愛「璃奈ー?」
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愛「…………」
夕飯の買い物のため近所のスーパーに来ていた所……何やら見覚えのある後ろ姿に出くわした。
愛(あれ……璃奈、だよね?)
同じサークルの天王寺璃奈。
……と思しき女の子だった。
フードを目深に被っているけど、パーカーは彼女がいつも着ているやつだし……この下に覗くスカートは虹ヶ咲のやつだし。
チマい背丈もヨチヨチとした足取りも、普段アタシが見ている璃奈に酷似していた。
璃奈「いっきし!」
あ、クシャミした
失礼なこと考えたからだろうか 璃奈はフードの下で(多分)恥ずかしげに笑う。つられて私も
璃奈に聞いた話だと……
その辺の御役所的な繋がりのことは、良く解らないけど、都内にある複数の提携関係にある認可保育園主催で、同じく都内の美術科を有する高校、大学、または都内在住の個人向けに絵本を製作させ、
各々の保育園で園児向けに作品公開するイベントが開催されるらしい。 作品は森の戦士の絵本みたいに、簡単なコピー誌として各保育園へ行き渡り、数週間後に園児たちの投票で最も優秀な作品を選ぶんだとか
最優秀賞に選ばれた作品の製作者には記念盾と賞金が授与されるらしい
璃奈「20万円だって」
愛「にじゅう……! 愛サンもやろっかな」
璃奈「東芸の本職の人達も参加するし、無理じゃないかな……」
愛「そりゃそーだね。棒人間くらいしか書けないし」 …………
画材コーナーに着くと、璃奈は早速、私の持った買い物カゴにポイポイと画材を放り込み始めた
璃奈「新しいスケッチブックに鉛筆一式と、あとクレパスとマッキーと……」
璃奈「あ、ついでに新しいボード帳も買おっかな……」
愛(鉛筆ってこんなに種類あるんだ……)
愛「璃奈って模型得意なのは知ってたけどさ、絵も描けたんだね」
璃奈「璃奈ちゃんボードのあれは走り書きだから」
璃奈「時間掛ければ、ちょっと良いのも描けるよ? えーっと……ほら」
愛「え……うはぁ」
画材を探す片手間でスマホを操作した璃奈は、何かを探すように指をスワイプし、私に見せてきた
映っていたのは、羽化の途中を描いたと思しき、見事な蝉のスケッチだった 蝉は卵から孵ってから死ぬまでの生涯、その殆どの年月を土の中で過ごす
地中で数々の天敵をやり過ごし続け、生殖のために地上に出てきて、そして私達に馴染み深いあの姿に羽化するのだ
璃奈「去年の夏に、吉祥寺の公園で描いたの。日中の羽化は珍しかったから、つい」
璃奈「アプリで描いたやつだから、ちょっと下手だけどね……」
愛「いや……そんなことない」
愛「上手すぎて言葉が……」
璃奈「ほんと? ……うれしい」 愛「でさ、出品するのは、どんな絵本なの」
愛「愛サンの知ってるのだと、シンデレラとかモモタロさんとか……」
愛「あ、"おまえうまそうだな"は映画も見た」
璃奈「私も見たよ」
璃奈「……園児向けだから、あんまり難しいのは描けないよね。私が描いてるのは、魔女に謝りに行くおはなしなの」
愛「…………」
愛「なんて?」
璃奈「魔女に謝りに行く話」 愛「……」
愛「えーと、それは? 思うに? あの……魔女の怒りを買って、何かが奪われて……」
愛「で、それを返して貰うため、みたいな?」
璃奈「うえ」
愛「……璃奈?」 璃奈「…………えーと」
璃奈「そ、そのぉ……////」
愛「えーなんだよう、言い辛いこと?」
璃奈「ち、ちがう」
愛「ネタバレが嫌とか?」
璃奈「そ、そーじゃなくって」
璃奈「…………////」
愛(んー?) 璃奈「え、と……ね。分かった、言うよ」
愛「お、おう」
璃奈「魔女に謝りにいくのはね」
愛「うん」
璃奈「愛を……」
愛「うん」
愛「……へ? わたし?」
璃奈「愛を返して貰うため」
璃奈「です……////」
愛「…………」
愛「ふ、ふーん////」
ちょっと変な空気になった 絵本のあらすじとしては単純で、愛の失われた世界に生まれた花の妖精が、最後の愛を使い果たして自分を助けてくれた老夫妻に恩返しをするため、自分勝手な振る舞いを続ける人間達に怒った魔女へ謝って、老夫妻の分の愛を返して貰いに旅に出る話、らしい
良い話じゃん
店員「ありがとうございましたー」
璃奈「……」ホクホク
愛「結構するんだねー画材って」
璃奈「えへへ……先輩ありがとうございました。助かりました」
愛「いやいや良いんだよ。画材見るのも楽しかったしねー」
愛「絵本、喜んでくれるといいね」
璃奈「頑張ります。璃奈ちゃんボード……"どぅーまいべすと"」 愛「どぅーゆあべすとって感じだね」
愛「完成したら見せてよね。楽しみにしてるから」
璃奈「はいっ」
愛「それで、早く私を取り戻してねっ♪」
璃奈「……」
愛「……忘れて」
璃奈「やだ」クスクス
――――――
――――
―― ――
――――
――――――
夜・天王寺家
璃奈「…………」カキカキ
璃奈「…………」シュッシュッ…カリカリ
璃奈「…………」ペラリ
璃奈「…………」
璃奈「こんなものかな……」 璃奈「…………」
璃奈「へへへ……♪」ボフンッ
璃奈「ふふふふ……」ゴロゴロ
璃奈「愛先輩に褒められた……」
璃奈「んふふふ……」ゴロゴロゴロ
璃奈「…………」
璃奈「……眠い」フアーァ
璃奈「…………」
璃奈(でも、もう少し頑張ろっかな)ペラ その昔、この星は愛の溢れた場所でした
愛は純粋な愛のまま、星に満ちていました
ひとびとは互いを愛し、道を違えれば愛故に叱り、そして許し
ひとびとは神に愛され、熱心に畑を耕し、誰もが慎ましくも、幸せに暮らしていました しかし、ひとびとの争いを自身の糧とする悪魔は、この愛に溢れた優しい世界が大嫌いでした
そこで悪魔は人間の姿に化け、愛を知る人間へと近づき、心無い言葉を掛けます
"お前は決して美しくなどない。連中のお前を誉める言葉は全て嘘っぱちだ"
"お前の妻が貴様を愛している鉦鼓など無い。上辺だけの言葉を信じるのか"
"考えることこそ人間として賢いんだ。疑わないと本当の幸せは無いぞ"
……こうして、愛を知る全ての人の中に、疑いの感情は芽生えてしまいました 疑いの感情とは、まるで魔法のようでした
1人の人間が疑いの感情を向ければ、疑いを受けた者は怒りや憎しみの感情を露わにし……やがて両者から愛は消え失せ、悲しい争いへと発展していく 癌細胞のような速さで世界の果てまで広がった憎しみの心は、やがて世界すらも焼き尽くす大きな戦争へと発展し、その強大な憎しみの心を喰らい、悪魔は更なる力を付けていきました
そして、あるとき
ある国の王は、強すぎる憎しみに煽られ、遂に禁断の力の封印を解こうとします もしも封印が解かれれば、人はおろか、何の罪も無い動物や植物までも殺し尽くしてしまう……忌まわしき呪いの力
これに怒った魔女は、かつて自分と共にあった人間に完全に愛想を尽かし、人間の心のほとんどを吸い上げ、彼らの時間を止めてしまったのです
人間の中に僅かに残されていた愛すらも吸い上げた魔女は、悲しそうな表情で世界の果てに築いた自分の城へと身を隠し……いまも、灰色になってしまった世界を眺めているといいます
それから長い年月は経ち…… ………………
………………
せつ菜「え、ここで終わりですか!?」 一旦ここまで
保守とかよく解らんのだが、したらばの方がいいのかね 虹のss初めて読んだ、おつおつ
とりあえず埋められてない以上はこのままここでやるんでいいと思う
あと25越えれば即死は回避してるから保守はもう大丈夫だよ 何か引っ掛かると思ったら
>>10の後に↓が入ります
愛「……で、その取れないフードは……」
璃奈「別に取れない訳じゃないよ?」
璃奈「でも、風で取れそうになるの嫌だから……ちょっと針金で補給してるの」
愛「け、形状記憶フード?」
璃奈「作るのに苦労した」
璃奈「持ってるパーカーは全部、針金が入ってるよ」フフン
愛(もう目出し帽でも被ればいいのに……) 書きため無いから書き直すこともあるかも
仕事してきます ――――――
――――
――
6日後 虹ヶ咲スクールアイドルサークル部室
愛「っー♪ きゃぷてんでーっぷーぅ♪」
愛「なーぁじゃす、でっぷー」
愛(ふいー、今日の御飯は何にしよっかなーと)テクテク
愛(練習しながら考えよっかねーん)
ガチャリ
愛「ちっすー愛サンでーす」
せつ菜「え、ここで終わりですか!?」
愛「うおっ、なに!?」ビクリ
果林「ん……」
果林「あら、ナイスタイミングね」 愛「なんだどーした? 何が終わりなのさ」オロオロ…
璃奈「あ、愛先輩だ……」パァ
せつ菜「え? あ、愛さんですか。お疲れさまです」
果林「ハーイ愛、璃奈が何かお待ちかねみたいよ?」
せつ菜「ご、ごめんなさい。変なとこ見せまして……」
愛「いや別に気にしちゃいないけど……お待ちかねって何のことさ」
果林「そうよね璃奈? 愛センパイに見せたくて仕方無かったんだよねー?」
璃奈「う……////」
せつ菜「そう! 愛さん見てくださいよこれ!」バッ
せつ菜「璃奈さんが描いたんですって! 本当におもしろいんですよ!」
愛「え……おう」 そういってせつ菜が興奮気味に渡してきたのは……何この紙束
何かカラフルでカワイイ女の子の絵が描かれてて……綺麗だけど
璃奈「こ、この前の絵本だよ……。半分まで完成したから、コピーを持ってきたの」
愛「絵本……、あーこないだのスーパーの時ね!」
愛「え、つってもまだ1週間経たないよね、あれから。もうそんなに出来たんだ。早いねぇ」
璃奈「頑張ったよ。璃奈ちゃんボード……"エヘンぷい"」
果林「愛に早く見て貰いたかったからね」
愛「ほう?」
璃奈「あ、愛先輩だけじゃないもん////」
果林「照れない照れない。愛も嬉しいわよね?」
愛「おうそりゃーね。こんな後輩がいて幸せだ、あたしゃ」ナデナデワシャワシャ
果林「ほらね、照れることないない」
愛「そーそー」ワシャワシャ
璃奈「うううー////」
愛「……フード取ってもいい?」
璃奈「だ、ダメだからね」
愛「ちっ、ダメか」
愛「…………」
愛「そっか……」 ――――――
――――
――
璃奈の持ってきた20枚近いコピー紙
そこに彩られた鮮やかな世界には、しかし人間の愚かしさ、脆さが悲しげに描写され、これから始まる物語の導入部分として、見事なまでに完成されており……素人目にではあるけど、正真正銘、絵本と呼ぶに相応しい出来栄えの作品であった
璃奈「あくまで子ども向けだから、ストーリーはもうちょっと簡単にするけどね」
愛「へーえ凄い……すごいよ、思った以上だ……璃奈ホントに芸術の才能あるねぇ」
せつ菜「そうなんですよ……でも、これからいざっ! ……と思ったらソコが最後のページで……」
せつ菜「これじゃ生殺しも良いトコですよー……」
愛「せつ菜、こーゆーの好きそうだもんねー」
せつ菜「はい、好きです! 絵も信じられないくらい上手いですし……」
せつ菜「もー、続きが気になっちゃいます……勉強に集中出来なくなりそう」
璃奈「照れる」
璃奈「それでね、この後は、灰色の世界に生まれた花の妖精が、ピンチの所を人間の老夫妻に助けられて……」
せつ菜「ちぇーいちぇちぇーい!!」バババッ
愛「うおっ」
璃奈「うわあ」ビクリ せつ菜「はあ……はあ、危ない危ない」
せつ菜「ね、ネタバレはやめてくださいね……楽しみにしたいので」
璃奈「え、……あ、はい。じゃあ出来たら皆の分あげるね?」
せつ菜「是非それで! 日々の楽しみが増えました!」
愛「すっかりファンだねせつ菜……」
果林「あら、私にもくれるの?」
璃奈「……いらない?」
果林「まさか。貰えるなら喜んでいただくわ」
璃奈「楽しみにしててね……」 …………
璃奈「……ねえ愛先輩」コソッ
愛「ん、なあに?」
璃奈「完成したら、愛先輩が一番に見てくれる?」
愛「……ん、どゆこと?」
璃奈「愛先輩に、完成した絵本、一番に見てほしい……」
愛「…………」
愛「……あれま、読者第1号ってこと?」
璃奈「迷惑?」
愛「まーさか、寧ろ愛サン貰っちゃって良いの? そんな大役」
璃奈「うん……ちょっとお世話になったし、絵本のことも最初に話したし……」
愛「名誉だねー。嬉しいじゃん」 璃奈「そ、それに……愛先輩だから」
愛「へ……」
璃奈「愛先輩だから、見てもらいたいっていうのも……あるので」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"りすぺくとゆー"」
愛「……そっ」
愛「そっ……かあ……何か照れるなぁ、へへへ」
璃奈「……エヘヘ」
果林(あらかわいい……面白そうだし暫く黙っておきましょ)
せつ菜「ふたりとも仲良いでムゴッ!?」
果林「空気読みなさい」ボソボソ
せつ菜「むごご……いきできな……」
愛(何いきなり抱き合ってんの、あの2人……) 今度さ、璃奈が描いてるトコ見せてくれる?
え……ちょっと恥ずかしい
邪魔はしないからさ……あ、ってことは璃奈んチに行けるんだね!
あ、あう……
果林「私ね……初めて璃奈を見た時、正直言うと不安だったんだ」
果林「ほら、普段から徹底し過ぎなくらい顔出しNGだし……」
果林「素直だけど、お世辞にも社交的とは言えないしね」
せつ菜「…………」
せつ菜「ええ、本当のトコ言うと私もですよ」 せつ菜「特にあのボード……。ぶっちゃけ、璃奈さんのこと知らない内は、ふざけてるとしか思えなくて……」
せつ菜「これからこの子とやっていくなんて、不安で仕方ありませんでした……」
果林「いわゆる"普通"の感性なら、そう思うのが自然なとこよね」
果林「だから……私としては、愛みたいな子がグループに居てくれて幸いだったと思う」
せつ菜「同意します。ここで一番コミュ力があるのって、他でもない愛さんですもんね」
果林「やっぱり最初は、どうしても璃奈だけ孤立気味で……そこに愛は率先して話し掛けに行ってくれて」
果林「私も私なりに手を焼きそうだなぁって思ってたから、愛が居て大助かりだった」
せつ菜「……私は果林さんだって、グループのまとめ役だと思ってますよ?」
果林「ありがとっ。でも私の方が年上で、しかもそういうキャラで売ってるんだもの。あの時はちょっと自信無くしちゃってたかも」
せつ菜「あんまり思い詰めないでくださいね。……果林さんは果林さんです」
果林「うん、もちろん分かってるわ。ありがとね、せつ菜」 果林「たまにかすみのパンの実験台にされたりしてるけど、今では璃奈もグループの一員として溶け込んでるし」
せつ菜「喜ばしいですね、パンはともかく」
果林「璃奈は元から良い子だけど、愛には特に素直にしていられる」
果林「知ってる? 気付いたら璃奈って、無意識なのか愛に近い方へ段々と寄っていくのよ」
せつ菜「え」
果林「自然と安心出来る方に行っちゃうのよね。見てるこっちが恥ずかしくなるわ」
せつ菜「え、え、初耳なんですが」
果林「本当よ? 今度、璃奈の動き観察してみたら? おもしろいわよ」
せつ菜「……あの、まさか璃奈さんって愛さんのこと……」
果林「……別に変な意味は無いからね? 愛に対して一番、懐いてるって話よ」
せつ菜「あ……そ、そーですよね、ですよねはい。解ってます、ええ」
果林「せつ菜……」アキレ 果林「まあ、いいわ。ほら、愛って見て呉れはチャラそうだけど、そんな性格じゃない?」
果林「だからね……年下のファンも多いのよ。憧れられちゃうのね」
せつ菜「あー、何か分かる気がしますソレ。面倒見良い年下キラーなんですね、愛さん」
せつ菜(たまにお線香みたいな匂いすることあるけど)
果林「そう、料理は出来るし、フランクで付き合い易いし、誰とでも仲良く出来る」
果林(たまにぬか漬けの匂いすることあるけど)
果林「同じお姉さん系統としては、見習いたいとこも多いかも」
せつ菜「ですねー、私も金髪に染めたら御利益ありますかね?」
果林「あら、やってあげよっか?」
せつ菜「じ、冗談ですよぉ……」 せつ菜「ところで果林さん……」
果林「なにかしら」ギュー
せつ菜「いや……いつまで抱き締めるんですか、私のこと」
果林「あら、嫌?」
せつ菜「そろそろ嫌になりそうです……ていうか苦しいです」
果林「…………」ギュギュー
せつ菜「ちょ、何で更に締めるんですか!? 痛いんですけど!」
果林「あったかくてきもちいでちゅ……」
せつ菜「何ですか今の!?」
果林「ぎゅー……せつ菜ぎゅー」ギュムー
せつ菜「たーすーけーてー!」 愛「さっきから何してんの2人とも……ラブなの?」
璃奈「ふぁ……。おめでとうございます」
果林「うん、結婚式には招待するね……私が新郎です」ギュギュー
せつ菜「新婦が苦しんでるんですけど!」グエー
愛「……はあ、冗談は損くらいにしてさぁ、そろそろ放さないと、せつ菜が潰れ……」
<ハイ シュジンコウデース!
愛「ん」
<シュジンコウデース シュジンコウガトオリマース ミチヲアケテクダサーイ!
愛「……あ、歩夢が来たかな」 ガチャン
歩夢「お疲れ様です、遅れてごめんなさい」
愛「やっほー歩夢、遅かったね」
璃奈「歩夢さん……こんにちは」
歩夢「愛ちゃん、璃奈ちゃんもお疲れ様です」
歩夢「……あの、果林さんとせつ菜ちゃんは……何を」
愛「ん……ああ、気にしないでいいよ、ただ婚約しただけだから」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"じゅてーむ"」
せつ菜「ち、ちが」
歩夢「うぇええ!? 何ですかそれ、とっても気になるんですが!」
果林「せつ菜ー、ハネムーンは箱根にしよーね……」
歩夢「意外と近場ですね!」 ガチャン
かすみ「あー恥ずかしかった」
かすみ「歩夢先輩! メガホン使いながら歩くのはやめてくださいって……」
かすみ「あれ……ほ……ど」
果林「あら、かすみも来たわ。お疲れ」ギュー
せつ菜「ぐえええ」ギュムー
愛「おう、かすみもおつか……かすみ?」
かすみ「…………果林先輩」
璃奈(あ、やばいかも)
かすみ「…………」スウウゥ…
歩夢(おや……かすみちゃんの様子が……) かすみ「よく……分かりました」ハイライトオフ
かすみ「先輩は……だれにでもそういうこと、するんですね」
果林「え……かすみ?」
せつ菜「か、果林さ……とにかく放して」
果林「あ、はい」パッ
かすみ「……」
かすみ「……さきに、トレーニングルームに行きます」
かすみ「みなさんも、遅れないでくださいね」
全員「アッハイ……」
かすみ「…………」
ギイイィイ……ガ、チャン……
ガチャン……ガチャン……(※エコー) ……私には事情がよく分からんが……
部屋に入ってきたかすみは、果林とせつ菜がハグしてるのを見た瞬間……
何か能面よりもアレな表情になって……何か……出て行っちゃった
……どゆこと? 額面通りに捉えて良いのこれ
……え、じゃあ、そーゆーこと? ……いや、まさかね? ははは
せつ菜「…………」アタマオサエ
果林「……どうしたの、かすみは」
愛「さ、さあ……どうしたんだろうね、うへ、ははへは」→
果林「どうして目を合わせてくれないのよ愛」
歩夢(……早く練習いきたいな) 璃奈「果林さん……あの、とりあえず……フォローすべきだよ」
果林「あの、話がよく……」
せつ菜「お姉さんキャラで売ってるんでしょ、自分で考えて完璧にフォローしてください」
果林「あのー、せつ菜……怒ってる?」
せつ菜「さ、練習行きましょっか、時間はまだありますけど、早めに行きましょう」
歩夢「あ、そうですね、行きましょう行きましょ」ルンルン
愛「…………」
愛「璃奈、私たちも行こ」
璃奈「うん、今日も練習がんばるビィ」
愛「懐かしいねぇ、そのネタ」
果林「ねえちょっと、ねえ? 待ってよう」 果林「ねえ察するに原因は私なのよね?」
果林「もうプライド捨てていうけど、全く分かんないのよ! 何でかすみが怒ってるのか!」
果林「全然わかんないの! 皆の力が無いと、かすみと仲直りは難しそうなの!」
果林「お姉さん泣きそう!」
果林「ねえちょっと? 誰かー」
果林「…………」
果林「…………」クスン
果林「……道は自分で切り開くしかないのか」
果林「……仕方ないわよね、お姉さんキャラだもん」
果林「…………」
果林「だれかたすけて……」 ――――――
――――
――
うーん……本当は皆には先に練習行ってもらって、璃奈と例の話をつける手筈だったんだけど……この分じゃ、それは帰りまで持ち越しになっちゃうね。
この後は激しい練習が控えているし、無理してでも璃奈と一緒に抜けるべきだったのかな……。
私って意外と優柔不断なのかもね……はあ、情けない。
…………
過ぎた時間を悔やんでも仕方ない。もう練習は始まっちゃうし、今は何も無いことを祈ろう。
今日の練習は、なるべく璃奈の近くに着いていないといけないね……うん。 キリ悪いけどここまで
順当にいけば明後日辺りには終わる
書きためなくてクオリティ低いのは申し訳ないね 日付が変わった辺りで更新
夜勤頼まれたら遅れるかも ――
――――
――――――
トレーニングルーム クールダウン中
璃奈「かすみは果林さんが誰にでも云々……焼きもち云々」
果林「何だ、そんなことだったの。かわいいとこあるわね」
璃奈「……"そんなこと"とか言っちゃダメだよ?」ジトッ
果林「はい……わかってます」シュン…
璃奈「かすみは、普段ああでも、ちょっと果林さんに頼ってるとこ、ありそうだから」
璃奈「だから、あんまりかすみの前で軽薄なことしちゃ、ダメかも。璃奈ちゃんボード……"じぇらすぃー"」
果林「はい……反省してます」
璃奈「ちゃんとフォロー、忘れないでね」
果林「必ずしておくわ……」
璃奈「よろしい。……ふあ……」 愛「はあ……はあ……ふう」
歩夢「お疲れ様です、タオルです。ドリンクもありますよ」バサリ
愛「んぉ、あーありがと歩夢……」ゴシゴシ…
愛(やっぱり……思った通りかもね。練習を見てても、そんな感じがする)
愛(……璃奈は、この6日間)
歩夢「愛ちゃん……練習中、ずっと璃奈ちゃんの方を見てましたね」
愛「! うわー参ったな、歩夢には解っちゃうか」
歩夢「私だけじゃありませんよ、せつ菜ちゃんも……」
せつ菜「…………」チラリ
愛「うぐっ」
歩夢「もしかしたらかすみちゃん、果林さんだって」
かすみ「…………」チラリ
果林「…………」チラリ
歩夢「割と分かりやすかったですよ」 愛「マジか? ……うわーちょっとハズい、璃奈にはバレてないかな」
歩夢「ふふ、さてどうでしょうね」
歩夢「何せ、あのフード練習中も被ってて、璃奈ちゃんの表情とかは殆ど読み取れませんから」
愛「針金で固定してあるらしいよ、あのフード」
歩夢「え、なにそれこわい」
歩夢「…………」ゴクゴク
歩夢「ぬひーぃ、生き返りますぅ」プハァ
愛「おっさんくさっ」 歩夢「璃奈ちゃんに何かあるんですか?」
愛「え」
歩夢「だからあんなにチラチラ見てたんですよね?
歩夢「私達に出来ることがあれば、話してみてほしいな、って」
愛「…………」
歩夢「話しにくいこと?」
愛「……いやその、もしかしたら、私が片付けなきゃいけないことかもしれなくってさ」
愛「私と璃奈の問題ってことね? だから出来るだけ、皆の手を煩わせることは無い方がベストで、ね」
愛「あ、勘違いしないでよ? 別に迷惑だとか」
歩夢「あはは、大丈夫ですよ。皆、愛ちゃんが優しいことは知っています」
歩夢「……本当に、大事な後輩なんですね」
愛「……まあね」
歩夢「分かりましたっ、私も深入りはしませんね」 歩夢「でも困ったときは、遠慮しないで言ってください。微力ながら助けになりますから」
歩夢「窓口は年中無休で開いてますよ♪」
愛「歩夢……」
せつ菜「あ、歩夢さーん、タオルまだあります?」
歩夢「あ、ありますよ。ドリンクもいかがですか」
せつ菜「くださーい……。もー喉が砂漠みたい」ヘトヘト
歩夢「ふふ……では愛ちゃん、また後で」スタスタ
歩夢「がんばってくださいね」
愛「う、うん」 愛(……歩夢、たまにアレだけど、リーダー気質なのは確かだね)
愛「そっか、バレバレか。……本当なら愛サン超カッコ悪いねぇ」
かすみ「少なくとも、バレバレなのは本当です」ヌッ
愛「ッ!? うぉ、うわぁ! カスカスが出たぁ!」
かすみ「な、なんですかその反応……あとカスカスはやめてください」
かすみ「じゃなくて、愛先輩の視線のことは、私も分かってたって話ですよ」
かすみ「寧ろ、あれでチラ見してるつもりだったんですか?」
愛「むう……カスカスにまで言われてしまったぜ」
かすみ「りな子は知りませんけど、やるなら上手くやった方がいいですよ。もう少し」
愛「へーい」 愛「……あのさ、やっぱ気になる? 璃奈のこと」
かすみ「は?」
愛「かすみは璃奈のあれ、気付いてるの?」
かすみ「……何のことを言ってるんですか? 薮から棒に」
愛(あ、かすみは気付いてナイっぽい)
かすみ「…………」
かすみ「もしかして、先輩がりな子を見てたのって、りな子に何かあって」
愛「あーいやいや、違う。分かんないならいいの」
愛「うん、いいの。気にしないどいて」
かすみ「はあ……?」
かすみ「まあ、何でもいいですけど……何かあっても先輩がどうにかするでしょうし」
愛「あ、あはは。そんなに頼りに見えちゃう? 愛サンたら」
かすみ「あなた年下たらしですもん」
愛「年下たらし!?」ガーン
――――――
――――
―― ――
――――
――――――
せつ菜ー……さっきはごめーん
はぁ、もういいですから……今はかすみさんのことに集中してください
はーい……責任重大だわ
歩夢先輩、私にもドリンクちょーだい
え、あ……もう普通のミネラルウォーターしか無い……
璃奈ちゃんボード……"WTF" でもちょーだい
…………
愛「…………」
愛「あのさ、かすみ……」
かすみ「何ですか?」
愛「その、果林は別に」
かすみ「それに関しては」
愛「 」ビクッ かすみ「……それに関しては、果林先輩から話して頂けると思いますので」
かすみ「お心遣いは有難いですが……お気持ちだけ受け取っておきます」
愛「…………お、おう」
かすみ「……」
かすみ「大丈夫です、私も感情で動き過ぎていた自覚はあります」
かすみ「よくよく考えれば、果林先輩のあれは、日常風景ですもんね」
愛「皆、気にしては無いと思うから……だから軽く考えた方がいいよ」
かすみ「はい……お騒がせしてすいませんでした」
愛「いーのいーの」 愛「…………でさ、これ訊いて良いのか分かんないけど」
愛「あのさ……その……好き、なの?」
かすみ「?」
愛「果林のこと、あの、何にも代え難いってゆーか」
愛「そんな感じで……」
かすみ「えー? かすみん、一体なんのことかぁ……」
かすみ「…………」
愛「…………」
かすみ「……ええ、好きですよ、大好きですとも」
かすみ「具体的に言うと、ずっと一緒にいてほしいくらいに。恋愛感情と言っても良いですかね」
愛「!」
愛「そ、そうなんだ……」
かすみ「てゆーか、バレてるの覚悟してるつもりだったんですけど。愛先輩も気付いてなかったんですね?」
愛「し、正直、今日のアレ見て、やっと"もしかしたら"って思い至った次第でして」
かすみ「はー……果林先輩といい愛先輩といい」
かすみ「面倒見良いお姉さんキャラは、鈍くなきゃいけない決まりでもあるんですかねぇ」チクチク
愛「うぐぐ」グサグサ かすみ「はあ……」タメイキ
かすみ「それで、引きましたか?」
愛「ん?」
かすみ「グループの中に、同性愛者……いやかすみは男性もイケますけど」
かすみ「えーっと要するに、マイノリティが居るわけですが」
愛「あー……かすみには嘘吐きたくないから言うけど、若干ね」
かすみ「ええ結構です。正直に言ってくれた方が気が楽ですから」
愛「い、いやでも、これでかすみとの付き合いを改めようとか、そんなつもりは無いからね」
愛「私としては応援するつもりだから。……素敵じゃん? 一途に思う心って」
愛「それが同性でも、素敵さに変わりは無いと、愛サン思うよ」
かすみ「……ありがとうございます。そう言ってくれるだけでも救いです」 愛「……」
愛「……もしかしたら、璃奈がさ」
かすみ「ハイ?」
愛「璃奈がさ、私のために自分を削ってるかもしれないんだ」
かすみ「なんですか急に……ノロケですか?」
愛「ち、違うよ。そんなんじゃない」
愛「確信があるでは無いんだけどさ、状況証拠だけなら幾つかあって……」
愛「そんでしかも、璃奈本人はそれが、自分のためにならないって自覚無くやってる、かもしれなくて」
かすみ「……かすみには何とも」 かすみ「それ、もしかして、りな子の描いた絵本に関係あります?」
愛「え、かすみも知ってたの」
かすみ「ええ、クラスで嬉しそうに何か見てたので……」
かすみ「覗き込んでみたら、綺麗な絵本でしたよ? 悔しいですけど、かすみには出来ない芸当です」
愛「だよね。ストーリーも固まってて、本当に綺麗な絵柄でさ」
愛「…………」
愛「あのさ、かすみ」
かすみ「はい?」 愛「かすみの感覚で構わないんだけど……あの絵本さ」
かすみ「はあ」
愛「セミプロくらいの絵本作家が1から描くとして……あの辺りまで、どんくらい掛かると思う?」
かすみ「……えー、何ですか急に。変な質問しますね」
愛「い、いやぁ、考え込まないでいいよ。かすみの感覚でいいから」ヘラヘラ
かすみ「簡単に言いますねー」
かすみ「…………」ウーン
かすみ「……かすみの主観ですけど、集中して1週間か……」
かすみ「直してる時間も考慮するなら、それ以上は掛かるんじゃないですか?」
愛「……そっか」
愛「やっぱ、そう思うよねぇ」
かすみ「訳分かりませんよ……」
かすみ「そろそろ時間ですし、歩夢先輩達のとこに戻りましょう」
愛「…………そうだね」
――――――
――――
―― ――
――――
――――――
歩夢「よーし、今日はここまでです!」
歩夢「シャワーを浴びたら、皆さん早めに帰るようにしてください!」
全員「ありがとうごさいましたー!」 璃奈「はあ……はあ……疲れた」ヨタヨタ
せつ菜「今日は一段とキツかったですねー……」
歩夢「せつ菜ちゃん、大活躍でしたけど、あのステップからの……」
せつ菜「それは両者の距離感的に……」
璃奈「私とせつ菜じゃ歩幅の違いが……」
…………
かすみ「…………」ハア…ハア…
果林「かすみ」
かすみ「ッ」
果林「……この後、時間ある?」
かすみ「……、……いいですよ」
果林「ありがと」
かすみ「……少し、待ってください。息を整えたいので」ハア…ハア… 練習終わりの、全体的に気の抜けた雰囲気。
しかし、そこの歩夢たち3人は今日の練習を振り返って語らっており…… 一方その反対側では、果林とかすみが……何とも言えない表情を浮かべて、何事かを示し合わせている。
思うに、これから例の件の仲直りに向かうんだろう。 愛(かすみ、いつか想いが叶うと良いね)
"どぅーゆあべすと"
私は内心だけで密かなエールを送り……
……これから私のやるべきことを始める。 愛「はーぁ……」
燻る緊張を抑える意味で、深呼吸をひとつ……
私は、今も語らう歩夢たちへと近づき……
そして 璃奈「璃奈ちゃんボード……"げんきいっぱ
愛「 璃 奈 」
璃奈「ッ!?」
歩夢「……!」
せつ菜「……?」 その小さな肩を叩く
少し大きな声を出したので、3人の間の空気を、ちょっと停滞させたみたいだった
……悪いことしたとは思うけど、璃奈の意識を完全に私へ向けるためだし、まあ……許してほしいかな
かすみ「……果林先輩、行きましょ」
果林「え……ええ」
かすみと果林がトレーニングルームから出て行った……ありがと、かすみ
愛「……? あ、ごめん。声デカ過ぎたかな」
愛「3人とも夢中っぽかったからさ」
愛「……で、璃奈と2人で話があるんだけど……璃奈、借りてもいい?」 璃奈「あ、愛先輩……?」
歩夢「あ、はい……どうぞ。そろそろ私達もシャワー行くつもりでしたので」
せつ菜「すみません。つい話し込んでしまいまして」
愛「あ、謝んないでよぉ……ごめんねーデカイ声だしてー」
せつ菜「は、はあ……」
璃奈「…………」
愛「さ、ちょっと部室にいこ。すぐに終わる話だと思うから」ニコリ
璃奈「……はい」
白々しい演技で誤魔化し、こうして私は、璃奈と2人の時間を得ることに成功した
この予想が外れてくれてるといいと願いつつ……さあ、ちっぽけな戦いといこうかな
――――――
――――
―― ちょいと疲れたんで今日はここまで
明日までに終われるか怪しくなったぞ ――
――――
――――――
ー部室ー
ガララ…カチャン
愛「いやーへへ、ごめんねいきなり時間もらっちゃって」
璃奈「い、いえ……良いんです」フルフル
璃奈「話って何ですか?」
愛「…………うん、話ね」
愛「あるんだよね、勘違いであってほしいけど……話が」
璃奈「……? あ、愛先輩?」
2人以外には誰も居ない夕暮れの部室
夕陽のちょっと眩しい室内で、私から数歩分くらい離れた場所に立つ璃奈
御丁寧に練習着すら顔の上半分を隠すフードの付いたパーカーで……いつものことながら、その素顔は下半分しか窺えない
愛「話、あの絵本に関係したことなんだけどさ……」
璃奈「え、絵本……、が、どうかしたの」
愛「蒸し返すようだけど――――」
愛「……果林がさ、何か、璃奈はどーしても私に見せたがってた、みたいなこと言ってたじゃん?」
璃奈「え」 愛「それつまりさ……璃奈、例の保育園のイベントもそうだけど、その……」
愛「私のため……に、頑張ってくれた。……ってこと、でもあるって認識でいいの?」
璃奈「…………」
璃奈「え、うぇ/////!?」
璃奈「え、えへうええとと、その、えーえと」ワタワタ
愛「ごめん、真面目に訊いてるの」
愛「出来れば、璃奈も真剣に答えてほしいわけ」
璃奈「あ、あう、あう////」
愛「璃奈、答えて」
璃奈「うう……////」プシュー… 愛「どうなの璃奈」
愛「私は別に笑ったりしない……答えて」
璃奈「…………」
璃奈「果林先輩の言ってたことは……間違って、ない」
璃奈「愛先輩だけじゃないって言ったのも嘘じゃないよ。でも――――」
璃奈「本心は、その……愛先輩に……一番、誉めてもらいたかった……」
璃奈「うう////」モジモジ
愛「…………」 愛「うん、そっか」
璃奈「この前スーパーで会った時、絵を誉めてくれて」
璃奈「……それが、とても……とっても嬉しかったの」
愛「うん」
愛「でもどうして……こう言ったらアレだけど、それだけで私のために?」
璃奈「ま、前から、憧れだったからです……あ、愛先輩が////」
…………ちょっと思考が止まる
愛「……あこがれ?」 愛「え――――あ、憧れって////」
璃奈「うん……」
璃奈「私……グループが出来たばかりの頃は、浮いてたでしょ?」
璃奈「顔出しNGだし……璃奈ちゃんボードだし、背も低いし」
愛「い、いま思い返せば、まあね」
愛(確かに浮いてたけど、背が低いのは関係無いんじゃないかなぁ)
璃奈「かすみとは同級生だけどクラスも違うから、知り合ったのは、あの時が初めてだし」
璃奈「……スクールアイドル始めたのは良いけど、これからやっていけるか、不安だった」
璃奈「そんな私の、抱えてた不安を、軽くしてくれたのが……愛先輩」
璃奈「……憶えてる?グループの中で、私に最初に話し掛けてくれたの……愛先輩だったんだよ?」
愛「…………」 ………………
ー回想ー
そうだ
あの時、確かに私は―――
今年の春、結成されたグループの仲間達の顔合わせの時
何か輪の中から外れてる子が居るなーと思って、その小さな女の子
今にして思えば璃奈に話し掛けたんだ
その時から、例の顔の半分が隠れるフードは被っていたし……
何より、自己紹介で彼女の披露した……記念すべき璃奈ちゃんボード1発目の時 璃奈「天王寺璃奈。1年生だよ」
璃奈「顔出しはNGだけど、アイドル頑張る。本当だよ?」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"にっこりん♪"」
……現実的な話、それで引かないメンタル持った人の割合の方が低いと思うわけで で、当時の璃奈は相応の自己紹介を経て相応に孤立気味になり……
愛「ちっすー、あんた天王寺さんだっけ? そんなとこ居ないで、こっち来なよー♪」
璃奈「へ」
助け船を出すつもりで、私は璃奈に話し掛けたんだった
割と軽い気持ちだったけどね、私は
愛「てか本当ちっこいねー? 人形みたいでカワイイじゃんこのー」ワシャワシャ
璃奈「あわわわ」オロオロ
…………………… 璃奈「私……会話も上手い方じゃないから……だから、愛先輩が話し掛けてくれなかったら、今もグループを続けられてたか分からないよ」
璃奈「あの時は、本当にありがとう////」
愛「…………ううん、私が勝手にやったことだから」
璃奈「そこから、かな。一緒に活動してる内に、愛先輩の良いトコ、沢山見えてきて……」
璃奈「私の持ててなかったもの、先輩はイッパイ持ってて」
愛「…………」
璃奈「愛先輩と居るのが一番……でね。だから、その」
璃奈「先輩に誉められたのが、とても……」
璃奈「もっと誉められたい……と、思って―――」
愛「そっか……」 愛(ははは……年下たらし……かぁ)
かすみに言われたこと、余りに的を射てる気がして、つい自嘲気味な笑いが漏れる
……でも、ここまでは良い
私が年下たらしだからと言って、それは私が正しいと思う行いをしてきた果ての結果
たらし、なんていう称号は甚だ不満だけど、後悔なんて抱くはずもない
本題は――――ここから始まるんだ
愛「ありがとうね、璃奈」 愛「自分のやってることが、人にそこまで影響与えてるって、考えたこともなかった」
璃奈「その節は、本当に、お世話になりました」
璃奈「絵本の続き……、先輩のために頑張って描くね」
愛「へへ……」
愛「自惚れっぽいこと言うけど、後輩から慕われるのって、いいもんじゃん」
璃奈「自惚れじゃ、ないよ」
璃奈「愛先輩のことは、本当に尊敬してる」
愛「はは……////」
愛「不束者だけど……これからも愛先輩でいて、良い?」
璃奈「っ、うん! お願いします」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"りすぺくとゆー"」 愛「…………」ニコリ
璃奈「先輩……」ニコリ
……………………
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