ちかぎつね [無断転載禁止]©2ch.net
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むかしむかしあるところに、ちかぎつねというイタズラ好きなきつねがいました。
果南「コラー!ちかー!干物かえしてよー!」
ちか「へへーん!おそいおそい、にんげんはノロマだなぁ」 ちかはいつもたべものを盗んだり、積んであるまきをくずしたりして村人たちをこまらせていました。
村人たちはなんとかちかを退治しようとさくをねっているのですが、ちかはとてもにげ足がはやく、いつもにげられてしまうのです。
果南ちゃんもくやしそうにちかをみているだけです。ちかがとくいげな顔をしてたちさろうとしたそのときです。
ダイヤ「おまちなさい!」 ちか「あれ、あれはぢぬしのくろさわと南蛮かぶれのおはらだ。おかしななものをもってどうしたんだろ?」
ぢぬしとは昔たくさんのとちをもっていたおかねもちのことです。
ダイヤ「今日こそあなたを成敗してさしあげますわ!」
ルビィ「ぉねぇちゃぁ…ほんとにだいじょうぶかなぁ…」
マリー「のーぷろぶれむよ!ルビィちゃん!ぽるとがるから輸入してきたこのひなわじゅうでイタズラギツネをはちのすにしてやるのよ!!」 ひなわじゅうは昔のてっぽうです。あたってしまったらちかのいのちはありません。でもちかはふふんとわらっていいました。
ちか「やーい!あてれるもんならあててみろー!」
マリー「なめてくれるじゃない、ダイヤ!やっておしまい!」
ダイヤ「かくごっ!」
バン!というおおきなおとがしてたまがはっしゃされました。しかし、ちかはへいきです。 ダイヤ「どういうことですの!鞠莉さん!ぜんぜんあたらないじゃありませんの!」
マリー「鞠莉じゃなくてマリーよダイヤ、どうやらぶれがつよすぎてねらいがさだまらないみたいね」
ダイヤ「ならはやくつぎのたまをこめてください!」
マリー「それはいんぽっしぶるよダイヤ、つぎうつにはじゅうこうをみがいてかやくをつめて…」
ダイヤ「それで!どうやって!はちのすにするつもりだったんですの!!」 ちか「ぷぷ…やっぱりくろさわはバカだなぁ…」
ちかはさっとみをひるがえしてそのばをたちさりました。とおくからみてみるとダイヤちゃんがまだこちらをくやしそうににらんでいます、さっきの果南ちゃんといっしょです。とてもゆかいでしたが、でもちかはなんとなくかなしいきもちになりました。 あるふゆのきせつです。ちかは村のちかくの川辺をさんぽしていて、おやっと思いました。なにやら川からばしゃばしゃというおとがきこえます。
ちか「このけはいはにんげんかな?すぐちかくだぞ」
曜「…」
かわにいたのは村の漁師の曜ちゃんでした。ひっしでかわのみずをかきだしています。ちかは曜ちゃんのことがきになったのでちかくでみていることにしました。
ちか「いったいようはなにをしているんだろう?あんなにひっしになって」
曜「…」バシャバシャ ふとちかがあたりをみわたすと、川のそばにかごがひとつおいてありました。曜ちゃんにきづかれないようにこっそりかごのなかをのぞいてみました。
ちか「さすがようちゃん、魚がいっぱいはいってる」
曜ちゃんはかわで魚をとっていたのです。かごのなかには魚やらうなぎやらがたくさんはいっていました。
ちかは曜ちゃんにちょっといたずらをしてやろうとおもいました。 ぽちゃん、ぽちゃん、
ちかはかごから魚をとりだして川へとはなしてやります。ちかはとてもたのしそうにしていましたが、さいごにうなぎをつかんだときです。
ちか「うわっ!」
うなぎがびっくりしてちかのくびにまきついてきたのです。
ちか「もー!この!うなぎめ!せっかく川にはなしてあげようとしてたのに!」 ちかはそこらじゅうにからだをたたきつけて、うなぎをふりはらおうとしました。するとこのさわぎをきいた曜ちゃんがこっちにむかってきました。
曜「こらー!!いたずらぎつねめ!なんてことをするんだ!!」
曜ちゃんはものすごいけんまくでこちらへむかってきます。ちかはしにものぐるいでにげだしました。 やままでにげてうしろをふりかえってみると、もう曜ちゃんのすがたは見えません。ちかはほっとしました。
ちか「うう…ひどいめにあったよ…」
ちかはくびにまきついていたうなぎをかみくだいてしまうと、あのときの曜ちゃんのかおをおもいだしました。
ちか「ようちゃんおこってたな…でもちょっといたずらしただけなのにあんなにおこらなくてもいいのにな…」
ちかはまたすこしだけかなしいきもちになりました。 それからすうじつご、ちかはまた村のちかくまでやってきました。
ちか「おや、なんだかきょうはむらがさわがしいなぁ」
むらはいつもにくらべて人がたくさんそとにいます。でも、みんなとてもかなしいかおをしています。
ちか「これはだれかのそう式かな?」 ちかはそう思うとひとがたくさんいるいえをさがしました。どうやらみんな曜ちゃんのいえにあつまっているみたいです。
梨子「曜ちゃん…元気だして…ね?」
曜「…」
曜ちゃんは目を真っ赤にしてその場にたっていました。ちかは、いごこちがわるくなり、すぐにそのばをたちさってしまいました。 そのひのよる、ちかはきょうのことについてかんがえていました。
ちか「きっとしんだのはようちゃんのお父さんだ。
曜ちゃんのお父さんはびょうきで、しぬまえに、うなぎがたべたいっていったんだ。でもけっきょくうなぎはよういできなかった。
ようちゃんのお父さんはさいごまで、うなぎがたべたいっていってしんじゃったんだ。あんないたずらしなきゃよかったなぁ…」 つぎの日、ちかはまたむらにやってきました。曜ちゃんのことがすこしだけきになったのです。曜ちゃんはひとりでりょうに使うなわをあんでいました。いつもお父さんのようなりょうしになるとお父さんとはなしていた曜ちゃんもいまはひとりぼっちです。
ちか「ちかとおなじ、ひとりぼっちなんだ…」
そこに干物を売りに果南ちゃんがとおりかかりました。
果南「ほら、曜!そんなにげんきなくしてちゃお父さんがかなしむよ!」 ちかはしめた!とおもい、果南ちゃんの干物をこっそりぬすんでしまいました。
曜「…ありがとう…果南ちゃん…」
果南「ほら、ハグしよ!」
ふたりがみていない隙にちかはぬすんだ干物を曜ちゃんのいえのげんかんにおきました。ちかはこれでひとつ良いことをしたとおもい、その日はすぐにやまにかえりました。 つぎの日のあさ、ちかはまた曜ちゃんのいえに行ってみました。おみやげに山のみかんもいくつかもっていきました。
ちか「ようちゃんよろこんでくれてるかな…」
しかし、曜ちゃんの顔はくらいままです。
曜「だれがあんないたずらしたのかな?ぬすんだ干物をうちにおくなんて。果南ちゃんはゆるしてくれたけどべつの人だったらたいへんだったよ」 ちかはこれはまずいことをしたと思いました。
その日はうらぐちにもってきたみかんを置き、かえりました。
そしてつぎの日もみかんをもってきてうらぐちに置き、またつぎの日もみかんをうらぐちに置いていきました。またある時はみかんだけでなくうちうらみかんもなんこか置いていきました。 月のきれいなよるでした。ちかはぶらりとむらをさんぽしていました。するとむこうのほうから声がきこえてきます。ちかはすがたをかくして耳をそばだてました。
曜「ふたりともそうだんにのってくれてありがとう」
梨子「気にしないで、曜ちゃんこのごろげんきなかったからしんぱいだったの」
善子「神はすべての悩みを、苦しみを取り除いてくれる…あなたもこの聖書を読んで、イエスの子に…なってみない…?」
曜ちゃんとはなしをしていたのは、えどからついほうされてきた桜内さんとキリシタンの善子でした。 曜「ちょっとさいきん、おかしいことがあるんだよね」
梨子「おかしいこと?」
曜「うん、お父さんがしんじゃった日からずっとわたしのいえに、みかんやらみかんやらを置いていく人がいるみたいで」
ちかははなしが気になって3人のあとをつけていきました。
梨子「ほんとに?」
曜「うん、気になるならあした見にくればいいよ」 梨子「へぇ…ふしぎね…」
善子「…」
ちかは心のなかでふふん、とすこしほこらしいきもちになりました。
善子「曜さん!!」
曜「えっ?」
善子「ヨシコにはだれがそれをおいていったか分かったわ…」
梨子「ほんと?善子ちゃん?」
善子「ええ…それはきっと神さまのおくりものよ」 梨子「かみさまぁ?」
善子「ええ、そう…神はたったひとりのかぞくのお父さんをなくしたあなたを哀れんで、たべものをめぐんでくださったのよ!!」
曜「そ、そうなのかなぁ…」
善子「そうよ!神よ…感謝します…!」
ちかはこれはおもしろくないことだなとおもいました。
ちか「むぅ…せっかくちかがみかんを置いていってあげてるのに、それでおれいをいわれるのが神さまなんて…あーあ…」 そのつぎの日もちかはみかんをもって曜ちゃんのいえにむかいました。曜ちゃんはものおきであみをあんでいました。そこでちかはうらぐちからはいることにしました。
ふと曜ちゃんがかおを上げたときです。なんときつねがいえにはいってくるではありませんか。 曜「あのときのいたずらぎつねか、またいたずらをしにきたんだな…」
曜「…よーし…」
曜ちゃんはたちあがりものおきにしまってあった南蛮製のひなわじゅうをとりだしました。そこでいまにも戸をあけてそとへでていこうとするちかにむかってドンとうちました。ちかはその場にばたりとたおれました。
曜「やった!」 曜ちゃんはすぐにかけよっていきました。いえのなかを見ると山づみになったみかんがきれいにかたまっています。「おや?」と曜ちゃんはびっくりしてちかに目を落としました。
曜「ちかちゃんだったんだ…いつもみかんをくれてたの…」
ちかは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづきました。
曜ちゃんは、ひなわじゅうをばたりと取りおとしました。あおいけむりが、まだつつぐちからほそく出ていました。 ごんぎつねか…としんみり読んでたら桜内とキリシタン津島で笑ってしまった まあ善子の読みは半分は正しかったと言えるな
ちかにみかんを曜十へのお詫びに届けさせたのは
他ならぬ、ちかの中の神ごころだったのだから
ところで一番昔話に相応しそうなマルちゃんが出なかったが
お話の語り部、ナレーターなら似合うと納得した
また浦の星昔話よろしくお願いいたします
乙庭 梨子の扱いだけなんかアレだったけど
まあ良かったよ 乙
所々にカオスを入れてくるのがにくいあんちきしょう ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています