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果南「名もなき想いを胸に載せ」
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0001名無しで叶える物語(笑)
垢版 |
2018/08/06(月) 01:59:13.77ID:CVz/WGSJ
「終点、東京、東京です。ご乗車、ありがとうございました。お忘れ物をなさいませんよう、ご注意下さい」

マイクのスイッチを切ってから、ふうっと息を吐き出す。
凝った首と肩を軽く回してホームに降り立つと、夜の冷たい空気が身に染みた。
これから今日最後の仕事として、各車両に忘れ物や異常がないかまわって確認しなければならない。
人が降りたのを見計らって、さっさと済ませちゃおうと早足で歩き出した。
0002名無しで叶える物語(笑)
垢版 |
2018/08/06(月) 02:00:15.68ID:CVz/WGSJ
七号車の前で、足を止めた。
人の姿があった。椅子に座って首が垂れたまま動かない女性は、多分眠ってるらしい。
指さし確認で振り回していた腕を下ろして、彼女のもとに歩み寄った。

果南「あの、お客さん」

東京周辺では金髪もさして珍しくないけど、毛先に少しクセのあるポニーテールには見覚えがあった。
まさかね、って思い直して、中腰の体勢でもう一度声を掛ける。

果南「お客さん、終点ですよ」

  「……あ、すみません」

返ってきたのは流暢な日本語。
そっと上げられた顔は白くて端正で、開かれたのは透き通るようなアイスブルーの瞳。
息を呑んだ。
私の知る人に間違いなくて、高揚して、どうしようって思う。
けど、今は仕事中。選択肢はない。
話し掛けたい衝動を振り切るようにその場を立ち去る。
0003名無しで叶える物語(笑)
垢版 |
2018/08/06(月) 02:00:35.42ID:CVz/WGSJ
果南「……いえ」

逃げるように、一刻も早くと奥の車両の方に進んでいく。
しかしその私を、追いかけてくるような忙しない足音があった。
私を、絢瀬絵里さんは、呼び止めた。

  「あの、一つお伺いしても」

果南「どう、されました?」

  「突然で申し訳ないですけど、松浦果南さん、ですよね」

心臓が止まりそうになる。

  「私も以前スクールアイドルをやっていたんです。もしこの後お暇でしたら、私と少し、お茶しませんか?」

声も出せずに、こくりと首だけ動かした。

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