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善子「スクールアイドル…ファイティングフェスティバル!?」
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0001名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:35:36.09ID:NGQjdv9Z
格闘技SSです
無茶設定&地の文まみれの小説形式です
格闘描写は残虐なものではないつもりですが暴力的な描写は含みます
苦手な方はご注意を

以上が大丈夫な方は読んでいただけましたら幸いです
0002名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:36:10.67ID:NGQjdv9Z
その知らせが津島善子…いや、Aqoursの面々の元へ届いたのは初夏の香りを感じ始める登校前の朝であった
ラブライブ優勝、そして浦の星廃校からもう数ヶ月の時間が経ち
統合先の新たな学校での生活にもようやく慣れを感じ始めていたころである
善子も以前と変わった起床時間に違和感を感じることもなくなり
珍しく余裕を持ってマンションから出ようとした際、ふと目を向けた自宅の部屋番のポスト
そこに入れられていたのはラブライブ運営委員会から郵送されてきたやや分厚く、大きな封筒
その中に入れられた書類には突飛な文字が記されていた
「…"SCHOOL IDOL FIGHTING FESTIVAL"…って、なによこれ?」
"IDOL"の隣に記されている文字は"FIGHTING"というあまりにも不似合いな文字
その意味を理解することが出来ず善子は怪訝に眉をひそめた
いったいこれが何を意味するのか気にはなったが、今はこの微妙に分厚く束ねられた書類に
目を通しているような時間はない
自分に届いているということはおそらく他の皆にも届いているであろう
学校で確認した方が手っ取り早い
そう判断し封筒をカバンに…堕天使グッズが詰められた中にやや強引に突っ込んだ
今日はせっかく余裕を持って家を出たのだ
たまには優雅にのんびりと登校する気分を味わいたいのである
0003名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:37:28.33ID:CWXONwpr
「まーたギリギリの登校だったね、善子ちゃん」
「仕方ないじゃない!あんなことになるなんて…てかヨハネ!」
昼休み、もそもそとのっぽパンを口に運びながら花丸が言う
朝余裕をもって家を出た善子であったがようやく慣れてきた通学路の途中が
運悪く事故で通行止めになっており
焦ってスマホアプリで地図の確認もせずに初めて通る道を通ったことが間違いであった
その先は住宅地の途中で行き止まりになっており引き返さざるを得なくなり
そこから必死に走ってどうにか朝のHR前に教室に滑り込んだのだ
「あはは…災難だったね…」
落ち込む善子を励ますようにルビィが言う
善子、花丸、ルビィ
学校が変わり学年が上がっても相変わらずこの三人で集まっていた
幸いにもクラスは同じ、こうして昼休みに集まることも簡単だった
「あ、そうだ二人とも、これ見た?」
食事を終え一息ついたところで善子が朝の出来事を思い出し、かばんのなかからくしゃりとシワのついた
封筒を取り出し二人の前に出す
「ぁ、やっぱり善子ちゃんのところにも届いてたんだ」
「マルのところにも届いてたよ、びっくりしちゃったズラ」
「二人はもう見たの、なんなのよこれ一体」
善子の問いに花丸が口を開く
「簡単に言えばスクールアイドル同士で格闘技をやるお誘いだよ」
「格闘技!?なによそれ一体…」
「ルビィもびっくりしたけど、正式にラブライブ運営委員会が開催するんだって」
それならばFIGHTINGの文字にも納得はいくが、それが実施される理由が分からない
慌てて善子もまだ読んでいなかったイベントの説明に目を通す
そこには"新たなスクールアイドルたちの魅力を引き出すため"
"アイドルの精神の強さをアピール""スクールアイドルは遊びじゃないことを魅せて欲しい"
などという文章が並んでいた
「…いやそれにしても無茶苦茶じゃない」
「うゅ…ここに書いてあることも全部うそじゃないと思うけど、建前みたいなものがあると思う…」
この三人の中では最もアイドルに造詣の深いルビィが頷き、言葉を続ける
「昔からアイドルがプロレスラーになったりって結構あるんだ、そういう間口を広げるつもりなのかも」
おそらくはそういう側面があるのであろう
募集条件としてはスクールアイドルとして一定の人気がある、またはあったことで
現役では無くても過去に実績があったグループの人間でも問題はないとのことである
はたしてそれはスクールアイドルといって良いのか少々疑問符が付くが、運営側も
人気がありかつこのイベントに出場しようと言うアイドルが簡単に集まらないということを見越しているのであろう
それに現役のスクールアイドルたちは普段の練習に地区予選の準備とラブライブに向けて大忙しだ
もしかするとこれは元スクールアイドルの出場を狙っているのかもしれなかった
ここ数年間でスクールアイドルの数は一気に膨れ上がり、数多のグループが舞台で輝き、そして去って行った
その中には本格的な格闘技経験者も存在している
名目上ある程度名の知れたグループのメンバー全員に書類を送ってはいるものの
参加はほぼ期待されていないのではとルビィの考えを元に三人は考えた
「ぷろれす…本で知ってるだけでテレビとかでみたことはないなぁ…」
「最近は深夜にしかやってないから仕方ないよ、ルビィも全然見たことないんだ」
「そうなの?てっきり元アイドルのレスラーの試合とか見てるんだと思ってたわ」
「えーっと…見ようとしたけど怖くて…途中でやめたんだ」
善子の言葉に対しルビィが恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる
0004名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:38:41.66ID:bN+Bl7FQ
「むぐむぐ…そういう善子ちゃんはぷろれす見たことあるの?」
「くくく、私は人ならざる堕天使、人々の研究の一環として地上の奥義を我が堕天の技に──」
「見たことあるんだね」
「最後まで言わせなさいよ!ま、まぁ幸いこの器を得てから人々の研究を行う時間は十分にありましたから」
「ぇ…それって…」
「ルビィちゃんやめるズラ…そういうことにしておいてあげよう」
─聞こえてるわよ─と、善子が顔をしかめる
そう、あれはちょうど去年の今頃
浦の星の入学時の自己紹介でしくじり不登校になった善子は時折身もだえしながらも暇を持て余し
えがお動画や自室でも見れるネットのTVを眺めている時間が非常に多くなった
その中でなんとなーくカッコイイ…自分でもできる必殺技がありそうだとプロレスや格闘技の動画を見て
自室のリトルデーモンのぬいぐるみ相手に技を練習してみたり、そんな時間があったのである
堕天奥義である"堕天龍鳳凰縛"が生まれたのはそんな経緯があった
「まぁだからって出ないわよ私は…」
「あはは、だよねぇ…」
当たり前か、とそう言うルビィであったが、どこか残念そうな雰囲気が言葉の端から漂う
花丸もそれには気づいたらしく、問いかけるような視線をルビィに送る、善子も同じだ
その視線に気づいたルビィが俯きながら、申し訳なさそうに口を開いた
「また"Aqours"として活動できるかもって、そう思っちゃったんだ」
その言葉に、沈黙が漂う
騒がしい話し声が昼休みの教室の中、三人の周囲だけをぽっかりと静寂が包んだ
そうAqoursは解散した
ラブライブ優勝と裏の星の廃校と共に、スクールアイドルの歴史に永遠に刻まれる名前を残し、解散した
ダイヤ、果南、鞠莉、あの頃三年生だった三人は卒業から間もなく皆内浦から離れた
三人ともことあるごとに連絡はしてくれている…特にダイヤはルビィにしつこいほど連絡を送っており
未だに妹離れができていない様子であった
まるで今でも三人がいて、あの思い出の中の屋上に上がれば皆が揃っているのではと思える程だった
しかし その光景は もう 見れないのだ
千歌、曜、梨子も三年になり自分たちの未来に向かって進む道を決める時期になった
曜は飛び込みを再開、一年のブランクは相当なものらしいがするすると勘を取り戻して周囲を驚かせている
梨子も本格的にピアノを再開し、音楽の道へ進むことを決意して音楽漬けの日々を送っている
千歌はダイヤと同じく東京の大学を目指すことにしたらしい
「私ね、もっと色んな世界を見てみたいんだ」
皆の前で千歌はそう言った
「まだ曜ちゃんや梨子ちゃんみたいに目標なんてないんだ、だから色んな人と出会って
まだ知らないいろんな世界を見て…そのために、まずは色んな人が集まる東京かなって」
安直だよね──と顔を赤らめながらそう話した
しかしその目は真っ直ぐで、しっかりと未来に目を向けていた
もとより三年生だった三人がいなくなった時点で皆口にしなくとも解散は決まっていたようなものだったが
こうして正式にAqoursは解散となった
0005名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:39:15.13ID:w7u4ghJl
ルビィも、花丸も、善子も、この解散になんら異議はない
異議はなかった
だが──
「ううんルビィちゃん、また"Aqours"になれると思ったら仕方ないよ」
「そうね、また名乗れるんだもの"Aqours"を」
恋しいのだあの日々が
ルビィの言葉を、二人は肯定した
三人で、新たなスクールアイドルとして活動しようと考えてはいるし
今でもトレーニングやダンスの練習は欠かしていない
新しい曲は、ない
練習は主にAqoursの曲の振り付けを三人用に必死でアレンジして行っている
今の三人にはラブライブで披露できるほどの作曲ができる技術はなかった
自分の道を決めた先輩たちに対し、三人は未だ道を決められずいた
もしかすると、それぞれの未来への道を探すべきなのかもしれない
そういった不安が広がっている
ただ縋るようにアイドルを──いや、未だにAqoursをやっているというというのが正しいかもしれない
そんな中で本当にAqoursとして活動できると言われたならば、たとえどんな無茶な状況だって
迷いが生じてしまうのは当然であった
「…むぅ」
「…うーん」
「…うゅ」
ただ、無言のまま時が過ぎ、気が付けば昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響き
誰が言うまでもなくみな席を立ち自分の席に戻る
その日の授業の内容は、三人共に一切頭に入ることはなかった
0007名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:40:39.96ID:fPTVC0m/
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薄暗い部屋の中で、善子はじーっとパソコンの画面を見ていた
その脇には、やや分厚い書類の束
昼に話題にあがったSCHOOL IDOL FIGHTING FESIVAL──略称として"SIFF"なんて文字がある──の書類だ
ルールを確認すると、どうやらアマチュアやビギナー向きの総合格闘技ルールを採用しているらしい
そう言われてもどういうものかいまいち分からないので、ネットの動画で実際に確認しているのだ
画面の中で、二人の女性が向き合っている
なんというか、一人の女性は凄い体型をしていた
身長は平均かやや低い程度だが腰のくびれがぱっと見分からないのである
もちろん肥満である訳ではない、腹周りの筋肉と背筋がまんべんなく鍛えられているからだ
多少の脂肪はのっているがその下にある分厚い筋肉の厚みが分かる
今まで善子が見たことのない体型であった
相手の女性は背が高いせいかくびれ自体は普通に見えたし、一般的な女性の体型に近いが
それでもシルエットが明らかに常人と違う
長身であるというのに四肢の太さが一切それを感じさせないのだ
腕などまるで普通の女性の腕がそのまま拡大されたような錯覚を覚える
「すっご…」
おもわず言葉を口に出したところで画面の中の二人が動き出す
拳が、蹴りがまたたくまに交差する
低身長の人の蹴りが、長身の人の太腿にもろに叩き込まれると凄い音が鳴り響いた
破裂音の様な音、ゴムの鞭で思い切り固いものをひっぱたいたらこんな音が鳴るんじゃないかと思える
その蹴りを何度か出した後だった──
「え──?」
低身長の人がスッと足を浮かすと長身の人がほぼ同時に足を上げる、その次の瞬間一気に長身の人は地面に倒されていた
マットの上で二人がぐちゃぐちゃと絡み合う、何をしているのか善子には分からない
「え?え?あれ?」
気が付くと低身長の人が馬乗りになって長身の人に跨っていた
その状態で拳が振り下ろされる
「…げっ」
小学生の頃、同級生同士の喧嘩で見たことがある様な光景
馬乗りになってポカポカと下の者を殴る光景
そのようなものを一瞬善子は想起したが、それは一気に消え去った
もう迫力が段違いである
大人が、本気で、やっている
徹底的に、一切の反撃を許さず、拳を落とし続ける
たまらず股下の長身の人が背を向けた瞬間、その首に低身長の人の腕が滑り込んだ
首絞めだ
それが入るとやられた側がパンパンと地面を叩いた、どうやらこれが降参の合図の様で、試合が終わる
「…私、ちょっとでもこれやろうと思ったりしてたの…」
終始迫力に圧倒されたが、善子が一番恐ろしかったのは馬乗りになってからのアレであった
子供がじゃれあいの延長でやる喧嘩でポカポカやるようなものではない
まるで崖を転がり落ちる大岩のような勢いだった
ため息を一つ吐きながら試合が終わった動画を閉じようとするが、そこでひとつの光景が目に入る
二人の選手がお互いの健闘を称えあい、抱き合っていた
負けた方も握手を返し、そのまま勝者の腕を掲げて、負けたことを受け入れていた
目の前にいるのは、ほんの少し前に自分の顔を容赦なく殴り続けていた相手なのにだ
しかも彼女はプロだ
この試合の為にいったいどれほどのトレーニングや節制をしてきたのか
その常人離れした肉体が、その過酷さを物語っている
悔しいだろうに、辛いだろうに
「…」
何故かその光景から目を離せずにいるうちに、ソッと動画が終わる
「…いいなぁ」
善子の口から自然と漏れたのは、そんな言葉であった
その時であった
──ピロン!
善子のスマホから連絡用アプリの通知音が鳴り響いた
ちらりと目をやれば相手はルビィである、宛先は善子と花丸の二人のグループ
0009名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:48:28.39ID:Bc/pF+Px
『遅くにごめんね善子ちゃん花丸ちゃん』
『どうしても今すぐ伝えておきたくて』

「今すぐって一体な──ピロン!

言葉を遮るように通知音が響いた、その内容は


『理亞ちゃんが昼話してた"あれ"に出るつもりだって』
0010名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:51:18.82ID:Bc/pF+Px
「で、どういうことなのよルビィ、理亞があれ…"SIFF"に出るって」
「うん、朝起きてビックリしたよルビィちゃん…」

翌日の昼休み、いつもの三人で集まり問いかける
今日は教室ではなく、屋上で集まっていた
然程気にならないとはいえ騒がしい教室の中で話しをする気に慣れず、自然と三人でここに足を運んだのだ

「ルビィもビックリしたんだけど、昨日連絡が来て、あれに出るって…」

まだいまいち事態を整理できていないらしく戸惑ったようにルビィが話す
どうやら細かい事情や理亞自身の感情は話されていないのだろう
ただ事実を簡潔に伝えられた、それだけの様である

「なんというか、理亞ちゃんらしいズラ…」

若干呆れるように花丸が言った
友人のルビィに何も言わないことはできない、しかし必要以上に多くを語る気もない
良くも悪くもストイックで、頑固だった
それを察したルビィも友人として深くを聞こうとしなかったのだろう

「でも、なんとなく分かるよ、理亜ちゃんも新しいアイドル活動、まだ上手く始められてないらしいから…」
「私たちと一緒ね…」

Saint SnowもAqoursと同じく解散している
理亜自身が決めたことだ
彼女の最愛の姉との二人だけの思い出、それがSaint Snowなのだと

「当たり前だよ…頭では分かってても、まだ…」

しかしまだ"Saint Snow"から抜け出しきれないでいる
かくいう三人もまだ自分たちが"Aqours"の津島善子であり、国木田花丸であり、黒澤ルビィである
ということから抜け出せないでいる
三人が自分達の新曲を未だに生み出せないでいることもそこにあった
自分達は優勝した"Aqours"のメンバーであったということが、ハードルを上げていた
怖いのである
自分達はもう"Aqours"ではないと言っても周囲は決してそう思わないであろう
あの"Aqours"の──そう思われることは確実であった
そして三人にはまだそう思われる覚悟はなかった
理亞もまた同じではないかと三人は感じたのである

「理亞って格闘技の経験はあるの、出るって言うならあると思うけど」
「ルビィもそこは気になって聞いたんだけど、教えられないって…」
「教えられないって──」
「敵になるかもしれないから…」

その言葉に、善子と花丸が息を呑んだ
0011名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:52:52.02ID:Bc/pF+Px
「理亞ちゃんに聞かれたんだ、貴女達は出ないの?って、それに分からないって答えて…そしたらそう…」
「私たちが試合相手になる確率が少しでもあるのならってことね…」
「ほんとに理亞ちゃんらしい…ズラ」

さっきと言ってること同じよ──と善子が小さくツッコミを入れる

「むー…いたいよ善子ちゃん」
「だからヨハネ!──ったく、そっか、出るんだ、理亞…」

そういった善子の脳内に、昨晩見た総合格闘技の映像がフラッシュバックする
破裂音の様な音を響かせる蹴り
馬乗りになって打ち下ろされる岩雪崩れの様なパンチ
入った途端一瞬で相手を降参させてしまう首締め
思い出すだけで胸が苦しくなるような、とんでもない世界
その舞台に理亞が立つ
一体どれほどの覚悟があってできたことであろうか

──私には、無理…──

しかし善子がそう思った瞬間、ふとあるシーンが頭をよぎった
動画の最後、試合後のお互いを称えあう場面
なんとなく目を離せなかったあの場面が、心に去来した

「──やって、みようかな」
「ぇ!?」
「よ、善子ちゃん…!?」

ぼそりと呟くようにだが、善子は言っていた
まだ見えない未来を夢想するかのようにぼんやりと空を見上げながら
たしかに善子はやってみようか、と言ったのだ
0012名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:53:36.46ID:Bc/pF+Px
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そう決意してからの流れはトントンと進んだ
まずは皆で流し読み程度にしか呼んでいなかった書類を細かいところまで読み直す
開催日程は八月の初め、今から三ヶ月と少し、予備予選から間もない時期である
この時点でラブライブ優勝を目指すスクールアイドルの参加はかなり厳しいことが分かる
用語が分からなくてほとんど読み飛ばしていたルールをしっかり確認した
ルールは前に確認した通り打撃も、投げも、関節技も許される総合格闘技ルールで間違いはなかったが
パウンド──動画で見た馬乗りになった相手に拳を打ちこむような行為は禁止だった
流れで偶然当たってしまう程度なら反則はとらないが明らかに故意の場合は反則になる
あんな目に遭わないで済むと思うと善子は幾分か気分がマシになった
他では噛みついたり故意に眼をつくような行為は一発で反則負け
頭突きと肘で顔を打つこと、指を数本掴んで折ろうすることや髪の毛を掴むなどの行為も当然ながら禁止だった
そして参加者には防具の着用も義務付けられていた
ヘッドギアと分厚いオープンフィンガーグローブ──相手を掴めるように指が出ているデザインのグローブだ
それに加えて足の全面ををクッションで覆うような防具、レガースと膝パッドの着用が必要とされている
ビジュアルとしては良くないであろうが、経験の少ない人間同士で試合をさせることが前提である
これは当然の措置であった
練習する格闘技のジムもすんなりと決まった
沼津駅からそう遠くない場所で、善子が通いやすい場所である
ラブライブの運営委員会に参加の旨を伝えると、すぐさま委員会が周囲のジムを調べ
ここのジムはどうかと提案してくれたのだ
しかもレッスン料まで割り引いてくれるよう交渉までしてくれた
いたれりつくせりであったが、それに対してルビィはそう驚いていない様子であった

「多分、元からそういう格闘技の人たちと繋がりがあったんだと思うんだ

そうでもなければ参加者のサポートもできないし、こんなイベント開催しないと思う…多分」
最後は自信なさげにであったが善子と花丸にそう語る
むしろこのイベントを提案したのは格闘技側の人間かもしれなくともおかしくはなかった
真実は分からないが、少なくとも双方が協力関係にあるのは間違いないであろう
そうして善子──いや、花丸も、ルビィも含めた三人の、新たな目標に向けての日々が始まった
0013名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:54:36.87ID:Bc/pF+Px
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「──ぁー…」
「ょ、善子ちゃん大丈夫?」
「だから…ヨハネェ…」

ジムに通い始めてから一週間経った昼休み、善子が机に寝そべりながらパックのイチゴジュースをストローですする
いつものツッコミにも気力が無い

「首が筋肉痛で痛いって初めてよ…」
「肉体の疲労には豚肉がいいらしいよ、お母さんにいってみたらいいと思うズラ」
「ありがとズラ丸…言ってみる」

なにも善子も運動をしていなかった訳ではないし、筋肉痛もAqoursの練習で慣れてはいた
ただでさえスパルタなダイヤの練習メニューに加えそれを理解できないペースで行う果南に皆が引っ張られるせいで
必然的に手も足もパンパンに張って筋肉痛になる
しかしこの首というのは初体験であった

「首って、本で見たけどやっぱりブリッジとかするの?」
「準備運動でやるけど、まだそんなに長い時間やってないわ…一番はあれよ、ギロチンのせいよ」
「ピギッ…ギ、ギロチン…!?」

物騒な言葉にルビィが怯える

「ギロチンチョーク──フロントネックロックだね、脇の下に相手の首を抱えるみたいに手を回して
背中を反らして前腕で相手を絞め上げる技ズラ」
「なんであんたが解説してんのよ…!」

こう──と花丸が腕を脇の下でわっかを作るように動かしながら解説する
善子が参戦することを決めてから花丸はとにかく格闘技やスポーツの本を読み漁った
今学校の図書室にあるスポーツコーナーの棚は花丸が大量に本を借りたことによってぽっかり穴が空いている

「あはは…マルにできるのはこれくらいだから…」
「とにかく、ギロチンから逃げようと思ったら胸張って顔上げて、相手の腕に隙間作んなきゃいけないのよ

その時に首と背中の筋肉使うから…それが一番の原因よ」
もう中身のなくなったジュースのストローを気怠そうにくわえながら善子が答える
その様子を見ながらルビィが言いにくそうに唇をかみ、それから口を開いた

「あ、あの…ダンスの練習メニュー少なく「それはダメよ」

その言葉を言い終えるまでもなく、さえぎるように善子が言う

「Aquorsは解散した、予備予選にも出れるような状況じゃない、でも私たちは止めたわけじゃない」

ルビィに答えると言うより、自分自身に言い聞かせるようにそう言葉を続ける

「だからダメなのよ…ダメなの…」
「…うん、そうだよね、ごめんね善子ちゃん」

少しばかり、重たい空気が三人の間に流れる
花丸は二人の様子になにも口を出せずに、ただ黙っている
今日も楽しげな喧騒の溢れる教室のなか、三人の空間だけが異質な空気を漂わせていた
0014名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:56:32.35ID:Bc/pF+Px
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「大丈夫よ、明るい道しか通んないから」
「だからって外真っ暗よ!…もう、早く帰ってきなさいね」

母の言葉を背に受けながら、善子はスニーカーを履いて玄関を出た
服装は普段使っている練習着姿だ
マンションの階段をややゆっくり駆け下りながら外に出る
外は既に真っ暗になっていた
街灯の明かりが、少し眩しく感じるくらいである
夜──とはいっても真夜中という訳ではない
駅の方向から仕事帰りと思わしき背広姿の人間がぽつぽつと通りを歩いている程度の時間帯だ
その通りを、街灯の明かりに沿うように善子は走り出した
特に目的地はない、ただたんにランニングがしたくなったのである

──なんでこんなことしてるんだろ

ゆっくりとしたペースで足を動かしながらそう思う
今日も練習はあった、学校で普段通りダンスの練習を行い、ジムにも行った
もうくたくたに疲れている筈であるのに、自宅に帰って一休みするとなんとなく身体が落ち着かず
なんとなく走ろうとしたのである
善子にとってはかかせない儀式であるえがお動画の生放送も
放送枠をとった時間まで準備も含めても中途半端に時間があったのも大きかった
しかしそんな理由があるとはいえ練習後にランニングなど初めての事であった
なんとなく気恥ずかしい
もう初夏を迎えたとはいえまだ夜は肌寒い季節であるというのに、頬の辺りが熱く感じた
それを打ち消すように走る
またたくまに頬の熱が全身にまわった様に身体が熱くなり、息が荒くなる
さっきまで肌寒いと感じていた夜風が心地よかった
その時であった

「…あれ、善子ちゃん!?」

突然名前を呼ばれ、善子は驚いて立ち止まり周囲を見回す
その声の主は見知った人物だった

「…曜!」
「珍しいね!こんなとこで会うなんてさ!」
0015名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:57:33.29ID:Bc/pF+Px
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軽く言葉を交わし、二人は走り出した
善子に合わせるように曜が並走する
曜の服装は使いこまれているジャージ姿だった
Aquorsの練習で着ていた練習着ではない
走る時に着なれたものなのか、飛び込みに切り替えるためにもあえてあの練習着は着ていないのか
聞くにも聞けず曜にペースを合わせて善子は走る

「ルビィちゃんから話は聞いてるよー、応援絶対行くからね!」
「う、うん」

走っているというのに余裕をもった感じで曜が言った
善子はもっとなにか──アイドル活動はどうしたとか、予備予選はとか色々言われるのではないかと
思っていたため、あっさりとした応援の言葉に少し驚いてしまった
そして無言のままランニングを続ける
リズムよく足を動かす曜だがペースは一定を保っていた
もしペースをあげられたら善子にとってキツい速さになるが、自然とペースを合わせている
そうしながら曜は時折振り返り、自分に遅れずについてくる善子の顔を見て小さく笑みを浮かべた
それから十分程だろうか、黙々と二人で走り続けたところで、不意に曜が足を止めた
明るい住宅街にある公園の前だ

「ふぃー、ちょっとここで一息つこっか!」

そう言うと善子の答えを待たずに、歩いて公園に入っていく
慌てて善子も後ろに続いた
住宅街の中にある公園だったが、流石に夜中に人はおらず二人きりだった
近くの通りから車のエンジン音が聞こえたりはするが、しんと静まり返っている
昼に遊んでいた子供が忘れたのだろうか、ポツンと砂場に放置されたスコップや物陰にあるボールが
子供達で賑わっていた時間帯の喧騒を思い起こさせるせいで、尚更周囲が静かに感じる
その空気のせいで善子はこの公園の中の空間だけが切り取られたような感覚に陥ってしまいそうだった

「ねぇ、曜」
「んー、どしたの善子ちゃん」

軽くストレッチをして身体をほぐしながら曜が返事をする

「なにもさ、聞かないのね」
「…」

その言葉に、曜が動きを止めた
善子が、ジッと曜を見つめる
曜がその視線にチラリと一瞬目を合わせ、そして考えるように目線を上げ空を見つめた

「よし!勝負しよっか、善子ちゃん!」
「…はぁ!?」
0016名無しで叶える物語(プーアル茶)
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2018/02/10(土) 19:58:16.51ID:Bc/pF+Px
唐突な曜の言葉に善子が目を丸くする
そんな善子を尻目に曜は公園を見回し、その一角にある芝生が植えられた場所に向って歩き出す

「そうだねー殴ったり蹴ったりはなしでー…軽く組み合う感じでいこっか!」

問答無用でルールを決めながら芝生の真ん中に立つ
面積はジムで見た格闘技のリングの大きさより少し小さいくらい
子連れの親がゆったり座ってはしゃぎまわる子供達を見守ったり
休憩にシートを広げてちょっとしたピクニック気分でお弁当やお菓子を食べたりできる、そんなスペースなのだろう

「だからもう…はぁ…いいでしょう、堕天使たる私の力、ほんの一部ですが魅せてあげましょう」

何を言っても無駄だろうと諦め、少しヤケになった善子が曜の前に立った

「…なんかさ、今の曜って千歌っぽい」
「え、そうかな?えへへ、お褒めにあずかり恐縮ですな」

その強引ながらついつい引っ張られてしまう感覚にデジャヴを感じる善子の言葉に
照れるように曜が笑う
別に褒めたつもりはなかったが、それ以上はなにも言わなかった

「んじゃ、いくわよ、曜」
「ヨーソロー!お手柔らかにね」

その言葉と共に、善子が構えをとる
上体を曲げて前傾気味になりながら深く腰を落とし両手を胸の辺りに置いた
足は左右に広く広げ、身体の正面をほとんど相手に向けるような構えだ
ほとんどレスリングに近い構えである
これに打撃が加わると身体がやや半身を切って身体の正面を隠し、打撃でダメージをうけやすい
胴体を護るような構えになるのだが、組み合うことだけを考えるならこちらの構えの方が良い
身体が正面を向くので相手の力を受け止めやすく、左右に足を広げているため地面に踏ん張りやすい
それに答えるように曜も両手を上げ、構えた
善子とは違いそれほど前傾にはならず、軽く背を丸める程度で腰も軽く落とす程度
しかしその構えはどこか様になっていた

「…曜って経験あるの?」
「中学の頃に柔道部の助っ人に出たことあったんだよねー、授業でまぁまぁ上手い方だったから頼まれちゃって」

"まぁまぁ"などと言っているがいまいち信用ならないと善子は感じた
その柔道部にどんな事情があったのか知らないが、まぁまぁ程度で頼まれるものか
曜が組み付こうと襟元に伸ばしてくる手を善子が払う
善子が脇の下に腕を差し入れようと前に踏み込めば、曜は半歩下がる
お互いの手を昆虫の触角のように使い、動きを探り合った
互いの手が幾度も交差し、払われ、弾きあう

「──シッ!」

曜が意を決して不覚前に踏み込み、奥襟を一気に掴みに来た
咄嗟に低い姿勢の中さらに腰を落として善子がそれを避ける
そして曜の足元に向かって身体ごと跳び込むようにタックルに向かった
タックルというとスポーツや状況によっていろいろな意味があるが
格闘技──主にレスリングの技術の場合は胴や足に向かって組み付き相手を倒す意味で使われる
善子が行ったのは足へのタックルだった
両手が曜の足の膝裏に入りこむ、このまま身体をぶつけて胸で押し込むようにすれば相手は倒れる
しかし──
0017名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)
垢版 |
2018/02/10(土) 20:07:24.58ID:M+7DBKwn
バカ犬叱るぐらいならとっとと散歩連れてけよな。
ちんたら出てきて叱ってその間にどれだけ周囲の人が神経をすり減らしてるか分かんないのか無神経バカには。
甲斐性無しのくせに生き物なんか飼うなよ。
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