ルビィ「こたつでゆっくり」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
黒澤家、ルビィの部屋。
ここでは3匹の小動物が小さな正方形の箱に入って丸くなっていた。
ルビィ「こたつの中は温かいねぇ」
花丸「ずりゃ〜」
善子「はぁ、堕天してしまいそう……」 冬になると、黒澤家には一部屋に一つ、こたつが出てくる。
善子「部屋にこたつ、羨ましいわね」
ルビィ「えへへ」
花丸「マルは毎年お世話になってるずらー」
善子「ダイヤも部屋にいるのよねぇ?」
ルビィ「うん。おこたに入りながら、絵里ちゃんのぬいぐるみを抱っこして勉強してると思うよ」
善子「なにそれ可愛い」
花丸「未来ずら〜」
そう言いながら、机を上にあるみかんに手を伸ばす花丸。
花丸「うーん、やっぱりこたつにはみかんだよね」 ルビィ「わかルビィ」
善子「わからないヨハネ」
花丸「善子ちゃん、みかん嫌いだもんね」
善子「善子よぉ」
ルビィ「逆だよ、善子ちゃん……」
花丸「すっかりこたつの魔力に魅せられてるずら〜」
ルビィ「何かみかん以外の物持ってこようか?」
善子「おせんべいがあるから大丈夫よ」 こたつの上にはみかんのほかに、醤油せんべい(花丸の手土産)と激辛唐辛子せんべい(善子の手土産。善子以外手を付けない)。
花丸「ルビィちゃん、マルはみかん以外の甘い物が食べたいずら」
善子「あんたは聞かれてないでしょ……」
ルビィ「分かったよぉ。ちょっと待ってね、持ってくるから」
花丸「流石ルビィちゃんはいい子だよねぇ」
善子「全く、食べ物が絡むと我儘なんだから」
花丸「育ち盛りだから仕方ないんだよ」
善子「太るわよ」
花丸「その台詞はそのまま返すずら」
善子「ぐっ」 ルビィ「うぅ、外は寒いよぉ」
花丸「ルビィちゃん、おかえり〜」
善子「ありがとう、手間かけさせちゃったわね」
ルビィ「気にしないで――はいこれ」
善子「これは……アイス?」
ルビィ「うん、ルビィもちょうど食べたかったから」
花丸「さすがルビィちゃんずら〜」
ルビィ「温かいこたつに入りながら食べるアイスは格別だよねぇ」
花丸「うーん、凄い贅沢な気分」
善子「たった100円なのにね」
ルビィ「あ、善子ちゃんにあげたアイスはちょっと高いやつだよ」
善子「そうなの? なんか悪いわね」
ルビィ「うん、だってお姉ちゃんのアイスだから」
善子「へっ――」 ダイヤ「ルビィ! また私のアイスを食べましたわね!」
ルビィ「……」
無言で善子を指さすルビィ。
花丸「ダイヤさん、犯人はこっちずら」
そして平気で幼馴染を売り渡す花丸。
善子「ちょ、あんたたち――」
ダイヤ「善子さん……ぶっぶーですわ!」
善子「いやいや、私はただ、その」
ダイヤ「言い訳は結構です。少し私の部屋に来なさい!」
ずるずると引きずられていく善子。
ルビィ「あれは一時間コースだね」
花丸「まあちょうどよかったんじゃないかな。こたつの人数も2対2に別れられたし」
ルビィ「たぶんお姉ちゃんも本気で怒ってはないだろうしねぇ」
呑気な二人組である。 ルビィ「でもこうやって2人なのも久しぶりだね」
花丸「最近は善子ちゃんがずっと一緒にいたもんね」
ルビィ「懐かしいなぁ。友達になった年の最初の冬、部屋にあるこたつを見て花丸ちゃん大喜びしてたよねぇ」
花丸「うんうん、これを見た瞬間、マルの中でルビィちゃんは唯一無二の親友だと確定したよ」
ルビィ「なにそれ、酷いよぉ」
花丸「えへへ。マルはしたたかな人間だから」
ルビィ「むぅ、そんなマルちゃんにはこうだ〜」
こたつに潜り込み、花丸の足をくすぐりだす。
花丸「る、ルビィちゃんくすぐったいよ」
ルビィ「ふふふ、聞こえないよ」
花丸「や、やめてずら〜」
じゃれ合いながら、楽しそうに笑いあう2人。 ルビィ「ほれほれ、ここがいいのか〜」
花丸「あはは! もう限界、降参!」
こたつから出て、笑い転げる花丸。
ルビィ「ふふん、正義は勝つルビィ!」
花丸「それはちょっと無理があるよ」
ルビィ「そうかなぁ」
花丸「語尾が『る』じゃないもん」
ルビィ「厳しいよぉ」
花丸「ルビィちゃんの必殺技だからね、判定は緩められないよ」
ルビィ「うぅ。でもこたつの外に出ると寒いね。凍えルビィ」
花丸「おぉ、それはバッチリずら〜」
ルビィ「えへへ」
掛け合いをしながら、再びこたつの中に戻る2人。 花丸「これからもずっと、こうやってこたつで一緒に過ごしたいねぇ」
ルビィ「少なくとも、高校生の間は大丈夫だよ」
花丸「大学生になっても、誰かの部屋にこたつを買えばいけるね」
ルビィ「それはマルちゃんの部屋ね」
花丸「えー、こたつ係はルビィちゃんだよぉ」
ルビィ「うーん、自分の部屋に入り浸られるのもなんかなぁ」
花丸「じゃあ善子ちゃんの部屋だね」
ルビィ「本人が休んでいる間に押し付けられる委員長みたいだねぇ」
花丸「民主主義の多数決だから仕方ないよぉ」
ルビィ「そうだね、民主主義だもんね」
3人しか投票権がない中、1人を排除して決める恐ろしい民主主義である。 善子「ちょっと、なに勝手に話を進めてるのよ!」
そしてタイミングよく戻ってくる善子。
ルビィ「あっ、善子ちゃんお帰り〜」
善子「ヨハネ! 2人とも、よくも人のことをはめてくれたわね」
ルビィ「ありゃりゃ、善子ちゃんがお怒りだ」
花丸「早くこたつに入れて毒を抜かなきゃ」
2人に両脇を抱えられる善子。 善子「なっ、離しなさいよ」
花丸「ほらほら遠慮せず」
ルビィ「大人しく入ってくれたら、頂き物のいちごもあるよ」
花丸「マルが持ってきたチョコレートもあるよ」
善子「いちごとチョコレート……」
好物の魔力は偉大だ。抵抗することもなくこたつに入り込む善子。
善子「それでいちごとチョコレートは?」
ルビィ「ルビィ、こたつから出たくないから、善子ちゃん取ってきてくれる?」
善子「まあもらえるならそれぐらいはいいけど、どこにあるのよ」
ルビィ「えっとね、お姉ちゃんの部屋」
善子「……断固拒否するわ」
流石に自ら説教をくらいに行く趣味はないようだ。 ルビィ「えへへ、冗談だよぉ」
ルビィがそう言って何かを手渡す。
善子「なにこれ」
ルビィ「マルちゃんからの頂き物のいちご、ア○ロチョコ」
善子「どこがいちごなのよ!」
花丸「未来ずら〜」
善子「どちらかといえば過去よ!」
文句を言いながらも、チョコを食べる善子。
ルビィ「何だかんだ、好きなんだね」
花丸「まったく、素直じゃないずら」
善子「好きなんだもん、文句ある?」
ルビィ「ないよぉ」
花丸「ないずら〜」
3人の穏やかな時間は続いていく。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています