曜「なんでもない私たちの夏」 [無断転載禁止]©2ch.net
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ピンポーン。次、止まります。
機械的な音声がバスの中に響く。
いつものことだけど、遠いと家に行くまでが大変なんだよね。その分、会えるときのワクワクが大きいのかもしれないけど……隣に住んでる梨子ちゃんが羨ましいや。 曜「あっつ…」
冷房が効いた車内から外に出れば温度差でクラクラした。
ミンミンとセミの声が煩い。
バス停から少し歩いて旅館の前で止まる。
あ、裏口からって言われてたっけ。
暑さでだるい体を動かして、裏口から入った。 曜「お、涼しい。さすが旅館!」
千歌「んぁ?あれ、曜ちゃん早かったね」
曜「う、うん。一本早いバスに乗れたから」
タンクトップ一枚でアイスキャンディーを頬張る姿は私には刺激が強くて思わず目をそらした。
室内で涼しいはずなのに顔がやたらと熱くて、また汗が出てくる。 千歌「どしたの?」
曜「なんでそんな薄着なの…?」
千歌「あーこれね。今部屋の冷房壊れちゃってさー……お昼寝してたんだけど暑くって!」
曜「あはは…それは災難だったね」
千歌「……ねぇ、なんでさっきからこっち向いてくれないの?」 ズイッと顔が近付く。
汗の匂いと千歌ちゃんの匂いが混ざり合って、私の鼻孔をくすぐる。
無自覚でこういうことするから、千歌ちゃんはずるい。
千歌「もー!なにー?」
曜「い、いや…千歌ちゃんにドキドキ、しちゃって……」 馬鹿正直に答える私の言葉で「へ?」と固まった千歌ちゃん。
ポタリとアイスが千歌ちゃんのタンクトップに落ちた。
千歌「あ、えと、その…き、着替えてくるね!」
曜「わ、わかった!」 ……心臓に、悪い。
無邪気ないつもの千歌ちゃんから、ちょっぴり大人な顔になって。
まだ顔の熱も取れていないうちに千歌ちゃんが帰ってきた。
千歌「お、おまたせ!」
曜「早い、ね?」
千歌「え?そうかな?」
曜「うん、そんな気がする」 帰ってきた千歌ちゃんは暑いからか髪を軽く結っていた。
首筋に一滴の汗が流れていく。
千歌「あー…髪短いからすぐ出てきちゃう」
ホロリ。落ちてきた髪を耳にかける。
なんだか色っぽいな、なんて思った。
千歌「ん?ぼーっとしてるけど、平気?」
曜「あ、う、うん!全然平気!」 千歌「そう?それならいいけど……」
千歌「あ、そうだ。なんかね、美渡姉に他の部屋使っていいか聞いたら、子どもなんだからそれくらい我慢しろー!って言うんだよ!?おかしいよね!」
曜「あ、じゃあ外出ない?」
千歌「うぇー…ただでさえ暑いのに外行くの?」
曜「海、見ようよ!防波堤のとこでさ!」
千歌「むー……いいけど、ちょっと待っててね!」 ちょっと不満げに走っていく後ろ姿を見つめる。
結った髪の毛がちょこちょこ動いていて可愛らしい。
少しすると、麦わら帽子をふたつ持って戻ってきた。
千歌「はい、曜ちゃんの」
曜「ありがと!」
麦わら帽子を被ってサンダルに足を引っかける。 千歌「暑いしコンビニでアイス買おー」
曜「さっきまで食べてなかった?」
千歌「途中で落としたからノーカン!」
千歌ちゃんの家からそう遠くないコンビニでみかんアイスを購入。
そのまま近くの防波堤に並んで座った。
小さいときから夏場はよくみかんアイスを半分こして、ずっとおしゃべりしてたっけ。
なんだか、タイムスリップしてきたみたいだ。 千歌「ふふ、おいしいね」
曜「どうしたのさ。いつも食べてるのに」
千歌「そうだけど。なんかいつもよりおいしく感じる」
曜「そう?」
千歌「うん。暑いし、曜ちゃんと半分こだからかな」
にぃ、って悪戯に笑ってみせる彼女の頬を軽くつねる。 曜「またそうやって」
千歌「照れてる曜ちゃん、かわいいんだもん」
私の髪を撫でる。
なんだか気恥ずかしい。
千歌「……暑いね」
曜「半分は、千歌ちゃんのせいだけど」 千歌「暑いのも半分こだね」
曜「じゃあ、ドキドキも半分こ、したい」
肩を引き寄せられて、距離が近付く。
あと、10cm。5cm。3cm。……0cm。
なんでもない一日の、ちょっとだけ特別なお話だ。
おしまい。 SS祭り第二回集計スレ [無断転載禁止]©2ch.net
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1498672501/
こちら用に書かせていただきました。
ありがとうございました。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています