里「のぞみ――…」
絵里「希――…」
絵里「希…!」
ガタ
絵里「ちょっと希、こんなところで寝てないでよ…!」ユサユサ
希「ぅ…」
希「えり…ち…?」ムク
希「あれ…? ここは…店…?」キョロキョロ
絵里「店? じゃないわよ…椅子に座ったまま寝るなんて何考えてるの…?」
希「あー…」ポケー
絵里「希? 本当に起きてるの? 希ー?」
希「えりち、可愛かったなぁ〜…」ボソ
絵里「はぁ…?」
コト
絵里「はい、これで目覚ましなさい」
希「ありがとー」
絵里「全く、なんで客の私がコーヒー淹れなきゃならないのよ…」
希「あはは、えりちのコーヒーなんて久しぶりだね」
ズズ…
希「…美味しい」
絵里「そう。それは良かったわ」
希「…」
絵里「希…?」
希「そりゃ、美味しいよね…娘だもん」
絵里「別に、私は何も継いだつもりはないわよ」
希「うん…」
ズズ…
希「でもやっぱり、えりちには勝てない気がする」
絵里「何言ってるのよ」
希「…」
絵里「勝つも負けるもないでしょ。希が引き継ぎたいって言ったんだから、この店を任せてるんだから」
希「そう、だね」
絵里「だったら、自分のやりたいようにやりなさい」
希「…それでいいの?」
絵里「良くはないわよ」
絵里「私は貴方に、今すぐにでも辞めて戻ってきて欲しいと思ってる」
希「そっか…」
ズズ…
希「ウチ…あ、私ね、少し自信無くしてるんだ」
絵里「そう」
希「私がこの店でやりかったことって、なんなのかなぁ…って」
希「…最近、凄く思うんだ」
絵里「…」
希「えりちのお母さんがしたかったこと、私、できてるのかなぁ…」
……。
希「…今日はごめんね、全然接客できないで」
絵里「いいえ。私も突然押しかけてきたようなもんだし、大丈夫よ」
希「…また、待ってるよ」
絵里「本当に?」
希「…」
絵里「…それじゃあね」
カランコロン
希「えりち…」
希「ごめんな…」
■Scene12
シュンシュン…
希「…」
シュンシュンシュン…
希「…」
ピー!!
カランコロン!!
穂乃果「希ちゃぁーーん!! 穂乃果を雇ってぇーーっ!!」バン
ピー…
希「…はい?」
コポポ…
コト
穂乃果「…ひっく…ひっく…」
希「…ほらほら穂乃果ちゃん、いつまでも泣いとらんでー」
穂乃果「うぅ…ひっく…」
希「ウチが淹れたコーヒーでも飲み?」
穂乃果「ひっく…苦いからいらないぃ…」グシュ
希「あはは…穂乃果ちゃんは素直やなぁ」
穂乃果「うぅ〜〜…っ!!」メソメソ
希「あーもう、泣くんやないってー」ナデナデ
穂乃果「〜〜っ…」
希「…落ち着いたー?」ギュ
穂乃果「うん…」
希「そか」
穂乃果「希ちゃんに抱きしめられてると落ち着く…」
希「…///」
穂乃果「お母さんみたい」
ワシワシスペシャルMAXーーー!!!
キャーーーーーー!!!
希「まったく、全然元気やんな?」
穂乃果「えぅ〜〜」ピヨピヨ
希「…それで、本当にどーしたん? 雇ってーって、何があったんや?」
穂乃果「…」
穂乃果「にこちゃんの…」
希「にこちゃん?」
穂乃果「にこちゃんのバカぁぁぁぁ――――っ!!!」
希「わぁー! 泣かない泣かない! よしよーし!!」ナデナデナデ
穂乃果「うわぁぁぁぁぁ―――――ん!!!」ボロボロ
……。
希「まぁ、大体わかったわ」
穂乃果「〜〜」グシュグシュ
希「要は穂乃果ちゃんが恋人相手に婚約を強引に迫ったんやけど、相手はその強すぎる圧に引いて突っぱねたと…そういうことやろ?」
穂乃果「強引じゃないもん! 圧が強くないもん! 穂乃果は結婚したいって言っただけだもん!!」バン!
希「それがもう圧が強いんやけどなぁ…」
穂乃果「そんなぁ〜…! 穂乃果のこと好きって言ってくれたのにぃ〜!! なんでぇ〜〜!!」ボロボロ
希「…っていうか、にこっち断ったんやなぁ」ボソ
穂乃果「え…?」チラ
希「あ、ああ、こっちの話やでー♪」
穂乃果「ぅぅ〜〜」メソメソ 希「…で、なんでウチの店で働くなんて話になるん?」
穂乃果「家出してきたんだよっ!!」
希「家出って…そもそも穂乃果ちゃん同棲してたんやね」
穂乃果「勢いで転がりこむみたいな形だったんだけど…」
希「え、っていうか待って、まさか住み込みで働くとかいう気?」
穂乃果「そのまさかだよっっ!!」
希「えぇ…」 穂乃果「えーっと、食器類はここでー…コーヒーの豆はここ…」トコトコ
希「あ、ちょ…」
穂乃果「お掃除類はここで、こっちが希ちゃんの自室に繋がってるのかー」
希「なに勝手に店の構造把握しようとしてるん…」
穂乃果「だって、働くならまずはお店のことを知らなくちゃっ!」
希「…働く気マンマンなんやね」
穂乃果「大丈夫だよ! 穂乃果、高校生の時ファミレスでバイトしてたから! 接客は慣れてるもん! …お皿ブレイカーって店長に呼ばれてたけど」ペロ
希「全然大丈夫ちゃうー!?」 希「…とにかく座って、もうちょっと話聞かせてやー?」
穂乃果「…うん」スト
希「具体的に、にこっ…やない、相手の人になんて言われたん?」
穂乃果「〜〜」ウルウル
希「あー…ごめん。思い出すのも辛いんかな…?」
穂乃果「…」フルフル
穂乃果「えっと…今は結婚の返事はできない。私がもう少し、穂乃果のことを好きになれるまで待ってほしい」
穂乃果「…って」
希「…なるほど、なぁ」
穂乃果「うぅ〜〜…にこちゃん、穂乃果のこと好きじゃなかったんだぁ〜〜…」
希「…」フゥ
希「穂乃果ちゃん」
穂乃果「…?」グシュ
希「穂乃果ちゃんがにこっちのこと信頼してあげな、誰が信頼してあげるん?」
穂乃果「希ちゃん…」
希「もしかしたら最初は、穂乃果ちゃんになんて全く興味がなかったかもしれん」
希「穂乃果ちゃんのことなんて、全然好きじゃなかったかもしれん」
穂乃果「…っ」ウル
希「でもな」
希「穂乃果ちゃんのひたむきで純粋で、真っ直ぐな想いが…そんなにこっちの心を動かしたんやない?」
穂乃果「…」
希「人を好きになるって、そんな簡単なことちゃうんよ?」
希「誰だって、最初は他人と他人」
希「どれだけの想いがあったって、それを受け取るにはそれなりの時間と、準備が必要なんよ」
『誰だって、最初は他人と他人なんよ? 希ちゃん』
『だから、怖がることあらへん…?』
希『〜〜っ』
希「…」
希「穂乃果ちゃんのその勢いは人が真似できるものやないし、すごいものやと思う」
希「合わない人も沢山いると思う。離れてしまう人も沢山いると思う」
希「にこっちは、穂乃果ちゃんの想いを受け取ろうと…頑張ってるんや」
希「別にそれは、イヤイヤとかでもなければ、無理矢理とかそういうんちゃうよ?」
希「穂乃果ちゃんのその勢いが好きになれそうだから…にこっちは頑張ってるんよ」
希「だから…もう少しにこっちの返事、待ってあげてくれへんかなぁ…?」
穂乃果「…」
穂乃果「にこちゃん…」グシュ
希「…♪」ポンポン
穂乃果「…希ちゃん」
希「なんや?」
穂乃果「にこっちって?」
希「へ?」
穂乃果「にこっちってなに? 穂乃果、にこちゃんのこと話してないよね?」
希「え、えー…? それはその…い、言っていいんかなこれ…」
穂乃果「なにそれ? にこちゃんここに来たの?」
希「あ、うん、せやね…」
穂乃果「どうしてにこっちなんて呼んでるの? なんでそんなに仲良くなってるの?」ジリ
希「ど、同世代だったからそれぐらいの距離感でもええかなぁおもて…」タジ…
穂乃果「〜〜っ」
希「〜〜」アセアセ
穂乃果「にこちゃんの浮気者ぉ〜〜〜〜!!! バカぁ〜〜〜〜〜〜!!!!」
穂乃果「やっぱり家出する〜〜!! この店で働く〜〜〜〜〜っ!!!」
希「えぇぇえぇぇぇ〜〜〜〜〜!!?」
アカンアカンー!イエカエリー!!
ヤダー!イエデスルー!!
カランコロン…
■Scene13
タッタッタッタッタ…
希「…」キュッキュッ
ゴシゴシ…
希「…」カチャカチャ
バタバタバタ
カッシャーン!!
希「…」チラ
穂乃果「あ、あはは…」
希「…」ハァ
コト
穂乃果「希ちゃん、ごめんなさい〜〜…」
希「まーったく、危ないから慌てずゆっくりってゆーてるのに、穂乃果ちゃん聞かないんやもん…」
穂乃果「だってぇ〜…」
希「だってやない。言うこと聞けないなら出てってもらうでー?」
穂乃果「あぅ…」シュン
希「…はぁ。そんな意地悪なこと、本当にしたりはせーへんけど…」
穂乃果「わぁ、希ちゃんだーいすきっ!!」ギュー
希「あーはいはい///」ナデナデ
ズズ…
穂乃果「うぅ…苦いぃぃ〜〜…」ベー
希「苦手なんやったらそんな無理に飲まへんでも…」
穂乃果「で、でも、喫茶店で働くからにはコーヒーの味くらい分からないとだよ…!?」
希「そうー?」
穂乃果「そうだよっ!」
希「そ、そっかぁ」
穂乃果「あぅぅ…」ズズ
希「…可愛ええなぁ」
穂乃果「…でも、これが希ちゃんの味、なんだね…」
希「へ?」
穂乃果「穂乃果、今までお店に来てもジュースばっかりだったから…本当の意味で、希ちゃんのお店の味知らなかったなぁ」
希「あー…確かにー…」
穂乃果「…」クス
穂乃果「コーヒーは穂乃果にはちょっぴり苦いけど…」
穂乃果「――すっごく優しい味がする」
希「…///」
穂乃果「でもやっぱり苦いぃ〜〜…」ベー
希「…別に、ミルクと砂糖入れてもええんやで?」クス
穂乃果「あ、そっか、その手があるんだ」ポン
希「気付いてなかったん…?」
希「…」
希「なぁ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「なぁにー?」ザー
希「…なにか、物足りないって感じること――ある?」
穂乃果「えー…どういうことー?」カチャカチャ
希「あ、いや…」
穂乃果「…」ズズ
穂乃果「うーん、あまーい☆」
希「…」クス
希「ま、ええか…♪」
カチャカチャ
希「それにしても穂乃果ちゃん、その制服似合ってるなぁー」
穂乃果「…イヤミ?」ジトー
希「え、そんなことあらへんよー可愛いって♪」
穂乃果「お胸のサイズが全然あわなくって必死に調整したんだからね! 希ちゃんのバカっ!!///」
希「えぇ…///」
穂乃果「もう…本当に希ちゃんのバストのサイズっていくつなのー…?///」ジー
希「ちょ、そ、そんな見んといてよ…///」
穂乃果「穂乃果にちょーっとだけ分けて欲しいよぉ…」サワサワ
希「穂乃果ちゃんやって、別にそんな小さい訳ないやん…?」ニギニギ
穂乃果「ちょっとー! 頭の中でサイズ確認しないでよーっ!!///」
希「いやー、割と穂乃果ちゃんの胸の弾力は程よくて、良いもんやと思うけどなぁ…♪」
穂乃果「うぅ…希ちゃんなんか知らないもん///」カァー
希「あはは、ごめんごめん♪ まぁ、胸のサイズはともかく、バッチリ制服は似合ってるで?」
穂乃果「そう…? そう言ってくれると嬉しいけど…♪」ヒラ 希「ことりちゃんが制服新調してくれたばかりやったから、調度良かったわ」
穂乃果「ことりちゃんって、この間お店に来てた人だよね?」
希「そうそう、ウチの知り合いなんやけど、割と有名なブランドのデザイナーとかやってるんやで?」
穂乃果「ほぇ〜〜…そんなにすごい人なんだぁ…。確かに、この制服も希ちゃんの制服も可愛いし…」
希「ホンマになぁ、ウチの店なんかには勿体ないデザインやで…」
穂乃果「でも、そんな人と知り合いな希ちゃんもすごいよぉ…!」
希「あーそれは…ウチというよりはえりちなんやけど…」
穂乃果「えりち?」
希「…うん、ウチの幼なじみ」
穂乃果「へぇ〜…」
希「…」
穂乃果「…」
穂乃果「…」ピト
希「…? 急にそんな近寄ってきて、どないしたん?」
穂乃果「えっと…なんか、希ちゃん寂しそうな顔してたから…」
希「えっ…そんな顔してた…?」
穂乃果「うん」
希「あちゃ…。アカンなぁー…」
穂乃果「…」ギュ
希「あはは、大丈夫やよ♪」ナデナデ 穂乃果「…そういえば、希ちゃんのプライベートな話ってあんまり聞いたこと無かったなぁ」
希「せやね…あんまり、人に言わないかも」
穂乃果「希ちゃんにとって、えりちって人は…すごく大切な人なんだね」
希「…」
希「…うん」
希「すっごく、大切な存在だよ――」
穂乃果「…」ギュ…
希「…」クス
希「そうやね…穂乃果ちゃんには、いずれ聞いて欲しいかもなぁ」
希「ウチの昔話…」
穂乃果「うん…」
穂乃果「穂乃果、いつでも聴いたげる…」
穂乃果「希ちゃんが話してくれるまで、ずっと待ってる」
希「ふふ…」
穂乃果「だから追い出さないでね…?」ギュ
希「…」ハァ
希「っていうか、本当に帰らなくて大丈夫なん? にこっち心配して気絶するでー?」
穂乃果「あはは、大丈夫だよー。きっとあほのか! って怒ってるくらいだよー」
希「それはええの…?」
カランコロン
花陽「…」
花陽「…」ハァ
花陽「〜〜」
トボトボ…
……。
■Scene14
カチャカチャ
穂乃果「…」
ジャー
穂乃果「…」ポケー
キュッキュッ
穂乃果「…ねぇー」
希「なんやー?」
穂乃果「お客さん来ないねぇー…」
希「だから言ったやろー、あんまお客さんおらんって」
穂乃果「いやそれにしたって…」チラ
ポッポー!ポッポー!
穂乃果「お客さん一人もこないままおやつの時間だよぉ〜…」
希「しっかりおやつは食べる気やんね」
穂乃果「暇だからそんなにお腹空いてな…」グー
穂乃果「あ…///」
希「全く、しょうがないなぁ」クス
穂乃果「えへへ…」ペロ
カランコロン
穂乃果「ぁ、いらっしゃいませーっ!!」ピョン
希「あ、ちょ、そんな勢いよく飛んでったら転――…」
ビターン!!
穂乃果「いたーいっ!!」
希「あちゃあ…言わんこっちゃない…」
海未「あ、あの…」オロオロ
コト
穂乃果「お冷やですっ! どうぞっ!!」
海未「は、はぃ…」アセアセ
穂乃果「これ、メニューです!」パッ
海未「どどど、どうも…」アワアワ
穂乃果「…」ワクワク
海未「…」ドキドキ
穂乃果「…」ウキウキ
海未「…」ソワソワ
穂乃果「…ぅ何にしますかっ!?」グイ
海未「ひぃ!?」ビク 希「ちょっと穂乃果ちゃん、お客さん脅さんといてー」
穂乃果「えぇ!? 脅してなんかいないよぉ!?」
希「あははー、ゴメンなー海未ちゃん? 折角来て貰ったのに」
海未「ああ…いえ…」ホッ
穂乃果「海未ちゃん? 希ちゃんのお友達?」
海未「お、お友達だなんて、そんな…///」アワアワ
希「ウチの店のお客さんはみーんな、大切なお友達やんな♪ せやろ、海未ちゃん?」
海未「…///」
穂乃果「そっかぁ♪ それじゃあ穂乃果もお友達だね? 海未ちゃん!」ギュ
海未「はい!?///」アワアワ
穂乃果「ふふ♪」
海未「///」カァー 希「はいはい、海未ちゃんを困らせないんよ?」グイ
穂乃果「えぇー、希ちゃんが振ったのにぃー…」
希「いや、まぁそうなんやけど…」
海未「///」
希「穂乃果ちゃんは誰とでも仲良うなれるからアレやけど、適度なお客さんとの距離感も大事なんやからね?」
穂乃果「はぁーい」
希「よろしい」
海未「///」
希「…で、何にするー? 海未ちゃん」
海未「///」
希「あれー? 海未ちゃーん?」フリフリ
穂乃果「もしかして、気絶してるー…?」
海未「///」ピヨピヨ
コポポ…
穂乃果「ごめんね海未ちゃん…穂乃果が無神経にちょっかい出したりして…」ションボリ
海未「あ、ああ、いえいえ…。そ、その穂乃果さんが悪いという訳では…///」
穂乃果「だって、穂乃果のことキライなんでしょ…?」
海未「そそそそ、そんなことは…!」ブンブン
穂乃果「じゃあなんでそんな遠いところにいるの?」
↑
間
↓
海未「い、いや、これには海よりも深い事情がありまして…!!」
コト
希「海未だけに?」
穂乃果「希ちゃん、寒い」
希「ひっど!」
海未「〜〜」アセアセ
穂乃果「はぁ…この距離感に穂乃果は自信を無くしそうだよ…」ズーン
海未「あわあわあわ…」
希「まぁまぁ、とりあえずこれ飲んで落ち着きー?」
海未「は、はぃ…」
ズズ…
海未「…」ホッ
希「美味しい?」
海未「はい…」
希「良かった♪」
穂乃果「…」ジー
海未「ぅ…あ、え、えっと…穂乃果さん? …はどうして…?」アセアセ
希「あー…それはまぁ、海よりも深い事情があってな…。海未ちゃんだけに♪」
穂乃果「希ちゃん、寒いよ」ジー
希「…遠くからしっかりツッコんでくれるんやなぁ」クス
海未「…///」
希「まぁ冗談は置いといて…穂乃果ちゃんはちょっとした事情があって、ウチで住み込みで働いてもらうことになったんよ」
海未「はぁ…」チラ
穂乃果「…」ジー
海未「っ///」パッ
希「…穂乃果ちゃんみたいんは苦手?」クス
海未「あ、に、苦手…というわけでは、ないのですが…」チラ
穂乃果「…」ニッコリ
海未「っ///」サッ
希「まぁ、海未ちゃんみたいな子に穂乃果ちゃんのクセはキッツイわなぁ…」
穂乃果「クセってなーにっ!?」バン!
希「穂乃果ちゃん、面白いなぁ♪」クスクス
海未「な、なんかすみません…」ペコリ
希「いやいや、急にあんなん雇ったこっちも悪かったもんな」アンナンッテナニー!?
海未「そ、そんな…」ノゾミチャーン!?
希「穂乃果ちゃんは近付かせんようにするから、ゆっくりしたってなー♪」チョットー!!
海未「はぁ…」チラ
ポン
希「…そういうわけやから、あんまり海未ちゃんにはちょっかい出したらアカンよー?」
穂乃果「むー…そんなに穂乃果のことキライなのー…?」
希「キライ…ってことはないんやろうけど、合わないんやと思うで?」
穂乃果「ぅー…」
希「人それぞれ、色んな空気があるんやで? 無理矢理踏み込んだら相手に失礼な場合だってあるんよ」
穂乃果「…それじゃあ穂乃果、何のためにいるのー…?」
希「なんでやろねぇ…?」クス
カチャカチャ
海未「…」ペラ
穂乃果「…」ジー
希「穂乃果ちゃーん、こっち手伝ってー」
ジャー
海未「…」ズズ…
穂乃果「…」ジー
希「穂乃果ちゃーん、これ片付けるよー」
シュンシュンシュン
海未「…」カタ
穂乃果「…」ジー
希「穂乃果ちゃーん、掃除するよー」
海未「…」
穂乃果「…」ジー
希「穂乃果ちゃん」コツン
穂乃果「いたっ」
希「あんまりジロジロ見てたらアカンよー?」
穂乃果「うんー…」サスサス
希「…そんなに海未ちゃんのこと、気になるん?」
穂乃果「気になるというか…キレイな人だよねぇ」
希「みんな言うなぁ…。まぁ、確かにキレイなんやけど」
穂乃果「顔とかパッと見た部分もそうなんだけど、何より仕草がキレイなんだよね…」
希「へぇ…穂乃果ちゃん、よく見とるなぁ」
穂乃果「…」ジー
海未「…」ハァ
穂乃果「…ねぇ、希ちゃん?」
希「んー?」
穂乃果「海未ちゃん、なんでこの店に来てるんだろ?」
希「それは遠回しにバカにしとるん…?」
穂乃果「あ、い、いやいや、そういうことじゃないんだけど…」アセアセ
希「んー…単純に、落ち着ける店を求めていただけなんやない…?」
穂乃果「――本当に、それだけかなぁ?」
希「…?」
ズズ…
海未「…」カタ
穂乃果「…希ちゃん、穂乃果にお代わり持ってかせて?」
希「さっきダメって言ったばかりやん…」
穂乃果「お願いっ!」
希「んー…」
穂乃果「…っ」ギュ…
希「…」チラ
海未「…」
希「…ま、ええか」
穂乃果「ホント!?」パァ
希「でもこれだけは約束。海未ちゃんが嫌がったらすぐにやめること。ええ?」
穂乃果「分かったよっ!」
海未「あ、あの――…」
穂乃果「はい! お代わりお待たせ致しましたーっ♪」
海未「は、はぃ…」ビク
カランコロン…
……。
■Scene14.5
コポポ…
穂乃果「どうぞ♪」
海未「あ、ありがとうございます…」
穂乃果「よいしょっと…」コト
海未「ぇ…」
穂乃果「一緒に飲みましょう? コーヒー♪」
海未「え…? え…?」チラ
希「…」ゴメンナー
海未「え…え…///」アセアセ
穂乃果「…」カチャカチャ
海未「…///」カチャカチャ
穂乃果「…」ズズ…
海未「…///」ズズ…
穂乃果「…」カタ
海未「…///」カタ
穂乃果「希ちゃんのコーヒーって美味しいですよねぇ…♪」
海未「そう…ですね」
穂乃果「と言っても、穂乃果は砂糖とミルク入れないと飲めないんですけど」ペロ
海未「…苦いのが苦手な方は、それでいいと思います」
穂乃果「ですよね!?」ズイ
海未「あ、う…!」ドキ
穂乃果「ぁ…ごめんなさい…///」
海未「いえ…///」
希「…」ジー
穂乃果「後から圧を感じる…警告かなぁ…」アハハ
海未「…?」 穂乃果「海未さんはどうして、この店に通っているんですか?」
海未「…私も、ここのコーヒーが好きだから、だと思います…」
穂乃果「やっぱりそうなんだぁ…♪」
海未「希さんが淹れてくれるコーヒーは、暖かくて…優しい味がしますから…」
穂乃果「うんうん♪」
海未「…」ズズ…
海未「…」カタ
穂乃果「海未さんって、キレイですよね?」
海未「ぶふっ!」
穂乃果「わっ! あ、ごご、ごめんなさい…」フキフキ
海未「あ、い、いえ…こちらこそすみません…///」フキフキ
穂乃果「…何かそういう仕事やってるんですか?」
海未「あ、その…何かやっていると言うわけではないのですが…。ですが、知人からモデルをやってくれないかと声をかけられていたりは…///」
穂乃果「え、モデル!?」
海未「はい…///」
穂乃果「はぇ〜〜…モデルかぁ…すごいなぁ…」ジー
海未「あ、で、でも、別にまだやってる訳でもないですし、それにその、断ろうと思ってますし…///」 穂乃果「えー、なんでー!? 勿体ないよーっ!」
海未「しかし…私なんかでは…///」
穂乃果「海未さんが私なんかーなんて言ったら、穂乃果なんてどうなるの…」
海未「え、そんな…穂乃果さんだって充分に可愛いと…」
穂乃果「あ、えへへ、そうかなぁ…♪」クル
海未「はい…その制服、以前の希さんのものですよね…? とても似合ってますよ」
穂乃果「ありがとうー♪ …でも胸だけは全然サイズ合わないんだよねぇ」
海未「あ、そ、それは…仕方ないかと…。私も似たようなものですから…///」
穂乃果「だよねぇー…羨ましいよねぇ…」ジー
海未「えぇ…///」ジー
希「へ…? 二人して急に、なんなん…?」アセアセ
穂乃果「あはは…♪」クスクス
海未「ふふ…」
穂乃果「あ、やっと笑った♪」
海未「え…?」
穂乃果「クールな感じの海未さんも好きだけど、笑った顔の方が穂乃果好きだなぁ♪」
海未「///」
穂乃果「ねぇ、なんでモデルのお仕事やらないの?」
海未「ぁ…それは…」
穂乃果「海未さんなら全然いけそうだと思うし、結構人気出そう! 穂乃果だってファンになっちゃいそうだよ♪」
海未「そ…その…」
海未「人に見られるのが…恥ずかしくて…///」 穂乃果「恥ずかしい?」
海未「ひ、人から注目を浴びてしまうと…緊張して言葉が出なくなってしまうんです…」
穂乃果「へぇ…」
海未「ですから、普段も必要以上に目立たないようにしていたり…」
海未「街中でもなるべく、人が少ないところを選んでは落ち着けるところを探していました」
海未「そしていつしか辿り着いたのが…希さんのいるこのお店でした」
穂乃果「…」
海未「ここはとても居心地がいいです…」
海未「希さんの淹れてくれるコーヒーは、全てを受け入れてくれる気がして…」
海未「すごく、落ち着くんです…」
海未「私には、これぐらいの影がある場所がちょうど良い…」
海未「だから、モデルなんていう陽の光を浴びるお仕事なんて…私には…」
穂乃果「そっかぁ…」
海未「…」
穂乃果「――でも」
穂乃果「海未さんは何かに求められたがっている気がする」
海未「私が――ですか…?」
穂乃果「海未さん、穂乃果の目見て?」ジー
海未「め、目を…?///」
穂乃果「…」ジー
海未「…///」ドキドキ
穂乃果「…うん」
穂乃果「やっぱり海未さん、本当は誰かに求めてもらいたがってるんだ」
海未「な、何故、そう思うんですか…?」
穂乃果「だって、穂乃果の視線から逃げなかったもん」
海未「え…?」
穂乃果「本当に人からの想いを拒絶しようとする人の目ってね、見つめられてもすぐに逸らしちゃうんだ」
穂乃果「…でも、海未さんは一切逸らすことなく、穂乃果の目を捉えてくれた」
海未「あぅ…///」
穂乃果「誰にでもできることじゃないんだよ?」
穂乃果「穂乃果、色んな人にストレートに想いをぶつけてきたから分かることなのかもしれないけど…ほとんどの人は、人の想いから逃げようとして視線を逸らすんだ」
海未「…」
穂乃果「だから、一切逃げようとしなかったにこちゃんのことが好きなんだけど――…」
海未「にこちゃん…?」
穂乃果「あ、ううん、それは関係なかったね…///」エヘヘ 穂乃果「だからね、逃げなかった海未さんはきっと――他人を求めているんだと思うんだ」
海未「…そう…なのでしょうか…///」
穂乃果「だって、モデルのお仕事――断ろうかと思ってるってことは、まだ断ってないってことでしょ?」
海未「は、はい…」
穂乃果「本当に嫌だったらその時に断ってるよ。絶対。…穂乃果だったらそうするし」
海未「…」
穂乃果「もしかしたらその知人さんからのお願いを断り切れない、っていうのもあるかもしれないけどさ」
海未「ぁ…それは…」
穂乃果「それだって、誰かに背中を押して貰いたくて…ここまでやってきたりして?」
海未「…///」
穂乃果「あ、図星だったかな…? ごめんなさい。なんか会って間もないのにこんなにズケズケと…」
海未「あ、い、いえ…それは全然、構わないのですが…」
海未「…」
ズズ…
海未「…」ハァ
穂乃果「…美味しいね?」クス
海未「…はい」
海未「…穂乃果さんの言うとおりかもしれません」
海未「私は、モデルのお仕事をどうしようか…迷っていました」
海未「…表向きは恥ずかしくてできないと、自分の心を納得させて逃げていたのですが…」
海未「心の何処かで…もっと深いところで、やってみたいという葛藤があった…」
海未「それはなんとなく、私自身気が付いていました」
海未「でもその想いが本当なのか、ただの気の迷いなのか…それすらも分からなかった」
海未「だからその答えが欲しくて、私は居場所を探していました――」
海未「そして見つけたこのお店…」
海未「希さんの喫茶店なら、何かが見つかるんじゃないかと…思いました」
ズズ…
海未「希さんの淹れてくれるコーヒーは本当に暖かい…」
海未「理由はよく分かりませんが…私を受け入れてくれるような、そんな優しさがあります」
穂乃果「…うん」
海未「…そして穂乃果さんにも、別の何かが…あるのかもしれません」
穂乃果「そ、そうかな…?///」
海未「はい…」
海未「希さん同様、不思議な人ですね…貴方は」
穂乃果「…えへへ♪」
コト
海未「…私は、モデルのお仕事…受けてみようかと思います」
穂乃果「ホント!?」
海未「はい…」
穂乃果「うんうん…! 海未ちゃんだったらきっと成功する…。ううん。絶対成功するよ!」
海未「絶対だなんて、そんな…」クス
穂乃果「そうやって笑っている海未ちゃんだったら大丈夫だよーっ♪」
海未「…ありがとうございます」
海未「あなた達二人が、私を突き動かしてくれました――」
……。
海未「それでは今日のところはこのへんで失礼しますね」
希「海未ちゃんごめんなー、穂乃果ちゃんが色々と失礼なことしてー…」
穂乃果「ちょっと希ちゃん! 失礼なんてしてないよーっ!」
希「ほんとー?」ジト
海未「はい、大丈夫ですよ…」クス
希「ふふ…♪ 海未ちゃん、ええ顔で笑うようになったなぁ」
海未「ぁ…///」
穂乃果「これも穂乃果のおかげだよね! 海未ちゃん♪」
海未「はい…」ニコ 希「あれ? いつの間に海未ちゃんって呼ぶようになってん?」
穂乃果「あ、あれ? そう言えば…ご、ごめんなさい気付かなかった…海未さん…」
海未「全然構いませんよ、むしろそう呼んでもらえた方が私も嬉しいですし…」
穂乃果「じゃ、じゃあ改めて…海未ちゃん! よろしくね♪」
海未「はい…穂乃果さん」クス
穂乃果「えー、穂乃果はさん付けなのー!?」
海未「あ、こ、これは、私の性格的なものなので、その…///」
カランコロン…
穂乃果「…ふーっ、今日のお仕事終わったぁー…」
希「穂乃果ちゃん、お疲れ様♪」
穂乃果「お疲れ様ー…♪」
希「いやぁ、最初はどうなるか思うとったけど…万事丸く収まって良かったわ」
穂乃果「あはは、希ちゃんに何度止められるんじゃ無いかとヒヤヒヤしたよぉ…」
希「…」クス
希「…なんていうか、穂乃果ちゃんはすごいなぁ」
穂乃果「へ?」
希「正直…」
希「ウチやったら――海未ちゃんの背中を押してあげることはできんかったかもしれへん」
穂乃果「…」 希「ウチも後ろで一部始終見とったけど、穂乃果ちゃんようにガツガツ踏み込んでいくその強さは、ウチにはない」
希「きっと、ウチに足りない物ってそういうところなんやろなぁって…なんとなく思ったわ」
希「ウチには、相手を包み込んであげる優しさはあるかもしれんが、突き動かしてあげる強さはない…」
希「あはは、ウチ自身にその強さがないんやから、当たり前のことかもしれへんがなぁ」
希「ウチは本当は、もっと弱い人間やから――…」
穂乃果「希ちゃん!」ギュ
希「っ」
穂乃果「…」ジー
希「な、なんや…?」アセアセ
穂乃果「…」ジー
希「…///」ドキドキ
穂乃果「…ふふ♪」
希「…?///」
穂乃果「希ちゃんには希ちゃんの強さがあるから、大丈夫だよ…♪」ギュ
希「へ…?///」
穂乃果「穂乃果には誰かを突き動かす力があるかもしれないけど、希ちゃんのような包みこむ優しさは持ってないもん」
穂乃果「穂乃果には、希ちゃんの淹れるコーヒーは絶対に真似できないよ」
穂乃果「だから、大丈夫…」ギュー
希「…穂乃果ちゃん///」
穂乃果「明日もお仕事、一緒にがんばろっ♪」パッ
希「…う、うん///」
タタタ…!
希「…///」
希「あんなん…惚れてまうやろ…///」
■Scene15
カランコロン
穂乃果「いらっしゃいませーっ!」
コポポ…
穂乃果「どうぞーっ! ごゆっくりーっ!」
カランコロン
穂乃果「いらっしゃいませーっ♪」
コト
穂乃果「当店自慢ののぞみんブレンド(覚えさせられた)お待ちどうさまーっ!」
カランコロン
穂乃果「ありがとうございましたーっ!」
穂乃果「ふーっ…」
希「穂乃果ちゃん、お疲れ様ー♪」
穂乃果「希ちゃんすごいすごい! 午前中で二人! 記録更新だよ!」
希「…そういうんは傷抉るからやめよなー」アハハ
コト
希「はい、お昼ご飯」
穂乃果「わぁーありがとー♪ いただきまーす!」
希「沢山食べなー♪」
穂乃果「もふもふ…っ」モグモグ
希「あはは、穂乃果ちゃんうさぎさんみたいで可愛ええなぁ♪」
穂乃果「おいひぃ〜!」
希「そか♪」 穂乃果「希ちゃんの作るサンドイッチって結構見た目もすごいし、美味しいしで、もっと人気でても良いと思うんだけどなぁ」
希「そーう?」
穂乃果「そうだよー!」
希「まぁ最近は穂乃果ちゃんが率先して接客してくれてるから、ウチが時間かけて作れる言うのもあると思うけど…」
穂乃果「あー…お客さん希ちゃん目当てだったりしたりするかな? 穂乃果迷惑じゃないかな…?」アハハ
希「別に大丈夫やろー? むしろ穂乃果ちゃん目当てだったりするんちゃうー?」クス
穂乃果「そ、そうかなぁ…?///」
希「この間海未ちゃんのこと散々褒め倒してたけど、なんだかんだ穂乃果ちゃんも大概やと思うでー?」
穂乃果「えぇー…そんなことない、と思うけど…///」
希「まぁ、自分のことは分からないってことやろーなぁ…」
穂乃果「それ言ったら希ちゃんだってー…」
希「ウチ? まさかぁー」アハハ
穂乃果「そんな胸しててよく言うよー…」ハァ
希「む、胸は関係ないやろ///」
カランコロン
穂乃果「ぁ…!」
希「ええで、穂乃果ちゃんは休憩しときー。いらっしゃいませ―♪」
真姫「こんにちわ」
希「あ、真姫ちゃん、いらっしゃーい♪」
コポポ…
希「いつもので良かったよね?」
真姫「ええ、お願いするわ」
穂乃果「…」ジー
真姫「…っ」ビク
真姫「…お客…? あれ、でもその制服…?」
穂乃果「あ! お姉さん、前にここで会いましたよね!」
真姫「そ、そうだったかしら…?」
穂乃果「覚えてますよっ! このお店お客さん全然入らないし、珍しいなーって思ってましたから!」
希「…穂乃果ちゃ〜ん」クスクス
穂乃果「げ」ゾワ
ワシワシスーパースペルシャルMAX――!!
イヤァ―――――!!!!
希「懲りひんなぁ、穂乃果ちゃんは」パンパン
穂乃果「あぅぅ〜〜…」ピヨピヨ
希「んー、っていうか穂乃果ちゃんだんだん弾力よくなってきてない?」ニギニギ
穂乃果「知らないよっ!///」
真姫「…なんなのこの人たち」
コト
希「はい、どうぞ♪」
真姫「ありがとう」
穂乃果「…♪」ニコニコ
真姫「えっと…」チラ
希「この子は穂乃果ちゃん。今、とある事情でウチの店で住み込みで働いて貰ってるんよ」
真姫「へぇ…」
穂乃果「えへへ…穂乃果でーす! よろしくね、真姫ちゃん?」
真姫「よ、よろしく…」
ズズ…
真姫「ん…」
希「どしたん? また何か物足りない…?」
真姫「あ、いえ…」
真姫「また味が変わった…ような――…」ズズ
希「え、特に何もしとらんけど…」
穂乃果「…」クス
真姫「な、なに…?」
穂乃果「真姫ちゃんは、希ちゃんのことよく分かってるんですね♪」
希「へ?」
真姫「な…!///」
穂乃果「ほらー、やっぱり希ちゃん人気あるんだよー♪」
希「人気って…」
真姫「いや、ちが…!///」
穂乃果「希ちゃんのコーヒーの違いをここまで理解してくれる人なんて、そうそういないと思うけどなぁ」
希「あー…確かにウチのコーヒーの味指摘されたん、お客さんじゃ真姫ちゃんが初めてかも…」
真姫「///」 穂乃果「でしょー? 穂乃果もここで働いて見て、ようやく分かるようになったけど…」
穂乃果「っていうか、そもそも穂乃果は今までコーヒー飲めなかったんだけど」テヘ
穂乃果「そんな細かな違いにだって気付いてくれるのは、とってもすごいことだと思うよ」
穂乃果「ね♪」
真姫「…///」プイ
希「うーん、そこまで好きになってくれるのは嬉しいけど、なんでまた…?」
穂乃果「希ちゃん…よく鈍いって言われない?」ハァ
希「え、えぇ…?」 穂乃果「希ちゃん、休憩交代しよ」
希「へ? 交代って…今入ったばっかやろ? ウチはまだ…」
穂乃果「いいからいいからー、はいはいここ座って」グイグイ
真姫「っ!?///」ドキ
希「ちょ、なんなん、穂乃果ちゃん…?」
穂乃果「はい、穂乃果がコーヒー淹れてきてあげるから、二人でゆっくりしててねー♪」スタスタ
希「…えー、ウチ、穂乃果ちゃんにコーヒーの淹れ方なんてまだ教えてへんけどなぁ…」
真姫「…///」
希「ま、ええか…♪」チラ
真姫「っ///」サッ
希「真姫ちゃん、元気やった?」
真姫「な、何よ急に…元気よ」
希「そか、それなら良かった♪」
真姫「…?」
希「真姫ちゃん、ウチの店に来るときは元気無い時が多いなー思ってたから心配してるんよ?」
真姫「っ…」
希「ウチの店でコーヒーでも飲んで、少しでも元気だして貰えたらな思ってたけど…」
真姫「…」
希「まだ満足はしてもらえへんかな――?」
真姫「それは…」
コト
穂乃果「――大好きな希ちゃんの淹れてくれるコーヒー、満足してない訳ないよ」
真姫「っ!!?///」ドキ!
希「へ?」
真姫「ッ!!///」キッ
穂乃果「あはは、ごゆっくりー♪」スタスタ
希「もうー、なんなん…?」
ズズ…
希「まっず!!」ブー
真姫「わっ、ちょっと、汚いわよ…」
希「あ、真姫ちゃんごめん…いやしかしこれは、相当なモンやで…」フキフキ
真姫「…向こうで文句言ってるわよ」マズイッテナニー!!?
希「いやいやこれは中々酷いでー? 真姫ちゃんも飲んでみー?」
真姫「ん…///」
ズズ…
真姫「…〜〜っ」
希「ほら、マズイやろ?」
真姫「ええ…マズイわね…。希の味とは大違い――」
希「これはちゃんと教えなアカンなぁー…」
真姫「…」クスクス
希「♪」クスクス
希「まぁでも、真姫ちゃんが笑ってくれるんなら…ウチのコーヒーも中々のもんやない?」
真姫「…///」
希「っていうか、真姫ちゃんってコーヒー似合うなぁ」
真姫「そ、そうかしら…?」
希「真姫ちゃん自身美人さんやし、足組んでコーヒー飲んでたらバリバリのキャリアウーマンって感じ」
真姫「び、美人って…///」
希「うんと、聞いてもいいかな? 真姫ちゃんってお仕事とか何してるん?」
真姫「ぁ…」
希「あ、言いたくない? 言いたくないんやったら別に――…」
真姫「あ、ううん、そんなことはないわ…。えっと、西木野総合病院って分かるかしら?」
希「ああ、すぐ近くにある大っきな病院やろ? え、真姫ちゃん看護師さん?」
真姫「えっと…看護師じゃなくて、医者の方よ」
希&穂乃果「え!? 真姫ちゃんお医者さん!?」ガタ
真姫「ヴェェェ!?」ビクッ
希「…」チラ
穂乃果「…///」サササー
希「いや別に、話に混ざればええやん…」
真姫「そ、そんなに変かしら…?」
希「あ、変とかやなくて普通にびっくりしたわ…病院の先生やったんかぁ。すごいなぁ…」
真姫「…///」
希「そしたら、ケガとか何か困ったことがあったら真姫ちゃんに相談すればええんやなぁ♪」
真姫「ケ、ケガはともかく、そんな人生相談みたいなことはできないわよ…」
希「真姫ちゃん口下手やしなぁ♪」クスクス
真姫「…悪かったわね///」プイ 希「ごめんごめん。…まぁしかし、お医者さんなんてやってたら大変そうやねぇ。ウチとは違って忙しそうやし…」
真姫「…さすがにそれはそうね」クス
希「あーひどいわぁ」
真姫「自分で言ったんじゃない…」
希「…」
希「――真姫ちゃんも、何か言いたいことがあったら言ってええんよ?」
真姫「…」
希「ウチやったら、ここにいる限りいくらでも聞いたげるよ」
真姫「…ありがとう」
真姫「…でも私には、希が淹れてくれるコーヒーがあるから…」カタ
ズズ…
真姫「っ〜〜…」
希「あ、そっちは穂乃果ちゃんの…」 真姫「…ヒドイ味ね」
希「ゴメンなぁ…」
真姫「…」クスクス
希「…」クスクス
真姫「…」
真姫「希…好きよ――…」
カッシャーン!!
穂乃果「わぁぁ! あ、あ、ごめんなさいぃ〜〜!! 余りにもストレートな言葉だったものでうっかり…!!」ペコリペコリ
希「真姫ちゃん…?」
真姫「…ふふ、冗談よ」クス
真姫「私は希の淹れてくれるコーヒーが好き、それだけ」コト
希「…」
カランコロン…
希「…」フリフリ
穂乃果「すごかったね…」
希「うん…」
穂乃果「希ちゃん、あれ冗談じゃないよ」
希「さすがにウチでも分かるわ…」
穂乃果「だよねぇ…」 希「ウチみたいなんが人から好かれるなんてなぁ…」
穂乃果「…希ちゃんはもう少し自信を持っても良いと思うんだ」
希「え…?」
穂乃果「希ちゃんは自分が思ってるよりずっと魅力的! これは間違いないよ♪」
希「そう、かなぁ…」
穂乃果「鈍いところが腹立たしい〜…!」
希「ご、ごめん…」
穂乃果「あーあ…羨ましいなぁ〜…穂乃果もあんな風に告白されたい〜」
希「穂乃果ちゃんはにこっちのとこ、はよ帰り」
希「…でも、ウチには…」
……。
■Scene16
カランコロン
穂乃果「っいらっしゃいませーっ!」バッ
花陽「っ」ビクッ
タッタッタッタッタ…
穂乃果「って、あー…」
希「逃げちゃったなぁ〜」
穂乃果「げ」
希「折角のお客さんやったのにー…」ジリ
アッーーー!!
穂乃果「あぅぅ…」ピヨピヨ
希「もう少し落ち着きってもんを学ばなきゃアカンよー穂乃果ちゃん?」
穂乃果「希ちゃんに言われたくないー…」
希「…もう一発、行っとこかー?」ニコ
穂乃果「申し訳ございません〜!」ドゲザー
希「よろしい♪」
穂乃果「うぅ…にこちゃんに揉まれる前に無くなっちゃうよぉ〜」サワサワ
希「なんでやねん///」
カランコロン
穂乃果「っいらっしゃいませー!」バッ
希「あ、ちょ、だから――…」
ビターン!!
穂乃果「あれ…?」キョロキョロ
希「はぁ…また逃がしたん…?」
ことり「目の前に天使が〜…☆」ピヨピヨ
希&穂乃果「って、あ…」
コト
ことり「希ちゃんどういうことぉ!?」
希「な、何がやねん…」
ことり「何でことりの制服を天使…じゃない、穂乃果ちゃんさんが着てるのぉ!?///」ドバー
穂乃果「あ、鼻血でてる…。はい、ティッシュだよ♪」
ことり「ありがとう〜☆」ゴソゴソ
希「何でって、働いてもらってるからやけど…」
穂乃果「あ、勝手に着たらダメだったかな…?」ヒラ
ことり「全然大丈夫だよぉ〜っ!///」ドバー
穂乃果「また鼻血…」アセアセ
希「もうどうしようもないヘンタイやん」 ことり「だって、冷静に考えてだよぉ!? 希ちゃんのふくよかなバストサイズにあわせてことりがあれやこれやと妄想して作った衣装をだよ! その希ちゃんよりも半分程にも満たない穂乃果ちゃんさんが着るという一大事件なんだよっ!?」」
穂乃果「ぅぅ半分…」サワサワ
ことり「必死に調整して見えるけど、ほとんどこんなの見せられないよだよぉ! ブラチラなんてレベルじゃないよぉ〜〜!」ドバー
希「もういい加減テーブル汚すんやめてくれへんかなぁ」
穂乃果「…」フキフキ
ことり「はぁ…幸せ〜…☆」
ズズ…
ことり「わぁ、また美味しくなったね♪」
希「ありがとうー。けど、みんな言ってくれるけど、あれから何もしてないんやけどなぁ…?」
穂乃果「♪」カチャカチャ
ことり「ふふ…変化ならあった気がするけどなー…♪」チラ
希「?」
穂乃果「ことりちゃん、お代わりいるー?」
ことり「欲しいでーす☆」
穂乃果「はーい♪」
コポポ…
希「で、今日は何しにきたん?」
ことり「えー、今日は普通にお客としてだよぉー? いけない?」
希「へぇ…」
ことり「あー信用してない顔だぁ〜」
希「そらことりちゃんの性格からしたら、絶対何かしらの意図がないとこないしなぁ…」
ことり「そんな人を性悪みたいにヒドイっ…」
希「事実やろ…」
ことり「まぁ、主に穂乃果ちゃんが目当てだったんだけど…思わぬ収穫があってことりは大満足ですっ☆」
希「うわぁ」
ことり「穂乃果ちゃん用に新しい衣装作ろうかなぁ…♪ 穂乃果ちゃんならもっと露出させた衣装でも…///」
希「前にも言ったけど、恋人おるからな穂乃果ちゃん」
コト
穂乃果「はい、どうぞ♪」
ことり「ありがとう〜☆」
希「…本当に、何もないん?」
ことり「希ちゃんは疑り深いなぁ〜…」
穂乃果「…?」
ことり「本当のことを言うと…仕事が一段落したから、ちょっと息抜きがてらに来たんだ♪」
希「仕事?」
ことり「うん、お仕事でずっとアプローチかけてたモデルの子から、ようやくイエスの返事をもらえたんだぁ」
穂乃果「モデル…?」チラ ことり「そうなのぉ…穂乃果ちゃんとは性格が真逆な感じの控えめな子なんだけどね、すっごく可愛くてキレイで、一目見たときから次のモデルはこの子にしよう! って決めてたの」
希「真逆で控えめ…?」チラ
ことり「最初は断られそうな感じだったんだけど、執拗なアタックのおかげなのかなぁ? ついこの間やりたいって返事をもらえて…すごく嬉しくなっちゃって☆」
穂乃果「それって…」
希「ことりちゃんのアタックは、えげつなかったやろなぁ…」
ことり「見て見てぇー♪ この写真の子なんだけど、すっごいキレイでしょぉ〜?」ピラ
穂乃果「あ、やっぱり――…」
カランコロン
希「あ、いらっしゃいませー♪」
海未「こんにちわ…」
ことり「あれ!? 海未ちゃん!?」
海未「っ!?」ビク
タタタタ…!
ことり「あ、あれぇ〜? 海未ちゃん〜!? 待ってぇ〜!!」
希「…あの海未ちゃんが脊髄反射で逃げたで」
穂乃果「相当しつこかったんだろうね…」
コト
ことり「まさか海未ちゃんが希ちゃんのお店の常連だったなんてぇ〜♪」
海未「うぅ…///」
希「よう捕まえてきたな…」
穂乃果「なんか、希ちゃんの言ってることがよく分かった気がするよ…」
希「せやろ…」
ことり「なぁに?」ニコニコ
穂乃果&希「なんでもないー!」 穂乃果「それじゃ海未ちゃん、本当にモデルのお仕事引き受けたんだね♪」
海未「あ…はい…。あの後、すぐにこちらの…南さんにお電話しまして…」
ことり「ことりですっ」ズイ
海未「はいっ!?///」
ことり「なんでそんな他人行儀なのー? ことりって呼んでって言ってるでしょぉ〜?」
海未「い、いえ、しかし…お仕事を貰う立場の私が名前を呼び捨てになど…」
ことり「むー…別にいいって言ってるのにぃ〜…」
海未「そ、そういう訳には…」
ことり「まぁそういう所も好みだからびびっときたんだけど…♡」
希「キモ…」 穂乃果「でも、本当に良かったね海未ちゃん♪」
海未「…全て、後押ししてくれた穂乃果さんと希さんのおかげです…」
希「ウチらはなーんもしてへんよ。な?」
穂乃果「うんうん、一歩を踏み出したのは海未ちゃん自身だもん♪」
海未「…ありがとうございます」
ことり「なんで二人のことは名前呼びなのにことりだけぇぇぇぇ〜〜〜」メソメソ
海未「で、ですから! 二人と南さんでは立場が…」アセアセ
ことり「いーやぁー! いやだぁ〜! ことりもことりって呼んでくれないとお仕事させてあげない〜!」
海未「えぇ!?///」
ことり「海未ちゃんのバカぁ〜〜〜!」メソメソ
海未「あぅ…///」オロオロ
穂乃果「面倒くさいね…」
希「面倒やね…」
カチャカチャ
海未「…それにしても、随分賑やかな場所になりましたね」
希「確かに…海未ちゃんが最初に来てくれた頃から考えると、大分変わったなぁ」
ことり「穂乃果ちゃん〜、穂乃果ちゃんもうちで専属モデルやらないぃ〜?」
穂乃果「あー、えーっと…穂乃果、ここで働くので満足してるからいいかなぁ…」
ことり「制服似合ってるよぉ〜? 可愛いよぉ〜? ことりだったら、もっと似合うお洋服着せてあげられるよぉ〜…?///」ハァハァ
穂乃果「あ、あはは…ことりちゃん目が怖いからイヤだなぁ」
海未「穂乃果さんも働いてくれていますし…」
希「なんだか、常連さんも多くなっている気がするなぁ」
海未「私もその一人、ですかね」
希「…こんなにうるさくなって大丈夫? 前の方がよかったんやない?」
海未「確かに、静かな空間だからこそ好きだった…という部分もありましたが」
希「そうやんなぁ…。別の場所見つけた方がいいかもしれへんよなぁ…」
海未「でもそれ以上に…」
ズズ…
海未「希さんの淹れてくれるコーヒーは、少しずつ美味しくなっていっている気がします」
希「…そか♪」
ことり「穂乃果ちゃん、こっちに来て一緒にコーヒー飲も♪」
穂乃果「いいよー♪ あ、でもお触りは禁止だからねっ!」メッ
ことり「そそそそ、そんなことしないよぉ…!」
ことり「って、マズいぃー!!」ベー
穂乃果「あ、それさっき穂乃果が淹れたコーヒー…」テヘ
海未「…きっと、みんな希さんのことが好きなんでしょうね」
希「…///」
希「海未ちゃん…ありがとう♪」
カランコロン
穂乃果「あ、いらっしゃいませー♪」
希「なんや、本当に今日はお客さんが多いなぁ…」クス
希「って…」
海未「希さん…?」
ことり「あ、やっほー☆」
穂乃果「あれ? ことりちゃんの知り合い?」
絵里「…あなた、誰?」
穂乃果「あ、えっと…」
希「――ちょっと前に新しく雇った、穂乃果ちゃんだよ」
絵里「希…」
希「いらっしゃい、えりち」
穂乃果「えりち…? この人が…」
……。
■Scene17
カランコロン
絵里「いらっしゃいませ」
コト
絵里「メニューをどうぞ」
サッ
絵里「かしこまりました。少々おまちください」ペコリ
カチャカチャ
絵里「お母さん、ブレンド一つおねがい」
「はーい、了解♪」
希「…」ジー
絵里「…どう、分かった?」
希「…」コク
絵里「店員さんなんて簡単でしょ?」
希「…」フルフル
絵里「もう…希は怖がりすぎよ」
希「ぅぅ…」
絵里「はい、次は希の番」
希「…っ」ブンブン 「あんまり無理させたらアカンよー絵里ちゃん」
絵里「無理なんてさせてないわ。誰でもできる当たり前のことをさせようとしてるだけよ」
「誰でもできるーなんて、誰が決めたん? 人には人のできる範疇みたいなんがそれぞれにあるんよ」
絵里「…」
「今はまだ希ちゃんにそれが備わってないだけ…そーやんな?」ポンポン
希「…っ///」
絵里「…ふん」プイ
「あらー、絵里ちゃん最近ご機嫌ナナメやなぁ」
絵里「いい加減、そのエセ関西弁やめてよね」
「まだ言うのー? ええやんなぁ?」
希「…うん///」
絵里「希に悪影響与えたらどうするのよ…!」
「別に悪影響なんてないと思うけどー?」
希「ない、と思う…///」
絵里「懐いちゃってるのがもう悪影響なのよ…」
「えーウチに懐いてくれてるんー? だとしたら嬉しいわぁ〜♪」スリスリ
希「///」 絵里「希、あなた家に帰らなくていいの?」
希「…」
絵里「あんまり遅くなると、家の人心配するんじゃないのかしら?」
希「…たぶん、大丈夫…」
絵里「本当…?」
「まぁまぁ、あんまり遅くなるようやったらウチが送ってあげるし、ギリギリまでいてええんよ?」
希「…うん♪」
絵里「…」
「そしたら次はコーヒーの淹れ方教えたる。ついてきてー♪」
希「…///」トコトコ
絵里「…はぁ」
……。
カランコロン
希「…っ」ペコリ
ゴト
希「…っ! …っ!」ペコペコ
絵里「…」
カランコロン
「ありがとうー♪ また来てなー」フリフリ
絵里「…あれじゃお客さんもどうしていいかわからないでしょ! なんでいらっしゃいませもロクに言えないの!?」ガミガミ
希「あぅ…」シュン
絵里「メニューを伺うこともできないし…お皿を割ったのだって今日何枚目!? タダじゃないのよ!!」
希「…」
絵里「希、聞いてるの!?」バン!
希「っ」ビク
絵里「あなたがこの店で働いてみたいって言うから教えてるのに、全然できないじゃない!!」
希「〜〜」フルフル 「絵里ちゃん、そのへんにしとき」ポン
絵里「お母さん…」
「希ちゃんだって頑張ってたやんなー? まだまだ慣れてへんだけやもん」
希「ぅぅ〜…」プルプル
絵里「っ! そうやってすぐに泣こうとする…!」
希「ひぅ!」
「絵里ちゃん、怒らないの。よしよし、希ちゃん〜♪」ナデナデ
希「〜〜…」
絵里「…っ」
絵里「お母さんは希に甘すぎるわ…!」
カランコロン
「…あー行ってもうた…しょうがないなぁ」
希「…」
希「…ごめんなさい…私のせいで…」シュン
「あーあー、希ちゃんは気にせんでええよ。絵里ちゃんが癇癪起こすんはいつものことやから」
希「でも…」
「まぁあとでウチがちゃんとフォローしといたるわ。母親としてな♪」
希「お母さん…」
「ん? ウチをお母さんって呼んでみる?」
希「あ…う…///」
「あっはは、冗談やって! 希ちゃんにもちゃんとお母さんいるもんな?」
希「…うん」
「…まだ仲悪いん? お母さんと」
希「…うん」
「そっかぁ…。仲直りはできんもんかなぁ」
希「…お母さんが…私のことキライだから…」ギュ…
「そんなことないー…って言いたいとこやけど、こればっかりはいい加減なこと言えへんなぁ」
希「…」ギュ
「ん? ふふ♪」ナデナデ
希「…///」 「なぁ希ちゃん、ウチ…なんでこの喫茶店やってる思う?」
希「なん…で…?」
「こうやってウチで手伝い始めてくれてるからなんとなく分かる思うけど、この店、お客さんが少ないと思わん?」
希「あ…えっと…う…うん…///」
「ええよええよ、正直な感想は大事や。本当に少ないんよ。びっくりするぐらい」
希「そうなんだ…」
「立地条件とか、この辺の客層に合わないとか、単純に味が悪いーとか色々理由はあると思うけど…」
希「味は…美味しい…と思う…///」
「お、ありがとなー♪」
「…けどまぁ、何が原因かは全く分からないんよ。こんな収入やったら中々続けることも厳しい」
希「…」
「それでもウチが続ける理由はな…お客さんを少しでも笑顔にさせてあげたいからなんよ」 「ウチが淹れるコーヒーを飲んで、みんなが満足してくれる」
「楽しそうに笑って話して、そして最後はそっと――背中を押してあげられるような」
「そんなお店ができたらいいなって、ずっと思ってたんよ」
希「…///」
「今も少なからず来てくれるお客さんは、みんな笑顔でこの店を出ていって――そしてたまに帰ってきてくれる」
「ウチ自身の夢、しっかり叶えられてるんかなぁ――…?」
希「…」ギュ
「ふふ…♪」
「だから希ちゃんも、そんなお客さんの一人なんやで? 笑顔になってもらわな♪」
希「うん…♪」ニコ 「そうそう、その笑顔やで♪ そのスマイルをお客さんにも見せられれば完璧やよ♪」
希「あぅぅ…むずかしい…///」
「ふふ、そんなに焦ることはないー。自分のペースで頑張り♪」
希「うん…」
「まぁ絵里ちゃんは結構強く言ってくるかもしれんけどなぁ…」
希「…」
希「…絵里ちゃんは…私のこと、キライなのかなぁ…」
「んー…」
「希ちゃんは絵里ちゃんのこと、キライ?」
希「う、ううん! キライじゃ…ないよ…」フルフル
希「キライじゃない…けど…」
希「…」
希「絵里ちゃん…いつも怒ってばかり…だから…」
希「…私が…上手くできないせいで…」 「ふふ…安心してええよー。絵里ちゃんは希ちゃんのこと、嫌ってないから」
希「でも…」
「絵里ちゃんはああいう性格だから、当たりが強くなっちゃうだけなんよ」
希「そう…なの…?」
「そうやー。むしろ絵里ちゃんのあの感じからすると…」
希「…?」
「…ま、これは言わんでええかー。二人の行く末は、ウチも楽しみやからなぁ」
希「行く末…?」
「気にせんでええよー♪ あーウチもあと一人ぐらい産めばよかったわー」
希「妹…」
……。
カランコロン
希「あ、あ、ありがとうございました…っ」
希「はぁー…」
「希ちゃーん、お疲れ様ー♪ そっちのテーブルにお昼ご飯用意しといたから、食べてー♪」
希「はーい…♪」
希「サンドイッチ…♪」
コト
絵里「…お疲れ様。隣、いいかしら?」
希「へっ? あ、う、うん…」
絵里「…」
希「…///」アセアセ
絵里「…」モグモグ
希「…っ」モグ…
絵里「…」ズズ…
希「…っ」
絵里「…」カタ
希「…〜っ」ゴト
絵里「…希、もう少し落ち着いて食べられないの?」
希「あ、え、えと…ごめんなさい…」アセアセ
絵里「…なんで敬語なのよ」ハァ
希「え…あ…う…」
絵里「同い年でしょ? いいわよ、ため口で」
希「う、うん…」
絵里「うちでの仕事、楽しいの…?」
希「うん…たのしい…♪」
絵里「そう」
希「絵里ちゃんは…楽しいの?」
絵里「…楽しくない」
希「そう、なんだ…」
絵里「私はこんなお客がこないような場所で働いていたくない。もっと、沢山の人が集まるところで誰かの役に立ちたい」
希「…」
絵里「…なに?」
希「…絵里ちゃんはすごいね」
絵里「そうかしら…? それぐらい、誰でも夢を持つ物じゃないかしら」
希「私は…そんな大きな夢持てないよ…」
絵里「何故?」
希「なぜって…私は人とお話するのも苦手だし…誰かと何かをできるなんて思わないよ…」
絵里「…じゃあ希は何でうちに来ているの?」
希「それは…」
絵里「…」
希「…」
絵里「希…あなたはもっと自信を持ちなさい」
希「自信…」
絵里「弱気でいてはダメ。自信が人を前に突き動かすの。恐怖から逃げちゃ、ダメ」
希「ぅぅ…でも…」フルフル
絵里「――私なら」
絵里「いくらでもその練習台になってあげられるから」
希「絵里ちゃん…」
絵里「だから、困ったことがあればいつでも私に相談しなさい」
希「うん…」
絵里「…それと、絵里ちゃんはやめて。なんか…くすぐったいわ」
希「え…でも…」オロオロ
「…♪」クスクス
カランコロン
ことり「こんにちわー♪」
「おー、ことりちゃんいらっしゃーい♪」
ことり「えへへ、遊びに来ちゃいましたぁ☆」
絵里「ことり…何しに来たの?」
ことり「えー、何しに来たのってあんまりじゃない〜?」
絵里「あなたが来るとロクなことがないのよ」ハァ
ことり「ひどいっ! ことりはただ〜、新しく作った衣装を絵里ちゃんに来て欲しくて〜♪」ファサ
絵里「なんで私なのよ。自分で着なさい」
ことり「だって〜、可愛い絵里ちゃんに着て貰いたくて〜…って、あれ?」チラ
希「っ」ビク
ズザー!
ことり「か、可愛い…! なにこの子…!?///」ギュ
希「ふぇ…?」ガタガタ
絵里「ちょ、ことり…希に手出したら怒るわよ」
ことり「手なんか出さないよぉ…! ねぇねぇ、私が作ったこのお洋服、絵里ちゃんの代わりに着なぁい…♡」
希「え…? え…?」アセアセ
絵里「まぁ…荒療治も必要かしらね…」
希「…え!? …え!?」アワアワ
キャーーーー!!!!
……。
乙です
マギレコやってるせいかこの子供時代の希が眼鏡ほむらに思えて仕方ない
■Scene17.5
コト
「はい、ことりちゃんどうぞ〜♪」
ことり「ありがとうございます〜☆」
希「〜〜…っ」ガタガタ
ことり「はぁ…美味しい〜…♡」
絵理「意味深ね」
ことり「そんなことないよぉ〜…♡」 「あはは、希ちゃん似合っとるで〜♪」
ことり「うんうん、似合ってる似合ってる〜♪」
希「あぅぅ〜〜…」フルフル
「っていうか希ちゃんって意外に胸おっきかったんやなぁ。これは盲点やったわ…」
希「…///」
ことり「うんうんっ! 絵理ちゃんように合わせたお洋服がそのまんまぴったしだもん! 最高の逸材だよぉ〜…///」ハァハァ
絵理「…というか、少しキツそうなぐらいよ。大丈夫、希…?」
希「…大丈夫…じゃない…」ウルウル
ことり「これはこれからの妄そ…洋服作りが捗りますっ! 希ちゃん希ちゃん! バストサイズ教えて〜っ!!///」
希「い、いや…///」
「ことりちゃんやったら、妄想だけでサイズ間バッチリ分かりそうやけどなぁ〜」アハハ
絵理「…」ハァ
ジャー
希「うぅ〜…」
「んー、どしたん希ちゃん? あ、結局そのお洋服、ことりちゃんからもらったんー?」
希「…無理矢理…」
「あっはは、別にええやん♪ 似合ってるし、可愛ええよー?」
希「…///」
「恥ずかしがってる顔も可愛ええなぁ〜希ちゃんは♪」
希「〜〜!」バシバシ
「あーもー痛い痛いー♪」 希「…」ハァ
「…さすがにことりちゃんみたいなんは苦手?」
希「…苦手…」
「おー、珍しくはっきり言うたな〜。ことりちゃんは嫌われもんやなぁ」クス
希「ことりちゃんは…ちょっと、ヘン…」
「ヘンはさすがに失礼やで? 個性的って言うんよ、ああいう子は♪」
希「こ、個性的…」
「と言ってもアレやで? みーんなそれぞれ個性的なんよ?」
希「え…?」
「希ちゃんやって随分個性的やでー? 希ちゃんみたいに言い換えれば、ヘンな子やよ?」
希「ヘン…」シュン 「あー、あー、そんな落ち込まんでも…。別に希ちゃんだけやなくて、ウチもだから安心しー♪」
希「お母さんも…?」
「そやー。こんないい加減な関西弁使ってるん、ウチだけやでー?」
希「そうなの…?」
「きっと本場の関西言ったら袋だたきに合うわ…怖いなぁー」
希「…それじゃあ、なんで関西弁なの…?」
「うーん…」
「まぁ、希ちゃんになら言ってもええかー…」
希「…?」
「ウチもな、本当は臆病モンなんよ――?」
希「…ウソ」
「ウソやないってー。本当も本当ー。いっつもガクガク震えてるんやよー?」
希「…絶対ウソ」
「疑り深いなぁ希ちゃんは〜…」
希「…」ジー
「ふふ…」
「――ウチの関西弁はな、ウチ自信を守る魔法の言葉なんよ」
「ぶっきらぼうに喋って、ふてぶてしく笑って、誰にも負けないように自分を誤魔化す…偽りの魔法」
「それが――ウチの言葉」
希「…」
「…――なんて、ちょっとカッコ良く言ってみたけど…やっぱりウソっぽいかなぁ?」
希「…」
「ふふ…♪」
「希ちゃんも真似してみる――?」
……。
カランコロン
ことり「希ちゃぁ〜〜ん…! 新しいお洋服作ってきたよぉ〜…♡」
「ことりちゃん、いらっしゃーい♪」
ことり「あれぇー? 希ちゃんはぁ〜…?」キョロキョロ
絵理「すっかり希をターゲットにしたのね…」ハァ
ことり「だってぇ〜! あんなに可愛いんだもん〜〜!!///」ハァハァ
絵理「そういう変態的発言はやめてもらえる?」
ことり「えー…? 大体絵理ちゃんがそっけない態度なのがいけないんだよぉ…」ムー
絵理「そんなの当たり前でしょうが…」
ことり「いーもんいーもん、希ちゃんに着てもらうからぁ〜…♡」
希「…っ」コソコソ
ことり「あーいたぁ〜!」
希「っ」ビク
ことり「希ちゃ〜ん! ことりの作ったお洋服着てみてぇ〜…♡」
希「…///」
希「…」スーハー
希「う、ウチ…も…着たくないー…」
ことり「へ?」
絵理「え…?」
「…♪」
希「///」アセアセ
希「ウチはイヤや…そんなん…///」カァー
ことり「…………かっわいぃぃぃぃぃ―――――っっ!! 何ソレぇぇぇぇぇ―――――!!?///」ドバー
希「ひぅ!?」ビク
ことり「ななな、なんで関西弁になったの急に!? え? え? 絵理ちゃんのお母さんの真似!? そうなの!? どうなの!? 最高すぎるよ希ちゃん!! もう一回! もう一回ことりに聞かせてぇ〜〜〜!!!!///」ハァハァ
希「あぅぅ〜〜〜っ///」ブンブン
絵理「お母さん…っ! 変な入れ知恵したんじゃないでしょうね…!?」ギロ
「あっはっはっは! 希ちゃんめっちゃ可愛いわぁ〜〜!!!」バンバン!
……。
コト
絵里「懐かしいわね、この店で三人揃うなんて…」
ことり「そうだねぇ…。昔は三人で色々したねぇ♪」
希「主に、私が二人に振り回されてただけのような気もするけど…」
絵里「二人にじゃ無くてことりに、ね」
ことり「絵里ちゃんひどいっ!」
絵里「事実でしょ」
希「どっちもどっちかなぁ…」
海未「…あ、あれはどういう構図なのでしょうか…?」ジー
穂乃果「穂乃果も分からないよぉ…」ジー
海未「一見穏やかにも見えますけど…どことなく緊張感が…」アセアセ
穂乃果「や、やめてよ海未ちゃん…! ケンカが始まっちゃうとか…!?」アワアワ
海未「それは言い過ぎかもしれませんけど…あの絵里という人の強面は…」ガタガタ
穂乃果「な、なんか凄みがあるよね…」ブルブル
海未「な、何が起こっても対応できるように、いつでも出ていけるようにしなければ…」
穂乃果「う、海未ちゃん…そんな頼り甲斐あるキャラだったっけ…?」
ズズ…
絵里「…賑やかね」
希「なんか、ごめん…」
絵里「なんだか…あの頃の風景が蘇るみたいだわ」
ことり「…そうだね♪」
希「…うん」
絵里「煮え切らない希の世話を焼き、滅茶苦茶なことりの無茶振りをかわし、母のいい加減な関西弁に文句を言っていたあの頃…」
ことり「滅茶苦茶はあんまりだよぉ〜…!」
希「…」クス
絵里「そんな風景が、ここにはある気がする――」
希「――…うん」
絵里「希…いつの間にか成長したわね」
希「うん…」
希「私、成長したと思う…」
希「えりちのおかげで…自信もついたし…」
希「今では立派に、えりちのお母さんの代わりを出来てる気がする」
絵里「そうね…」
絵里「母も、天国で希の姿を見て安心してるんじゃないかしら…?」
希「そう…だといいなぁ」
絵里「――それでも、私はあなたをここから連れ出したい」
希「えりち…」
絵里「…変わらない」
絵里「本当にあの頃と、何も変わらない…」
絵里「お母さんが造り上げた喫茶店の風景、そのままだわ…」
絵里「希、あなたはいつまで…この喫茶店に囚われてるつもりなの――?」
希「…」
絵里「母の口真似をして、母と同じように喫茶店を経営して、母の夢を追っている――」
絵理「娘の私からしたらそれは嬉しいことなのかもしれない」
絵理「母の空気をいつまでも感じられるこの店が残るのは、とても感慨深い」
絵理「けど、だからといってその母の幻影をあなたに背負わせるつもりはない」
絵理「…希は成長した」
絵理「きっと、一人でも立って歩けるぐらいに大人になった」
絵理「でも、あなたはここに囚われている限り…一歩も前へ進めない」
絵理「希の本質は、いつまでもあの頃のまま――」
絵理「内気で弱気で、臆病な希のまま――」
希「…」
絵理「その責任は私にもある…」
絵理「私が希の思うままに、やりたいように…この喫茶店を任せてしまったから」
絵理「ことりにお願いして、色んな面倒も見て貰った」
絵理「知りうる限りのコネを使って、最大限サポートした」
絵理「…でもそれは間違いだった」
絵理「私は…いずれ希が母とは違う夢を持って、新しい道を進んでくれることを願っていた」
絵理「けど、ここまで母の幻影を追うことになるとは…それこそ夢にも思わなかった…」
絵理「希…本当のあなたは一体どこにいるの…?」
絵里「希はいつまでも…母の夢の中にいる…」
希「私は…」
希「私…」
希「ウチは…」
希「ウチの夢は――…」
穂乃果「――希ちゃんは希ちゃんですっっ!!!」
希「――っ」
絵理「…な、なによ急に…」
絵里「関係ない人間が口を挟まないで頂戴…!!」
穂乃果「急じゃありませんっ! 関係なくありませんっ! ずっと聞いてましたっ! 沢山聞きましたっ! えりちさんの想いっ!!」
絵理「えりちって…あなたにその名前で呼ばれる覚えはないわ…!」
穂乃果「…っ」
穂乃果「…穂乃果、まだ希ちゃんと知り合ったばかりだから、そんなに希ちゃんのことは分からないです…」
穂乃果「でも、希ちゃんは…希ちゃんだから…!」
穂乃果「今、私達がいる喫茶店にいるこの希ちゃんが全てなんです!」
穂乃果「過去の希ちゃんがどういう人なんかは興味ありませんっ!」
穂乃果「希ちゃんは夢の中になんかいません!」
穂乃果「…昔の幻影を追っているのは絵理さんの方です!」
穂乃果「希ちゃんじゃない…希ちゃんであった別の人を、今でも追っているだけです…っ!!」
希「穂乃果ちゃん…」
ことり「…」
絵理「…何よ、それ」
絵理「私が…」
絵理「私が本当の希のことを見ていないとでも…?」
絵里「…希の幻影を追っているですって…?」
絵理「いつでも隅っこで震えて、誰とも話をしようとしなかった弱々しい希を知っているのは…私だけよ…!」
絵理「私が、どれだけ希の為にしてきたか…!」
絵理「どれだけ希の傍で支えてきたか…!」
絵理「あなたなんかに分からないでしょ…ッ!!」
穂乃果「分かりませんっ!」
穂乃果「そんな希ちゃんは、穂乃果は知りませんっ!!」
絵理「だったら口を挟まないでって言ってるでしょ…ッ!!」
穂乃果「――だってっ!!」
穂乃果「…今の希ちゃんは…すごく優しくて、強くて…」
穂乃果「みんなの頼りになるお姉さんなんだもん…」
穂乃果「そんなの…知らないよ…」
穂乃果「絵理さんのお母さんの真似なのかもしれない」
穂乃果「この喫茶店でやってることも同じなのかもしれない」
穂乃果「それでも――…」
穂乃果「…穂乃果にとっては、それが希ちゃんだもん」
穂乃果「みんなだってそう…」
穂乃果「穂乃果の大好きな…希ちゃんなんだもん…」
穂乃果「うう…」
穂乃果「うわぁぁぁぁ〜〜ん!!」ボロボロ
希「あ…ちょ、穂乃果ちゃん…」ギュ
穂乃果「うわあああ〜〜〜〜〜〜ん!!」ボロボロ
希「そんな、泣くことないやん…ほら…」
穂乃果「だってぇ…だってぇ…!!」ボロボロ
希「よしよし…ウチは大丈夫やから…」ナデナデ
絵理「…っ」
絵理「…なんなのよ…」
絵理「あなたが…希の何を知っているというのよ…っ!」
海未「――そうですね…私達は希さんのことをよく知りません」
絵理「あなたは…」
海未「私は…このお店のお客その一、という感じでしょうか」ニコ
海未「…私達はあくまでもお客なので、そのような立ち入ったことは分かりませんし…ましてや、興味もありません」
海未「ですが…それは希さんも同じ」
海未「極端な話をしてしまえば、私達の身の上話のことなどどうでもいいのです」
海未「けれど、それでも――今ここにいる希さんに惹かれて…私のようなお客さんがやってきているのです」
海未「そして、希さんにとってはどうでもいい話かもしれない私達の話に耳を傾けてくれる」
海未「あるいは――そっと…傍にいてくれる」
海未「…そんな希さんが、みんな好きなのですよ」
海未「過去にどんな希さんの姿形があったとしても、それは過去の物」
海未「絵理さんの望む形を、希さんが受け入れる必要はありませんよ」
絵理「…」
絵理「…私が望む…希の形…」
絵理「でも、それは――…」
ことり「ふふ…♪ 今日は絵理ちゃんの負けかなぁ?」
絵理「ことり…」
ことり「絵理ちゃんが希ちゃんに理想を求めている気持ちは分かるけどね」
ことり「ずっと絵理ちゃんが傍に居たのを、ことりは見ていたし…それを応援する側でもあった」
ことり「けど、そろそろ独り立ちさせてあげてもいいんじゃないかなぁ…?」
絵理「…私は、希を自由にさせたくて…」
絵理「母の幻影を背負わせたくなくて…っ!」
ことり「――それが押しつけなんだよ」
ことり「絵理ちゃんがさせようとしてることは、もしかしたら希ちゃんにとってはいいことなのかもしれない」
ことり「いつまでも希ちゃんをここに縛り付けるのは可哀想だなと、私も思った」
ことり「だから絵理ちゃんに手を貸した」
ことり「けど、何をどう望むかは…希ちゃん次第」
絵理「…っ」
ことり「まぁ最初はどうなるかなと思ったんだけど、やっぱり新しい出会いは変化を生むのかなぁ…?」チラ
穂乃果「うぅ…っ! うぅ…!」ボロボロ
希「ほーら、そろそろ泣きやみ…」ナデナデ
ことり「特にあの子が、大きな変化をもたらしてるような気はするけどー…♪」クスクス
ことり「それに私も――」
ことり「穂乃果ちゃんのあんな激しい姿見たら…味方したくなっちゃうよぉ…♡」ハァハァ
海未「…」サササ…
ことり「海未ちゃんもだよぉ〜♡」ガシ
海未「ひぃ!?」
絵理「…」
希「ほらほら、穂乃果ちゃん…もう落ち着いたやろ?」
穂乃果「…うん…」グス
希「ちょっとごめんな…?」
穂乃果「ぁ…」
希「えりち…」
絵理「…なによ」
希「…ウチはえりちに感謝してるんよ」
希「子供の頃から、ウチのことを面倒見てくれたこと…」
希「どんなに辛いときでも、傍で慰めてくれたこと…」
希「いつも怒っていながらも、内心は優しく色々なことを教えてくれたこと…」
希「どれも、ウチにとっては大事な思い出…」
絵理「…」
希「お母さんとのことも、ウチは一生忘れへん」
希「行き場を失ったウチのことを置いてくれて、一つも嫌な顔をせずに面倒見てくれた…最高のお母さんや」
希「だから、この喫茶店はウチの家そのもの」
希「このお店をあの時のまま、変わらずに残して置いてくれたえりちには感謝しかない」
希「ウチは…お母さんの意思を継ぐことはもう、当たり前のことだとおもったんよ」
希「それは、囚われてるとかそういうことやない」
希「言ってみれば…恩返しみたいなもん」
希「ウチのことを育ててくれた、ウチなりのお母さんへの感謝の表れなんよ」
希「だからな…えりち」
希「ウチにもう少しだけ時間を与えて欲しい」
希「いつまでかは分からない」
希「もしかしたら、相当長い時間が必要かもしれん」
希「けどそれでも、待って欲しい」
絵理「…もう私は、長い時間待たされたつもりよ」
希「…うん」
希「えりちには迷惑ばっかりかけてる」
希「本当、ウチってダメやね…」クスクス
希「それでも…」
希「いつか、自分の足でこの店を出る…その時まで…」
絵理「希…」
穂乃果「希ちゃん…」
……。
カランコロン
絵里「…」クル
絵理「…希」
真姫「――」
絵理「っ…あなたは…?」
真姫「…っ」クル
カツカツ
絵理「…」
……。
げ、本当に酷い誤字だ…全然気が付かなかった…
これはさすがに申し訳ない…
ご指摘ありがとうございます
次からはちゃんと直します
■Scene18
コト
穂乃果「…そっか」
希「…」
穂乃果「希ちゃん、子供の頃は色々大変だったんだね…」
希「うん…」
穂乃果「…もう一杯、飲む?」
希「…お願いするわ」
ズズ…
希「…相変わらずまっずいなぁ」クス
穂乃果「ひどいよぉ…これでも少しは上手くなったんだよ…?」
希「まぁ、ウチも前は似たようなもんやったけど…」
穂乃果「なんか、それも意外だなぁ…」
希「ウチがこの店でちゃんとやれるようになったのなんて、つい最近のことなんやで?」クス
穂乃果「へぇ…」
希「それこそ、ほんの少し前までは…えりちに何言われてもしょうがない甘えんぼうのウチやった気がする」
穂乃果「甘えんぼうの希ちゃんかぁ…それはそれで見てみたいけど…♪」
希「見たら失望するでー?」クス
希「本当に…何も出来ない子供やったからなぁ…」
穂乃果「…」 希「でも…穂乃果ちゃんがこの店に来るようになった辺りからかなー?」
穂乃果「穂乃果?」
希「うん。その頃から…なんか色々変わって行った気がする」
穂乃果「そんな…穂乃果なんか、ただ希ちゃんとお喋りしてただけなのに…///」
希「それが良かったーってのはあるかもなぁ?」
希「穂乃果ちゃん、なーんも考えないでとにかく突っ走るだけやったから…ウチも気楽に付き合えたし」クス
穂乃果「むー…バカにしてるー」
希「そんなことないよ、それが穂乃果ちゃんの良さやもん♪」
穂乃果「…」ムー
希「…♪」クスクス
希「あとは――雨の日にふらっと来てくれるあの人のおかげもあるかなぁ…」
穂乃果「え、なにそれ? だれだれ?」ワクワク
希「多分穂乃果ちゃんよりも前からの常連さんやで? 本当にたまーにやってきて色んなことを話してくれるお客さんなんよ」
穂乃果「へぇ〜…」
希「ウチもその人が来るときは必ず、横に座って一緒にコーヒー飲んでたりするんやけど…」
穂乃果「…♪」ニヤニヤ
希「な、なにー…?」
穂乃果「…希ちゃん、その人のこと好きなんでしょー?」
希「はぁ!?」
希「な、ないないー! ただのお客さんやでー? 絶対ないない」フリフリ
穂乃果「動揺してる〜! 必死に否定するのが怪しい〜!!」
希「あ、怪しくなんかないー!///」
穂乃果「希ちゃん視線が泳いでるよー? 穂乃果の目、じっと見れるー…?」クス
希「う…み、みれるに決まってるやろー?」
穂乃果「へぇ〜…」ジー
希「あぅ…と、とにかく! この話はおしまい! お仕事するでー!!///」バッ
穂乃果「あっ! ずるーい!!」
スタスタ…
希「もう…穂乃果ちゃんは…///」
穂乃果「ちぇー、その人実際に見てみたいなぁー…」
希「…」
希「でも本当に…穂乃果ちゃんたちがキッカケを与えてくれたんよな」
希「――ありがとう…♪」
穂乃果「ん?」クル
カランコロン…
穂乃果「あ、いらっしゃいませー…♪」
穂乃果「って」
にこ「…穂乃果」
にこ「やっぱりここにいたわね」
穂乃果「にこちゃん…」
希「…にこっち、いらっしゃい。随分、遅かったんやない?」
コト
にこ「…迷惑掛けたわね」ズズ…
希「ううん、ウチはなーんも迷惑しとらんよ」
希「…むしろ、穂乃果ちゃんには感謝しか無いわ♪」
にこ「仕事の邪魔ばかりしてたんじゃないの?」
希「んー…まぁそれは否定せんわ」
穂乃果「希ちゃんっ!? 穂乃果あれだけ働いてたのに…!?」
希「別にお願いした訳やないしなぁ。第一、穂乃果ちゃんのせいでどれだけの被害が出たことか…」
穂乃果「ひっど!! そんな言い方ないんじゃないー!?」
希「事実やし♪」クス
にこ「…はぁ。やっぱり穂乃果は穂乃果ね」
穂乃果「ふーんっ!」プイ
希「ふふ…♪」 穂乃果「…で、にこちゃんは何で来たの!?」
にこ「決まってるでしょ」
にこ「…あんたを連れ帰るためよ」
穂乃果「ぇ…」
希「…」
穂乃果「それってつまり…」
にこ「――好きよ、穂乃果」
穂乃果「にこちゃん…っ!」
にこ「…遅くなってゴメン」
穂乃果「ううん…!」
穂乃果「穂乃果も、ワガママ言ってごめんなさい…っ!!」
にこ「穂乃果が家を飛び出して…最初はあほのか! なんて怒ったりするだけで、特別捜したりしようなんて思わなかったんだけど…」
にこ「すぐに穂乃果の存在の大きさを感じたわ」
にこ「いなくなって、私の心の中にぽっかりと穴が空いたような気分だった…」
にこ「本当にいつのまにか…私の中で穂乃果は大切な存在になっていたわ」
にこ「…私はヒドイ女よね」
にこ「こんな素敵な子に猛烈アタックされてるのに、返事を出さず待ってろなんて言うんだから…」
にこ「本当にゴメン」
穂乃果「ううん…っ!」
穂乃果「にこちゃんが…好きって言ってくれるなら…全然構わないよ…っ!」
にこ「…」
パコ
にこ「穂乃果」
にこ「この指輪――受け取ってもらえる?」
穂乃果「…っ」
穂乃果「…はいっ!」
希「…何もこんなとこで一世一大の告白劇繰り広げんでもなぁ///」
……。
穂乃果「…お騒がせしましたっ!!///」
希「いやいや、別にええよー」フリフリ
希「…まぁなんというか、貴重なもん見れたわ♪」
穂乃果「うぅ…恥ずかしいぃ〜…///」カァー
希「まぁこの間のウチらのごたごたのことといい、お互い様という感じやけどな…」クス
穂乃果「あ…そう、だね」クスクス
希「しかし、随分短い期間だった筈やのに…なんだか偉い長かった気がするわ」
穂乃果「本当だねぇ…。あっという間だったような気もするけど、なんだか長い時間働いていたような気もするよ」
希「不思議なもんやね」クスクス
穂乃果「あはは…♪ あ、でもここで働くのはすっごい楽しかったよ!」
希「ウチは楽しいだけじゃなく面倒ごとの方が多かった気がするけどなー」ハハハ
穂乃果「希ちゃんひどいっ!!」
希「まぁまぁ、それもこれも楽しい思いでやん♪」
穂乃果「うん…♪」
ファサ
穂乃果「今まで着ていた希ちゃんのお古の制服…もうこれに袖を通すこともなくなっちゃうのかぁ」
希「…別にいつでも着てもいいんやで?」
穂乃果「ん…それは遠慮しておくよ」
希「…」
穂乃果「ごめんね、本当は洗って返したいんだけど…もうあんまり、この店には来れないと思うから――」
希「…そうやね」
穂乃果「だから、はい…」
穂乃果「今までありがとうございました…っ」ペコリ
希「うん…こちらこそ♪」ギュ…
穂乃果「あ、その…匂いとか嗅がないでね…?///」
希「…ことりちゃんに上げたらさぞ喜びそうやんな」クスクス
穂乃果「そ、そんなことしたら穂乃果怒るからねっ!!///」
希「…♪」クスクス
穂乃果「…♪」クスクス
希「穂乃果ちゃん、幸せにな…♪」
穂乃果「ありがとう…」
穂乃果「希ちゃんも、幸せを掴んでね…♪」
穂乃果「必ず――」
希「うん…っ♪」
穂乃果「じゃあねっ!!」
カランコロン…
希「…」
希「…」ハァ
希「――また一人ぼっち、かぁ」
ズズ…
希「ぬるいなぁ…」
希「…」
希「…///」クンクン
……。
■Scene19
ザァー…
希「…」
カランコロン
希「いらっしゃいませー♪」
希「…待ってたよ♪」ニコ
コト
希「え? なんで来るの分かったかって? 雨が降ったら必ず来てくれるやんー」
希「そんなの気にしてなかったって? 嘘やん…」
希「もうウチの中では雨の日の常連思ってるからなー」
希「これからも来てくれな困るんよ?」
希「え? そりゃ…売り上げ的な意味やで? 雨の日は売り上げ落ちるからな―」
希「…元からいないとか言うのやめてくれるー?」
ザァー…
希「――隣り行っても、ええ?」
希「まぁまぁ、いつものことやん? サボりもの同士ー♪」クス
希「今日はサボりじゃなくて休み? めっずらしー」
希「お仕事そう大変そうやったから、たまには…な♪」
希「…あれ? じゃあわざわざ足運んでくれたんー?」
希「ついでなぁー、ウチの優先度なんてそんなもんやんなー」
希「ありがと…♪」
ズズ…
希「少しは元気になったんじゃないかって? …んー、どうやろ?」
希「むしろ、今は空元気な気もするんやけど…」アハハ
希「前来たときの方が顔色悪かった? ウチ、そんなやったんか…」
希「あんなー? キミがこない間に結構色んなことがあったんよ」
希「すっごい元気な若い女の子がお店で働いてくれてたんよー?」
希「嘘やないって、住み込みでなぁー♪」
希「あ、ちょっと鼻伸びてるでー。若い女の子に反応したやろーやらしー」
ザァー
希「まぁ、ちょっと前に辞めちゃったからもういないんやけど…」
希「本当に台風みたいな子やったで…」
希「きっと、ウチが元気になったんはその子の影響があるかもなぁ」
希「うん、良い子やったよ♪」
希「にこっちが羨ましいわ…」
希「あ、なんでもないよーこっちの話♪」
ザァー…
希「…今まで、意識的にそんなに人とは深く関わらないようにしてきたんやけど」
希「何がきっかけで変わるかなんて、本当分からんもんやね…」
希「出会いってのは面白いなぁ…♪」
希「んー?」
希「勿論、キミとの出会いもそんな中の一つやと思うよ♪」ポフ
希「…ふふ。ごめん、ちょっと距離感近すぎたかもね」
ザァー…
希「キミは? 最近の調子はどうなん?」
希「あはは、元気なのはいいけど、あんまり調子に乗りすぎたらアカンよー?」
希「――きっとキミも、辛いことを隠して人と接するタイプやと思うから」
希「何かあったらウチに、話してくれていいんよ…?」
希「ウチにその資格があればやけど…」
希「…うん、考えといて♪」
ズズ…
希「どう? 美味しい?」
希「美味しいやろ? ふふ、最近なんか…自分の味に自信もてるようになってきたかもしれへんわ」
希「自惚れるなって? あっはは♪」
希「うん…それは大丈夫やよ」
希「自分に自惚れなんかしたら、怒られちゃうもん…」
希「キミにも――ね?」
ザァー…
希「最近、やたら時間の流れが早くなってる気するわ…」
希「なんでもかんでもあっという間…。学生時代が懐かしいわ」
希「え? ウチの学生時代に興味あるってー? やめやめ、ロクに面白くない話やよー?」
希「ウチなんか大概のネクラやったからなぁ。華々しい学園生活なんてこれっぽっちも送れてへん」
希「まぁそれでもウチが今こうしてられるのは、友人のおかげなんやけどなぁ」
希「友人? …ふふ、秘密ー。教えたらまた鼻伸ばしそうやし♪」
ザァー…
希「あの頃は、なんであんなにも時間の進みが遅かったんやろなぁ…」
希「ウチ自身が止めてたんかなぁ――」
希「え? 誰でもそういうもん?」
希「そっか…キミもだったんやね…うんうん」
希「必死に否定する姿は怪しいなぁー」クスクス
ザァー…
希「それにしても、最近の学生のトレンドは何なんやろなぁ?」
希「――スクールアイドル?」
希「へぇ、そんなのが流行ってるんか」
希「わ、すご…めっちゃ本格的に歌って踊ってるやん…」
希「こういうのに打ち込めてたら、もっと変わってたんやろうけどなぁ…」
希「アイドル始めようなんて子、中々いないよなぁ」
希「ウチ? 無理やってー、無理無理。後ろの方でサポートするのが関の山やで…」
サァー…
希「…雨、弱くなってきたかな?」
希「…そか、また強くならないうちに帰った方がええわな」
希「次はまた仕事サボって来るんかなぁ…?」
希「あはは、冗談やって♪」
希「…いつでも待っとるよ♪」
希「いつでもウチは、ここで待ってる――」
■Scene20
コポポ…
コト
希「…」
ズズ…
希「美味しい…」
希「うん…この味なら自信を持って出せるわ♪」
希「…」
希「短い時間やったけど、穂乃果ちゃんと一緒に色々やってたから…なのかなぁ」ズズ
希「…穂乃果ちゃんの作るコーヒーの味は壮絶やったけど」クス
希「今頃、にこっちと仲良くやってるんやろなぁ…」
穂乃果『のっぞみちゃーんっ!』
希「…」ハァ
希「こんな小さな喫茶店やのに、随分広く感じるなぁ――…」
カラン…コロン…
希「…」ハァ
花陽「…」
花陽「…あ、あの…」フルフル
希「へ?」クル
花陽「っ」ビク
希「え…い、いつの間に中に…? お客さん…?」
花陽「…っ」カタカタ
希「お姉さん…というより、お嬢ちゃん…?」
花陽「え、と…」フルフル
希「いやぁ、でもその胸の大っきさでお嬢ちゃんってこともないー…?」
花陽「はぅ…///」
希「でも最近の子の発育の良さは侮れんしなぁ…」
花陽「ふぇぇ…///」カァー
希「お姉さん、いくつくらいー?」
花陽「あぅ…///」
希「って、初対面の、しかも女の子に聞くことじゃないかぁー」アハハ
花陽「〜〜…」
希「まぁ年齢と胸のことは置いといて――…」
花陽「〜〜///」
希「結局、お姉さんお客さんなんやろー? 適当なとこ座り♪」
花陽「はわ…」
コト
希「どうぞー。コーヒーで良かった?」
花陽「〜〜…っ」コク
希「そか♪ それじゃ遠慮しないで飲んでなー♪」
花陽「…」チラ
希「んー? あー、なんかよくわからんまま出しちゃったから、それはウチのおごりでええよ♪」
花陽「〜〜っ…!」フルフル
希「気にせんでええって。とにかく飲んで飲んで♪」
花陽「〜〜…///」コク
ズズ…
花陽「…!」
希「…美味しい?」
花陽「〜〜」コクコク
希「そか♪」
花陽「…///」
希「…随分放心しとるみたいやけど、大丈夫かー…?」フリフリ
花陽「…………うん///」
希「お、初めてまともに喋ってくれたなー♪」
花陽「〜〜っ///」バタバタ
希「ありゃ」
花陽「〜〜///」ズズ
希「…なんだかヘンな子やなぁ」クス
花陽「…///」 希「お姉さん、名前はなんて言うん?」
花陽「あ…///」
花陽「ぇと…///」
花陽「〜〜///」
希「ふふ…ゆーっくりでええよ♪」
花陽「…///」
花陽「私の…なま…え…」
花陽「……はな…よ――…」
カランコロン!
凛「かーよちーん!?」
花陽「っ!?」ビク
凛「あーっ! やっぱりここにいたーっ!」
希「かよちん…? お姉さんの名前?」
花陽「ぁ…えと…えと…///」フルフル
凛「もー! 凛と一緒じゃなきゃ来ちゃダメって行ったでしょー!? かよちん、凛がいなきゃお話全然できないんだからぁー!」
花陽「ごめんね…」シュン
凛「ほらほら、帰るよーっ!」グイ
花陽「あぅあぅ…///」フルフル 凛「どうしたのー? 早く帰らないと怒られるよー!」
花陽「〜〜…っ」フルフル
凛「もー…そんなにここが気に入ったのー…?」
花陽「う、ん…」コク
凛「なんでこんなちっさいお店がいいの…? もっと他にもお店いっぱいあるよー」
花陽「この店が…いいの…」
凛「うーん…かよちんは本当に頑固だよ…」
花陽「凛ちゃん…だって…///」
希「あー、えーっと…凛ちゃん? でええんかな?」
凛「な、なにー? 店員さんどこで凛の名前知ったのー…? 怖いにゃあ…」
希「…自分で言っとるがな」
凛「へ…?」
花陽「〜〜///」コクコク
凛「あ…///」
凛「と、とと、とにかくかよちん帰るよっ! こんな寂れた場所にいたらかよちん、襲われちゃうにゃ!」グイ
花陽「あぅぅ〜〜///」バタバタ
希「ちょー……っと待ち―っ!」ガシ
凛「ふにゃ!?///」
花陽「〜〜っ!?///」
希「なーんか色々失礼なこと言うてるやんー…子猫ちゃん?」クスクス
凛「ひっ!?」ビクッ
希「そーいう子には伝統のお仕置き芸が待っとるんよぉ〜〜…?」
凛「ふぇ…!? り、凛…なにされるの…!?」
希「それはぁ〜…」
ワシワシスルヨーーーーー!!!!!
ニャーーーーーー!!!!!
凛「あぅぅ〜〜…」ピヨピヨ
花陽「あわわ…///」ガタガタ
希「う〜ん…ちょっと凛ちゃんはサイズ的にイマイチやなぁ…」ニギニギ
凛「こんなところにいたら間違いなく犯されるにゃぁ…」ピクピク
希「…サイズ的にはかよちん? の方が良さそうなんやけど…♪」チラ
花陽「っ!?///」ビク
凛「かよちん…やっぱりこんなお店で働いたら身も心もズタボロに犯されちゃうよ…! 逃げて…っ!!」
花陽「り…んちゃ…ん…!!///」ガタガタ
希「失礼やなぁキミら…って」
希「…働く?」
花陽「〜〜…っ」
凛「か、かよちんはこんな小さくてきったないお店でなんか働かせないんだからね! り、凛が悪の手から守るんだからぁ…!!」
花陽「…///」フルフル
希「ウチは悪の大王かなんかなん…?」ハァ
希「…とまぁ、それは置いといて――」
花陽「〜〜っ」ビク
希「ウチで働きたいん…?」
希「えっと、かよちん…でええのかな?」
花陽「あ…え…と…///」フルフル
凛「かよちん…ダメだよ…っ! 騙されないで…っ!!」
希「…凛ちゃんはとりあえず黙っておこか」ムギュ
凛「む〜〜〜///」ジタバタ
花陽「…///」
花陽「…」スーハー
花陽「…っ」
花陽「…ここ…で…」
花陽「はたら…かせて…ください…っ!!」
凛「かよちーーーーーーーーんッ!!!」
スパーン!!
凛「きゅう…」ピヨピヨ
……。
希に加えてかよちんもいる喫茶店だと!?
常連確定だから店の場所はよ
■Scene21
カランコロン
花陽「…っ!」ペコリ
コト
花陽「あぅ…っ///」サッ
コポポ…
コト
花陽「〜〜…っ///」ペコリ
希「すご…台詞らしい台詞一つも発してないのに成立しとるで…」
カランコロン…
花陽「…っ///」ハァー
希「…かよちん、お疲れ様♪」
花陽「あ…っ」ペコリ
希「案外接客自体はいけるやん? もっと不安な感じかと思っとったけど…」
花陽「…///」
希「本当はもうちょっとお客さんと会話できた方がええねんけどな」
花陽「あぅ…///」ペコペコ
希「まぁ…それはこれから頑張ろかーかよちん?」クス
花陽「あ…の…なまえ…はな…」
凛「かよちんに無理させちゃダメだよ! この人でなし!」
希「誰が人でなしやねん…」
凛「ふーん! かよちんにこんな汚い店のお仕事させようとしてること、凛はまだ許してないんだからね!」
希「別にウチがやらせてるんじゃなくて、かよちんたっての希望だったはずやけどなぁ」
凛「そんなことないーっ!」
花陽「あわわ…///」フルフル
希「…大体、自分やってノリノリで制服着てるやんか」
凛「う、うるさいにゃ! これはあのヘンタイ女に勝手に着せられただけだよっ!!///」
希「えーまたまたー、まんざらでもないクセにー」クスクス
凛「そんなことないー! 笑うなーっ!!///」
ー数時間前ー
カシャア!
花陽「あ、あぅ…///」クル
希「おおー」
凛「おおー…///」
花陽「///」カァー
希「かよちん、中々の大きさやからウチの昔の制服ぴったしやん♪」
凛「おっきいにゃあ…///」ジー
花陽「〜〜///」バタバタ 希「まぁしかし、タイミングがいいというかなんというか…穂乃果ちゃんの制服がこうやってバトンタッチされるとはなぁ」
凛「…///」ジー
希「…どんだけ食い入るように見つめとんねん」
花陽「///」カァー
凛「はっ!? かよちんに見惚れてる場合じゃなかった…!」
凛「ダメ! かよちんをこんなボロい喫茶店で働かせるのはダメなんだから!!」バッ
希「さっきから失礼なことばかり口走る子やんなぁ」
凛「しかもこんな…ろ、露出度が高い制服着せて…///」
凛「かよちんにえっちなことさせる気でしょ!!///」
花陽「あわわ…っ///」ブンブン
希「ウチの店をなんだと思っとるん…?」
凛「…かよちん、ダメだよ? 悪いこと言わないから帰ろ?」グイ
花陽「〜〜///」フルフル
希「…かよちんはやる気みたいやけど?」クス
花陽「ぅぅ…///」コク
凛「かよちん…」
凛「…っ」
凛「…こうなったら、凛も一緒に働くしかないにゃ…!」グッ!
希「なんでやねん」
花陽「ぉー…///」パチパチ 希「…と言ってもなー。制服、ウチのも入れて二着しかないんよね」
凛「だ、誰がそんなえっちな制服着るかー!///」
花陽「え…っち…///」カァー
希「まぁさすがにバランス考えたら、一人だけ私服ってのもなぁー…」チラ
凛「ううぅ…///」
ことり「穂乃果ちゃぁぁ〜〜ん!! ことりの作った衣装着てぇぇ〜〜〜☆」バーン
…カランコロン
花陽「っ!?」ビク
凛「な、なに…?」
ことり「…?」
ことり「あれぇ、穂乃果ちゃん…?」キョロキョロ
希「いらっしゃいーことりちゃん。穂乃果ちゃんならつい先日、寿退社してったでー」
ドサ
ことり「…………ことぶき……たいしゃ…」ジワ
ことり「そんなぁ…穂乃果ちゃぁぁん〜〜…!」ボロボロ
希「そんな泣くほどなんか…」
ことり「だ、だって! だってだってだよ! 穂乃果ちゃんは正に現代に舞い降りた天使だったんだよっ! 突然の寿退社なんて…! ことりにも黙ってそんな…! これじゃあ月に戻っていくかぐや姫の様だよぉ〜〜!!」メソメソ
希「どういう例えやねん…」
ことり「あ〜〜ん…ことりのお姫様は一体いずこにぃ〜〜!!」
凛「な、なんなのこの危ない人…」
花陽「あわわ…っ」アセアセ
ことり「…ん?」チラ
花陽「ひ…っ」ビク
希「あ…やば」
ことり「…」ジー
花陽「〜〜///」アワアワ
バッ
ことり「…お帰りなさい、私のかぐや♡」
花陽「!?!!?///」
希「浮気性すぎるやろ」
ことり「いや! だってこれはぁ…! このサイズでこの童顔! 反則だよぉ…#9825;」
希「あーそれは確かになぁ〜…」チラ
花陽「〜〜///」カァー
ことり「それにこの控えめな性格…まるで小さい頃の希ちゃんの再来のようだよ…っ!」
希「ウチ…?」チラ
花陽「あわわ…?///」フルフル
凛「ちょ、ちょっとこのヘンタイ女! かよちんに触れないで!」バッ
ことり「ヘンタイなんて失礼だよぉ!? 誰…!?」
ことり「って…」
凛「それ以上近付くと凛が許さないよ…っ!」
ことり「…」
ビターン!
ことり「天使が二人…ッ!!」ドバー
凛「にゃー!? 鼻血吹き出して倒れたにゃー!!」
ことり「にゃ、にゃー!? なにその猫真似!? かわ…可愛すぎるよぉ…!!///」ハァハァ
凛「き、キモいにゃ…!」 ことり「口悪いところもギャップ萌えで最高だよぉ…! 凛ちゃぁん…穂乃果ちゃんの為に作ったことりの衣装着て…? 着よ…♡」
凛「ふぇぇ…! い、いやだよ…! た、助けて…!」クル
花陽「〜〜っ」チラ
希「…まぁ、制服タダで手に入りそうやし調度いいんやない?」ニコ
凛「こ、この人でなしーーーっ!」
ことり「逃がさないよぉ〜〜…♡」
……。
凛「…こんなの犯罪だよっ! 許されないにゃ!!///」
希「まぁことりちゃんの横暴はともかくとしても、制服自体は気にいったんやろー?」キシシ
凛「そ、それは…。確かにカワイイ制服ではあると思うけど…」ヒラ
花陽「うん…っ」コクコク
凛「ぅぅ…でも凛にカワイイ制服は似合わないよ…///」
花陽「ううん…っ」フルフル
花陽「似合ってる…よ…?」
凛「本当…?」
ポン
希「可愛い、それは間違いないで?」クス
凛「…///」
花陽「…」ニコ
希「ま、そんな訳だから…かよちん、凛ちゃん、二人ともこれからよろしくなー♪」
花陽「…は…い…あ、あの、はな…」
凛「って! かよちん、この人でなしに上手く誤魔化されてるだけだよ! やっぱり考え直そう!?」
希「…そろそろ我慢の限界やん?」クスクス
ニャーーーーーー!!!
……。
カチャカチャ
凛「…なんで凛がこんなことを…」ブツブツ
希「こらー、無駄口叩くなー」
凛「ごごご、ごめんなさいにゃ…!」
希「よろしいー♪」
凛「はぁ…」
花陽「ご…ごめん、ね…」シュン
凛「あ…かよちんは悪くないよっ! あの人でなしに任せると危険だから、凛が守るために自分で残ってるだけだもん!」
花陽「…て、店長さんは…悪い人じゃない…よ…?」
凛「えー…そうー? なんかうさんくさい関西弁使ってるし、怪しさ全開だよー?」
花陽「そう…かなぁ…」アセアセ 凛「なんかおっぱいもやたら大っきいし…」
花陽「そ、それは…関係ない…気が…」
凛「こ、こんな制服まで…///」
凛「もしかよちんにえっちなことさせようとしたら許さないにゃ…!///」
花陽「…///」カァー
凛「…はぁ…凛も、もうちょっと欲しかったなぁ…」サワサワ
花陽「…凛ちゃんは…そのままで充分…だよ…♪」
希「二人とも…私語が多いんやないー…? お仕事サボってると…」ユラ
凛「にゃ!?///」ビク
花陽「〜〜!?///」ペコリペコリ
希「って、そんなに怯えなくても〜ただの冗談やよー?」ニギニギ
凛「じゃあその手をやめるにゃー!!///」
花陽「〜〜///」ドキドキ 希「ふふ…かよちんは凛ちゃんと一緒だと結構喋るんやね?」
花陽「あぅ…///」
凛「そうだよー! かよちんと凛は一番の友達なんだから! かよちんは凛がいないとダメなの!!」
花陽「り、凛ちゃん…っ」アワアワ
希「なるほどなぁ〜」
凛「それに…かよちんは…」チラ
希「?」
凛「な、なんでもない! それより! 片付け終わったよ! 次はどうするの人でなし!?」
希「…いい加減、人でなしって呼ぶのやめてくれるかなぁ」
凛「ふん! 凛の貞操の危機に助けてくれなかったヤツなんて、人でなしで充分だよーだ!」
花陽「て、ていそ…う…///」
希「全く…仮にも働かせてもらってるとこの責任者にその口の利き方とか…とんでもない子やで…なぁかよちん?」ポン
花陽「あ、あ…の…私…はな…///」
凛「あーっ! かよちんに気軽に触れないでよー! おっぱいお化け!」
希「…それはさすがに初めて言われたわ」
花陽「〜〜」アワアワ 凛「いいから! さっさと次の仕事ちょうだい! 早くかよちんと帰りたいの!!」
希「真面目なんだが不真面目なんだか分からん子やなー…」
花陽「…っ」
希「…まぁええわ、そしたら次は少しずつコーヒーの淹れ方勉強してもらおか?」
凛「え…いきなり? そんなこと教えてもらえるの…?」
希「同じ轍は踏まんようにしないとアカンからなー…」ハハハ
花陽「…?」
凛「へぇ〜…コーヒーかぁ…」
希「ん? なんや、興味あるん?」
凛「ふぇ!?///」
希「…」ニヤニヤ
希「な、ないない! さっさと終わらせて早く帰るよかよちん!!」スタスタ
花陽「〜〜」アワアワ
希「…♪」クス
コポポ…
花陽「…こう…かな…?」アセアセ
凛「あ、違うよかよちんー! さっきあの人でなしから教えてもらったのはー…」
花陽「そ、そっか…」
凛「少しずつでいいから、ゆっくりやろー♪」
花陽「…ありが…と…///」
凛「いいよー。り、凛も興味あったし…///」
花陽「…」クス
希「…」
ズズ…
希「うん――…」
希『こ、こうかな…?』
絵里『違うわよ希。お母さんから教えてもらったでしょ? ここはこうするとね――…」
希『そ、そっか…ごめんえりち…』
絵里『…少しずつでいいから、ゆっくりやりましょ?』
希『ありがと…///』
絵里『…ふふ』
絵里『それより、そのえりちって呼び方、何…?』
花陽「…♪」
凛「〜〜♪」
希「――そっくりやんね…♪」クス
……。
変態呼ばわりをものともしない強メンタルのことりちゃん無敵やな
■Scene22
カランコロン
凛「いらっしゃいませー♪」
コト
凛「ご注文はお決まりですかー?」
凛「…はーい、かしこまりました♪ かよちーん! コーヒーだにゃ!」
花陽「〜〜」コク
コポポ…
凛「お待たせしましたー! ごゆっくりにゃ♪」
希「…なんのかんの、一番やる気なんやない凛ちゃん?」
花陽「そう…ですね…」クス
凛「こらー! 人でなしー! かよちんと話してないで仕事するにゃー!」
希「はいはい」
凛「油断もスキもないんだからー…」
希「…まーったく、いつになったら人の名前呼んでくれんねん。なぁ、かよちん?」
花陽「あ、あの…はな…ょ…」
カランコロン
凛「あ、いらっしゃいませー♪」
花陽「…っ///」ペコリ
海未「…あ、あれ?」
希「海未ちゃん、いらっしゃーい♪」フリフリ
コト
凛「ご注文はお決まりですかー?」
海未「あ…コーヒーをお願いします」
凛「はーい、かしこまりました♪ かよちーん! コーヒーお願いにゃ♪」
花陽「〜〜っ」コク
海未「かよちん…?」チラ
コポポ…
凛「お客さん、どうしてこの喫茶店来たのー?」
海未「ど、どうして…?」アセアセ
凛「あの人で…じゃない、店長のお友達? コーヒー目当て?」
海未「あ、は、はい…。友達という程ではないかもしれませんが…コーヒーが目当てというのは当たっていますね」
凛「へぇ〜…人気あるんだね〜」
海未「そ、それより…」チラ
凛「あー、安心してくださいにゃ♪ かよちんもあの人でな…じゃない、店長から教わって、味もバッチリですから!」
海未「あ、いや、そうではなくて…」
凛「…っていうか、悪いこと言わないですから…こんな寂れた店の常連なんてやめた方が――…」ヒソヒソ
希「ほーう…また子猫ちゃんの悪口が聞こえてくるなー…?」ユラ
凛「にゃっ!?」ビク
希「凛ちゃんはお仕置きがだーい好きやもんねー…?」クス
凛「…お、お客様ごゆっくり――っ!!」タタタ…!
希「…逃げ足は本当に猫並やん」クス
海未「は、はぁ…」
希「ごめんなー騒がしくて。あの子ら二人、新しく雇った子達なんよー」
海未「二人…」
希「あ、今こんな客の少ない店で二人とか多すぎるとか考えたやろー? 失礼やなぁ」
海未「い、いえ、そのようなことは…///」フルフル
希「あはは、冗談やよー♪ 穂乃果ちゃんらと違って、海未ちゃんがそんな失礼なこと言う筈ないもんなー」
海未「あの、穂乃果さんは…?」
希「…ちょっと前に辞めていったよ。恋人と結婚するーって言ってな」
海未「あ…そうだったんですが…」 希「突然やってきたかと思えば、急にいなくなって…。本当、台風みたいな子やったわ」クス
海未「そうですね…。ですが、とても素敵な方でした…」
希「うん…。ウチも、元気いっぱいもらった♪」
海未「ふふ…」クス
海未「せめて一言ぐらい挨拶したかったのですが…」
希「…まぁ穂乃果ちゃんのことやから、またふらっとやってきてくれるかもしれん」
希「だからその時には…な♪」
海未「はい…」 希「海未ちゃんの方は、お仕事順調?」
海未「あ、はい…。順調に振り回されていると言いますか、なんと言いますか…///」
希「ことりちゃん指名の専属やもんな…同情するで…」
海未「い、いえ…自分で選択した道ですから、後悔は…ありませんよ…」ハハ
希「顔色悪いでー?」キシシ
海未「あ、そういえば制服が三着…またことりさんに作って頂いたんですか…?」
希「作ってもらったというかなんというか…」
希「まぁ当初の目的は穂乃果ちゃんだったみたいやけど…結果的にさっきの新しい子、凛ちゃんが犠牲になっとったわ」
海未「…ご愁傷様です」
コト
花陽「〜〜っ」ペコリ
海未「あ、ありがとうございます…」
花陽「…///」サササー
希「…あっちはあっちで、逃げるように去ってくなぁ」クス
海未「なんだか…対極のような性格をした子達ですね…」
希「そうかもなぁ…。穂乃果ちゃんとは違って、中々の問題児たちやで…」
海未「穂乃果さんも、ある意味では問題児ではあった気もしますが…」クス
希「お、言うようになったなぁ海未ちゃん♪」
海未「あ、い、いえ…///」カァー
ズズ…
海未「ぁ…」
希「美味しい?」
海未「はい…。凄く…美味しいです…」
希「お、そんなはっきり言ってもらえるなんて嬉しいなぁ♪」
海未「これ…あの子が…?」チラ
希「そうやでー。穂乃果ちゃんの淹れ方が余りにも散々だったから、あの子らにはウチが一から教えてるんよ」
海未「なるほど…」
希「いやいやしかし、こんな短い期間でこれだけ様になると教えた甲斐があったっていうもんやわぁ♪」ウンウン
海未「…希さんは凄いですね」 希「んー? 何がー?」
海未「…希さんのコーヒーの味を、こうも的確に教えることができるなんて…」
希「え…そうー…? そんな難しいことは教えとらんでー?」
海未「単純な味だけだったらともかく…。私自身なんていったらいいか分かりませんが、希さんの味を再現するのはそう簡単ではない筈です…」
希「…」チラ
花陽「〜〜っ」カチャカチャ
凛「あー、かよちんもう少し丁寧にやらなきゃダメだよー!」
海未「…えっと、かよちんさん…ですか? もしかしたら…あの子自身に希さんと同じ何かがあるのかもしれませんね…」
希「…そうなのかも、しれんなぁ」
海未「お二人は何故、ここで働くという話に…?」
希「あー…凛ちゃんの方は成り行きみたいなもんやけど…かよちんの方は…」
花陽『はたら…かせて…ください…っ!!』
希「あの目…」
希「あの力強い視線に、誰かと同じ意思の強さを感じたんよなぁ――…」
海未「…」クス
海未「希さんの顔…どんどん母親のようになって行きますね」
希「え? 海未ちゃんもおしおきされたいん?」ニギニギ
海未「あ、い、いえ! な、なんというかその…悪口ではないんですよ…?///」アワアワ
希「…この歳で母親なんて言われて喜ぶ方が少ないわ」
海未「すすす、すみません…///」ペコペコ
希「まぁでも…」
花陽「…っ」コポポ…
希「…」クス
希「お母さんも、こんな気持ちやったんかなぁ――…」
海未「…大事にしてあげてくださいね」ニコ
……。
カランコロン
凛「ありがとうございましたー♪」
希「…♪」フリフリ
凛「…」チラ
希「どうしたんー?」
凛「…あのお客さんとすっごい仲よさそうに話してたけど、いっつもあんな感じなの?」
希「んー…まぁお客さんとはみんな大体あんな感じやと思うけどー…」
凛「ふぅん…」
希「なんかあったん?」
凛「…べっつにー。ただ、人でなしの割に人気あるんだなぁーって…」
希「いい加減、人でなしって言うんやめよかー…?」
凛「べーだ!」 希「…はぁ」
希「とは言っても、お客さんは実際少ないし…なんでウチみたいなのに人気があるのかもよーわからんけどな」アハハ
希「まぁ、来てくれるお客さんが笑顔になって帰ってくれればそれでええけどな♪」
凛「…」
凛「…こういうところがかよちんは好きなのかなぁ――…」ボソ
希「なんか言った?」
凛「う、ううん! なんでも!」
凛「さぁーて、片付けするにゃー!! かよちーん!!」トテテ
希「…」クス
カランコロン
真姫「あっ…///」ビク
希「あ…ま、真姫ちゃん」
真姫「…///」
希「…///」
希「は、入ったら?」
真姫「え、ええ…そうするわ」
凛「いらっしゃいませー…って」
真姫「…あら?」
凛「あーーーーっ!! ヤブ医者―ーーー!! なんでここにーーーーー!!?」
真姫「や、ヤブ医者じゃないわよっ!!」
希「へ…二人とも面識あるん…?」
真姫「え、ええ…ちょっとね…」ハァ
凛「ちょっとどころじゃないよっ! なんでここにいるのヤブ医者!!」
希「真姫ちゃん、ヤブ医者やったん…?」チラ
真姫「ち、違うわよ! そんな訳ないでしょ!!///」 凛「ウソだよ! 全然かよちんのこと治してくれなかった癖に…この嘘つきヤブ医者!!」
真姫「だから…それは誤解って言ってるでしょ…!」
凛「誤解なんかじゃないっ!」フー!
真姫「…はぁ」
希「真姫ちゃん…かよちんと何かあったん…?」
真姫「かよちんって…」
真姫「あ…星空さんがここにいるってことは…」
花陽「…///」ヒョコ
真姫「…こんにちわ、小泉さん」
花陽「…っ///」ペコペコ
コト
希「…はい、真姫ちゃん」
真姫「ありがとう」
凛「…っ」フシャー
花陽「〜〜///」アセアセ
希「…遠くからめっちゃ威嚇しとるで凛ちゃん」
真姫「別にいつものことだから慣れてはいるけど…。彼女たちはなんで…?」
希「あー…あの子らがウチで働きたいって言ったから採用したんよ。調度穂乃果ちゃんが抜けちゃったあとやったしな」
真姫「…そう言えば、穂乃果さんはもういなくなったのね」
希「うん…。その…こ、恋人と結婚するからって辞めてったわ…」
真姫「…そ、そう///」
希「…///」
ズズ…
真姫「…!」
希「…あ、お、美味しい?」
真姫「…」
真姫「…美味しいわ」
真姫「ずっと…味わっていたい――…」
希「…///」
カタ…
真姫「…」チラ
凛「…っ」フー…!
花陽「〜〜っ」アワアワ
真姫「…あの二人、制服がとっても似合ってるわね」
希「あ、ああ、そうやね」
真姫「星空さんと一緒に仕事するのは大変そうではあるけど…」
希「あはは…。まぁ、凛ちゃんは色々と文句も多いけど…意外と頑張ってくれてるし、なにより可愛いやんな♪」
真姫「小泉さんもしっかりやれてるのかしら…?」
希「小泉さんって…ああ、かよちんのことかー。うん、頑張ってくれてるよ♪」 真姫「…彼女、あまり喋らないでしょ?」
希「あー…うん、そうやね。随分人見知りな子やなーと思ったけど…」
真姫「…」
希「なんかあるん…?」
真姫「…小泉さんね、私の患者なの」
希「あ…さっき、凛ちゃんが言ってた…? ヤブ医者ー! とか言ってたけど…」
真姫「それは否定させて貰うわ」
希「まぁ…凛ちゃんが口悪い子っていうのは身をもって体験してるから、誤解があるのは分かるけどな…」アハハ
真姫「…ある事故があったのよ」
希「事故?」
真姫「あまり詳しくは彼女のプライバシーの問題に関わるから言えないけど、小泉さん…その昔、学校でイジメを受けてたらしいの」
希「イジメ…」チラ
花陽「〜〜っ」ビク
真姫「…イジメる相手とのイザコザが原因で起きた事故でね。小泉さん、当時は本当に悲惨で…あと一歩手遅れだったらどうなっていたことか」
真姫「なんとか手術で一命を取り留めたのは良かったんだけど…後遺症が残ってしまったの」
希「もしかして、その後遺症が原因で…」
真姫「そう…。上手く言葉を紡げなくなってしまったの…」
希「…」 真姫「正確には違うらしいけど、自閉症の一種らしいわ。専門じゃないから、その辺は同期の精神科医に聞いただけの情報で分からないのだけど…」
希「自閉症って…」
真姫「自閉症とは言っても、小泉さんの場合は普通にコミュニケーションも取れるし、生活する分には何の問題もないのよ」
真姫「ただ…必要最低限の言葉しか喋れないという感じなの…」
希「…」
真姫「症状の原因が事故によるものなのか、イジメによるものなのかは分からない…。ただ、その一件から小泉さんは数年間、ずっとあんな感じのままなの…」
希「そうだったんや…」
花陽「〜〜…?」
真姫「…それからというもの、定期的に検診で彼女のことは見ているんだけど…一緒についてくる星空さんに目の敵にされちゃっててね」
希「あー…」 真姫「絶対に治してあげるからって、手術の前に言ったんだけど…後遺症が残ったことでずっとそれを言われ続けてるのよね」
凛「…っ」フー…
真姫「彼女にとって、小泉さんは一番の親友らしくて…小さい頃からずっと一緒だったらしいわ」
真姫「だから事故の直後は、本当に真っ青な顔をして小泉さんの傍についていたのを今でも覚えているわ…」
希「…」
真姫「以前と同じように接することができなくて、不安な気持ちは分かるのだけれど…」
希「まぁ、それ以上に凛ちゃんは…」
真姫「ええ、小泉さんのことが好きみたいだしね――…」
希「…///」
真姫「…///」
真姫「…まぁそれでも小泉さんは私に懐いてくれていたし、星空さんが来ないときはよく二人で話すこともあったわ」
希「へぇ…」
真姫「なんだかんだ、お互い人付き合い下手なところあるし…気が合ったのかもね」
希「確かになぁ」クス
真姫「…その時に、ここの喫茶店の話をしていたんだけど…それが彼女の興味を惹いたのかしら?」
希「病院で患者さんにそんなこと話してるん…? 恥ずかしいなぁ…」
真姫「こ、小泉さんは特別よ! 別に私は精神科医って訳じゃないし…///」
希「それやったらええけど…」
真姫「でもまさか…小泉さんがこの喫茶店で働くことになるとはね」
希「ウチもびっくりやったよ…急に働きたいって言うもんやから…」
真姫「…彼女、妙なところで行動力はあるのよね」 真姫「でも…そんな行動力も、星空さんがずっと傍についてることによって阻害されてしまってるの…」
希「…」
真姫「同期の精神科医の話では、余りサポートのしすぎは良くないと言われてるんだけど…星空さん、あの性格でしょう?」
希「あー…」チラ
凛「…っ」シャー
真姫「それで、こっちもどうしたらいいものか分からなくて困り果てて…」
真姫「外傷自体はとっくに完治してるし、あとは心の問題だけのはずなんだけど…一向に進展がなくてね」
真姫「――そんな時に、私もこの喫茶店を見つけたの」
希「…そうだったんや」
真姫「…病院内のことだし、さすがに他人に話すこともないと思ってたけれど」
真姫「結局、希には話すことになってしまったわね…」
希「…そう、やね」
真姫「なんだかこの喫茶店って…不思議よね」
希「不思議…?」
真姫「色んな人がこの喫茶店に集まって…様々な想いを残して、そして誰かが受け取っていく…」
真姫「…勿論、私もそんな中の一人」
希「…」
真姫「…」
真姫「…なんだか、この間の一言のせいで変な空気にさせてごめんなさい」
希「あ、いやいや! その…別に真姫ちゃんが悪いわけじゃ…///」
真姫「…希は優しいわね」クス
ズズ…
真姫「私にはこのコーヒーがあれば…今はそれで充分よ…」
希「真姫ちゃん…」
真姫「希、きっと小泉さんは…あなたならなんとかできるんじゃないかと思うわ」
希「なんとかって…」
真姫「だから…二人のことお願いね」
……。
カランコロン
希「…」フリフリ
凛「かよちんっ! あのヤブ医者が常連のような店なんてやっぱり危ないよ! 今すぐやめよう!」
花陽「…西木野…先生は…悪い人じゃない…よ…」アセアセ
凛「一番の悪人だよ! あの人でなしといい、悪い人が集まる喫茶店なんだよ!」
花陽「そ、そんなこと…ないよぉ…」アワアワ
希「…」ハァ
希「…♪」クス
ギニャーーーーーーーー!!!
……。
この凛ちゃんが周りの人遠ざけてるから一向に良くなってないね
■Scene23
カランコロン
凛「いらっしゃいませー♪」
花陽「…い…いら…しゃいま…せ…///」ペコ
コト
花陽「ご…ご注文は…お決まり…でしょ…うか…?///」アセアセ
凛「…はーい! かしこまりましたにゃ♪」
コポポ…
凛「かよちん、大丈夫? 手伝おうか?」
花陽「ううん…大丈夫だよ…♪ 凛ちゃんは…お客さんについてあげて…?」
凛「でもかよちん一人だと心配だし…あ、溢れちゃうよ!」
花陽「ぁ…!」アセアセ
凛「…危なかったぁ〜。ほら、凛も手伝うよー♪」
花陽「…」シュン
コト
凛「おまたせしましたー♪」
花陽「〜〜…っ///」ペコ
凛「…それではごゆっくりー♪」
花陽「…」ハァ
凛「かよちーん、一緒に掃除するにゃー♪」
花陽「う、ん…」トテテ
希「…」
カランコロン
凛「ありがとうございましたー♪」
花陽「〜〜まし、た…///」ペコ
凛「ふー、あんまお客さんこないけど、たまに来ると楽しいねー♪」
花陽「ぁ…う、うん…///」キョロキョロ
凛「さーってと、片付け…あ、そーだ、さっきコーヒー作ろうとしたら豆が無かったんだった…」
花陽「あ…お、奥にあったと思う…から…私、もってくるよ…?」
凛「かよちん一人で大丈夫ー…?」
花陽「平気…だよ…♪」
トコトコ…
凛「…心配しすぎ、かなぁ」
凛「…」
凛「…あれ? そう言えばあの人でなしは…?」キョロキョロ
希「ん〜? 凛ちゃん一人でサボリ〜? 感心せんなぁ〜?」ニギニギ
凛「ふにゃ!?///」バッ
凛「ま、またおっぱい揉む気!? このヘンタイ!! 凛、ちゃんとお仕事してたよ…!?///」ギュ
希「本当かなぁ〜…」キシシ
凛「本当だよっ!!///」 希「ま、冗談やけどな…♪ 凛ちゃんは熱心で真面目だし、ちゃんとやってるんやったらなんもせーへんよ」
凛「…人でなしの言うことなんて信用できない///」
希「本当に全く名前で呼んでくれないんやね、凛ちゃんは…」ハァ
凛「…だ、だって…そんな気軽に店長のことを…名前でなんて呼べないし…」
希「え? そんなこと気にしてたん?」
凛「そんなことって…」
希「普段から口開けば悪口しか言わん子やのに…案外可愛いとこあるやん♪」キシシ
凛「うぅ…うるさい! 笑うな人でなしーっ!!///」
希「その悪口も恥ずかしさ誤魔化す為だったりしてー…」
凛「…///」
希「あっはは! 冗談やってー、別に好きに呼んでくれてええよー♪」
凛「…ふ、ふん!」プイ 希「…かよちんとは随分仲良いみたいやけど、二人はどれぐらい長い付き合いなん?」
凛「え…? な、なに急に…。なんでそんなこと教えなくちゃいけないの…?」
希「んー…まぁなんとなく興味あるやん? 折角だから二人のこと教えてよー」
凛「…折角って…。凛たちのこと知ってどうする気…?」ジト
希「そんな隠すことでもないやろー、別に個人情報を悪用する訳でもなし?」
凛「ん〜〜…」
希「全然信用しとらん顔やな…。これでも一応職場の上司なんやけどなぁ」ハァ
希「お、そうだ。…それじゃあ改めて面接ってのはどうやー?」
凛「め、面接…?」 希「二人共ロクな話も聞かずにいきなり採用しちゃったからなー」
希「ウチ、こないだまで二人の名字も知らんかったやでー? 普通の店やったらありえんわなぁ…」クス
凛「な、なにそれ…答えなかったらどうなるの…?」
希「んー…クビ?」
凛「ふぇ!? ク、クビ…!? なんで!?」
希「や、そりゃー一企業として? いい加減な子に働かせる訳にはいかんしなぁー…」チラ
凛「そんな…」
凛「そ、それってもしかして…かよちんも…?」
希「あーうん、まぁ、そうやね…連帯責任みたいなんもあるかもなー(嘘)」
凛「ひ、人でなし! 悪魔ッ!!」
希「おーこわ! 遂に悪魔まで言われちゃったかー…」
希「でも、凛ちゃんがそういう暴言吐き続けるならすぐに二人ともクビにせなアカンかもなぁー…?」
凛「ぅぅ…ズルイよ…」
凛「…分かったよ…答えるよ…」
希「うんうん、いい子やね♪」クス 凛「…かよちんとは小学生の頃に知り合ったんだ」
希「それはまたえらく長い付き合いやねぇ…」
凛「そうだね…すっごく長いね…。いっつも一緒にいるから、あんまり気にしたことなかったけど…」
希「普通の友達同士でそれだけ一緒にいるって、珍しいなぁ」
凛「…かよちん、昔からあんな感じのおとなしい性格だったから、よくいじめっ子のターゲットにされてたんだよ…」
凛「それを凛が助けてあげたのが最初に仲良くなったきっかけ」
凛「で、それからも…何かあるたびにかよちんを助けてあげてたりしたから…自然とずっと一緒にいることが多かったんだ」
希「エライなぁ…。凛ちゃんは明るいし、元気な子だし、そういうイジメとかは無縁だったんかな?」
凛「ううん、そんなこともないよ…。凛は逆に女の子なのに男っぽいみたいな感じで、よく男の子からイジメられてたりしたし…」
希「そっかぁ…」
凛「でも、そうやって男の子に言われる度に、かよちんが凛のこと可愛いって言ってくれたりして…嬉しかったなぁ…♪」
希「…」クス 凛「…話すの、もうこれぐらいでいい…? 恥ずかしいんだけど…///」
希「えー…面接はまだまだ終わらへんよー?」キシシ
凛「うぅ…///」
希「んー、まぁなんとなく二人の子供の頃の関係性は分かったかなぁ♪」
凛「…この話、面接に必要あるの…?」ブツブツ
希「あるあるー、人のことを一から知るのは、仕事上ではだいーじなことやでー?(大嘘)」ウンウン
凛「ホントー…?」ジー
希「まぁでも子供の頃はともかくとして…なんで今でもかよちんとずっと一緒なん?」
凛「なんでって…一緒にいちゃいけない?」
希「そりゃ仲良きことは美しきかなやけど…。この店に来る時も本当は一緒のつもりだったみたいなこと言ってたし…いくら何でもベタベタ過ぎるんやない?」
凛「それは…」
希「それとも、まだイジメみたいなのはあったりするんかな…?」
凛「まさかー! 学校なんて下らない場所卒業しちゃったし、そんなのはもうないよー!」
凛「それに…まだかよちんに近寄ってくるつもりなら、凛が許さないよ…っ」
希「…」 希「…それじゃあ尚更、今でもずっと一緒にいる必要はないんちゃう…?」
凛「…」
希「もしかして――事故が原因だったりするんやない…?」
凛「…あのヤブ医者から何聞いたの」ギロ
希「…かよちんの病気のことを、少しな」
凛「…っ」ギリ…
希「…」
凛「…そうだよ」
凛「…イジメられてた時の事故が原因で、かよちんは上手く喋れなくなっちゃったんだよ…」
凛「昔は…あんなに沢山凛に語りかけてくれたのに…」
凛「沢山可愛いって言ってくれたのに…」
凛「手術のあと…病室に行ったら…全然声が聞けなくて…!」
凛「凛…もう、どうしていいかわからなくて…」
凛「凛が…凛が、助けてあげられなかったから…」
凛「だから…ずっとかよちんの傍にいてあげなきゃって…!」
凛「そう思ったんだよ…」
希「…」
希「真姫ちゃんに少し話聞いただけやけど…当時は悲惨だったらしいな…」
凛「そうだよ…!」
凛「本当に…ひどかったんだよ…! かよちん…死んじゃうかもしれないって思ったんだよ…!」
凛「かよちんが死んじゃったら…凛は…っ!」
凛「うぅ…っ!」
凛「…あのヤブ医者は、かよちんのこと絶対に助けてあげるって言ったクセに…!」
凛「全然治してくれなくて…っ!」
希「真姫ちゃんは関係ないんやない…?」
凛「関係なくなんかない!!」
凛「関係なくなんか…っ!!」
希「だって、真姫ちゃんはかよちんのケガ自体は治してくれたんやろ…?」
凛「そう…だけど…っ」
希「かよちんの病気の原因は別のところにある――…」
希「それが何なのかは分からんって、真姫ちゃんも言ってたけど…」
希「そのことで真姫ちゃんを恨むのは、違うんやない…?」
凛「…」グス
凛「…そんなの、分かってるよ…」
凛「あの先生が悪くないことぐらい…バカな凛にだって分かるよ…」
希「…自分のことバカなんて言うんやないよ」
凛「…だって、本当はかよちん――…!」
凛「凛が助けてあげられなかったから…」
凛「…いつも一緒にいるって約束してたのに、助けられなかったバカな凛のせいだから…!」
凛「だからかよちん…なんにも喋れなくなっちゃったんだよ…!」
希「…」ハァ
ポン
希「…それは違うで」
凛「ふぇ…?」
希「もしかしたらそうかもしれへん――…」
希「けど、それが本当かどうかなんて確かめようがないやろ?」
凛「それは…そうだけど…でも…っ!」
希「まぁ…かよちんの病気がひょっこり出てきて、凛ちゃんが悪いーって言ってくれるんやったら別だけどー?」クスクス
凛「ふ、ふざけないでよ…っ!」キッ
希「ふふ…ごめん」ナデナデ
希「…でも、そういうことやろ? 誰かがこうです! って言わない限り、かよちんの病気の原因はだーれにも分からないんよ」
凛「…」 希「それにな、こういうのは別に誰が悪いーとか、無いんやって」
希「物事に悪人が必ずいるなんて決めてかかったら、みーんな心がギスギスしてまうでー?」
凛「…だって」
希「かよちんがこうなってしまった事実はもう変えられないんやから、それはもう運命だと思うしか無い」
凛「運命って…そんな無責任なこと…!!」
希「しょうがないんよ…」
希「だって――そうでも思わなきゃ辛いやんか…」
凛「…?」
希「ふふ…凛ちゃんは人に対して当たりが強いからな、もっと気楽に考えなアカンよ?」
凛「そんなこと…言われても…」
希「かよちんとずっと一緒にいるってのも、自分が全部悪いーみたいな責任感からやろー?」
凛「それの…何が悪いの…?」
希「ぜーんぶ悪い」ビシ
凛「いたっ! なにするにゃー!!」
希「凛ちゃん…責任感でずっと一緒にいても、相手は嬉しいとは思わんよー?」
凛「…嬉しい嬉しくないの問題じゃ…」
希「あのな? もっと素直で感情でええんやでー…?」
凛「素直…?」
希「凛ちゃん――かよちんのこと好きやろ?」
凜「ふぇ―――!?///」ズザザー
希「ふふ…図星やね♪」
凜「そそそ、そんなことない…よよよ…!!///」ブンブン
希「わっかりやすいなぁー…」クスクス
凛「///」カァー
希「まぁ…そのことは別にええんよ、隠すことは無い♪」
希「それだけ昔から一緒にいて、お互いに支えあって生きてるなら…それも必然ってもんやと思うし」
凜「ぅぅ…///」 希「ただ――今のままやとアカン」
凛「なんで…?」
希「…責任という盾を背負って相手に押し付けるのは、きっとお互いにいいことなんてないんよ」
凛「意味が…わからないよ…」
希「…」フゥ
希「…もっと素直になれってことだよ♪」ドン
……。
本当はこのSceneもう少し続くんだけど、ちょっと間に合わないのでここで一旦切ります…申し訳ない
あと最近のは見返したら結構誤字脱字あったりして、その辺も申し訳ないです 更新乙です
毎日更新してくれるだけでもありがたいんで無理せずやってくださいな
■Scene23.5
コポポ…
希「…」クス
希「――素直に、やって」
希「まるで自分に言い聞かせてるみたいやなぁ…」クス
トテテ…
花陽「よい、しょ…」ギュ
花陽「あ…あの…奥から豆を…持って…きたんですけど…」
希「ああ、ごくろーさん♪ そこに置いといてなー」
花陽「は、はい…」ドサ
花陽「…?」キョロキョロ
希「…凜ちゃん探してるん?」クス
花陽「ぁ…え、と…///」
希「凜ちゃんなら、仕事サボってた罰としてお仕置きの刑に処したからしばらく帰ってこんで〜…」ニギニギ
花陽「ふぇ…っ///」アセアセ
希「…なーんて、ウソや♪」
希「…本当は買い出し頼んでるだけやから、安心しー♪」
花陽「〜〜…」ホッ
コト
希「これ、飲んでええで♪」
花陽「…ありがとう…ござい…ます///」ペコリ
希「…かよちん、お仕事楽しい?」
花陽「ぁ…は、い…」コク
希「そか♪」
花陽「…?」チラ
ズズ…
花陽「〜〜…///」フゥ
希「かよちんはいつも、えらい美味しそうに飲んでくれるなぁ…♪」
花陽「…て、店長…さんのコーヒー…は美味しい…です、から…///」
希「ふふ…ありがとなー♪ でも、かよちんの淹れるコーヒーも中々やでー?」
花陽「そ、そんな…///」
希「教え方がよかったんかなぁー? ウチの教え方も大したもんやで…」ウンウン
花陽「…はい…♪」クス 希「…かよちん、だんだん喋ってくれるようになってきてくれて嬉しいわ♪」
花陽「ぇ…///」
希「ウチと仲良くなってくれたーって考えてもええんかな?」
花陽「ぁ…ぅ…///」
希「凛ちゃんとはいっつも沢山喋ってるしなー? ウチ、ちょっと寂しかったんやで…?」
花陽「ぁ…そ、それ…は…///」アワアワ
希「こうやって話してくれてるってことは、凛ちゃんと同じぐらい仲良しってことやんー?」ギュー
花陽「は、はわわ…///」カァー
希「…なーんて、嘘やよ♪ さすがにそれぐらいで凛ちゃんと同じにはならんわなぁー」クス
花陽「そ、それは…」アセアセ 希「凛ちゃんとは子供の頃からずっと仲良しなんやろー?」
花陽「は、はい…」
希「凛ちゃんから色々聞いたでー? かよちんは子供の頃から可愛かったーとかな♪」
花陽「あ…あぅ…り、凛ちゃんが…言ったん…ですか…?///」
希「せやでー、頼みもしないのにポロポロ喋ってたでー?」クスクス
花陽「ぅぅ…?///」
希「…ふふ、凛ちゃんはかよちんのこと大好きみたいやからなぁ…♪」
花陽「///」カァー 希「かよちんの方は、どうやー?」
花陽「ふぇ…?///」
希「かよちんは凛ちゃんのこと、好き?」
花陽「〜〜…っ///」ボン
希「あはは、かよちんも顔真っ赤やでー? 言葉にしなくても分かってまうわ」クスクス
花陽「///」
希「…ずーっと一緒やったんやもんな。その気持ちは分かるで…」
花陽「…///」 花陽「凛ちゃん…のことは…好き…です///」
花陽「けど…」
花陽「私…なんかが…好きになって…いいのかな…って思ってしまって…」
希「…なんで、そう思うん?」
花陽「こんな…性格です…し…」
花陽「上手く…喋れ…ませんし…」
花陽「…それに…いつも…迷惑かけてます…から…」
希「でもそれは…かよちんのせいじゃないやろ?」
花陽「…っ」ビク
花陽「…えっ…と…」チラ
希「病気のこと、聞いたで」
花陽「ぁ…」
希「あ、ちなみにこの話は真姫ちゃんから聞いたもんやから安心してな。凛ちゃんからは何も聞いてへんよ?」
花陽「…西木野先生…ですか…?」
希「うん…この間店に来てくれた時に、ちょっとな」
花陽「そう…だったん…ですね…」
希「病気のこととか、事故のこととか…色々聞いた」
花陽「…」
花陽「…ごめんなさい」ペコリ
花陽「今まで…病気のこと…黙ってて…」
希「別に、それはええよー。かよちん、頑張って働いてくれてるしな♪」
花陽「ありがとう…ございます…」
花陽「…」
花陽「私は…元からこんな…引っ込み思案な性格だったのに…」
花陽「突然…ヘンな病気に…かかっちゃって…更に言葉が…上手く喋れなくて…」
花陽「凛ちゃんに…すごい迷惑を…かけてるん…です…」
花陽「この店で…働いてることだって…私の我儘に…巻き込んでしまった…形ですし…」
希「我儘…?」 花陽「このお店を…西木野先生に教えて…もらって…」
希「あー…そう言えば、真姫ちゃんそんなこと言ってたなぁ…」
花陽「…とっても…素敵な店員さんがいる喫茶店…って、西木野先生が…言っていました…」
希「へ、へぇ…素敵な店員…ね…///」
花陽「…西木野先生が…このお店のことを話す時は…すごい…優しい目をしているんです…」
花陽「だから…私も…興味が湧いて…」
花陽「西木野先生は…とっても優しくて…手術の後も…沢山お話してくれたし…いつでも私の味方をしてくれたから…」
希「///」
花陽「…」
花陽「…私は、それまで…ずっと凛ちゃんに…助けてもらってばかりでした…」
花陽「一人じゃなんにもできない…弱い人間…でした…」
花陽「…だから…凛ちゃんに迷惑を…かけないように…」
花陽「一人で…生きていけるんだっていうことを…見せるために…」
花陽「この店で…働いてみよう!…って、思ったん…です…」
花陽「…でも…お店の前に来ても…何度も…逃げ帰ったりして…」
花陽「中々…一歩を踏み出すことが…できませんでした…」
花陽「結局…凛ちゃんを…巻き込む形になっちゃいましたし…」
花陽「…」
花陽「なんで…私は…こんなに弱い…のかな…」
花陽「こんな弱い子に…凛ちゃんを好きになる資格なんて…」グス
ポン
花陽「ふぇ…?///」
希「かよちんは…全然弱くないよ」ナデナデ
花陽「…?///」
希「ウチなんかに比べれば…全然…弱くなんかない――…」
花陽「…店長…さん…?」
希「…そこまで凛ちゃんのこと考えてるのに、好きになる資格がないなんて…ある訳ないやろ?」クス
花陽「で、でも…」
希「…」ハァ
希「なぁ…かよちんが働きたいって言った時のこと、覚えてるー?」
花陽「え…と…」
花陽『はたら…かせて…ください…っ!!』
花陽「…///」カァー
希「あの時の目…ウチは忘れられん」
希「あんな目で見つめられたの、穂乃果ちゃん以外にいなかったからな…」
花陽「穂乃果…ちゃん…?」 希「…かよちんが来てる制服の前任者や? かよちんと違って元気だけが取り柄のような子やったわ」
花陽「そうなん…ですか…」
希「その穂乃果ちゃんが言ってたんよ。人それぞれ、いろんな強さを持ってるってなー」
希「ウチもあの子には色々教えてもらったわ…♪」
花陽「…」
希「だから、かよちんにもな? かよちんの強さがある」
花陽「私の…強さ…?」
希「せやでー? そんな大変な病気にかかってもなお、相手のことを思いやりながら自分を震え立たせて…ウチの門を叩いた…」
希「そんなん、普通にできることやないと思うよ?」
花陽「そう…なんでしょうか…」
希「少なくとも――ウチはできんかった」
花陽「店長…さんが…?」
希「さらに言わせて貰えば…かよちんと違って病気にかかってないから、もっと弱々、ダメダメやんね」クス
花陽「そ、そんな…」
希「大体花陽ちゃん、病気に打ち勝つ力みたいなんあると思うでー?」
花陽「ぇ…?」
希「真姫ちゃんも言ってたけど、自閉症みたいなんは心の持ちよう次第やろ?」
花陽「は、はい…」
希「かよちん…今こうやって、ウチにいろんな恥ずかしい想いを告白してくれたりしてるやん? 十分強い心持っとるで」キシシ
花陽「ふぇ…?」 希「え、気付いてなかったん? さっきから熱ーい愛の告白から懺悔まで、この耳で色々聞かせてもらったでー?」
花陽「そ…そんな…私…? ふぇ…?///」カァー
希「無意識で言ってたん…? 大した器やんな…」
花陽「///」ボン
希「…ほんっと、ウチとは大違いや」
希「ウチとそっくり…?」
希「ウチが一番の大バカもんやで――…」
花陽「///」ジュー
希「かよちん?」
花陽「ぴゃい!?///」ビク
希「…とにかくな、あんまり自分に自信がないとか資格ないとか、そんなんは考えないでええねん」
花陽「…え…と…///」
希「かよちんは凛ちゃんのこと…好きなんやろ?」
花陽「…///」
花陽「す…好き…///」
花陽「です…けど…」
花陽「…でも…凛ちゃんの…迷惑になってる…なら…」
希「あーもう、面倒くさいなー!」
花陽「め、面倒…」アセアセ
希「面倒やー、本当に面倒!」
花陽「あぅ…///」
希「そんな面倒な事考えずに…かよちんの大胆さをもっと、素直に表現すればいいんよ」
花陽「す、素直…に…?///」
希「凛ちゃん大好き! 抱いて!! ぐらい直球でええんやない?」
花陽「あわわわわわわ!!!!//////」ジュー
希「…まぁそれは別の意味で精神がもたんか…。穂乃果ちゃんじゃないんやし」クス
カランコロン
凛「ただいまー…」
花陽「!!?///」ビクゥ!
希「お、調度いいタイミングで帰ってきたやん♪」
凛「買い出し行ってきたよー…。もー、なんで凛がこんなこと…」ブツブツ
凛「って」チラ
花陽「///」カァー
凛「かよちん!?」バッ
凛「ど、どうしたの顔真っ赤だよ!? 大丈夫!?」バッ
花陽「///」ジュー
凛「にゃー!! どんどん熱くなってくよー!? きゅ、救急車!?」オロオロ
希「あっはは♪ 別に心配せんでもええよ、自分の発言に恥ずかしがってるだけなんやから♪」
凛「…っ! かよちんになんかしたの…ッ!?」キッ
希「ウチはなんもしてへんよー♪」
凛「…かよちんに何かしたら…許さないよ…ッ!!」
花陽「ぁ…だ、だめだよ…店長さんは…何もしてない…から…///」ギュ
凛「か、かよちん…」 希「…凛ちゃんはかよちんのことになると怖いなぁ。相当かよちんのこと、す――…」
凛「にゃ!? ちょ、ちょっと何言ってるにゃ!!///」カァー
花陽「り、凛ちゃんも…顔が真っ赤…だよ…?」
凛「あわわわ…///」バタバタ
希「…♪」キシシ
凛「…絶対殺す…ッ!///」キッ
花陽「り、凛ちゃん…」アセアセ 凛「…やっぱりこんなとこ辞めようかよちん? あんな人でなしのおっぱい悪魔のところで働いてたら心が病んじゃうよ…」
花陽「〜〜…っ」チラ
希「散々言うてくれるやん…」
凛「凛ならどこでもかよちんについていってあげるし、助けてあげられるから…!」
凛「凛はいつだってかよちんの味方だよ…!」
凛「だから…!」グイ
花陽「〜〜っ」ギュ
凛「かよ…ちん…?」
花陽「…凛…ちゃん…」
花陽「…」
花陽「凛ちゃんは…私のこと…迷惑じゃない…?」
凛「め、迷惑って…急にどうしたの…?」
花陽「いつも…一緒にいてもらって…病気なんかしてる…私の手助けなんかして…」
花陽「邪魔だと…思ったこと…ない…?」
凛「な、なんで!? 邪魔なんて…そんなこと思うわけ無いじゃん…!」
花陽「本当…?」
凛「…ッ! あいつになんか言われたの…ッ!?」キッ
花陽「…っ、店長さん…は…関係…ないよ…っ」ギュ
凛「…っ」 花陽「…ごめんね…いつも…こんな感じで…心配ばかりかけちゃって…」
凛「そんな…こと…!」
凛「だって…それは…凛のせいだし…!」
凛「凛が…あの時助けてあげられなかったから…! こんなことに…っ!!」
花陽「ううん…違うよ…凛ちゃんのせいじゃ…ないよ…?」
凛「凛のせいだよ…全部…凛が悪いんだよ…っ!」
花陽「…そんなこと…ないから…」
花陽「私が…一人で何もできなかったから…迷惑かけちゃってるし…」
凛「迷惑だなんて思ってないよ…!」
花陽「でも…」
希「…だぁ〜かぁ〜らぁ〜」ユラ
花陽「ひっ!?」
凛「にゃっ!?」
ダブルワシワシスペシャルーーーーーー!!!!
ピャァーーーーーーーーーーーー!!!!
フニャーーーーーーーーーーーーー!!!!
希「…二人とも面倒くさいって言ってるやん?」パンパン
花陽「ふぇぇ…///」ピヨピヨ
凛「にゃぁぁ…///」ピヨピヨ
希「さっきまでのウチとのやり取り、全無視やんか。何のために二人バラバラにさせたと思ってんねん」
凛「そ、そんなこと…知らないにゃ…」クルクル
希「――まぁ…長い年月かけて擦れ違った想いなんやから、そう簡単にいかんやろうけど…」
花陽「…///」
希「――直球で聞くでー?」
凛「…っ///」
花陽「〜〜っ///」
希「凛ちゃん、かよちんのこと好き?」
凛「にゃにゃぁぁぁ!!? そ、そそそそんなこと…!!///」
希「じゃあかよちんは? 凛ちゃんのこと好き――?」
凛「ちょ、ちょっとなんてこと聞いてるの!? この人でな――…!」
花陽「…好き///」
凛「ッ!?///」ボン
希「…♪」ハァ
花陽「…私は…こんな性格だし…病気になっちゃってるし…迷惑も…たくさんかけてる…」
花陽「…けど」
花陽「それでも…いつでも…傍で助けてくれる…凛ちゃんが…好き…///」
凛「///」カァー
花陽「…こんな私でも…ずっと傍に…」
花陽「いてくれますか…?」
凛「…///」
凛「凛なんかが…ずっと傍にいても…いいの…?」
花陽「…! う、うん…!」
凛「…かよちんのこと…助けてあげられなかったし…きっと、かよちんは凛のこと…恨んでるだろうなって…」
凛「一緒にいる凛のこと…キライなのかなって…思ってた…」
花陽「そんなこと…あるわけないよ…!」
凛「ほんと…?」
花陽「ほんと…だよ…!」
凛「…」
凛「凛は…」
凛「かよちんの為に…病気が治るまで…」
凛「例え死ぬまで病気が治らなくても…凛が傍で…償わなければいけないと思ってた…」
凛「だから…凛は…かよちんのこと…好きになっちゃいけないと…思ってた…」
凛「けど…」
凛「…凛は…かよちんのこと…好きでも…いいの…?」
花陽「うん…! 大丈夫…だよ…!」
凛「本当に…? 本当にかよちんのこと…」
花陽「好きだよ…! 凛ちゃん…!」
凛「…」
凛「〜〜っ」グス
凛「…うわぁぁぁぁぁぁぁん!! かよち〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」ボロボロ
花陽「凛ちゃん…っ!!」ポロ…
凛「ずっと昔からかよちんのこと…好きだったよぉぉ…っ!!」ボロボロ
花陽「…私も…っ」ボロボロ
希「…」グス
希「まーったく…最初から答えなんか出とるやん…」
希「なんで好きって言えへんの…」
希「本当――どうしようもないで…」
……。
■Scene24
カランコロン
花陽「い、いらっしゃい…ませ…っ///」ペコリ
コト
花陽「…ご、ご注文は…お決まりでしょう…か…///」
花陽「か、かしこまりました…」ペコ
花陽「凛ちゃん…! コーヒーを…お願い…っ」
凛「はーい! お客さん少々おまちくださいにゃー!」
ゴツン
凛「ふにゃ!?」
希「こーら、奥からそんな大声だすんやないー。お客さんに迷惑やろー?」
凛「も、もうー!! すぐ頭ぶたないでよのぞみちゃん…!」
希「あれー? 頭やなくてその小ぶりなおっぱいを揉んであげた方がよかったん〜…?」ニギニギ
凛「ひっ…! それだけは…///」バッ
希「えー、つまらんなぁー」
凛「つまらなくないよ! この人でなしっ!!///」
花陽「…♪」クスクス
カランコロン
花陽「ありがとう…ございました…っ///」ペコ
凛「また来てねーっ♪」ブンブン
花陽「はぁー…」
凛「かよちん、お疲れ様ー♪」
花陽「凛ちゃんも…お疲れ様…♪」
凛「かよちん、だんだん接客なれてきたんじゃないー? 今のお客さん、絶対かよちんのこと気に入ってたよー♪」
花陽「そそそ、そんなこと、ないと思う…けど…///」
凛「かよちん可愛いもんー♪ のぞみちゃんなんかより人気あるよー!」
花陽「そ、そんな…///」
凛「…でも、かよちんに手を出したら凛が許さないけど…ッ」キッ
ゴツン
凛「いたっ!」
希「だーから、物騒なこと口走るんやないでー?」
凛「ふにゃあ…痛いにゃ〜…」
花陽「あ…希さん…お疲れ様です…」ペコ
希「二人ともお疲れ様ー♪」
凛「もう…すぐ希ちゃんはぶつんだからー…」サスサス
希「ワシワシしないだけマシだと思っとき」
凛「うー…」
花陽「…♪」クス 希「それにしても二人のおかげで、なんか最近お客増えてきた気がするわ」
花陽「本当…ですか…?」
希「本当やでー♪ 今日はお客さん、四人も来てくれたからなー!」バーン
凛「…それ、本当に増えてるの?」ジト
希「…」ニギニギ
凛「うわーい! すごい増えてるにゃー!!」ピョーン
希「うんうん♪」
凛「…はぁ」
希「さっきのお客さんも言うとったけど、かよちんの人気が強いのかもなぁ」
花陽「わ、私…!?///」アセアセ
凛「ほらぁー! やっぱりかよちん、人気あるんだよー!」
花陽「あわあわ…///」カァー
希「そうそう、その真っ赤になったところが可愛いって言うとったでー…?」キシシ
花陽「///」ボン
凛「にゃー!? かよちんの顔が爆発したー!!」
希「あっはは♪ かよちんは可愛ええなぁー♪」
凛「笑ってる場合じゃないよ!!」アセアセ 希「あーそうそう、あと凛ちゃんのことも褒めとったでー?」
凛「ぇ…?」
凛「…凛のこと…も…?」
希「ウチのコーヒーには適わないけど、丁寧で優しい味のするコーヒーを淹れてくれる子ー…やってさ♪」
凛「ぁ…そう…なんだ…」
希「…だから、二人のおかげやんな♪」
凛「…///」
花陽「〜〜///」グルグル
……。
カチャカチャ
凛「…よいしょ…よいしょ…」
凛「…これでよし…っと、片付けおーわり!」
凛「そしたら次は…」
凛「のっぞみちゃーん!」
希「んー、なんやー?」
凛「お片付け終わったから、コーヒー淹れる練習していいー!?」
希「えー…? それもちゃんと片付けるんやよー?」
凛「もちろんだよーっ!」
希「それやったらええよ、好きにしてええで♪」
凛「ありがとうのぞみちゃんー♪」
希「…ふぅ」
カタ…
花陽「…あ、希さん…。掃除…終わりました」
希「お、ごくろーさん♪ 休憩入ってええでー?」
花陽「はい…♪」
花陽「…凛ちゃん…?」キョロキョロ
希「…凛ちゃんなら向こうで練習してるでー?」クス
凛「むむむ…」
花陽「…♪」
希「…凛ちゃん、なんだかんだここで働くの、好きなんやろうなぁ…」
花陽「…そう…ですね」
希「冗談でクビって言ったときは、本当に不安げに聞き返してくるもんやから…さすがに心が痛んだわ…」
花陽「本当…ですか…?」ジト
希「もっちろん嘘やわー…♪ あの時の凛ちゃんの表情、中々にそそるもんがあったで…?」
花陽「…もう…凛ちゃんをあまり…苛めないであげてくださいね…?」
希「ふふ…かよちんも中々言うようになったやん?」
花陽「あぅ…///」 希「全く、かよちんも凛ちゃんのことになると怖いんやから…」
花陽「…あ、あの…希さん…。名前…///」モジモジ
希「名前…?」
花陽「///」コク
希「…あー…そっかそっか。花陽ちゃん…ね♪」
花陽「はい…♪」
希「ウチ的にはもう慣れたし、かよちんのままの方がええんやけどなー」
花陽「…それでも…いいんですけど…」
花陽「でも…かよちんっていう呼び方は…凛ちゃんだけのものだったから…///」
希「おーおー、えらいノロケ発言してくれるなぁー」ニヤニヤ
花陽「あぅ…///」カァー
希「わかったで、花陽ちゃん♪」
花陽「…ありがとう…ございます…♪」ニコ
凛「にゃーっ! 苦いにゃーっ!」ベー
凛「…あれー? おっかしいなぁー…。よーし、もう一回やるよ!」
希「…頑張ってるなぁ」クス
花陽「…そうですね…」クスクス
希「本当、口調に反して可愛い子やで…♪」
花陽「そうでも…ないですよ…?」
希「お?」
花陽「ふふ…あの凛ちゃんの…にゃーって口癖…あるじゃないですか…?」
希「あー、たまに言うとるなぁ」
花陽「あれ…昔、子供の頃に…男の子みたいってからかわれてから…自分でなんとか可愛く見せようと考えて生まれたのが、あの猫真似なんです」
希「へぇ…。ちょっとズレてるのが、凛ちゃんらしいというかなんというか…」クスクス
花陽「可愛いですよね…♪」クスクス 花陽「…あんなに可愛いのに…凛ちゃんも…昔はいろいろ言われてて…」
希「…」
花陽「私なんかに…構ってる余裕だって…なかったかもしれないのに…」
希「花陽ちゃん…」
花陽「…」
花陽「ふふ♪ 大丈夫ですよ…」
花陽「もう一人で、背負い込んだりは…しませんから…」
希「…そか♪」
花陽「…でも、だからこそ…凛ちゃんには…自分の好きなことを…たくさんして貰いたいです…」
花陽「私なんか…気にしないで…自由に…伸び伸びと…」
花陽「それこそ、猫のように――」
希「…いくら好きにやってたって、最後は花陽ちゃんのとこに戻ってくるわ」
希「凛ちゃん…花陽ちゃんのことが大好きやからな♪」
花陽「…本当に…猫みたいですね――?」
希「…♪」クスクス
花陽「♪」クスクス
凛「あーっ! 二人して何笑ってるのー!? もしかして凛のことー!?」
……。
ズズ…
希「…」ハァ
カタカタカタ…
希「…」
〜♪
希「…あ」
希「えりち…? ウチやよ…」
希「うん…元気やよ。そっちは…?」
希「そっか…。うん…元気でなによりやね♪」
希「…」
希「ん? うん…」
希「明日、時間あるかな――…?」
……。
■Scene25
ことり「かよちゃ〜〜〜ん! 凛ちゃ〜〜〜ん!! 来たよぉぉ〜〜〜…♡」バーン!
カランコロン…
希「…扉開けるより前に叫びながら入ってくるの、やめてもらえへんかな…。いらっしゃい、ことりちゃん」
ことり「…あれぇ? 私の天使ーずはどこぉ…?」キョロキョロ
ドサ
ことり「まさか…! またなの…っ!?」
ことり「また月に戻っていってしまったというのぉ…!! 希ちゃん…ッ!?」キッ
希「なんでウチを睨むねん…」
希「二人とも休憩中やー。一緒にご飯食べに外行っとるだけやで」
ことり「なんだぁー…」ホッ
ことり「また希ちゃんが若い子潰しちゃったのかと思ったよぉ〜…」ホッ
希「誤解を招く言い方やめてもらえるー?」
コト
希「はい、どうぞ」
ことり「ありがとぉー♪」
希「今日のはウチの自信作やでー♪」
ことり「へぇ〜…希ちゃんがそこまで言い切るのは珍しいね…?」
希「うん、まぁウチも色々学んで来たからなぁー…」
ことり「…それじゃあ、いただきまーす♪」
ズズ…
ことり「…」
ことり「…ふぅん」
希「…どう?」
ことり「…あーあ、つまんないなぁー」
希「へ…?」
ことり「答え、見つけちゃったんだぁ〜…」
希「ぁ…」
ことり「そっかぁ…あの希ちゃんがねぇ〜…」
希「…」
ことり「がんばったね、希ちゃん☆」
希「…うん♪」
ことり「もう…希ちゃんが困ってるところを見るの楽しみだったんだけどなぁ〜…」
希「性格悪いなぁことりちゃんは…」
ことり「そんなことないよぉ!」
希「まったく…」クス
カタ…
ことり「ごちそうさまでした☆」
希「お粗末様」
ことり「…とっても、美味しかったよ♪」
希「…ありがと♪」
ことり「それで…どうするの?」
希「…もう電話した。今日、会うつもりだよ」
ことり「わお、はやーい☆」
希「うん…。何事も、思い立ったら即行動しないとな」
希「穂乃果ちゃんが教えてくれたわ…♪」
ことり「…そうだね」 ことり「あ、そうそう、この間穂乃果ちゃんに会って来たよぉ〜♪」
希「は? ど、どうやって?」
ことり「穂乃果ちゃんが来ていたお洋服ぅ〜、お着替えしてるときにこっそり匂いを…じゃない、どこのブランドかチェックしてたんだよぉ〜」
ことり「で、ことりのコネを利用して、あらゆるブランドの知人さんに連絡をとって〜、店舗にそれらしい女の子が来てないか確認してもらったんだぁ〜♪」
希「ガチガチのストーカーやんけ…」
ことり「何百っていう店舗から探すのは大変だったけど…穂乃果ちゃんみたいなサイドテールの子、中々いないから割とすぐに見つかったよ〜♪」
希「なんという執念…」
ことり「当たり前だよぉ…! 穂乃果ちゃんほどの天使…そうそう現れないんだよ…! なんとしてでもモデルさんにスカウトして…! あわよくば、海未ちゃんとユニットをくませて…!!」
希「ユニットって、アイドルやないんやから…」 ことり「なんてことを穂乃果ちゃんに直接伝えたら、相方さんのにこちゃんさんにぐーぱんち喰らいました…」
希「そりゃそーやんな」
ことり「でも…ことりはめげません! なんなら…にこちゃんさんも一緒に三人でユニットデビューを…っ!!」
希「…なんというか…」
希「ことりちゃんはいつでも、自分に素直やなぁ…」
希「その素直さだけは、勉強させてもらわなな…」
……。
ことり「…それじゃことりは帰るね♪」
希「あの子らには会ってかんでええの?」
ことり「本当は直接会って、お洋服着せたかったけどぉ〜…♡」
希「着せたかったってのが控えめに言ってキモいやね」
ことり「もぉ〜希ちゃんのツッコミもどんどん鋭さが増していくんだからぁ〜…///」ハァハァ
希「えぇ…そういう方向性のヘンタイさも持ってるんか…」
ことり「…でも今日は、希ちゃんの大事な日だから早めにいなくなることにするよ♪」
希「大事な日って…///」
ことり「今の希ちゃんだったら分かると思うけど…」
ことり「絵里ちゃんは希ちゃんのことを、誰よりもだいじーに想ってるんだからねっ!」
ことり「そのことを忘れちゃダメだよ!」
希「うん…わかってる…」
ことり「ふふ…♪」
ことり「絵里ちゃんのこと、あんまり泣かせるんじゃないぞっ☆」
希「…ありがと、ことりちゃん♪」
カランコロン
希「…ことりちゃんってあんなヘンタイなのに、たまに言うことはまともだし、洋服のデザインはいろんな人に認められるレベルやし…馬鹿と天才は紙一重の典型やなぁ…」
希「って、こんなこと聞かれたらどんなエロエロ衣装着せられるか分からんわ」クス
希「触らぬことりちゃんに祟りなしや――…」ナムナム
カランコロン
絵里「…何してるの、希…?」
希「へ!? え、えりち!?」ドキッ
👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) 希「は、早かったね…?」
絵里「ええ…調度予定も入ってなかったしね」
希「へ、へぇ…」
絵里「入り口に向かってお祈りなんかして…疫病神でも来てたのかしら?」
希「疫病神って、そんな…」
希「いや…あながち間違いではないんかな…」
絵里「…それはもしかして、私のことだったり――?」
希「…」
絵里「…」
絵里「なんか言って頂戴よ…」
希「…」クス
希「――中、入って?」
絵里「…ええ」
……。
トコトコ…
凛「はー、お昼ご飯美味しかったーっ♪」
花陽「凛ちゃん…食べ過ぎだよ…?」
凛「大丈夫だよー! のぞみちゃん人使い荒いから…これぐらい沢山食べて元気つけておかないと…っ」グッ
花陽「ふふ…♪」
凛「遅れるとのぞみちゃんがうるさいし、早くかえろー?」
花陽「…凛ちゃん…すっかり希さんと仲良くなったよね…♪」
凛「えーっ!? そんなことないよー! すぐ頭ぶたれるし、お、おっぱいだって揉まれちゃうし…///」サワサワ
花陽「そ、それは私も…たまにあるし…///」サワサワ
凛「ちょ、かよちんがおっぱい触るのは禁止ーっ!///」
花陽「ふぇ…?///」 凛「…り、凛が小さいのが、よりはっきりしちゃうにゃ…///」シュン
花陽「…別に…小さくても…可愛いよ…♪」クス
凛「嫌味だよぉ…のぞみちゃんとかよちんが言っても説得力ないぃー…」
花陽「あ…ほら、凛ちゃん…それだよ…」
凛「それ?」
花陽「のぞみちゃんって…よく言うようになったよね?」
凛「ぁ…だ、だってこれは…のぞみちゃんが…」
凛「あ…///」
花陽「ふふ、全然いいと思うよ…。ひ、人でなしなんて呼んでるよりかは…」アハハ
凛「…そう、かな?」
花陽「うん…♪」
凛「でも…のぞみちゃんが人でなしなのは変わらないけどね…っ!」
花陽「…♪」クス 凛「そういえば、この間初めてのぞみちゃんの淹れてくれたコーヒー飲んだけど…」
花陽「美味しかった?」
凛「うん…すごい美味しかった…」
花陽「だよね…♪」
凛「のぞみちゃんの淹れるコーヒーって、なんであんなに美味しいんだろうなぁ…。凛、あれからずっと練習してるけど…ちっとも敵いそうにないや…」
花陽「…希さんは…すごく優しいから…それがコーヒーに出てるのかも…」
凛「…」
花陽「西木野先生も言ってたけど…とっても暖かい…」
花陽「どれだけ辛いことがあっても、優しく包み込んでくれるんだって…」 凛「…かよちんも」
花陽「…え?」
凛「かよちんも…のぞみちゃんのコーヒー…好き…?」
花陽「…うん…大好き…♪」
凛「…」
花陽「…?」
凛「むー…!」
凛「かよちんに大好きって言ってもらえるように、凛、もっと頑張るよっ!」
花陽「え、えぇ…?///」
トコトコ…
凛「とうちゃーく! さぁー、午後もがんばろーっ!!」
花陽「…そうだね…♪」
凛「お客さん来ればいいけど…っと」ピタ
花陽「…? 凛ちゃん…?」
凛「あそこ…窓際の席。めずらしー…お昼の時間にお客さんが入ってるー…」
花陽「り、凛ちゃん…。確かに…珍しいけど…」
凛「凛たち、本当に人気になってるのかなぁ?」ワクワク
花陽「ど、どうかな…///」
凛「よーし! お客さんとお話してくるにゃー!」
ガバッ!
凛「にゃー!?///」
花陽「り、凛ちゃん!?」アセアセ
凛「や…ちょ…! 離せ…! どこ触ってるのヘンタイ…!!///」ジタバタ
花陽「け、警察…っ!?」ハラハラ
ことり「…はぁ〜…凛ちゃんの小ぶりなおっぱい〜…♡」ハァハァ
花陽「あ…こ、ことりさん…」
凛「ふぇ…?///」
ことり「やっほー、かよちゃんに凛ちゃんー☆」ワシワシ
花陽「ことりさん…な、なんで…こんな隅っこに…?」
ことり「んー…それにはちょっと理由があってぇ〜…」モミモミ
花陽「理由…?」
ことり「中の様子をこっそり伺いたいというかぁ〜…」プニプニ
花陽「あのお客さん…ですか…?」
ことり「そうそう、ちょーっと訳ありでぇ〜…」サワサワ
花陽「希さんのお客さん…ですか…?」チラ
ことり「だいじなだいじなお客さんだよ…♪」ツンツン
凛「い、いいからおっぱい揉むのやめるにゃーーーっ!!///」
……。
コト
希「はい、どうぞ♪」
絵里「ありがとう」
希「…」
絵里「…」
絵里「…それで、話って?」
希「うん…」
希「まずはコーヒー、飲んで♪」ニコ
絵里「…? いいけど…」
ズズ…
絵里「…」
カタ…
希「…美味しくなかった?」
絵里「いえ…そんなことはないわ」
絵里「ただ…」
絵里「昔を思い出したの…」
絵里「希と一緒に、母の淹れるコーヒーの練習をしていたこと――…」
希「…」
希「懐かしいなぁ…」
希「あそこのカウンターの上で…よく一緒に練習してたね…」
絵里「中々上達しない希のことを、あの頃、何度怒ったか分からないわ」
希「ほんと…えりちは厳しかったからなぁ」
絵里「…希が不器用すぎるのよ…」
希「本当にね…♪」クス
絵里「私達のそんな光景を…母が、今座ってるこの席から遠目に…暖かく見守ってくれてたわね」
希「…あの人を小馬鹿にしたような笑い方、今でも覚えてるわ…♪」
絵里「…失礼ね」
希「だってホントのことやん?」
絵里「…まぁ、ね」
希「せやろ?」クスクス 絵里「希、あなた…本当に母に似てきたわね」
希「え、ホント?」
絵里「…その胡散臭いエセ関西弁もそうだし、何より…性格がね」
希「そう言われると…嬉しいやん♪」
絵里「そんなとこ、受け継がなくて良かったのに…」
希「どっちが娘なんか、わからんなぁ」
絵里「本当ね…」クス
絵里「…」
絵里「希…」
絵里「…あなたの心は今でも、母と共にこの喫茶店の中にあるの――…?」
希「…」
希「…」
希「――どうなんやろなぁ」
希「ウチにもそこらへんは、ようわからんわ」クス
絵里「…」
希「…ウチは子供の頃…ずっと一人やったから」
希「学校にいても、家にいても、どこにいても…常に一人やった…」
希「それはウチ自身の弱さのせいだから、誰のせいにするつもりもない」
希「けど、子供の頃は…それを慰める術を、知らなかった…」
希「当たり前やね、子供なんやから」
希「でも、そんな子供のウチを…えりちのお母さんは…優しく抱きしめてくれた」
希「――今でも覚えてる」
希「居場所が無かったウチは、外をふらふらと彷徨う日々が続いてた…」
希「そしたらある日、ふと…どこからともなくコーヒーの良い匂いが漂ってくるのを感じたんよ」
希「あの頃のウチは、コーヒーの良さの欠片も知らないんだから…それがなんで良い匂いと感じたかは分からない…」
希「けど、その不思議な心地良さにつられて…私はこの喫茶店に誘われた」
希「まるで――そうなる運命みたいに」
絵里「運命…」
希「…運命って、面白いなって思うよ」
希「ウチ、占いとかそういう真似事できないからよくわからんけど…」
希「きっとここに集まってくるお客さんや、いろんな人…みんな何かの運命みたいなもので呼び寄せられたんやと思っとる」
希「なんでと言われても、答えることはできないんやけど…」
希「でも…そうなんだって自信を持って言えるんや」
希「もしかしたら、前世が占い師とかやったんかもな――?」クス
希「だから…穂乃果ちゃんがここに来たのも運命やと思うし…」
希「真姫ちゃんも、海未ちゃんも…」
希「花陽ちゃんや凛ちゃん…ことりちゃんも」
希「そして…えりちとも――…」
絵里「…」
希「えりちと出会えてなかったら、きっと…今のウチはなかった…」
希「こんなにも…いろんな人とお話することができて…喫茶店をやれるのは全部…えりちのおかげやもん…」
希「えりちが…ウチのことを一生懸命育ててくれた…」
絵里「希…」
希「そして勿論…お母さんも…」
希「ウチの本当のお母さんやないけど…間違いなく、あの人はウチのお母さんや」
希「お母さんに出会えたのも…運命なんよ…」
希「だからね…お母さんが事故で亡くなったことだって…運命やと思ってるんや」
絵里「…」
希「本当に急だったし…すごく悲しかった…」
希「一時期はずっと塞ぎ込んだままだったし、また元の私に戻ってしまいそうだった」
希「――ううん」
希「ウチは元の私に戻っていた」
希「誰とも言葉を交わせないで、一人で膝を抱えてうずくまる私に…」
希「でも、しょうがないよね…」
希「お母さんは、私一人でも心細くないように…」
希「自分で足で歩けるように…魔法をかけてくれた人だから…」
希「そのお母さんがいなくなったから、魔法は解けてしまったんだ…」
希「お母さん…」ギュ
絵里「…」
希「――なーんてな」
希「ウチはもう…そんな弱くない」クス
希「そんな魔法に頼ってなければいけないほど弱い私じゃない――」
希「えりち…この間来てくれた時に言ったやん?」
希「ウチが、いつまでもお母さんの真似をしているって…」
絵里「ええ…言ったわね」
希「…それは間違いなんよ」
希「ウチは、お母さんの真似をしとる訳やない」
希「…だって、これはウチの魔法だから――」
希「ウチが自分でかけた、ウチだけの魔法――」
希「ウチが自分自身で変えようと努力した魔法――」
希「それが魔法なんかは、ようわからんけど」クス
希「だから、えりちがウチに感じているお母さんの影っていうのは…幻だよ」
希「ウチはウチ、私はもういない」
絵里「…」
希「…と言ってもな、そのことに気が付いたんは最近なんよ」
希「ウチ自信…ずっとお母さんの影を追ってた気はしてたから…」
希「本当にこのままでいいのか…」
希「私はどうしたいのか…ずっと迷ってた」
希「でも――穂乃果ちゃんやにこっちに出会って…」
希「真姫ちゃんや海未ちゃんと知り合えて…」
希「そして…花陽ちゃん、凛ちゃんとも出会って…」
希「いろんなことを知った…」
希「いろんな人の強さを学んだんよ…」
希「そして…自分はバカやったんやなぁって、気が付いたんや」
希「いつまでもお母さんの後を追って…自分の弱さから逃げて…」
希「大切なことからずっと目を背けながら…この喫茶店をやってた」
希「お母さんに…本当に申し訳ないわ…」
希「人の店使って、ウチは何してたんやろって…」
希「本当の意味で、ウチはお客さんのこと…笑顔になんてできてなかったんや」
希「…そりゃそうやんなぁ」
希「一番近い人間のこと、笑顔にできてないんやから――」
絵里「…希」
希「…この喫茶店で起きた出来事は…ウチにとって全部宝物」
希「ウチが生きてきた証…」
希「全部…ウチの運命…」
希「えりち…今まで私をこのお店に置いてくれてありがとう…♪」ニコ
絵里「…どういたしまして」ニコ
タッ
希「…大好きだよ♪」ギュ
絵里「――」
……。
ことり「キャ――――――!! 希ちゃんの生告白きたぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!☆」バシバシ
凛「い、痛いにゃぁ〜〜っ!!」
花陽「こ、ことりさん…声が大きいですよ…///」ドキドキ
ことり「だ、だってだってぇ!! 臆病な希ちゃんがあんな大胆に大好きだよ!? しかも抱きついちゃってるよぉ! いけっ! そこだっ! 押し倒せぇ!!///」ハァハァ
花陽「お、押し倒すだなんて…そ、そんな…///」
凛「…っていうかお店の中に盗聴器仕掛けてるとか…このヘンタイ女、絶対通報した方がいいと思うよ…」
ことり「こ、ここ、これは! そのぉ…希ちゃんのことが心配だからでぇ…///」テヘ
花陽「あ、あれ…? ということは…私達の会話も…?///」
ことり「ばっちり聞いてたよぉ〜…☆」
花陽「///」カァー
凛「は、犯罪にゃー!! 警察にしょっぴくにゃーっ!!///」
ケイサツー!?
ガサ
にこ「ちょっと! 警察とか穏やかじゃない声が聞こえてきたけど、大丈夫ーっ!?」
穂乃果「にこちゃん…危ないよ…刺されるよ…っ!」ギュ…
穂乃果「あ」
ことり「あ♡」
にこ「こいつが犯人?」チラ
凛「そうにゃ!!」ビシ
花陽「り、凛ちゃん…!」アワアワ にこ「うちの穂乃果だけじゃなく、喫茶店のお客も毒牙にかけてるのかしら〜このトサカはぁ〜?」ピキピキ
ことり「ど、毒牙なんて…誤解だよぉ〜♪ ねー穂乃果ちゃーん凛ちゃーん…♡」
穂乃果「ぅ…///」ササ
凛「…///」ササ
ことり「二人とも絶妙に距離を取ってるっ!!」ガーン
にこ「はーい、近くに交番あるから一緒についてきてねー」グイ
花陽「あわあわあわ…」
ことり「いやぁぁぁ〜〜〜〜〜! 希ちゃんの告白劇最後までみたいのぉぉぉ〜〜〜〜!!」ズルズル
穂乃果「希ちゃんの告白…?」
にこ「え、なに…? どういうこと…?」
……。
にこ「へぇ…ちょっと挨拶に寄ってみたら面白いことになってるのね…」
穂乃果「希ちゃん…そっか…」クス
ことり「ね? ね? だからこの盗聴器で中の会話を盗み聞きしてね…♪」エヘヘ
にこ「…あんた、可愛い顔して言ってることは最悪ね」
ことり「そんなぁ、可愛い顔だなんてぇ…///」キャッ
凛「ことりちゃんにそんなこと言っても無駄だよ…」
穂乃果「本当だよね…喜ぶだけだよ…」
にこ「初めてあった人間同士でそこまで共感するなんて、本物ね…」 花陽「…あの…穂乃果さん…ですか…?」
穂乃果「うん! 穂乃果だよ! あなたは…?」
花陽「は、初めまして…! 穂乃果さんが辞めた後に…ここで代わりに働かせてもらってる…小泉花陽…と言います///」ペコリ
穂乃果「あ…そうだったんだ」
花陽「はい…穂乃果さんが来ていた制服…今は私が、お借りしています…」
穂乃果「へぇ…」ジー
花陽「?」
穂乃果「ははは…穂乃果なんかよりずっとお似合いだよね…」ズーン
花陽「あ、あぅ…///」バッ
凛「凛もかよちんと一緒に働いてるんだよ!」
穂乃果「二人共一緒に働いてるの? …希ちゃん、お金大丈夫なのかな…」
ことり「それはまぁ、絵里ちゃんがいるから…大丈夫なんじゃないかなぁ?」
花陽「そう言えば…このお店のお金ってどこから…」 穂乃果「えっと…花陽ちゃん…?」
花陽「は、はい…?」
穂乃果「なんていうか…穂乃果は突然やってきて、そして突然出て行っちゃったからあんまり希ちゃんこと、助けてあげられなかったけど…」
穂乃果「穂乃果の代わりに希ちゃんのこと…しっかり支えてあげてね…♪」
花陽「ぁ…」
花陽「はい…♪」
オヤ…?
ガサ…
海未「…誰か、いるのですか…?」
ことり「あ、海未ちゃぁ〜ん☆」
海未「ひっ!」ザザザ
タタタ…!
にこ「…あんたの顔見ただけで逃げてったわよ。どんだけ嫌われてんのよ」
ことり「海未ちゃんったらもう、恥ずかしがり屋さんなんだからぁ〜☆」
ヴェェェ!!
穂乃果「あ、あの叫び声は…」
花陽「西木野…先生…?」
穂乃果&花陽「え?」クル
真姫「いたた…」
海未「す、すみません…急に飛び出して…」
真姫「だ、大丈夫よ…って、あら…?」
海未「あ…あなたは…希さんの知り合いの…」
穂乃果「真姫ちゃーん、海未ちゃーん!」トコトコ
真姫「ぁ…」
海未「ことりさんだけでなく、穂乃果さんまで…?」
凛「みんな…このヤブ医者のこと知ってるの…?」
真姫「だから、ヤブ医者じゃないって言ってるでしょ…っ!」
花陽「り、凛ちゃん…!」
穂乃果「ヤブ医者…だったの真姫ちゃん…?」
真姫「希と同じリアクションするんじゃないわよっ!」
穂乃果「えー…?」
ことり「お医者さん…美人…女医…っ!?///」ハァハァ にこ「なになに、みんな知り合いなの…? すごい偶然ね…」
穂乃果「本当だねぇ…」アハハ
海未「私は…いつものように希さんのコーヒーを飲みに来ただけですが…」
真姫「私も…そうよ…///」
凛「偶然知り合いが今日集まったの…? すごいにゃぁ…」
花陽「そうだね…」
花陽「希さんは本当に…みんなの人気者なんだね…♪」
穂乃果「うん…希ちゃんのことは、みんな大好きだよ♪」
ことり「ふふ…希ちゃんが聞いたら、泣いて喜ぶよ…?」クス
にこ「あ、いや、私は…そんなには…」
……。
なんか小出しで本当に申し訳ない
全然間に合わない…
あとちょっとなので頑張ります
連休中に終わらせたいところです…
希「――なんで、この一言が言えなかったんやろなぁ…」
希「ウチはずっと言い続けてたやんな…」
希「えりちのおかげって…」
希「それなのに…ずっとずっと誤魔化し続けて…」
希「えりちを先に歩かせ続けて…」
希「ウチはずっと、待ってた…」
希「いや…」
希「迎えに来てくれるえりちの手を、払い除け続けてきてたんやな…」
希「ほんと…私は…バカだよ…」
希「えりち…」グ…
絵里「希…」
絵里「…母が亡くなって、ずっと塞ぎこんでいても…」
絵里「一人で母の影を背負い込んでいても…」
絵里「例え、私のことを見てくれていなくても…」
絵里「私はずっと…希のことを想い続けていた」
絵里「何故…なのかしらね」
絵里「…希とは、どこか近いものを感じていたから…?」
絵里「お互い…種類は違えど、孤独を感じる者同士だったから、なのかもしれない…」
絵里「私だって、決して…いつだって強かったわけじゃない」
絵里「一人の時は泣くこともあったし、うずくまることだってあった」
絵里「母が亡くなったという報せを聞いたときも、足が震えて崩れ落ちそうになった」
絵里「けれど…希の前では強くいなくちゃ行けないと思った」
絵里「希の前では弱音を吐いてはいけないと思った」
絵里「私が弱音を吐いたら…希は、また立てなくなることを知っていたから…」
絵里「希の為に…私は強くなるしか無かった…」
絵里「…それからの人生は…常に希のことを考えての毎日だった」
絵里「なんとかして、希を立ち上がらせたい――」
絵里「もう一度――希と一緒に、コーヒーを淹れたい」
絵里「そんな夢を、私はずっと持ち続けて…頑張ってきた」
絵里「…お婆様や、親戚の人、知人に…たくさん迷惑もかけた」
絵里「無理を承知でお願いもした」
絵里「でも、希のためだったら頑張れた」
絵里「希と一緒に、あの日々を取り戻せるのならば…それぐらいの苦労も厭わなかった」
絵里「だって…私には…」
絵里「母がいなくなった私には、希しかいなかったから…」
絵里「…私には、希が全てだったのよ…!」
希「…」
希「今まで…そんなえりちの想いに…気が付いてあげられなくて…っ」
希「私は…自分のことしか考えられないバカだったから…」
希「鈍感で弱くて…教えられたこともロクに覚えられないダメダメな子だったから…!」
希「ウチは…いろんな人に大切なことを教えてもらって…」
希「ようやく…えりちの隣りに来れた気がする…っ!」
絵里「希…っ」ギュ
希「えりち…っ!」
絵里「…希」
希「なに…?」
絵里「私は今まで…あの日々を取り戻すために頑張ってきた…」
希「うん…」
絵里「でも…その過程で私は、あらゆる経験値を積んできた…」
絵里「こことは違う場所で…地位も築いてきた」
絵里「私は…この喫茶店を維持することはできても…今更戻ることはできない…」
希「そう、だよね…」
絵里「だからね、私はあなたと一緒に旅立ちたいの――」
絵里「この喫茶店を店じまいして、新しい人生の一歩を、二人で踏み出したい――」
絵里「…母の思い出は、私達の中にある」
絵里「店を無くしたからといって、潰えるものではないと思ってるから…」
絵里「それが…希の為でもあると、思っているの…」
絵里「どう、希…?」
絵里「私は決して、押し付ける気はない…」
絵里「だから――選択肢はあなたに委ねる」
希「…」
希「えりち…」
希「…そんなの、答えは決まってるやん――?」
絵里「それじゃあ…」
希「――でもその前に…ちょっといい?」
絵里「…? ええ…」
トコトコ…
希「…んーっと」
希「これかな?」
絵里「…テーブルの下に潜って…なにしてるの…?」
希「…こほん」
希「こそこそ隠れて聞いてるとみんなワシワシするでーーーーーーー!!!?」キーン
カランコロン!!
凛「ワシワシは勘弁するにゃーーーっ!!///」
穂乃果「そうだよ! 穂乃果の胸はにこちゃんだけのものなんだからぁ!!///」
花陽「…っ///」ペコペコペコ!!
絵里「え…?」
希「あ、あれ…穂乃果ちゃん…?」
穂乃果「え、えへへ…///」
希「てっきり…ことりちゃんと花陽ちゃん、凛ちゃんあたりが盗み聞きしてるだけかなと思っとったんだけど…」
ことり「えへへぇ〜…♡」テヘ
凛「り、凛とかよちんは関係ないよ! 無罪だよ!!」
海未「ど、どうも…///」チラ
真姫「…///」
希「海未ちゃんに真姫ちゃんまで…」
にこ「しばらくね…」
希「えぇ、にこっちまで…」
希「え、なにこの人数、全員集合――?」
にこ「…何をもって全員なのかは知らないけど、ほとんどがお互いに知りあいなんじゃないの?」
希「…」
希「…みんな、ウチの告白…聞いてたの…?///」
穂乃果「う、うん…///」
海未「はい…すみません…///」
真姫「不可…抗力よ…っ///」カァー
凛「犯人はこいつだよっ!///」ビシ
ことり「えへへ〜…どうしても希ちゃんの告白聞きたくてぇ〜…☆」
花陽「…っ///」ペコペコペコ
にこ「…まったく、とんでもない悪人がいたもんだわ」
希「///」カァー
絵里「…な、なによ…なんなのよ…」
ことり「…ふふ、絵里ちゃん」
絵里「ことり…」
ことり「…お疲れ様♪」
絵里「聞いていたのね…///」
ことり「絵里ちゃんのそんな顔見られるなんて、一生思わなかったよぉ…♪」
絵里「怒るわよ…?///」
ことり「じょうーだん☆」
ことり「でも、今までの辛い時をことりは知ってるから…」
ことり「その笑顔は、本当に眩しいんだよ――?」
絵里「…///」
ことり「…絵里ちゃんの想い、しっかり聞かせてもらったよ――」
ことり「今まで、頑張ったね…」
ことり「希ちゃんとお幸せにね…♪」
絵里「…ありがとう…ことり…」
凛「…いいこと言って誤魔化すつもりだよ、この犯罪者」ジト
ことり「な、なんのことかなぁ〜☆」エヘヘ
穂乃果「…希ちゃん」
希「穂乃果ちゃん…///」
穂乃果「…ふふ、希ちゃんの告白…全部聞いてたよ♪」
希「う、うん…///」
穂乃果「やっぱり希ちゃんは強いよ…!」
穂乃果「穂乃果が思った通り…♪」
穂乃果「穂乃果の視線から逃げなかった希ちゃんだもん…」
希「…穂乃果ちゃんのおかげだよ」
希「この強さは、穂乃果ちゃんに教えてもらったものやもん…」
希「穂乃果ちゃんがいなければ、今のウチはない…」
穂乃果「…そんなことないよー」
穂乃果「もしかしたら穂乃果がそのキッカケを与えたかもしれないけど」
穂乃果「やっぱりそれは、元から希ちゃんが持っていたものだと思うから…」
穂乃果「さっきの希ちゃんみたく言えば、運命ってヤツなんじゃない――?」クス
希「…もう、穂乃果ちゃんったら///」
穂乃果「あははっ♪」
希「ふふ♪」
海未「運命――そういう風に捉えるのは面白いですね」クス
希「海未ちゃん…。まさか海未ちゃんまで聞いてるとは思わなかったわ…」
海未「あ、い、いえ…! 聞いてしまったのはその…たまたまというか偶然というか…///」
海未「それこそ、運命というヤツでして…///」
希「へぇ〜…盗聴器で人の告白聞くのが運命なんー…?」
海未「そそそ、それは…あぅ…///」
希「あっはは♪ 冗談やよー! 海未ちゃんがそんなことする子やないってのは分かっとるでー♪」
海未「そう言っていただけると…///」
希「まぁ、ことりちゃんに染まらないように気をつけて欲しくあるけどな♪」
海未「…はい」クス
ことり「二人共、ことりの悪口言ってるのぉ〜…?」
海未「希さん…私はあくまでも、このお店のお客その一…」
海未「私に何を言う権利もありません」
海未「希さんの選択――心して受け取りたいと思います」
希「…ありがとう、海未ちゃん」
海未「…♪」ニコ
真姫「――何も言う権利もない…か」
希「真姫ちゃん…」
真姫「そうよね…私には何も言う権利がないものね」
希「…真姫ちゃん、その…な…?」
真姫「いい。何も言わないで」
希「ん…」
真姫「…元から勝ち目のない勝負だったのだから」
真姫「この店は、私にとって居心地のいい空間だった…」
真姫「それだけ――…」
希「…」
真姫「――ただね」
真姫「希の選択に対して、私は何も言えないけど…」
真姫「希の選択したその先を私がどうしようと、それは私の勝手でしょう――?」
希「う、うん…そうやね…」
真姫「それがきっと、私の運命よ」
希「…」
にこ「怖いこと言ってるわね、この吊目…」
真姫「誰が釣り目よっ! 真姫よっ!」
にこ「あーはいはい、真姫ちゃんは怖いねー」
真姫「〜〜…っ!」
希「ちょ、ちょっとちょっと! 急に争うんはやめ!」
真姫「だって、この子が…!」
にこ「だぁれがこの子よ! 子供扱いするなっ!!」
希「どんだけ息ぴったりやねん…」
希「もー、にこっちー? にこっちは相方いるんやから、軽率なことしてると穂乃果ちゃん睨むでー?」
にこ「えー? 穂乃果に限ってそんなこと――…」
穂乃果「〜〜〜〜」ジー
にこ「…ごめんなさい真姫ちゃん」ドゲザー
真姫「あ、べ、別に、いいけど…///」
希「女の嫉妬は怖いやねぇ…」クス
にこ「ま、しかし…私は今日のいざこざをよく知らないけど…とりあえず希には感謝しなくちゃいけないわね」
希「んー? どしたん急にー?」
にこ「…穂乃果とこんな関係になれたのは希のおかげだもの」
希「いや、ウチはなーんもしてへんよ?」
にこ「何言ってるのよ」
にこ「穂乃果のおかげで成長した、なんて言ってるけど…あいつだって、希のおかげで成長してるんだから」
希「ぁ…」
にこ「短い間だったけど、穂乃果のことありがとうね」
希「…いいえ、こちらこそ♪」
にこ「あんたも、幸せになるのよ」
希「にこっちもな♪」
花陽「あ…そ、その…希さん…///」
希「花陽ちゃん…」
花陽「…希さんも…子供の頃…色々あったんだって…さっき聞いて…知りました…」
希「うん…」
花陽「私…なんて言ったらいいか…」
希「…ふふ、おかしいやろ? そんな臆病な人間が人にああだこうだ言ってるんやから…」
花陽「い、いえいえ! そんな…ことは…///」
希「ウチなんて本当は大した人間じゃないんやでー?」
希「だから、花陽ちゃんに言う資格なんて本当はなーんもないんよ」
希「花陽ちゃんの方が、辛い思いしてるかもしれへんしなー…」
希「まったく、本当にウチはバカやで…」
希「どうしようも――…」
凛「面倒くさいにゃ!!」
希「凛ちゃん…」
凛「のぞみちゃん、凛とかよちんにあんなに言ってたくせに…自分が面倒くさいよ!!」
凛「のぞみちゃんの過去がどうだったとか、本当は臆病だとか…そんなこと、凛もかよちんも知らないよ!」
凛「そんなこと知るのなんて、面倒くさいにゃ!!」
花陽「うん…そうだね…面倒…だね」
希「花陽ちゃんまで…」
花陽「私は…今の希さんの強さに…優しさに…憧れて…」
花陽「この店で…働きたいと思ったんです…」
花陽「だから私にとって…子供の頃の希さんは…いないも同然なんです」
花陽「私達にとっての希さんは…」
花陽「ここにいる、みんなが大好きな希さん…ですよ♪」
希「…ありがとう…花陽ちゃん…凛ちゃん…♪」
凛「凛たちは、のぞみちゃんがどんな答えを出しても、恨まないよっ!」
花陽「うん…そうだね…♪」
希「…みんな」
希「みんな、ありがとう――」
希「ウチなんかの為に…本当に、ありがとう…っ」
穂乃果「…♪」
海未「…」ニコ
真姫「…///」
にこ「…」ハァ
花陽「〜〜っ」
凛「〜♪」
絵里「…希」
絵里「いい友人ができたわね」
希「友人、かぁ――」
希「…そうやね♪」
絵里「それじゃ改めて答えを聞くわね」
絵里「希…私と一緒に行きましょう――?」
希「…」
希「えりち」
希「…ウチの答えは最初から決まっとる」
希「――――」
……。
■Scene26
カランコロン
カタカタ…
「本日・臨時休業(ごめんなさいにゃー!)」
カランコロン…
海未「…こんにちわ」ペコ
凛「あ、うみちゃん、いらっしゃいにゃー!」
花陽「こ、こんにちわ…♪」ペコ
海未「少し…早すぎましたかね…?」
凛「確かに、海未ちゃんが一番のりだねー」
海未「あ、迷惑だったら、少し時間を潰してきましょうか…?」
花陽「大丈夫ですよ…ゆっくりしてください…♪」
凛「そのための喫茶店だからねー!」
海未「…はい」クス
コポポ…
花陽「えっと…コーヒーで大丈夫ですよね…?」
海未「あ、はい、お願いします」
凛「ダメって言われてももう淹れちゃってるにゃー!」
海未「…別に構いませんけど」
凛「ダメだった場合は凛が自分で処理するよ! 少しでも練習したいからね…!」
花陽「凛ちゃん…」クス
海未「…しかし、すっかり二人共板についてきた感じがしますね」
花陽「そう…ですか…?」
海未「ええ…始めて見た時は、もっと二人共落ち着きがなく、危なげでしたが…」
花陽「お、落ち着き…///」
海未「あ、花陽さんはその…仕方がないかもしれませんけど…///」
コト
凛「なーにー? 凛のこと言いたいのー?」
海未「ええ…まぁ、その…はい」
凛「うみちゃんも割とひどいこと言うよね…。凛、悲しいにゃ…」
海未「そうやって、にゃって言って猫被ってる時の凛は嘘だと学びましたよ」
凛「むー…! ふん! うみちゃんなんかこないだ、雑誌でヘンな衣装着せられてた癖に!!」
海未「なっ! 何故それを…っ!///」ガタ 凛「ことりちゃんがこないだ雑誌持ってきてくれたもーん」
海未「あああ、あれは…我ながら不本意としか言いようがなく…! 私だって、あんなスケスケ衣装着たいわけでは…!」
凛「…本当はみられたいんじゃないのー?」ニヤニヤ
海未「そ、そんなことあるわけありませんっ! あああ、あれはことりの趣味ですっ! 私は断じて、露出狂の趣味などありませんっ! 清廉潔白ですっ!!///」
花陽「…っ」アワアワ
ことり「へぇ〜…海未ちゃん、もっとスケスケの衣装着たいんだぁ〜…☆」
海未「!!?///」ザザザー
凛「にゃ!!?///」ザザザー
花陽「ぴゃあ!!?///」ザザザー
ことり「こんにちわ〜みんなぁ〜♪」
凛「きゅ、急に入ってくるんじゃないにゃ!!///」
海未「そ、そうです! 心臓に悪すぎますっ!///」
ことり「え〜? ことりが来るのがそんなに嫌なのぉ〜…?」シュン
凛「イヤに決まってるにゃ! この覗き魔っ!!///」
海未「え、の、覗き魔…?」
凛「そうだよーっ! この間店に来た時、凛とかよちんの着替えこっそり覗いてた上に、動画と写真まで撮ってたんだよっ!!///」
花陽「…///」カァー ことり「えへへぇ〜…二人共とってもえっちだったよぉ〜…///」ハァハァ
凛「え、えっちなことなんて一つもないにゃ! お前のトサカがえっちなんだよっ!!///」
花陽「///」ボン
海未「…ということは…まさか私のも…!?」
ことり「え〜? 海未ちゃんのなんて毎回撮ってるよぉ〜? 今更〜?」
海未「」ガーン
ことり「海未ちゃんに意外にノリノリなんだよねぇ…♡」
海未「あわあわあわ…///」
ことり「聞いて聞いてー♪ 海未ちゃんねぇ、鏡の前でポーズ取ったりしてる――…」
海未「こ、ことりッ!!!///」バッ
凛「えぇ…それはドン引きにゃ…」 海未「ど、ドン引きとはなんですかっ!! ことりに無理矢理あれやこれや衣装着せられれば頭のネジがおかしくなるのもしょうがないことなんですよっ! 私のせいじゃないんですぅぅぅ!!///」
花陽「じ、自分で頭のネジがおかしくなるって言うのは…どうかと…」アセアセ
凛「ことりちゃんと一緒になるとこういう風になっちゃうんだね…」シミジミ
海未「憐れみの目で見ないでくださいぃぃ〜〜!!///」
ことり「ねぇねぇ〜かよちゃーん、凛ちゃーん、これだよこれ〜海未ちゃんの衝撃映像〜♪ 見て見て〜☆」
カチャ
にこ「はい没収」ヒョイ
ことり「わぁぁ!! ことりの携帯〜〜!!!」
花陽「あ…にこちゃん…いらっしゃい…♪」
にこ「まったく、相変わらずこの店は騒がしいわね…」ポチポチ
ことり「あ〜〜!! 無慈悲にもデータを消去されていくよぉ〜〜!!」
花陽「騒がしくなったのは…最近だと思うけど…」チラ
にこ「…ま、私が最初に来たときは全然お客なんていなかったけど」ポチポチ
にこ「って、どんだけデータ入ってんのよ…いっそ、初期化した方がいいかしら?」
ことり「だ、ダメぇぇ〜〜〜〜!!! にこちゃんのバカぁぁぁ〜〜〜〜!!!」メソメソ 海未「た、助かりました…にこさん…」ホッ
にこ「別に良いけど…あんたももう少し、身の振り方考えなさいよね」
海未「そ、それは…///」
ことり「だ、ダメだよぉ! 海未ちゃんはウチの大人気モデルさんなんだからぁ!!」
にこ「それは知ってるけどね…。上にいる人間がこんなヘンタイだと分かったら誰だって幻滅するわよ…」
凛「本当だよねぇ…」ジト
ことり「えへへぇ〜…☆」
海未「褒めてませんよ…」 花陽「あれ…? ところで穂乃果さんは…?」
にこ「あー、あいつは買い物してから来るって言ってたけど…」
カランコロン
穂乃果「ほぉーら! 真姫ちゃんもそんなコソコソしてないでーっ」ドン
真姫「ちょ、ちょっと押さないで…!///」
花陽「あ、穂乃果さんに…西木野先生も…いらっしゃいませ…♪」
凛「あー! 結局来たにゃーヤブ医者ーっ!!」
真姫「だからヤブ医者じゃないって、何度も言ってるでしょ…っ!」 にこ「なによあんた、来ないんじゃなかったの?」
海未「にこさん…」
真姫「来るつもりは…なかったんだけど…」
穂乃果「真姫ちゃん、入り口の横でこそこそしてたんだよー?」ニヤニヤ
真姫「ちょ、ほ、穂乃果っ!!///」キッ
にこ「…は! んなコソコソするぐらいだったら堂々と入んなさいよ」
真姫「〜〜…///」
穂乃果「そうだよそうだよ! 誰も真姫ちゃんのことなんて否定してないんだから!」
花陽「うん…♪」
真姫「…」 花陽「凛ちゃんも…本当は西木野先生のこと…嫌ってないもんね?」
凛「それは…まぁ…かよちんも最近はどんどん元気になってるし…」
凛「…このヘンタイに比べれば…」チラ
ことり「…な〜に〜?」ニコ
凛「なんでもないにゃー!!」
にこ「だーから、あんたの好きなようにやればいいでしょ」
真姫「…///」
にこ「大体、自分であれだけ啖呵切ったんだからもっと強気になりなさいよ!」
真姫「…わ、分かったわよ…!」
真姫「堂々としてればいいんでしょ堂々としてれば…! ふん…!///」プイ
穂乃果「…♪」クス
花陽「それじゃ…みんな集まったから、コーヒー淹れるね…?」
凛「海未ちゃんのも冷めちゃったから淹れなおすよー!」
海未「あ、す、すみません…」
穂乃果「あ、穂乃果も手伝うよーっ!」
凛「うん! 一緒にやるにゃー!!」
花陽「あ、で、でも…コーヒー淹れるのは…」アセアセ
海未「…ふふ、なんだか姉妹のようですね」
にこ「そうね…。なんだかんだ、あいつらだけでもこの店はやっていけそうよね」
海未「確かに…。みんな可愛いですし、お客さんの評判も上々と聞きます」
にこ「なんだかんだ、ことりの作る制服は可愛いし…そういうの目当ての客も増えてるんじゃない?」
ことり「ねぇねぇ、真姫ちゃん〜…! 私の衣装…着てくれない…!? 美人女医モデルとして…デビューしないっ!?///」ハァハァ
真姫「い、イヤよ…!///」
海未「それは、否定はしませんが…///」
にこ「…まぁそれだけじゃなく、あの二人が作るコーヒーの味も美味しいわよね」
海未「ええ…」
コト
穂乃果「お待たせーっ!!」
にこ「…あんたが淹れたんじゃないわよね?」
穂乃果「なにー!? 穂乃果が淹れたのじゃ飲めないっていうのー!?」
にこ「飲めない」
穂乃果「うぅ…にこちゃんがヒドイ…」メソメソ
海未「あはは…」
花陽「大丈夫だよ…私と凛ちゃんで淹れたから…♪」
凛「穂乃果ちゃんはお手伝いしかさせてないにゃ!」
穂乃果「させてくれなかったよ…」ズーン
にこ「じゃあ安心だわ」
ことり「真姫ちゃ〜〜ん!! お願い〜〜〜!!! 一度だけでいいからぁ〜〜〜!!」ギュー
真姫「イヤだって言ってるでしょ!! それに医者がモデルなんて許される訳ないでしょ!!」グイグイ
にこ「あんたたちいつまでやってんのよ!! 冷めないうちに飲みなさいよっ!!」
ズズ…
ことり「…美味しいね♪」
海未「ええ…」
真姫「よくこれだけできるものだと思うわよ…」
穂乃果「うん…さすが花陽ちゃんと凛ちゃんだよ! 穂乃果とは大違い…」
にこ「当たり前でしょ…」
花陽「ありがとう…♪」
凛「凛たち、沢山練習したもんね…!!」
真姫「――でも…」
にこ「真姫」
真姫「…ごめんなさい」
花陽「ううん、大丈夫だよ…。西木野先生の言うとおりだから…」
凛「ほんっとう、凛たちじゃのぞみちゃんの味をどうしても再現できないんだよねー…」
真姫「…」
ことり「…ふふ♪」
ことり「あれは、希ちゃんの生きてきた経験値みたいなものだから…誰にも真似できないと思うよ」
穂乃果「そうだね…」
海未「やはりこの店は…希さんあっての喫茶店…なのでしょうかね…」
凛「悔しいけど、ね!!」
花陽「…♪」クス
にこ「っていうか、そろそろなんじゃないの?」
花陽「あ…そうだね…時間は…」
穂乃果「あ、そうそう、みんなー! これ持ってー!!」ガサガサ
凛「えー、なになにー?」
海未「これは…」
ことり「わぁ、懐かしい〜☆」
にこ「…あんた、さっきこれ買いに行ってたの?」
穂乃果「そうー! えへへー、こういうの久しぶりにやりたかったんだー!」
にこ「…穂乃果らしいというか、子供っぽいというか…」ハァ
穂乃果「むー、バカにしてるー!」 凛「でもこれならびっくりするよー!」
花陽「そうだね…♪」
穂乃果「喜んでくれるかなぁ…?」ワクワク
ことり「…ふふ、喜んでくれるよ♪」
ことり「今まで…こういう機会なんて無かっただろうしね…」
ことり「折角こうやってみんなで集まれたんだもん、盛大に祝ってあげよう♪」
海未「はい…♪」
真姫「…///」
穂乃果「うん…!」
アレーデンキツイトルー?
フタリガキテルンジャナイノ…?
穂乃果「あ、きたよ…!」
穂乃果「それじゃみんな、せーので行くよ…!」
穂乃果「せーの…っ!」
カランコロン
「希ちゃん、お誕生日おめでとーーーーっ!!!」パンパン!
……。
コポポ…
希「〜〜…」
絵里「待って、焦っちゃダメよ。ゆっくりとやるの」
希「…うん…っ」
絵里「…うん、その調子よ…」
コト
希「えりち…飲んでみて…♪」
絵里「…ねぇ、そのえりちって呼び名はもう変わらないの…?」
希「な、なんで…? いや…?」
絵里「いや…ではないけど、なんだか恥ずかしいわ…///」
希「それやったら…えりちって呼び続ける…♪」
絵里「なんでよ…」
希「いーやん…♪」 絵里「…じゃあその代わり、そのエセ関西弁だけはやめてちょうだい」
希「なんでー…?」
絵里「お母さんと一緒なんて、考えただけで頭痛がするのよ…」ハァ
希「そうなの…?」
絵里「そう」
希「…うん、わかった…じゃあえりちの前では使わないようにするよ…」
絵里「私の前では、なのね…」
ズズ…
希「どう…?」
絵里「マズいわね…」
希「そっかぁ…ごめん…」
絵里「…まだまだこれからよ。練習を始めたばかり何だから」
希「…うん!」
希「えりち…」
絵里「なに…?」
希「私ね…いつか、えりちと一緒に二人で喫茶店をやるのが夢なの…」
絵里「…私は…嫌よ…」
希「そっか…えりちはもっと大きなところで働きたいんだっけ…?」
絵里「…ええ」
希「…」
絵里「…希と一緒が、嫌というわけではないけど…」
希「…ホント…?」
絵里「…嘘なんか、つかないわよ」
希「それじゃあ…」
希「いつか…私が一人でお店をやりながら…」
希「えりちが帰ってくるのを…待ってる」
絵里「待ってる…?」
希「うん…」
希「お仕事に疲れて帰ってきたえりちを…私が癒やしてあげるの」
希「お疲れ様って言って、私が淹れたコーヒーを飲んでもらうの…♪」
絵里「…」
絵里「…今の希のコーヒーじゃ、全く疲れは取れそうも無いわね…」
希「…えりち…ひどい…」
絵里「ふふ…」
絵里「――そうなったらいいわね」
希「――うん♪」
絵里「じゃあまずはもっと練習しないと、ね?」
希「わかった…!」
……。
■Last Scene
カランコロン
希「いらっしゃいませー♪」
希「あれ?」チラ
希「雨じゃないのに来るなんてめずらしー…。雨でも降るんちゃう?」
希「…自分で言っててよう分からなくなったわ」
希「今日はどしたん?」
希「って、お客さんが店に来てどうしたはないかー」クス
希「どうぞー♪」
コポポ…
希「なんやー、キミはいっつもタイミング悪いなー」
希「今この店なー、新しい子が二人も入ったんやけど、調度休みなんよー」
希「どっちも可愛い若い女の子やねんけどな♪」
希「あ、まーたそういうところに反応するー…」
希「やっぱりタイミング良かったんかな。…あの子らの無事が一番やもん」ウンウン
コト
希「それとも、ウチだけのが良かったー…?」
希「二人きりのほうがええんやないー? ウチが目的なんやろー?」クスクス
希「アカンアカンー、お触りは別料金やでー!」
希「そんなことしない? …分かってるよー♪」
希「キミは優しい人やもんなぁー…」
希「っていうか、コーヒーで良かったよね? 何にも言わずに持って来ちゃったけど」テヘ
希「良かった♪ まぁ、もしダメでもウチが飲めば良いだけなんだけどさ」
希「それじゃ横、失礼するでー…♪」スト
希「はー疲れたー…」
希「ん? 疲れてるのが珍しいって?」
希「あー、最近若い子二人に色んな仕事任せてるからなー。たまに一人になると疲れるんよね…」
希「ま、これが元々の形なんやけど…。今までそんなお客来なかったからなー」
希「あ、そんなこと言ってー。ざんねーん! 今は本当にお客増えてるんやよー♪」
希「昔とは違って、今は結構忙しいんよ?」
希「びっくりでしょ? …まー今は何故か一人もお客いないんやけど」アハハ
希「なんだかんだ、色々あったからねー」
希「この短い間に、ウチも成長したんよ…」
希「本当、この店にやってきてくれるお客には感謝しかないで…」
希「んー?」
希「ふふ…キミは多分、この店で一番最初の常連さんやもんね♪」
希「ウチの大切なお客さんの一人やで…♪」クス
希「本当に――ありがとうな…♪」
サァー…
希「…あー、雨降ってきたでー?」
希「全然予報なかったんやけどなー。通り雨かな?」
希「まぁでも、やっぱりキミが来るときは雨が降るんやね?」クス
希「それはそれで持ってるっていうことかもなぁー♪」
サァー…
希「…」ハァ
希「…雨の音聞いてると、なんとなくセンチメンタルな気分になるよなぁー…」
希「え、ガラじゃ無い…?」
希「…ふーんだ」
サァー…
希「…今日はなんかあったん?」
希「んー…毎回何かあったときに来てるイメージあるけど…」
希「そんなことない…?」
希「そうかなぁ…」
サァー…
希「ふふ…ええんよ?」
希「ウチにだったら何でも話してくれてええし、いくらでも甘えてくれても構わないんよ」
希「――今日はウチら二人きりやし…?」
希「何しても――…」
希「あ、ちょ…っ」
ドン
希「――」
サァー…
希「…好きにしてもええよ?」
希「…なーんてな」クス
希「あんまり度が過ぎるとトサカの女の子が乗り込んでくるでー?」キシシ
希「え? 多分どっかしらに盗聴器が仕掛けてあるからな―」
希「ウチも場所は分からないんやけど、いっつも会話把握されてんねんなー」
希「まったく困ったもんやでー?」クスクス
希「分かったら、その手をどけて――?」
サァー…
希「ふふ…まぁ別にウチが誘ったみたいなもんやから、気にしなくてええよ?」
希「それにお互い、本気じゃなかったやろー?」クス
希「キミには素敵な恋人さんおるんやし――…」
希「ウチやって…」
希「えー? ふふ…ひみつー♪」
サァー…
希「…人間、辛いときは何するか分かったもんや無いからなー」
希「そんな時は、言葉だけでいいから吐き出すんやで」
希「ウチやったらいくらでも聞いたるからなー…?」
希「その為のウチの喫茶店やもん♪」
ズズ…
希「…あ、もうぬるくなっちゃったから、淹れ直してこよかー?」
希「大丈夫ー…?」
希「…どう、美味しい?」
希「…そか、それなら良かった♪」
パラパラ…
希「…お、雨止んできたみたいやなー? やっぱり通り雨やったな」
希「んーもう帰るー? もうちょっとゆっくりしてってもええんよ?」
希「そか…」
希「まぁ、お日様の下歩くのも大事やけどな♪」
希「ふふ…これだけは覚えておいて」
希「ウチの喫茶店の味は…」
希「お客さんの心と一緒にあるんよ」
希「ウチはいつでも、どんな時でも…コーヒーを淹れて待ってる」
希「だから――また来てな♪」
カランコロン…
終わり。
というわけで、ひたすら長い物語でしたけど…最後までお付き合いしていただけた方は本当にありがとうございました
途中の途中の反応が本当にありがたかったです
一応最後に宣伝をー、過去に書いてた作品をいくつか…
よろしければどうぞ
ことり「私たちのさんかく関係」
にこ「矢澤議長と」絵里「三年生ユニット」
ゆきほ「おねーちゃんなんか、だいっきらいっ!!」
穂乃果「有咲ちゃん〜!」 有咲「あ〜〜もう! 抱きつくな!!」 雪穂のやつは読んだことあったな
今回のやつも良かったです乙 大作お疲れ様でした
読み応えあって面白かった
また書いてね
過去作は雪穂、ことりは俺も読んだことある
あと、「矢澤議長と」ってことり、花陽もある?過去ログにあるんだけど >>835
ありますね
にこ「矢澤議長と」ことり「面倒な南」
にこ「矢澤議長と」花陽「私らしい会議」
その他、真姫、ほのりんなんかも
読んでもらってありがとうございます めちゃくちゃ好き乙
ただ雨の日に来る人は誰だったんだろうっていうもやもや >>837
結構見逃しがあるのが残念
ログ残ってるのは今度読み返してみます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています