あらしのよるに 作 桜内梨子 [無断転載禁止]©2ch.net
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ごうごうと叩きつけてきた。
それは『雨』というより、襲い掛かる水の粒たちだ。
荒れ狂った夜の嵐は、その粒たちをちっぽけなメメ´- ントの体に、右から左から、力任せにぶつけてくる。
メメ´- ントはやっとの思いで丘を滑り降り、壊れかけた小さな小屋にもぐりこんだ。
暗闇の中でメメ´- ントは身体を休め、じっと、嵐の止むのを待つ。
ガタン!
誰かが小屋の中に入ってくる。
ハァ……ハァ……。
という息づかい。
メメ´- ント(何者だろう……?)
メメ´- ントはじっと身をひそめ、耳をそばだてた。
こつん。
(………コツン……)
ズズ……。
こつん。
(………コツン……)
ズズー……。
一歩一歩、なにかが床を叩いてやってくる。
足を引きずる音だ。
メメ´- ント(変な二つの音だな……。一つは足を引きずる音として、もう一つの音は何だろう……?杖でもついているのかな?怪我をしているの?)
メメ´- ント(まあいいか。多分スニーカーだからメメ´- ントに違いない)
メメ´- ントはほっとして、そいつに声をかけた。
メメ´- ント「すごい嵐ですね」
?「え?あら、これは失礼したわ。真っ暗で全く気が付かなかったの」ハァ……ハァ……
相手はちょっと驚いて荒い息で答える。
メメ´- ント「私も今飛び込んできたところなんです!こんなにひどくなるなんて……」
?「全くだわ。おかげで足はくじくし、もうさんざんよ」
相手は、やっと大きくため息をつき、杖にしていた棒切れを床に置く。 ということは……。
そう。
その杖をついてやってきた黒い影はメメ´- ントではなくメノ^ノ。^リだった。
特にこのメノ^ノ。^リ、とても口が大きくメメ´- ントのことが大好きときている。
メメ´- ント「あなたが来てくれてほっとしましたよ……」
メメ´- ントのほうはまだ相手がメノ^ノ。^リだということにまだ気がつかない。
メノ^ノ。^リ「それは私だってあらしの夜にこんな小屋にひとりぼっちじゃ、心細くなっちゃうわ」
どうやらメノ^ノ。^リのほうも、相手がメメ´- ントだとは気づいていない。
メノ^ノ。^リ「よっこっらしょ」
メイ*σ _ σリ「うっ……、いてててて」
メメ´- ント「どうしました?」
メノ^ノ。^リ「いやあ、ここに来るとき、ちょっと、足をね……」
メノ^ノ。^リ(ヒールで靴擦れしちゃったのよね……)
メノ^ノ。^リ(棒切れで簡易松葉杖を用意しても中々つらいわね……)
メメ´- ント「だ、だいじょうぶ!?大変だ……!ほら、こっちに足を伸ばしてください!」
メノ^ノ。^リ「ありがとう。お言葉に甘えて失礼するわ」
メノ^ノ。^リ(優しいのね)
メノ^ノ。^リが伸ばした足が、チョンとメメ´- ントの腰に当たる。
メメ´- ント(ん?スニーカーにしてはずいぶん固いな)
と思ったが、きっと今当たったのは膝なんだと思い込む。
メノ^ノ。^リ「は、は、は……」
メイ*> _ <リ「ハックション!!」
突然メノ^ノ。^リが大きなくしゃみをした。
メメ´- ント「大丈夫ですか?」
メノ^ノ。^リ「うっ……、どうやら鼻風邪をひいてちゃったみたい」
メメ´- ント「わたしもです。おかげで、全然においがわからないんです……」
メノ^ノ。^リ「うふふ、今わかるのは、お互いの声だけみたいね」
メメ´- ント「本当ですね」アハハ…
メノ^ノ。^リの笑い声を聞いて、メメ´- ントは思わず、
メメ´- ント(メノ^ノ。^リみたいな妖艶な声ですね……) と言いかけたが、失礼だと思い、口を閉じる。
メノ^ノ。^リのほうも
メノ^ノ。^リ(まるでメメ´- ントみたいにかわいらしい笑い方ね)
って言おうとしたが、そんなこと言ったら気を悪くすると思い、やめることにする。
風の唸り声と、小屋に叩きつける雨の粒が、変わりばんこに響き渡る。
メメ´- ント「どちらに住んでらっしゃるんですか?」
メノ^ノ。^リ「わたし?わたしは内浦のほうよ」
メメ´- ント「ええ!内浦のほうですか!?あっちのほうは危なくないですか……?」
メノ^ノ。^リ「あらそう?少し田舎だけれどとても住みやすいわ」
内浦とはレズがいる町である。
メメ´- ント「すごい度胸があるんですね。私は沼津の方ですよ」
メノ^ノ。^リ「あら、それはいいわね。そっちのほうは美味しい『もの』がたくさんいるって聞いたわ」
美味しい『もの』とはメメ´- ントのことである。
メメ´- ント「まあ、ふつうですよ」ハハハ……
メメ´- ント(いる……?ああ、魚とかもいるからかな)
その時、二人のお腹が同時になる。
ぐぅ〜。
メノ^ノ。^リ「そういえば、お腹が空いたわね」
メメ´- ント「ほんとですね。私もペコペコです」
メノ^ノ。^リ「ああ、こんな時、美味しい『もの』があったらどんなにいいかしら」
メメ´- ント「わかりますわかります!わたしも今同じこと思いました!」
メノ^ノ。^リ「そういえば私、よく沼津駅に食べに行くわ」
メメ´- ント「え!偶然ですね。わたしもです」
メノ^ノ。^リ「あそこらへんは特にいいわね」
メメ´- ント「においもいいですしね」
メノ^ノ。^リ「ふわっふわで、いい触感なのも多いわ」
メメ´- ント「そうですそうです!食感が良くて、ジューシーで毎日食べても飽きませんよね!」
メノ^ノ。^リ「一度食べたら病みつきになっちゃう」 メメ´- ント「ああ……。その言い方ピッタリですね」
メノ^ノ。^リ「ああ、思い出しただけでたまらない。よだれがとまらないわ」
メメ´- ント「ああ、思いっきり食べたい」
そこで二人は同時に
「「あのおいしい……」」
メメ´- ント「ハンバーグ」
メノ^ノ。^リ「女の子」
と言った。
けれども、ガラガラと遠くで鳴った雷に、ちょうどその声はかき消された。
メノ^ノ。^リ「そういえば私は小さいころ病弱で引っ込み思案だったの。当時は母に言われたものだわ。『もっと食べて友達と仲良くしなさい』って」
メメ´- ント「私もですよ。『そんなのじゃいざというときに走られないでしょ。速く走れないと生き残れないわ』って、食事のたびにお母さんから」
メノ^ノ。^リ「私の家も同じ言い方だったわ。『速く走れないと旨いごちそうにはたどり着けない』って」
メメ´- ント「私たちほんとに似てますね!」
メノ^ノ。^リ「真っ暗で何も見えないけれど、実は顔まで似ていたりして」
ピカッ!!!!
メイ*> _ <リ「きゃっ!!」
(*> ᴗ <*)ゞ「うわっ!!」
その時、すぐ近くに稲妻が光り、小屋の中が昼間のように映し出された。
メメ´- ント「あっ、私は今、うっかり下を向いていましたけど、今、私の顔、見えましたよね?似ていました?」
メノ^ノ。^リ「まぶしくて思わず目をつぶちゃったわ」
メメ´- ント「もうすぐ夜が明ければわかりますよ」
ガラガラガラ〜
突然、大きな雷の音が、小屋中を震わせる。
メイ*> _ <リ(*> ᴗ <*)ゞ「ひゃあ!」
思わず二人は、しっかりと体を寄せ合ってしまう。
メメ´- ント「あっ!すみません。どうも私この音に弱くて」
メノ^ノ。^リ「ふぅ……。実は私もなのよ。びっくりしたわね」
メメ´- ント「なんか私たちって似ていると思いませんか?」
メノ^ノ。^リ「あらっ。私もちょうど気が合うな〜って思っていたところよ」
(*> ᴗ •*)ゞ「そうだ!どうです?今度天気のいい日にお食事とか」 メノ^ノ。^リ「いいわね。ひどい嵐にあって最悪な夜だと思っていたけれど、いい友達に出会って最高の夜だわ」
メメ´- ント「すっかり嵐も止みましたね」
メノ^ノ。^リ「ほんとだわ」
雲の切れ間にほんのわずかだが、星すら出てきた。
メメ´- ント「とりあえず明日のお昼なんてどうですか?」
メノ^ノ。^リ「いいわよ。嵐のあとは天気がいいから」
メメ´- ント「会う場所はどうしましょう……」
メノ^ノ。^リ「この小屋の前でいいんじゃないかしら」
メメ´- ント「そうしましょう。お互いの顔わかりますかね?」
メノ^ノ。^リ「念のため私が『嵐の夜に友達になったものです』って言うわ」
メメ´- ント「『あらしのよるに』だけでわかりそうじゃないですか?」
メノ^ノ。^リ「私たちの合言葉は『あらしのよるに』ってことね」
メメ´- ント「では気を付けて、あらしのよるに」
メノ^ノ。^リ「さようなら、あらしのよるに」
さっきまで荒れ狂っていた嵐が嘘のようにさわやかな風がふわりとふいた。
夜明け前の静かな闇の中を手を振りながら左右に分かれていく二つの影。
明くる日、この丘の下で何が起こるのか。
木の葉のしずくをきらめかせ、ちょっぴり顔を出してきた朝日にもそんなことわかるはずない。
1話 おわり メノノリスレに出てた案をやりました
ほぼ原作通りです
気が向いたら続き書くのでその時はよろしくです ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています