【SS】ねえ、絢瀬。
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「ねえ、絢瀬」
ちょっとちょっと、ねえねえ、嘘でしょう。
引くわ。正直、引く。エリチカ引いちゃう。だってね、私たちは今、お喋りしてたわけじゃない?
部室にいくまでの道すがら、花のJKが、廊下で、仲よさげにお喋りしてたわけじゃない?
そりゃあ、私と貴女は親しい関係になってから、それほど時間はたってない。
先週、私がμ’sに加入するまで、良くて『友達の友達』、悪くて『ただでさえ僅かな部費を更に削りとろうとする(にこにとっては)悪の生徒会長』だったわよ。
だから、たった一週間ぽっちで、しかも廊下で偶然あって、そのまま仲よさげに会話できるようになったなら、それはかなりの急接近だといえるのはわかる。
加えて、あなたがそういう人だというのはわかってる。人の名前をあまり呼ばない性格というか。
よく耳にするのは『希』くらいなもので、他の子には『あんた』とか『ちょっと』とかが多くて、たまに名前で呼ぶ。
私は時折、『生徒会長』と呼ばれるだけで、いつになったら名前で呼ばれるのだろうと少し期待していて、ついには待ちきれなくなって
こちらからきっかけを作ろうと、頑張って『矢澤さん』と呼んでいたのを『にこ』といってみたのだ。
顔を赤くしながら、何気なしに、話の最中に、『にこ』と織り交ぜて呼んでみたのだ。
―――そして、上記のお言葉である。 わざとやっているんじゃないかっていうくらいのタイミングで、勇気が出るまで後三秒っていうくらいで
にこのダメ押しの『絢瀬』によって一縷の望みは潰えてしまった。
完全に『絢瀬』、まごうことなき『絢瀬』。
ぼやっと思い浮かぶのは、ああそういえば、彼女から『あんた』とか『ちょっと』以外で呼ばれることにウキウキしていたなあ、ついさっきまでの私……という味わい深くない感慨だ。
感動の予定だったのが、今ではショックがドワーっと襲ってきている。
そりゃね、だって、『絢瀬』だもの。未だに最初の『絢瀬』が脳内でリフレインしていているもの。『絵里』じゃないもの。『絵里』がいいもの。
μ'sに参加したのをきっかけに、同級生のにこと仲良くなれたらと思って、希に相談して、勇気をだして、一昨日くらいから『にこ』と呼ぶ機会をうかがっていて、やっと実践できたのに、これだ。
もしも今、私が暗闇の密室に放り込まれるようなことがあったなら、きっとノータイムで泣き出してしまうだろう。それくらいヘコんでいる。
「なにかしら、って。急に立ち止まってぼーっとしてるんだもん。どうかした?」
そういって、印象深い赤い瞳をくりくりさせながら、俯き気味だった私を上目遣いに、心配そうに覗き込んでくる。はい可愛い。 「なんでもないわ」
自分には持ちえないマスコット的な可愛さを見せつけられて、意気消沈していた私の心はエベレストよりも高く浮き上がって、そのままどこかへ吹き飛んでいった。
少し不安げに、私を見つめるにこ。ああ、抱きしめたい。ぎゅってしたい。もう『絢瀬』と呼ばれたことなんてどうでもよくないかしら。
それに、逆に考えてみれば、私だけ名字呼びという特別だともいえるわけで。たった一週間の付き合いで特別まで登りつめた私、すごくない?
そんなことを考えていたら、表情に出ていたらしい。にこに指摘された。
「バカなこと考えてるでしょ」
「えっ」
「顔が百面相みたいに動いてるわよ」
努めて真顔を抑えてみる。しかし、赤面するのは抑えられなかった。
私の間の抜けた行動に、にこは苦笑している。ああ、恥ずかしい。
賢い可愛い生徒会長だって失敗くらいするのだから、見なかったことにしてほしい。 「ちょっと、あんまりこっち見ないで……!」
いってから、失敗したと思った。
あまのじゃくな彼女に、こっち見ないでというのは、こっち見てといっているようなものだと、この一週間の付き合いで学んでいたはずだったのに。
「い・やっ♪」
当然のように更に赤面させようと、にこはニヤニヤと笑いながら、私と目を合わせようとしてくる。
視線を逸らしても、逸らしても、にこが視界に入ってきて、目と目をあわせようとする。
気恥ずかしさに顔が熱くなってきて、そのうち手先まで震えだした。
にこは私をいじめるのが楽しくて仕方がないかのように満面の笑みを浮かべている。
そのうちに我慢できなくなって、顔を手で覆い隠して、座り込んだ。
にこは、「耳まで真っ赤になってる」とひとしきり笑ってから、ごめんごめんと謝った。 「……にこの意地悪」
「だって絢瀬、可愛いんだもの。いじめたくもなるわよ」
私のこと、可愛いと思ってくれてるんだ。
私が、にこのことを可愛いと思うように。ニヤけそうになる表情筋を厳しく取り締まる。なんだか、胸が暖かくなってきた。
希もこういう風にからかってくること多いし、やっぱり、友達ってこういうものなのかしら。
ともあれ、にこと気安いやりとりができることは、純粋に嬉しく思う。
惜しむらくは、名前で呼ばれないことだけれど、焦っても仕方ないか。
これから一緒にすごすうちに『絵里』と呼んでもらえばいいのだから。
ただし、いつまでも呼ぶ気配がなさそうならば、プライドを打ち捨てでも駄々をこねて、強制的に呼ばせる心づもりはしておきましょう。
「ほらほら、立った立った。だいぶ時間食っちゃった。そろそろ部室行かないと、みんな待ちくたびれちゃうわよ!」
「にこのせいでしょ……」
「……なんのことにこ〜?」
「すぐそうやって誤魔化すんだから……」
まあ、いいでしょう。可愛いから今日のところは誤魔化されてあげるわ。
メンバーに遅刻を叱られたら、にこの分も私の責任だといってかばってあげる。
でもね、にこに意地悪された分は、お返ししてもいいわよね。
友達同士の意地悪は心の交流やで、と希がよくいっているから、間違っていないはず……。たぶん。 「絢瀬ー?」
さて、にこをどう調理しましょうか。
実に加減が難しい。にこと希の間柄ならば、胸を揉んでわしわしMAXや!といっても平気なのでしょうけど。
もし私が同じことをすれば、にこにはドン引きされるのは確実でしょう。
そういう意味ならば、先程のにこのジーッと見つめる攻撃は程々でいい感じよね。流石にこ。
それにしても、にこが恥ずかしがるようなこと……。難しいわね。
「また、ぼーっとしてるし。おーい、絢瀬さん。口あいてるわよ」
いっそのこと、ハグしてみましょうか。さっき、ぎゅっとしたいと思ったことだし。ロシアでは普通の挨拶よ、とかいいながら。
にこが顔真っ赤にしてプンプン怒り出したとしても、フフ、日本人はシャイで可愛いわね、とかいってれば誤魔化せそうじゃない?
まあ、私も日本人なんだけど。ハラショー。 「絢瀬ってばー!」
いやいや。誤魔化すのが前提の行動ってどうなのかしら。リスクが高い気がするわ。もっと軽い感じで良いわよね。
うーん、握手とか……。いえ、それは微妙すぎるわね。そもそも、握手されたところで恥ずかしく思わないし。
「絢瀬!」
にこがやったことだって、私を見つめるだけだった。つまり、重要なのは行為自体ではなく、シチュエーチョン。
例えば、そう、手を繋いで部室まで行く、というのはどうだろう。
周囲の目にさらされるのは、想像だけれど、にこならば恥ずかしく思いそうな気がする。
良いんじゃないかしら、これ。決めたわ。
にこの手をぎゅっと握って、そのまま部室へ颯爽と歩き出す―――そんな素敵な考えに夢中になっていた。 またお前かよ
だからにこはそんなリヴァイみたいなキャラじゃねーし、ソルゲ組をヘタレにするのやめろ 「絵、里!!」
「―――あっ、な、なに!?」
「ボケッとしてないで。部室いくわよ」
「……うん。ごめんなさい」
「たくもう。あんたって結構、ボケボケよね」
にこのせいで私はこんなに悩んでいるのよ、なんて、やっぱりいえるわけもない。
自分の妄想に浸っていて、にこの声が聞こえてなかったみたいだ。
さらに、手を握るタイミングも逃してしまった。本当に、今日はツイてない。
当初の目的も達成できなかったし、第二の目的も達成できなかった。失敗続き。
関係性を遠くするようなことはなかったから、それで良しとするしかないかしら。
はぁ……、今日の練習、身が入りそうにないわね。そんな憂鬱な気分で歩きだそうとしたところに、にこの手が差し出された。
「ほら」
「―――え?」
「今日のあんた、なんかぼーっとしてるし。手でも繋いでおいたほうがいいかなって。……嫌ならやめとくけど」
「そんなことない!」
にこは私のことを見てくれているのだ。私がやろうとしたことと一致したのは偶然だろうけど、心が通じているみたいだ。
テンションが乱高下していることを自覚しながらも、嬉しさの感情が抑えきれない。
この期を絶対に逃すまいと、にこの手をぎゅうっと握りしめる。今なら暗闇の密室に放り込まれても、一時間は笑顔で過ごせるわ。 「さぁ、にこ!いきましょう!いざ部室へ!」
「急にうるさいわね……」
「ほらほら!」
「はいはい」
部室へと先導する絵里に、にこはくすぐったそうな表情を浮かべる。
ほんと、なんてわかりやすいやつ。仲良くなろうと積極的な(しかしどこか自信なさげな)絵里をみていると、ついついからかいたくなっちゃった。
ころころと変わる表情は眺めるのは楽しかったし、笑顔は同性から見ても魅力的。あんまりにもやりすぎたせいか、ボーっとしはじめたときは焦ったけれど。
手を繋ごうって提案してみたら、やたら元気になったし、結果オーライだ。
今もニッコニコの笑顔を浮かべて歩いている。でもね、絵里。ひとつだけ言わせて。
あんた、いつになったら気がつくの?あんたが気にしていたことくらい、私にはわかってる。
だから散々もったいぶったっていうのに……。ハァ。まあいいわ。
素直になれない私も悪いから。もう一度チャンスをあげる。次、私が呼んだとき。
その時は、ちゃんと気が付きなさいよ。ねえ、絵里―――。
終わり いやにこは百歩譲って許すとして、なんでソルゲ組っていつも割りを食う扱いなの >>18
つまんないよ
前も言ったけどソルゲ組オモチャにするなカス 絢瀬がにこを生徒会権限でいじめていたという熱い風評被害 >>25
実際何やってたかは不明だけど、絵里ちゃん真面目だからやるべきことやってただけだと思う にこえりってのぞにこ前提じゃないと成り立たないの? 面白い
なんかキモイの湧いてるけど気にせず書き続けてくれ 仲良すぎて一周回って苗字呼びになるってことあるよな >>29
別スレでかなダイアンチが暴れてるから先輩カプにまで飛び火させたいんだろ 女の子が喋ってる風に書くの上手いな〜
やり過ぎてないし物足りない感じもなく文章も読みやすかった
そしてなにより良いにこ絵里だった!!
ハラショー!!! にこえりはいいぞ
不器用だけどわかりやすい絵里ちゃん可愛い しぬほど読みにくいけど読んでみると結構面白いSSタイプ 癖が強いけど、こういうオリジナリティ溢れる文体は嫌いじゃない シンプルなSSも良いね
渋のは滅多に読まない俺でも普通に読めたぞ 好みはあるけどその上で自分は読めるss
すっごくクセ強いけどわかればすごく良い 絵里の語りがテンポ良く読めて面白かった
距離感詰め始めた頃のにこえりの関係性好きだわ 独特な雰囲気がとても俺の好みだった。
惜しむらくは、絵里の脳内台詞をもっとバカっぽくしてくれたら嬉しかった
あと、お互いの台詞の切り替えをもっと明白にして貰えると宜しかったと思う。 >>39
「あんな人!!どうせお姉ちゃんのこと何も分かってないんだから!!」 一人称に慣れてないだけじゃないっすかね
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