千歌「それぞれの休暇」
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千歌「大変だよ曜ちゃん!」
曜「どうしたの千歌ちゃん!」
千歌「財布を無くしちゃった!これじゃ帰れない!」
曜「そりゃ大変だね〜!」
千歌「どうしよう曜ちゃん!この辺オバケ出るんだよね!?」
曜「仕方ない、カブトムシを集めて子供に売りつけてバス代を稼ごう!」
千歌「ナイスアイデア!さすが曜ちゃん!」
曜「行くぞー!」 3時間後
千歌「……」
曜「……」
千歌「曜ちゃん、ここどこ……?」
曜「どこだろうね……」
千歌「まさか高校生にもなって曜ちゃんと森に迷うなんて……」
曜「今のって、私の名前の『よう』と迷うの『よう』をかけて……」
千歌「かけてない!」
曜「なーんだ」 千歌「あーあ、こんなことになるならあんなもの見つけなければ……」
曜「だから言ったのに。ヘラクレスオオカブトは日本にはいないって」
千歌「確かに見たんだってば!あれは絶対こっちに飛んでいった!」
曜「見間違いだようそんなの」
千歌「黄色と黒で、すごく大きくて、こーんなにとんがってたよ!」
曜「ペンギンと見間違えたんじゃない?」 千歌「ペンギンがこんなとこにいるわけないじゃん!まだヘラクレスオオカブトの方が可能性あるよ!」
曜「そうかな」
千歌「それにペンギンの大きさで見間違えるわけないでしょ!」
曜「そうかも」
千歌「っていうかそもそも、ペンギンは飛ばないだろー!」パチン!
曜「痛い!なんで叩いたの!?」
千歌「とにかく、森に迷ったときはどうすればいいのかネットで調べてみるよ!」
曜「頑張って!」 千歌「……」
千歌「大変だよ曜ちゃん!」
曜「どうしたの千歌ちゃん!」
千歌「圏外だ!ネットが繋がらない!」
曜「圏外!?そりゃ大変だ!」
千歌「どうすればいいんだあ〜」
曜「とりあえずケータイが圏外の時の対処法をネットで調べてみるよ!」
千歌「さすが曜ちゃん!」
曜「……」
曜「ダメだ千歌ちゃん!こっちも圏外だ!」
千歌「そりゃそうだ!」 曜「うかつだったよ千歌ちゃん」
千歌「でもどうする曜ちゃん?このままだと私たち干からびて死んじゃうよ!」
曜「大変だ!そのうち腐り果てて、発見された時はほろほろになってるよ!で耳とか口から蛆虫が……」
千歌「グロいよ曜ちゃん!やめて!」
曜「じゃあもっとグロい話して上書きしよう!海に落ちて死んだ人っていうのはね……」
千歌「それもっと聞きたくないし!グロい方向に上書きしても意味ないよ!」
曜「そっか、うかつだったよ千歌ちゃん」
千歌「もうー、どうしたらいいんだろう……明るいうちに出ないと本気でまずいよ」 曜「あーあ、千歌ちゃんがこんな道なき道を進んでこなければ……」
千歌「私のせい?」
曜「妙ちきりんな虫を見たとか妄想してこんなところまで来るからだよ」
千歌「いや、それはホントにいたんだって!」
曜「いるわけないじゃんヘラクレスオオカブト!薬でもやってるんじゃないの!?」
千歌「あーもういい!最悪!」
曜「最悪なのはこっちだよう!」
千歌「うるさい!私もう帰る!」
千歌「……」
千歌「迷ってるんだったー!」 曜「もう!」
千歌「どうしようちゃん」
曜「今のって、どうしようの『よう』と私の名前の『よう』を被せて……」
千歌「被せた、被せたから!」
曜「でも、ふざけてる場合じゃないね。どうする?日暮れまでに出られなかったら私たちヤバいよ」
千歌「うん」
曜「そうだ、木に登ろう!」
千歌「木?」
曜「高いところから見たら帰り道が分かるかもしれないよ!」 千歌「やめよう曜ちゃん。落ちたら死んじゃうよ」
曜「そのときは一緒に蛆虫になろう」
千歌「なりはしない」
曜「とりあえずちゃちゃっと行ってくるよ」
千歌「気を付けてね、要注意だよ曜ちゃん」
曜「今のは要注意の『よう』と私の『よう』を……」
千歌「意識した」 千歌「どうー!?なんか見えたー!?」
曜「うーん何にも見えない!」
千歌「そっかー」
曜「とりあえず飛び降りるから受け止めてね」
千歌「わざわざ危険な降り方しないで!」
曜「そっか、そうだね。うかつだったよ千歌ちゃん」
千歌「それ何回も言ってるけどカッコよくないから!」
曜「そんなー!」 千歌「大変だよ曜ちゃん!」
曜「どうしたの千歌ちゃん!」
千歌「もう暗くなってきたよ!」
曜「ホントだ!もうここで一夜を明かすしかないね!」
千歌「そんなあ」
曜「幸い、さっきいたカフェのトイレで充電したから、ケータイの電池は残ってるよ」
千歌「犯罪!」
曜「この状況でそんなこと気にしてられないよ!」
千歌「この状況になる前の話なんだけど……」 曜「細かいことは気にしなくていいんだよ」
曜「とりあえず、このとぼしい明かりでなんとか夜を過ごそう」
千歌「こうするしかないのかなあ」
曜「そうだね」
千歌「お腹空いたよ曜ちゃん」
曜「カロリーメイトならあるよ」
千歌「パッサパサだけどしかたないかー」モグモグ 曜「それ賞味期限3年過ぎてるけど……それにしても、夜の森ってこんなに暗いんだね」
千歌「なんか落ち着かないね……」
曜「うん。そしてこの話のオチもつかない」
千歌「うん?」
曜「おあとがよろしいようで」
千歌「えっ……?」 花丸「……」モグモグ
梨子「いい天気だねー」
花丸「……」ゴクン
花丸「うん。ただ……ちょっと暑いずら」
梨子「そうだね」
梨子「でも、晴れてるおかげで景色はきれいだよ。水も、草も、木の葉も。キラキラしてる」
梨子「花丸ちゃんは、夏は好きじゃないの?」
花丸「ううん。まあ、夏の暑さは苦手だけど……」 梨子「けど?」
花丸「でも……梨子ちゃんが言ってるみたいに、みんなキラキラしてる。それは、太陽の光を受けているから。命の輝きだよ」
花丸「だからこの暑さだって、おらたちが生きていることの証なんだって思えるずら」
梨子「夏は、生命を感じられる季節だってこと?」
花丸「うん」
梨子「そっかあ……なんだか、わかるかも」 りこまる支援
ようちか編もG′s版のアホの子曜ちゃんっぽくて可愛かったよ 花丸「いい絵は描けた?」
梨子「うん……まあまあ」
花丸「梨子ちゃんは、こういうところによく来たりするの?」
梨子「ううん。いつもは部屋に閉じこもってるんだけど……今日はいい機会だと思って」
花丸「ふ〜ん……」
花丸「……」 梨子「……」
花丸「あれっ、お茶は……」
梨子「はい」
花丸「あっ、ありがとう」 花丸「……ごちそうさま」
梨子「サンドウィッチ、おいしかったね」
花丸「一緒に作った甲斐があったずら」
梨子「うん」
花丸「それじゃあ……梨子ちゃんの絵、見せてほしいな」
梨子「ちょっと恥ずかしいけど……はい」
花丸「わあっ、すごい。上手ずら」
梨子「そうかなあ……?」 花丸「マルの絵とは大違いずら」
梨子「花丸ちゃんのはどんなの?」
花丸「これ……いろいろ描こうと思ったら、詰め込みすぎちゃって……よくわからない絵になったずら」
梨子「ううん、そんなことないよ。カラフルだし、色が濃くて力強いけど、バランスはとれてる。すっごく綺麗だと思うよ?」
花丸「そう?」 梨子「私の絵は、なんだかうっすらしてて……」
花丸「マルには、優しい感じに見えるなあ。きっと、梨子ちゃん自身の優しさが、筆にも伝わってるんだよ」
梨子「そうかな?」
花丸「うん」
梨子「そう言われるとこうでもいいのかなって思うんだけど……」
梨子「ホントは、眩しい感じにしたいの。鋭い夏の日差しが表現できたらいいんだけど……」
花丸「うーん……」
梨子「何かいい方法ないかな?」 花丸「マル、絵のことはよくわからないからなあ……でも、鋭い感じを出したいなら、実際に鋭く描いてみればいいんじゃないかな」
梨子「鋭く……?」
花丸「この草とか、葉っぱとか、水の流れとか。すごくまる〜く描いてるけど、もっとパリッとしててもいいと思うずら」
梨子「そっか……」
花丸「小説でも、気持ちと景色がマッチしたりするのはよくあることなんだ。主人公が失敗から立ち直ったら雨が上がったりとか」
花丸「現実だったら、失敗して雨が降ったり、立ち直ったらそれが止んだり、なんてことは滅多にないと思うけどね」
花丸「梨子ちゃんの絵は本物そっくりだけど……作品なんだから、自分の頭の中のイメージで勝手に描き換えちゃってもいいんじゃないかなあ?」
梨子「……」
花丸「どう?」 梨子「……それ、いいかもしれない。ありがとう、花丸ちゃん」
花丸「マルは思ったことを言っただけだよ」
梨子「ううん……私、変な方向に力を入れてたみたい」
花丸「まあ、お役に立てたならよかったずら」
梨子「今日は花丸ちゃんと一緒に来てよかったよ」
花丸「えへへ……ちょっと照れちゃうずら」
梨子「……それじゃあ、花丸ちゃんの言うとおりに描いてみるね」
花丸「梨子ちゃんの、納得のいく絵が描けるといいね」
梨子「うん」 花丸「じゃあ、マルは……」ガタッ
梨子「もう絵は終わるの?」
花丸「ううん。違うよ」
梨子「えっ、じゃあ……」
花丸「マルは、梨子ちゃんを描くよ。いい?」
梨子「えっ、そんな。恥ずかしいよ……」
花丸「誰かに見せるわけじゃないし、平気ずら」
梨子「でも……」 花丸「梨子ちゃんがそうやって絵を描いてる姿……とっても、『生きている』ずら」
梨子「生きてる?」
花丸「うん。だからマルは、梨子ちゃんを描きたいずら」
梨子「……」
花丸「まあ、そうは言っても、そんなに上手には描けないし……イヤなら勝手に描いたりはしないけど」 梨子「……ううん。そういうことなら、描いてほしいな。花丸ちゃんに」
花丸「よし。それじゃあ、張り切って描くずら」
梨子「頑張ってね」
花丸「うん」
梨子「……」
花丸「……」
花丸「……それにしても、今日はよく晴れてるなあ……」 ほえー
いい雰囲気の話を書くなー
ずっと読んでいたいぜ |c||^.- ^|| あくあくaqoursですわ 鞠莉「あーダイヤ、遅いじゃない」
ダイヤ「中々目当てのものが売られていなくて……」
鞠莉「もう善子も来てるわよ、入って入って」
ダイヤ「ええ……それにしても暑いですわね」
鞠莉「そうね……って、そのタオル、ルビィがいっつも使ってるヤツじゃない?」
ダイヤ「あらっ、本当。間違えて持ってきてしまったのですね……」
鞠莉「まあいいわ。とにかくあがって」 善子「あっダイヤ。ヤッホー。ダイヤホ」
ダイヤ「ダイナモみたいに言わないでくださいまし」
鞠莉「よーし、それじゃあ始めるわよ!闇鍋!」
ダイヤ「どうしてこんな真夏に鍋なんですの?暑くてたまりませんわ」
鞠莉「冷房ずっとつけてると寒くなってきちゃって」
ダイヤ「なら消せば良いのではなくって?」
善子「それは暑いでしょ」 ダイヤ「ちょうどよくやればいいじゃない!」
鞠莉「うるさいわねー!全部鍋やるための苦しい口実なんだから受け入れなさい!」
ダイヤ「急に正直ですのね」
善子「なんでもいいけど早く始めましょう?私この日のために一昨日から何も食べてないんだから」
ダイヤ「楽しみにしすぎでしょう」
鞠莉「善子くらいの張り切りようがダイヤにも欲しいわね〜」
善子「ねえ〜」 ダイヤ「あなたたち……」
ダイヤ「まあいいですわ。とりあえず始めましょう」
善子「消灯!!!」
ダイヤ「声が大きい!」
鞠莉「ターンオフ!」
ダイヤ「なんで英語なんですの!?」
ダイヤ「はあはあ……」
善子「元気そうね」
ダイヤ「あなた達のせいですわ!」 ダイヤ「……ううん、じゃあまずは私から……」ドサドサ
ドサドサドサ…
善子「多いわね。いったい何なのかしら」
鞠莉「あのダイヤのことだから、多分……煮つけ、とか?」
善子「何の煮つけ?」
鞠莉「う〜ん……プディング?」
ダイヤ「あなたたちの中の私はそんなにヘンな人ですか?」
善子「常識を持つ者は立ち入ることができない、それが闇鍋よ!」
ダイヤ「私は無理やり連れてこられたのに……」 善子「じゃあ次は私ね!」ドサドサ
チャプン
ジュウウー
ダイヤ「今変な音がしましたわよね?」
善子「鞠莉のお腹の音でしょ」
鞠莉「失礼ね!ダイヤのよ!」
ダイヤ「それなら自分から言い出したりしませんわ」 鞠莉「じゃあ最後は私ね!」カパッ
ブブブブブブ
鞠莉「あれっ?」
ブブブブブ
ダイヤ「ちょっと、何の音ですの!?」
バタバタバタ
善子「きゃっ!なんか顔に当たった!」
ガシャーン! 善子「何よ今の音!?」
鞠莉「あー、飛んでっちゃった!」
ダイヤ「飛ぶ!?」
善子「いったい何を入れようとしたの?」
ダイヤ「今電気をつけますわ!」
パチッ 善子「ガラス割れてるじゃない!何を入れようとしたのよ!」
鞠莉「……カブトムシ……」
ダイヤ「はっ!?」
鞠莉「だーかーら、カブトムシよ!」
ダイヤ「生きたまま!?」
鞠莉「イキがよすぎたのかしら。ガラスを突き破ってどっか行っちゃったわ」
ダイヤ「なんと言ったらいいのかわかりませんが……大丈夫ですか?」
鞠莉「怪我はないわよ」
ダイヤ「フィジカルな心配はしていませんのよ」 鞠莉「でももったいないわねー。せっかく外国から取り寄せた、世界最大級のカブトムシだったのに」
ダイヤ「鍋に入れて食べてしまうのも、充分もったいないですわ」
善子「私が一番ぶっ飛んでると思ってたのに……やるわね、鞠莉」
鞠莉「ふふん」
ダイヤ「ちなみに善子さんは何を入れたんですの?」
善子「闇鍋でそれ聞く?」
ダイヤ「もう闇は追い払いましたわ」
鞠莉「クールね」 善子「発表します!私が入れたのは……なんと、ピザ!」
ダイヤ「……」
鞠莉「あー……」
ダイヤ「……そうですか……」
善子「何よその反応!」
ダイヤ「鞠莉さんのインパクトが大きすぎて……ちょっと」
善子「なんてことを」 鞠莉「ちなみにダイヤは?」
ダイヤ「私が入れたのは白菜と春菊、それに豆腐ですわ」
鞠莉「固っ!」
ダイヤ「何が!?」
善子「なんで闇鍋なのにそんなまともなもの持ってくることができるのよ!」
ダイヤ「あなたたちがふざけたものを持ってくると思ってわざわざ値の張る冬野菜を買ってきたんですわ」
鞠莉「冬野菜にする必要は全く感じられないんだけど」
善子「もしかして、ダイヤもちょっと張り切ってたり?」
ダイヤ「いえ、別にそんなことはありませんが……」 鞠莉「あれ〜?」
鞠莉「も〜、ダイヤったら照れ屋さんなんだから!」
善子「ほら、食べましょう!いい塩梅に煮えてるわよ」
ダイヤ「そうですね……」
鞠莉「はい、どうぞ」
ダイヤ「ありがとうございます」
善子「ふふっ」
鞠莉「それじゃあ、合掌!」
ダイヤ/善子/鞠莉「いただきまーす!」
ズズッ 鞠莉「まず!」
ダイヤ「ピザですわ!!!!」
善子「声大きいわよ」
ダイヤ「シャラップ!」
鞠莉「なんで英語なのよ」
ダイヤ「はあー……まったく……」
ダイヤ「……ふふっ。たまにはこういうのも、悪くないかもしれませんわね」 ルビィ「どこにいっちゃったんだろう……」
ルビィ「部室にも屋上にもないし……教室かなあ……」
ルビィ「……あれ?」
果南「……」
ルビィ「果南ちゃん?なんでこんなところにいるんだろう……今日はお休みなのに……」
ルビィ「果南ちゃん?」
果南「……」
ルビィ「あれ……寝てる?」 ルビィ「ぐっすり寝てる……疲れてるのかなあ」
ルビィ「……」
ルビィ「起きるまで待ってようっと」
果南「……」
ルビィ「……無防備」
ルビィ「いつもは頼りになるお姉ちゃんみたいな存在だけど……こうして見ると、なんだか子供みたい……」
果南「……うっ、ううん」
ルビィ「あ……」 果南「はっ」
ルビィ「果南ちゃん、おはよう」
果南「ごめんルビィ、気づかなかったよ。いつからいたの?」
ルビィ「ついさっきだよ」
果南「そっか……」
ルビィ「なんで教室にいるの?」
果南「忘れ物を取りに来てたんだ。ただ、なんとなく座って考え事してたら眠っちゃって……」
ルビィ「寝不足?それとも……」
果南「いやあ、最近体力が落ちてきちゃったのかな……なんだか疲れがたまりやすいんだ」 ルビィ「それって、夏バテ?」
果南「去年まではこんなことなかったんだけどね」
ルビィ「ふーん……」
果南「何か用?」
ルビィ「ちょっと、探し物……」
果南「そうなんだ」
ルビィ「……あれっ。果南ちゃん、泣いてるの?」
果南「ちょっと、ね。夢を見てたんだ」 ルビィ「どんな夢?」
果南「別に言うほどのものじゃないよ」
ルビィ「ええっ、教えてほしいな」
果南「どうしても……?」
ルビィ「うん!」
果南「うーん……じゃあ、まあ……軽く」 果南「……雨が降ってたんだ。私はバス停で雨宿りしてた」
果南「しばらくぼーっとしてたら、いつのまにか一匹の猫が横に座ってたんだ」
果南「つやつやした黒い毛の猫だよ」
果南「そのときは夢の中だったから不思議に思わなかったけど……その猫、濡れてないし、いったいどこから来たんだろう」
果南「どこから来たと思う?」
ルビィ「えっ、いや……わからないよ。どこから来たの?」
果南「いやー、私にもよくわからないんだけどね。あはは」
ルビィ「ええ?」 果南「ううん、それでね。その猫がバス停を飛び出して道路に出たんだ」
果南「そしたら、その猫が歩いたところだけ地面が乾いて、雨も降らなくなった」
果南「猫はそこらじゅうを走り回って、どんどん地面を乾かせて、雨をやませていった。私は座ったまま、その様子をじっと見てた」
果南「そのうちバス停の前の車道にはちょっとした晴れの広場ができたんだ」
ルビィ「その猫さんは何者なんだろう?」
果南「それがわからないんだよね……」
ルビィ「なんだか面白い話だね!最後まで話して!」
果南「うん」 果南「で、私はそこで猫と追いかけっこをして遊んだ。不思議とすごく体が軽かったよ」
果南「しばらくして、バスが来たんだ。私たちは雨除けのある歩道の方に退避した」
果南「やってきたバスは雨に濡れてた」
ルビィ「果南ちゃんはバスでどこに行こうとしてたの?」
果南「うーん……目的地みたいなのは思い出せないけど……でも、次のバスに乗らなきゃいけないってことはわかってたよ」
ルビィ「へえー……」 果南「バスのドアが開いたから、私は乗り込んだ。猫も一緒に乗ってきた。バスの中には誰もいなかったよ」
ルビィ「運転手さんもいなかったの?」
果南「あれっ、そういえば……どうだったんだろう?よく思い出せないけど、まあ、いたんじゃないかな」
ルビィ「ふーん……」
果南「それで、私は前から3番目くらいの座席に座ったんだ。猫は私の膝の上に飛び乗った」
果南「それからドアが閉まって、バスが動き出して……」
果南「そうだ。この時アナウンスで何か言ってたから、やっぱり運転手はいたんだろうね」
ルビィ「そっかあ。アナウンスの内容はどんなの?」
果南「覚えてないね〜」
ルビィ「そっかあ」 果南「それで、バスが道を走っていったんだけど……」
ルビィ「うんうん」
果南「私は猫を撫でながら、窓の外の景色を眺めてた。相変わらず雨は降ってたけど、視界を遮っちゃうほどの強さじゃなかった」
果南「最初はいろんなお店や建物なんかが見えてて面白かったんだけど……」
ルビィ「けど?」
果南「いつの間にか、同じ景色を繰り返してるのに気づいたんだ」
ルビィ「えっ……」
果南「それに気づいてから、だんだん外の景色を見るのも飽きてきちゃって。降車ボタンを押したんだ」
果南「そうして、次の停留所でバスが止まった。私はバスを降りた」
果南「猫にも降りるように手招きをしたんだけど……ついてこなかった」 ルビィ「なんでだろう」
果南「さあね」
果南「私も大して気にしなかったんだ。猫はまだ行きたい場所があるんじゃないかと思って、私は手を振った」
果南「ドアが閉まって、猫の姿は見えなくなった。すぐにバスは行っちゃった」
果南「相変わらず雨が降ってた。私はずっと待ってたんだけど、もう猫もバスも来なかった」
果南「よく見たら、バス停は最初にいたところと同じ場所だった。私は戻ってきただけだったんだ」
果南「それに気づいたら、なんだかすごく寂しくなって……」
果南「……で、その後はよくわからないけど……目が覚めた」 ルビィ「……なるほど……」
ルビィ「なんだか不思議な話だね」
果南「見ているうちは何とも思わないのに、よく考えてみると変な夢ってよくあるよね」
ルビィ「あっ、わかる」
果南「それから、すぐに忘れちゃうんだよね。どんな夢だったかは覚えていても、細かいことは覚えてなかったりとか」
果南「今の話だって5分前くらいに見たはずなのにもうところどころ忘れちゃってたし」
ルビィ「うん」 果南「夢ってなんなんだろうね?」
ルビィ「何かの本で読んだことあるけど……夢を見てるときって、記憶を整理してるんだって」
果南「へえ〜」
ルビィ「それで、そのときの不安とか嬉しい気持ちとかが夢の内容に現れることもあるんだよ」
果南「夢博士だね」
ルビィ「えへへ」
ルビィ「でも……夢に気持ちが現れるっていうのが本当なら、果南ちゃんは寂しかったのかなあ?」
果南「さあ」 ルビィ「果南ちゃん、心配な事があるなら相談してね。ルビィは頼りないかもしれないけど、それなら他の誰かでも……」
果南「ううん。大丈夫だよ」
ルビィ「ならいいんだけど……」
果南「それに、ルビィは頼りなくなんかないよ」
ルビィ「本当?」
果南「ちょっと前まではちっちゃな妹みたいな感じだったけど……もう高校生なんだからね」
ルビィ「そうかなあ」
果南「むしろ、千歌や曜の方がまだまだ子供かもしれないよ。いつもワイワイ騒がしいし、すぐにどこかへ行っちゃうし」
ルビィ「いや、さすがにそんなことは……」
果南「あはは」
果南「……」 果南「……ルビィちゃん。いつか、私たち上級生がいなくなったら……この学校や、内浦を守ってくれる?」
ルビィ「……う……うん」
果南「そう。頼りにしてるよ」
ルビィ「……頑張るよ。約束する!」
果南「ありがとう」
果南「……」ガタッ
ルビィ「どこか行くの?」 果南「ちょっと走ってくるよ。体力が落ちちゃ困るからね」
ルビィ「ルビィも行く!」
果南「ついてこられる?」
ルビィ「わかんないけど、頑張る」
果南「わかった、それじゃあ行こう」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています