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曜「なんでもない私たちの夏」 [無断転載禁止]©2ch.net
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2017/07/02(日) 02:23:33.43ID:WzsSSztT
ピンポーン。次、止まります。
機械的な音声がバスの中に響く。
いつものことだけど、遠いと家に行くまでが大変なんだよね。その分、会えるときのワクワクが大きいのかもしれないけど……隣に住んでる梨子ちゃんが羨ましいや。
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2017/07/02(日) 02:24:13.52ID:WzsSSztT
曜「あっつ…」

冷房が効いた車内から外に出れば温度差でクラクラした。
ミンミンとセミの声が煩い。
バス停から少し歩いて旅館の前で止まる。
あ、裏口からって言われてたっけ。
暑さでだるい体を動かして、裏口から入った。
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2017/07/02(日) 02:24:37.68ID:WzsSSztT
曜「お、涼しい。さすが旅館!」

千歌「んぁ?あれ、曜ちゃん早かったね」

曜「う、うん。一本早いバスに乗れたから」

タンクトップ一枚でアイスキャンディーを頬張る姿は私には刺激が強くて思わず目をそらした。
室内で涼しいはずなのに顔がやたらと熱くて、また汗が出てくる。
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2017/07/02(日) 02:25:02.82ID:WzsSSztT
千歌「どしたの?」

曜「なんでそんな薄着なの…?」

千歌「あーこれね。今部屋の冷房壊れちゃってさー……お昼寝してたんだけど暑くって!」

曜「あはは…それは災難だったね」

千歌「……ねぇ、なんでさっきからこっち向いてくれないの?」
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2017/07/02(日) 02:25:26.95ID:WzsSSztT
ズイッと顔が近付く。
汗の匂いと千歌ちゃんの匂いが混ざり合って、私の鼻孔をくすぐる。
無自覚でこういうことするから、千歌ちゃんはずるい。

千歌「もー!なにー?」

曜「い、いや…千歌ちゃんにドキドキ、しちゃって……」
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2017/07/02(日) 02:26:04.40ID:WzsSSztT
馬鹿正直に答える私の言葉で「へ?」と固まった千歌ちゃん。
ポタリとアイスが千歌ちゃんのタンクトップに落ちた。

千歌「あ、えと、その…き、着替えてくるね!」

曜「わ、わかった!」
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2017/07/02(日) 02:26:38.32ID:WzsSSztT
……心臓に、悪い。
無邪気ないつもの千歌ちゃんから、ちょっぴり大人な顔になって。
まだ顔の熱も取れていないうちに千歌ちゃんが帰ってきた。

千歌「お、おまたせ!」

曜「早い、ね?」

千歌「え?そうかな?」

曜「うん、そんな気がする」
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2017/07/02(日) 02:27:09.83ID:WzsSSztT
帰ってきた千歌ちゃんは暑いからか髪を軽く結っていた。
首筋に一滴の汗が流れていく。

千歌「あー…髪短いからすぐ出てきちゃう」

ホロリ。落ちてきた髪を耳にかける。
なんだか色っぽいな、なんて思った。

千歌「ん?ぼーっとしてるけど、平気?」

曜「あ、う、うん!全然平気!」
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2017/07/02(日) 02:27:35.03ID:WzsSSztT
千歌「そう?それならいいけど……」

千歌「あ、そうだ。なんかね、美渡姉に他の部屋使っていいか聞いたら、子どもなんだからそれくらい我慢しろー!って言うんだよ!?おかしいよね!」

曜「あ、じゃあ外出ない?」

千歌「うぇー…ただでさえ暑いのに外行くの?」

曜「海、見ようよ!防波堤のとこでさ!」

千歌「むー……いいけど、ちょっと待っててね!」
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2017/07/02(日) 02:28:07.43ID:WzsSSztT
ちょっと不満げに走っていく後ろ姿を見つめる。
結った髪の毛がちょこちょこ動いていて可愛らしい。
少しすると、麦わら帽子をふたつ持って戻ってきた。

千歌「はい、曜ちゃんの」

曜「ありがと!」

麦わら帽子を被ってサンダルに足を引っかける。
0011名無しで叶える物語(もんじゃ)@無断転載は禁止
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2017/07/02(日) 02:28:36.02ID:WzsSSztT
千歌「暑いしコンビニでアイス買おー」

曜「さっきまで食べてなかった?」

千歌「途中で落としたからノーカン!」

千歌ちゃんの家からそう遠くないコンビニでみかんアイスを購入。
そのまま近くの防波堤に並んで座った。
小さいときから夏場はよくみかんアイスを半分こして、ずっとおしゃべりしてたっけ。
なんだか、タイムスリップしてきたみたいだ。
0012名無しで叶える物語(もんじゃ)@無断転載は禁止
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2017/07/02(日) 02:29:27.43ID:WzsSSztT
千歌「ふふ、おいしいね」

曜「どうしたのさ。いつも食べてるのに」

千歌「そうだけど。なんかいつもよりおいしく感じる」

曜「そう?」

千歌「うん。暑いし、曜ちゃんと半分こだからかな」

にぃ、って悪戯に笑ってみせる彼女の頬を軽くつねる。
0013名無しで叶える物語(もんじゃ)@無断転載は禁止
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2017/07/02(日) 02:29:53.57ID:WzsSSztT
曜「またそうやって」

千歌「照れてる曜ちゃん、かわいいんだもん」

私の髪を撫でる。
なんだか気恥ずかしい。

千歌「……暑いね」

曜「半分は、千歌ちゃんのせいだけど」
0014名無しで叶える物語(もんじゃ)@無断転載は禁止
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2017/07/02(日) 02:30:56.47ID:WzsSSztT
千歌「暑いのも半分こだね」

曜「じゃあ、ドキドキも半分こ、したい」

肩を引き寄せられて、距離が近付く。
あと、10cm。5cm。3cm。……0cm。
なんでもない一日の、ちょっとだけ特別なお話だ。

おしまい。
0016名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止
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2017/07/02(日) 02:59:20.67ID:7xWedOmO
かわいい
ようちかはやはりいいものだ
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