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花丸「たとえそれが罪深いことだとしても」
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0001名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:02:23.28ID:EWqsicS2
善子「あのね、花丸。私……」

善子「私、もしかしたら……ダイヤのことが好きになったっぽい……っ」

花丸(放課後の図書室、誰も居ない、マルだけの空間)

花丸(入ってきた善子ちゃんは夕日を絡めた色をしていた)

花丸(廊下を走った荒い吐息)

花丸(ふざけていない真っ直ぐな瞳)

花丸(驚きに戸惑うそんな堕天使を前に)

花丸(マルは落ち着いて本を閉じる)

花丸「知ってた」

善子「は……?」

花丸「凄く分かりやすかったから」ニコッ

善子「は……ちょ……え……///」

花丸「それで、善子ちゃんはどうしたいの?」
0002名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:04:32.70ID:EWqsicS2
花丸(笑顔で、聞く)

花丸(優しく、聞く)

花丸(答えなんて分かっているのに)

花丸(聞く必要なんて無いのに)

花丸(善子ちゃんの友達だから、聞く)

善子「ど、どうしたいって、そりゃ……えっと……」

花丸「何も無くていい?」

善子「それは」

花丸(暗きに棲む生き物が初めて光を得たように) 

花丸(迷い、躊躇い、困惑する)

花丸「先んずれば人を制す」

花丸「思い立ったが吉日」

善子「わ、分かってるけど……」

善子「怖いし」

善子「ダメだったら」

善子「そのあと元に戻れなかったら……」
0003名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:06:00.32ID:EWqsicS2
花丸「……はぁ」

花丸(分かる)

花丸(分かるけど)

花丸「こういうときは勢いこそが重要ずら。善子ちゃん」

花丸(ダメだったとしても、きっと)

花丸「善子ちゃんは」

花丸「堕天使ヨハネは」

花丸「尻尾を巻いて逃げても良いけど」

花丸「殺がれた勢いは、戻らない」

花丸(後になって、こうしよう。そう思っても)

花丸(出来ない)

花丸(恋は落ちた瞬間だけが、追い風で)

花丸(後はいつも、向かい風だから)
0004名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:08:25.53ID:EWqsicS2
花丸「別に、今の関係が好きなら――」

善子「……いや」

善子「いや、頑張る」

善子「頑張ってみる……怖いけど」

花丸「……そっか」

花丸(それがまるで対岸の火事であるかのように)

花丸(マルは読みかけの本をまた開いて、文字を追う)

花丸「なら、頑張って」

善子「あ、あのさ……花丸。それで、相談。なんだけど」

花丸(元からそのつもりだったんだと思う)

花丸(善子ちゃんはページを捲ろうとする私の手を掴む)

花丸「マルじゃないとダメ?」

善子「花丸なら、恋愛小説とか読んでそうだし」

花丸「事実は小説よりも奇なり」

花丸「恋愛小説が役立つとは限らないずら」

善子「それでもいいから、お願い!」
0005名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:11:21.62ID:EWqsicS2
花丸(なんでマルなのか) 

花丸(千歌ちゃん達でも良いじゃないかと)

花丸(思いながら)

花丸(けれど。と考えて頷く)

花丸「分かった。少しだけ乗ってあげるずら」

善子「さすが花丸!」

花丸「頼りすぎてもダメずらよ〜」

善子「分かってるって!」

花丸「あと図書室ではお静かに。ずら」

善子「は、はい……」

花丸「誰も居ないけど」
0006名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:13:12.07ID:EWqsicS2
善子「まず、ダイヤになんて言――」

花丸「そういうのは変に格好つけると雰囲気が台無しになるよ」

花丸「漫画やゲームみたいに格好良く」

……グイッ

善子「っ!」

花丸「俺のものになれよ」ボソッ

善子「ちょ、花丸……」

花丸「とかやってもはぁ? というのが正直な感想ずら」

花丸「もちろん、そう言うのに憧れていたり」

花丸「相手が初めからそう言う対象で見てくれているなら別だけど」

花丸「ダイヤさんは?」

善子「違う……」

花丸「そう。特にダイヤさんは普段厳しいけど」

花丸「相談事の時とかは優しいし、気を張って真面目に構えてくれてるから」

花丸「ふざけないでくださいな。とか、言われるずら」
0007名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:16:12.39ID:EWqsicS2
花丸「もっとも、ダイヤさんのことだから」

花丸「それえ混乱させられれば」

花丸「上手くいく可能性もあるけど」

善子「それは、ちょっと……」

善子「ちゃんとした判断での答えが欲しいし」

花丸「なら、真っ向勝負」

花丸「ベタに下駄箱に手紙を仕込んで生徒会室」

善子「手紙……ね。名前は?」

花丸「書けば告白までの時間が気まずくなるけど」

花丸「ダイヤさんの視線を感じたりするとひょっとするかもっ」グッ

善子「んなゲームみたいな」
0008名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:21:49.73ID:EWqsicS2
花丸「その一方」

花丸「名前が無ければ匿名になる」

花丸「真面目なダイヤさんは来てくれると思うけど」

花丸「何よりもまず不安な気持ちになっているはず」

花丸「そこを善子ちゃんでしたーっていう安心感で包むことができるずら」

善子「それ――」

花丸「これは雰囲気作りの一環」

花丸「名前を書いて意識させて予め考えてもらうのと一緒」

花丸「そこで善子さんがわたくしのことを……と、心拍数上昇」

花丸「ドキドキしているダイヤさんに告白する」

花丸「なお、この場合は高確率で答えが後日になるから」

花丸「断られる可能性も必然的に上がるずら」ニコッ

善子「ダメじゃないそれっ!」
0009名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:24:12.03ID:EWqsicS2
花丸「ダイヤさんにはシンプルで一直線」

花丸「マルはそれをお勧めするかな」

善子「シンプルかつ、一直線」

善子「手紙で呼び出して、ただ好きになった。って、言えば良いのね?」

花丸「そうずら」ニコッ

花丸(笑う笑う、笑う笑う)

花丸(吐き気がするほど笑ってみる)

花丸(善子ちゃんは何も分かってない)

善子「なるほど……」

花丸(マルが何で承諾したのかなんて)

花丸(ちっとも分かってない)

花丸(さっさと失敗しちゃえば良い)

花丸(ここに善子ちゃんが来たときからずっと)

花丸(そう思ってることなんて分かってない)

花丸「…………」
0010名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:25:11.46ID:EWqsicS2
善子「そしたら、答えを聞いて……」

花丸「違う」

善子「え?」

花丸「両思いの時は、分からないけど、違うなら基本的に分岐する」

善子「分岐?」

善子「どういうこと?」

花丸「ダイヤさんはきっと、善子ちゃんの告白の後にこう言うはず」

花丸「どうして……そう思ったのですか? って」

善子「……っ」

花丸「そこで詰まったらダメ」

花丸「迷ったらダメ」

花丸「躊躇ったらダメ」

花丸「自分の理由をちゃんとぶつけないとダメ」

花丸「たとえダイヤさんが口を挟んでも、自分は恋愛的に好きなんだと」

花丸「それを貫き通す必要がある」

花丸「出来る?」
0011名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:26:48.39ID:EWqsicS2
善子「……」

善子「うー……///」

善子「や、やってやるわ!」

善子「どうせ告白するんだから」

善子「いけるところまでいってやるし!」

花丸(善子ちゃんは真っ赤な顔で、答える)

花丸(勢いの有り余った大きな声)

花丸(マルが出来なかったこと)

花丸(できなくなってしまったこと)

善子「そうと決まったら、手紙を用意して……」

善子「ちゃんとしたやつ買わなきゃ……」

善子「あーもう!」

善子「やること多い!」

花丸「善――」

善子「ありがと花丸!」ニコッ

善子「私、頑張ってみる!」ダッ

花丸「……」ハァ
0012名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:30:07.30ID:EWqsicS2
花丸(善子ちゃんが居なくなって)

花丸(一人の図書室)

花丸(読みかけの本を閉じて、ため息)

花丸(嵐が去った後の空虚な切なさは)

花丸(胸が痛くなるから、嫌い)

花丸「……善子ちゃん」

花丸「別に、告白しなくても良いんだよ」

花丸「ちがう、ずら」

花丸「しないでよ」ポロポロ

花丸「……しないで」

花丸(対岸の火事なんて大嘘だった)

花丸(対岸だと思っていたのは)

花丸(ううん、そう思い込もうとしたのは川に映る後ろの景色)

花丸(そう、燃えていたのはマルの家だった)
0013名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 15:36:33.31ID:EWqsicS2
花丸(次の日、善子ちゃんはダイヤさんに告白した)

花丸(勢いが大事)

花丸(そう話したから)

花丸(ダイヤさんは凄く驚いていたけれど)

花丸(快く、受け入れてくれたらしい)

花丸(……)

花丸(そして、ダイヤさんと善子ちゃんの交際が始まった)
0015名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 16:21:21.50ID:EWqsicS2
◇図書室◇

ルビィ「花丸ちゃーん」

花丸「ルビィちゃん、ここは図書室だよ」

ルビィ「あっ」

ルビィ「ご、ごめんね」ヒソヒソ

花丸「無人だけど」ボソッ

ルビィ「聞こえたよっ!」

花丸「……はぁ」

花丸「それで、どうかした?」

ルビィ「どうかしたというか」

ルビィ「どうも出来ないと言うか」

ルビィ「……居場所がない」
0016名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 16:30:28.94ID:EWqsicS2
花丸「だからといって」

花丸「ここにこられても困るずら」

花丸「マルは愚痴聞き屋じゃないから」フイッ

ルビィ「そんなぁ……」

ルビィ「花丸ちゃんまで……」

花丸「善子ちゃんから聞かされ」

花丸「景色として見せられ」

花丸「さらにルビィちゃんからも聞けと?」

花丸「マルは拷問を受けるような」

花丸「悪いことはしてないずら」
0017名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 16:33:28.13ID:EWqsicS2
ルビィ「拷問は言い過ぎじゃないかな……」

ルビィ「あっ」

ルビィ「でも、キリストさんは良い人なのにーー」

花丸「マルは仏教だから関係ないずら」

ルビィ「花丸ちゃん……」

ルビィ「……」

ルビィ「ねぇ、花丸ちゃん」

ルビィ「何かあった?」
0018名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 16:38:48.58ID:EWqsicS2
花丸「なにもないよ」

ルビィ「でも、花丸ちゃん」

ルビィ「お姉ちゃんたちの事があってから」

ルビィ「いつも一人になりたがるし」

ルビィ「話しかけても冷たいし」

ルビィ「ふきげーー」

バンッ

ルビィ「っ」ビクッ

花丸「ルビィちゃん」

花丸「ここはどこ?」

花丸「マルは何してる?」

ルビィ「え……?」

ルビィ「えっと、図書室……あっ」

花丸「分かったら、静かにして」
0019名無しで叶える物語(かぶらずし)
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2017/12/04(月) 16:42:34.46ID:ol++EhZR
ううう...
よしまるもダイよしもダイルビも幸せになってほしくて困る
0020名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 16:45:35.26ID:EWqsicS2
ルビィ「……」

ルビィ「やっぱり」ボソッ

ルビィ「は、花丸ちゃん。あのね」

ルビィ「ルビィはーー」

ガタンッ

ルビィ「っ!」

花丸「図書室を締めるから出ていって」

ルビィ「花ーー」

花丸「出ていって!」バンッ

ルビィ「!」

花丸「……わかってるなら、出ていって」

ルビィ「……」

ルビィ「……ごめんね」
0022名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 16:56:37.76ID:EWqsicS2
タッタッタ…

  ガラッ

カタンッ

    タッタッタ…

花丸「……」

花丸(ルビィちゃんがいなくなるのを目で追い、耳で追い)

花丸(一人になってため息をつく)

花丸(らしくない)

花丸(わかってる……わかってるずら)

花丸(でも)

花丸(でも、どうしようもないから)

花丸「……八つ当たり、しちゃった」

花丸「ごめんねは……マルの言葉だよ」
0023名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2017/12/04(月) 17:21:24.99ID:EWqsicS2
花丸「……」

バサッ

花丸「?」

花丸(そんなときに、一冊の本が棚から落ちた)

花丸(表紙の擦りきれた古そうな本)

花丸(いや、それは本というには薄い)

花丸「誰の……?」

花丸(一冊のノートだった)

花丸「名前は、ない」

花丸「中は……」

パラパラ…

花丸「ぼろぼろで読めない……」

花丸「でも」

花丸(たった一文、奪ったのは彼女。という)

花丸(刻まれた文字だけは、読めた)

花丸(奪った……)

花丸(そう……奪ったのは……)

花丸「……っ」フルフル

ポイッ

花丸(ノートを棄てて考えを振り払う)

花丸(奪い返せば良い)

花丸(そう考えてしまいそうだったから)
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