曜「一方通行な三角関係」 [無断転載禁止]©2ch.net
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千歌ちゃんは私を見るとニコリと笑う
満面の笑みを顔に浮かべ、とても可愛らしい笑顔を私に向けてくれる
でもその笑顔は私だけに向けられてるものではない 千歌ちゃんとダイヤさんの目が合えば千歌ちゃんはニコリと笑う
千歌ちゃんは、果南ちゃんと、鞠莉ちゃんと、善子ちゃんと、ルビィちゃんと、花丸ちゃんと
目が合えばやはり同じ様にニコリと可愛らしい笑顔を向けてくれる でも梨子ちゃんだけは"トクベツ"
千歌ちゃんは梨子ちゃんと目があった時だけ、まるで恋する乙女のように少しだけ頬を赤らめ、はにかんだように笑う
幼馴染、ずーっと千歌ちゃんの側にいた私でも見たことのない、切なさの残る表情で にこりと、笑う
それを見た私は首をかしげる 千歌ちゃん、千歌ちゃんはどうしたら私の前でも、あの"トクベツ"な笑顔を浮かべてくれるのかな
昔からずっと私の片想いだっていうのは知ってた
女の子が女の子を好きになる事が普通じゃないってことも知ってた
だから今までずっと我慢できてた もしも、あの笑顔が梨子ちゃんじゃなくて、私の知らない誰か、どこかの男に向けられた笑顔なら
私も素直に諦めがついていたかもしれない
だってそれが普通なんだから
普通の恋の仕方 私がおかしいだけ
でも千歌ちゃんの恋の仕方は、私と同じで普通じゃなかった 最初に梨子ちゃんに向けられる"トクベツ"な千歌ちゃんの笑顔を見た時
ずるい、と思った
だって、転校してきて数ヶ月なのに、同性なのに、私の方が千歌ちゃんと長い時間一緒にいたのに
なんで私じゃないのって それからしばらく月日が経ち私は長い間考えて千歌ちゃんの家を訪ねた
大胆だけど千歌ちゃんの気持ちをちゃんと確かめようって。
もしかしたら――って
私は千歌ちゃんに告白をした
愛を伝えた 「私…昔からずっと千歌ちゃんの事が好きで…友達としてじゃなくて、恋愛の対象として、好きなの…」
「だから…えっと…その、…私と付き合ってくれませんか?!」
多分私は、焦っていたんだ
千歌ちゃん 取られちゃうかも、って 返ってきた言葉は
「…ごめんね、ずっと隠してたけど私、好きな人がいるんだ」
「だから、曜ちゃんとは付き合えない」
だった それから私は「言葉」を頭の中に必死に浮かべ千歌ちゃんに言った
「そう…だよね、なんとなく分かってたよ!」
「"その人"が誰だかわからないし悔しいけど私、応援してるよ!」
「これからも親友としてよろしくね!千歌ちゃん!!」
思ってもいないことを必死に、できるだけ多く この時の千歌ちゃんは、ひどく悲しそうな顔をしていたのを今でも鮮明に覚えている
そんな千歌ちゃんと、重い空気に耐えられず
私は千歌ちゃんの部屋を急ぎ足で後にした
そしてすぐに泣いた、目を腫らすほど泣いた
チラホラと人とすれ違うこの道で声をあげて泣けばきっと変な人だと思われちゃう
だから私は声を殺して泣いた
帰り道は夕日に照らされていて、今の私には不快なほどに眩しかった それでもまだ私は千歌ちゃんを諦めきれていなかった
だから私はまず知ろうと思った
千歌ちゃんが恋した女の子、梨子ちゃんの事を
私と何が違うのか 長年一緒にいた私でも叶えられなかった夢を なぜこんなすぐに
私は梨子ちゃんを遊びに誘った 二人っきりで遊ぼう、と私が誘ったら
梨子ちゃんはなぜか慌てふためいて
「ち、千歌ちゃんも呼んで三人で遊ばない?!」
と、言ってきた
私はそれを拒否した
すると梨子ちゃんは困ったように眉を曲げ、何かを誤魔化すように笑った
梨子ちゃんは私と二人きりで遊ぶの、嫌なのかな そして次の休みの日、私は梨子ちゃんと二人きりで遊んだ
その時間はおよそ半日くらいだけどとても楽しくて、充実した時間と言えた
やっぱり梨子ちゃんはとっても優しくて気配りのできる素敵な女の子だった
私はそれから梨子ちゃんと二人きりで遊ぶ機会を増やしていった
千歌ちゃんとの間には、相変わらず重い空気が流れていた 梨子ちゃんは私と二人きりで遊んでいくうちに私に色々な悩み事を打ち明けていってくれるようになっていた
もっともその悩みは小さなことばかりだったが、普段悩み事を溜め込む梨子ちゃんが相談してくれるという事は私をそれなりに信頼してくれて、好いてくれてるのだろう
とても嬉しかった。 それからさらに数日が経ち千歌ちゃんや私、梨子ちゃんには色々な変化があった
まず一つ目の変化は、太陽みたいな笑顔をみんなに振り払ってた千歌ちゃんから笑顔が減ってしまった
どうして千歌ちゃんから太陽の様な笑顔は減ってしまったのだろう?
あの日私が千歌ちゃんに告白したから?
ーーそれとも、梨子ちゃんが私の"トクベツ"になったから? 二つ目の変化は 私と梨子ちゃんが、恋人としての交際を始めたことだ それは突然のことだった
「よ、曜ちゃん!ーーわ、私、曜ちゃんのことが好きです!」
「え?」
あまりにもいきなり過ぎて一瞬何が起きたのか私は理解していなかった
「だ、だからぁ…す、すき…です…///曜ちゃん、私と付き合って……?」
頬を赤く染め涙で潤んだ瞳でこちらを見てくる梨子ちゃんの表情は、千歌ちゃんが梨子ちゃんに向ける"トクベツ"な笑顔と酷似していた
思えば心当たりはいくつもある、ここ最近梨子ちゃんと二人で遊んでいる中でそれらしき挙動は沢山見かけた こんな考えをしている間も梨子ちゃんは私に告白の返事を求めるようにもじもじとしている
とりあえず私は波を立てないように梨子ちゃんからの告白を断ろうと思った
なぜなら私は梨子ちゃんじゃなくて千歌ちゃんが好きなのだから そう、断ろうと思っていた…のだけれど
『ここで梨子ちゃんと私が付き合えば千歌ちゃんは私の事を少しでも見てくれるようになるかな』
これは
なにより梨子ちゃんを傷つけてしまう――
「あの…曜ちゃん…?」
私は 私は 私は
「うん、いいよ…付き合おっか、私達」
私は、最低で最悪な選択肢を取ってしまった それから私と梨子ちゃんは付き合っている…とは公言しなかったものの二人でいる時間が更に増えた
昼は一緒にご飯を食べ、たまに梨子ちゃんが持ってきてくれたお弁当を食べさせてもらったりした
学校が終わればできるだけ、時間が許す限り一緒に下校した
スクールアイドルとしての練習の時間も二人でペアを組んで準備運動をしたりした
放課後は二人きりで遊んだりもした
私達は明らかに友達の域を越し、傍から見てもすぐ分かる程"恋人"をしていた ある日千歌ちゃんは私にこう問いかけてきた
「あのーっ…勘違いかもしれないんだけど…」
「もしかしてよーちゃんと梨子ちゃんって…付き合ってるの…?」
私は返事に迷った
否定するべきか、肯定するべきか
そして返した返事は
「うん…実はつい最近梨子ちゃん"から"告白されて…私達、今付き合ってるんだ」 そう返事をした時の千歌ちゃんの表情は今でも脳裏に焼き付いている
酷く悲しい表情だ
きっとあの日、千歌ちゃんに告白した時の私も同じような表情をしていたのだろう
だとしたら私もあの日の千歌ちゃんと似た表情をしていたのかもしれない
そして思った事は1つだった
『私は、千歌ちゃんのこんな表情が見たかったんじゃない』 次の日千歌ちゃんはスクールアイドルの練習にこなかった
学校には登校して、同じクラス、近い席で授業を受けていたのに
ダイヤさんは私に問いかけてきた
「千歌さん、なぜ今日は練習に来ていないのですか?」
私は答えた『わからない』
ダイヤさんは呟いた
「最近元気がない様に見えたから…とても心配ですわね…」 罪悪感で押し潰れそうだった
梨子ちゃんの方をチラッと見るが梨子ちゃんはダイヤさんと同じように千歌ちゃんを心配する素振りを見せているだけだった
あぁ…梨子ちゃんは自分が…自分達が原因なんだって、気づいていないんだ
みんながみんな千歌ちゃんの事を考えている中
善子ちゃんだけはジッ…っとこちらを見つめていた 帰りのバスで善子ちゃんが私と同じバスに乗らずに千歌ちゃんの家の旅館に向かっていくのが見えた
私はこの後善子ちゃんが何をするのかだいたい検討がついていた
優しくて察しのいい善子ちゃんの事だ
気づいていたのだろう
私達の拗れてしまった関係を 私が梨子ちゃんと付き合っていること、千歌ちゃんが梨子ちゃんの事を好きだということ
――私が千歌ちゃんを好きなことは、気づいていないよね?
善子ちゃんがこの後千歌ちゃんにどんなアドバイスを投げかけるのかはわからない
吉と出るか凶と出るかは善子ちゃん次第だ
我ながら、人任せで最低だと思った その晩私は考えた 千歌ちゃんや梨子ちゃんを傷つけずに 元の只々仲の良い私達三人に戻る方法を
私がメチャクチャにしてしまったこの関係をどうすれば元に戻せるか
一晩中腕で顔を隠し、考えてみた
考えてみたけど、浮かばない
私の選択肢はいつだって誰かを傷つけてしまう
考えても考えても答えは見つからず
次第に目の前が真っ暗になり、突然明るくなったと思いきや世界は朝を迎えていた ―――――
スクールアイドルの練習の時間、そこには以前と変わりない…とは限らないが、一見して異常を感じ取らせない、
いつもの笑顔の千歌ちゃんがいた
千歌ちゃんはみんなを集め前に出るなりなりこう言った
「みんなっ、心配かけてごめんなさい!」
「実は…ちょっとお家で嫌な事があって、えへへ 少し気分が落ち込んでたんだ」
「…心配かけさせちゃったよね?ごめんね…」
「練習も勝手に休んでごめんなさい」 嘘だ 偽りの表情
昔からずーーっと一緒だったの私には一目でわかった
チラリと善子ちゃんの方を見てみる
善子ちゃんは地面を見つめていた
あぁ…そっか… ダメだったんだ…
仕方ない…よね。
千歌ちゃんが嘘でも、また笑ってくれるだけでも前よりはマシ…なんだよね?
ありがとう善子ちゃん
私や善子ちゃんとはまるで別の場所にいるように他の6人はガヤガヤと話し出す 「そうだったんですか………全く!休むなら一言言ってくださればいいのに!」
ダイヤさんがぷんぷん、という効果音が似合いそうな怒り方をしてその場を和ませようとする
気配りが上手いなぁ…ダイヤさんは…
「えへへ、だから休みとはちょっと違うけど一言言おうかなーって」
…………?
「休みとは、違う?」
果南ちゃんが少し眉間に皺を寄せ聞き返す 少しだけ息を吸って千歌ちゃんがハッキリとした声で言う
「うん、私、スクールアイドルやめます」
シーン…とした空気が数秒流れる
…………?やめる?
何を?…思考がまとまらない……多分この場にいる全員がそうだろう
さっきまでの和やかな空気が打って変わって…あまりの温度差にどうかしてしまいそうだった 終始内心がまるで掴めない千歌ちゃんの表情はどことなく不気味だった
「…どういう意味…?」
沈黙を始めに破ったのは鞠莉ちゃんだった
「そのままの意味だよ、私スクールアイドル辞めることにしたんだ」
「…な、なんで?家の事がまだ解決してないの…?いやそれにしてもAqoursをこんないきなり…辞めるほどのことなの………?」
途中からブツブツと一人で考え込むように呟き出す鞠莉ちゃん
一年生組と梨子ちゃんは開いた口が塞がらずに未だになんて声をかければいいか迷っている 「家の事ってのはね…詳しくは言えないし、みんなにとっては小さい事かもしれないんだけど私にとってはとっても大きな事なんだ」
「その"家の事"でね、私酷いこと考えちゃうようになっちゃったの」
「それはもう…色々と最低な事考えちゃって、どんどん自分の心が汚くなっていくのが自分でもわかったの」
………………………家の事………それもウソだ…
本当は私と梨子ちゃんの事でしょ…………? 「私ね、スクールアイドルやるなら最低でも綺麗な心でありたいと思ってたの」
「それが礼儀というか、私みたいななーんの特技もない地味な女の子がスクールアイドルやる条件というか」
「とにかくそういう気持ちでありたいと、最初から、スクールアイドル始めた時からずっと思ってた!」
やめてよ……………………………それじゃ、まるで私も――
「でも今はそれすらできる気がしないの、私」
千歌ちゃんはチラ…っと梨子ちゃんの方を向いてニコリと笑う
……あぁ、やっぱり私じゃ千歌ちゃんを振り向かせることなんて、気を引くことなんてできないんだ それからのAqoursの崩壊はすぐだった
千歌ちゃんの決意はもはや到底曲げられない物だった
始まりこそ私と梨子ちゃんが原因だったのだろうけど千歌ちゃんは本当に嫌だったんだろう
汚れた心のままスクールアイドルをすると言う事が
そう、だから私も辞めた こんな汚い私 スクールアイドルとして輝く資格がない リーダーという大きな存在を失ったグループは長く続くはずもなくあれ程深めあった友情はいとも容易く壊れてしまう
私達が抜けた後、残ったメンバーだけでもAqoursを続けようという動きはあったみたいだけど、今となっては校内でAqoursの話をする人はいない
いや、しようとする人はいない
…私は"元"Aqoursのメンバーと廊下ですれ違う度に吐き気に襲われトイレに駆け込むようになってしまった Aqoursという繋がりをあんな形で失ってしまった私と梨子ちゃんの関係は長続きするはずもなくいつの間にか会話は減って行き"恋人関係"は自然消滅していった
梨子ちゃんの寂しそうな、まるで捨てられた子犬のような瞳が今も忘れられない
全ては私の自業自得
ただ、千歌ちゃんが好きだった、その気持ちを抑えてるだけで、それだけでよかったのに………………………
席替えで離れ離れになってしまった私達の席はまるで私達の心の距離を表しているようだった
終わり 一周目はバッドエンド確定の周回プレイ前提ゲームみたいな終り方だな >>48
曜ちゃんが梨子ちゃんの告白を断ってれば、普通に3人とも失恋しました、だけで済んでた気がしないでもない
千歌ちゃんのいう汚れた心というのは、単なる失恋からの嫉妬じゃなくて、曜ちゃんは梨子ちゃんが本当に好きなんじゃなくて
>>22みたいな心境なのでは、と親友を疑ってしまった(あってたけど)ことなんじゃないの 好きな相手に振られた直後に好きな相手の好きな相手と付き合えるあたりまんー臭が凄いこの曜 本当に梨子って疫病神だなって思う
梨子が来ればようちかで幸せになれたのにって ちかりこもようりこも糞だという事を分からせてくれる良いSSでした
外来種は悪でしかない… >>55
梨子がいなかろうが千歌が曜に惚れることはない むしろ梨子ちゃんがいなかったらスクールアイドルもそうそうに挫折して心が壊れてただろうな
曜は感謝すべし 梨子がいなかったら
ようちか二人でμ’sの曲コピーして
YouTubeとかに上げるみたいな幸せな感じだったんだろうな とても切ないけど、好きなssだ
片思いってなかなか上手くいかないよね
ハッピーエンドも見てみたいもんだ あーこういう胸糞本当に大好き
読んでて気分悪くなるけどそれがいい
乙 こういうドロドロSS大好き
そのままさらに依存関係になるのも好き 今まで見た曜ちゃん嫉妬SSの中でもかなり良かったぜ
心理描写がすごいリアルで良かった 欲を言えばいったん持ち上げてさらに叩き落とすぐらいのひねりはほしい ことほのうみは平和が似合うけどようちかりこにはドロドロが似合う
なぜこうなったのか 「あいつさえ居なきゃ彼女は自分のこと好きになってた」とか完全にキモオタの発想だよね ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています