善子 「私たち、友達よね?」 曜 「こんなの友達じゃないッ!」 [無断転載禁止]©2ch.net
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―罪の意識は、全くなかった
悪者を倒したのに、経験値さえ入らないのかと、思わずため息が漏れる程だ
今私が倒したこの敵は、スルーができる類のザコ敵では決してなく、言わば中ボス。つまりこれは必要な “殺し” だったのだ
――なのに何故、彼女はこんなにも怯えている?
曜 「よ、善子ちゃん……なんで……!」 善子 「何よ、あなたのためにやったのよ?」
曜 「だからってここまで…!」
善子 「素直に喜んだらどうなの? コイツに一番憤りを感じていたのは、他でもない曜でしょ?」
彼女の怯える “演技” に呆れながら、さっきまで人であったソレに、ナイフをあてる
曜 「ひっ…! 善子ちゃん、何やってるの…!?」
善子 「半分こするのよ、コレ」
曜 「半分こ…?」 善子 「あんたと私は共犯者。なら罪の重さも半分にするべきじゃない?」
四肢がついに本体から離れた
丁度重さが半分になるように分け、大きめのボストンバックと共に死体の欠片を曜に投げ渡す
曜 「ひっ…!」
善子 「それあんたの分だから。処理の方法は自分で考えなさい」 曜 「そんな! 私…」
善子 「よ・ろ・し・く・ね」
食い気味に言葉を返した私は、死体を跨いで顔を近づけ、鼻先同士をピタリと合わせる
善子 「共犯者さん」
曜は相変わらず、怯えた様子で私の目を見る
…しまった、ナイフを持ったままだった。きっとこれのせいだ
ナイフを後ろへ投げ捨て、優しく微笑む
それでも曜は、怯えていた
ーーーーーー
ーーーー
ーー 曜 「善子ちゃん! おはヨーソロー!」
善子 「ちょ、ちょっと…! バスの中で大声出すなって毎回…」
曜 「あはは、ごめん…善子ちゃん見るとテンション上がっちゃって」
善子 「な、何よソレ…」
毎朝私の後にバスに乗ってくる彼女はいつも、まるで私しか見えてないかのように駆け寄り、必要量の7倍くらいの声量で挨拶をしてくる
そんな、一般人にとっては当たり前かもしれないこの日常が、私はとっても嬉しかった 曜 「そういえば知ってる? 最近ここらで起きてる通り魔事件」
善子 「そりゃ、あんだけニュースになればね」
曜 「怖いよねー。善子ちゃんなんていかにも襲われそうって感じだし、気をつけなよ」
善子 「襲われそうな感じって何!?」
曜 「ほらその、いんき…か弱そうな感じ?」
善子 「今絶対陰キャって言いかけた!」
善子 「……本当、面倒な先輩」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 曜に職員室に来るよう促す放送が校内中に流れた。呼び出し人は武内先生、確か曜の入ってる水泳部の顧問だったっけ
経験が無いからわからないが、自分の名前を校内中、場合によっては外に聞こえる位の放送で流されるのは、相当恥ずかしい気がする
善子 「……曜、何かあったのかな」
何故か無性に気になった
…ただの先輩後輩の仲なのに? 自分で自分が不思議だった。職員室に向かいながら、自分に問いかけ続けていた 職員室についた頃、既に曜は武内先生と話をしていた。武内先生の席は入口から近い位置にあるので、外からでも十分会話を盗み聞きできた
…あれ? 私なんでこんなことしてるんだろう?
そんな疑問は、武内先生の突然の怒号であっさりかき消された
武内 「いい加減にしろ渡辺ッッ!!!!」
善子 「ひゃぁっ!?」 武内 「いつまで遊んでるつもりなんだ! スクールアイドル? そんな生産性のないことに貴重な時間を浪費するなっ!!」
曜 「私、遊んでるつもりなんか…」
武内 「遊びなんだよお前らがやってることは所詮。今お前がやるべき事はアイドルじゃない、それは渡辺が一番わかっているだろう?」
曜 「私が…やるべきこと?」
武内 「いいか? お前は優秀な選手だ。飛び込みにおいては、オリンピック候補とも言われるほどだ」
善子 「オリンピック…? あの曜が?」 曜 「でも、やるべきことは私が決めることで…」
武内 「それが間違いなんだよ! どうしたいかなんて関係ない。社会においてはどうあるべきかが大切なんだ!」
曜 「どうあるべきか…」
武内 「ほら、退部届の見本。これ見て書け」
曜 「スクールアイドル部を退部しろって!?」
武内 「お前にあんな無駄な時間を過ごす余裕なんてないはずだ。そうだろ?」
どくんっ
心臓が大きく音を立てる
“無駄な時間” その言葉が胸に深く突き刺さった
…知らなかった。曜がそんなに優秀な選手だったなんて。そんな中、アイドルなんてやってたんだ。いろんな意味で、化物だ 鼓動は速さを増していく
一体何に対して? 何を私はこんなに焦ってる?
…ひょっとして辞める? どこかへ行ってしまう? あの日常が早くも奪われる?
不安と焦りは汗となり、目に見える形で現れる
曜 「……辞めませんよ、私」
善子 「…!」
武内 「渡辺…ッ!」
曜 「私、スクールアイドルをやってて、無駄な時間だなんて思ったこと、1秒たりともありませんでした」 曜 「私はやっぱり、自分がやりたいことを大切にしたいです。もちろん、部活はしっかり両立します」
武内 「……ちっ、話にならん。いずれ後悔するぞお前」
曜 「はい、その時はよろしくお願いします」
深くお辞儀をした曜が職員室から出てくる
曜の勇ましい姿に見入っていた私は、隠れるタイミングを失い、曜と鉢合わせてしまった
曜 「あれっ、善子ちゃん」
善子 「あ…あらぁ、曜じゃない…! 奇遇ね! 私今たまたまここ通りかかって! たまたま!」
曜 「…聞いてたでしょ、さっきの話」
……本当、面倒な人
ーーーーーー
ーーーー
ーー 善子 「…本当によかったの?」
帰りのバスの中。この時間、且つここまで来るとほかの客はいなくなり、車内には私達と運転手だけになる
別に聞かれても困りはしないが、一応運転手に聞こえない位の声量で話を切り出した
曜 「もちろん! 私、スクールアイドルやってる時、すっごい楽しいから!」
……私の気遣いを無駄にする気か
善子 「でも、オリンピックの候補になるくらいなんでしょ?」 曜 「大したことじゃないよ、人口が人口だし」
善子 「それでも、先生に対してあんな…」
曜 「むっかつくよね! 生徒のやりたいことを尊重するのが教師じゃないの!?」
善子 「ま、教師も所詮大人ってことね」
曜 「…ね、あの時職員室の前にいたの、本当に偶然だったの?」
善子 「そ、そうよ! さっきから何度も言ってるじゃない!」 曜 「ふーん、そっかぁ」
善子 「急にどうしたのよ」
曜 「ううん、私が呼び出されたの校内放送だったから。それで気にかけてくれたのかなって」
善子 「わ、私がアンタのこと気にかける義理がどこにあるのよ!」
曜 「だって私達、友達じゃん?」
善子 「へ?」
久しぶりに聞いたその言葉に、思わず気の抜けた返事が出てしまった
友達…? 曜と、私が?
嘘だ、絶対に嘘。釣り合いが取れてない 善子 「友達なわけ…ないでしょ」
曜 「えーっ、私は友達だと思ってたのに?」
善子 「あ、あんたと私じゃ住む世界が違うのよ!」
曜 「あっ、また堕天がどうこうってやつ?」
善子 「違うわよっ! いや…それもそうだけど」
曜 「…何も違わないよ。私も善子ちゃんも、何も変わらない」
善子 「変わらない? オリンピック候補になるようなアンタと私が?」
曜 「うん」 善子 「…やっぱり変わってるわよ、アンタ」
曜 「よく言われる。変わり者同士、いいじゃん」
善子 「……まぁ」
曜 「じゃ、改めてよろしくね、善子ちゃん!」
……本当、面倒な友達
思わずクスッと、笑がこぼれる
それと同時に、正反対の感情が湧き出た
これは多分…憤りだ 私の友達にひどい言葉を浴びせた武内先生
その人に対する憤りが、友達という関係の嬉しさと比例して積もっていく
善子 「……ねぇ」
曜 「なぁに、善子ちゃん」
善子 「アイツに…仕返ししたくない?」
曜 「アイツって、もしかして武内先生?」
善子 「そう。やっぱり許せないわよね?」 曜 「うーん、でも武内先生の言ってることも正論だし」
善子 「んあぁーっ! もう! 私が許せないって言ってんの!」
曜 「よ、善子ちゃん!? 運転手さんびっくりしちゃうよ!?」
今更あんたがそれを言うか
善子 「友達として怒ってやってんの! ありがたく思いなさいよね!」
曜 「…そっか、ありがと善子ちゃん」 曜 「でも確かに、いくら正論でも、私の大切な居場所を貶したのは許せないな」
善子 「でしょ!?」
曜 「仕返しかぁ…それも面白いかも」
善子 「決定ね。じゃ、舞台は私がセッティングしてあげるわ」
曜 「舞台…? そんな、あんまり派手にやる必要は」
善子 「大丈夫、私に任せなさい」
善子 「だってそれが、友達ってもんでしょ?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜とある倉庫内〜
計画は完璧だった
曜が武内先生をおびき寄せ、そこを私が襲う。例え女子高生と男性教師という体格差でも、不意打ちとなれば話は別だ
携えたナイフは、グジュリと音を立てながら脇腹から中へ、中へと潜っていく
広がった血溜まりが曜の足元に近付いていく。それを避けようと後ずさり、そのまま曜は尻餅をついて倒れた
曜 「よ、善子ちゃん……なんで……!」 善子 「何よ、あなたのためにやったのよ?」
曜 「わ、私…ちょっと懲らしめるだけだって。それをこんな…っ!」
吐き気を催したかのような様子を見せた曜に、私は手慣れた手つきで死体を解体する
……あぁ、流石にこれはキツかったかな
ビチャビチャという音と嗚咽をよそに、重さが半分になるように分けた死体をボストンバッグに詰める
善子 「私たち、友達でしょ? なら楽しいことも苦しいことも、全部半分こよ」
曜 「友達…? こんなことして…?」
善子 「そうよ、あなたが言い出したんじゃない」
曜 「私、こんなことしたかった訳じゃ…」 善子 「…そうね、私達はもう友達じゃないのかも」
曜 「善子ちゃん…」
善子 「友達からちょっと進展した関係…」
曜 「進展…?」
善子 「“共犯者”よ、私達は」
曜が膝から崩れ落ちる
笑い声とも啜り泣きとも言えるその奇妙で薄気味悪い声に、少しだけ引いた
―心配しなくても大丈夫。私たちはまだ…
善子 「友達、だから」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜翌朝 バス車内〜
善子 「あ、おはよう」
曜 「うん…おはよう」
初めての私からの挨拶は、曜の体をすり抜けて消えていった。それほど曜の姿が薄く感じたし、その表情は昨日までの曜からは想像のつかないものであった
―なんというか、まるで亡霊だ
善子 「ひどい顔よ、ちゃんと顔洗った?」
曜 「うん…それは、大丈夫」
善子 「……昨日のアレ、どうしたの?」 曜 「…うん、取り敢えず山の中に」
善子 「ま、無難ね。いずれ見つかるでしょうけど」
曜 「わ…わたっ…私…ぐすっ…」
善子 「何泣いてんのよ」
曜 「だ、だって…!」
善子 「…私はね、せっかくの友達を大切にしたいの。だからその障害は、自分の手で取り払いたかった」
曜 「友…達?」
善子 「えぇ。そうじゃないの?」
曜 「……違う」 曜 「こんなの、友達のすることじゃない。友達っていうのは、もっと…」
善子 「もっと、何?」
曜 「それはその…なんというか…」
善子 「今の私たちの関係を、友達と呼ばずしてなんて呼ぶの?」
善子 「……あぁ、やっぱり共犯…」
曜 「違うッ! それは絶対に違うッ!」
善子 「…冗談よ」
曜 「私は…私たちは友達? 分かんないよ…もう、何が正しいのか…もう…っ!」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜浦の星女学院 昇降口〜
朝は憂鬱だ
いつもいつも、同じような時間に同じような顔をして登校してくる人々に埋もれるのは、自分がありきたりな人間であると自覚させられそうになるから
…今日も昇降口は人で溢れている
しかしそれは、いつもの様子とは全く違うものであった
曜 「何? なんの騒ぎ…?」
善子 「……ふふっ」
曜 「善子ちゃん?」 善子 「多分、武内先生が死んでるのが発覚したのね」
曜 「えっ…なんで? 死体は隠したし、しばらくは行方不明扱いになるはずって善子ちゃんが…」
善子 「えぇ、言ったわ。でもそれは、死体が見つからなければの話よ」
曜 「それって…どういう…」
千歌 「あっ! 曜ちゃん、善子ちゃんっ!」
曜 「ち、千歌ちゃん…」
千歌 「? どうしたの曜ちゃん、顔青いよ? どこか悪い?」
曜 「ううん、私は大丈夫。それより、どうかしたの?」 千歌 「それが…武内先生、分かるでしょ?」
曜 「も、勿論…顧問だし」
千歌 「…死んでたんだって」
善子 「し、死んでたっ!?」
千歌 「職員室の机の上にね、武内先生の頭部が置かれてたんだって」
曜 「な、何それ…悪趣味すぎるよ…」
千歌 「ひどい…よね。今、警察が学校に来てるの。しばらくは自習だって」 千歌 「そういえば、武内先生の担当してた部活の生徒とかは、事情聴取があるみたいだよ」
曜 「えぇっ!?」
千歌 「ど、どうしたの曜ちゃん、そんなに慌てて…」
曜 「い、いやぁ…ほら! 警察とかいきなり言われると戸惑うっていうか…!」
千歌 「…仕方ないよね。じゃ、私先に教室いるね」
曜 「う、うん。また…」 善子 「大変なことになってるわねぇ」
曜 「冗談やめてよ…善子ちゃんでしょ、やったの」
善子 「えぇ、昨日家に帰る前にこっそりね」
曜 「なんで…? なんでそんなに平然としていられるの?」
善子 「逆になんで曜が怯えてるのよ。彼を殺したのは他でもない私たちでしょ」
曜 「だとしても! 頭を切って机に置くなんて悪趣味すぎるでしょ!?」
善子 「…優しいのね、曜は」 善子 「私はね、友達のためならいくらでも非情になれる」
曜 「また友達って…善子ちゃんにとっての友達ってなんなの?」
善子 「…さぁ、私にもよく分からない」
善子 「でも私は、自分の使命に忠実でいたい。友達が困っているなら、どんな手段を使ってでも救うべきだと思う」
曜 「……それが、犯罪でも?」
善子 「えぇ、勿論」 曜 「…ごめん、私先行ってる」
善子 「えぇ、また帰りね」
善子 「……友達を守りたい、ね」
そう、曜は私の大切な友達
それを邪魔する障害は、何があっても取り除く
―例えそれが、許されない行いであっても
善子 「……大好きよ、曜」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜2年生 教室〜
梨子 「…曜ちゃん、元気ないよね」
千歌 「うん、今朝から顔が真っ青で…心配だよね」
曜 「……ねぇ、千歌ちゃん」
千歌 「うわぁっ!? な、何?」
曜 「…友達って、なんだと思う?」
千歌 「えっ、友達?」 千歌 「うーん、困った時お互いに助け合える人…とかかな?」
曜 「困った時に…」
千歌 「言葉にしてみると難しいねぇ。千歌にもよく分からないや」
曜 「そっか…善子ちゃんは困ってた私を助けてくれたんだ。なら私たちは本当に…」
千歌 「曜ちゃん? 善子ちゃんがどうかしたの?」
先生 「おーい、次曜の番だぞ」
曜 「……っ!」ビクッ!
千歌 「取り調べ私も緊張したなぁ。あまり怖くなかったから大丈夫だよ!」
曜 「う、うん…。じゃあ行ってくる」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜帰りのバス 車内〜
善子 「どうだった、取り調べ」
曜 「うん…なんとか怪しまれないようには出来たかな」
善子 「そう、それは良かった」
曜 「前にも言ったっけ、最近ここらで出てる通り魔事件」
善子 「あぁ、たしか既に4人くらい被害が出てたっけ」
曜 「今回の事件も、その通り魔事件の一貫だと思われたみたいで。だから私たちに疑いの目が来ることは無かったよ」
善子 「そう。それは幸運だったわね」 曜 「…ねぇ、善子ちゃん。私たちってやっぱり友達なのかな」
善子 「何よ、前からそう言ってるじゃない」
曜 「私ね、こんなことする関係、友達なんて認めたくなかった。でも千歌ちゃんが言ってたんだ」
善子 「千歌が?」
曜 「友達っていうのは、困った時にお互いに助け合える関係だって。善子ちゃんは、あのとき私を助けようとしてくれたんだよね」
善子 「えぇ。まぁ単純に、私がムカついてたってこともあるけど」
曜 「…ありがとう、善子ちゃん。私たちはやっぱり、友達なんだと思う」 善子 「…嬉しい。ありがと」
曜 「うん。…じゃあ、私降りるね」
善子 「えぇ、また明日」
バスの車窓ごしに、徐々に遠ざかってく曜に手を振り続けた。多分その時の私は、ものすごくニヤついていたと思う
それだけ私は、嬉しかった。曜が私たちの関係を友達だと認めてくれたことが
……困った時に助け合う、か
善子 「……なら、私が困ってても、助けてくれるわよね」
善子 「ね、曜?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜夜 曜の家〜
携帯が鳴った
『善子ちゃん』と表示された画面が、まるで早く電話を取れと訴えかけてくるように感じた
千歌ちゃんからの電話よりも、今は善子ちゃんからの電話の方が、より特別に思えた
曜 「もしもし?」
善子 「こんばんは、ごめんね突然」
曜 「ううん、どうしたの?」
善子 「先週、だっけ。曜が私にバスの中で言ってたこと」
曜 「バスの中で?」 善子 「『友達は困った時に助け合える関係』ってヤツ」
曜 「あぁ…確かに言ったね。それが?」
善子 「私たちが友達なら…曜は私を助けてくれる?」
曜 「…何言ってるの。当然でしょ」
善子 「曜…!」
曜 「私だって助けてもらったんだもん。今度は私が助ける番でしょ、なんでも言って」
善子 「ありがとう…嬉しい」 善子 「じゃあ、もう少しで届くはずだからよろしく」
曜 「届く…? 一体何が…」
その瞬間、家の呼び鈴がなった
下でお母さんが対応をしているのが微かに聞こえてくる。会話を聞くに、宅配便だろうか
善子 「…どうやら届いたみたいね」
曜 「善子ちゃんがなにか送ったの? …ちょっと待ってて」 曜母 「あっ、曜。ちょうどよかった、あなたに荷物よ」
曜 「うん、ありがとう」
曜母 「……それ何? なんか生臭いというか…ナマモノなら早めに冷蔵庫に入れるのよ」
言われてみて気付いた。確かに箱から生臭いというか、鼻につく匂いがする
少し駆け足で、自分の部屋のある上の階へと向かった
曜 「もしもし善子ちゃん? 届いたよ」
善子 「……開けてみて」 曜 「それに何この匂い。一体何が…」
箱の中身は匂いを消すためなのか、梱包材が何重にも巻かれていた
一枚一枚ほどいていくと、徐々に臭いはきつくなっていく。もはや最後の方は鼻をつまみながらではないと開封できなかった
―最後の一枚をめくった時
時間が止まったような気がした
曜 「……あっ……あぁ…あぁぁぁぁッ!!!!」
善子 「……なにか分かった? 中身」
曜 「こ……これ……だって……なんでっ…!」
曜 「なんで死体が入ってるのっ!!?」 善子 「友達は助け合いなんでしょ? なら私のことも助けてよ」
曜 「ど…どういうこと? それにこの死体、武内先生のじゃない。一体誰の!?」
善子 「…私もよく知らない人。死体が増えてきて、私も処理に困ってたのよ」
曜 「知らない人? 死体が増えた…? 一体善子ちゃん、何を言って…」
善子 「…この前警察が言ってたのよね? 武内先生の事件は通り魔事件の一貫かもしれないって」
曜 「うん…確かに言ってたけど」 善子 「あれ、悪くない推理だったわ。殺す目的がちゃんとあったってことを除けば、同一犯ってことに変わりはないわけだし」
曜 「……えっ」
……嘘だ
そんな言い方じゃ、まるで通り魔事件と武内先生の事件の犯人が同じ人みたいじゃないか
もし、そうなのだとしたら
曜 「善子ちゃん…もしかして」
曜 「善子ちゃんが通り魔なの?」 善子 「…そうよ」
一呼吸おいた善子ちゃんは、あたかも当然のように答えた
曜 「…じゃあこれは、その通り魔事件の被害者?」
善子 「えぇ。流石に6人目となると、死体もかさばるのよ」
曜 「なんで…なんでこんなものを私にっ!? 私がなにかした!? 善子ちゃんを怒らせるようなことした!?」
善子 「そんなに興奮しないでよ。…理由は単純よ」
善子 「だって私たち、友達じゃない」
曜 「……ッ!!」 曜 「…こんなの友達じゃない」
善子 「えっ?」
曜 「こんなことするのが、友達なわけないでしょっ! もうやめて…私を巻き込まないでっ!」
善子 「……曜」
曜 「この荷物、返すからね。もう私と…関わらないでっ!」
電話を切ろうとした時、また呼び鈴がなった
今度は宅配便ではないようだ
曜 「…誰だろ、こんな時間に」
善子 「…………。」 曜母 「……あっ、曜」
曜 「お母さん? こんな時間に一体誰…」
警察 「夜分遅くに申し訳ありません。私こういうものです」
警察手帳。
これを見るのは先週以来だ。また取り調べだろうか?
なんで…なんで私? もしかしてバレた?
それより荷物が届いた今来られるのは非常にまずい
警察 「この間おたくの学校で起きた殺人事件のことでお伺いしたいことがございまして。大丈夫ですか」
曜 「え、えぇ」 曜母 「あの…娘がなにか…」
警察 「いえいえ、ご心配なさらず。浦女の生徒さんには全員に取り調べさせていただいてますので」
曜 「……っ!」
ふと善子ちゃんのことが頭をよぎった
…関係ない。私達はもう友達でもなんでもないんだ。心配する義理なんて…
警察 「実は事件前夜、学校に侵入する影を見たという目撃情報がありましてね」
曜 (多分善子ちゃんだ。…頭部を机に置きに行った時だ) 警察 「何か知っていることがありましたら……ん?」
曜 「なにか?」
警察 「いえ…この匂い…」
曜 「…ッ!」
まずい。さっきの荷物の残り香だ
相手は警察…この匂いに感づく可能性だって…
警察 「…これ、何の匂いです?」
曜 「えっ、えと…魚…だと思います。腐らせちゃって…」
警察 「魚? うーん…」 曜母 「あぁ…さっきの荷物じゃない?」
曜 (…! お母さん! 余計なこと…!)
警察 「荷物? …それ、見せていただいてもよろしいでしょうか?」
曜母 「えぇ。曜、もってきなさい」
曜 「えっ…いや…その…」
警察 「何かまずいことでも?」
……絶体絶命
善子ちゃんと関わったのが運の尽きだった
走馬灯が頭をよぎるそんな感覚がした…その時だった
?? 「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」 警察 「…! 叫び声!? 少々失礼します!」
曜 「……助かった?」
曜母 「何かしら今の。心配ね…」
警察 「な、何かありましたか!?」
?? 「今自転車に乗った人に、すれ違いざまにお尻を触られて…!」
警察 「何っ!? 特徴は!?」
?? 「黒い服を着てて…」
曜 「あ、あれって…善子ちゃん!?」
善子 「シルバーの自転車でした。本当怖くて…」 なんで善子ちゃんがここに?
…もしかして、助けてくれた?
ふと、善子ちゃんと目が合う。するとこちらに目を向け、ウインクをしてきた
曜 (助けてくれたんだ…善子ちゃん)
警察 「詳しくお話をお伺いしましょう。署までよろしいですか?」
善子 「はい…お願いします」
警察 「すいません、事件発生のため、取り調べは中止させていただきます。失礼します」
曜 「……善子ちゃん」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜翌朝 バス車内〜
曜 「昨日、助けてくれたんだよね」
善子 「えぇ、ピンチだったでしょ?」
曜 「元々善子ちゃんのせいだけど…。なんで助けてくれたの? あんな嘘までついて」
善子 「…だって、友達でしょ」
曜 「善子ちゃん…」
曜 「昨日はごめん。友達じゃないなんて言って」
善子 「大丈夫、気にしてない」 曜 「…私、協力する。善子ちゃんのこと助けたい」
善子 「曜…本当にいいの?」
曜 「助けてもらってばかりだもん。私も善子ちゃんの力になりたい」
善子 「ありがとう」
曜に見えないように、小さくガッツポーズをする。ついに…ここまで来た
そして私は人を殺す度に、死体を曜に渡すようになった
ーーーーーー
ーーーー
ーー 〜数ヶ月後〜
善子 「…そろそろ潮時かもね」
曜 「え?」
善子 「捜査の手が、すぐそこまで来てる。捕まるのも時間の問題かも」
曜 「そんな…嫌だよっ、善子ちゃんが捕まるなんて!」
善子 「私もよ。…曜とは離れたくない」
曜 「…私、何も出来ないの?」
善子 「出来ること、ね」 善子 「私が逮捕を免れるには、ほかの人を犯人に仕立て上げるしかない。でもこれだけ証拠が揃ってたら、それは難しいかも」
曜 「そんな……」
曜 「…私じゃ、無理かな」
善子 「えっ?」
曜 「私が死体とか持って出頭したら…みんな私が犯人だと思い込む」
善子 「そ、そんなこと! アンタはどうなんのよ!」
曜 「私はどうでもいい。ただ私は善子ちゃんを助けたい」
善子 「ど、どうしてそこまで…」 曜 「どうしてって? 当たり前のこと聞かないで」
曜 「私たち、友達でしょ」
善子 「曜…。曜っ!!」ギュッ!
曜 「善子ちゃん…苦しいよ……ぐすっ…」
善子 「大好き…私、アンタのこと大好き」
曜 「うん…私も、善子ちゃんのこと大好き」 善子 「…必ず救うから! 私がアンタのこと、必ず助けに行くから、待ってて!」
曜 「うん…待ってるよ、いつまでも」
善子 「曜…ありがとう」
曜 「……じゃあ、行ってきます」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 『沼津市内を騒がせ続けた通り魔事件。今朝、その犯人が自首したという情報が入りました』
『犯人は市内に住む女子高生ということで、警察は慎重に捜査を進めており…』
善子 「………ふっ……ふふっ………ふふふっ…」
善子 「あはっ…あははははははははっ!!!」
部屋中に私の高笑いが響く
笑いすぎて思わずむせ返ったが、それでも私は笑うのをやめなかった
…いや、やめられなかったんだ 善子 「あはっ…あははは…はぁ……」
――さて、次は誰と
善子 「友達になろうかしら」
ーー
終 小説とSSの中間のような、そんなSS
地の文をガッツリ書いたのは久しぶりかも知れません。Anotherパロ以来ですかね
地の文は実力がはっきりと出てしまうので難しい上に書くのはすごく怖かったです、いかがでしたでしょうか
読んでいただき、ありがとうございました
過去作も是非よろしくお願いします
ことり 「糸」
梨子 「コワレヤスキ」 善子・鞠莉 「コワレモノよ」
鞠莉 「殺人鬼 果南」
千歌 「人間オークション…?」
穂乃果 「好きです、付き合ってください!」 海未 「お断りします」 ヨウがゴミカスでワロタ
意思が薄くて馬鹿だしこうなりそうではあるが とりあえずこいつのssに自分の推しキャラは出して欲しくないな
キャラねじ曲げられてクズ化されるか酷い目に合わされるのはほぼ確定だし
ssとしては割と好きだけど >>84
何分こんな感じのお話が好きなものでして…すいません
ハッピーエンドもたまに書いてますのでよしなに… 【秘法】埋め茸、埋め立てが遅い [無断転載禁止]©2ch.net
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1502195658/
16 名無しで叶える物語(茸)@無断転載は禁止 2017/08/08(火) 22:33:08.25 ID:lXqKpQBy
やっぱりあいつ面白いSS発見器の才能あるな
見事に今狙われてないSSって他のレスも一切ない微妙なSSばっかだし 脳とは「記憶そのもの」だった──「記憶のメカニズム」の詳細が明らかに
http://photos.supermailer.jp/brain/ なんだろうなナルトがサスケに構う理由聞かれて何言っても友達だからだ!って答えてたナルトに狂気を感じてたのを思い出したわ
だから友達だからって言葉は使いすぎると洗脳だわ 友達の邪魔になるものは許さない善子がAqours全員と狂った友達関係になった後最終的に友達の邪魔になる友達って展開とかになって私はみんなの友達にはなれないって絶望する話かと思ったらただの殺人鬼だった これも人間オークションも後味悪いけど、たまにこういうの読みたくなる ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています