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理亞「冬の夜更けに?」聖良「はい。怪談話、です」
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0001名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:12:25.50ID:2rtAtzkl
聖良「……」カリカリ

聖良「……」カリカリ カリカリ

聖良「……」


カラン


聖良「……ふう。今日はこれくらいにしておきましょうか」

聖良「終わりがないのが勉強とはいえ……これだけ量をこなすのは流石に疲れますね」

聖良「まあ、今までスクールアイドルの活動に専念していたツケと思えば」

聖良「たったこれだけで済んでいるのは有難いことでしょうか」
0002名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:15:18.19ID:2rtAtzkl
聖良(最後の大会、私たちは決勝へ進むことすら出来なかった)

聖良(それが悔しくないと言えば嘘にはなりますけど……でも)

聖良(Aquorsの皆さんに――そして、理亞に後押しされて吹っ切れたというか)

聖良(それで一種の区切りが着いたのは確かですね)

聖良(特に理亞が、皆さんの助けがあったとはいえあそこまで自立、成長していたのは)

聖良(……喜ばしいことではありますけれど。同時に寂しくもあり、でしょうか)

聖良(ふふ。我ながら、らしくないことを考えるものですね)
0004名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:18:23.30ID:2rtAtzkl
.

パタパタ... ガチャ


理亞「姉様」

聖良「? 理亞、まだ起きていたの」

聖良「スクールアイドルは身体が資本なんですから、夜更かしはよくないですよ」

理亞「ごめん、姉様。でも、何だか今日は寝付けなくて」

聖良「……仕方ないですね。では、理亞さえ良ければ少し話でもしませんか」

理亞「本当!? ……あ、でも姉様の、受験勉強の邪魔に」

聖良「今、区切りが着いた所ですから。気にしなくても大丈夫」

理亞「そう……良かった」パァァ

聖良(……この笑顔を見ていると、さっきの自問が馬鹿らしくなってきますね)
0005名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:22:19.54ID:2rtAtzkl
理亞「ねえ、姉様」

聖良「どうしました、理亞」

理亞「私、また姉様の怪談話が聞きたい」

聖良「怪談話……ですか」

理亞「うん。昔寝る前に色々と話してくれた、ああいう話が良い」

聖良「……でもあの時は、理亞が震えあがってしまって眠るどころじゃなかった気が」

理亞「……それは忘れて」
0006名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:25:24.36ID:2rtAtzkl
聖良「ふむ……しかし怪談話、ですか」

理亞「ダメ? 姉さま」

聖良「そういうわけではありませんが……あまり手持ちの話もありませんよ?」

聖良「あの頃から語れる話がそれほど増えているわけでもないですし」

聖良「まあ、気分転換程度にはなるでしょうけど……それでも良い、理亞?」

理亞「勿論! だって姉様の怪談話、好きだもの」

聖良「……そう言われてしまっては敵いませんね」

聖良「では、始めましょうか。久しぶりの怪談話を」
0007名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:26:33.36ID:2rtAtzkl
 第一夜 『小さいおじさん』

……さて、最初は軽い話から行きましょうか。私の方も、昔の感じを取り戻したいですし。

理亞は『小さいおじさん』って知っている?

そう。よくテレビで芸能人の人たちが見た、っていっているのを聞きますよね。

大きさはまちまちですが、大体手のひらに乗るくらいで。

ある時はこちらに声をかけてきたり、またある時は犬や猫に追いかけられていたり。

目撃談も全国各地で、そうそう、海外でも見たという噂があるみたいですよ。

一説によると、ホビットや妖精に由来するものじゃあないか……なんて噂があるみたいですが。

まあ、真相は闇の中でしょうね。
0008名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:32:42.64ID:2rtAtzkl
どうして今この話をしたか……ですか?

それはですね、ここ函館でも『小さなおじさん』の目撃情報があるんです。

とは言っても、世間一般の『小さなおじさん』とは大分存在がかけ離れているようでして。

小学生くらいの大きさで、現れてもこちらに何をするでもない。

ただ通りを一人で歩いているだけ……そんな「幽霊」なんだそうです。

……不思議ですよね? 

それくらいの身長の人なら普通に生きていてもおかしくはない。

私もそこが気になって。「出る」と噂の場所を探して、試しに行ってみたんです。
0010名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:38:43.85ID:2rtAtzkl
言うでしょう? 百聞は一見に如かず、って。

何事も、自分の目で確認できることは確認しておきたいですからね。

目撃談を集めるのは、そう難しいことではありませんでした。

同級生や、近隣の学校のスクールアイドルの皆さんに何人か見た人がいたもので。

そういった情報から……どうやら出るのは、函館駅の近くらしい、と。

ええ。意外と人の往来の多い所に出るものだと思いました。

それもあって、半信半疑でその場所へと向かってみたんです。
0011名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:42:07.34ID:2rtAtzkl
……遭えたかどうか、ですか? 

はい。それはもう呆気なく。

あまりに簡単に遭遇できたものですから、少し気落ちしたくらいです。

やはり噂は噂でしかなくて、普通の人がその話の種として弄ばれただけなんだと。

そう思い、早々に踵を返そうとしたのですが……ふと、あることが気になったんです。

     『ズルリ。 コキ。』

遠くからこちらに近付いてくる彼に合わせて、音が鳴っていることに。
0012名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:46:39.34ID:2rtAtzkl
それが彼の足音だと気付くのには、そう時間はかかりませんでした。

    『ズルリ、ゴキキ。』

彼の動きに合わせるかのように、音は聞こえてきましたからね。

いえ、しかし。何かを引き摺っているような、あるいは杖でもついているような。

そんな音が、果たして普通に歩いていて起こるでしょうか。

 『ズルリ、コキ。 ズルリ、ゴキキ。』

そうして出てきた疑問もまた、彼とすれ違う事で解けてしまったわけですけど。
0013名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:50:16.15ID:2rtAtzkl
……彼の足元。

そこにあるべき足がなかった。

いえ、これだと少々語弊がありますね。

正確に言うなら、彼の膝から下が無かったのです。

背が小さく見えていたのも、きっとそのせいでしょう。

……どうして、そんな状態になっているのか、ですか?

それは私にも分かりません。

事故にしろ事件にしろ、「足を失った男性が死亡」……なんて話はとんと聞きませんし。

手掛かりがない以上、私には断定しようがありませんから。
0014名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:53:22.32ID:2rtAtzkl
……あるいは。

もしかしたら、彼は……てけてけが変じた姿なのかもしれませんね。

ええ。あの都市伝説で有名なてけてけです。

ほら、だって話の大枠は似ているじゃないですか?

『人の多いところに出る』『足を欠損した』『北海道に由来する怪異』

これだけ類似点があるのですから、話が習合してしまったとしてもおかしくはありません。

……元は彼は、ただの塵芥に過ぎない、そんな霊の一体だった。

もしそこに、てけてけの話と要素が足されているならば。

彼はこれからもずっと、砕けた膝を引き摺り続けていくのでしょう。

……なまじ強い『てけてけ』の知名度に引っ張られて、消えることすら許されずに。
0015名無しで叶える物語(はんぺん)
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2017/12/31(日) 23:55:11.95ID:2rtAtzkl
……これでこの話は終わり、です。

どうですか? 昔の調子は取り戻せていたでしょうか?


 

 第一夜 『小さいおじさん』 終
0017名無しで叶える物語(庭)
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2018/01/01(月) 00:15:52.90ID:kPL78fdL
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