曜「フォーク?」千歌「ケーキ!」
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この世には、男女以外に3種類の人間が存在する。
まずは、普通の人間。
そして、その中に少数ではあるが不幸な2種類の異質が混ざり込んでいる。
それは、『フォーク』と『ケーキ』。 『フォーク』とは、なんの前触れもなくある日全ての味覚を失ってしまう不幸な者。治療法はなく、一度味覚を失うともう治す術はない。
しかし、そんな『フォーク』が唯一味を感じる事が出来るものがある。
そう、それがもう一つの不幸な存在『ケーキ』である。 『ケーキ』とは、先天的に生まれる「美味しい」人間の事である。
別に、普通の人間にとっては何も違和感を抱く事はない。
そう……「美味しい」のは『フォーク』にとって「美味しい」人間という事だ。
『フォーク』にとって、『ケーキ』は唯一味を感じる事が出来る存在である。その味は人によって様々…… 生クリーム、チョコレート、チーズ、キャラメル……食べてみるまでどんな味がするかはお楽しみ。
また、涙や唾液はシロップのように甘いらしい。そして、『ケーキ』は無自覚に甘い香りを発しているのだ……『フォーク』は、その匂いに釣られて寄ってくる。 美味しいそうな匂いが嗅覚を刺激すれば、その『ケーキ』を頭からつま先までぱくりといってしまいたくなる衝動に『フォーク』は身体を震わせてしまうのだ。
まぁ、でもご安心ください。そんな衝動に負けて本当に『ケーキ』をぱくりといってしまう『フォーク』はごく一部。全員が全員そんな猟奇的な犯罪に手を染めるわけではないのです。 私には、誰にも言えない秘密がある。
これがバレてしまえば、きっと友達を失ってしまうだろうし、もしかしたら親からも冷たい目で見られるかもしれない。
なんの前触れも無かった。高飛び込みの練習中にスポーツドリンクを飲むといつも感じるほんのりとした甘さが口の中に広がらない。まるで、なにも入っていない水のような感覚。 ようちかはどっちがなっても展開的に美味しそうだなぁ おかしいと思って、もう一口含むもなにも味がしない……
信じたくなかった。自分が……ドキュメント番組でも特集される数々の猟奇的殺人犯たちと同じ……
『フォーク』だって。 その日の練習はなんとかやり遂げて帰宅した。でも、この後に待っていたのは地獄だった。
大好きだったハンバーグを食べても味がしない。いつもなら噛めば口の中に肉の旨味とともに広がる肉汁がべたべたした液体にしか思えない。ハンバーグも、まるで粘土でも食べているような感覚で、気持ち悪さから逆流しそうになるのを必死に抑えて、なんとか飲み込む。 >>2
お前どんな顔してこれ書き込んでんの?
まじでやべーやつだなオイ >>2
何言ってんだお前
日本語勉強してから立て直せ もう、決定的だった。
せっかく親が作ってくれた夕食を不味いと思ってしまう事にも、『ケーキ』に出会えば人殺しになってしまうかもしれない事にも……ツラくて胸が締め付けられた。 それでも、普段通り普通に過ごさなければいけない。バレてはいけない。
日常を守るためには、私が『フォーク』だって絶対バレてはいけない。
これから自分はどうなってしまうのかと不安になり、眠れない夜を過ごした。 これからの人生に絶望的な事実が突きつけられても、時間は進む。
いつもの時間に起きなきゃいけないし、学校にもいかないといけない……
私はいつもより控えめに朝食をとって家を出る。目指すのは千歌ちゃんの家だ。 俺も見せよう人間の武器を『フォーク』と『ナイフ』! 不特定多数の人がいるバスに乗り込むのは不安でドキドキしたけど、どうやら『ケーキ』はいないみたいでひとまず安心する。
まぁ、聞いた話だと『フォーク』も『ケーキ』もそんなに多く存在するわけではないみたいだった。人口の多い都会なら出会う可能性は高いかもしれないが……ここはのどかなところだから、もしかしたら『ケーキ』に会わなくて済むかもしれない。そんな期待を抱き始めた。 しかし、その期待はすぐに打ち砕かれる。
バスを降りて、十千万の前に着いた時に甘い香りが鼻をついたところでさっと血の気が引いた。
この中に、『ケーキ』が居るんだと感じ取ってしまう。 もし、『ケーキ』と遭遇してしまったら……
もし、高海家の誰かが『ケーキ』だったら……
もし……
千歌ちゃんが『ケーキ』だったら……
私はどうなってしまうのだろう。 ぐっと握り込んだ手に嫌な汗がジワリと吹き出す……
大丈夫……もう最悪は想定したんだ。この甘い香りに耐えれば、私はきっと今まで通り過ごせる。
たとえ、『フォーク』と『ケーキ』であっても友達でいられるはずだ。
私が上手く、やりさえすれば。 パシッと頬を叩き、決意を胸に刻む。
自分を信じる。私は『フォーク』の欲求に負けたりしない。
旅館の入り口とは別にある、裏の玄関から中にお邪魔する。
いつものように出迎えてくれた志満さんからは、甘い匂いはしない。リビングでは出勤を控えた美渡さんがコーヒーを飲んでいる。手を上げて軽く挨拶してくれた彼女からも、甘い匂いはしない。 「千歌なら上だよ。さっき朝ごはん食べ終わったから、着替えてるんじゃない?」
「そっか……じゃあ千歌ちゃんの様子を見に行ってくるよ」
「いつもご苦労さん」
美渡さんとのやり取りもそこそこに、千歌ちゃんの事実がある二階に上がる。階段を一歩一歩進むたびに、甘い香りが強くなる。
あぁ、神さま……よりによって、どうして彼女なんですか。 ついさっき、覚悟を決めたばかりだというのに……この現実に泣きたくなってくる。
この香りが宿泊客のものだったら、良かったのに……でも、この先には高海家の住所スペースしかないから……もう、これは確定事項なんだ。
廊下を歩き、千歌ちゃんの部屋の前に立つ。この襖の向こうに、彼女は、千歌ちゃんは……『ケーキ』はいるんだ。 「千歌ちゃん、おはよう」
「あ、曜ちゃん。おはよう」
「もしかして、まだ着替えてる?」
「んーん。もう終わってるよ」
「そっか、じゃあ……お邪魔します」
ごくりとつばを飲み込み、襖に手をかけた。 部屋に入れば、身支度を整えた千歌ちゃんがベッドに座っていた。
「はぁ〜あ、学校行きたくないよ……」
「確か、今日は英語の小テストがあったもんね」
「全然勉強してないよ……うぅ、赤点取ったらお小遣い減らされちゃう」
「あはは。学校着いたら一緒に悪足掻きしよっか」
「うん。はぁ〜憂鬱だなぁ」
「なら、勉強すればいいのに」 普通に会話出来てる。
千歌ちゃんから、美味しそうな匂いはしているけれど、出会って早々襲いかかるなんて事がなくて良かった。
「むぅ、曜ちゃんの意地悪」
「あはは、ごめんごめん」
「……ところで曜ちゃん。なんでそんなところで突っ立ってるの?こっちおいでよ」
そうやって、千歌ちゃんは隣においでとベッドをぽんぽんと叩く。
「あ、いや……私も今日の小テストは憂鬱だからね。ちょっと身体が固まっちゃったというか……」 適当な言い訳をしつつ、少しぎこちない動きで千歌ちゃんの隣に座る。
だって、私は『フォーク』で千歌ちゃんは『ケーキ』なんだもん。傷付けちゃったらどうしようってやっぱり不安は付きまとうよ。
「そういえば、昨日のバラエティ見た?あっちゃん先生の俳句査定がまぁ面白くてさ……」 あぁ、今日も千歌ちゃんは可愛いなぁ。
キラキラと目を輝かせて、身振りも交えて楽しそうに話す姿は本当に……
活きが良くて、美味しそう。 大切な幼馴染で……
大好きな親友なのに……
美味しそうだなんて……
これが、『フォーク』の本能なのか…… あぁでも、美味しそうとは思うけど我慢出来ないとかじゃなくて良かったよ。
そんな事になったら、私の人生終わってよね。ゲームオーバーだよね。
あぁ、でもショックだな……泣きそう。 「曜ちゃん、どうしたの?顔色悪いよ」
心配そうな顔で私の頬を撫でてくれる手付きは優しくて、温かくて、甘い匂いで私を誘惑してくる。
ダメだよ、千歌ちゃん。優しくされたら余計に泣きそうになっちゃうよ。
「大丈夫だよ」
「本当かな?曜ちゃん、そういうの上手く隠しちゃうからなぁ」
「本当だって。まぁ、強いて言うなら寝不足かな。私はちゃんと勉強したし」
「何それ!心配してあげたのに〜」 「あはは、ありがとう」
そして、ごめんね。この事は……私が『フォーク』で千歌ちゃんが『ケーキ』だって事だけは、絶対に言えないんだ。
「あ、やばっ。もうちょっとでバス来ちゃう!ほら行こ、曜ちゃん」
「うん!」
差し出された手を取り、一緒にバス停へと向かう。
この掛け替えのない当たり前を守るために、絶対にバレないようにしようと決意を胸に秘めて…… それからの日常は、ご飯が美味しくない事と、千歌ちゃんに対して美味しそうって思ってしまう事以外はいつも通りだった。
千歌ちゃんと一緒に登校し、放課後は高飛び込みの練習に精を出す。
この時ばかりは器用で良かったと心底思った。私が変わってしまった事がバレさえしなければ、いつも通り過ごせるんだから。 それでも、美味しくないものを美味しそうに食べるのはストレスになるから……少し体重が落ちて千歌ちゃんに心配されてしまった。
高飛び込みのために減量していると誤魔化したけれど……どこか納得していない様子の千歌ちゃんに内心焦る。
だって、本当の事は言えないから……バレるわけにはいかない。 このSSだけじゃなくて、以前からある設定なんだね。面白いことを考える人がいるなあ ケーキバースってその設定使った百合同人は読んだことあるけどオリジナル
設定なのかと思ってた
そういうジャンル化してるのか オメガバースは知ってたし無くはないとは思ってたけど、ケーキバースとかどうしたらそんな設定思いつけるんだか
BLでもケーキバースあるのか? 調べたらアイスバースってのもあるらしい
BL界隈で生まれたオメガバースからの派生だし使われてるのも基本BLなんじゃね ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています