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いつぞやの立て直し&再開です
スレの海の底でほそぼそと…… /花陽
それはアイドル研究部に届いた一つの小包から始まりました
穂乃果「うー…暑い……」グデ…
にこ「暑いわねぇ……」
凛「暑いにゃー……」トローン
希「もうじき秋だっていうのに、まだまだ暑いねぇ……」
花陽「そうですね、今年は例年より残暑が厳しいみたいですし…」
次のライブの内容をみんなで考えようと放課後部室に集まった私達
穂乃果ちゃんが新しい生徒会長になってから初めてのライブです
ことり「おまたせ〜」ガチャ
海未「はぁ、案の定ダラけてますね…」
穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃんおかえり〜…」グデ…
ことり「ジュース買ってきたよ」ドサ
凛「にゃ!?」
にこ「ナイスよことり!」ガバ
希「ありがとーな」
穂乃果「ほのかこれ〜!」バッ
にこ「ああ、ズルイわよ穂乃果!」
凛「早いもの勝ちにゃ〜!」ババ
にこ「あー、凛!!」
ことり「練習後用にちょっと多めに買ってきたから大丈夫だよ」
海未「真姫と絵里はまだですか」
真姫ちゃんは練習開始まで音楽室で曲のアレンジを詰めたいと行っていたのでもうじき来ると思います
絵里「みんなちょっといい?」ガチャ
穂乃果「絵里ちゃん、どうしたの?」
絵里「いま理事長に呼ばれてちょっと行ってきたんだけど…」スッ
そういいながら絵里ちゃんが机の上に小さな小包を置きます
みんながその小包を見つめているところに真姫ちゃんもやってきました
真姫「おまたせ…って、みんなどうしたの?」
穂乃果「絵里ちゃん、これがどうかしたの?」
絵里「今朝これが学校に届けられたみたいなの。宛先はスクールアイドルμ’s宛て…」
穂乃果「私達に?」
にこ「ファンからの差し入れとか、そういうのじゃないの?」
絵里「それならありがたい話で終わるんだけどね、差出人は不明なのよ」
希「シャイな子も中にはいるんとちゃう?」
真姫「なんの話?」
花陽「私にもよく……」
穂乃果「開けてみないの?」
海未「危険な物…という可能性が?」
絵里「今までファンレターのようなものはいくつかあったけど、小包ってことは何か入ってると思うのだけど…」
凛「はっ、爆弾とか!」
花陽「ええ!?」
にこ「そんなわけないでしょ」ペシ
希「んー、重さ的にそういうものじゃなさそうだけど……」ガサガサ
海未「希、危険です!」サッ
穂乃果「といいつつほのかを盾にしないで海未ちゃん」
私達μ’s宛てに届けられたその小包をどうしようかという話でした
それでも放置するなり処分するなりにしても、中身を確認しないことには始まりません
穂乃果「それじゃ開けてみるねー」ガサガサ
絵里「ゆっくりよ、万が一カミソリの刃とか仕込まれて…なんてことも…」
希「いつの時代なんそれ…」
海未「用心に越したことはないという事ですよ」ササッ
にこ「そんな隅っこでなにしてるのよ…」
凛「単純に差し入れで食べ物が入ってると予想!」
真姫「ファンレターじゃないのなら、ビデオレターとかじゃないの?」
ことり「ちょっとわくわくするね〜」
私は正直少し多めのファンレターじゃないかと思っていました
なので穂乃果ちゃんが開封した小包の中身に、良くも悪くも裏切られることになります
穂乃果「本…?」
絵里「と、何かしらこれ…スイッチ?」ゴト
小包の中からでてきたのは一冊の古びた本。そして何かの機械的なもの…
クイズ番組で使う早押しボタンのようなものでした
海未「………」ソー
にこ「ば〜ん!」
海未「ひいっ!?」ビク
にこ「あははは、冗談よ……って」
希「にこっちー」ガシ
にこ「え、ちょっと希なによ、う、動けないんだけど…って」
海未「にこ……」コキ コキ
にこ「はうぁ!?」
にこちゃん達が何やら騒いでる中、穂乃果ちゃんがその本を手にします
穂乃果「なんか変わった材質の本だね」
絵里「どれ…ん、これ……羊皮紙ね。かなり古いものだわ」
真姫「それって昔使われていた紙の材料じゃない。良く知ってるわね」
絵里「おばあさまの書庫にこういう本が何冊かあったのよ」
穂乃果「ファンの子からの本の差し入れ?」
絵里「それは分からないけど、危険なものじゃなさそうね」
凛「こっちのスイッチは?」
ことり「それはなんか危険そうだから不用意に押さない方がいいかも?」
真姫「電流でも流れたりしてね」
凛「ひえぇ……」
真姫ちゃんは冗談のつもりだろうけど、用途不明なのはかわらないので誰もそのスイッチには触りませんでした
穂乃果ちゃんが羊皮紙でできた本を開いていきます
ペリペリと紙同士の剥がれる音が本の年季を物語っているようでした
穂乃果「って日本語以外だと読めないけど…えーっと……え!?」
絵里「穂乃果?」
最初のページを開いた穂乃果ちゃんが驚くように見入っています
穂乃果「スクールアイドルμ’sのみなさまへ……だって…」
絵里「え、私達宛て?」
海未「?」
にこ「どういうこと?」
穂乃果ちゃんが机の上に本を広げておきます
年季の入った古い本の最初のページには、その一文だけが書かれていました
真姫「これ、どうみても古い時代に書かれたものよね…」
にこ「でも、小道具か何かでそういう材質の物は実際あるし、手の込んだファンレターかなにか?」
絵里「そういうこと……なのかしら…次、めくってみるわね」
絵里ちゃんがゆっくりと次のページを開きます
最初のページとは違い、次のページからは文字がビッシリと綴られていました
穂乃果「………………」
海未「……………」
絵里「……………」
本に目を通すみんなの表情が少し強張っていくのがわかります
一度に全員は見れないので私と凛ちゃんは成り行きを見守ることにします
希「サバイバル……ねぇ」
真姫「手の込んだイタズラね」
にこ「無人島って、どこかのテレビ局の企画かなんかじゃないの?」
海未「こんな突拍子もない内容でそれはどうかと思いますが……」
穂乃果「…………」
絵里「次、めくるわね」
その後もビッシリと書き込まれた文字を見つめるみんな
ちょっと状況について行きたくて、真姫ちゃんに声をかけます
本の内容を簡単に説明すると、それは招待状のようなものだそうです
・とある無人島でのサバイバルにスクールアイドルである私達に参加しないかという内容
・無人島に隠された宝物を所持した状態でサバイバル期間をクリアできれば勝利
・勝利者グループはどんな願い事も一つだけ叶える権利を得る
にこ「この時点で嘘くさいけど、そういうアトラクションなんでしょ?」
凛「どんな願いもって、景品がたくさん用意してあるって事なのかなー?」
穂乃果「それならちょっとおもしろそうかも!」
海未「穂乃果、こんな怪しい物を信じるのですか?」
そしてさらに先のページにある文を見てみんなの顔色が変わりました
・サバイバル期間はスタートから30日
穂乃果「なっが……」
にこ「なによこれ、全然現実味ないじゃない」
凛「んー、ちょっとおもしろそうだと思ったのに残念……」
絵里「学生である私達にはもともと無理な話ね」
希「結局イタズラかなにかとちゃうんかなー」
真姫「くだらないわね」
私も凛ちゃんと同じように少しおもしろそうかもと思っていたので残念だなと思いました
しかしそんな私達の危惧を察してなのか、次のような文がその先に書かれていました
・スタート時点での身体情報、所持している物は記録される
・サバイバル終了時に時間と共に身体情報等もリセットされる
(*現実時間の経過は実質無し)
みんなそれを見て、これが完全にネタ、イタズラの類だと決定し一気に興味を失いました
穂乃果「さて、ライブに向けて練習しよっか…」
絵里「そうね、無駄な時間だったわ」
海未「まったく、とんだ子供騙しです…」
私も一気に信憑性を失ったその本を横目に、練習のため部室を出ようとした時でした
ピー! ピー! ピー!
突然部室内にフルートのような音が鳴り響きます。その音にみんな驚き、音をとめようと各自が動きます
穂乃果「って、これなんの音?」
にこ「うるさいわね、誰かの携帯じゃないの?」
ことり「これ、どこから鳴ってるの?」
絵里「もう、なんなのー?」
私の体感ですが、音はこの部屋全体に響き渡っていて、出どころがわかりません
そしてその音にあたふたしている私達にその声が聞こえてきました
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
穂乃果「え、なにこの声?」
海未「わ、わかりません…どこか、上のほうから聞こえてきたような……」
にこ「もう、誰のイタズラよっ!!」
突然響く声に驚いている私達の目に、さらに驚く光景が広がります
・参加:綺羅ツバサ
綺羅ツバサ。良く知るその名前が、なんと私達が見ていた本の少し上に投影されるかのように表示されました
まさかの摩訶不思議です
穂乃果「アライズの綺羅ツバサさん? なんで名前がこんなとこに?」
凛「すごいにゃー、この文字透けてる、ほら」ブンブン
海未「凛! 無暗に触れてはいけません!!」
絵里「え、これ…どういう事…?」
ことり「こ、怖いよぅ……」
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
花陽「わっ、また……」
先ほどと同じ無機質な声が響くと、中空に浮かぶツバサさんの名前の下にもう一つ…
・参加:鹿角聖良
次に表示されたのは知らない子の名前。なんて読むんだろう?
穂乃果「えっと…誰だろ……?」
海未「かづの……せいら、でいいのかわかりませんが、そう読めますね…しかし…」
ことり「かよちゃん、この子もスクールアイドルなの?」
花陽「えっと…ごめんなさい、私の知ってるスクールアイドル情報網には……」
しかしさっきの声は確かにスクールアイドルと言いました。けれど知らない名前……
ついなにか情報が欲しくてにこちゃんを見るも、同じく知らない名前だそうです
希「なんかわかんないけど、スピリチュアルやね……」
真姫「呑気な事言ってる場合じゃないでしょ、誰のイタズラよ!」
絵里「穂乃果、さっきの本もう一度見てみましょ!」
事態がよくわからないままですが、このサバイバルに参加を決めたグループがいる
つまりこれは嘘でもイタズラでもなく、現在本当に進んでいる話なのかもしれない
そんな理解不能な不安を払いたくて絵里ちゃん達はもう一度本を手にして読み進めていきます
さらに読み進めて判明した事が……
・スクールアイドルが本と一緒に届けられたボタンを押すとその人物をリーダーとして参加が決定する
・参加グループが規定数に達するとカウントダウンがスタート
・サバイバルに必要な道具が配送され、カウントダウン終了と同時に無人島へ転送される(身体情報記録はこのタイミング)
にこ「読めば読むほどデタラメじゃないの…」
凛「ファンタジーだねぇ…」
穂乃果「もしかしてこれと同じようなものが他のスクールアイドルのところにも届けられたのかな?」
ことり「誰がなんの目的で……」
真姫「ちょっと、こんなの信じるの? デタラメもいいとこじゃない!」
海未「真姫の言う通りです、こんなのイタズラに決まってます!」
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
海未「!?」ビクッ
状況に対するの明確な答えがでないままに、また参加を決めたスクールアイドルが表示されます
そしてその後、いくつかのスクールアイドルが参加したのを確認しました
にこ「ミッドナイト・キャッツにミュータントガールズもか……」
花陽「知らない名前もたくさん……新しいスクールアイドルなのかな?」
希「リーダーの名前だけ表示されてるから、実際はどんなグループなのか不明なんやね」
絵里「なんのお祭りか知らないけど、わざわざ付き合う必要ないんじゃない?」
海未「そうです。それよりも早く練習に行きましょう」
穂乃果「えーでも、気にならない?」
ことり「気になると言えば気になるけど、だからって全部本当だとしても…」
にこ「一か月ものあいだ無人島生活だなんて、無茶にも程があるわよ」
希「だから、時間もリセットされるからそこは気にするなってことなんとちゃう?」
真姫「時間をマキ戻すなんてファンタジーあるわけないじゃない!」
凛「でも、やっぱりおもしろそう…」
今の状況が本当の出来事なのかどうかも不明なまま、私達の中でも意見が分かれました
穂乃果「試しに参加してみようよ、おもしろそうだし」
海未「いけません穂乃果! イタズラでは済まないかもしれないのですよ?」
真姫「海未の言う通りよ、もしかしたら集団拉致の可能性もあるかもしれないし…」
希「実際に無人島に行くかどうかは別として、スイッチ押すだけ押してみるとかは?」
ことり「なにかの詐欺とかじゃないの?」
にこ「だいたいそんな魔法みたいな真似事ができたとして、なんでスクールアイドルがサバイバルする必要があるわけ?」
絵里「そうね、かりに本当だとして、時間もリセットされるから大丈夫だとしてもよ…」
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
絵里ちゃんが重要な部分を話す間にも、次々と参加者は増えていきます
絵里「魔法のようなものがあったとしても、あなた達……無人島で一か月生活できる?」
穂乃果「キャンプみたいで楽しいんじゃない?」
真姫「無人島よ? この間の合宿のようにはいかないのよ?」
にこ「食料問題もそうだし、現地がどういうところかもわからないんだしね…」
凛「でもでも、支給品があるような事も書いてるよ?」
希「無人島ってことは、誰も登頂したことがない山があるかも?」
海未「む………」ピク
海未ちゃんが少し反応しました
海未「そ、それでもやっぱり危険なのには変わりありません! 反対です!」
真姫「私も反対よ。だいたいなんでも願いが叶うっていうのが一番胡散臭いのよ」
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
ことり「わぁ、どんどん参加グループが増えてる……」
穂乃果「アライズもやる気なのに、私達だけ尻込みしてるのも悔しくない?」
海未「やる必要がないと言ってるのです」
凛「もしもアライズが勝利して、ラブライブ優勝を願ったら凛達勝てないにゃ〜」
にこ「そんな姑息な手を使って優勝するんだったら鼻で笑ってやるわよ」
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
『ピピ……参加可能グループ、残り4組です』
穂乃果「え、大変! 埋まっちゃうよ!!」ガチャン
海未「あ……」
絵里「あ……」
真姫「なっ……」
にこ「ちょっと……」
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
・参加:高坂穂乃果
それはホントにあっさりと、ノリでつい〜のような感じでした
海未「ほ〜〜の〜〜〜か〜〜〜〜!!!」グイグイ
穂乃果「いひゃいいひゃいよーんみひゃん!」
絵里「ほ、ほんとに参加しちゃったの…これ?」
希「ちゃんと穂乃果ちゃんの名前も表示されてるねー」
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
・参加:高海千歌
にこ「ゆってるまに定員になりそうだけど、大丈夫なの?」
ことり「えっと、そろった瞬間からカウントダウンが始まるって…ど、どういうことかな?」
真姫「ねえもう帰ったほうがいいんじゃない?」
凛「真姫ちゃんは怖がりだにゃー」
真姫「現実問題を心配してるのよ!」
あれこれ言う前に参加するという意思表示を示してしまった私達
まだ意見が乱れているところにその名前は唐突に飛び込んできました
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
・参加:高坂雪穂
花陽「え、雪穂ちゃん?」
穂乃果「ん、雪穂? あれ、ほんとだー!」
絵里「ど、どういうこと?」
にこ「あの子スクールアイドルやってたの?」
穂乃果「そんな話は聞いた事ないよ……」
花陽「中学生でアイドル活動をしている子は、いないわけではないけど…」
希「でもいつも亜里沙ちゃんと遊んでるようやけど…」チラ
絵里「私も聞いたことないわよ……」
あれこれ詮索する前に本人に聞いて見ようと、穂乃果ちゃんが電話をかけます
そしてその間に…
『ピピ……以下のスクールアイドルが参加を決定しました』
海未「最後のグループが参加を決めたようですね」
真姫「な、なにが始まるの…?」
凛「真姫ちゃん大丈夫、みんなついてるよ」
穂乃果「雪穂は何も知らないって」
絵里「ふむ…どういうことかしら?」
希「単純に、同姓同名とか?」
ことり「ずごい偶然だけど、そう考えるのが自然かな」
穂乃果「もしそうなら、ちょっと会ってみたいかも」
そうこう話していると、またしても部室内に音が響き渡ります
ピー! ピー! ピー!
にこ「またこのうるさい音……なんなのよぉ!」
穂乃果「サバイバルがもうはじまるの?」
真姫「ちょっとまってよ、なんの準備もしてないのに無茶よ!」
これからどうなるのかも分からないままみんなが顔を見合わせる中、あの声がまた響いてきました
『ピピ……スクールアイドルのみなさんの参加に、心より感謝の意を表します』
絵里「さっきほど無機質じゃないわね…女の子?」
希「プログラム的なものやないんとちゃうかな」
にこ「ねえこれ、マジなの…?」
にこちゃんがどんどん流れる状況に不安な表情を浮かべます
けれどそれはにこちゃんだけじゃなく、約二名を除いて他全員同じでした
穂乃果「宝物ってどういうのかな?」
凛「定番は金銀財宝とか?」
穂乃果「お金! お小遣い今月ピンチだからいいかも!」
凛「穂乃果ちゃんいつもピンチだにゃ〜」
ほのりん「あっはっはっ」
海未「二人とも、もっと真剣に考えてください!」
『ピピ……参加グループが規定数に達しましたので、ただいまからサバイバル準備期間に移行します』
絵里「見て、穂乃果達の名前が書いてあったところ…」
絵里ちゃんが示したところには不思議な…それこそ魔法のような文字が浮かび上がっているところ
その文字がゆっくりと透けて、空気に溶け込むようにして消えました。そして文字のあった場所に…
にこ「数字…あ、これ時計ね、デジタル表記みたいだけど……」
ことり「秒単位のところがカウントダウンしてるから、そうみたいだね…すると…」
参加者の名前と入れ替わるようにして現れた数字がサバイバル準備期間の時間のようでした
この状況がホントかウソか見極める前に始まってしまったカウントダウンにどこか焦りを感じましたが、その時間は……
希「72時間……二日後やね…」
一か月のサバイバル生活に必要なものを用意する準備期間として与えられた時間は予想していたものよりかは多かったです
今日が金曜日の放課後なので、このカウントダウンが指す時間は日曜日の午後3時頃という事になります
穂乃果「その時間になったら無人島に転送されるってあるけど、なにもしないで自動で連れて行ってくれるってこと?」
絵里「文面から考えるとそういう事になるわね。場所の指定も行動の指定もないのだし……」
『ピピ……各スクールアイドルのリーダーはグループの参加人数を決めてください。リーダーのみ準備期間中にクラスの設定をお願いします』
にこ「ん、どゆこと?」
希「あ、時計の下になにか浮き出てるよ……これってテンキーと違う?」
希ちゃんの言う通り、デジタル時計のようなカウントダウン表記の下にパソコンなどで使うテンキーがありました
それも浮かび上がっているようで、後ろから見ても横から見ても浮いているように見えます。不思議です
そしてそのテンキーの横に「登録受付時間」という文字とともに10分のカウントダウンが別に始まっていました
ことり「エンターキーもあるから、これで参加する人数を決めてってことなんじゃないかな?」
穂乃果「なるほど、ってことはこれには9……」
真姫「ちょっとまってよ、みんないい加減にして!」ダンッ
穂乃果「真姫ちゃん……」
真姫「いつまでこんなくだらない遊びに付き合うつもり? こんなの嘘に決まってるでしょう?」
海未「それは私も同意見です…ですが……」
絵里「嘘なら嘘で、それでいいと思うわよ。でも、もしこれが本当だったら…」
にこ「本当……だったら……?」
絵里「二日後、その無人島とやらに手ぶらで連れていかれる事になるのだけど」
真姫「連れていかれるって、誰によ! みんな漫画の読みすぎじゃないの?」
真姫ちゃんの言う事は当然で、この場にいる誰もが一度は考える事です
だけどそれと同じくらい、不思議な事が好きなのもあったと思います
私はまだ正直不安ですし、一人じゃきっと何も決められない。だけどみんなが一緒なら……
穂乃果「嘘でもホントでも、私は皆と一緒ならきっと大丈夫って、言える。言い切れる」
真姫「穂乃果……でも……」
穂乃果「でも無責任な事も言わないよ。だからちゃんと聞くね……」
そういって穂乃果ちゃんは少しみんなから離れて向き直ります
そしてみんなの顔を見据えながら口にしました
穂乃果「私は行ってみたい。ちゃんとした理由はうまくいえないけど、あの声の女の子、悪い子だとは思えなかったし」
真姫「…………」
穂乃果「嘘なら騙された私達がマヌケだったねって笑い話になるだけ。でももしホントだったら……」
海未「…………」
穂乃果「それはきっと、すごく楽しいと思うの。勿論私一人じゃなくて、みんなが一緒なら……」
ことり「穂乃果ちゃん……」
穂乃果「だから、ちゃんと聞くね……一緒に…行かない?」
その言葉はみんなにかけられました。私の思考はまださっきまでの日常の中にあります
けれど今のこの状況はもう普通ではありません。不安な心はずっとくすぶったまま…
だけど……私が思った気持ちを穂乃果ちゃんが口にしてくれました
みんなと一緒なら……
凛「凛は行く! おもしろそうにゃ!」
希「そうやねー、うちは実際のとこそういうのには興味ないんやけど…」スッ
希ちゃんは机に置かれた例の本を手にし、中空に浮かび上がるデジタル時計を指します
希「この本と、不思議な浮かび上がる文字。このスピリチュアルの解明が出来るかもって考えると、行きたいかな」
絵里「希……」
希「罠の可能性っていうなら、ここまで手の込んだ事をするくらいの罠をうちらスクールアイドルに向ける理由も知りたいね」
ことり「私も…というか、もう穂乃果ちゃんは参加決定しちゃってるし、一人で行かせるなんてできないよ」
穂乃果「ことりちゃん……」
海未「まったく……後先考えないのにはもう慣れていますが、今回のはあまりに不明瞭な事ばかりです」
穂乃果「海未ちゃん……」
海未「ですから、穂乃果が無茶をしないように私も同行しましょう」
心なしか海未ちゃんの表情が……目がキラキラしているような気がするのは気のせいかな?
絵里「まったくもう…ライブの練習もあるっていうのに……」
穂乃果「絵里ちゃん……」
絵里「とりあえず準備をするにしても、その支給品とやらを確認したいところね」
海未「そうですね、必要な物、用意すべき物の優先順位がかわってきます」
穂乃果「え、絵里ちゃん…それじゃ……」
絵里「行くわよ、私も。それに行くと決めたらなんだかワクワクしてきたしね」
穂乃果「あ、ありがとう絵里ちゃん」
にこ「ふぅ…しょうがないわねぇ……」
穂乃果「にこちゃんは来てくれるよね?」
にこ「ぬわぁんで私だけ決定事項なのよ!」
凛「なんだかんだでこういうのにこちゃん好きだよね、ゲームみたいで」
にこ「ふん……悪かったわね。でもまぁ、そういう事にしとくわよ」プイ
真姫「むー………」
穂乃果「真姫ちゃんは……やっぱり、嫌…?」
真姫「嫌よ、嫌に決まってるじゃない」
穂乃果「そっか……うん、無理強いは出来ないからね…」
真姫「この後、ライブに向けての練習はどうするの?」
穂乃果「それは勿論、ちゃんとやるよ」
真姫「そんな時間ないでしょ?」
穂乃果「え?」
真姫「一か月がどれだけの時間かわかってるの? しかも日曜の午後に出発ってことは、大きな準備ができるのは実質明日だけよ?」
穂乃果「う、うん…そうだね…」
真姫「だったら必要な物のリストアップは今日中にするべきだし、そのための時間だってもうあまりないのよ」
穂乃果「えっと…真姫ちゃん?」
真姫「こんなイミワカンナイことに付き合うのは嫌だけど、行くと決めたみんなを黙って見ているのも嫌だし…それに…っ!」
穂乃果「真姫ちゃん…」
真姫「な……仲間はずれとか……もっと嫌だし……」ボソ
穂乃果「ん、良く聞こえなかったけど…」
真姫「いいの! 私も行くっていう事よ!」
凛「真姫ちゃ〜ん!」ダキ
穂乃果「ありがと〜」ダキ
真姫「ああもう、重いって…」
穂乃果「花陽ちゃんは?」クルッ
一番渋っていた真姫ちゃんが決意したことで満面の笑みを浮かべる穂乃果ちゃん
私は正直に言うと、一か月もの間サバイバル生活なんてどれほどの苦労があるのかわかりません
確実にお米もしばらく食べられないかもしれません
でも、それらを考えても心にあるこの気持ちは、もうみんなが代弁してくれました
不思議な事が続く中で、どんなところなのか見てみたいという想い。楽しそうだという想い
穂乃果ちゃん一人だけをいかせるわけにはいかないという想いも当然
それに、一人だけ除け者なんていうのはやっぱり私も嫌なのです
ごめんね真姫ちゃん、ちょっと聞こえちゃった。だけどその気持ちはきっとみんな同じ
みんなと一緒がいいよね
花陽「勿論、行きます!」
/
穂乃果「えっと…これでいいのかな? あ、触れた」スッ
凛「やっぱりリーダーの穂乃果ちゃん以外はこのテンキー触れないみたいだにゃ」
絵里「どういう仕組みなのかしら?」
ことり「魔法みたいだねー」
海未「魔法と簡単にいいますけど、どういう原理なのか…」
希「原理がないから魔法っていうんよ」
にこ「カッコイイこと言うじゃない」
真姫「ボタンを押した穂乃果の指紋、または遺伝子情報みたいなのが登録されて、それにだけ反応するようにしてるんでしょ」
凛「難しい言い方してもやっぱり仕組みはわかんないよね?」
真姫「わかんないわよっ」
全員参加という事で穂乃果ちゃんが私達、スクールアイドルμ’sの参加人数を9人で登録しました
するとあの声……一度聞こえた女の子の声とはまた違う無機質な声が響きました
『ピピ……登録完了。他のスクールアイドルの登録待ちです……』
穂乃果「ん、他のスクールアイドルも登録しないと先に進まないのか…」
絵里「最初に参加するかどうかで揉めて、後はさっきの私達みたいに内部で意見がわかれているのかもね」
海未「でも、それが普通だと思います」
ことり「そういう意味でも、最初にすぐ参加を決定したアライズって、やっぱりすごいね」
にこ「どうせ…あ、おもしろそう!って気軽に押してるんじゃないの?」
絵里「これは私達にも言える事だけど、最初にアライズが参加したっていうのは大きい要因になっているのかも」
海未「そうですね。知っている名前、それも私達スクールアイドル皆が知っているアライズの存在は大きかったと思います」
にこ「胡散臭いけど、確かにあのアライズも参加してるって考えると少し興味がでたりするからね」
そういう事情で当てはめていくと、穂乃果ちゃんが参加を決めた事で同じように参加を決めた子もいるのかな?
例えばさっきの高坂雪穂という名前の子も……
『ピピ……全スクールアイドルの参加人数が決定しました』
穂乃果「終わったみたい」
ことり「意外に早く決まったね」
絵里「10分っていう制限もあるし、みんなやるならやるで早く準備したいんでしょ」
『ピピ……スクールアイドルμ’sの参加人数が一グループあたりの平均数を大きく上回っているため支給品のランクが引き下げられます』
穂乃果「え……?」
にこ「ちょ、引き下げられるって…」
絵里「なるほどね、こういう部分で公平にやるわけね」
凛「えー…テントが寝袋になったりするの?」
海未「もう少し様子を見てみましょう」
『ピピ…スクールアイドルAqoursの参加人数が一グループあたりの平均数を大きく上回っているため支給品のランクが引き下げられます』
穂乃果「ん……アクア?」
真姫「他のスクールアイドルでそういう名前のグループがあるってことじゃない?」
絵里「って、これってつまり他のスクールアイドルに今の情報が筒抜けってこと?」
真姫「なーんかヤな感じね」
にこ「ん、花陽なにしてるの?」
花陽「さっきのアクアっていうスクールアイドルを検索してみてるんだけど……」
私達がスクールアイドルとして活動するにあたって必要な届け出、登録するサイトがあります
ここに登録することで初めてランキングに参加できるのです
花陽「アクア……ないですね……」
にこ「どういうこと?」
花陽「登録しないで活動しているグループなのかな?」
にこ「そんな非効率なやり方をわざわざ?」
もちろん、かならず登録しないといけないというワケではありません
それこそ、自称スクールアイドルとして活動するのも個々の自由です
だけどそれは本当に自分の力だけで0から始めないといけない茨の道
ランキングにも反映されず、イベントの参加等も難しくなるからです
と、そんな私の思案を他所にまたあの声が響きました
『ピピ……これより支給品を各スクールアイドルに配送します。以下は書の流れに従って準備してください』
穂乃果「あ、支給品だって」
絵里「配送って、この小包みたいなのをまた届けるってこと?」
海未「それって、いつ届くのでしょうか?」
ことり「それより学校宛てだと明日はもう土曜日だよ?」
凛「受け取る人がいないにゃ〜」
にこ「支給品が何か知りたいのに……ん? ってー!!」
にこちゃんが天井を見つめて叫びます
その方向、ちょうど机の真上、デジタル時計のさらに上に黒い靄のようなものが発生していました
ことり「な、なにあれ?」
海未「き、危険です! みんな離れて!!」
希「んー…たぶんこれなんかな?」
絵里「希、何を呑気に!」
と、緊張漂う部室内
そんな私達にはおかまいなしに、その靄というか渦というか、黒い穴とも見えるそれから何かが飛び出してきました
ドサッ ドサドサ……ドドドド…
凛「なんか振ってきたにゃ〜!!」
真姫「も〜〜〜なんなの〜〜!!」
希「だから、これが支給品やないの?」
穂乃果「へ?」
落ちてきたのはたくさんの本。そして…丸い……ボール?
先の羊皮紙で作られた古い本と同じような本が、全部で9冊。そして白い、テニスボールくらいの大きさの球が4つ
それは机の上に無造作に放り出されたのか、ボールはいくつか転げ落ちてコロコロしています
穂乃果「え、これだけ?」
ことり「黒い渦みたいなの、消えてるね」
絵里「じゃあ、これが支給品ってことなの?」
凛「えー、テントが寝袋になったどころじゃないよ〜!」
にこ「ランクが下がったって言ってたけど、これはさすがにねぇ…」
海未「この本、色分けされているのでしょうか…種類がありますね…」
真姫「表紙に何か書いてあるわよ」
いつのまにか真姫ちゃんも不思議な現象については何も言わなくなりました
もう、そういうものだということで納得しておくしかないのはみんな一緒なんだね
穂乃果「戦って書いてあるねこの赤い本。3冊あるみたいだけど…」
ことり「あんまり馴染みのない字だねこれ…癒……癒しでいいのかな?」
にこ「こっちも癒ね、緑の本……んん?」
絵里「よくわからないわねぇ…こっちのは探って字よ、これは1冊だけみたいね」
海未「こっちは補……補填や補助という意味でしょうか? 2冊ありますね」
凛「これは給……給料? お金がらみ?」
花陽「凛ちゃん、他にも給食や給仕、給水とか、自給自足の字でもあるよ」
真姫「何が書いてあるの?」
真姫ちゃんがそういうと、穂乃果ちゃんが本の1冊を開きます
しかしそこには何も書かれていませんでした……どういうことでしょう?
海未「先の声は書の流れに従ってとありましたが、最初の本の事でしょうか?」
絵里「そういえばまだ全部に目を通してないわね」
穂乃果「あーあ、埋もれちゃってた…じゃあ確認してみよう」
どうやら大まかなルールが書かれているらしい最初の本。支給品として届けられた道具の解説も載っていました
そしてそこから読み取れる内容に、穂乃果ちゃん、凛ちゃん、にこちゃんの表情がどんどんにやついていきます
分かった事を簡単にすると……
・サバイバル中、一人一つ、クラス……なにかしらの役割を担う必要があるという事
・クラスが決定するとその特性をサバイバル開始と同時に得ることができるという事
・特性は各個人が持つ本来の資質を損なうものではないという事…?
穂乃果「これってどういう意味?」
海未「おそらく私達が本来得意としている事はそのままに、新しい特性を得る…という事ではないでしょうか?」
真姫「なんだか言葉がいちいちゲームっぽいわね…」
凛「わくわくするにゃ〜」
・クラスは個人の持つ資質と選んだ特性の組み合わせで決定される
・サバイバル中にクラスを変更することはできない
そして、私達μ’sに支給されたクラス…特性の説明を読んでから、穂乃果ちゃん達が騒ぎ始めたのです
穂乃果「戦の本は……直接的な戦闘向けの特性!?」
凛「戦うにゃ!?」
にこ「モンハン!?」
たぶん、三人がたまにやってるゲームだったと思うのですが、私はその物騒な言葉に萎縮してしまいます
戦闘……戦う……何と? 誰と?
ことり「癒は、なるほど…癒す事に特化した特性なんだって」
穂乃果「ヒーラー!」
凛「ホイミ!?」
にこ「ケアルでしょ!」
少しは私にもわかるけど、ようは看護師的な役割という事かな?
一か月だもん、体調管理も大事ですよね
絵里「探は…探索、状況観察に特化した特性みたいね、へーおもしろそう」
穂乃果「レンジャー!」
凛「シーフにゃ!」
にこ「それじゃ盗賊でしょう…」
海未「補は、補助…戦闘の補助から生活面まであらゆるサポートに特化した特性のようです」
穂乃果「バッファー!」
凛「詩人!?」
にこ「踊り子でしょ?」
踊るの?
希「最後の給は…給仕、現地での素材を扱う事に特化した特性やって」
穂乃果「え、えっと……」
凛「料理人?」
にこ「急に現実的なのがきたわね」
各特性の説明は一通り終わりましたが、リーダーである穂乃果ちゃんは自分のクラスをサバイバル開始前に決定しないといけません
それはつまり、サバイバルが始まるまで私達はクラスを決められないという事でした
絵里「こういうのって現地の状況を見てから考えたいものだけど…」
真姫「だいたい戦闘ってなんなの? まさかゲームみたいな怪物とかがいるってこと?」
ことり「えー、怖いよぅ」
凛「もう十分ファンタジーだけど、実際どれくらいの規模なんだろうね?」
海未「無人島という事ですから、獰猛な獣の類とかでしょうか?」
希「大丈夫なん?」
にこ「そのための戦闘系なんじゃない!」
みんながそれぞれの感想を口にします
危険があるかどうかというよりも、無人島でのサバイバルという未知の体験に心が移っているようでした
身体情報を記録して、終了時にリセットする。このルールが様々な事を考えさせる要因にもなっています
つまり、無人島で何があっても、終了時にはみんな元に戻る……なかったことにできる……
例えそれが……
穂乃果「じゃあコレにしようかな!」
海未「穂乃果、そんな簡単に決めていいのですか?」
穂乃果ちゃんは戦の本を手にします
時間としては今すぐに決めなければいけないという事ではないのでしょうけど……
穂乃果「だってカッコイイよ?」
絵里「そんな単純な理由で……」
ことり「穂乃果ちゃん、他のは?」
穂乃果「んー、どれか選べって言われたらやっぱりこれしかないかなって思うんだけど…」
真姫「一通り考えてみたの?」
穂乃果「癒しっていうのは、ことりちゃんや真姫ちゃんが似合うかなって」
ことり「私?」
真姫「私も説明を聞いた時にはそういうイメージを持ったけど…」
穂乃果「探索っていうのは、なんとなく絵里ちゃんか海未ちゃんかなって」
絵里「そうね、実際決めるとなると私はコレを選んでいたかも」
海未「私もこの中から選べといわれれば、そうですね…絵里と同じ意見です」
穂乃果「補助って、これはもうゲーム的なイメージだけど、希ちゃんが一番似合いそうかなって」
希「うちはまぁそういうのでもいいけど…」
穂乃果「で、給仕はにこちゃん!」
にこ「ぬわぁんでっていいたいとこだけど…」
穂乃果「無人島でもおいしいごはん作ってくれそうだから!」
花陽「は、はは…なるほど……」
穂乃果ちゃんの言いたいイメージはよくわかります
だけどその流れで行くと……え、私は…
穂乃果「で、戦闘系は私と凛ちゃん!」
凛「さっすが穂乃果ちゃん!」
穂乃果「ってイメージだけで考えたらね、花陽ちゃんがうまくでてこなかった…」
花陽「それはまぁ、サバイバルなんてものとは遠い存在だというのは自覚してるけど…」
凛「かよちん、戦闘系が一つあいてるにゃ!」
花陽「無理、無理無理」ブンブン
希「補助が一つ空いてるんと違う?」
花陽「私がみんなをサポート…ですか……」
ことり「かよちゃんなら癒しでもいいと思うけどなっ」
穂乃果「確かにそれもありかも」
真姫「じゃあ私かことりが補助か戦闘になるわけ?」
絵里「探索も私と海未が希望しているだけであって、どっちか一人は違うものを選ぶことになるけど…」
穂乃果「こんがらがってきた……とりあえず戦闘系やっていい?」
海未「思考を投げ出しましたね」
にこ「正直言うと私も給仕より戦闘希望なんだけど…」
穂乃果「えー、おいしいごはんはー?」
にこ「それなんだけど……」
ここでにこちゃんがルールブック(そう呼ぶことにしました)を手にして意見します
にこ「特性を得ても個人の資質が損なわれるものではないってあるじゃない?」
希「そうやね」
にこ「別に給仕にならないと料理できないわけじゃないのだし、そこは私がやってあげるわよ」
穂乃果「んー、そういう考えもあるのか…」
凛「じゃあ真姫ちゃんが戦闘系やったら、戦うお医者さんの誕生!?」
真姫「なにそれイミワカンナイ」
穂乃果「じゃあ、クジで決める?」
絵里「却下よ」
穂乃果「えー…」
絵里「いい穂乃果、私達はなりゆきとはいえサバイバルに参加する事を決めたわ」
穂乃果「うん…」
絵里「だったら次に考えるのは、サバイバルという名のお宝争奪戦をいかに勝ち抜くかという事…」
海未「勝利グループはどんな願いも、一つだけ叶えられる……」
ことり「全部が本当なんだったら、これも本当の事…なのかな?」
絵里「ただのピクニック気分よりもこっちのほうを詰めて考えるほうがよっぽど面白いと思わない?」
穂乃果「本気で……勝ちを狙う……」
凛「でも、それだとアライズの人達に勝たないと…」
真姫「凛、別にライブで勝負するわけじゃないんだし、相手は私達と同じただの女子高生よ」
絵里「それにアライズにも勝ってラブライブ優勝するんだって決めたじゃないの」
海未「そうですね。もう相手がなんであろうと尻込みする理由にはなりません」
希「どうせやるならうちもその方針に賛成やね」
ことり「穂乃果ちゃん…」
にこ「穂乃果」
穂乃果「…………」
やるからには勝つ。少し前の私には到底考えもしなかった事……
だけどあの日……もう一度ラブライブ優勝をみんなで目指したあの日の気持ちは、私の心を奮い立たせます
花陽「私も、がんばりたい」
穂乃果「花陽ちゃん……うん、そうだね、勝たなきゃね!」
絵里「そうよ、だからもう勝負は始まってると考えるべきよ」
そう言って絵里ちゃんは探索の本を手にしました
絵里「悪いけど海未、この役目は私が引き受けていいかしら?」
海未「構いませんよ絵里。私も絵里が適任だと思います」
希「じゃあこの補助の本、1つもらうね」
真姫「じゃあ私もこの本貰うわね。というか何も書いてないのにどうするのこれ?」
真姫ちゃんが癒しの本を手にして使い方を調べます。それはルールブックに載っていました
本の上に先のボタンを置き、押した人がその本の特性を得るんだそうです
勿論今は何も起こりません。それはサバイバルが始まってからのこと…今効果があるのは…
穂乃果「じゃあやっぱり当初のまま、コレにするね」
穂乃果ちゃんが戦闘の本を手にします。だけどそこに絵里ちゃんが口を挟みます
絵里「穂乃果、まず各自の役割を決める段階にしておいて、決定はまだまってくれる?」
穂乃果「ん、それはいいけど…」
絵里「最終的に決めるのはこのルールブックに全部目を通してからでも遅くないわ」
海未「そうですね、細かいルールなどが他に書かれているかもしれませんし、それによっては状況が変わる可能性もあります」
ことり「かよちゃんはどれがいい?」
花陽「え、私ですか?」
急に振られて慌ててしまいますが、私が自分で自分に合うものという思考で見た場合……
やっぱり後方でサポートするのが合っていると思います
花陽「私は……給仕でいいかな……」
ことり「癒しとかは?」
花陽「それは私も穂乃果ちゃんと同じ意見だよ。真姫ちゃんとことりちゃんが合ってると思う」
ことり「んー、私は他のやつをやってみたいかなって思うのだけど」
にこ「思い切ってことりか花陽、戦闘やってみれば?」
花陽「だからそれは無理ですって…」
凛「凛も戦闘以外は役に立てるイメージが沸かないのでこれでお願いします!」ビシ
にこ「私も出来れば戦闘ね。単純におもしろそうだし!」
希「にこっちは性格的にも合ってると思うよー」
にこ「どーいう意味よ」
海未「ではことりが他のを選ぶのなら、私が癒しを担当しましょうか」
穂乃果「え……」
真姫「………」
凛「………」
にこ「…………」
海未「なぜ黙るのですか?」
たぶん、私もそうだけど癒しに対するイメージと海未ちゃんがかけ離れているから…とか…
にこ「イメージだけど海未の癒しって、傷口に薬バシャーってかけて絆創膏ベターで終わりそう」
凛「これくらいでガタガタ言わない! とか言って包帯だけ投げつけられそうにゃ…」
海未「し、失礼な! 緊急介護の知識は多少なりあります!」
真姫「精神的な癒しという意味も込めて海未はないわね」
希「ハッキリ言っちゃった…」
絵里「そのへんを決めるためにも先にルールブックを見てみましょう」
ことり「そうだね。あ、私飲み物買ってくるね、先に進めててー」
にこ「そういえばいつのまにかなくなってるわね」
花陽「あ、それなら私も行きます」
難しい話になるとどうしても私の出番はないので、それならばとことりちゃんのお手伝いを申し出ました
ことり「ごめんねー、ありがとう」ガシャコン
花陽「いえいえ」ガシャコン
ことり「それにしても、すごい事になっちゃったねー」ガシャコン
花陽「まだちょっと全部の面において気持ちが切り替えられるかっていわれると、少し…」ガシャコン
ことり「それは私も同じ。でも穂乃果ちゃん達は楽しそう」ガシャコン
花陽「凛ちゃんもにこちゃんも…なんだかんだで真姫ちゃんも……」ガシャコン
ことり「サバイバル生活かー……テレビとかでやってるような事するのかな?」ガシャコン
花陽「無人島ということは、周りは海…なんですよね……」ガシャコン
ことり「海に潜って、魚さんを捕ったど〜〜ってやるのかな?」ガシャコン
花陽「あはは、やるとなったら海未ちゃんか絵里ちゃんかな?」ガシャコン
ことり「そういう意味では、やっぱり私もワクワクしてるのかも…」ガシャコン
花陽「うん……だけど気になる事もやっぱりあって……」ガシャコン
ことり「なんでも願いが叶う…かぁ……」ガシャコン
花陽「それに、なにがあってもリセットされるって……」ガシャコン
ことり「って、ちょっと買いすぎちゃった…」
花陽「っとと、ギリギリ持てそうです」
ことり「ありがとう、じゃあ戻ろっ」
「;:丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
ト、;:;:;:丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
{::ト、:;:;:;:;:;:` '' ー―――;:;: '|
l::l . 丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
',:i r- 、、` ' ―――一'' " .|
|| ヾ三) ,ィ三ミヲ | 麻呂が
lj ゙' ― '′ .|
| , --:.:、:.. .:.:.:.:..:.:... | このスレを
| fr‐t-、ヽ. .:.:. '",二ニ、、|
l 丶‐三' ノ :ヾイ、弋::ノ| 見つけました
', ゙'ー-‐' イ: :..丶三-‐'"|
', /.: . |
', ,ィ/ : .:'^ヽ、.. |
',.:/.:.,{、: .: ,ノ 丶::. |
ヽ .i:, ヽ、__, イ _`゙.|
,.ゝ、ト=、ェェェェ=テアヽ|
_r/ /:.`i ヽヾェェシ/ |
_,,. -‐ '' " ´l. { {:.:.:.:', `.':==:'." |
一 '' "´ ',ヽ丶:.:.:ヽ、 ⌒ ,|
ヽ丶丶、:.:.ゝ、 ___,. イ | リセット……元に戻る。なにがあっても……なにをしても……
願い事を叶えるために……どんな事をしてでも勝つために……
たとえ相手を……どうにかしてしまっても……
ことり「かよちゃん?」
花陽「あ、はい、いま行きます」タッ
それはきっと誰もが考えるかもしれない事で、誰もが考えたくない事
しかし現実として起こり得るかもしれない事……
ことり「ただいまー」ガチャ
穂乃果「す、すごーい!!」
花陽「ん?」
部室に戻ると穂乃果ちゃん達が騒いでいました
見ると机の上に大きな箱が置かれています
凛「かよちん、これすごいよー!」
真姫「なんなのこれ、どういう原理……」
希「だから、魔法なんやない?」
ルールブックを読み進めていくうちに判明した、あの謎のボールの使い道
なんとあの白いボール、強く握りしめるとそれに反発するように膨れ上がり…
ことり「おっきな箱になったの?」
穂乃果「それだけじゃないんだよ、中みて!」
穂乃果ちゃんが促すのでことりちゃんと一緒に箱のようなものを覗き込みます
そこには深い闇が広がっていました……
海未「物理的にはありえないのですが、その箱の中が、大きな空洞のようになっているのです」
ことり「そ、それってどういう……あ、これも魔法?」
希「うちらが勝手にそう呼んでるだけで、実際は何かあるのかもしれないけど、今はただ不思議な箱って事で」
絵里「ことり、あなたのメジャー貸してくれない?」
ことり「うん。中を調べるの?」
絵里「多分だけど、これって倉庫に使えってことなんだと思うのよ」
にこ「ゲームでいうところのアイテムボックスね」
絵里「そういうこと、よっ…と」
穂乃果「え、絵里ちゃん!?」
海未「絵里! まさか…」
絵里ちゃんはことりちゃんからメジャーを受け取ると、さっと靴を脱いで机の上に乗っかります
そしてなんのためらいもなく箱の中に片足を入れていき……って!
絵里「さっきコインを放り投げたら音がしたでしょ、推測だけど深さは3,4メートルってとこかも」
真姫「だ、だからって中にはいるつもり?」
凛「だだ、大丈夫ー?」
絵里「これが倉庫がわりというのならちゃんと大きさを把握するのは大事よ」
言うと同時に絵里ちゃんはスマホのライト機能を起動させて箱に飛び込んでしまいました
すごい行動力です
結果として白いボール、見た目にはゲームにでてくる宝箱のような箱は魔法の倉庫という事で結論付けられました
ルールブックにはボールから箱の形にする方法と、逆の方法が記されています
絵里「蓋を閉めて……上から数回たたく…っと」バン バン バン
凛「うわわ、ちっちゃくなったにゃ〜!」
希「わぁ、便利やねぇ」
絵里ちゃんの見立て通り、それは倉庫として使うものみたいです
私達に用意された支給品は、あのクラス用の本を除けば、この倉庫が4つという事になります
絵里「中は深さがおよそ3メートル、縦横ともに3メートルほどよ」
海未「結構な広さですね」
にこ「要は必要な道具はこっちで用意して、それを持ち運ぶための補助はしてくれたって感じね」
海未「でもこれはとても助かると思います」
穂乃果「色々持っていけるんだね」
絵里「さて穂乃果、あなたならこの倉庫に何を入れて持っていく?」
穂乃果「え、えっと……やっぱり一か月の間過ごすんだから…着替えとか?」
ことり「化粧品とか、日用品もいるよね?」
凛「ラーメン!」
意見が出るたびに絵里ちゃんと海未ちゃんの顔が強張っていきます
どうやらハズレのようです…
絵里「着替えはまぁわからなくはないけど、それは倉庫にいれないで普通に持ち運べる範囲にしておきなさい」
穂乃果「えっと、じゃあなにが必要?」
絵里「私の意見であって、これじゃなきゃダメって事じゃないから、そういう意識で聞いてくれる?」
今までも絵里ちゃんの指示に従ってきた私達。サバイバルの専門知識なんてないものの、可能性としてある話をします
それはずばり、生活水準の話でした
絵里「まず最低限必要なものとして、水よ」
穂乃果「お水……なるほど」
絵里「無人島っていうくらいだから海に囲まれているんだろうけど、実際の大きさは不明、飲める水…川のようなものの存在も不明」
海未「加えて、川があったにせよ、宝探しという名目がある以上、どれだけ動き回る事になるかも不明ですね」
絵里「そうね、念のために家にあったろ過機を持っていくつもりだけど、それでも水は確保しておきたいわ」
真姫「飲料水としてじゃなく、料理をするうえでも、場合によっては医療に関する事でも必要になるわ」
にこ「それだと相当量必要になるんじゃない?」
絵里「だから私からの提案としては、この4つの倉庫のうち2つはそれで埋めたいと思うの」
海未「倉庫の中を……コンビニで売っているようなペットボトルの水で埋める、という事ですね」
真姫「なるべく綺麗なのがいいわね」
にこ「ちょっと、そんなに用意するのにいくらかかると…」
真姫「私が全部だすわ」
絵里「真姫…でもそれは……」
真姫「いいのよ、これが私の勝負にかける意気込みだって思って。やるからには準備も徹底して勝つのよ!」
凛「真姫ちゃんが燃えてるにゃ……」
真姫「それに、現実問題お金が必要なのは本当でしょ?」
穂乃果「真姫ちゃん……いいの?」
真姫「それくらいさせてよ……でもそうね、代わりというのなら、絶対に勝つっていう事が条件かな?」
にこ「そんなの、当たり前すぎて条件にもならないわよ」
真姫「ふふ、じゃあそれでいいわ」
海未「真姫、ありがとうございます。それでも各自、すべてを真姫に頼るのではなく、自分で用意できるものはしていきましょう」
希「そうやね」
絵里「じゃあ水の件は真姫にお願いするとして、あとの2つ」
穂乃果「さっきの絵里ちゃんの話でいくと、残りは食料品?」
絵里「そうね、でもそれだけじゃなく薬類も必要だと思うわ」
真姫「応急に使える物なら家にあるのを持ってくるけど、食料品のほうは…」
絵里「用意できる範囲でやっていきましょう。それに、残り2つすべてに食料品を詰めても難しいと思うわ」
ことり「全員が一か月過ごすには…って事?」
絵里「そうよ。それにクラスの中にサバイバルに特化しているものがあるでしょ?」
にこ「探索と、給仕?」
絵里「大きくはその二つで、補助もなにかしらあるかもしれない。これって、現地で食料問題をどうにかできるって事だと思う」
海未「例えばですが、海や川で魚を釣ったり、果物の類が群生している可能性?」
にこ「さらに付け加えると、獲物がいるかも…ってこと?」
真姫「ちょ…動物食べるの?」
ことり「えー……」
絵里「場合によっては貴重なタンパク源にはなるかもね」
凛「ま、まさにサバイバルにゃ……」
穂乃果「マンモス肉とかあるかな?」
海未「あ、それでしたら、家にある釣り竿を拝借してきましょう」
ことり「ああ、あのおじさんが使ってるやつ?」
穂乃果「貸してくれるかな?」
海未「時間が戻るというのなら大丈夫でしょう。無くす事もありませんし、なにより即座に返せます」
希「うちはようわからんけど、ああいうのって竿だけあったらできるものなん?」
にこ「ルアーとか、なんか細かいの色々と必要なんじゃない?」
海未「むぅ……そのへんはあまり詳しくないのですが……」
穂乃果「あ、それならそっちの細かいのはお父さんに聞いてみるよ、確か釣りやってたと思うから」
絵里「海未にはむしろ登山用具を用意して欲しいわね」
海未「さすがに全員分とはいきませんが、できるだけ用意しましょう」
にこ「調理器具って誰か持ってる? キャンプで使ってたようなの」
ことり「家にキャンプ用品あったと思うよ」
真姫「テントとかも必要でしょ?」
絵里「となると……そうね、1つの倉庫を食料品関係で詰めて、もう1つに非常食とキャンプ用品、日用品かしら?」
凛「無人島とかだと虫刺されとか、日焼けとか、きになるのがたくさんだね…」
絵里「そうねぇ…その辺の情報が探索の特性で得られればいいんだけど、どういうものなのかまだ不明なのがねぇ……」
穂乃果「とりあえずはクラスとかなしでもサバイバルできるように考えよっ」
と、みんなが盛り上がってるところですが、そろそろ時刻はいい時間になろうとしていました
穂乃果「と、いうわけで……」
「「お邪魔しま〜す!」」
希「どうぞ、遠慮せんと入ってー」
絵里「急な事で申し訳ないわね、希」
希「なにゆーてんの、大事なミーティングやねんから気にせんといて」
時間になって学校から出ることになった私達ですが、日曜日の本番開始に向けてまだまだ話し合う内容がありました
そこででた案が、全員で希ちゃんのお宅にお邪魔するというものでした。お泊りなのです
ことり「それじゃちょっと行ってくるね」
凛「いってくるにゃ〜」
穂乃果「おねが〜い」
突然お邪魔する事になったのでみんな晩御飯の準備がありません
そこで各自お金を出し合ってコンビニへお弁当を買いに行く事にしました
私もお母さんに電話して了承を貰います。いきなりだったけどみんなでお泊りはやっぱり楽しいです
凛「かよちん、行くよー」
花陽「まってー、んしょっ」
買い出し部隊はことりちゃんと凛ちゃんと私です
絵里ちゃん達はこれから必要な物をリストアップして、明日の買い出し部隊を選出するようです
凛「ねえかよちん、一緒に戦闘系やらないー?」
花陽「もう凛ちゃん、まだ言ってるの?」
凛「二人で、りんぱなエックス斬りやりたい〜」
花陽「よくわかんないけど、ゲームみたいなアクションを私に求められても…」
ことり「それに戦闘系って穂乃果ちゃんとにこちゃんと凛ちゃんでもう決定じゃない?」
凛「むー……」
花陽「こう言っちゃうとあれだけど、にこちゃんって戦闘系すごく似合うきがするよね」
ことり「そうだねー、あでも、私は海未ちゃんもカッコイイと思うんだよね」
凛「海未ちゃんって確か武道やってるんだっけ?」
花陽「それは戦闘系じゃなくてももう強いんじゃ……」
ことり「資質に特性が加わるのなら、完全に特化した強いクラスになっちゃったりして」
凛「はっ、オールラウンダー!?」
私にはそういう知識は無いのでよくわかりませんが、イメージならできそうです
確かに海未ちゃんってそういう方面に適してるかも…精神力はものすごいし
未知の体験を目前に、あれこれ話しながらコンビニから帰ると、新しい論争が繰り広げられていました
穂乃果「やだー、ほのか戦闘がいい〜!」
にこ「だから、確実に勝ちを狙うなら補助か癒しがいいんだって」
ことり「ど、どうしたの?」
絵里「あ、おかえりなさい。んー…ちょっとねぇ」
帰ってくると、穂乃果ちゃんとにこちゃんが意見のぶつかり合いを繰り広げていました
それはルールブックにある勝利条件のくだりを読み返したにこちゃんが感じた事からでした…
にこ「サバイバル終了時に、リーダーがクリア条件である証を所持している必要があるってあるでしょ」
ことり「そういえばそういう内容だったね」
にこ「これって、グループを指定しているんじゃなくて、そのリーダーを指定しているわけよ」
凛「それはわかるけど…?」
海未「つまりにこの言いたいのは、サバイバルの終盤で起こりうる事態を想定してのことです」
にこ「例えばよ、サバイバルが残り3日と迫った状態で、その証…宝物を見つけてなかったらどうする?」
ことり「んー……がんばって探す?」
ことりちゃんの答えはとても素直で前向きなものです。だけど私も少し考え、それは違うと思います
そんな終盤にまだ見つけていないというのは、見つからない……すでに違う誰かが所持している可能性が高いからです
ではどうするか……勝負を諦める? 諦めないでまだ勝つ方法はあります
にこ「そう、横取りよ」
希「ルールとしてわかっているけど、言葉にするとなんかあれやね…」
穂乃果「そんな酷い事……」
にこ「酷いんじゃなくて、これはそういう意味合いも含めたゲームなのよ」
絵里「これに関してはにこの言う通りね。逆も考えてみて…」
穂乃果「逆……それはほのか達が宝物を持っている状況?」
凛「つ、つまり持っているのがバレたら、狙われちゃう?」
ことり「そ、そっか…そういう状況もあるんだね……」
宝物は1つ。クリアできるグループも1つ。すると自然に発生するであろう事態……奪い合いです
にこ「穂乃果がやりたいっていう戦闘系って、いわば前衛なのよ。一番相手に対して近いポジションね」
絵里「役割としては、攻めの状況になった際のアタッカーだけどそれ以外だと、誰かを守る役割もあるわ」
穂乃果「…………」
にこ「さっきの参加者一覧でもそうだけど、リーダーの名前はみんな知っているわよね。うちのリーダーが穂乃果だというのも…」
希「全員でてたもんね」
凛「あ、もしかして……顔もバレてる可能性もあるにゃ?」
にこ「さっき、なんだっけ…アクアだっけ? サイトに登録していないグループがあったでしょ」
花陽「それなんだけど、他にも名前を検索してもでてこないところがいくつかあるよ」
にこ「この時点でどういう事なのかは不明だけど、相手に対してこちらのリーダーが誰なのか筒抜けなのはマイナス要因よ」
海未「それはきっとアライズや他のグループも同じでしょう」
にこ「ライバルを蹴落とす際に、一番確実なのはリーダーをリタイアさせる方法よ」
穂乃果「リタイア……って?」
にこ「サバイバル続行不可能にすることよ。手っ取り早いのだと、どこかに閉じ込めちゃうとか?」
にこちゃんの言う事は大筋において正鵠を得ていると思います。だけど……
穂乃果「でも、自分で身を守れるのって強みじゃないかな?」
にこ「ゲームにおいて、相手が何人で、どういう編成で、どんな特性を持っているかわからない以上それは危険よ」
海未「布陣として安全な形を組んで穂乃果を守るという状況もあるかもしれませんしね」
穂乃果「うう……」
にこ「ちょっと整理すると、私達のグループは、アタッカー3、ヒーラー2、バッファー2、サーチ1、その他1なの」
凛「その他…って、あ、給仕か」
ことり「正直一番よくわからないよね、この給仕って」
にこ「この編成でやる以上、私達は数の有利を最大限に生かすべきだと思うの」
穂乃果「ん、うん……」
海未「ゲーム的な用語でいまいちピンとこなかったのですが、先のにこの説明で私も決意しました」
穂乃果「ん……?」
海未「穂乃果、私に戦闘を任せてくれませんか?」
穂乃果「海未ちゃんが?」
海未「正直凛やにこのような前にでてどうこうするというイメージはないのですが、誰かを守るための特性と考えた場合……」
海未ちゃんは穂乃果ちゃんだけじゃなく、この場にいるみんなに視線を向けると、力強く宣言します
海未「皆を守るための力を、私は希望します」
にこ「私もそれがいいと思う。それとちょっと申し訳ないけどさっきの発言を一部取り消すわ」
絵里「取り消すって?」
にこ「穂乃果は補助か癒しがいいってとこ、考えたらヒーラーなんて真っ先に狙われるわ」
真姫「ヴェェ…そ、そうなの?」
凛「真姫ちゃん、ゲームの話だよ」
真姫「でも話してる内容ってそのゲームを私達がするって話なんでしょう?」
にこ「大丈夫よ、それらを守るために私達がいるんだから、安心しなさい」
真姫「ちょ……もう、その自信はどこからくるのよ///」
にこちゃんの提案で、戦闘系をにこちゃん、凛ちゃん、海未ちゃんが担当することになりました
穂乃果「正直ちょっと残念だと思うとこもあるけど、みんなと一緒にクリアしたいっていうのが一番だからね」
にこ「理解してくれて助かるわ」
絵里「それじゃ、補助が穂乃果と希ってことでいいわね?」
希「うちは正直なんでもいいんよー」
絵里「そうなの?」
希「なんかね、たぶんうちはどれをやってもそこそこできそうな気がするんよ」
真姫「よくわからない自信ね」
希「昔から器用貧乏なとこあったからねぇ」
ことり「じゃあ希ちゃんが癒しやる?」
希「ことりちゃんは癒しは嫌なん?」
ことり「ううん、違うの。じつは他に誰も希望していないのなら立候補したいのがあってね…」
そしてことりちゃんはテーブルの上に置かれた1冊の本を手にしました
絵里「それ、給仕……?」
凛「一番ニュアンスがよくわからなかったやつだね」
穂乃果「ことりちゃんはそれがいいの?」
ことり「これって、現地の素材を上手く扱えたりするんだよね?」
にこ「一応そういう表記ね」
ことり「もしかしたらだけど、向こうの素材で服を修繕したり、新しい何かを作れたりするんじゃないかなって」
海未「なるほど、それだと確かにことりの得意分野ですね」
ことり「癒しの1つは真姫ちゃんで確定だと思うけど、もう1つは誰か別の人でお願いできないかな?」
別の誰かとことりちゃんは言いましたが、実質私か希ちゃんという内容です
自然と私と希ちゃんの視線が合わさります。どちらかが補助で、どちらかが癒しという事ですが…
花陽「希ちゃん、好きな方選んでいいよ」
希「やりたい方っていうのはないん?」
花陽「正直、希ちゃんと違って私はどれを選んでもちゃんとできるかっていう自信はないよ…」
希「…………」
凛「そんなことないにゃー、かよちんも得意分野があるよ!」
花陽「例えば?」
凛「えっと、アイドルが大好きなとこや、ごはんが好きなとこ…とか…あと、えっと折り紙が得意だったり…」
花陽「ありがと凛ちゃん」
にこ「折り紙?」
花陽「ちょっと昔にハマってた事があったって程度だけど…」
希「ふむ、じゃあかよちんは癒しやってくれる?」
花陽「へ? わ、私が?」
希「そう。どっちでもいいんやんね?」
花陽「そうだけど……いいの?」
希「うちはなんでもいい、かよちんもなんでもいい。理由は真逆やけどね、それやったら…ね」
花陽「…………」
希「きっとこの選択はかよちんのためになるよ」
花陽「そ、そうかな……」
希「そうや! カードもそう告げてるんよ!」サッ
花陽「それ、今取り出したよね?」
希「ふふ、もっと前向きに……ね」
花陽「ん……うん、わかりました。じゃあ、やります」
希ちゃんがどういう気持ちをこめてそう言ったのかはまだわかりませんが
私は私で、出来ることを全力でやろうと思います。ファイトです!
穂乃果「よし、そうと決まれば登録してみよう!」
絵里「ちょっと穂乃果、そんなに急ぐ必要はないでしょ」
穂乃果「ううん、明日のために準備をするのならもう役割はガッチリ決めて後々考えないようにする!」
にこ「日曜日までまだ時間はあるわよ?」
穂乃果「この特性というのがどういう形で現れるのか、どういう流れでクラス分けされるのか見てみたいよね?」
ことり「それはまぁ、確かに?」
穂乃果「もしかしたらそこから新しい情報が得られるかもしれないからね、私はやってみようと思う」
絵里「ん……まぁそこまで言うのなら止めないけど……にこは?」
にこ「穂乃果の言う事も一理あるわね。どうせ無人島に行く前に決めないといけないし、いいんじゃない?」
穂乃果「ありがとう、にこちゃん。絵里ちゃん!」ササッ
そういうと同時に穂乃果ちゃんはテーブルの上に補助の本を置き、その上にあのスイッチを乗せる
穂乃果「えっと、私がこれを押すだけでいいんだよね……じゃあ」ゴク
やると決めたら行動の速い穂乃果ちゃん。少しの躊躇いもなくそのスイッチを押しました
するとスイッチを跳ねのけて本が勢いよく開かれます…!
バンッ!
凛「なんにゃーー!?」
穂乃果「わ、わかんないけど、あ、なにかでてきた!」
開かれた本は眩しく輝き、そこから何か小さなものがたくさん飛び出します
それは部屋の天井付近をグルグルと周りはじめ、一つの輪のように位置取りはじめました
希「これ、カードやない?」
絵里「そうね、何か絵が書いてあるけど…動いていてよく見えないわ……」
ことり「たくさんのカードが……グルグルまわってるぅ……」グルグル
にこ「ちょっとなに目、まわしてんのよ」
穂乃果「希ちゃん、これってタロットカード?」
希「よく……見えないけど、数字も書いてるし、どうやろ……」
にこ「あれ、別に動いてるカードが…」
穂乃果「わ、なんかきた!」
天井でグルグル回るカードの中から、数枚穂乃果ちゃんの前に浮遊します
当然ですがもう誰もこの現象にはつっこみません。そういうものだと理解するしかないのです
穂乃果ちゃんの前に飛び出してきたカードは3枚。そして補助の本からあの無機質な声が響きました
『ピピ……高坂穂乃果……資質と特性の組み合わせにより、クラスが決定しました』
穂乃果「わっ、な、なんだかわかんないけど…どうも……」
『高坂穂乃果 カブキ、Vミストレス、Vミストレス 系統補助:該当クラス:エンハンサー』
穂乃果「え、え、かぶき? ミス…なんだって?」
にこ「エンハンサーだってさ、なんだかカッコイイじゃない!」
絵里「それよりこのカードはどういう意味なの?」
希「ふむ……」
穂乃果ちゃんの前に並んで浮遊するカードを希ちゃんが調べます
カードには何かイラストが描かれていて、絵柄の中央下には英数字が書いてありました
希「たぶん、これタロットやと思う…けど……」
絵里「曖昧なのね」
希「まだそこでグルグル回ってるカードの枚数、数字をみたら、0から22まで…これはタロットで言う大アルカナと同じやん?」
ことり「穂乃果ちゃんの前にあるカードは…0のカードとVのカード…あれ、でもこのVのカード2枚あるよ?」
穂乃果「ど、どういうこと?」
凛「あ、穂乃果ちゃん! さっきの補助の本に何か文字が書いてあるよ!」
穂乃果「え!? さっきまで真っ白だったのに?」
真姫「登録したから、読めるようになったとか、そういうことじゃないの?」
にこ「何が書いてるのかしら…」
みんなで補助の本……あらためエンハンサーの本を読んでみましたが、やはりというか、もう完全にファンタジーでした
希「なるほど……枚数的にもカードの意味合い的にもタロットと共通してるんやね」
穂乃果「ど、どういうこと?」
希「さっきの、カブキっていうのが穂乃果ちゃんのペルソナ、表の顔ね」
凛「穂乃果ちゃん歌舞伎役者だったにゃ!?」
穂乃果「そうだったのか……」
希「言葉そのままに捉えたらアカンよ、これはタロットでいうところのfool、愚者のことね」
穂乃果「ほのか愚者だったんだ……」シュン
希「だから言葉通りに捉えたらアカンってー」
絵里「もうちょっとマジメに聞きなさい」
希ちゃんがエンハンサーの本に書かれてあるカードの意味合いとこちらのタロットカードとを合わせて推察します
まず個人を現すスタイルを構成するものとして、ペルソナ(表の顔)、キー(内面的な生き様、性格)、シャドウ(無自覚)があるそうです
穂乃果ちゃんはキーとシャドウが連なっているので、内面的な性格、ついついでる性格そのものが本人を現すというのです
そしてそれがミストレス…タロットでいうところのempress、女帝なのだそうです
穂乃果「なんと、ほのか女帝だったのかぁ……」
ことり「なんだかすごい肩書だね」
にこ「あくまでカードが示すものとしてでしょ…」
海未「でも、なんだかわからなくもないですね」
希「そうやねぇ」
本に書かれているカード一覧の説明文を読む限り、カブキはとても穂乃果ちゃんっぽいなと思いました
表として、正位置としてカブキを持つ穂乃果ちゃん。その意味合いが…
正位置
自由、新たなる始まり、出発、好奇心、大胆さ、無分別、愚行、感覚的、衝動的
強迫観念、型破り、奇行、夢想、芸術、純真無垢、隠れた才能
因習や過去の出来事に縛られない、予期しないことが起こる
ちなみにマイナス的な事も物事にはあるようで…
逆位置
未熟、無謀、無計画、無神経、非常識、不安定、放浪癖
非理性的な行動、選択の失敗、選択をためらう、責任逃れ、自信喪失、心変わり、飽きっぽい
あくまでカードの持つ意味合いであって、すべてが穂乃果ちゃんというわけでは無いそうです
けれど、何かのきっかけにそうなるかもしれない暗示…啓示?のようなものとも、希ちゃんはいいます
穂乃果「うん、よくわかんない」
希「まぁ、難しく考える必要はないよ。とにかく3枚のカードで穂乃果ちゃんのスタイルは決定したわけやんね」
にこ「カブキって、リーダーだったりアイドルだったり、アーティストというか芸術的な側面があるって書いてあるけど…」
凛「ん?」
にこ「これ、私だと3つ全部カブキになっちゃうんじゃない!?」
真姫「どのへんがよ」
にこ「全部よ、この宇宙1アイドル矢澤にこを形作るスタイルはこれっきゃないわ!」
絵里「あんまり自分でハードル上げなくてもいいんじゃない?」
にこ「ぬわぁんでよっ!」
こうして私達のリーダー穂乃果ちゃんは、エンハンサーという特性を得てサバイバルに参加することが決まりました
細かい能力や、特技的なものはまだ本には書いてありません
にこちゃんが言うにはサバイバルスタートと同時に解放されるんじゃないかって
そうして私達は夜遅くまで必要な品のリストアップの精査をし、足りなさそうなものはお金を出し合って買う事になりました
といっても申し訳ないところですがほとんど真姫ちゃんの出資です。本人は気楽にしてましたが……
確定したこととして、
戦闘系:にこちゃん、海未ちゃん、凛ちゃん
癒し系:真姫ちゃん、私。ちなみにゲーム的だと回復系と言うみたいです
補助系:穂乃果ちゃん、希ちゃん
探索系:絵里ちゃん
給仕系:ことりちゃん
が、決定しました。実際戦闘系でも3人の資質によってクラスはバラけるようですが、にこちゃんと凛ちゃんは楽しみにしています
にこ「やっぱ大剣よね!」
凛「にこちゃんモンハンでもいっつも振り回してばっかだにゃー」
にこ「豪快な一撃が最高なんじゃない!」
と、まだまだ呑気な二人です
そして次の日、私達は各方面への買い出しに出かけ、考えられるだけの物は揃えました
絵里ちゃんと海未ちゃんがあの倉庫の構造をもう少し調べたいということで別行動です
結果として中にいくつかのロウソクを設置して蓋をし、ボール状に戻すという実験だったようですが
結論はボールになっている間でも中は空間が保たれていて、中の酸素が無くなると真空状態になるということ
絵里「状況によっては倉庫の中に隠れたりできるかなって思ったんだけど、無理みたいね」
海未「蓋を開けた状態なら、簡易テントの代わりにはなりそうです」
絵里「中身が減ってきたらそれもありかもねー」
各自の買い出しが終わってから、改めて道具のチェックと、ルールブックの確認をします
そこで見落としていたのか、昨日は気づかなかった事が判明します
絵里「リセットによる身体情報の復元とは別に、サバイバル中に体験した記憶、思い出みたいなのは持ち帰れるみたいね」
穂乃果「あれ、忘れると思ってたの?」
海未「リセットというくらいですから、記憶もなくなるものだと思っていましたが…」
絵里「持ち帰れるのは記憶と、勝利者が叶えた場合の物理的な物ね」
凛「思い出作りには最高にゃ〜」
この時、みんながその事について深く考えなかったのは、考えないようにしていたからなのでしょうか
それとも不思議な現象、ファンタジーを目の当たりにして感覚が麻痺していたのでしょうか
しかしこのルールこそが、私達にとって……すべてのスクールアイドルにとってもっとも残酷で
非情だという事を身をもって知る事になるとは、この時は考えもしませんでした……
/花陽→海未
土曜日は各自が準備に明け暮れ、夜はそれぞれ自宅に帰る事になりました。私も明日に備えて少し早めに休むつもりでした
prrrr〜♪
海未「穂乃果…?」
ポチ
海未「もしもし、穂乃果ですか?」
穂乃果『あ、ごめんねこんな時間に、大丈夫?』
海未「構いませんよ、どうしたのですか?」
穂乃果『どうかしたかという事なら……どうもしない、かな…』
海未「眠れないのですか?」
穂乃果『あ、はは……やっぱり海未ちゃんにはわかっちゃうか」
海未「そうですね、少なからず私も同じようなものでしたから…」
穂乃果『そうなんだ……ねえ、明日……』
海未「はい」
穂乃果『……………』
電話越しにでも穂乃果の気持ちは伝わってきます。まだ不安なのですね
お祭りは準備している時が一番楽しいといわれますが、今日までの私達はまさにその状態だったのでしょう
それが明日…本番を前にして、お祭りが始まるのか、何もなく、やっぱり手の込んだイタズラで終わるのか
海未「おかしなな感覚ですね」
穂乃果『ん……』
海未「最初は、どうせイタズラで、騙された私達を見て誰かが笑っているんだとばかり思っていました」
穂乃果『それは…うん、私も同じ……』
海未「それでも何か一つを信じるのならもう私達は何を目にしても大丈夫だと思いましたが…一人になるとどうしても……」
穂乃果『ちゃんと……いけるかな、無人島……』
海未「穂乃果は、行きたいですか?」
穂乃果『今さらって言うかもしれないけど、私はμ’sの誰か一人でも本当に行きたくないって言うのなら行かないつもりだった…』
海未「それもやはり、みんな同じだと思いますよ」
穂乃果がいつもの無茶を言い出して、我儘を振りまいて、それに付き合う私達
けれど、それはもう穂乃果だけの我儘ではなくなっています。スクールアイドルも含め、私達がそれぞれ希望した容でもあります
穂乃果『だからつい勢いとはいえ、スイッチ押して参加が決定した時、すごく怖かったんだよ……』
海未「…………」
穂乃果『誰もついてきてくれないんじゃないかって……一人でどこかに連れていかれるんじゃないかって……』
海未「ふふ、それこそ今さらですよ」
穂乃果『うぅ……明日もし行けなかったら真姫ちゃんにどうやって謝ろう……』
海未「その時は、買った物で本当にキャンプに行くのがいいですね」
穂乃果『はっ、そうか! えっと、どこがいいかな?』
海未「それはそうなった時に考えるといいですよ…」
真姫の気持ちはすべてじゃないにしろ理解できる部分もあります
きっと明日、これまでのすべてがイタズラで済んだとしても、誰も穂乃果を責めるような事はしないでしょう
不思議な声に、浮かぶ文字、次元の仕組みをまるで無視した妖しい箱。私はいまだに理解しきれていないので信じられないと思います
けれどたった一つ、信じるものがあるので前に進めるのです
私が……いえ、私達が信じるたった一つのこと
穂乃果『ああ、色々考えてたら面倒くさくなってきた!』
海未「もう大人しく寝た方がいいですね、明日はほんとに忙しくなるのかもしれませんし」
穂乃果『うん、そうするね! じゃあ切るね』
海未「はいはい」
穂乃果『えと……海未ちゃん、ありがとう…おやすみっ』プツ
大丈夫ですよ穂乃果。あなたは私達が信じると決めたリーダーなのですから
あなたが前を向いて進む限り、私達はつねに傍にいます
海未「おやすみなさい、穂乃果」
-翌日 日曜 午後3時 希の部屋(みんな靴を履いて)
ルールブックによると、カウントダウンが終了すると同時に転送が始まるそうです
転送対象はリーダーである穂乃果。一緒に行くメンバーは穂乃果と繋がっている必要があるとのとこでしたので……
穂乃果「ちょ、みんな……重いよ……」ズシ…
絵里「穂乃果に触れてないとだめなんでしょ?」
ことり「手を繋ぐだけでもいい気がするけど、もしもってこともあるから」
凛「ここにきて置いてけぼりは嫌だにゃ〜」
希「そうやんね〜♪」
にこ「ちょっと穂乃果、もうちょっと足拡げなさい、しがみつけないわよ」
花陽「り、凛ちゃん、私左足〜」
凛「ああ、かよちんごめん〜!」
穂乃果に触れるため、背中にリュックを背負った私達が各部位にしがみつく形になります
本当に重いとは思いますが、もしもこれで転送されなかったらと思うとすごく滑稽です
穂乃果「カウントダウンが……」
絵里「10秒きったわね…」
真姫「これで転送がなかったらどうするの?」
にこ「そういうのはその時でいいわよ」
花陽「ああう、暴れないで〜」
穂乃果「いた〜〜い!」
希「あ、ごめん踏んじゃった」
ことり「いよいよはじまるんだね」
凛「たのしみだにゃ〜〜!」
そして、ついにその瞬間は訪れたのです
『ピピ……準備期間終了。これより各スクールアイドルを転送します』
穂乃果「きた、ほんとにきた!」
絵里「ところで転送ってどういうものなの?」
にこ「私に聞かれても知らないわよ」
真姫「ゲームに当てはめて散々得意気に語ってたじゃないの」
にこ「転送は転送よ、瞬間移動よ!」
凛「ワープ!」
ことり「あはは、いっけ〜〜♪」
最後までくすぶっていた懸念が取り払われ、皆の心が好奇心で満たされた頃、私達は宙に浮いていました
希「え…ちょ…」
穂乃果「落ち……っ!!」
時間にしてわずか数秒。足元の感覚がなくなり、私も一瞬落ちると錯覚しました
けれどそう思って体を動かそうとした次の瞬間、さっきまでとは違う感触が足元から感じたのです
穂乃果「…………ん?」
にこ「落ち……てない?」
絵里「眩しい……これ…」
花陽「…………」フルフル
ことり「わー………」
希「こ、これは…スピリチュアルや……」
確かにそんの数秒前まで私達は希の部屋にいました
けれどこの肌に感じる強い日差し、なにより空気がかわったのを感じます
凛「み、見てあれ…」
凛が叫ぶ。みんながその先に視線を移すと、誰もがその光景に動けなくなりました
私達の立っている場所が断崖絶壁ほぼ端より。正面は見渡す限りの水平線が広がっていました
鼻に香る波風……あれは海でしょうか。そして反対側に振り向くと、遠くの方に大きな山
まるで富士山を思わせるその存在感。そしてそれらを取り囲むように存在する緑一色の大森林
そのほかにもいくつか岩山が覗いていたり、東京タワーほどありそうな大きな大木
圧倒的な自然の威圧感に私……私達は動けないでいました
――無人島。その呼び名が適当なものでないような気がします
人がいないから名前がついていないのではなく、人が住むことができないから名前が無い
そんなことを思わせるに足る迫力がそこにはあったのです
穂乃果「すごいね……」
にこ「ホントに来たわね…」
凛「いい天気……」
ことり「そうだね……でも……」
真姫「それより……」
絵里「えぇ、そうね……」
穂乃果「ここ……」
「「暑いいい!!」」
穂乃果「みんな離れて〜〜」
花陽「あう、ここ……気温が…」
海未「南の方にある無人島なのでしょうか。蒸し暑いというよりかは渇いた感じですが…」
にこ「ところでサイバイバルっていつはじまるのよ」
絵里「開始とか宣言のようなものはまだないけど……」
真姫「転送と同時にスタートならもう始まってるんじゃないの?」
凛「おー…」
絵里「えっ…た、大変!」ダッ
絵里が突然走り出しました。周囲の状況をもっとよく観察してから行動するべきですが、何かあるのでしょう
私達は走る絵里を追いかけるように、この無人島でのサバイバルを開始したのでした
/海未→花陽
突然走りだした絵里ちゃんは、目の前にそびえる大森林の手前、草原の中にポツンと佇む一本の木に向かっていました
木の根元に背負っていたリュックを放り出すと、サイドポケットから何かを取り出します
にこ「絵里、急にどうしたのよ…ふぅ…」
凛「暑い中…いきなり……ダッシュて…ふひ…」
絵里「最初にやることがあってね、えっと、こうかな」
希「それって、時計?」
絵里ちゃんが取り出したのはデジタルタイマー時計でした
絵里「えっと、今からおよそ720時間後にサバイバル終了って事で…よし、セットしたわ」
真姫「なるほどね、時間の確認は大事ね」
穂乃果「なんで急に走り出したの?」
絵里「だって暑いじゃない。ここ日陰だし」
凛「わざわざ用意したの、携帯じゃだめなの?」
絵里「携帯ってそんな長持ちしないでしょ。バッテリーを大量に持ち運ぶのもかさばるし」
希「これならボタン電池1つでもけっこう持つんやね」
これから何が待ち受けているのかはわかりませんが、すべては720時間後……
絵里「さて、それじゃさっそく…」
海未「クラスの登録ですか」
絵里ちゃんが探索の本を取り出し、その上にあのスイッチ(結局呼び名決まらず)を乗せます
もうサバイバルは始まっています。だから登録をすればすぐに特性というのが得られるはずです
にこ「そういえば穂乃果、あんた何か変化はないの?」
穂乃果「んー、体は特に…」
ことり「あの本は?」
背中のリュックから補助の本を取り出した穂乃果ちゃんは、その変化に驚きの声をあげます
半分以上白紙のままだったページに、穂乃果ちゃんに与えられたエンハンサーのスキル一覧が表示されているのでした
穂乃果「なにこれ、表示されてるの2つだけで他のとこが???になってる……」
にこ「???の横に、解放可能時間までってあるわね」
凛「徐々に使えるようになるってことなのかな?」
穂乃果「ほんとにゲームみたいだねぇ…」
真姫「今ある2つってどういうものなの?」
穂乃果「えっと……」
穂乃果ちゃん持つエンハンサーのスキルのうち、2つが
・プロテクト:触れた物質を一定時間硬質化させる
・ディケート:自身の体力を対象に分け与える
というものでした
凛「スキルだ、かっこいい!」
にこ「最初のは色々使い道ありそうね」
穂乃果「なんかもっとわかりやすいのがいいなぁ…」
ことり「例えば?」
穂乃果「みんな元気になれ〜とか?」
真姫「どうやって使うの、これ?」
穂乃果「それはたぶん……」
穂乃果ちゃんは木の根元に群生している雑草に触れ、目を閉じます
その間わずか2,3秒ほどでしたが、手を放した後に残る雑草にその効果は見て取れました
穂乃果「これだけ自然と頭に入ってた……スキルを使うって意識があればいいみたい」
ことり「わっ、すごいカチコチになってる!」ツンツン
真姫「信じられない……どういう原理なの?」コンコン
追及するだけ無駄なこの現象にみんなが盛り上がってる傍で、絵里ちゃんがタロットの啓示を受けていました
希「おー、エリチかっこいいやん?」
絵里「なんか見透かされてるみたいで落ち着かないけど、まあいいわ」
海未「それで、絵里のクラスは……」
『絢瀬絵里 Vミストレス、]エグゼグ、XVIIハイランダー 系統探索:該当クラス:ビッグアイズ』
希「穂乃果ちゃんと同じ女帝に、fortune、運命の輪とthe star、星やね。カードの意味合いとしては…」
絵里「ああ希、そういうのパス。なんか恥ずかしいわ」
希「そうなん? まあ穂乃果ちゃんと一緒で、探索の本の最初のほうにかいてあるみたいやし、暇なら見てみるといいよ」
海未「それで絵里、どうですか…何か変化は?」
絵里「ん、そうね……なんだか周囲の環境、自然に対する感覚がいつもより敏感かも…」
にこ「絵里も決まったのね、じゃあ次貸して!」サッ
にこちゃんも続いて自分のクラスを登録しようとスイッチを手にします
しかし、ここにきて新しいルール…というか、知らなかった仕組みが判明するのです
にこ「なによ、再使用に30分かかるなんて聞いてないわよ!」
凛「うぅ、楽しみにしてたのに…」
なんとあのスイッチ、連続使用できないようなのです
意気揚々と戦闘の本を手にしたにこちゃん。スイッチを押すと同時にスイッチから音声が聞こえてきました
再利用可能まで残り29分と……
つまり全員すぐに特性を得ることは出来ないという事でした
絵里「仕方ないわね…ん……えっと……」ペリ…
海未「絵里のスキルですか?」
絵里「穂乃果のようにこっちもすぐに使えるのは2つね…あとは時間経過か……」
凛「どういうのがあるの?」
絵里ちゃんが現在使用可能のスキルの1つを早速使ってみるようです
絵里「えっと、目を閉じて集中すればいいのかしら……」ソッ
にこ「絵里ももう頭の中に使い方が刷り込まれてるの?」
穂乃果「なんだか知らないうちに洗脳されてるみたい…」
絵里「…………」
しばらく目を閉じていた絵里ちゃんがゆっくりと目をあけます
そのまま私達のすぐ近くに広がる森を見つめ、次に最初にやってきた島の端、断崖絶壁の方に目をやります
絵里「なるほど、便利ねーこれ」
ことり「もう使ってたの?」
絵里「ええ、今使ったのがこれ、サーチアイというものね」
絵里ちゃんの持つビッグアイズのスキル、その2つが、
・サーチアイ:周囲50メートルの状況を観視できる
・アーバーコール:周囲50メートルにある植物の種類を把握する
凛「のぞき見し放題だにゃ!」
絵里「そういう言い方しないの。で、ちょっと海未にお願いがあるんだけど」
海未「なんでしょうか?」
絵里「とりあえずこれからの行動指針を決めるために、少し周囲を歩いて見て回りたいのだけど、一緒に来てくれる?」
海未「それは構いませんが、二人でですか?」
絵里「みんなはここで待ってて、すぐに戻るから」
希「周囲の状況を見れるってスキルじゃあかんの?」
絵里「それなんだけどね、ほら見て…」
絵里ちゃんが探索の本のスキルのページを開きます
そこにはスキル名が表示されているのですが、先ほど絵里ちゃんが使ったサーチアイの横に時間が表示されていました
にこ「リキャストがあるのね」
にこちゃんのゲーム的説明によると、おそらく各スキルは便利ではあるけど、連続で使用はできないようになっているのです
それをうけて穂乃果ちゃんも確認したところ、プロテクトのスキルもリキャスト中になっていました
絵里「周囲の状況は少し見えたけど、まだどういう風に見れるかわからなかったからそこまで意識してなかったのよ…」
海未「なるほどそういうことですか」
希「二人で大丈夫なん?」
絵里「すぐそこの海岸線沿いを見たいだけだから平気よ」
凛「たしかにこの暑い中、みんなで闇雲に動くのも大変だねー」
穂乃果「とりあえずここで待機だね、了解」
絵里「水と、そうね…念のためにこれを持っていくわ」
そう言って自分の荷物の中から絵里ちゃんが取り出したもの…それは……
にこ「それって……ナイフ?」
絵里「サバイバルナイフってやつね。護身用よ」
ことり「そんなものよく買えたね」
真姫「それ、うちのやつよ」
凛「真姫ちゃん家って一体……」
真姫「パパのコレクションの一つなのよ。ネットで買おうかとも思ったんだけど、時間もなかったしね」
絵里「とりあえずみんなはここで待ってて。興味本位で森に入ろうとしないでね」
海未「ことり、穂乃果の事をよろしくお願いします」
ことり「うん、まかせて〜」
穂乃果「えー、なにそれ」
絵里ちゃんと海未ちゃんが探索のために移動しました
私達は二人が戻ってくれるまでここで待機です
にこ「あー、早く30分経たないかしら…」ソワソワ
真姫「にこちゃん、そんなに楽しみなの?」
凛「凛もはやくなりたいよ〜」
花陽「凛ちゃん好きだもんね、そういうの」
希「次はとりあえず戦闘系で、にこっちでいいんやね?」
凛「さっきジャンケンで負けたにゃー…」
にこ「海未は後でいいって言ってたからね!」ブンブン
にこちゃんはたぶん剣を振り回すような仕草を繰り返します
だけど、すごくシンプルだけどとても大事な質問をことりちゃんが口にしました
ことり「にこちゃん剣がいいっていうけど、剣はどこにあるの?」
にこ「え?」ピタ
凛「ん?」
真姫「それ私も思ってたけど、穂乃果も絵里もクラスの特性を得たからって、何か見た目がかわったわけじゃないのよね」
希「うちはなんか専用の装備みたいなの出てくるんかと思ってたわ」
にこ「え…でないの?」
穂乃果「でるの?」
にこ「初期装備ってあるじゃない?」
ことり「そうなの?」
穂乃果「ほのかも絵里ちゃんも何もなかったよ?」
凛「そ、それは戦闘系じゃないから…とか?」
ことり「そうなの?」
にこ「…………」
結局やってみないことには結論はでないという事です
にこちゃんはその想定をしていなかったのか、少し気にしているようです
そうこうしているうちに絵里ちゃん達が戻ってきました。時間にして10分ほど探索をしてきたようです
絵里「ただいま…って、にこどうしたの?」
にこ「んー、なんでもないわよ」
海未「何かあったのですか?」
ことり「何にもないよ〜」
真姫「何もないかもしれないって話よ」
絵里「?」
絵里ちゃん達が探索を終え、これからの私達の行動指針が決まったようです
絵里「とりあえずこれからの予定、みんなちゃんと聞いてね」
「「はーい」」
絵里「島の全容がわからないし内陸の状況も不明。一か月過ごすための拠点みたいなものを探したいんだけど…」
凛「基地?」
絵里「分かりやすく言うとそうだけど、それでも島の外周部分は把握しておきたいの」
穂乃果「絵里ちゃんにおまかせー」
絵里「なので、ちょっと大まかな計画だけ言うわね」
私達は基本絵里ちゃんの指示に従うスタンスなので黙って聞き入れます
それでも少しおもうところがあればその都度意見を出し合います
けれど最終的な判断はやっぱり絵里ちゃんに頼る。今までそういう部分をたくさん見てきたからみんな信頼しているのです
絵里「一か月の内、最初の一週間で島の把握と活動拠点の製作。これは向こうに見えるスカイツリーみたいな大木がいいかなと思うの」
ことり「あれおっきいよねー」
無人島の中央にあると思われる大木。ここからでもその高さが異常なのは容易に見て取れます
なによりあの大木周辺はこの天候なのに薄暗いのです。全部日陰っぽいです
その絵里ちゃんの提案に海未ちゃんが意見をだします
海未「あの大きな富士山のような山はどうしますか?」
絵里「探索するとしても後半かな。できればあんな山の山頂にお宝があったらなんて考えたくもないけど」
穂乃果「うぅ、登れるかなぁ……」
絵里「理想は安全な場所を確保してから、数名での探索になるかしら」
海未「そうですね、全員で攻めるには装備も十分ではありません」
ことり「留守番希望」
凛「凛も……」
絵里「話を戻すわね。最初の一週間でなんとか予定をクリアしたら、次の一週間で生活水準の確保よ」
にこ「そのへん食糧問題が一番だけど、あの倉庫のおかげで随分余裕はあるわね」
希「いっぱいもってきたからね」
絵里「そうね。で、その問題を解決しつつも周辺の探索。これは最初の一週間目からやっていくことだけどね」
海未「最大の目的であるサバイバルクリアに必要な宝探しはもう今日から始めるべきでしょう」
穂乃果「なんだっけ、金色の箱に入ってるんだっけ?」
ルールブックのとあるページに簡単だけど目標のイラストのようなものが記されていました
ゴテゴテの金細工を施した、まさに「宝物」って感じの光る箱だそうです
しかもこの箱、大型動物等に食べられないように、周囲の動物からは存在レベルで探知できないそうなのです
大型動物という物騒な単語はここで初めて記されている内容でした
穂乃果「直接目で見て発見しないとダメなんだね」
真姫「面倒くさいわねぇ」クルクル
絵里「それで、最後の一週間で探索完了と逃げ切り体勢ね」
希「最後まで気が抜けないからね」
絵里「計画としては今挙げた通りだけど、きっちりこれの通りにならなくてもいいから、前倒し可能ならやっていきましょ」
ここで絵里ちゃんは少し声のトーンを落とし、穂乃果ちゃんを見つめます
絵里「逆に……いえ、むしろこっちが本題…」
穂乃果「ん?」
絵里「こちらの計画通りに進まない状況、アクシデントが起きた場合、私達の最優先は穂乃果の安全よ」
海未「そうですね」
穂乃果「え……それは嬉しいけど、でも…」
絵里「穂乃果、気持ちはみんな一緒。誰ひとりかけることなくクリアするのは大前提よ。だけどね、想定するものはしておきましょ」
穂乃果「むぅ……」
絵里「そして最悪最後の一週間も残り少なくなってお宝が見つからない場合、手分けして探すのと同時に考えないといけない事があるわ」
にこ「他のグループに対する行動を明確にする必要があるわけね」
にこちゃんの言う事は、先の計画にあった逃げ切り体勢の逆。逃がさないための計画です
もうこの無人島には私達以外のスクールアイドルが行動を開始しているはずなのです
真姫「可能性の話としてはこっちのほうが確立が高いのだと思うのだけど…」
絵里「なに?」
真姫「最初の一週間、というより今この状況で、他のスクールアイドルと遭遇したら?」
絵里「適当に挨拶しとけばいいんじゃない?」
にこ「そんなんでいいの?」
絵里「勿論、相手の顔と人数はなるべく把握、可能であれば誰がリーダーであるかも」
ことり「一緒に行動しませんかって言って来たら?」
絵里「お断りしましょう。こっちは人数的有利で多少の人海戦術が可能なの。この有利性は貫きたいわ」
希「穂乃果ちゃんがリーダーだっていうのもおそらく知られてると思うしね」
絵里「私達の活動が安定するまで……ようは今から一週間が一番大変だから、食事もカロリーメインで出し惜しみなしね」
ことり「太っちゃう?」
真姫「それ以上に動くから大丈夫でしょ」
凛「この暑い中歩くんだね…」
海未「リセットというのを信じましょう」
絵里「穂乃果は自分が最優先だっていう自覚をもって、少しでも気分が悪くなったりしたら絶対に我慢しないで」
穂乃果「わ、わかった」
絵里「ある程度の薬は持ってきているとはいえ、病気になんてなったら厄介よ」
真姫「そこは私と花陽でなんとかできると信じたいわ」
花陽「う、うん」
絵里「そういうわけで、さっそく行動を開始したいのだけど……」
絵里「海未、向こうにあった川は海に通じていると思うのだけど、浜辺が見当たらなかったわよね」
海未「私も外周を少し見渡しましたけど、見事な崖っぷちです。あるとすれば島の反対側になるかもしれません」
絵里「それでも水流があるんだし、地下水の類もどこからか湧き出てるのよねぇ…となると…」
絵里ちゃんは次はもっと集中してみると言って、スキルを使いました
結果、私達の最初にいた場所を島の最南端とし、そこから西の外周を沿う感じに移動することになりました
無人島の中央に広がる大森林にはまだなるべく入らないようにするという事でした
こうして私達の活動計画が概ね決定した頃、時間になりました
にこ「それじゃ、お先に使わせてもらうわ」
凛「楽しみだねー」
にこ「初期装備、頼んだわよ!」ガチャコン
にこちゃんが戦闘系のクラス特性を得るためにスイッチを押しました
理想は剣を振り回したいというにこちゃんでしたが、今のところそういう支給品はありません
そしてにこちゃん凛ちゃんの危惧していた事は現実となるのでした……
にこ「にごおぉぉぉ……」フルフル
凛「なんもでなかったにゃ……」ガク
絵里「何か出るはずだったの?」
希「そっとしといたって……」
『矢澤にこ Zカゼ、カブキ、[フェイト 系統戦闘:該当クラス:燕』
希「chariot、戦車やね。それと穂乃果ちゃんと同じ愚者で、adjustment、正義と」
穂乃果「ほのかのカブキとまた意味合いが違うの?」
希「にこっちは構造がもうアイドルなんやろね」
にこ「そんなことはどうでもいいのよ、いやどうでもじゃないけど、武器もなしにどうしろっていうの?」
絵里「にこ、体に変化はない??」
にこ「え、体……?」
絵里ちゃんは特性を得たと同時に、環境の変化に敏感になったようです
穂乃果ちゃんは特に意識するような変化はないそうですが、戦闘系のにこちゃんはどうなのでしょう?
にこ「んー…………あ…」
凛「なんか違う?」
少し体を動かしてみて、その違いを感じたにこちゃん
私達が日陰として利用していた木に近づくと、
にこ「んっ!」ゴッ
穂乃果「わっ」
ことり「木の幹が…へこんじゃった……」
希「あらら、にこっちには似合わん怪力やねぇ」
絵里「これが戦闘系の特性なのかしら?」
にこ「たぶん、これくらいの木なら折れるかも……」
凛「にこちゃんすごいにゃ〜!」
にこ「これはちょっと嬉しいけど、素手で戦えってのー?」
海未「にこ、あなたのクラスはどのようなスキルが?」
海未ちゃんに言われてハっとするにこちゃん。どうやら剣が出ることだけを意識していて忘れていたようです
にこちゃんのクラス本も他と同じように、最初は2つのスキルが使用可能で、残りは時間経過でした
にこ「まさかこれを使えって言うこと?」ブン
凛「にこちゃん、かっこいいにゃー!」
絵里「いよいよ本格的ね…」
真姫「ちょっとにこちゃん、あんまり振り回さないでよ?」
2つのスキルのうち、1つがにこちゃん達の希望する武器を具現化するスキルでした
・斫り刃:一定時間自身の体力を消費して、消費する体力に応じたエネルギー状の刃を形成する
・蛮決射心:自身が形成した刃を弾丸のように射出することができる。本体から放れた刃は一定時間後に消滅する
今このスキルを使ったにこちゃんの手には薄い碧色に輝く光が発生しています
昔みた映画にあった、なんとかブレードみたいです
本格的に戦闘という状況を意識させるスキルですが、にこちゃんはこれに不満があるようでした
にこ「連続使用できないし体力も使うしで、使い勝手悪いわよ」ブゥン…
凛「でもカッコイイ! 凛もはやく使いたい!」
絵里「ま、とりあえずしばらくは何かあったらにこにお願いするとして」
海未「いよいよ出発ですね」
ミーティングを終え、私達のサバイバル生活が本格的に始まります
体感的には夕方になる時間だと思うのですが、空を見上げるとまだまだお日様は高い位置に…
よく見ると太陽だと思っていた天体の傍に、似たような天体がもう一つありました
一つが太陽のように光り輝き、もう一つはぼんやりと暗く見えます
花陽「……………」
私はただ、ああ…ここは地球じゃないんだなと、それだけ理解することにしました
摩訶不思議な事だらけです。もう深くは考えないのです
/
私達はスクールアイドルです。人前にでる以上臆すことなく堂々と胸を張って歌い踊ります
ですがそれ以前にやっぱり年頃の……女子なわけです……みんなと何一つ変わらない普通の……
にこ「いいわね、絶対こっち側にくるんじゃないわよ!!」
凛「にこちゃんこそ、こっち見ないで!」
ことり「か、考えるだけより〜♪ みんなで走ろう〜♪」
にこ「明日は未完成〜!♪」
凛「予想できないちから〜〜〜!!♪」
ことり「これからだよっ!!♪」
にこ「何もかも全部が〜!!♪」
ワーワー ギャーギャー
真姫「往生際悪いわね…」
絵里「真姫だってさっき…」
真姫「私はもう吹っ切れたわよ!」
希「もう歌というより絶叫やんね」
穂乃果「次はほのか達の番だね、がんばろう花陽ちゃん!」
花陽「ああぅ…が、がんばります」
それは探索開始のために移動し始めてすぐ、真姫ちゃんが言った一言からはじまりました
真姫「ん……どっか、トイレないかしら……」モゾ
希「無人島にあるわけないやん?」
真姫「………え?」
絵里「えって、そんな驚くこと?」
真姫「じ、じゃあどうするのよ!?」
希「あそこの茂みとかでいいんとちゃう?」
真姫「ちょ……本気?」
希「本気というか、真姫ちゃんはどうするつもりでいたんよ…」
真姫「う…うぅ……」
サバイバルというのは当然屋外で生活することを意味しているので、誰もがそこは意識するものでした
だけど意外にもしっかり者の真姫ちゃんはこの部分がなぜか抜け落ちていたようです
真姫「いい? みんな絶対こっちこないでよ!」タタ…
絵里「ダメよ真姫! 何があるかわからないのだし、一人で目の届かないところにはいかないで!」
真姫「で、でも……」
絵里「ちょうどいいし私も行くから。他に誰か済ませておく?」
という絵里ちゃんの言葉からみんな次々と挙手をし、結果3人1組でそれぞれ離れた場所ですることになりました
すると次に出てくる問題が、どうしてもでてしまう……音問題です!!
にこ「なんか無駄に疲れたわ……」
凛「これ…毎回はきついにゃ……」
ことり「恥ずかしい……」
絵里「初日からそんなことでどうするのよ、まだ一か月あるのよ?」
希「海未ちゃんも、いつまで固まってるん?」コンコン
海未「……………」
絵里「もう…みんな休憩は5分よ、準備忘れないで」サラサラ
ことり「絵里ちゃん何書いてるの?」
絵里「これ? 周囲にある植物の名前をメモしているのよ」ササ
希「植物の種類がわかるってやつやね」
ことり「名前があるってことは、無人島だけど調査は入ってるってこと?」
絵里「誰かがつけた以上そういう事だと思うけど、スキルを使うとね、周りの植物がポワっと光るのよ」
希「おもしろそうやんね」
絵里「その上に日本語表記で名前が浮かび上がるんだけど…。んー、植物にはあまり詳しくないのよね」
希「例えば、あっちにあるユバウリみたいなのは?」
絵里「あれはペタペタ」
希「そっちのサクラソウみたいなのは?」
絵里「それはモキモキ」
希「なんなんそのネーミングセンス…ハァ」
絵里「私に言わないでよ!」
休憩が終わり、それぞれが準備をして再び移動を開始するところで、次は真姫ちゃんのクラス登録をします
探索のためにも早めに回復が欲しいという事で、私か真姫ちゃんでしたがジャンケンで決めました
真姫「じ、じゃあ押すわよ…」プルプルプル
にこ「そんなに緊張しなくても大丈夫よ…」
真姫「だ、だってカードが飛び出すんでしょ?」ビクビク
にこ「わかってるなら平気じゃない」
真姫「んんん!!」ガチャコン
本から目を反らしながらも真姫ちゃんが癒しの本を手にスイッチを押します
もうこの光景も慣れたもので、中空でクルクル舞うタロットカードを綺麗だなーなんて見つめます
真姫ちゃんはどのカードだろうとか適当な雑談をする余裕さえありました
そうしてタロットの啓示を受けた真姫ちゃんのクラスが、
『西木野真姫 Uタタラ、Uタタラ、Xカリスマ 系統癒し:該当クラス:テンプルドクター』
凛「カリスマだって、カッコイイ!」
真姫「タロットのXって、教皇だっけ?」
希「やね、the hierophant、教皇。で、Uはthe priestess、女教皇」
にこ「なにその絶対的権力者みたいな配列」
凛「真姫ちゃん勝ち組?」
真姫「知らないわよ!」
希「無意識の部分で人を惹きつけ、従えるっていうのは真姫ちゃんらしいんちゃう?」
真姫「よくわかんない分析しないでっ」
希ちゃんの言う事に私はそっと同意しておきます
権力者、王様とかそういう意味合いじゃなく、共に歩みたいと思えるリーダーのような頼りになる存在です
真姫「ん、なにこれ…?」
絵里「どうしたの?」
真姫「目が……あ、これが特性ってやつなの?」
真姫ちゃんが目を細めながら私達一人一人をじっと見つめます
実際にどう映っているのか私にはわかりませんが、真姫ちゃんが言うには、
真姫「みんな健康…ってことなのかな、うっすらと緑の……オーラとでもいえばいいのか、見えるのよ」
凛「おー、真姫ちゃんいよいよお医者さん!?」
絵里「それは健康状態ってことでいいの?」
真姫「わからないわ、ただ全員同じ色をしているってことだけ…」
穂乃果「見える体臭とかじゃないよね?」
海未「穂乃果……」
ことり「それならそれでみんな同じ臭いになるよ?」
希「スキルのほうはどうなん?」
真姫「あれ、私のは2つじゃないわね、1つしかない…」
にこ「クラスごとに別だったわけね。共通じゃないみたい」
真姫ちゃんの初期スキルは1つでしたが、時間で解放されて結果的にはみんなと同じ数になるようです
・グリーン:対象の体内毒素を消失させる
真姫「あら、これは便利ね」
ことり「消毒液とか持ってきたけど、これがあれば安心だね」
凛「えー、HP回復じゃないのー?」
にこ「毒なんてそうそうかからないでしょ」
真姫「ぅぅ……」
絵里「ちょっと二人とも、ゲーム知識が役に立つことはわかってるけど、決めつけで話さないの!」
海未「真姫、気にしないでくださいね」
ことり「私はとてもいいスキルだと思うよ?」
穂乃果「そうだよね、毒消しも序盤は高いもんね?」
希「それもちょっとズレとるよ」
こうして真姫ちゃんもクラス特性を得て、トイレ問題もどうにか気合で乗り越える決意をしてまた出発します
今日の目的としては海岸沿い、浜辺などを見つける事ですが、今のところそれはありません
左手には断崖絶壁。右手に少しいくと深い森の入り口が見えます
それでも少しづつだけど傾斜が傾いて行ってるので、しばらくすれば……
凛「あー、あったにゃ〜〜!」
にこ「お宝!?」
穂乃果「もう見つけたの?」
少し先を元気よく走り回ってた凛ちゃんがさらに先を指さして叫びます
ほんとに宝物が見つかったのならそれはそれで少子抜けなのですが、凛ちゃんが見つけたのは海岸でした
絵里「随分小さな浜辺ねー」
海未「あそこだけではないと思いますが…それよりもさっきの川はここには繋がってませんね」
絵里「森の中につづいてるわね。一端忘れましょ」
凛「みんな早くくるにゃ〜〜!」タタタ
絵里「凛ー! 一人で先先いかないのー!」
ことり「元気だねぇ凛ちゃん」
単純に海を見てはしゃいでいるのか、凛ちゃんが走り回ります
しかししばらくして駆け出した時と同じような勢いで戻ってきました
凛「なんかいるぅー!!」
凛ちゃんのその一言が、私達のサバイバルが「普通」ではない事を実感させることになりました
浜辺に見えるのは動く物体……遠くからでは大きさはよくわかりません、だけど1つじゃありません
絵里「なにかしら……あれ」
穂乃果「他のスクールアイドルとか?」
にこ「なんか丸っこいわよ?」
と、まだ距離はあるため明確にはわかりません
そこで海未ちゃんが自分のリュックから双眼鏡を取り出しました
海未「この手の道具はみんな1つは携帯していると思ったのですが…」
絵里「あ、そういえばスキルに頼っていてまだ倉庫の中だわ……」
穂乃果「海未ちゃん持ってそうだしいいかなーって」
ことり「同じく……」
海未「しょうがないですねぇ…」ササッ
ゆっくりと近づきながらもそれが何なのか観察します
双眼鏡を覗き込んで何やら唸っている海未ちゃんが、少ししてそれの答えを口にしました
海未「たぶん、カニです」
にこ「カニ!?」ピク
凛「カニにゃ!?」ヒョコ
穂乃果「食べられる?」ババッ
蟹と聞いてすぐさま反応するにこちゃん達ですが、海未ちゃんはさらに続けます
海未「形状からは、甲殻類……私達に馴染みのある呼び方であてるならカニです…ですが…」
にこ「貴重な食料になるんじゃない?」
凛「捕まえる〜!」
海未「ですが、デカイです……」
絵里「うわ…なにあれ……」
ことり「うう、気持ち悪い…」
海未ちゃんの一言で、勇み足だったにこちゃん達の足はピタリと止まります
大きい…じゃなく、驚くほどという意味を込めて海未ちゃんがデカイと言うくらいです
少しづつ近づいて確認できるくらいの距離、7,80メートルくらいで待機します
真姫「あの色……紺色というか黒いわね…何食べてあんな色になるのかしら」サッ
ことり「カニってたくさんいるイメージだけど……4匹?」サッ
穂乃果「あんなの1匹でも十分だよ……」サッ
海未ちゃんから順番に双眼鏡を借りて確認します。私も見ました
デカイです、黒いです。気持ち悪いです。形状は確かにカニと言えるかもしれません
真姫「ちょっとにこちゃん、チャチャっと行って捕獲してきてよ」
にこ「無茶言わないでよ! あんなデカイのどうしろっていうのよ!」
凛「必殺パワーがあるにゃ?」
にこ「殴ってどうにかなる問題?」
希「どれどれ……」サッ
絵里「にこの言う通りよ、あんなのにわざわざ近づく必要はないわ、危険よ」
穂乃果「でも、あの辺にお宝がある可能性は?」
絵里「う、それは否定できないけど……」
ことり「それなら全員がクラス特性を得てからでいいんじゃない?」
真姫「そうね、スキルもまだ十分じゃないし……」
相談の結果、今は近づかないという事になり、迂回して先へ進もうという事になりました
しかし双眼鏡を覗く希ちゃんがポツリと呟きます……
希「なあ海未ちゃん、カニって横向きに移動するんやんな?」ジー
海未「え、そうだと思いますが…こんな時にどうしたのですか?」
希「なんか1匹大きくなっていくなーって思ってたけど、違うやん。あれこっち来てない?」
絵里「え……」
希ちゃんがそういうと絵里ちゃんが双眼鏡を取り上げて確認します
というかね絵里ちゃん、割ともう…見える範囲でわかると思うよ?
絵里「き、来てるわね…」
真姫「って、なんかスピードあがってない?」
凛「まっすぐ……」
ことり「こっちに……」
「「きゃ〜〜!!!」」
にこ「なっ、ちょっあんた達なにしてんの! お、押さないで!」
凛「だってにこちゃんしかまだ戦えないよー!」
絵里「頼んだわよにこっ!」
ことり「走って逃げられる速度じゃないよーあれ!」
ガンガンガンガン…
希「もうカニの足音じゃないやん!!」
穂乃果「に、にこちゃん、スキル、スキルー!!」
眼前に迫ってくるカニ…のような大きい何か。その距離って、すでにまともな距離感は掴めません
だって、単純に見てもこれ……
にこ「でっか………」
海未「2、いえ…3メートルはあるのでは……って、にこ、危険です!!」
にこ「もうっ…ぬ、あああああ!!」ブンッ
穂乃果「最初のより大きい……大丈夫なの?」
にこちゃんが叫ぶと同時に右手に大きな光の刃が現れます
だけど迫る巨大なカニ(と呼んでおきます)にはまだ届きません
にこ「こ、こっちこないでよ! きたら斬るわよ!」ブンッ、ブンッ
真姫「カニに威嚇とか通じないでしょ!?」
凛「きたにゃ〜〜〜!!!」
ガンガンガン…ガッ
光る刃で威嚇するにこちゃんの目前まで迫ったカニがその大きな腕…ハサミを振り上げます!
その状況に私達は何もできませんでした。もとより私は最初のほうで腰が抜けて動けません
にこ「わ、わあああぁぁぁ!!」ダッ
にこちゃんに振り下ろされようとしたカニのハサミ。自分の何倍もあるカニに半ば自棄につっこんだにこちゃん
次の瞬間、にこちゃんは自身の振り回す刃の勢いそのままに転倒してしまいます
にこ「ぬあっ、や、やば!」ガバッ
まるで手ごたえがなかったかのように倒れこむにこちゃんが焦りと共に体勢を立て直そうと顔をあげます
だけど私達は何も言葉を出せません……すべては一瞬でした
にこ「カ、カニどこ!?」キョロキョロ
海未「に、にこ……後ろです……」
にこ「え!? うわあ!」ビクッ
にこちゃんの後ろに巨大なカニはいました。しかしもうそれは動きそうにありませんでした
振り回したにこちゃんの刃がカニのハサミの付け根から体にかけて斜めに切り裂いたのです
にこ「あれ、あたったの?」
海未「み、見事なけさ斬りでしたよにこ」
にこ「全然感触なかったんだけど……」
絵里「それほどに切れ味が鋭いってことじゃない?」
穂乃果「や、やっつけたの?」
突如として訪れた危機的状況。しかしそれを回避したのはサバイバルのために得た特性、スキル
この島でどのようにして生き抜いていくのかを、私達はこの時はじめて体感したのです
にこ「ふ、ふん! 人の言う事聞かないからよ!」
真姫「強がっちゃって……」
にこ「なによ、私がいなかったらっ」
真姫「うん、にこちゃんカッコ良かったわよ」
にこ「ん……と、当然じゃない!」
まだかろうじて逆側の腕が痙攣していたカニもやがて本当に動かなくなります
にこちゃんの刃がどれほどの威力なのかは一目瞭然でした
カニは顔の半分以上を斜めに切り裂かれているのです。あまり見たくありません
凛「ビックリしたあ…」ヘタ
絵里「こんなのがいるなんてね……」
ことり「怖いよう…」
にこ「好き好んでは近づきたくないわね」スッ…
にこちゃんの手から碧の刃が空気に溶け込むようにして消えます
しかし直後、希ちゃんがまたしても一言呟いたのです
希「残りの3匹……こっちきとる……」ジー
奈良は僕の好きな女の子の出身地
俺も奈良に住もうとしたけど京都に住むことになった 久しぶりのわくわく!!
こんなに続き気になるss竜狩り以来だ /サバイバル1日目 夜
花陽「はい穂乃果ちゃん、あーん…」
穂乃果「あ〜っん♪」パク
真姫「にこちゃん、あーん…」
にこ「あーんむ…むぐむぐ…」
真姫「おいしい?」
にこ「むぐ……悪くないわね、むぐむぐ」
絵里「おいしいからってあんまり食べすぎると明日大変よー?」
希「でもこれはクセになるやんね」
凛「おいしいにゃ〜♪」
サバイバル1日目の夜、私達は今日見つけた浜辺付近でキャンプをすることになりました
二張りのテントを組み立て、ご飯の用意をします。飯盒で焚くおいしいご飯と、今日のおかずは…
真姫「おいしいけど、全部は食べきれないわね…」
絵里「もったいない気もするけど、持ち運びも保存も難しいからね」
ことり「ごめんねー、カニさん……」
私達の今日のメインはなんとあの巨大なカニです。初めて見た時はそれはもう絶対無理だろうと思っていましたが
ことりちゃんの得た特性のおかげで事態は大きくかわったのでした
――少し回想です
/
希「間違いない、他のヤツもこっちきてる!」
絵里「こ、これはマズイわね…」
凛「にこちゃん、さっきのもう一回!」
1匹退治した喜びもつかの間、カニは全部で4匹いました
たまたま1匹が遠く離れた私達を発見し襲い掛かってきたのではなく、私達はすでに察知されていたのです
すぐさまにこちゃんが迫るカニを見据えて構えます
にこちゃんのスキル「斫り刃」リキャストは10秒ほどで完了します
だけど使用するたびに体力を消耗するので、連続使用には向かない難点がありました
にこ「3匹とか、冗談じゃないっての…ん?」
海未「にこ、大丈夫ですか? いけそうですか?」
にこ「いけるかどうかはわかんないけど……あっ!」
せまる3匹の黒いカニ。どうやら最初にきたカニほど大きくはないようですが、それでも私達よりは確実に大きいです
そんなものをまとめて相手をするなんて誰が見ても無謀です。だけどにこちゃんは閃いたようです
にこ「穂乃果、あんたのスキルで私に体力頂戴、急いで!」
穂乃果「え、にこちゃん危ないの?」
にこ「いいから早く、おっきいのが必要なのよ!」
絵里「今はにこにまかせましょ、穂乃果おねがい」
穂乃果「う、うん!」
穂乃果ちゃんがにこちゃんの左手を両手で握り、目を閉じます
見た目にはわからないけど、今穂乃果ちゃんのスキル「ディケート」が使われています
そしてにこちゃんも受け取った体力で右手に大きな碧の刃を再構築します
穂乃果「んんん……!!」
にこ「まだいける?」ブウン……!!
穂乃果「だ、大丈夫、いける!」
真姫「ちょっとまって穂乃果! あなたから出てるオーラみたいなの、どんどん色が変化してるわよ!」
凛「ど、どういうこと?」
真姫「これってきっとコンディションの可視化なのよ、って穂乃果危険よ!」
穂乃果「まだ…いけるよ……!」フラ…
ことり「穂乃果ちゃん!」ガバ
真姫「緑がセーフティなら、今の穂乃果黄色からオレンジになったわ…たぶん赤がヤバイんじゃない?」
穂乃果「はぁ…はぁ…ん、まだ…」
にこ「もういいわ穂乃果、ありがとう」ブンッ
カニはもう私達目掛けて迫っているのは確実な距離です。けれどにこちゃんはさっきほど慌ててはいません
迫るカニ達をじっと見据えます
にこ「仲良くご苦労さま、使わせてもらうわ!」キッ
にこちゃんが右手に作り出した光の刃の切っ先をカニに向けます!
絵里「そうか、さっきの切れ味なら…」
希「いま向かってくるカニは3匹…集まってる…」
にこ「名前忘れたけど、いっけえぇぇぇ!!」 ドン!
にこちゃんが光の刃を迫るカニ目掛けて打ち出しました。投げつけるとかそういうレベルではなく、それは弾丸のようでした
スキル「蛮決射心」…名前忘れたっていってたけど、ちゃんと頭にイメージとしてあると使える必殺技!
ズシャァァァ…!
にこ「当たったわ!」
凛「やった?」
にこ「あの切れ味なら、後ろのやつにも貫通してあたってるはずよ」
希「まとまってるうちがチャンスやったんやね」
一番近い位置にいたカニはにこちゃんの刃が貫通したようで、見るも無残な状態です
位置的には確かに後ろにいたカニもろとも当たったようにも見えましたが…
ガンガンガン…
にこ「なっ……」
希「ダメ!一番後ろのやつには当たってない!」
ことり「ここ、こっちくる!?」
最後の1匹は避けたのか当たらなかったのか、無傷の状態でした
カニの思考や生態はわかりませんが、仲間が目の前でやられていてもお構いなしに突進してきます
にこ「くっ、だったらもう一回よ……っ!?」フラ…
海未「にこ!」ガシ
にこ「ん、くぅ…これが反動ってわけね…穂乃果…」
穂乃果「ごめんにこちゃん、さっきのはリキャスト中だよ……」
にこ「ま、まずいわね…」
真姫「使えたとしても穂乃果の今の状態じゃ無理よ!」
絵里「にこ、これ使って!」
にこ「これ、真姫のナイフ……これじゃさすがに…」
真姫「そこに転がってるカニの外殻を少し見てみたけど、そんなナイフじゃ…」
凛「きたーー!!」
ガンガン……ガッガッ!
にこ「突っ込んでこない…警戒してるの?」
海未「みんな、そこの大きなカニの後ろに回ってください、盾にはなります!」
ことり「回り込まれちゃうよー」
海未「その時は全力で反対側へ、あのカニはサイズが一番小さいようです」
希「それでもゆうに2メートルはあるよ?」
ガッガガガ!
にこ「向きを変えた…ってそっちいくわよ!」
凛「凛達を狙ってる〜!」
海未「走って!!」ダダッ
ガガガ、ガン!
カニの死骸に隠れるようにしていた私達を横から回り込んで襲い掛かる最後のカニ
なんとか死角になるように死骸の周りを移動します。それでもこのままでは危険なのは明白でした
凛「かよちん、大丈夫?」
花陽「うん、だ、大丈夫!」
にこ「そうだ! 穂乃果、このナイフ堅くして!」
穂乃果「え…?」
海未「強度を増してもその大きさではハサミに対抗できません!」
にこ「わかってるわよ、だからちょっとこれを借りるのよ!」コンコン
にこちゃんが示すのは先に退治したカニ……の、ハサミでした
穂乃果ちゃんがナイフを強化するとにこちゃんはそれを使ってカニのハサミを真ん中あたりで切断します
にこ「これなら振り回すにもちょうどいいわ」ゴッ
絵里「体力は持つの?」
にこ「振り回してけん制するくらいできるわっ…と!」
ことり「あれ、カニは?」
ちょうどカニの死骸の反対側にいると思われるカニがいつのまにかいません
どこにいったのか辺りを見回す前に、私達に影がかかります
絵里「って、上!上ー!!」
凛「乗り越えてきたー!」
ことり「きゃああぁぁ!!」
にこ「っんの!!」ヒュッ
ザシュ!
にこちゃんが真姫ちゃんのサバイバルナイフを投げつけると、強度が増した分簡単に突き刺さります
だけどあの刃のサイズじゃ到底倒せるものではなく、カニは少し怯みますがまだこちらを見ています
にこ「こんのぉ!!」バン!バン!
にこちゃんがカニのハサミでカニを叩きつけます。さすがに決定打にはなりませんが、追い払う事ができればと…
しかし、特性で筋力が強化されたにこちゃん、重いカニのハサミを武器にする発想もきっと悪くはなかった
だけどどうしても抗えない部分がありました
ガッ!……ググ…
にこ「な、ハサミを掴まれた!?」…グンッ
にこちゃんと2メートルはあろうかというカニとでは、絶望的に体重さがありすぎるのでした
カニはにこちゃんの振り回すハサミを自身のハサミで器用に挟むと、まるで投げ捨てるかのように…あっ…
真姫「に、にこちゃーーーーん!!」
カニはハサミごとにこちゃんを放り投げました。最後までハサミから手を離さなかったにこちゃんが飛ばされてしまいます
ドサ……
距離にして10メートル以上飛ばされたにこちゃん。そしてカニが攻める向きを変えたのでした
真姫「にこちゃんが!」
ことり「まって真姫ちゃん! 危ないよ!!」ガシ
真姫「何言ってんの! にこちゃんが危ないのよ!!」
絵里「わかってるわ、だから……」サッ
希「間に合った?」
真姫「?」
にこ「いっ……ててて……」ヨロ
ガンガンガン…
にこ「こっちきてる!? くっ…出せる分を、全部…」ブウン…
ガッ!
にこ「短いけど…懐に……うっ」フラ……パタ…
にこ「なん…でよ………力が…」
ニコチャーーーーン!!
にこ「え?」
――本当にギリギリだったと思います
迫るカニに、にこちゃんは最後の気力で刃を形成しましたが、そこで体力がつきて昏倒してしまいました
そんな絶体絶命のピンチを救ったのが……
凛「はぁ、ふぅ、ふひー……」
にこ「り、凛?」
凛「ま、間に合った…にゃっ」
スイッチの再利用時間が0になると同時に凛ちゃんが戦闘の本を使い特性を得ました
そしてカードがグルグル中空を回っているうちに凛ちゃんはお構いなしに飛び出し、カニの背後を蹴りつけたのでした
凛「もう必死だったよー」
にこ「うわ、おもっきり穴空いてるじゃない…かわいそうに…」
凛「なんかね、足が軽くなったというより、周囲の空気が変化した気がしたんだよ」
にこ「じゃあこれって、スキル云々じゃなくて、体術だけでやったわけ?」
凛「体術というか、ただ走って背後からおもっきり蹴っただけー…ふぅ」
凛ちゃんが飛び出してくれたおかげでにこちゃんも無事です
だけどまだあまり使い慣れていない大技を連発したにこちゃんが本格的にダウン
そんなにこちゃんに結構な量の体力を分け与えた穂乃果ちゃんもダウンしてしまいました
絵里「またいつさっきのカニがでてくるかわからないから、みんな警戒して」
ことり「だいじょーぶー?」パタパタ
穂乃果「ありがとー……んー気持ちいい……」
にこ「ん………zz……」
真姫「寝ちゃったわ…」
海未「無理もありません、いきなり負担をかけさせてしまいましたし…」
凛「体力が戻るまで、凛がみんなを守るにゃー!」
絵里「頼りにしてるわ、凛」
『星空凛 XWチャクラ、XWチャクラ、[フェイト 系統戦闘:該当クラス:ゴッドハンド』
しかし穂乃果ちゃんもにこちゃんもなかなか回復せず、もう辺りが暗くなろうとしていました
希「もう今日はここでキャンプしたほうがいいんと違う?」
絵里「どの道そうなりそうね…」
絵里ちゃんが暗くなっていく空を見上げて呟きます
もう不思議な世界というのは前提としてあるので驚きはありません
太陽っぽい光る天体の傍にあった光らない天体が前後入れ替わるようにして光が欠けていきます
今私達がいる地球のような星が周辺を回っているのか、あの2つの天体も動いているのかはわかりません
だけどこの世界でいうところの夜はこの形で訪れるのかなと思います
ことり「絵里ちゃーん、スイッチ使っていい?」
絵里「ん、そうね……いいわよー!」
夜の移動は危険が伴います。ならば早めに環境を整えたいということから次は給仕のことりちゃんになりました
ちょっと押してみたかったというスイッチをドキドキしながらことりちゃんが押すと、私達に今必要な要素が補われることになりました
『南ことり Tバサラ、Tバサラ、XIIクグツ 系統給仕:該当クラス:スティルルームメイド』
ことり「絵里ちゃん、モキモキって草はどれ? さっき言ってたよね」
絵里「モキモキ? それなら…あっちのと、少し戻ったところにたくさんあったわね」
ことり「それを燻せばあのカニさんの嫌う煙がでるんだって。結構な範囲をカバーできそうだよ」
絵里「そうなの? それはいい事を聞いたわ」
ことり「それとペタペタは、猛禽類の嫌がる成分があるみたいだから、傍に摘んでおくといいみたい」
海未「さっそく手分けして集めましょう」
ことり「それと……」
絵里「まだあるの?」
ことり「このカニさん、栄養価高くておいしいみたい……」
まさに今私達に必要な、安全の確保を周囲にある植物から摘出する方法が見つかりました
ことりちゃんの指示のもと、私達はキャンプの準備を始めます
穂乃果「ごめんねー、手伝えなくて……」
絵里「何言ってるの、ゆっくり休んでてよ」
花陽「そうだよ、今日は二人ともがんばったんだから…」
ことり「穂乃果ちゃーん、横になったままでいいから、これおねがいっ」
穂乃果「これくらいならいくらでも〜」スッ
真姫ちゃんのナイフを強化し、あの堅いカニさんの腕脚を捌くのはことりちゃんです
最初こそその見た目と色合いに拒否反応がでていたことりちゃんですが、これも特性なのでしょうか?
ことり「おいっし〜、切り身〜に、なーれ〜」ザックザック
花陽「ことりちゃん、調理方法はそのままボイルでいいのかな?」
ことり「あんまり手の込んだ事もできないし、いいんじゃないかな」
意見を聞きたいにこちゃんがお休み中なので、私達でできる範囲の晩御飯が完成します
王道にして最強のご飯に、インスタントのお味噌汁。そしてカニさんのボイル(火力の関係でシマーかも?)
その見た目とはうってかわって私達の良く知るカニさんの身がでてきたのはちょっと安心しました
ポン酢などで食べるとおいしいかもと思いましたが、持ち込んだのは醤油なので妥協します
凛「いい匂い〜」
絵里「そのままでもいけるんじゃない?」
海未「そのままっ!?」ビク
ことり「調味料なしってことだよ海未ちゃん」
真姫「中身はほんとにカニなのね」
にこ「ん……いい匂い……」
真姫「にこちゃん起きた?」
にこ「ごめ…寝てたわ……」ムク
真姫「まだ無理しないで寝てていいわよ」
にこ「この匂い……ご飯の準備してたのね…」クンクン
ことり「スキルってどのタイミングで使うのかな?」
絵里「スキル?」
それはことりちゃんの得た特性、スティルルームメイドのスキルでした
・マルチスィーズニング:食物等から得られる栄養素に追加の効果を付与する。効果は重複しない
・タフネス:スィーズニングの効果。体力上昇を付与する
・パワー:スィーズニングの効果。筋力上昇を付与する
にこ「もしかして、給仕ってアイテム使いとか、そういう意味合いのクラスなのかしら?」
ことり「なにそれ?」
凛「道具を効果的に使えたりするんだよ」
希「おもしろそうやんね」
こうしてことりちゃんのおかげで私達はサバイバル初日の夜を無事に迎える事が出来たのです
テントの周り一定間隔にモキモキ草を燻すための型枠を作り、そこを時間ごとに草を補充したりします
このため私達は3人1組交代で火の番をすることになりました
絵里「3時間交代で休みましょ。にこと穂乃果は今日は三番目で、いいかしら?」
穂乃果「気持ち的にはもう大丈夫だけど了解だよ」
にこ「ということは、6時間寝れるわけね」
海未「二番目の組だけ3時間区切りですが、そこは我慢することにしましょう」
絵里「二日、三日でその順番も随時かえていけばいいかしらね」
各時間帯に戦闘系を1人いれるという内容でみんな納得し、残りはクジで決める事になりました
その結果1組目は絵里ちゃん、海未ちゃん、私になりました
海未「それでは……」ガチッ
凛「海未ちゃんはどんな感じになるのかなー?」
穂乃果「いつも怖い海未ちゃんがさらに怖くなるの?」
ことり「それは穂乃果ちゃん次第だよー?」クスクス
食事の後、就寝するまでのひと時の団らん。そこで海未ちゃんが戦闘の本を使います
実は次のスイッチ使用可能時間がきたら私が使う予定だったのですが、ご飯の準備やら色々で忘れてしまっていたのでした
決してご飯に夢中だったわけではない…です……
海未「これは……確かに体の感覚が違いますね……」ギュ
にこ「軽くなったでしょ」
凛「すごく調子の良い時みたいな感覚が続くかんじ?」
海未「それもありますが……なにやら周囲の色が……」
穂乃果「色?」
海未「より鮮明というか……くっきりしています」
絵里「もしかして視力が強化されたんじゃない?」
海未「ああ…そうですね、感覚としてはそれが強いと思います」
にこちゃんが身体能力の向上とともに、特に腕力に特色があるように、凛ちゃんは脚力
そして海未ちゃんは視力が特に強化されたようです
そんな海未ちゃんが得たクラスが、
『園田海未 XVIカブトワリ、Wカブト、Yマネキン 系統戦闘:該当クラス:宵の明星』
この結果に希ちゃんが興味深く考察します
希「tower、塔のカードにemperor、皇帝、そしてlovers、恋人か…不思議やねぇ」
海未「な、なにかおかしいのですか?」
希「んー…なんやろね、攻め入る意志と守る意志が衝突しとる感じ。自己矛盾っていうんかなぁ」
穂乃果「…………」
真姫「そんなに深く考えるほどじゃないんじゃない? 目的意識がはっきりしてるなら」
海未「矛盾……ですか。自分ではあまり意識しませんね…」
希「ま、啓示は啓示で受けといて、普段は気にせんでもいいと思うよ」
凛「海未ちゃんのスキルはどんな感じー?」
海未「ええっと…これ、でしょうか……」
・閃光:具現化した気の矢を放つ。双星シンクロで強化
・残光:具現化した分身を操る。双星シンクロで強化
海未「これは、どういうことですかにこ?」
にこ「ん、どれどれ……」
凛「分身! いいなぁ〜」
絵里「このシンクロってなにかしら?」
にこ「どこまでゲーム的な解釈かわからないけど、たぶん……」
海未ちゃんのクラスは宵の明星。にこちゃんはもう1人、明けの明星みたいなのがいるんじゃないかと推察します
もちろんそれが正解かどうかは分かりませんが、そういうネタがゲームであったというにこちゃんなりの答えです
真姫「じゃあ違う誰かがその明けの明星ならパワーアップするってこと?」
にこ「もしそうならそれは海未だけじゃなく相手もそうなるわね」
穂乃果「じゃあ誰か明けの…なんとかになるといいんじゃない?」
絵里「…………」
穂乃果ちゃんが言いたいことは分かりますが、それが今回の私達には不可能だというのも分かります
もう私達の戦闘系の本はすべて使用者が決定しています。そこに明けの明星はありませんでした
もしかしたらとにこちゃんがさらに推察するのは、海未ちゃんと近い、もしくは資質が似ている人物がいて、
その人物が戦闘系を選んでいれば二人は揃っていたかもしれないと…
そしてそれは穂乃果ちゃんかことりちゃんだったかもしれないとも……
ことり「そ、そうなのかな…」
穂乃果「うぅ、もしかしてもったいないことしたのかな?」
にこ「いや、ただあんた達昔から仲がいいっていうからそう思っただけよ」
希「可能性として残ってるとすれば…うちか……」ジ…
花陽「わ、私……ですね…」
絵里「補助か癒しにそういうクラスがあるのを期待するくらいかしらね……」
この段階では結論がでる話ではなさそうなので今日はここまでになりました
何度も横で見てきたクラスの登録をいよいよ私もする時がきました
みんなと同じように癒しの本の上にスイッチを乗せ、一気に押し込みます
絵里「何度見てもおもしろいわね、これ」
海未「不思議ですね」
夜の番をする私達以外はそれぞれテント内で寝ているか時間を潰していると思います
タロットカードにあまり詳しくないので、私にあてられたカードの啓示に関しては深く意識しないようにします
『小泉花陽 XIXトーキー、XXイヌ、IIIミストレス 系統癒し:該当クラス:セージ』
花陽「イヌ………」
絵里「今までにない種類ね」
海未「詳しい意味合いはわかりませんが、本に書いてある通りなら、トーキーはthe sun、太陽です」
花陽「イヌ………」
海未「い、イヌは…Judgement、審判とありますね」
深く……意識しないように……
花陽「イヌ………」
/
この世界には太陽のような天体に別の天体が重なる事で夜が訪れます
しかしその大きさは同じではなく、若干太陽のほうが大きいのか、ダイヤモンドリングのように白い輪が見えます
それが綺麗だなーと思いながら見上げているとある事に気が付きました
花陽「星が……ない……」
絵里「え……何か言った?」
花陽「あ、えと…空が真っ暗で、星がないんだなーって…」
海未「そうですね、それは私も気になっていました」
絵里「それでもほんのり明るいのはあの太陽のせいなのねー」
花陽「あ、ごめんなさい邪魔しちゃって…」
特に深い意味のない呟きに二人とも付き合ってくれて恐縮です
絵里ちゃんは火の番をしながら何か本を読んでいました
海未ちゃんは体幹を鍛えたいという事で近くで体を動かしています
私も真姫ちゃんから借りた文庫本を読もうかなと思っていたのですがあまり集中できません
ちなみに凛ちゃんや穂乃果ちゃんは最初ゲーム機を持ってこようとしていたみたいです
だけどバッテーリ問題と、ゲーム内容等もすべて元に戻ってしまうという理由で断念したようです
その点真姫ちゃんや絵里ちゃんが選んだ本というのは便利で、知識、読んだ内容は忘れません
さらに必要なくなれば燃料がわりにもなると、とても用途があるものです
絵里「いいわよ…どうせ頭にはいってなかったし……」パタ…
海未「それは…サバイバルで必要とされる知識の本ですか?」
絵里「そうなんだけど…今日一日でこんなの役に立たないってわかったわ…」
絵里ちゃんが手にしていた本を傍らに放り投げます
それを拾った海未ちゃんが本を手に取り、一瞬驚きの表情を見せました
絵里「ふぅ……花陽…」
花陽「ん、はい?」
絵里「ごめん、コーヒー淹れてくれる?」
花陽「うん……海未ちゃんもいる?」
海未「あ、は、はい…お願いします……」
本をまじまじと見つめながら答える海未ちゃんの視線が絵里ちゃんに向けられます
それを感じたのか、絵里ちゃんが今日1日の事を溜息を交えつつ口にしました
絵里「結局、"何もしないで待機する"が正解だったのかしらね……」
海未「それは…最初の?」
絵里「サバイバルのためにクラスが用意されているんだし、そのためのスキルを十分得てから行動したほうが安全だったわ」
海未「それは今だからそう思えるのかもしれませんが、私は間違っていなかったと思います」
絵里「……危険な目にあったのに?」
海未「はい。不確定要素だらけの無人島で、何もしないでじっとするというのはきっと大きな負担になっていたと思います」
絵里「それは……やっぱり不安、だからかしら…」
海未「ここにきた当初は、少しの期待と大きな不安がみんなあったと思います。勿論私も……」
ポットでお湯を沸かし、絵里ちゃん用と海未ちゃん用のマグカップにスティックタイプのコーヒーを淹れる
海未ちゃんが代弁するみんなの気持ちというのは私にもあったものです
だから少しでも後押しになるのならと、私も絵里ちゃんに伝えようと思いました
花陽「絵里ちゃん、私もそうでした…」カチャ
絵里「花陽……ん、ありがと…」
差し出したマグカップを受け取り一口啜ると、絵里ちゃんはウッドチェアにもたれ掛かり暗い夜空を見上げます
花陽「あの場で何をするか、どうすればいいのかとか、私にはさっぱりでした」カチャ
海未「ありがとうございます、花陽」
花陽「だから道筋を決めてくれた絵里ちゃんには感謝していますし、誰もそこに責任を押し付けることはないと思います」
絵里「そう言ってくれると、少し気が楽になるわ……」
花陽「別に絵里ちゃんの気持ちを楽にしようとして言ってるわけじゃないよ?」
絵里「え、そ、そうなの…?」
海未「お世辞でも選んだ言葉でもなく本当の気持ちとして、私達は絵里を信頼しているということですよ」
花陽「はい。ただの本心です」
その言葉がどう響いたのかはわかりませんが、絵里ちゃんは俯いてしまいました
ただ一言……焚火の音にかき消されてしまいそうなほど小さな声でしたが、絵里ちゃんは気持ちを言葉にします
私と海未ちゃんはそれを聞き、お互い顔を見合わせて微笑むのでした
/サバイバル2日目 朝
初めての場所でちゃんと眠れるか不安だったのも一瞬で、用意した寝袋に入ると数分で私の意識は深い眠りに落ちました
そして次に感じたのはテントの外から聞こえてくる賑やかな声……
希「これホンマ楽しいし、なんかカッコイイやん?」
にこ「解り易いし使い道はたくさんありそうね」
その声に意識を向けると、どうやらもう時刻は朝になっているようでした
感覚的には横になって数分でもう朝って感じなのですが、体調は驚くほどスッキリしていました
海未「これで全員が役割を明確にできたわけですね」
絵里「それに時間経過で追加されたり強化されたりしているスキルもあるみたいね」
私がテントを出るとすでに海未ちゃんと絵里ちゃんが起きて行動しているようでした
もしかして私一人で寝すぎていたのかな?
凛「あ、かよちんおっはよ〜」
花陽「おはよう凛ちゃん」
少し気になりましたが、二人とも単純に1時間ほど早く起きて活動していたみたいです
普段の私がこの短時間で体調もよくスッキリしているのにはちゃんとした理由がありました
穂乃果「おお、体が軽い!」
真姫「ライブ前なんかに合わせてくる絶好調な状態ってところね」
凛「便利なスキルだにゃ〜」
ことり「えへへ」
私達がすこぶる元気なのは、夕べ食べた晩御飯の影響。ことりちゃんのスキル、タフネスによる効果でした
それとは別に騒いでいるのは希ちゃん達。見ると希ちゃんが両手を伸ばしてはしゃいでいます
希「なんかホントの魔法使いになった気分やわ〜」
希ちゃんが広げる両手の間を数枚のカードがヒラヒラと舞っています
啓示を受ける時に出てくるカードとはまた別の、初めて見る模様のカードでした
それは希ちゃんの得た特性のスキルによるものでした
『東條希 X[マヤカシ、Yマネキン、Yマネキン 系統補助:該当クラス:ハピネスディーラー』
絵里「希、楽しいのはわかるけどそのカードのリキャストの確認もあるんだから早い事使っちゃいなさい」
希「わかってるよ〜」ヒラヒラ
・ドロー:カードを一枚召喚する。各カードに対応した効果を対象に付与する
:カードは三枚まで所持可能。すべてのカードを使用するまでリキャストは発生しない
・星天の加護:カードの効果時間を延長する
希ちゃんの特性はさまざまなカードによる効果を使って補助をするというものでした
現在三枚のカードを器用に操ってる希ちゃん。カード自体は所持していられるけど、使わないと次のドローが出来ないという仕組みでした
希「使うにしても、これは誰かのスキルに合わせないと……」ピラ
穂乃果「なんのカード?」
希「ブーストのカード。対象のリキャストタイムを50%経過させるっていうの」
絵里「あ、それなら私今からスキル使うから丁度いいわ」
絵里ちゃんの特性、ビッグアイズのスキルの一つが時間経過とともに強化されました
・サーチアイU:周囲150メートルの状況を観視できる
絵里「すごいわね、遠くまで見通せるわ……大きな鳥が飛んでるわねー」
海未「状況観察は大事ですからね、これからも重宝しそうですね」
希「それじゃエリチに〜…ほいっ」パァ
希ちゃんが絵里ちゃんに向かって操っていたカードの一枚をかざすと、カードは一瞬光ったあと、消えてなくなりました
それだけでカードの効果はでていたようで、スキルのリキャストが短縮されたのを絵里ちゃんが確認しています
絵里「これも色々使い道ありそうね」
希「ちょっとランダム要素あるみたいやけどね。よっ、ほっ」パッパッ
手にしていた残り二枚のカードを近くの岩にそれぞれ貼り付ける希ちゃん
すると貼り付けた岩と岩の場所が瞬時にして入れ替わりました
凛「ワープ?」
希「それぞれ対象の位置を入れ替えるカード、ムーブやね。かならず二枚セットででるみたい」
穂乃果「お〜カッコイイ!」
みんながそれぞれ出発の準備をしている中、にこちゃんがみんなに用意したものがありました
それはタッパーに詰められたもので、人数分あります
にこ「昨日のカニ、あのまま放置しておくのもなんだから、お弁当を作ったわ」
真姫「せっかくの食材だしね」
にこ「それなんだけど、みんなちょっと聞いてくれる」
穂乃果「どうしたの?」
にこ「私達はサイバイバルの性質上、現地にあるものは極力活用する。それはいいと思うの」
絵里「そうね、どんな事態になるかもわからないしね」
にこ「昨日は私も必死だったから深く意識する余裕なんてなかった……でも考えたの」
にこちゃんが語る事は、このサバイバルにおけるルールとして在る、記憶に関するものでした
にこ「襲われたから仕方なく。これは当然そうだし、そのためのスキルも使えるようになった」
ことり「スキルがなかったらって思うと怖いよね…」
にこ「そう、私達には戦う術がもうある。だけど今は特殊な状況で、これを当たり前に考えないで」
海未「なるほど、にこの言いたいことが私にもわかりました」
にこちゃんと海未ちゃんが視線を合わせると、その先の言葉を海未ちゃんが続けます
海未「戦う事……本質的な事を言うのであれば、生き物を殺す事に慣れないでといいたいのですね」
にこ「そう。自分の身を守るのは当然だし、カニのように聞く耳なんて持ってないようなのは仕方ないとしてもよ」
絵里「確かに大事なことね。私達はサバイバルが終われば元の生活に戻る」
真姫「その元の生活に影響がでるような事のないように、各自の線引きは大切ね」
にこ「ゲームみたいってはしゃいでいたのは認めるけど、それはあくまでゲームでの話だから…ね」
穂乃果「うん、にこちゃんの言う通りだね。大事な事だと思う」
凛「…………」
にこちゃんの言う事は私にも大事な事だと思ったのでちゃんと聞き入れます
みんながそれぞれ認識を改めようとしている中、俯く凛ちゃんの表情が少し険しいものになっていました
花陽「凛ちゃん、どうしたの?」
凛「え? なんでもないよ?」
花陽「何か考え事?」
凛「大丈夫だよかよちん、凛は考えるのは苦手だからっ」
花陽「?」
それがどういう意味なのか解りませんでしたが、凛ちゃんの笑顔を見ると深く追及しなくてもいいと思えました
凛ちゃんが言うんなら大丈夫だよ…ね?
絵里「それじゃ、みんな準備はいい?」
真姫「忘れ物ないようにね」
穂乃果「よーし、今日も元気にがんばろ〜!」
ことり「お〜♪」
こうして再び私達は無人島の外周を探索するために出発するのでした
「;:丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
ト、;:;:;:丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
{::ト、:;:;:;:;:;:` '' ー―――;:;: '|
l::l . 丶、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
',:i r- 、、` ' ―――一'' " .|
|| ヾ三) ,ィ三ミヲ | 麻呂が
lj ゙' ― '′ .|
| , --:.:、:.. .:.:.:.:..:.:... | このスレを
| fr‐t-、ヽ. .:.:. '",二ニ、、|
l 丶‐三' ノ :ヾイ、弋::ノ| 見つけました
', ゙'ー-‐' イ: :..丶三-‐'"|
', /.: . |
', ,ィ/ : .:'^ヽ、.. |
',.:/.:.,{、: .: ,ノ 丶::. |
ヽ .i:, ヽ、__, イ _`゙.|
,.ゝ、ト=、ェェェェ=テアヽ|
_r/ /:.`i ヽヾェェシ/ |
_,,. -‐ '' " ´l. { {:.:.:.:', `.':==:'." |
一 '' "´ ',ヽ丶:.:.:ヽ、 ⌒ ,|
ヽ丶丶、:.:.ゝ、 ___,. イ | あの子はどうしているだろうか
駅であった時は相変わらず可愛かった
スタイルも良かった /
探索そのものはスムーズに進み、目的の宝が見つからない事以外はとても順調です
しかし絵里ちゃんが何回目かのサーチアイを使ったところでその表情を変化させました
絵里「……………誰かいるわね」
希「ん?」
目を閉じて意識を集中させている絵里ちゃんにだけ見える周囲の状況
その見える範囲に誰かいるのを絵里ちゃんが発見したようです
絵里「海側の…あそこに見える大きな岩見える?」
にこ「一つだけ目立ってるあの大きいやつね」
絵里「あの裏側に一人、女の子がいるわ」
ことり「他のスクールアイドルの子かな?」
絵里「だと思うけど、小さい子ね……」
絵里ちゃんがじっと観察しようとする前にスキルの効果時間が終わってしまいました
真姫「ねえ、それってほんとに女の子なの?」
絵里「間違いないと思うけど…。私達のようにリュックを背負って…でも俯いて元気がなさそうだったけど…」
穂乃果「一人でっておかしくない?」
凛「一人で参加してるとか?」
海未「あくまで可能性の話ですが……」
海未ちゃんが一人でいる女の子に対する考察をします
一人で参加したものの、この状況に不安で動けなくなっている可能性
他にも仲間がいたけど、なんらかの事情ではぐれてしまった可能性
そして、何かの罠の可能性……
凛「わ、罠って…?」
海未「何も知らずここを通り過ぎる誰かを…後ろから……脅かす?」
穂乃果「怖いっ」
にこ「何の目的があるのよそれ」
希「単純に荷物を狙われるとか?」
絵里「それは無くはないわね。例えば準備不足でサバイバルに必要な道具を奪う目的とか」
ことり「宝を狙う事もある?」
絵里「それもあるかもしれないけど…」
可能性として無くはないけど、そんな事を始まったばかりの今にする必要はあるのか?
荷物を奪う目的だったとしても、一人でできるものなのか?
絵里「私がスキルで発見していなかったら、あの子はどうしてたのかしら…」
穂乃果「で、でも荷物を狙うだなんて、そんな悪い事をするような子がスクールアイドルにいるかな?」
海未「穂乃果……」
穂乃果ちゃんの言いたいことはわかりますし、皆も同じ気持ちです
だけどこの不思議だらけのサバイバルにおいてその前提は少し危険なのもわかるのです
だから絵里ちゃんはこちらから様子を窺うという提案をしました
絵里「そこにいるのはわかっているんだから、アプローチしてみましょ」
ことり「誰かとはぐれた子だときっと一人で寂しいかもしれないしね」
穂乃果「そうだね、早く行こっ!」ダッ
にこ「ちょ、行くのは構わないけど警戒はしていくのよっ」
どのみち探索するという目的で岩陰など細かいところも見ていくので、避けられない場所です
それならと、こちらから声をかけるというのには私も賛成です
にこ「私と凛で回り込むから、海未は反対側をお願い」
海未「わかりました」
凛「お、襲ってきたらどうしよう……」
絵里「見ただけのイメージで言うとそういう物騒な事をするような子にはみえなかったけど…」
ことり「どういう子だったの?」
絵里「小さい…背格好で言うなら一年生くらいの、髪型はにこと同じツインテールだったわ」
穂乃果「小さいツインテールの子……」
にこ「なんでこっちをじっと見るのよ!」
凛「きっと仲間だと思って出てきてくれるかも?」
にこ「好き勝手言うんじゃないの、ほら行くわよ!」
目的の大岩に到達し、にこちゃんと凛ちゃんが右側に、海未ちゃんが左側へと回り込みます
私達も少し離れたところで様子を窺いますが、何があってもいいようにとスキルの準備はしておきます
にこ「ね、ねえ…そこにいるんでしょー?」ザッ
凛「凛達怖くないよ〜」
にこちゃん達が岩の裏側に回り込みながら声をかけます
だけど、私達はここに来るまでにそれぞれ声をだして会話をしています。距離的には絶対聞こえているはずです
それでもその誰かは何の行動も起こしませんでした
海未「大丈夫ですか? 一人でこんなところに……えっ?」
にこ「あれ、海未?」
凛「んー?」
岩の裏側に向かったにこちゃんが戻ってきました
そしてまっすぐ絵里ちゃんの元へ来ると…
にこ「誰もいないじゃないの!」
絵里「えっ!?」
凛「騙されたにゃ〜」
絵里「そ、そんなはずないわ! 確かに見たのよ!」
海未「しかし誰もいません…この先は断崖絶壁です」
最初にスキルでここを確認した場所からこの大岩までの距離だと、誰かが移動するのなら目にはいったはずです
だけど誰もいない。私達に気づいて移動したというには少し不自然です
希「エリチがここって言ってからうちもじっと観察しながら歩いてきたけど、誰もでてきた気配はなかったよ?」
穂乃果「ほんとだ、誰もいないね」
真姫「やっぱり見間違えたんじゃないの?」
絵里「あんなにハッキリ見えてていないなんて事はないと思うんだけど…」
絵里ちゃん自身も岩の周囲を確認しますが、やはりどこにも女の子はいませんでした
にこ「オバケでも見たんじゃないの?」
真姫「オバっ!?」ビクッ
絵里「そそ、そんな事……」
海未「皆、動かないでください!」
海未ちゃんが突然声を荒げると周囲を鋭い目つきで見わたします
ことり「う、海未ちゃんどうしたの…?」
海未「います。今確かに音が聞こえました……」
にこ「音?」
海未「おそらく、ゆっくりと移動しています」
凛「ど、どこにゃっ!?」キョロキョロ
絵里「そうか、なんらかのスキルを……」
絵里ちゃんの言葉に皆がハっとする
そうです、私達がスキルを使えるのと同様、他の参加者もスキルを扱えるはずなのです
みんなから少し後ろで状況を見つめていた私に絵里ちゃんが声をかけます
絵里「花陽、なるべくみんなの傍にいて」
花陽「は、はいっ」
と、絵里ちゃんが私に声をかけた時でした
タッタッタッタッタ……!!
私にもハッキリ聞こえました、誰かが走る音。しかしその音の場所を探し出す前に…
ドンッ!
私は体に強い衝撃を受け、次の瞬間……空を見上げていました
今日はお休み〜の 保守
け、決してアーリーアクセスはじまったからってワケじゃ…// 淀川の河川敷が出てきて大阪すみ(守口)の俺はビビッときた >>205を参考にして
将来俺が結婚するならこんな家庭の女の子を見つけて母親に100万渡すから結婚させてくれと契約するしかないと思った お前もオススメ貼れよ
しかちゃんが更新しない日はオススメの2ch長編名作を挙げよう 龍狩のお兄さんの新作がまだ更新されてねえええええええええええ
フレーフレー アイネちゃん!🙌 これ最早運命だろ なーみん
君が一年生の時にはもう男と付き合ってたと聞いて心透明な俺は辛かったよ
中学生で付き合うのはやめよう
ふじゅんいいせいこうゆう?だぞ
(なぜか変換できない) >>219
こんな幼馴染みが欲しいです
すべての男女の関係は星の関係である しかはいい加減速報かしたらば行けよ
もんじゃがウザい >>219
釣り 可愛くて巨乳の女の子が20代まで処女なわけがない
最近小さい女の子でさえも嫌悪感を覚える俺はどうしたらいいんだ
引っ越し完了したら抱き枕買う
買うったら買う ことりと絵里の抱き枕を買う! 昔は抱き枕を持ってるやつなんか見下してたのにまさか俺がなってしまうなんて 24歳の俺がJSに告白された話
http://www.2monkeys.jp/archives/39505812.html
俺は中三の時に六年生の女の子と一時だけ両想いになってたのはいいおもひでです 川島海荷はカルピスウォーターのcmの時が可愛かったなぁ あの時の容姿なら俺の女にしてやってもよかった
今はぶす
ついでに6年生だったあの子も中学ではぶすになってた 絵里「花陽!」
凛「かよちん!!」
私は何かの衝撃で地面に倒れているようでした
幸い背中に背負ったリュックのおかげで痛みはありませんでしたが、起こった出来事に頭がついていきません
にこ「花陽、大丈夫!?」
海未「さっきの足音は…!?」サッ
真姫「や、やっぱり誰かいるのね!!」バッ
私にかけよってくる絵里ちゃん達と、周囲を警戒する海未ちゃん達
この状況に冷静に対処しようにも完全に後手に回っていると思われました。だけど……
花陽「あ………」
少しづつ自身の体にかかる重みで、私はそれに気が付く事が出来ました
私に、誰かがしがみついています
花陽「え……っと……」
「ぁぅ……ぁぁぁぅ……ぅぇぇぇ……」
次に聞こえてきたのは女の子の声。それも、泣いています
穂乃果「この声……花陽ちゃんから?」
希「どういうこと?」
花陽「それは………」
私をぐっと掴むこの感触……私にしがみついていると思われる女の子
姿は見えないけど、そうだと認識するとだいたいの見当もつきました
花陽「大丈夫だよ」スッ
たぶん、このへんかなーって場所に女の子の頭がありました
私はその頭をゆっくりと撫でてあげます。少しでも落ち着きを取り戻せればと
絵里「えっと…そこに、いるの?」
凛「かよちん、押し倒されたにゃ!?」
花陽「ちょっとまってね凛ちゃん」
しばらくすると撫でていた頭が動き、体にかかる重みがすっとなくなりました
女の子がゆっくりと立ち上がったんだろうなと思いますが、何も見えないというのは不思議な感覚です
「ご、ごご、ごめん……なさい……」
花陽「こっちこそ、いきなり大人数でおしかけて、驚かせちゃったね」
にこ「んーと、ここ?」グイ
「ピギィ!」
海未「な、なにか動物の鳴き声が!?」
花陽「もう、にこちゃんダメだよ、びっくりしてます」
にこ「み、見えないんだからしょうがないでしょ」
おそらくにこちゃんが背後から触ろうとしたんだろうけど、距離感が掴めず加減ができなかったようです
さっきの声もたぶんこの子だと思います
穂乃果「ここにいるん……だね…えっと、私達は怪しい者じゃないよ?」
「あ、あの…はい……」
ことり「あなたもゲームに参加してるの?」
「えと……は、はい……でも……」
見えない女の子の視線がどこを指して、顔がどの部分かわからないのでみんなでぐるっと取り囲む形になってしまいます
さっきの様子から見るに、これはいけないと思います
花陽「み、みんなもう少し離れてあげて、一斉に囲んだら怖がっちゃうよ」
希「んー…見えないと言うのはなかなかに不便やねぇ」
絵里「ごめんなさい、私達も参加しているスクールアイドルなの。ここにきたのは探索の道中だったからよ」
「そ、それはわかります……ごめんなさい、私しばらく透明なままで…」
凛「透明になるスキルにゃ?」
「はい……」
真姫「すごいわねー。絵里が見た状況からだと、身に着けている物も全部透明になるのね」
ようやく落ち着いてくれたのか、透明な女の子はゆっくりと状況を話してくれました
彼女もこのゲームに参加した一人で、他にもたくさんの仲間と一緒だったそうです
だけど、森の中で大きな犬のようなものに出くわし、それぞれ対処している最中、一人だけはぐれてしまったのだといいます
最初に考察していた可能性の一つ。ずばりはぐれた子、だったわけです
絵里「じ、じゃああなたそれから一人で?」
「はい…スキルを使って隠れられる間にどうにか安全なところを見つけて……」
海未「それを繰り返しながらこの岩に辿り着いたのですか…」
希「どれくらい移動したんかわかる?」
「えっと…あっちの森から出て、ここにずっといたので……」
女の子があっちという場所は私達にはわかりません
なので、少しお手伝いしようと思います
花陽「はい……私の手で示せますか?」
「は、はははいっ……あ、ありがとう……」
女の子の前に腕を差し出し、人差し指を立てる
すると私の腕をそっと掴む女の子の手の感触を感じます
「あ、あっちの方からです」
絵里「ふむ、これから私達が向かう方向ね」
海未「ここに来るまでに他に誰とも出会いませんでしたから…」
絵里「彼女の事を探しているとなると、まだこっち方面にはきていないか…」
真姫「森の中を探しているのかもしれないわよ?」
穂乃果「えっと、はぐれた場合、どこかで落ち合うとか場所を決めたりしてない?」
「えっ……ごめんなさい、決めてなかったです…」
別に指摘したわけではありませんが、落ち度をつかれたように女の子の声が少し元気をなくします
私は大丈夫という意味も込めて、腕を掴んでいた女の子の手をそっと握ります
「あ………」
花陽「大丈夫です。きっとすぐに会えます!」
凛「そうにゃ!」
「うゅ……ありがとう……ぐしっ……」
絵里「そうね、せっかくだしあなたも来る?」
「ふぇ?」
穂乃果「ここで待つにしろ、探しにいくにしろ、一人だと危ないよ」
この提案には私達の中で意見が割れる事はありませんでした
しばらく返事が返ってきませんでしたが、繋がった手から感じものがあります
「お、お願いします!」
力強く握られた手。心を奮い立たせたのだと、私には伝わりました
絵里「それじゃ……あ、えっと……あなたお名前は?」
「は、はわわ、ごめんなさい……」
希「別に責めてるわけやないから大丈夫やって、な」
凛「というか凛達も自己紹介してなかったにゃ〜」
「み、みなさんの事はよく知ってます…だって……あっ」
真姫「どうしたの?」
「透明化の効果時間が終わります……」
女の子がそういうと、ゆっくりと私達の前にその姿を現す
赤い髪に、にこちゃんと同じようなツインテールがとても可愛らしい彼女…
ことり「わぁ、かわいい〜」
絵里「ね、ね、言った通りだったでしょ?」
希「はいはい、わかったから」
ようやく私達の前に姿を現した彼女は、あらためて私達に向き直ります
そして元気よく挨拶をしてくれました
「えと……く、黒澤ルビィです。よろしくお願いします」
変なののせいでまたエタったのかと思ってた
もんじゃとかNGに入れて外野気にせず続けてくれ アーリーってことは紅蓮に忙しいのか
それでも更新乙です
稲は休憩スレからでたあかんやろーに /
絵里「んっと……デカサイ……ね」
希「また安易な名前やなー」
穂乃果「そう? わかりやすくていいんじゃない?」
にこ「穂乃果と同レベルのやつが名付け親なのよ、きっと」
穂乃果「もう、にこちゃん〜!」
新たに黒澤ルビィちゃんを仲間にした私達の探索はそのまま継続です
不用意に動き回るよりも、絵里ちゃんのスキルで周囲に人影がいないか探る方が仲間と出会える確率も高くなると判断し、
ルビィちゃんとしばらく一緒に行動することになりました
それにしても特徴的な名前です。けれど彼女にはピッタリだという印象が持てました
ルビィ「……………」ジー
花陽「な、なにかなルビィちゃん?」
ルビィ「うゅ、な、なんでもないです…//」
ルビィちゃんは私達と同じ9人組のスクールアイドルAqoursのメンバーなのだそうです
サバイバル開始前に同じような制限を受けていたグループで、聞いて見たところ支給品は同じようなものでした
絵里「ふむ……大人しい動物だけど、群れやテリトリーを脅かす存在には好戦的に…ね、なるほど」
海未「群れ…というと、丁度あのくらいの数なのでしょうか?」
凛「デカサイいっぱいだにゃ〜」
希「テリトリーってどれくらい?」
絵里「えーっと……あっ、もう私達入り込んじゃってるわね」
ことり「へ?」
穂乃果「な、なんかおっきいの…こっち来てない?」
にこ「またこのパターン!?」
絵里「ふふ、大丈夫よ。さっきサーチしたけどあの向こうには何も無いわ!」
真姫「と、いうことは……」
ゆっくりルビィちゃんとお話ししたいところだったのですが、道中でくわした大きなサイのような動物達
絵里ちゃんの新しいスキルで動物の生態が調べられるものが追加されていたので探っている状況です
・エネミーサーチ:中型クラスまでの動物の生態を調べる
絵里「さっ、みんな! 逃げるわよ!!」ダッ
希「賛成!!」ダダッ
にこ「あんなのと闘ってたら時間かかって仕方ないわ!」ダッ
穂乃果「戦略的撤退〜〜!」ダダッ
花陽「行こっ」サッ
ルビィ「は、はいぃ!」ギュッ
君子危うしに〜ってやつです。宝がない場所を強引に行く必要はないのです!
というわけで、私達はデカサイの群れを回避し、大きな草原へとやってきました
相変わらず右手には暗い森が、左手には断崖絶壁が広がっているのですが、少し変化した風景にほっと一息です
穂乃果「ねーこのへんでお昼にしない?」
凛「賛成〜!」
穂乃果ちゃんの提案で見晴らしのいい草原のど真ん中で私達は昼食をとる事にしました
花陽「ルビィちゃんは何か食べる物もってますか?」
ルビィ「えと……それが………」
にこちゃんが昼食の準備(といってもメインはお弁当のカニ)をしているところ、ルビィちゃんもと聞いてみました
すると意外な返事が返ってきます
花陽「え…昨日から何も食べてなかったんですか!?」
ルビィ「リュックとは別に持ってたポーチに少しあったんですけど…無我夢中で走ってるうちに落としちゃって……」
にこ「そういう大事な事は先に言いなさい!」
ルビィ「ひぐっ」
ことり「にこちゃん、怒鳴らなくても…」
にこ「怒鳴ってるんじゃないわよ、ったく……ちょっとまってなさい」
メインのお弁当は9人分。それと簡単なスープを作っているにこちゃんでしたが、食材倉庫から何やら持ち出してきます
にこ「えっと、黒澤…さんだっけ…」
ルビィ「は、はい」
にこ「嫌いな物、食べられないものとかある?」
ルビィ「え…っと……」
花陽「にこちゃんがお昼ご飯を作ってくれるみたいです。おいしいんですよ、にこちゃんの手料理」
にこ「言うほど手の込んだものは作れないけどね」
ルビィ「ぁぅ…ありがとぅございます……」
にこ「好き嫌い特にないんだったら適当に作るけどいい?」
ルビィ「だ、大丈夫……です……なんでも……」
語尾に力強さを感じなかったのか、にこちゃんがルビィちゃんにずいっと顔を近づけます
たぶん嫌いな物はあるけどそんな我儘を言える立場でもないとか、遠慮しちゃってるんですね
にこ「正直に言いなさいよ〜?」
凛「遠慮しなくていいからねっ?」
ルビィ「あうっ……えっと……わ、わさび……です」
にこ「ん、それなら大丈夫そうね。ちょっとまってなさい」
ルビィ「は……はい……」
食材にわさびはないということでにこちゃんが昼食作りにはいります
私達は見晴らしがいいとはいえ何が起こるか分からないということで、周囲を交代で警戒することにしました
絵里「海未、少しあっちの様子を見たいのだけど一緒に来てくれない?」
海未「わかりました」
絵里ちゃんがスキルで周囲の様子を確認し、気になる方角を海未ちゃんと直接見に行く
この流れも恒例となったようで、私達はしばらくお昼ご飯とともに休憩です
にこ「ことり、この子のお昼ご飯にタフネスつけてあげて」
ことり「はーい」
穂乃果「そういえば昨日の晩御飯の効果っていつまで続くのかな?」
希「え、とっくに切れてると思うよ?」
穂乃果「そうなの? でもまだまだ元気だよ?」ブンブン
真姫「それは穂乃果が無駄に元気なだけじゃないの?」
穂乃果「えー真姫ちゃん〜ひどーい」
ルビィ「………」ポー
花陽「どうしたのルビィちゃん?」
ルビィ「ひゃい!?」ビク
花陽「ご、ごめんね、ボーっとしてたから」
ルビィ「いえ…ちょっと感動しちゃって…」
花陽「ん?」
ルビィ「私、ずっとμ’sのみなさんに憧れてて……スクールアイドル始めたきっかけでもあって……」
穂乃果「ん、そうなの?」ヒョコ
花陽「わっ」
ルビィちゃんの言葉に反応したのか、並んで座っている私達の横にサっと穂乃果ちゃんも座ります
左右から挟んじゃう形ですけど、出会った頃のような緊張はもう見られません。大丈夫かな
穂乃果「ねっ、ルビィちゃんって何年生なの?」
ルビィ「あ…えと、一年です……」
凛「凛達と同い年だね」
ルビィ「………………」
最初に見た印象で勝手に年下をイメージしてましたけど、背格好は確かにそんなに変わらない私とルビィちゃん
同い年という事は、ルビィちゃんもスクールアイドルを始めてそんなに間もないのでしょうか?
先のルビィちゃんの言葉に反応したのか、穂乃果ちゃんがルビィちゃんをキラキラした瞳で見つめる
応援の声、ファンレター的なものは少ないですが頂いた事はあります
だけど憧れてスクールアイドルになった子というのは初めての経験です
穂乃果「まだそんなにライブやってないのに、見てくれてるって嬉しいよね」
ルビィ「………………」
凛「動画にあがってるやつとか見てくれたの?」
ルビィ「はい………」
にこ「こんなんでいいかしらね、はい」
にこちゃんがルビィちゃんのために簡単な昼食を用意してくれました
私もあのおいしいカニ弁当を少しわけてあげようとおもいます
ルビィ「あ、ありがとうございます」ペコッ
にこ「いいわよこれくらい……」ジー
ルビィ「……?」
にこ「なんでもないわ。飲み物は…水しかないけど我慢して」
ルビィ「いえそんな…」
にこちゃんがルビィちゃんをじっと見つめます
そのまっすぐな視線に照れたのか、ルビィちゃんのほうから視線をはずすように俯く
にこ「んーやっぱり見覚えないわね」
穂乃果「ルビィちゃん? そりゃーさっきはじめて会ったんだし」
にこ「そうだけど、そういうわけじゃなくてね」
ルビィ「……………」
にこちゃんの言いたい事は私もわかります
私とにこちゃんはアイドルが好きで、スクールアイドルも例外なくチェックしています
サバイバル開始前にも確認はしましたがAqoursというスクールアイドルは存在していませんでした
ことり「それよりはやく食べて、絵里ちゃん達と交代してあげよっ」
穂乃果「っと、そうだったね」
知らないというならそれだけ。そうなんだけど、きっとにこちゃんはルビィちゃんを見て少しだけ不思議に思ったのかもしれません
私も思いました。こんな可愛い子がスクールアイドルをしていたら、きっと人気はでてるだろうなーって……
凛「おいしい?」
ルビィ「はい、すごくおいしいです」
穂乃果「でしょう?」
にこ「なんで穂乃果が得意気なのよっ」
これはきっと些細な事で、目の前のルビィちゃんが何かを隠しているとか、そういう余計な危惧は必要ない…はずで
けれどどこか引っかかる部分があるのも事実なのです
私達に憧れてスクールアイドルを始めた……その言葉がホントなら……
私達が昼食を食べ終える頃合いに絵里ちゃんと海未ちゃんが戻ってきました
絵里「あったわよ大きめの海岸。すっごく綺麗な白浜ビーチが広がってたわ」
穂乃果「ホント!? 泳げる?」
海未「泳げるでしょうが呑気に泳いでる暇はありませんよ」
凛「えー」
絵里「必要ならそれもあるかもだけど、それより聞いて」
絵里ちゃん海未ちゃんと交代するように希ちゃんと真姫ちゃん、にこちゃんの三人が周囲を警戒してくれています
話と言うのはその白浜に複数人の人影を確認したという話でした
絵里「サーチの範囲でみえた浜辺にスクールアイドルと思われる集団がいたわ」
ことり「はい、海未ちゃんもどうぞ」
海未「ありがとうございます。いただきます」
穂乃果「集団って何人くらい?」
にこちゃんが用意してくれた昼食を受け取りながら絵里ちゃんはルビィちゃんのほうに目をやります
絵里「数は八人。じっくり観察したわけじゃないけれど、私達とAqours以外にこんな大人数のグループはいないわ」
絵里ちゃんの言葉にルビィちゃんがはっと顔をあげる
私達は同じ九人グループで、サバイバル開始前に制限を受けたのは私達だけ
海未「あの制限は、平均人数を大きく上回っているために引き下げるとありました」
穂乃果「というと……どういうこと?」
絵里「九人で制限を受けるなら八人でも多少制限はうけるでしょ? でもそれがなかった」
凛「じゃあその人達がアクアの人達?」
絵里「黒澤さんを合わせて九人と考えるならそうでしょうね」
海未「位置的にも海岸から順に南下して移動していると思いますが…」
ルビィ「………………」
絵里「おそらく、黒澤さんを探しながら移動しているのね」
ことり「他のスクールアイドル同士で一緒に行動してる可能性は?」
絵里「勿論それもあるわ。だから黒澤さん」
ルビィ「は、はいっ」
絵里「近くまで案内するから、双眼鏡で確認してくれる?」
ルビィ「わかりました……」
穂乃果「……………」
道順としての変更はなく、ルビィちゃんのお仲間さんが発見できればよしという事でした
そして、もしも違った場合……
絵里「黒澤さん、その場合は……私達と一緒に行く?」
ルビィ「え………」
海未「進路として、私達はこの先無人島の外周沿いに北上します」
絵里「森の中は後回しにしているからね。だから一緒に行くなら、メンバーと離れてしまう可能性があるわ」
凛「えー、探してあげないの?」
海未「ただ探すといって闇雲に動き回るだけになっては意味がありませんからね」
絵里ちゃん達が見つけた集団がAqoursの人達ならルビィちゃんは無事合流して終わりです
違う場合、このまま先を行く私達にルビィちゃんはどうするのか、その意志をきちんと示しておく事も大事でした
ここまでの話を聞いてルビィちゃんが俯き考えます
まだ数時間しか一緒にいないけど彼女の性格は少し理解できると思います
ルビィ「ル……わ、私は……」
何かを言いあぐねている様子に少しだけ後押しができればと、そっとルビィちゃんの肩に手を置く
こんな状況だからこそ、ちゃんと自分の意思を示して尊重して欲しいと思います
ルビィ「は、花陽ちゃん……」
花陽「ルビィちゃんの正直な気持ちで…ね」
私の言葉にルビィちゃんは顔を上げ、その目に力強い意志を見せてくれます
だけど、そんな私達の元に勢いよく駆け込んできたにこちゃん達によってそれどころではなくなります
時折でる埋め立てですかぁ?の規制がよくわかんない
とりあえず続きますー……Zzz… 更新乙
埋め立て〜は長文連投してると出るんだったかな あああああぁぁぁぁぁ!!!!!
μ'sのライブ行きてぇぇぇぇぇ!!!!! にこ「絵里ーーー!!!」
希「緊急事態や〜〜〜!!!」
真姫「はひっ…ぜひっ………」
絵里「ど、どうしたのよ!?」
周囲の警戒に出ていたにこちゃん達が大慌てで戻ってきました
まさしく血相を変えてという表現がピッタリなほどに疲労困憊です
ことり「真姫ちゃん大丈夫?」
真姫「だ、だいじょぶ、はぁ、はぁ…っげふ」バタン
どうやら三人とも全力で走ってきたようで、膝をつくにこちゃん希ちゃん
真姫ちゃんにいたってはもうダウン寸前なのか、草地もおかまいなしにつっぷしてしまいます
私には真姫ちゃんのような特性、コンディションの可視化はありません
だけど今この状況に必要なスキルはあります
本から啓示を受けてから、ゆっくりと脳裏に浸透するように覚えたスキル……
花陽「にこちゃん達、ちょっとじっとしていてください」
にこ「へ…?」
希「あ、これ…」
ゆっくりと両手を左右に広げ、にこちゃん達のいる地点の中心あたりに意識を集中させます
台座や地面などの足場を指定して発動させるスキル…
・アサイラムシート:指定地点周辺に体力回復を促進させるフィールドを発生させる
にこ「あぁ、なんかほんのりあったかくて気持ちいいわねぇコレ…」
希「疲れがどんどん抜けていく感じ〜」
真姫「助かるわ、ありがとう花陽」
穂乃果「おーすごーい」
絵里「なんだか心地よくて……眠くなっちゃうわねぇ〜」
にこ「ってそんな場合じゃないのよ!」バッ
凛「おー、もう元気になったにゃ」
海未「何かあったのですか?」
希「向こうの森にで〜〜〜っかい犬みたいなんがいたんよ!」
ルビィ「っ!?」ピク
絵里「あなた達森に入ったの?」
真姫「入ってないわ。偵察をかねて近くに寄ったけど」
にこ「そしたら森の中をなんかフラフラした犬みたいなのがいたんだけど…」
希「昨日のカニとか問題にならんくらいデカかったんよ!」
海未「犬…ですか……」
ルビィ「……………」
花陽「ルビィちゃん?」
ルビィ「あ、あのっ……」
にこ「ん、なに?」
ルビィ「そ、その犬って、目とか怪我してなかったですか?」
真姫「あれ、知ってるの?」
海未「あったのですか?」
希「両目がたぶん見えてなかったと思うよ。大きな傷があったから」
ルビィ「…………!」
絵里「それで、緊急事態っていうのは?」
にこ「そ、そう! 緊急事態! 犬に見つかったのよ!」
穂乃果「見つかったって、目が見えないんじゃ?」
希「あきらかに目が合ったようにみえたし、鼻がね…ヒクヒクって」
真姫「その後ゆっくりと森から出てきたから私達急いで戻ってきたのよ」
絵里「ちょっと待って…えっと……スキルはまだ少しかかるから双眼鏡……」
海未「っ!? まってください絵里…森からここまでの間に見える岩陰に今何か……」
にこ「や、やっぱり追ってきた?」ビク
絵里「希っカード出せる?」
希「え、あっうん!」サッ
ルビィ「……………」
突如訪れた状況にみんながそれぞれ対応しようとしています
私も自身のスキルリキャストを確認し、合わせられるようにします
そんな中、ルビィちゃんはずっと俯いています
ルビィちゃん達はサバイバル初日に大きな犬のような動物に遭遇し、大変な目にあった
そしてさっきの証言から、おそらくその大きい犬というのは……
希「プロテクト、ドレイン、ウォールの三枚がでたよ」
穂乃果「希ちゃんのスキルカードって穂乃果のと同じ種類?」
希「使い方の違いかな? うちのはカードを対象にかざしたり貼り付けたりする事で効果でるから」
絵里「ブースト出なかったか…仕方ない、しばらく様子を……」
いち早く周囲の状況を調べようとした絵里ちゃんですがそれはかないません
しかし悪い意味でその必要はなくなるのでした
海未「います! おそらくにこ達の言っていた犬……なのですか、あれは……?」
穂乃果「海未ちゃん見えるの?」
海未「集中すればなんとか……しかし……」
絵里「こっちに来てる?」
海未「おそらく周囲の匂いを辿っているのでしょう、ゆっくりとですがこちらに近づいています」
にこ「やば……」
海未「あれは本当に犬ですか?」
真姫「見た目的に犬みたいってだけで大きさとかは問題にならないわよ」
絵里「どれどれ……」スッ
絵里ちゃんも双眼鏡を取り出して確認します
そしてその顔色が変化するのにさして時間はかかりませんでした
絵里「な、なによあれ……」
海未「犬というより狼に近いかもしれません」
にこ「あんなバカデカイ狼なんていないわよ!」
真姫「犬でもいないわよっ」
穂乃果「絵里ちゃん見せてー」
絵里ちゃんから双眼鏡を借りた穂乃果ちゃんも絵里ちゃん同様驚きの表情になります
それほどに大きな犬のような動物が近づいてきている
その大きさだけで十分脅威ですが、問題はその犬の目的にありました
穂乃果「あれって……やっぱり獲物を探してるの…かな?」
凛「獲物って凛達のこと!?」
にこ「あんなのどう考えたって獰猛でしょ!」
迫る脅威ににこちゃんは落ち着かないようです
しかし私も双眼鏡を借りてその姿を目にした時、背筋が凍る思いをしました
岩陰から見えるその姿は確かに犬のような、狼のような姿容です
だけど私の知ってる犬はあんなに大きくありません。周囲の景色と比較しても5メートルはありそうです
牙だってあんなに大きくするどくないですし、血なのかなにかわかりませんが赤黒く変色しています
なによりなんかもう、雰囲気からして狂暴そうです。一方的なイメージだけど…
海未「周囲の匂いからこちらを辿っているのでしょうか、ゆっくりと近づいていますね」
にこ「や、やっぱりにこ達を狙ってるのよ!」
穂乃果「どど、どうしよう!?」
ルビィ「…………」
絵里「おそらく海風の影響で匂いを特定しにくくなってるんだと思うけど……」
海未「だからと言ってこのままここにいるのは危険ですね」
ことり「はやく逃げよ?」
いよいよ双眼鏡でなくてもその姿をはっきりと確認できるくらいに迫ってきた犬…のような動物
動物という表現もどこか可愛らしさを残していてしっくりしません
真姫「に、にこちゃんああいうモンスターと戦いたいんじゃなかったの?」
にこ「ゲームと現実一緒にしないでよっ」
凛「凛もあれはちょっと遠慮するにゃ〜」
モンスター。真姫ちゃんが口にした言葉があの犬のような動物を表現するのには最適な気がしました
魔物…モンスター…もうファンタジーを否定するつもりはありませんが、こんな形でも実感することになります
絵里「そうね、戦うための術があったとしてもそれはあくまで自衛のため。好き好んで接触したくないわね」
希「じゃあ早いとこ移動したほうがいいかな」
絵里「それじゃ撤退方向は…」
ルビィ「あ、あのっ……」
絵里「ん?」
花陽「ルビィちゃん?」
ルビィ「ルビィは…えと、北にある海岸に行きますから…みなさんは少し南に戻ってください」
迫るモンスターから逃げる算段をしようという時に、ルビィちゃんがみんなにそう告げます
ルビィ「き、きっと匂いの元がバラバラに行動したらあの犬も戸惑うと思うし……」
絵里「黒澤さん?」
ルビィ「そうすれば諦めて帰るんじゃないかなと、お、思いますっ!」
穂乃果「…っ!」
ルビィちゃんはそこまで言い切るとさっと私達から一歩距離を取ります
それは作戦を提案するといったものではなく、そのための行動をルビィちゃんはもう取ろうとしています
その作戦の是非を問う前にルビィちゃんは私達に深くお辞儀をする
穂乃果「まってルビィちゃん!」
ルビィ「ほんとにお世話になりました、みなさんに会えて嬉しかったです、それじゃ!」タッ
花陽「あっ……」
ルビィちゃんは最後に私に向かって笑顔で言います
そして決断から行動までなんの迷いもなくルビィちゃんは北に向かって走り出しました
穂乃果「ルビィちゃーん!!」
絵里「い、行っちゃったわね黒澤さん」
ことり「やーん、もっと撫でたかった…」
希「せわしないな〜」
突然の状況にみんなが少し戸惑っている中、穂乃果ちゃんだけが走り去るルビィちゃんの背中をじっと見つめていました
穂乃果「あの子、最後に嘘ついた……」
海未「穂乃果?」
穂乃果「ルビィちゃん、ずっと正直に色々答えてくれてたのに、最後の……どうして?」
絵里「どういうこと?」
穂乃果ちゃんが指摘するルビィちゃんの嘘
その嘘を見破ったのは、穂乃果ちゃんの新しいスキルによるものでした
・ライズフィルター:一定時間、対象が示す[嘘][曖昧]な表現を可視化する
凛「嘘発見器にゃ!?」
にこ「そんな恐ろしいものをいつのまに……」
穂乃果「ゴメンね、ほんとはこっそり使ってイタズラしようとしてましたっ!」
希「正直者〜」
海未「絵里! 犬が移動しました!」
絵里「えっ?」
ゆっくりとですが確実にこちらに迫っていたモンスター(名前が不明なので呼び方はバラバラです)
しかしその進路を変更したと海未ちゃんが言います
すぐさま絵里ちゃんが双眼鏡で再度確認し、その行先を確認します
絵里「北……に、向かってる?」
にこ「どういうことよ?」
穂乃果「やっぱりさっきのは嘘だったんだ…!」
ことり「だから穂乃果ちゃん、嘘ってなに?」
穂乃果ちゃんは新しくスキルが追加されているのを確認し、実験的にその効果をルビィちゃんに使っていたのでした
スキルの性質上最初に使う相手が仲間内というのは少し気が引けた部分もあったと思います
勿論穂乃果ちゃんは最初からルビィちゃんを疑っていたわけでもなく、本当にスキルの実験的意味合いという事です
穂乃果「色々あって仲間とはぐれたのも、私達に憧れてスクールアイドルを始めたっていうのも本当だった…」
海未「そんな部分からスキルを使っていたのですね」
穂乃果「うん。それでホントにいい子だなって思って、だからさっきの嘘がどういう事なのか…」
絵里「その嘘というのは……」
穂乃果「私達がバラバラに行動したら犬は諦めて帰るんじゃないかって部分……」
こうなったらいいという憶測が嘘であった場合、それはどういう意味を持つのでしょう?
絵里「それは決してそうはならないと分かっているって事……」
海未「諦めて帰る事はないと……ではどうしてそのような……はっ!」
にこ「あの子まさか…」
穂乃果「もしかしてだけど、あの犬が狙っているのってにこちゃん達じゃなくて……」
凛「ルビィちゃんだってこと!?」
森の中でにこちゃん達の匂いを嗅ぎ取り、獲物を捕らえようと迫ってきたモンスター
しかし本当は海風にのって漂ってきたルビィちゃんの匂いを嗅ぎ取り、そこを目指していたとしたら…
ことり「そういえば目に傷があったって言ってたけど…」
希「もしかしてその傷って、ルビィちゃんがやったってことなんかな?」
にこ「あの子にそんな事できる……って、クラスもわからないし可能性がないわけじゃないわね」
絵里「じゃあ犬が狙う理由としたら……自分を傷つけた獲物を追いかけてるって事かしら」
一つの嘘が暴かれ、次々と新しい可能性が浮き彫りとなります
けれど私はその事実よりももっと心に引っかかるものがありました
みんなルビィちゃんの思惑を感じとったはずです
凛「姿を消すことが出来るから、忍者とかそういうのかな?」
にこ「なにそれカッコイイわね」
絵里「それはそのうち本人に聞けばいいわ、それより…」
そうです、今はそんな事どうでもいいのです!
ルビィちゃんが嘘をついてまで取った行動の意味……そんなの一つしかありません!
穂乃果「ルビィちゃん、きっと私達に迷惑かかるだろうって、だから……!」
絵里「自ら囮となって私達を守ってくれようとした?」
にこ「あ………」
ことり「ルビィちゃん…」
穂乃果「助けに行こう!」
海未「穂乃果……ですがどうやって」
穂乃果「そんなの行ってみないとわかんないし、それに……」
絵里「落ち着いて穂乃果。気持ちはわかるけど感情的になる前に確認することがあるわ」
穂乃果「でもあの犬、もう見えなくなっちゃって…」
海未「追うとなれば作戦が必要です」
にこ「そんな悠長な事言ってる場合?」
ことり「見失っちゃうよ〜?」
可能性の話ばかりして状況が悪化しないようにと、私達は追跡を開始します
その道中、どのような結果であれ心に決めないといけない事がありました
絵里「一番いいのが森へ追い払う事だけど……それが出来なかった場合…」
海未「わかっています」
にこ「…………」
凛「………」
今朝にこちゃんが言っていた言葉を思い出します
襲い掛かる脅威に私達は当然抵抗します。だけどそれ以外にも必要となる状況がきたとしたら…
穂乃果「出来ることがあるのに何もしないのは嫌だよ」
希「そうやね。それにうちらの事慕ってくれてる子に気を使わせたままってのもな」
真姫「私は別にそんなのはいいんだけど…ま、ほっとくってのもないわよね」
ことり「私はルビィちゃんが心配だからっ!」
みんなそれぞれだけど意識は一つの答えを示していました
私達は自らの意思で、モンスターと戦う事を選んだのです
更新乙
いよいよ強敵かな?
みんなのスキルも揃ってるし楽しみ 海未「見えました、犬がさきほどと同じ速度で移動しています!」
にこ「ねえその犬ってのなんか安易すぎない?」
希「そういえばあれはサーチできへんの?」
絵里「え……でもあれは……あっ……」
北へ進む私達の視界にモンスターが確認できました
絵里ちゃんはあの大きな犬のような狼のようなモンスターをサーチしていなかったようです
絵里「だって、あれで中型クラスだなんて思わないわよ?」
穂乃果「でもできたんでしょ?」
絵里「そうね……あれはジュナっていう獰猛な獣よ」
凛「ジュナ……」
移動しながら絵里ちゃんがジュナについて詳しく説明をします
長を中心とした十数頭で群れを作る
仲間意識が強く、仲間を傷つける存在には群れ全体で報復する
真姫「でもあのジュナは単独で行動してるようだけど?」
絵里「そのへんの事情は今はわからないから後回しでいいわ」
生態や事情はどうあれ、あのジュナがルビィちゃんを狙っているのなら関係ありません
海未「いました、黒澤さんです!」
穂乃果「ホントだ、でもあれって?」
前方にルビィちゃん発見です。思ったより距離が開いていなくてよかったです
絵里「あの子わざと距離を取らないで、引き付けてる?」
希「きっと引き離したらジュナがこっちに来るから?」
にこ「ぬわぁにそよれ、カッコつけすぎよ!」ダッ!
いよいよ迫ってきたジュナに対してにこちゃんが近くに転がってた岩に飛び乗ります
そして昨日のように碧の刃を形成すると、狙いを定めるかのように矛先を向ける
にこ「……えっと、どこ狙えばいいの?」
海未「狙えるのなら足元に打ち込んで牽制、威嚇しますか?」
絵里「その場合黒澤さんが何か作戦を考えていたとして、邪魔をしてしまう可能性があるわ」
穂乃果「じゃあどうするの?」
絵里「威嚇でなんとかなればいいけど、もしもジュナがこっちを標的にした場合…」
にこ「…………」
海未「その時は…」
凛「凛達で……やっつけるんだね…」
私達の中で戦闘クラスの三人はその役目を直接に任されることになります
凛ちゃんはやっつけるといいましたが、それで済むに越したことはありません
昨日海未ちゃんが口にした言葉を、あえてもう一度口にする人はいません
けれどこの先はそういう事態が起こる場です
自衛のために刃を振り回したにこちゃん
にこちゃんを助けるためと、ただ走って蹴りをいれた凛ちゃん
たったそれだけでも命を消してしまえる術があるのがここの現実なのです
絵里「それもだけど、全力であやまりましょ」
穂乃果「助けた後にね!」
真姫「当然!」
にこちゃんがジュナの足元目掛けて威嚇射撃を行います
理想はこれに怯んで逃げ出してくれる事
だけど私達はまだわかっていなかったのです
にこ「おー…ちゃんと狙ったとこに飛んでいくわねコレ」
凛「成功にゃ!?」
海未「こっちに気づいたようです」
しょせん私達は争い事とは無縁の世界で生きていました
威嚇するという事は、攻撃意志を示す事
にこ「じゃあもう一発撃つわよ!」サッ
海未「続きますっ」
迫る脅威に抵抗した昨日のにこちゃん
その考え方は間違っていません……だけど、そんなのは当然です
そしてそれは、相手だって同じなのです
私達に気づいたジュナがこちらに向き直り、あきらかににこちゃんのほうに顔を向けます
にこ「に、逃げないわね…やっぱりこっちに……」
右手に新たな刃を形成し身構えるにこちゃんをじっと凝視するようにジュナが体を向ける
にこ「あれ……もしかして……」
凛「こっち見てる?」
海未「………っ、にこ!!」
両目に傷があり、目が見えないと思っていたジュナがにこちゃん目掛けて突如走り出します
それは私達の知る四足歩行の動物のそれではなく、大地を蹴りだし……まさに、跳んだのです
にこ「え……?」
15メートルは離れていた距離を一瞬で跳んできたジュナのするどい爪がにこちゃんを薙ぎ払う
あまりに突然の事で、私達は何もできませんでした
生き物を殺す事が出来る術がある。平和な世界で生きていた私達にはこれだけでも衝撃的な状況です
だけどもっと深く考えるべき現実は他にあって、この無人島でのサバイバルは、
殺されるかもしれない脅威があるという事でした
海未「にこっ!!」ダッ
凛「え、あ、な、な………」
さっきまでにこちゃんが立っていた岩の一部が破壊されていました
ジュナがその大きな爪で引き裂いた部分。そこににこちゃんはいませんでした
なにがどうなったのかまだ頭がおいつかない状況で、海未ちゃんだけがにこちゃんの姿を目で追っていました
海未「にこっ………く……」
にこ「………………」
にこちゃんはジュナの一撃で10メートルほど飛ばされたところで倒れていました
ジュナから庇うようにして海未ちゃんがその前に立ちます。だけどジュナは倒れるにこちゃんをじっと見た後、
海未「なっ……」
まるで何もなかったようにまたルビィちゃんのほうへと向き直り、歩き出したのです
自分を攻撃する脅威だと認識したにこちゃんだけを排除し、本来の目的へと戻っていくジュナ
その後ろ姿を私達はただじっと見ている事しかできませんでした…
海未「くっ……真姫、真姫!!」
真姫「……………」
絵里「あ……ま、真姫! にこを見て!」
真姫「え……あ、は、はいっ!」
時間にして1分も立たないうちに私達の意志は完全に崩されていました
凛ちゃんは目前に迫ったジュナの姿にその場で座り込み、動けなくなります
ことりちゃんや穂乃果ちゃんも恐怖で動けません。私も……
カニの時はスキルで見事に乗り切ったから…なんとかなったから、なんとかなるって思っていました
にこちゃんの形成する刃はすごい切れ味で、堅いカニの殻もやすやすと切り裂きます。だから今回もって…
真姫「に、にこちゃん!」
海未「外傷はありません、気を失ってはいますが……」
外傷は無い。海未ちゃんの言葉に、よかったはずなのに真姫ちゃんが驚きます
私だってそう思いました。岩を軽々破壊したあの威力で、無事ですんだのはどうして?
希「ち、ちゃんと動いてくれてたんや……よかった……」
絵里「希がなにかしてくれたの?」
希「したっていうか、そういうカードやったから……」
・ウォール:カードを対象からの物理攻撃を一定量防ぐ防御壁に変化させ、味方を守る
対象を目前のジュナにしていたおかげでカードの効果が発動したと希ちゃんは言います
つまりあの一撃でのダメージではなく、にこちゃんは地面に打ち付けられた衝撃で気を失っているのでした
けれどそれはもう一つの現実をより深く私達に意識させます
真姫「花陽、こっちきて!」
花陽「は、はいっ」
真姫ちゃんが私を呼び、さっきのアサイラムシートを使ってくれと言うのですぐに発動させます
体力自体はこれでなんとかなりますが、体の内側に問題があれば対処できません
けれどそこはお医者さんの卵である真姫ちゃんが触診してくれます
真姫「特性のおかげで体が丈夫になったって言ってたから……内出血もないし、骨に異常もないから…」
ことり「だ、大丈夫なの?」
真姫ちゃんが頷くのを見て、ようやく少しだけ心が落ち着く私達
だけど同時に考えます
もしもジュナが私達全員に襲い掛かっていたら
もしも希ちゃんがウォールのカードを引いていなければ
そのカードの効果で攻撃を防ぎきれなければ
攻撃されたのが戦闘特性のない他の誰かだったら
きっと今の状況はとても幸運なのだと思います
一つでもなにかズレていたら、
私達の誰かが…もしくは全員……死んでいたかもしれないのです
○した記憶と○された記憶もお持ち帰りしないといけないのがなぁ これがえたらず完結して尚且つ面白かったら奈良大学に行くわ 絵里「……………」
穂乃果「…………」
海未「絵里、どうしますか?」
絵里「えっ…ど、どうって……」
海未「ジュナはまた黒澤さんのほうに移動しています、追跡するにしても…」
絵里「ち、ちょっとまってよ、あんなの無理じゃない」
ことり「絵里ちゃん……」
希「……………」
絵里「なんとかなるって思ってたわよ、なんか色々スキルで解決できたし、みんなもいるんだしって…」
絵里ちゃんが口にする気持ちは、全員同じだったものです。だから誰も口を挟むことはありませんでした
絵里「でも…あんなの無理よ……私達さっき死にかけたのよ? にこが……にこだけが先に手をだしたからってだけで…」
海未「…………」
絵里「ごめんにこ……偉そうな事言って作戦なんか………また私…みんなを危険に……」
海未「それは違います絵里! この結果は確かに良しとするものではありませんが、誰に責任があるという話では!!」
絵里「あるわよ!! だって……だって……っ!」
にこ「うるさいわよ、あんた達ー」
真姫「にこちゃん!」
凛「気がついた!?」
穂乃果「にこちゃ〜〜ん!」
ことり「よ、よかったー……」
にこ「あーやっぱこれ気持ちいいわねぇ…」
花陽「にこちゃん、もう大丈夫なの?」
真姫「どこか痛むとこある?」
にこ「ん、むしろ元気よ…ほっ」
目を覚ましたにこちゃんは体調を現すかのようにさっと起き上がります
それを見て私と真姫ちゃんは安堵します。良かったです
にこ「あいつは?」
海未「攻撃してきたにこを敵だと思ったのでしょう。にこを排除したと見ると戻っていきました」
にこ「そう………んん……」
絵里「にこ……その…」
にこ「別に絵里のせいじゃないし、その事を今はあーだこーだ言ってる場合でもない」
穂乃果「にこちゃん、まさか……」
にこ「間違ってたのは最初……」
威嚇して追い払う。この平和的な考えが間違っていたとにこちゃんは言います
それを提案した絵里ちゃんはまた責任を口にしますが、そんなのはみんな思っていた事だと再度改めます
にこ「昨日今日とでこうも危ない生物がいるんだから、もうハッキリしないとね」
絵里「………………」
海未「ええ。もうこれはたまたまではないと言えます…」
俯く絵里ちゃんに一度目をやり、あらためてにこちゃんは宣言をするように口をひらく
にこ「この無人島には危険がたくさんある。昨日のカニもさっきのジュナもそう」
穂乃果「うん………」
にこ「おそらく、さっきのジュナ以上に危ないヤツだっているわ」
ことり「え、ええ!?」
にこ「絵里のスキルが明確に中型クラスまでサーチできるって言う以上、大型が存在するってこと」
絵里「あいつでも十分よ……」
にこ「そんな中でサバイバル生活をするのに……ううん、もうここも曖昧にしちゃダメね」
穂乃果「…………」
にこ「この島で生き残るためには、もう生温い事は言ってられないって事よ」
真姫「生き残るって……」
海未「一か月過ぎればすべてが元に戻る。つまりは、死んでも戻るという事です」
ことり「そ、それは私も薄々考えたよ……でも……」
真姫「まさかそこまでっていう認識だったのは認めるわ」
穂乃果「うん……」
私も少し考えた事。死んでも元に戻る。死ぬような事が起こる可能性があるのがこの無人島でのサバイバル
そしてその可能性は低くはなく、実際は危険だらけでした
本当なら昨日のカニの襲撃でちゃんと考えるべきだった事かもしれませんが、
なにからなにまで初めての経験、そして初めてのサバイバル生活に高揚していた部分もあると思います
にこ「だから、そういう驚異に関わるならちゃんとしないとって事よ」
絵里「それって、さっきの?」
にこ「そう。威嚇じゃなくて、先手をとるのなら一撃で倒す作戦で行動するべきだった」
希「倒すって……つまり……」
にこ「殺すって事よ」
今朝にこちゃんが言っていた言葉をもう一度思い出します
生き物を殺すことに慣れないで。それはこのルールにおいて唯一影響のある戻らない記憶によるものでした
にこ「偉そうな事言っておいて、結局私も認識が甘かったのね」
穂乃果「じ、じゃあ…どうするの?」
にこ「簡単な話。やるなら徹底する。しない事も徹底する」
真姫「どういう意味?」
にこ「生き残ってゲームに勝つのを目指すならもう悠長な事は言わない。それでも元の生活に影響がでるというなら…」
絵里「あきらめて一か月の間、安全な場所で時間が経過するのを待つ……ね」
真姫「それは……」
にこ「そして私個人の意見として、後者はNOよ」
絵里「にこ…だってあなた……」
にこ「ん?」
絵里「怖く……ないの?」
凛「…………」
今この場で一番死にかけたのは間違いなくにこちゃんです
だけどそのにこちゃんが戦う道を選ぶ事に絵里ちゃんだけじゃなく皆が驚きます
そんな皆の視線を受けてなおにこちゃんはキッパリと言い切ります
にこ「危ない目にあったから逆に吹っ切れたっていうのもあるし、なによりくやしいでしょ?」
穂乃果「そ、そんな簡単なものなの?」
にこ「せっかくの新スキルだって試したいし、作戦を明確にすればなんとかなるって思える」
絵里「でもそれだとまた危険に…」
にこ「海未、黒澤さんは見える?」
海未「えっあ、待ってください確認します」
真姫「にこちゃん……」
スキルを試したい……そうにこちゃんは言いました
実際カニを排除したのはにこちゃんと凛ちゃんで、そのにこちゃんが言うから説得力のあった言葉…
殺すことに慣れないように。だけどスキルを試すという事は……にこちゃん、大丈夫なのでしょうか?
凛「……………」
海未「速度を維持しつつなおも北上中です」
にこ「絵里達が見つけたって言う海岸まであとどれくらい?」
絵里「えっと…150メートルくらいだけど……ねえにこ、本気なの?」
ことり「危ないよー…」
にこ「なんであんな俊敏に動けるジュナが黒澤さんには手をださないのか……」
穂乃果「え?」
にこ「動物的本能なのか、それとも一度戦った影響からか……ジュナは黒澤さんを警戒してると思わない?」
海未「そうですね。あのジュナを動物としての観点から獲物を見ているのであれば、隙を伺っているのかもしれません」
にこ「そうだとしたら、私らってあいつの眼中にないって事になるのよ……」
穂乃果「そうかもしれないけど、でも……」
にこ「そして私らがジュナに手を出して返り討ちにあったっていうのを、黒澤さんもわかってるはずよね?」
海未「おそらくは……」
にこ「事情は知らないけど、戦える力を持っていて私達に危害が及ばないように守ってくれているとしていたけど…」
絵里「ねえにこ……」
にこ「無様に返り討ちにあった私達を見てもその行動をかえないのって、そういう事じゃないんでしょ、きっと…」
言葉の端端に感じるにこちゃんの感情に、誰もが気づいていました
にこ「なんかあったまくるわっ!」
真姫「に、にこちゃん……」
相手にされない苛立ち。自分達を慕ってくれている後輩の前で無様な醜態を晒す自分への苛立ち
憶測の域を超えない範囲でも黒澤さんに余計な手間を取らせている現状
それらすべてを、なさけないと感じてしまう事…
にこ「カッコ悪いじゃない、こんなの!」
絵里「そんな話で危険な事をさせられるわけないでしょ!」
にこ「大丈夫よ、今度はきっちり……一撃で……」
真姫「にこちゃんやめてっ!」
にこ「殺してやるんだから!!」
真姫「っ!」ビクッ
まるで自分の言葉に酔いしれるようにどんどん顔つきが変わっていくにこちゃんが、
ついにその一言を口にしました。それはただ一つの、明確な殺意でした
希「……………」スッ
にこ「海未、追うわよ!」
海未「にこ………」
にこ「何してるの、見失うわ……よ………あ…れ……」フラ
ことり「にこちゃん?」
にこ「なん…で………」バタッ
真姫「にこちゃん!?」
勢いよく飛び出そうとしたにこちゃんが突如ふらつくと、そのまま倒れこんでしまいました
やっぱりどこか異常があったのかと、真姫ちゃんが慌てて駆け寄り体を調べます
希「大丈夫、ちょっと寝てもらっただけやから」
真姫「え、これ希の仕業?」
希「うん」ピラッ
希ちゃんが示したのはドローしていたカードの一つでした
・ドレイン:対象の体力を吸収し、別の対象に分け与える
絵里「希、どうして?」
希「んっと、その前に……ことりちゃん、にこっちのリュックってどれかな?」
ことり「え、あ、んと、これだよ」サッ
有事の際に激しく動き回る戦闘クラスのためにその時は荷物を絵里ちゃんとことりちゃんが預かってくれています
ことりちゃんが差し出すにこちゃんのリュックから希ちゃんがあるものを取り出しました
それはにこちゃんが啓示を受けた戦闘クラスの本。今は「燕」の本になっています
その本を開き目的のページを眼にした希ちゃんが一言いいました
希「ああ、やっぱり反転してるなぁ」
穂乃果「反転?」
三枚のカードが示すタロットでいうアルカナを割り振り、そこから啓示を受けるのがクラスシステムです
タロットに詳しい希ちゃんはにこちゃんの変化の原因にいち早く気づき、確認のために本を開いたのでした
希「にこっちのペルソナであるカード、カゼが反転…逆位置になってるやろ、ほら」
真姫「ホントね…これってただのイラストだと思っていたけど、心理状況を示すものだったの?」
希「正と負が上下に分かれてるように、善悪の解釈もひとそれぞれとしてここに示されてるんよ」
ことり「?」
希「たぶんこれ全部反転したらにこっちの持つ悪い部分が表になって、別人みたいになるよ」
海未「カゼだけが反転しているというのは何を意味しているのですか?」
希「ペルソナだけが反転しているのは、わかっている過ち……ようは、自棄になってるって事」
絵里「自棄って…じゃあさっきにこが言ってたのって……」
希「強がり…かな。実際全部が間違いではないだろうけど、さっきのにこっちはあきらかに焦ってた」
ことり「それは…うん、そう思う」
明確な意志と作戦があったとするならそれを精査し、実行するかどうか決定をする
だけどカッコいい先輩でありたいと、自棄になって強がってもそれはきっとうまくいかない
だから希ちゃんはその部分をちゃんと確認するために、にこちゃんにお休みしてもらったのだと言います
希「ホントは自分の心の内を覗かれるみたいで嫌だと思うよ、こういうの…」
絵里「でもそのおかげで私達はちゃんと行動を決定することができる…」
ことり「絵里ちゃん……じゃあ…」
絵里「ジュナを追うのは今の私達では危険よ。だから黒澤さんに頼るしか……ないわ」
穂乃果「絵里ちゃん……」
もしかしたら今ルビィちゃんは危険な状況かもしれなし、そうじゃないかもしれない
そんな事を延々考えるよりも、自分達の事を第一に考える事を選びました
私達は……負けたのです
真姫「にこちゃんはいつ頃起きるの?」
希「このカードににこっちの体力吸い取ってあるから、これ戻せばすぐに起きると思うよ」
真姫「そうなのね、よかった…」
ことり「でも今起きても、また同じ事になるんじゃ……」
希「普通はそういうところでお互い口論になって、衝突して、ケンカになるんやけどね」
寝たり起きたり忙しいからこのまま少し休ませてあげようという希ちゃんの提案で、にこちゃんはそのままです
実際啓示がなくても私達の生活の中で人と接する時、激しく意見をぶつけ合う時、様々ですが、
ペルソナやキー、シャドウが反転しているという状態はあるのかもしれません
お互いがお互いの状態なんて認識できないからそのままぶつかり、ケンカになる
海未「正直にこに言われても私は動けそうにありませんでしたから、きっとそこから口論になっていたと思います」
穂乃果「そういう部分でも希ちゃんに感謝だね」
希「落ち着いてカードがまたきちんと示されていればその心配もなくなるよ……」
ことり「それにしても、よく本のイラストが変わっているって気が付いたね」
希「んー、それはまぁ一回見たし…ね」
ことり「そうなの?」
凛「……………」
結局私達はその場でしばらく休む事にしました
穂乃果ちゃんとことりちゃんがずっとルビィちゃんの事を心配していましたが、出来る事がないのも事実で…
私も心配な部分はありましたけど、それ以上に私達におきている状況を考えないといけません
真姫「にこちゃんが目を覚ましたら……どうするの?」
絵里「……………」
絵里「何度目かしらね、この問答も……」
海未「絵里?」
絵里「私は私の中の常識で最善だと思える事を言ってきたつもりよ……」
ことり「絵里ちゃん……」
絵里「でもやっぱりダメで、予想すらしなかった事の連続……昨日も今日も……」
真姫ちゃんの膝枕で気持ちよさそうに眠るにこちゃんを見つめる絵里ちゃん
責任感の強い絵里ちゃんは、昨日も今日も自分のせいでにこちゃんが大変な目にあっていると思っています
それは違うよと言ったところで今の結果にはなんの慰めにもなりません
絵里「きっと今考えてる事だって、すぐに覆されるわ……だってそうでしょ?」
真姫「…………」
絵里「この島は私達の知らない事だらけで出来てるんだもん、対策なんてできるわけないのよっ!」
ことり「絵里ちゃん…それは……」
絵里「それでもってやった結果がこれなのよ……最初っから全部そうだった……」
結果がすべてだと言い切る事はできません。だけど今の状況に、私達の言葉はすべて絵里ちゃんを追い詰めてしまいます
昨夜の言葉も、嘘偽りのない私達の本心でさえ、絵里ちゃんを追い詰める形となってしまいました
絵里「だから、おねがいよ………無責任だって思うけど……」
絵里ちゃんの決定に従う。そんなつもりはなくても、すべての責任を負わせているのは私達でした
絵里「私はもう…決められない……」
ジュナに関してこれ以上関わらないという決定を最後に、絵里ちゃんはその立場を放棄しました
本人は無責任だと言いますが、やっぱり誰も文句を言う人はいません。それこそ無責任です
そうしてこれからの事を考える事もやめ、私はただ呆然と空を見上げていました
この空気の中で誰一人として口を開く事はなく、何かの喪失感だけがそこにありました
花陽「………………」
雲一つない晴天に、大きな鳥が飛んでいるのが見えます
この無人島にはどれだけの生物が存在しているのでしょう
どれだけの生物が私達の脅威になるのかな……
ただ時間の経過を待つにしろ、安全な場所というのはどういう処を言うのでしょうか……
そんな事を呆然と考えていた時、その音は空気の振動とともに私達の静寂を打ち破りました
海未「…っ!?」
凛「なに……いまの…?」
穂乃果「すごく響いたけど……どこから?」
海未「北……黒澤さんとジュナのいる方角です!」
その音は屋外だというのに私達のところまで重く響いてきました
音の正体は解りませんが、この先で何か起こっているのは確実です
真姫「これって、猟銃の音じゃない?」
ことり「猟銃って……マタギさん達が持ってるやつ?」
真姫「実際の種類はわかんないわ。でも重いけど高く響く感じ……山での猟に使われているのに似ている気がする」
海未「黒澤さんが?」
凛「そんなおっきなの持ってなかったと思うけど……スキルとか?」
希「それか、北の海岸にいたっていう集団が合流したとか?」
穂乃果「ねえ絵里ちゃん、向こうの様子見れない?」
絵里「え…………?」
距離的にはそんなに離れていませんが、私達の手前50メートルあたりまでは急な傾斜になっています
おそらくあそこを登れば海岸沿いまで下りになっているのかな
その向こうの様子をスキルでサーチして欲しいと穂乃果ちゃんが言うまで、絵里ちゃんはずっと俯いたままでした
穂乃果「見に行ってもしなんか飛んできても危ないし、さっきのがまたきたら怖いし…」
絵里「そ、そうね……ちょっとまって」
両目を閉じ、周囲の状況を探る絵里ちゃん
いつも時間にして1分近くこの状態でじっとしている絵里ちゃんですが、今回は違いました
絵里「え、なに……犬?」
凛「ん?」
ことり「犬って、ジュナ?」
絵里「これって……こっちに!?」
海未「絵里、どうしたのですか?」
絵里「ジュナじゃない別の犬の群れみたいなのが、森のほうから……こっちに来てるわ!!」
ことり「えぇっ!?」
絵里「希、すぐににこを起こして!」
希「わ、わかった!」パッ
海未「森の方というか…あちらですか?」
絵里「確認できる?」
海未「はい……確かに犬のような……しかしこれは…」
穂乃果「こっちにきてるって、それってほのか達を狙ってるって事?」
絵里「それはわからないけど、確率は高そうね」
北の様子を窺うためにサーチした結果、東の方角から何かが接近している事がわかりました
状況が落ち着かないままに、それは私達の視界に現れました
ジュナほど大きくはなく、本当の意味で私達の良く知る犬のような動物
だけど問題は別にありました
絵里「群れかしら、数が多いわ」
海未「確認します」
凛「ど、どうしよう?」
希「ほ〜らにこっち、いつまで寝てるん〜?」ペチペチ
にこ「はえっ?」ビクッ
にこ「あれ、どうして私寝てたの?」
真姫「疲れてたんじゃないの?」
にこ「って、それよりジュナは!?」
絵里「ジュナよりも緊急事態よにこ!」
にこ「え、なに?」
海未「来ます、全部で12頭まっすぐこちらにっ!」
にこ「ち、ちょっとまって何がどうして…?」
現れた犬のような動物の群れは12頭
すべて同じような、柴犬くらいの大きさの犬が私達めがけてやってきます
にこ「別の敵!?」
希「敵……やね、どうみても」
凛「森のほうから来たみたい」
真姫「ことり、花陽、こっちに!」
ことり「う、うん」
起きて早々の事態ににこちゃんが少し戸惑っています。その様子をじっと観察していた希ちゃん
落ち着いたのかどうかはまだ明確にできないまでも、さっきまで感じた、苛立ちや焦りといったものは感じられません
とりあえずは良しという事なのか、希ちゃんはにこちゃんの背中を鼓舞するように軽く叩きます
希「ほら、にこっち出番やよ!」ポンポン
にこ「わぁかってるわよ! 絵里!」
絵里「…………」
にこ「絵里っ! なに負抜けた顔でボーっとしてんのよ!」
絵里「だ、誰が…」
にこ「ジュナと黒澤さんの事は一端置いておくにしても、これはこれで切り抜けなきゃいけないでしょ!」
絵里「それは……わかってるけど……」
にこ「だったらボーっとしてないで、指示はどうしたのよ?」
絵里「……………」
海未「絵里……」
穂乃果「よーっし! みんながんばろう!」
にこ「ん?」
絵里「穂乃果…?」
戦闘の可能性があるとどうしても先の宣言通り、自信をなくしてしまった絵里ちゃん
そんな絵里ちゃんの傍で力強く声をあげたのは私達のリーダーでした
迫る犬の群れをじっと見据えて、それでもその表情は強い意志に溢れていました
穂乃果「私達はまだ全然……レベル1なんだよ」
真姫「なにそれ、ゲームの話?」
穂乃果「世界がかわれば、ゲームだって現実だよ真姫ちゃん」
真姫「はぁ?」
凛「穂乃果ちゃん……」
穂乃果「まだここに来てろくな経験も積んでないのに、あんなデッカイのに勝てないのは当然なんだよ!」
海未「穂乃果、いまそれどころでは……」
穂乃果「ゴメンね絵里ちゃん」
絵里「え?」
穂乃果「いいだしっぺはほのかで……みんなを巻き込んだ原因なのに…」
絵里「そ、それは……」
穂乃果「でもやっぱりみんな絵里ちゃんには感謝してるし、頼りにしてるんだよ」
絵里「…………」
穂乃果「だけどそれが絵里ちゃんにとって重荷に感じるのもわかるから…」
絵里「私はそんなつもり……は……」
にこ「ちょっとなにやってんの? きたわよっ!」
すでに犬の群れは私達のすぐ傍まで来ています
群れの長なのか、その中の1頭が近い距離で停止すると、後続もそこから横に位置取るように並びます
なんだか規律正しい群れです
それでも私達を凝視する眼差しは獰猛そのもので、間違ってもご挨拶にきた雰囲気でないのは確実です
穂乃果「だけど、もうほのかもリーダーとして、絵里ちゃんばかりにいいかっこはさせないよ!」
絵里「えと……え?」
ことり「穂乃果ちゃんなりに励ましてるんだと思う……よ?」
凛「じ、じりじり近寄ってきてるよ〜!!」
穂乃果「凛ちゃん、にこちゃん、海未ちゃん! ババーンとやっつけちゃって!!」
にこ「なによその適当な作戦!」
穂乃果「そんでもってパパっとレベルアップして、また一緒にがんばろ!」
海未「穂乃果……」
言葉の意味も、意図も、全部曖昧に…それでも気持ちのはいった一声に、私達に不思議な力を与えてくれます
サバイバルで得た特性……いいえ、これは穂乃果ちゃん自身が持つ、天真爛漫な高坂穂乃果そのもので、
穂乃果「みんな、ファイトだよっ!」
私達の中心……μ’sのリーダー、高坂穂乃果なのです
オラこんなワクワクするSS見たことねぇぞ
他のアクアメンバーも楽しみ 復活嬉しすぎる
前スレで原作があるみたいな話しあったけど、なんだっけ? 原作というよりタロットあたりの単語ネタがトーキョーNOVA
TRPGなんで話のもとネタ的なのは知らんけど おつおつ
こういう環境だと絵里ちゃんが真っ先に心折れちゃいそうだよね…
穂乃果ちゃんが逞しく引っ張ってあげればまだ頑張れるかな 絵里「って、勢いはいいけどそんな指示じゃわかりにくいわよっ!」
穂乃果「うん、だから絵里ちゃんも手伝って!」
真姫「そうね、穂乃果だけじゃひたすら暴走するだけだもの」
ことり「よくわかんない表現好きだもんね〜」
希「もちろん、嫌いやないけどね」
もうそこにさっきまでの意気消沈していた絵里ちゃんはいませんでした
確かに一人でなんでもかんでも背負うのは無理です、誰だって
だから私達がいて、私にもみんながいる
みんなが一緒ならって穂乃果ちゃんが言った言葉ですが、それはどんな困難にもみんなで挑むという意味でもあります
花陽「わ、私も私に出来る事でお手伝いします!」
凛「かよちん……」
穂乃果「それにね、ちょっと考えがあるの」
絵里「この状況に?」
穂乃果「ううんこれからの事で、だからまずはこの状況をギャギャンって切り抜けよう!」
ことり「お〜♪」
真姫「ってよくわかってないでしょ」
ことり「えへへ、でも不思議、なんとかなるって思えるもん」
凛「自分に出来る事……自分にしか……」
と、こんなやりとりをしているのをじっと待ってくれるほど相手は甘くはなかったのです
数の上で優っている犬達は、やけに統率のとれた行動を見せます
にこ「左右にわかれた…?」
海未「4頭づつに分かれています……おそらくですが、知能は高いのかもしれません」
絵里「あーもう、やってやるわよ!!」
穂乃果「さすが絵里ちゃん!」
しかし統率の取れた行動なら、私達も負けていられないのです
絵里「サーチ結果だけど、こいつらはハイエナよ」
にこ「ハイエナみたいなやつらってこと?」
絵里「いいえ、名前がもうそのままハイエナ。そして自分達より弱っている相手を襲うようね」
希「この場合、うちらかな?」
真姫「え…それでわざわざ森を抜けてきたの?」
絵里「その憶測は後よ、取り敢えず奥でふんぞり返ってるのがリーダーね」
にこ「あれ倒せばオッケーてこと?」
絵里「そうね、長の影響力は大きいみたいだからそういう事になるわ」
海未「しかしこの数の差は油断できません」
ハイエナ達は奥にリーダーを置き、正面3頭、左右に4頭、私達を囲むように移動します
単純な話、一斉に押し寄せられたらと思うとゾっとします
だけどリーダーが慎重なのか、こちらの戦力を分析しているのか、一定距離を少しづつ詰める感じです
絵里「希、カードのドローはできる?」
希「あ…ゴメン、まだ全部使い切ってないからリキャストが……」
絵里「あと1枚ってプロテクトよね、じゃあビニールシートを広げて防御壁作ってそれで後方をカバーして」
希「了解やっ」
絵里「にこは右側、凛は左側からの襲撃に備えて」
にこ「向かって来たら?」
穂乃果「蹴散らして!」
にこ「了解!」
凛「…っ!」グッ
絵里「海未、奥にいるリーダーをやっつけられる?」
海未「個々の動きがどれほどのものかによりますね……」
ことり「シート広げたよっ」
希「真姫ちゃんそっちの端持ち上げて、ことりちゃんはこっち」
真姫「こ、こう?」
希「まっすぐな板にするんじゃなく、少し内側に空間ができるように、そうそう…えいっ」パッ
・プロテクト:カードを張り付けた物質を硬質化させる。質量は変化しない
それぞれが状況に対応する中、ついにその時がきました!
オオオーーーン!!
後方で身構えているリーダーらしきハイエナが一鳴きすると、左右に展開していたハイエナが動き出しました
それぞれ前方の障害、凛ちゃんにこちゃんに襲い掛かります
にこ「先に手をだしたのはそっちだからね、恨むんじゃないわよ!!」ブンッ
バシュッ!
真姫「にこちゃん、それって…?」
穂乃果「さっき言ってた新スキル?」
にこ「お、おー…こんな感じなのね…」
ことり「自分で驚いてるっ!」
にこちゃんに襲い掛かるハイエナの一匹がまるで電気を打ち付けられたかのような音とともに弾き飛ばされます
それはにこちゃんを覆う碧の……山?
・飛騨燕岳:自身の体力の割合に応じたエネルギー状の剱山を地面から発生させる
具現化時にある程度の形状操作が可能
にこ「カ、カッコイイ…」ジーン
にこちゃんの足元からは碧色のトゲトゲのような、剣山のようなものが突如発生し、飛び掛かるハイエナを弾き飛ばします
それは同時に防御壁の役割もはたし、ハイエナ達を怯ませるには十分でした
その隙をにこちゃんは見逃さず、碧の剣山を盾に右手に小さな刃を形成するとスキルによって撃ちだす
斫り刃のエネルギーを最少にし、弾丸として蛮決射心で撃ちだす連携技
にこ「体力消費はかわらないけど、リキャストが1秒になってたからね、こういう使い方もあるのよ!」ドンッ ドンッ
にこちゃんの手から撃ちだされる弾丸がハイエナ達に降り注ぎます……しかし…
真姫「あたってないわよ!?」
にこ「むぅ、サイズを小さくしたら命中率が……」
しかしあきらかにハイエナ達の動きを牽制する事には成功したようです
そして反対側、凛ちゃんにもハイエナ達が襲い掛かろうとしていました
花陽「凛ちゃんっ来ました!」
凛「うん………」
4頭のうち2頭が凛ちゃんを左右から噛みつこうとそのするどい牙を剥きだして襲い掛かります
凛ちゃんも戦闘クラスで、その身体能力は向上してるらしく、特に脚力が強化されたと言います
だけど私は凛ちゃんのクラスがどのようなスキルを持っているのか知りません
そういえば誰も聞いていないのかな? と、一瞬そんな事を考えた私の目にそれは飛び込んできます
凛「んっ……にゃあぁぁ!!」グッ
花陽「っ!?」
飛び掛かるハイエナが凛ちゃんの脚に噛みつこうとした時、凛ちゃんが右手を前に差し出し何かを掴む動作を取る
すると足元にいたハイエナの体が強い勢いで引っ張られるようにして凛ちゃんの右手に吸い寄せられ、次の瞬間凛ちゃんに捕まれていました
凛「ごめんね、でも、凛には凛にしかできないことがあって、それをもう躊躇わないって決めたの!!」
花陽「凛ちゃ……」
凛ちゃんに首ねっこを掴まれ暴れようとするハイエナ。しかし次の瞬間……
バキバキバキッ!!
花陽「っ!?」
離れたところにいる私のところにまで響く音
それはハイエナの骨が砕かれる音でした
凛「ほ、ほらっ! こんな目にあいたくなかったら、もうあっちいって!」ドサッ
ゆっくりと凛ちゃんの手から崩れ落ちるハイエナ。すでに生きていないのは明らかでした
それはゴッドハンドである凛ちゃんのスキル…
・夢を掴む栄光の右手:中型クラスまでの対象を自身の手に引き寄せる。有効距離5メートル
・荒ぶる狂猫の波紋:手に触れる物にたいして強制的な弾性振動を引き起こし、破壊する
仲間が目の前であきらかに倒されたというのに、続くもう1頭は怯むことなく凛ちゃんに飛び掛かります
凛「もうっ!!」ガッ
花陽「えっ…」
それはあまりに速くて、とても私の目には追えない一瞬の出来事…
凛ちゃんの右足が綺麗に蹴り上げられている結果だけがどうにか確認できました
凛「これでもまだくるっていうなら……みんなに危害を加えようっていうなら、もう凛手加減しないんだから!」
残る2頭に怒鳴る凛ちゃん。その決意に満ちた瞳に、凛ちゃんの苦悩が少しだけ分かった気がしました
花陽「あ………」
しばらくして、上空からおそらく凛ちゃんによって蹴り上げられていたハイエナの1頭が落ちてきました
こちらも先と同様、もう動けなくなっています
にこちゃんや穂乃果ちゃんとよくアクションゲームで遊んでいる凛ちゃん
今回のサバイバルでもゲーム感覚で楽しもうとしている部分は私にもわかりました
だけどきっと凛ちゃんは……
凛「はぁ…ふぅ……んっ!」サッ
戦う意思を込めて構えをとる凛ちゃんに、ようやくハイエナ達は怯み、後ずさります
星空凛ちゃん。私の大親友で、とっても心の優しい女の子です
そんな彼女が啓示によって受けたクラス、そのスキルがこういうものだとは私も思いませんでした
無残な姿になったハイエナ達。スキルの威力なのか全身の骨が砕かれ、崩れた雑巾のように原型をとどめていません
きっと凛ちゃんのスキルは、優しい凛ちゃんにとって自身をも疑うようなものだったのでしょう
にこちゃんや海未ちゃんとはまた違う、直接相手の命を奪うスキル……
今朝、凛ちゃんが私に言った言葉を思い出します
花陽「凛ちゃん……」
凛「ん……大丈夫だよかよちん。覚悟はしてたし、予感もあったから……ん、凛は大丈夫!」
視線はハイエナ達からはずさず、凛ちゃん自身の決意と覚悟をしっかりと受け止めます
凛ちゃんが心を決めたというのなら、いつもの凛ちゃんでいられるように、私も全力で援護します!
にこちゃん凛ちゃんがそれぞれ迫るハイエナ達と戦っている頃、正面の海未ちゃんもまたハイエナと対峙していました
海未「ふっ、はっ!」ガッ ガッ
自身の強化された身体能力を活かし右手をすっと伸ばす海未ちゃんは、腕を刀に見立てて応戦していました
海未ちゃんって弓道や剣道、噂では合気道とか、なんか色々やっているそうです
しかし飛び掛かるハイエナを打ち払う程度の威力で牽制し、その瞳は奥で構えるリーダーに向けられています
絵里「海未、大丈夫なの?」
海未「応戦する分には。しかしよく訓練されている……といいますか統率されていますね」
絵里「そうみたいね…」
海未ちゃんはじっとその場で応戦するのではなく、徐々に距離を詰めたり、スキルの射程にリーダーを捕らえようと画策します
しかしリーダーを守るハイエナ達は絶対にリーダーをむき出しにはしません。1頭、守る事に専念しているのもいます
海未「無理に飛び込んでも脚の速さでは勝てません。さらに後方を狙われる可能性もでてきます」
絵里「小賢しいわね」
海未「なので、一つためしてみたい作戦があります」
絵里「なにかあるの?」
海未「ちょっとした騙し討ちです」
絵里「海未が騙し討ちだなんて……」
海未「正々堂々を問える相手なら私も考えますけどね、ですが今はそれ以上に……」
絵里「ええ、そうね…」
海未ちゃんにかわって絵里ちゃんが視線をおくる先、にこちゃんにエールをおくる穂乃果ちゃんがいました
穂乃果「いいぞにこちゃん、どんどん撃っちゃえ〜!」
にこ「ふ、ふふ、まだまだ余裕よ…っ!」ドンッ
真姫「調子のりすぎ! にこちゃんまたコンディションが黄色くなってるわよ!!」
海未「私達のリーダーがこの先に道を示そうというのです、それに全力で応えないわけにはいきません!」
絵里「そうね、どんな無茶ぶりをされるのか今からヒヤヒヤもんだけどね」
海未「ふふ……………では行きます!」
睨み合いが続く空気の中、海未ちゃんが行動を開始しました
海未ちゃんが騙し討ちというその作戦は…
海未「はあぁぁぁっ!」ダダダッ
ハイエナの群れに向かっての突進……え!?
走りながら海未ちゃんはその左手に弓、右手に矢のようなものを発生させます
スキルによって気の矢を放つ技ですが、その形をイメージするのに海未ちゃんは弓矢を具現化したのです
海未「行きますっ!」ダンッ
迫る海未ちゃんにハイエナのリーダーはすぐさま後退し、その前に1頭が付き添います
さらに2頭が海未ちゃんに左右から襲い掛かかります
しかしその牙が海未ちゃんに届く刹那、海未ちゃんは大きくジャンプしたのです
絵里「上空からの奇襲!?」
海未「そこですっ!」ヒュンッ
上からの攻撃には確かに防御をする術はありません、しかしハイエナ達も海未ちゃんの行動に対応するかのように動きます
落下地点とおもわれる場所に2頭が回り込み、1頭はなおもリーダーを庇っています
これではせっかくの攻撃も命中しにくく、着地するところを狙われてしまいます!
絵里「海未っ!」
上空から放たれた矢はリーダーとそれを庇う1頭のハイエナの間に着弾します。はずれました
さらに着地地点で待ち構える2頭が無防備になった海未ちゃんに飛び掛かります
海未「見えた!」
絵里「え、海未!?」
その声は着地地点ではない別の場所。海未ちゃんがジャンプした場所から聞こえてきました
それと同時に着地した海未ちゃんにハイエナが襲い掛かる……けど、その体が陽炎のように揺らぐ
あれ、分身ですか!?
スキルによって分身を操る技、残光を使い海未ちゃんは分身をジャンプさせていました
それと同時に自身は地面に伏せ、ハイエナ達の注意からはずれたのです。そして上空からの奇襲で崩れた陣形に攻撃します
絵里「あっ!」
しかしリーダーを守る1頭がその攻撃に反応し、その間に割って入りました。身代わりになるために
そして揺らぐ分身が本物ではないと悟った2頭がすぐさま伏せたままの海未ちゃんに向かいます
だからこその……騙し討ちでした
海未「申し訳ありません、ですが…!」スゥ…
陽炎のように揺らめいて消えようとしていた分身が一瞬にしてその身に質感を持つ
同時に伏せていた海未ちゃんの体が先の分身のように揺らめき、消えていきました
それは海未ちゃんの新しいスキルによるものでした
・極光:自身が作り出した分身と自身の場所を瞬時に入れ替える。このスキルを使用すると分身は即座に消滅する
もう守るものもいないリーダーを正面に捉えた海未ちゃんは、覚悟を持って矢を打ち抜きます
逃げる事もかなわない一瞬の出来事で、ハイエナのリーダーは海未ちゃんによって倒されたのでした
絵里「や、やったの?」
リーダーの断末魔は他のハイエナ達に衝撃を与えたようでした
凛ちゃんとにこちゃんがそれぞれ対応していたハイエナが突然その場から逃げ出します
そして伏せていた海未ちゃんに迫っていた2頭もリーダーの死を感じ取ります
しかし、ハイエナ達にはハイエナ達の事情があったのかはわかりませんが、逃げ出すハイエナ達の中に1頭、違うものもいました
絵里「え…?」
それは海未ちゃんに襲い掛かろうとしていた2頭のうちの1頭。それと一番近くにいたのは、絵里ちゃんです
他のハイエナ達が逃げ出した中その1頭だけはまだ戦意を失わずにいたのか、それとも仲間が逃げるための時間稼ぎかはわかりません
絵里「ま、まさか…ってっ!?」
海未「絵里!!」
最後の1頭が状況を見ていた絵里ちゃんに襲い掛かりました
戦う道を選んだ私達。それは戦闘クラスの三人にだけすべてを任せるわけではありません
そのための手段があるのなら、もう躊躇わない
支援
わかりやすい地の文でしっかりバトル感出ててすごいな 絵里「こ……んの!」ガッ
穂乃果「んやぁ!!」ゴッ
ドスッ
真姫「きゃあっ」
ことり「え、絵里ちゃん!」
飛び掛かるハイエナに押し倒される絵里ちゃん。しかし抵抗はしています。全力で
絵里「ん……うあ、気持ち悪い……」
穂乃果「大丈夫絵里ちゃん!?」
絵里「ええ……いつきても大丈夫なように、私も覚悟を決めたからね」
絵里ちゃんに覆いかぶさるハイエナの首には、絵里ちゃんが刺した真姫ちゃんのナイフがありました
そして頭には穂乃果ちゃんのプロテクトで硬質化されたリュックがヒットし、
その背中には後方から放たれた海未ちゃんの矢が刺さっていました
絵里「って、危ないわよ海未!」
海未「大丈夫です、外しません」キッパリ
穂乃果「心臓に悪いよー……」ヘタ…
絵里「ふ……ふふ……」
海未「ふふ」
穂乃果「あっ……はは、やったよ……」
迫る脅威には全力で抗うと決め、自分達の力を過信した私達
けれどようやく、自分達の力だけで苦境を乗り越えたのです
殺されることを拒否し、殺す事で私達は自分の身を守る
それがこの島でのサバイバルであり、ゲームの本質
だけど決して染まってはいけないこの世界の常識でした
穂乃果「疲れた〜……」
絵里「ふー、なんとかなったわね」
海未「絵里の指示のおかげでもあります、感謝しますよ絵里」
ことり「ありがとう、絵里ちゃん」
希「助かったわー」
穂乃果「ちょっと〜〜ほのかは〜〜?」
ハイエナ達の死骸、むせかえるような血の匂い
体中にまとわりつくドロと汗。帰る場所もない進み続けるサバイバルの中
私達はこの無人島にやってきて初めて、大声で笑い合うのでした
続く〜…… ちなみに「飛騨燕岳」ひだ・つばくろだけ と読みま…Zzz… 凛ちゃんは直接触れる分うみにこよりもさらに精神的に辛いかもなぁ…
心を決めたとはいえその辺りがまだ心配 http://img.2ch.net/emoji/2ch-cry.gif http://img.2ch.net/emoji/2ch-cry.gif
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地震なしってさあ、生きてる価値無いよな、板に寄生してだらけで対立煽りばかりする人間は自分が無いとか言うけどこの場合っていうのは自分が無いと言い訳して楽してるだけだよね、 これからも毎日元気にお過ごしください
だから何十回でも何百回でも水遁されて何百回でも何千回でも後悔して何千回でも何万回でも金銭難の地獄に叩き落せ
クソ対立煽りスレはそうしてついに潰えるんだよ、「原理サンカス……対立……して」といい 価値なしな奴らだからな まじで
こいつがどんなに悪行をしてきたことか、どんなに人の迷惑だったことかおまらも考えてみろよ 阿保(^ ^)
地震なしが全滅したらきっと世の中はより平和になることだろうなあ、と常日頃から考えてるよ俺は、地震保守スレの殲滅について真剣に考えてるよ俺は やっぱ
大体自演とかしてまでスレ作って何が楽しいのかが判らないよ、俺ぐらいになると何個ものクソ保守スレと対立してきたわけだが 見たら
そのたびにクソ地震なしの自演とクソたこやきもんじゃの自演とクソ携帯回線の自演とあからさまなクソ対立煽りが出てきてうんざりするわ、クソ地震は生きる楽しみもしらないのか 抱いて
自演は俺も何百回とやったことあるから言えるけどあれは全然つまらないよ、正直何が楽しいのかわからないまっとうな人間なら拒否反応しめすレベルのつまらなさだよあれは
地震なしってさあ、生きてる価値無いよな、板に寄生してだらけで対立煽りばかりする人間は自分が無いとか言うけどこの場合っていうのは自分が無いと言い訳して楽してるだけだよね、 これからも毎日元気にお過ごしください
そことをしちゃうあたりやっぱり人間から外れた人権が通用しないような障害者なんだなあ、と思うよクソ対立煽り地震なしは 消え失せろ
【末吉】Status ♣5 ♠Q ♥8 ♠7 ♠4 (1st.)HP: 1000 pts. たぶん(0)
0.55, 0.62, 0.57(2017.390625) Proc. [0.642516 sec.]
もしもししか見てないスレ
しかだけに
奈良大学いくのやめます いつものツンデレ保守はいいけどわざわざageんなよ /
真姫「ど、どう?」パァァ
にこ「おーすごい効果ね、みるみる疲れが消えていくわ〜」
真姫「よかった」
希「真姫ちゃんも回復魔法を使えるようになったんやね」
真姫「魔法っていうのかしら、これ……」
・オレンジ:対象のATPサイクルを活性化させる。同時に抗生物質の一部を変化し、糖質、ビタミンB2を生成する
戦闘後、それぞれ休憩しながら身なりを整えます
真姫ちゃんが新しいスキルを使い、にこちゃんを回復させています
私のようなエリア指定型ではないけど有効射程が広めの単体回復だというのはにこちゃんによる説明
ただ一つ、このスキルには問題……というか副作用があるのだそうです
真姫「ようは魔法で治すって言うよりも、疲労回復に必要な成分、クエン酸とかを高速循環させるのね」
絵里「ああ、それで同時にビタミンB2も接種するってわけね」
海未「サイクルに必要な糖質なども成分変化で生成するわけですね」
穂乃果「海未ちゃん達は何言ってるの?」
凛「わかんないにゃ」
にこ「うう、疲れはなくなったけど…お腹空いた……」
真姫「エネルギーを回復に必要な成分に作り替えるから、同時にちょっと空腹になるのがネックね」
希「簡単にいえば回復するけどお腹がすくってスキルなんやね」
にこ「なーんか中途半端な回復ねぇ……」
真姫「むぅ……」
絵里「こら、治してもらっておいてその言い方はないでしょ」
にこ「ん、ごめんごめん、ありがとね」
絵里「それに体力だけじゃなくて、その細かい擦り傷とかも治ってるんじゃない?」
にこ「あら、ホントね」
真姫「オマケだけど短時間で治りそうな細かい傷も同時に治しちゃうってことよ」
にこ「おー、スタミナ回復と同時に弱ヒールつきってすごいじゃない真姫!」
真姫「えへへ」
花陽「んしょっと…」
ことり「…………」
花陽「シーツ片付けたよ、ん、ことりちゃん?」
ことり「あ、うん、ありがとう」
花陽「どうかしたの?」
ことり「ん……」
ことりちゃんは先の戦闘で私達に倒されたハイエナ達の亡骸を見つめていました
やっぱり襲われたとはいえ、奪った命に対して想うところがあるのでしょうか…
ことり「んー…やっぱり食べられないかな…」
花陽「えっ?」
ことり「あ、えっとね、昨日のカニさんみたいに栄養あるのかなって思ったんだけど…」
花陽「もしかして、それって特性ですか?」
ことり「そうみたい、集中すれば食べられるものの栄養価値が見えるの。大まかだけど」
花陽「そうだったんですね。とてもステキな特性です」
ことり「でもこの子達はちょっと雑食すぎて、微量な毒素が体内に溜まってるみたいだから…」
花陽「いちおう真姫ちゃんが毒素を消すことが出来るみたいだけど…」
ことり「それでも……ねぇ?」
花陽「あまり進んで食べたいとは……」
絵里「それで穂乃果、さっき言ってた考えってなにかしら?」
穂乃果「うん、それなんだけど……」
私達がこの島で生き抜くうえで必要な、これから先の事について考えがあると穂乃果ちゃんは言いました
それのおかげでふっきれたという部分もあるので、みんなこれには注目します、だけど……
穂乃果「その前に、ルビィちゃんがどうしてるか、見に行かない?」
絵里「え、黒澤さん?」
希「そういえばさっき銃声がしてから音沙汰ないねー」
海未「穂乃果の考えというのは、黒澤さんにも関わる事なのですか?」
穂乃果「ううん、ただ今の私達ならきっとルビィちゃんの力になってあげられると思うから」
ことり「そうだよね、それにやっぱり心配だもん」
凛「凛も行きたいっ!」
絵里「そうね、どのみち進路予定だった道だし」
穂乃果「うん、もうじき暗くなる前に早く行こっ!」
こうして再び活動を開始した私達
たった2日でいろんな感情がグルグルして、全然落ち着かないのはあります
それでも意志を明確にし、覚悟を決めた今では何事においても全力でぶつかっていけるような、そんな気がします
希「落ち込むエリチもあれはあれで可愛げがあったなー」
にこ「ん、なんの話?」
絵里「ちょっと希!」
つい数分前まで命のやり取りをしていたけど、この空気はいつもの私達です
大丈夫……かな?
凛「かよちんどうしたの?」
花陽「ん、ちょっと考え事です」
凛「難しい事?」
花陽「杞憂だと思うから、平気っ」
真姫「…………」
凛ちゃんも平気そうですし、今はこれでいいと思います
/
絵里ちゃんが見つけたという海岸に到着しました
しかしそこには誰もいませんでした。ルビィちゃんも、謎の集団さんも…かわりに……
穂乃果「うわ………」
絵里「……………」
にこ「これって……」
白い砂浜に横たわっているのは、あの大きなジュナの死体でした
私達の心を一瞬で砕いた強敵です……だけどもう動くことはありません
海未ちゃんと絵里ちゃんがジュナの死体を調べます
その間私達もルビィちゃんを探すために周辺を調査することにしました
希「すごいね、ここから見ても大きさがよくわかる…」
ことり「そうだね……」
少し浜辺を捜索し、足跡などを探す私達
誰もいない貸し切りビーチのようで、本当なら穂乃果ちゃんや凛ちゃんが喜び駆け回ってそうです
だけどすぐ傍にはとても大きなジュナの死体。さっき私達が殺されそうになった存在……
あまり離れすぎるのも危険という事で浜辺の探索は一端置いておいて、集合します
真姫「たくさんの足跡があったから、誰かいたのは確かなようだけど…」
穂乃果「何かあったのかな、森のほうへ移動したみたいだったよ?」
にこ「他に痕跡がないから、ここにいた集団っていうのと黒澤さんが一緒に行った可能性は高いわね」
ことり「ちゃんとお友達と合流できてればいいな」
凛「うん」
絵里「やっぱりあの銃声かしら?」
海未「可能性としては…専門的な事はわかりませんが明確な外傷が銃弾によるものしかありませんし……」
絵里ちゃんと海未ちゃんが調べた結果、やはりあの時の銃声はジュナと交戦した際によるものと推察されます
直後にルビィちゃんがいなくなったのもやはりAqoursの仲間と合流できたからでしょうか
でも無事に合流できたのならあの子の性格的にこちらに一言言ってきそうな感じだと思いましたけど、何か事情があったのかな?
絵里「それもこれも、今ここで話してたって拉致があかないわ」
穂乃果「無事ならいいんじゃないかな、そのうちまた会えると思うし!」
希「そうやね〜」
にこ「で、黒澤さん探しは終わりとして、今日はどうする?」
どうするというにこちゃんの言葉はすでに隠れかけている太陽を指してのものでした
太陽と取り敢えず呼んでますが、あれにもちゃんと名前があるのでしょうか?
絵里「ちょっと待ってね、もう一度サーチして……」
穂乃果「そろそろキャンプの準備?」
海未「暗くなってからでは何かと不便ですからね」
絵里「オッケー、この先にある海岸沿いの端に良さげな場所があったわ」
にこ「じゃあそこまではがんばるか……」
真姫「疲れているならまたオレンジかける?」
希「空腹が原因で疲れてると、どうなるのか……?」
真姫「実験ねっ!」
にこ「しなくていいわ!」
今日は絵里ちゃんの見つけた場所へ行き、そこでキャンプをすることになりました
私達にさまざまな影響を与えたジュナの死体を離れ移動します
花陽「……………」
ほんというとですね…少しだけ、やっぱり思っちゃいます
先のハイエナ達もそうですが、死んだら終わりです。この無人島じゃ誰もお葬式なんてしてくれません
野ざらしのまま朽ちていくか、誰かの糧になって終わり……
ことり「どうしたの?」
花陽「ん……ちょっと……」
立ち去る前にもう一度だけ、横たわるジュナを見つめる
きっとすごく身勝手で、甘い感情なんだろうと思います……だけど思ったことは否定しません
私はこんなところで朽ちていくジュナを、可哀想だなって……少しだけど、思ったんです
だったら供養でもする? という考えはでません。これから先の事を見据えても、その気持ちはいつか抱えきれなくなると思うから…
他のみんなもそう考えているのかはわからないけど、それが私なりに明確にした心の在り方でした
ことり「?」
花陽「もう大丈夫です、早く行きましょう」
ことり「うんっ」
こうして私達のサバイバル生活二日目はとても大変だったけど、とても大きな意味を持った日になりました
二日目という事で考えればまだまだ先は長いけど、昨日と今日、今日と明日ではまったく違うものになっているはずです
穂乃果ちゃんがゲームで例えたレベル1という言葉。それで言うなら私達は今日、たくさんレベルアップしたのです!
更新乙
Aqoursの面々は一度襲われてるから容赦なく対応できたってところかな
本格的な邂逅あるのかわかんないけど楽しみだ すげー好きなSSなんだけどほんとに読んでるやつ少ないんだな
少数派のおれらのためにがんばってくれ B級アニメクロスのC級SSですから
てかそんなこと言うとまたエタるゾ☆ 俺の少し甘くて若干壮絶だった青春時代の話を聞いて欲しい [無断転載禁止]©2ch.net
http://hayabusa9.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1499094224/
なんでこいつって音楽ネタばかりなんだろ /
なんとか陽が隠れきる前にキャンプの準備をする私達
にこちゃんとことりちゃんが夕食を担当し、私と凛ちゃん希ちゃんとでテントを張ります
絵里ちゃん真姫ちゃん穂乃果ちゃんの三人は周囲で野草を集めに出ています
この辺りにも昨日使ったあの可愛い名前の草が群生していたので、夜間の防犯のために採取するそうです
そして海未ちゃんが、せっかくなのでと新しいことにチャレンジしています、それは……
海未「お、おお…!? ん……逃げられましたか……?」
海岸沿いの端、砂浜からまた断崖絶壁へと少しづつ変わる波打ち際で、持参した釣り竿を使っての食材集めです
直接釣りに詳しい人がいない私達。釣り竿は海未ちゃんが、細かい道具などは穂乃果ちゃんが用意したそうです
こっそりと持ってきたという釣り入門の本を片手に海未ちゃんが奮闘します
海未「一言に釣りと言っても、磯釣りや海釣り等で細かな注意点がたくさんあるのですね……」
結果から言うと初めての釣りは惨敗に終わったようです
だけど負けたままは悔しいのか、夕食の席でも海未ちゃんは釣りの本を読み込んでいます
希「なんやハマったみたいやね……」
海未「ここにも書いてありますが、釣れない事でおもしろみを味わえる釣り道……奥が深い……」
絵里「まあ、ほどほどにね」
穂乃果「そのうちカジキマグロとか釣っちゃう?」
海未「磯釣りと川釣りがメインになると思うので難しいですね。沖合などは望めそうにありませんし」
ことり「そもそもどんなお魚がいるのかな?」
凛「わかんないけど凛はなくてもいいよ?」
今日の夕食は具だくさんのクリームシチューです。あと欲しい人用に白いご飯
この場合ほぼ私のために用意されたと言っても過言ではないでしょう。勿論ありがたくいただきます
中央に大きな鍋を置き、それをぐるっと囲む形で座ります
それぞれ会話を楽しみながら食事をする中、穂乃果ちゃんが大事な提案があると話をきりだします
ハイエナ達の襲撃時に言っていた考えがあるという事についてでした
穂乃果「ほのか考えたんだけどね、今日のハイエナさんとの戦い、みんなはどう感じた?」
にこ「いきなり抽象的ね」
ことり「どうっていうか、みんな初めての事だから必死だったと思うけど…」
穂乃果「そう、まさにそれだよことりちゃん!」
ことり「へ?」
穂乃果「サバイバル生活そのものが初めての事で、さらにファンタジーな世界での戦い…」
真姫「まぁ普通は体験できないわね」
穂乃果「この世界での常識に染まらない事っていうのは大事だけど、みんな考えてみて」
穂乃果ちゃんがみんなに問いたい事……それは私達らしさという事でした
希「スクールアイドルとして呼ばれたわけやけど、今のトコアイドル関係ないやんね」
にこ「そりゃーサバイバルなわけだし…」
絵里「そういえばどうしてスクールアイドルを呼びつけたのかしら?」
穂乃果「あの女の子、会えるなら会ってみたいね」
海未「穂乃果、話がそれてますよ」
穂乃果「んっと、つまりね、ここにきたほのか達は初めての事ばかりで、それは明日からも続いていくと思うんだ」
絵里「明日というかこの一か月は二度と体験できない貴重なものになりそうね」
穂乃果「ここの生活の事を考えるのは勿論大事で、それって強制的に非日常を意識させられてるなって思ったの」
真姫「この世界に染まらないっていうのが難しいって事?」
穂乃果「今はまだ平気かもしれないけど、これから先もっといろんな体験をしたらわからないよ……」
にこ「穂乃果の言いたい事もわかるわ。生き物を殺す事を考えないようにしてたって、今日のような敵がいる以上関わり合いはあるもの」
凛「…………」
絵里「実際もう私達は命がけっていうの、体感したしね」
希「ますます主催者がなにさせたいのかわからへんね」
穂乃果「だからね、いつもの日常を忘れないように、ほのか達らしい事をするといいんじゃないかって思って」
海未「それが言っていた考えというものなのですね」
ことり「それは?」
穂乃果「このサバイバル生活の間にね、曲を作らない?」
真姫「え…曲?」
穂乃果「そう、新曲!」
穂乃果ちゃんが提案するのは、私達がもっとも私達らしい瞬間、スクールアイドル活動をするというものでした
明日無理に作り上げるんじゃなくて、この一か月のあいだに…スクールアイドルである日常を忘れないために
私はこの提案、とてもステキだなと思いました。殺伐とした事をずっと意識するよりとてもいいです
ことり「確かに歌詞や振付なんかは覚えていられるけど……」チラ
真姫「曲の事なら大丈夫よ、全体的なイメージとしてなら譜面とかなくても持ち帰れるわ」
穂乃果「ここできっちり完成させなくてもいいの。戻ってからそれぞれ詞と曲を合わせてもいいし」
希「なるほど、意識の片隅にうちららしさをつねに残しておくって事やね」
凛「凛はそれ賛成! 作りたい!」
絵里「ふむ……よさそうな提案だけど、どう?」
海未「私も穂乃果の提案には賛成です。それに穂乃果が本当に言いたい事を示すのならそれは完成させるのが目的ではないですよね」
穂乃果「ん、何言ってるの海未ちゃん、1曲といわず可能な限り作りたい」
海未「あ、あれ……んーまぁそれもアリといえばアリですが…」
きっと海未ちゃんは気持ちの持ちようが大事という事を言いたかったのだと思いますけど、穂乃果ちゃんは、
穂乃果「やるからには、きっちりやりとげたいよ?」
ことり「ふふ、穂乃果ちゃんらしいね」
勿論、その事ばかりを考えていてはこの世界の常識に押しつぶされると、絵里ちゃんが釘を刺します
なのでまずはここの生活に慣れるためにも当面はサバイバル優先です
そうして今のような夕食時や、一日の終わりにそれぞれが話題に出すくらいが丁度いいかもということです
そして少しづつだけどみんながこの世界での生活で感じた事を詩にして、そして曲になればいいと
こうして私達のサバイバル生活での活動目的が一つ、追加されることになりました
昨日と同様、今日も三人一組で火の番をしながら交代で就寝します
特に理由もなければ組み合わせは同じでいいかという絵里ちゃんの提案に、凛ちゃんが意見しました
凛「ちょっと……凛、かよちんと一緒がいいにゃ」
という凛ちゃんの申し出により、他に意見がなければ組み合わせを変更する事になりました
私自身も特に断る理由もないので凛ちゃんと一緒を了承しました
そして新たな組み合わせの後、公平なクジの結果私と凛ちゃんと希ちゃんの組が最初に番をします
凛「ごめんねかよちん、凛の我儘で……」
花陽「ううん、私も凛ちゃんと一緒は嬉しいし、いいよ?」
希「よろしくなー二人とも」
穂乃果「トランプで遊ぶ?」
ことり「そんなの持ってきてたんだね…」
にこ「これもらしいって事かしらね……」
真姫「海未は今晩中にそれ全部読むの?」
海未「読んでおくだけでもやはり違いますからね」
絵里「釣りねぇ……おもしろいのかしら?」
絵里ちゃんと海未ちゃんは今日も同じ組のようです
持参した釣り入門の本を読破し、明日にはリベンジをというのが海未ちゃん個人の目標だとか
他の組がそれぞれのテントにて時間を潰したり就寝する中、私達もそれぞれ時間を潰します
希ちゃんは自身のクラス本「ハピネスディーラー」を開いて何やら考え事をしています
私は真姫ちゃんに借りた文庫本を少し読んでおこうかなと、コーヒーを片手に寛ぎます
凛ちゃんはその横で私をじっと見つめています
………えっ?
花陽「えと……凛ちゃん?」
凛「どうしたの?」ジー
花陽「…………」
それはこっちの台詞だよ? と口にだしそうでしたけど、あまりに素の反応が返ってきて戸惑ってしまいます
凛ちゃんは自分のチェアをズズイとこちらに寄せ、特に何かをするわけでもなく私を見ています
それが凛ちゃんなりの時間の潰し方、寛ぎ方なのかなと思い気にせず本を読もうと思います
凛「……………」ジー
花陽「………」
花陽「できるわけないよ?」パタン
凛「あれ、本読まないの?」
花陽「凛ちゃん、何か私に言いたい事とかあるの?」
凛「んー……そういうわけじゃないけど……」
どうやら何かあるみたいだけど、この歯切れの悪さから察するに……ふむふむ
希ちゃんは本を読むのに夢中なのか、こちらのやり取りは気にしていません。ということで…
花陽「何か言い難い事?」
凛「…………」
今度は私が凛ちゃんを見つめ返すと、プイと顔を背けられます。ふむふむ、なるほどなるほど
凛ちゃんとの付き合いは長いので、こういった事も過去にはありました
それは小学校の頃から中学校の終わりまで何回かあった事で、その時の凛ちゃんはというと……
花陽「甘える?」
凛「にゃ〜」カタッ
花陽「わっ」
やっぱりそういう事だったようで、私の一言に凛ちゃんはチェアから立ち上がると素早く私を背後からぎゅっとしてきます
凛ちゃんがこういう風に甘えてくる時は、決まってツライとき……悩みがある時……わかっていてもどうにもならない時…
そうか……やっぱり凛ちゃん……
凛「んー……」ゴロゴロ
花陽「くすぐったいよー……」
後ろからぎゅっとしてくる凛ちゃんの手をそっと掴むと、今の凛ちゃんの状態がすぐにわかりました
花陽「凛ちゃん………」
凛「変だよね……でもね、頭ではわかってても治らないんだ……」
表情はいつもの優しい凛ちゃん。だけど心の奥底にある、思い…苦悩が現れていました
凛ちゃんの手がずっと小刻みに震えています。思い当たる事なんて、一つしかありません
凛「凛もね、みんなと同じようにやる事をやって、それでいっぱい助け合っていけるって…でもね…」
花陽「うん………」
凛「手にね、ずっと残ってるの……あの時の感触……ましになったかなって思ってもふとした瞬間に…また……」
花陽「うん…」
凛「だからお願いかよちん……今日、ずっと凛の手を握っててくれる?」
花陽「うん」
凛「凛が寝るまで、ずっと握っててくれる?」
花陽「朝までずっと握っててあげる」
凛「もし…もしね、変な夢とか見て、どうしようもなくなったら…かよちん……」
花陽「私がぎゅってしてあげる。凛ちゃんが安心して眠れるように」
凛「ん……ありがと…かよちん……」ギュ
花陽「お安い御用です」
私が凛ちゃんにしてあげられることなんて少ないけど、それでも凛ちゃんが笑顔でいられるなら……
希「////」
凛「…………」
花陽「………」
ふと視線を感じるなと思い目をやると、本で目元まで顔を隠した希ちゃんがじっとこちらを見ています。ガン見してます
まぁ、そうなりますよね……
希「うち今日どこで寝たらいいん?」
花陽「いや、一緒ですよ」
希「うちそんな空気の中で寝るん?」
花陽「寝るまで手を握っててあげます」
凛「希ちゃんもギュってする? かよちんギュっとすると気持ちいいよ?」モギュー
花陽「凛ちゃん!?」
希「うん、する〜」タッタッタ
花陽「えぇぇぇぇ!」
結局この日は二人に左右から挟まれるようにして寝る事になりました
凛ちゃんにどのような影響があったかは本人のみ知るところですが、手の震えは少し落ち着いたようでした
そしてこの時ふと感じた事が次の日明確になり、私達はさらなる問題に向き合う事になるのでした
更新乙です
凛ちゃんやっぱり気にしてたんだね…
でもやっぱりりんぱなは正義だなぁ 同一人物による怒濤の六連投
大阪国際大学行こうかな
ここだけの話大阪国際高校には受かってた そっちに行っとけば良かった /サバイバル三日目 昼
私達はスクールアイドルである前に、年頃の女子なのです
いくら仲間内しかいないと分かっていても、見られたくないものというものはあります
だけどどうする事もできない現状に、ストレスが溜まっていくのも仕方がないのです
ことり「うぅ………」
真姫「…………」
絵里「ぅぅ………」
初日におトイレ問題で騒いでいたのが可愛く思えるほど、私達は迫る窮地にどう対処するかを考えないといけません
凛「やっぱり簡単には見つからないねー、お宝」
穂乃果「これで見落としてたらって思うと……」
ほのりん「ひえぇぇ」
凛ちゃん穂乃果ちゃんは元気です。まだ……まだ影響は少ないのでしょう
海未ちゃんは周囲の警戒と探索をするついでに手にした釣りの本に目を通す
にこ「どんだけ気にいってんのよ」
海未「今日の晩御飯に期待していてください!」
探索自体は順調に進み、私達は島の外周北半分をクリアしていました
当初の目標としては最初の一週間で島の全容を把握とありましたが、今の調子だと余裕を持って達成できそうです
しかし……ああ、やっぱり私も少しきついです……
ことり「痒い………」モサッ
真姫「口にだして言わないでー……」
今日の探索はとにかく順調で、大きな動物に遭遇する事もなく、サクサク進みます
その分意識がずっと体の事を考えさせてくれます
無人島サバイバルにおいて……いいえ、乙女にとってこれほど過酷な問題が他にあるでしょうか!?
絵里「うぅ…気持ち悪い……」
真姫「ちょっと絵里もやめてよ、よけいに感じちゃうでしょ!」
ことり「お風呂……はいりたーい……」
私のようにメイクがんばってようやくマシになる庶民顔と違い、何もしなくてもオーラ全快の真姫ちゃんことりちゃん絵里ちゃんでさえボロボロしてきました
髪もボサついてドロだらけに擦り傷だらけ……ついでにちょっと体臭も……
夕べ凛ちゃん希ちゃんとくっついて寝た時に感じたのです。あ、ちょっと臭っちゃうかなって……
絵里「てゆっか、なんであんた達はそんな元気なのよ……」
凛「ん? 凛は平気だよ?」
穂乃果「同じく」
海未「私も少し思うところはありますがそこは精神統一ですよ、絵里」
絵里「そういう問題?」
希「にこっちも平気そうやね。普段から慣れてるん?」
にこ「ぬぅわんでよっ! ガマンしてるに決まってるでしょ!」
これもまた一つ、私達にとっての初めての体験です
お肌のお手入れなんて日常の一環としてやっていた事なのに、数日何もしないと私達はこんなにも汚れてしまうのですね
ことりちゃんの綺麗で艶のある髪も少しゴワついてきています
まだ三日だというのにもうこの状況。正直違う意味で逃げ出したくなります
勿論なんの対策もしてこなかったわけではなく、汗を抑えるシートや制汗スプレーも少しだけど持ってきました
多少の日焼けや肌荒れは覚悟していましたし、リセットを信じるしかないと思っていました
だけどお風呂に入れないというのがここまで私達の精神を蝕む事になるとは……
ことり「ねえ絵里ちゃん……持ってきたお水でお風呂はいろうよ〜」
真姫「それかお湯で体を洗いたい……」
絵里「んー……そうしたいけれど……」
実際に九人分のお風呂を用意するとなるとすごい量の水を消費することになります
まだ拠点となる場所も利用可能な水辺も見つけていない以上、節約は大事で…
絵里「今晩、タオルを濡らして体を拭くくらいはしたいわねぇ……」
ことり「お風呂〜」
海未「ことり、我慢ですよ!」
希「……………」
/サバイバル四日目 朝
体を拭くだけでも随分と気持ちが楽になった夜から明けて四日目の朝です
無人島の東側を南下するルートで今日もがんばりたいと思います
そんな中、先を見据えて思い切った行動にでたのが希ちゃんでした
希「エリチ、ちょっと真姫ちゃんのナイフ貸してくれへん?」
絵里「いいけど、なにするの?」
希「毎日晴天続きで、まとわりついて気持ち悪いからね……」スッ
絵里「えっ」
朝食を終え、さあ今日もがんばって探索だというところで、希ちゃんが真姫ちゃんのナイフを手にし、
その長くて綺麗な髪を首元からバッサリと切ってしまいました
ことり「の、のの、希ちゃん!?」
希「ん?」
穂乃果「希ちゃん、どうしたの!?」
希「だって暑いし、どうせ元に戻るんならいいかなって」
ことり「で、でもでも、せっかくの綺麗な髪が……」
希「逆にこういう機会でもないとショートの感覚なんて味わえないからすごい新鮮かも」
凛「ショートの希ちゃんも可愛いにゃ〜」
希「ふふ、ありがとう。いやーそれにしても涼しいわ〜」
確かに希ちゃんやことりちゃんは特に長い髪をしていて、汗やドロでベタつく感触は嫌なものだったと思います
それでもことりちゃんは切るという選択肢など毛頭なかったのか、ただただ希ちゃんの行動に驚きます
そんなことりちゃんの横をそよ風に乗った希ちゃんの髪が舞い踊る
希「ことりちゃんも切っとく?」
ことり「い、いい、切らない〜!」
絵里「ふむ、その手もあるか……」
希「エリチもしんどくなったらおすすめするよ。今しかない体験ってことで」
にこ「それにしても短い希ってホント新鮮っていうか、別人ね」
私や凛ちゃんくらいの髪になった希ちゃんは、もともとある元気で明るいイメージがさらにシャープになった感じです
確かにこれはこれですごく可愛いかも
希「海未ちゃんはどう、スッキリするよ?」
海未「いえ……私は大丈夫です……」
希「まだ落ち込んでるん?」
海未「そういうわけでは……」
にこ「最初からそんな上手くいくようなものじゃないんでしょ?」
海未ちゃんは今元気がありません。理由は新しく始めた釣りが上手くいかないから
昨日もキャンプの準備中に食料集めとリベンジしたようですが、またしても惨敗だったようです
海未「微妙なアタリは感じるのですが、すぐにバラしてしまって…まるで向こうにすべて見透かされているような…」
真姫「こっちの魚は頭がいいってこと?」
海未「そう……なのでしょうか、とにかくまるで釣れる気配がないのです……」
穂乃果「ルアーが合わないって事が原因かも?」
海未「そう思って色々ためしたのですが、どれも同じで……」
海未ちゃん曰くどの手法で挑んでも微妙なアタリ、揺れ幅は感じるけどそれだけで、そこから先の反応がない
本当にこちらの狙いがわかっていてあざ笑うかのようなと……さすがにちょっと考えすぎだと思うけど…
とにもかくにもキャンプの準備に関して何の役にも立てなくて申し訳ないと海未ちゃんは落ち込んでいます
それを責める人がいないのはわかっていますが、なんとか釣りが上手くいって海未ちゃんが元気になりますように……
四日目も探索は順調に進みました。正直身体的な問題がどんどん大きくなっていく予感だけが膨らみます
夕食後に熱いお湯で体を拭く。今はこれだけで耐えていますが、圧し掛かるストレスはそのうち心を疲弊させてしまう
用意した着替えもそろそろ洗濯を視野にいれないととても回せそうにありませんでした
スケジュールを管理している絵里ちゃんもその事は良くわかっているようで、対策はしていくという事でした
穂乃果「このままいくと明日には島の外周、ぐるっと回っちゃうね」
絵里「そうね。そうしたらいよいよあの森へ探索の手を伸ばすわけだけど…」
にこ「あ、ちょっと絵里、それまだ入れるのはやいわよっ」
今日の食事当番の三人が料理に勤しむ中、釣りに出ていた海未ちゃんが戻ってきました
予定していた時間からはかなり早い帰還です。しかし海未ちゃんは釣り道具を持っていませんでした
海未「ことり、真姫、少しいいですか?」
真姫「ん?」
ことり「海未ちゃんもう釣りは終わったの?」
凛「今日もダメだったにゃ?」
希「凛ちゃんストレートやねぇ」
手ぶらで帰ってきた海未ちゃんを見て、みんなは今日も釣りが上手くいかなかったのかと思いました
しかし海未ちゃんはそれとは別の意味で険しい顔つきをしていました
絵里「どうかしたの海未?」
海未「確かめたいことがあって、それにはことりと真姫の協力が必要なのです」
ことり「私?」
真姫「なにかあったの?」
海未「出来れば絵里も来てくれると助かります」
海未ちゃんが食事当番だとわかっていて絵里ちゃんも連れて行こうとする事に、何かあったのかと皆が思います
だけど鍋を火にかけたまま全員で移動するのも危ないという事で、代わりに希ちゃんが残る事になりました
なんだかちょっと気になるので私も行こうと思います
凛「かよちんも行くの? なら凛もいく〜」
花陽「いいかな?」
海未「何かある可能性もないわけではないので、助かります」
穂乃果「海未ちゃん、大丈夫なの?」
海未「すぐに戻りますよ」
この無人島の東側は海岸がなく、ずっと険しい崖のような絶壁が続いています
その中でも比較的低めの場所で釣りに挑戦していた海未ちゃん
いつも微妙なアタリを感じるまではいくのに、どうしてもヒットしないといいます
私は釣りの知識なんてさっぱりなのでそういうものなのかなと、深く考えることは無かったと思います
しかし海未ちゃんは一つ……たった一つですがものすごい仮説を立てていました
海未「ことり、これを…」
ことり「なにー? ん、お水?」
海未「ルアーにコップを括りつけて海に沈め、海水を汲んでみたのです」
ことり「なるほど……で、これをどうすれば?」
海未「ことりの特性でこれを分析できませんか? 単純な話、飲めるかどうかです」
絵里「それ海水でしょ?」
海未「見た感じは私達の良く知る海水ですが、この無人島においてその決めつけは危険だと思いまして」
ことり「ん、ちょっと貸してね」
海未ちゃんから海水の入ったコップを受け取り、じっと目を凝らし見つめることりちゃん
一体どういう事なのかな?
ことり「飲めるみたいだけど……なんだろう、塩分とかそういう海水特有の成分が極端に少ないような…」
絵里「人体に害はないってこと?」
ことり「うん……だけど綺麗な水ってわけでもないから、おすすめはできないかも……」
海未「ふむ………」
海水の分析結果に思うところがあるのか、次に海未ちゃんは服を脱ぎだしました
って、えぇ!?
真姫「ちょっと海未、まさかとは思うけど……」
絵里「海に潜るつもり?」
凛「ええー、ここから飛び降りるにゃ!?」
海未「そこは大丈夫です」スゥ
ことり「わっ、海未ちゃんが増えた!」
迷いなく服を脱ぎ、下着姿になった海未ちゃんがスキルの残光を使います
絵里「なるほど、分身をこちらに残しておいて、瞬時に戻れるようにするのね」
海未「はい。有効射程距離も確認しているので大丈夫です」
真姫「それで、海に潜って直接魚を捕まえようって事?」
海未「いえ、あくまで確認です。ではっ…」タンッ
ことり「海未ちゃんっ!」
絵里「こうと決めたら行動はやいわね」
何かの確認のためにと、海未ちゃんが分身を残して海に飛び込みました
わりと低めといっても海面まで5メートルはあろうかというところを一切躊躇うことなく飛び込めるのはすごいと思います
真姫「で、私はなんで呼ばれたのかしら?」
絵里「おそらく海に飛び込んだ影響で体に変な毒素とか持ち帰ってしまった場合とか、コンディションの確認とかじゃない?」
真姫「それでも随分無茶するわね。即効性の致死毒だったらどうするのよ……」
凛「そ、そんな怖いのがあるの?」
真姫「現実にあるくらいだし、ここにも可能性がないわけじゃないわ」
ことり「う、海未ちゃ〜〜ん……」
そろそろ陽も隠れて辺りが暗闇に包まれようとしている頃、海未ちゃんが戻ってきました
傍でじっと立っていた海未ちゃんの分身がふらついたかと思うと、そこには海に飛び込んだ海未ちゃんが立っていたのです
絵里「海未!」
ことり「お帰り海未ちゃん」
海未「はぁ、はぁ……ふぅ…」
真姫「だ、大丈夫海未?」
いくら無人島の気候が温暖といっても夜に濡れたままでは風邪をひいてしまいます
海未ちゃんの確認というのも気になりますがまずは戻って体を拭かないと
凛「凛、先に戻ってタオル用意しておくにゃ」
絵里「お願い……海未?」
海未「……………」
ことり「海未ちゃん、どうしたの?」
真姫「コンディションは少し消耗してるけど、どこか体に変調を感じる?」
海未「いえ……大丈夫です……」
戻ってきた海未ちゃんはやはり疲れているのでしょうか、ずっと俯いて……何か思いつめているようにも見えました
穂乃果「海未ちゃんがーー!!」
希「下着姿でーーー!!」
にこ「ズブ濡れ〜〜〜!?」
騒ぐ三人をよそに凛ちゃんが大きめのタオルを海未ちゃんに差し出し、焚火の傍に椅子を用意します
海未ちゃんにずっと付き添っていた真姫ちゃんも、とりあえずは大丈夫と診察を終えます
にこ「なにがあったのよ?」
穂乃果「海未ちゃん海に落ちたの?」
絵里「海未が調べたい事がるからって潜ったのよ」
希「とりあえず温かいもの淹れるわ、お茶でいい?」
海未「ありがとうございます…」
ホントならこの後みんなで夕食というところですが、先に海未ちゃんの話を聞こうという事になり、みんな椅子に座ります
淹れたてのお茶を手に持ち、海未ちゃんは俯いてまだなにか考え事をしているようでした
訂正:絵里「海未が調べたい事がるからって潜ったのよ」=絵里「海未が調べたい事があるからって潜ったのよ」 絵里「海未、意見はまとまった?」
海未「はい。すいません手間をとらせて…」
絵里「そんなの気にしなくていいのよ……それで?」
自分の見てきたもの、確認してきたものをどう私達に話すかを整理していた海未ちゃんが語ります
それは一つ可能性、推察の域での話…
海未「まず見てきた海の中の状況から話しますね」
絵里「中の状況?」
海未「結果から言えば、海の中には何もいませんでした」
ことり「……? お魚さんはいなかったってこと?」
海未「いえ、何もいなかった……何も無かった。生物というか、生き物の気配がなかったのです」
海未ちゃんの話が、どこか気楽に構えて聞いていた私の心にズンと響きます
真姫「いなかったって……」
海未「私のスキルで閃光というものがあるのですが、これは使用時に淡い光を放つのですけど……」
海未ちゃんはその閃光を海の底にめがけて放ちましたが、その時に照らされる周囲の光景に、恐怖を覚えたそうです
穂乃果「海未ちゃん………」
海未「本当に、何も無いんです。おそらくですが、クラス特性で身体能力が向上したおかげで感じ取れたのかもしれません」
絵里「生き物の……気配?」
海未「はい。何度か閃光を使い、様々な方向を照らしましたが、どこに向けても何も無い……」
光が暗闇に呑まれていくのを見つめる海未ちゃん
暗い闇が広がる海の中ただ一人。そんな状況に陥ったら、私ならきっとパニックになってまともな思考ができなかったと思います
凛「え、じゃあ釣りの時に何か引っかかっていたっていうのは?」
海未「それは……根っこです」
絵里「根っこ?」
海の中で何も無い恐怖を感じ、海未ちゃんは島の岸壁に触れる事により自身の存在を確認し、心を落ちつけようとした
その時手に触れたのが島の地肌から無数に伸びる、木の根っこだったそうです
根っこというには本体となる木があるという事ですが、根っこはあちこちから伸びていて大本が辿れない
ここで海未ちゃんは一つの仮説を立て、確認のために島の真下、釣りをしていた断崖絶壁の下にあたる部分を光で照らしました
穂乃果「な、なにが見えたの……?」
海未「何も……」
凛「え……?」
海未「何もありませんでした。この島の下には、ただ闇がひろがっているだけでした……」
にこ「ど、どういうことよ……?」
絵里「まさかこの島……いえ、今私達がいるここって……」
海未「広大な海に浮かぶ、何かの植物の上にいるのかもしれません……」
穂乃果「ここが木の上ってこと?」
海未「木かどうかはわかりませんが……」
絵里「…………」
海未「絵里、あなたはこの島の周囲に何か見えた事はありますか?」
絵里「え……それは……」
海未「私達はこの島の外周をグルっとまわってきましたが、外に見えるのはどこまでも広がる水平線ばかりです」
絵里「なにが……いいたいの?」
海未「まるでこの世界には、この島しかないような……そんな気がしてならないのです」
ことり「え、な、なんで?」
海未「広大な世界のように感じているけれど、何もない…大きな水槽に浮かぶ島に私達はいるんじゃないかって…」
凛「海未ちゃん……」
海未「そう思ったらすごく怖くなったんです。まるで世界に私達しかいないみたいで……」
希「落ち着きや海未ちゃん。私ら以外にもちゃんとおったやろ?」
それは二日目に出会ったスクールアイドル、ルビィちゃん
その存在はみんな知っていて、海未ちゃんも知っているはずなのにその疑惑は拭い切れませんでした
海未「ねえ絵里……私達の他にもスクールアイドルがこのサバイバルに参加していますよね?」
絵里「え、そ、そうね……」
海未「おかしくないですか? いくらこの島が広いからって、ここまで黒澤さん以外誰にも出会わないなんて……」
穂乃果「そういえば…」
海未「その黒澤さんだって、どうしてすぐにいなくなってしまったんですか?」
ことり「海未ちゃん、落ち着いて…」
海未「ここ二日、まるで生き物に遭遇しませんでした。まるで少しづつこの世界から生物が消えていくように…!!」
海未ちゃんの語尾が荒くなってきたところで、にこちゃんが手にしたおたまで海未ちゃんの頭をこづきます
ハっとする海未ちゃん。落ち着いたように見えたけど、自分の語る言葉でまた思い返してしまったんですね
海未「すいません、取り乱しました……」
にこ「思いつめすぎよ」
絵里「海未の話は極端だし、一つ訂正するところがあるわ」
真姫「というと?」
絵里「本当に海に生物がいないとしても、すでにこの島にはたくさんの生物が存在しているってこと」
穂乃果「海未ちゃんの言う通り昨日今日は何にもいなかったよ?」
絵里「いるわよ、私サーチして周囲を観察するとき、いつも見てるもの」
海未「そうだったのですか?」
絵里「うん。いつも上空を飛んでる鳥が見えるのよ」
凛「鳥?」
絵里「島の中央に見える大きな木があるじゃない? あっちのほうから飛んできているみたいなの」
海未ちゃんの、世界から自分達以外どんどん消えていくというな疑心暗鬼にこの話は効果があったようです
海未「そうなのですか……すいません絵里、変な勘繰りをしてしまって冷静さを……」
絵里「………………」
海未「絵里?」
どうにかいつもの海未ちゃんが戻ってきたと思ったら今度は絵里ちゃんが俯き考えています
絵里「いるわね……鳥……」
穂乃果「ん、さっき言ってたの?」
絵里「ええ、サーチする度に、意識していないところでも目にしていた……」
上空を悠々自適に飛び回る鳥。いつも高いところを飛び、何をするわけでもなく旋回したりしているそうです
それだけでは特に意識する事もないようなことなのですが、絵里ちゃんにはそうなりませんでした
絵里「いつもいる。毎回見る。うん、そうね、こんなおかしな事…ちゃんと気づくべきだったわ」
ことり「絵里ちゃん?」
穂乃果「ずっと飛んでいるって疲れないのかな?」
凛「たまたま飛んでるときを見ているってことなんじゃないの?」
絵里「サーチするたびに見かける。これって、つねに私のサーチ範囲にいるってことよ」
絵里ちゃんの一言にみんながハっと顔をあげる。それは確かにおかしいです。まるで……
絵里「私達を監視しているのかしらね……」
更新乙
まだ監視してるだけっぽいから確定じゃないけど
敵対者出現の予感にワクワクしてきた 鳥とかいたっけて思ったけど、最初のほーにすでに触れてたんだな
続き楽しみやわー乙 >>413
生理は?どうなってんの?
タンポンないよね
同級生の女の子の生理のやつの青いテープとったら吸着力がなくって焦った思い出 ンミチャンのシャツで海水をろ過するのかと思ったけど違ったかぁ 俺が女の子の生理現象を見たのは図書館で隣の女の子が屁をした時くらいだな 今日のお勉強終わったクル〜!!ウルトラハッピー!! ふん、たまたま利害が一致したから読んでいるだけだ…勘違いするなよ /サバイバル五日目 朝
絵里「ん、間違いないわね」
にこ「じゃあそういうことなんでしょ」
朝食の後絵里ちゃんがサーチを使い周囲を観察します。昨日言っていた鳥は今日もいるそうです
絵里ちゃんがその存在に気づき、もしもの話でにこちゃんが続けた内容が、
にこ「鳥を操っているか、動物を使役できるクラスがあって、島の状況か私達を観察している…この場合偵察ね」
凛「ポケモンマスター?」
穂乃果「ええ、いいなー…」
希「そこを羨むんやね…」
鳥目なのが原因なのか、暗くなると確認できないその鳥を意図的にここに飛ばしている者がいる
あるいはその鳥そのものの生態として、獲物を狙っているとか、そういう可能性もあるかもとのことです
凛「動物サーチはできないの?」
絵里「射程外ね。実際ここから肉眼で見つけようとしても……あ、あれかな?」
海未「確かに鳥が飛んでいますが、絵里のサーチ範囲ギリギリか、けっこう上空にいるのでしょうか」
ことり「ことりみえな〜い」
正直絵里ちゃんのサーチがなければずっと気づかなかったその鳥を、取り敢えず意識の片隅に置いておくことにします
予定では今日中に島の外周部分の探索が完了します
そしてその後は水源である川を登り、可能ならば中央に大きくそびえる大木を目指す事になります
海未「………………」
今日も探索は順調で、昨日海未ちゃんが言ったように、誰にも…何にも遭遇しないまま進みます
時折左手に見える水平線を見つめる海未ちゃんがその足を止める
何もいない海。海未ちゃんが話した事が私の心にまだ重く響いています
こんなに広く、雄大な海に…命が存在しない……。
その正否は定かではないけれど、ただ素直に…そんな世界は嫌だなって思います
穂乃果「海未ちゃん、大丈夫?」
海未「ええ、大丈夫です。ですが……少しだけ、悲しい気持ちになります」
にこ「こんだけ広いのに、何もいない、ねぇ……」
絵里「海がそうだとすると、島にある川はどうなのかしらね…」
希「何かしら生き物はおるんとちゃうかなぁ。でないと食物連鎖が成り立たないし」
ことり「このあいだのカニさんだって、何か食べてたはずだしね」
結局のところ、行って見るしかないという事にはかわりなく、私達は進みます
そしてその日のお昼頃…
穂乃果「おー、グルっとまわったねー」
絵里「なんだか懐かしいわね」
この無人島に初めてやってきた場所に到着し、綺麗に一周回った事になります
予定していた最初の一週間で拠点作りという目標もこのペースだと余裕を持っていけそうです
絵里「この後目の前に広がる森に入るわけだけど、とりあえずお昼ご飯かしら?」
にこ「そうね、中で落ち着ける場所があるとも限らないし」
希「用意するよ〜」
午後からの探索を前にいくつか決めておくことがあると絵里ちゃんからの提案があります
絵里「あの大木周辺に行くまでに、多少は森の中の様子はわかると思うんだけど」
海未「距離的には……明日到着を目途に行けそうですね」
絵里「こうまで手の込んだ舞台を用意しておいて、まさかそこらへんの木の上にお宝があるなんてことは無いと思うけど…」
ことり「そうなのー?」
穂乃果「やっぱりラスダンとかにあるんじゃないかな?」
凛「ラスダンってどこにゃ?」
森の中でどういう展開が待ち受けているのかわからないので、今のうちに夕方の分のお弁当を作ろうということになりました
そして手軽に持ち運べてそのまま食べる事ができるという便利なものとして、
花陽「お任せくださいっ!」
にこ「気合はいってるわねー」
お昼用に焚くご飯を多めにし、お弁当としておにぎりが提案されました。作るのはにこちゃんと私です!
どうしてお弁当にするのかというのは、現地でゆっくりできる状況にならないかもしれないという可能性のためです
絵里「確実にいるものとして、あのジュナの群れね」
ことり「あんな大きなのが他にもいるのかなぁ…」
希「そういえば群れで行動するっていうのに、この前のは結局一匹やったね」
凛「迷子にでもなったのかな?」
真姫「それはないんじゃない? あきらかに目的があってあの子を追いかけてたみたいだし」
穂乃果「…………」
本格的に島の内陸に進むという事は、またルビィちゃんや他のスクールアイドルに出会う可能性がでてきます
結果として私達を助けてくれたルビィちゃん。また会えるなら言いたい事、お礼をちゃんとしたいです
にこ「すごわね、考え事しているようで手の動きがまったくブレない…」
花陽「え?」ニギニギ…
絵里「念のため、木に登って周辺を確認する役割をやって欲しいのだけど…えっと」
凛「凛がやるよ! 元々木登りは得意だし!」
絵里「そう、お願いするわ。それともう一人…」
にこ「あ、それ私がやるわ」
絵里「にこ?」
真姫「にこちゃん登れるの?」
にこ「ふふん、新たな新スキルを使えば余裕よ!」
にこちゃんがスキルを使えば木の上の探索も余裕だと自信を持って言うので、その役割に決まりました
ここでスキルに関して再チェックするという絵里ちゃんの指示で、それぞれ自分の本を確認します
穂乃果「これって時間経過で強化されたり追加されたりするっていうけど、クラスによって進行はバラバラなんだね」
凛「にこちゃんのクラス、追加はやいにゃ〜」
にこ「あれ、そうなの?」
私もおにぎり制作の途中本に目を通しますが、追加されたスキルは1つのみ、
強化はアサイラムシートのリキャスト時間が少し短縮されたくらいです
海未「私も初期からはスキルが一つ追加されただけですね」
凛「凛はなんにも……」
ここでにこちゃんのゲーム的解釈です
にこ「成長タイプっていうのがあるのかわからないけど、もしそうなら凛は大器晩成型なのかもね」
真姫「でもスキルの数は全員同じなんでしょ?」
にこ「最終的にはそうだけど、成長が遅めの分、強力だったりするのよ」
穂乃果「にこちゃんてもうスキル4つなんだよね?」
にこ「そうね、追加2、強化1がきたわね」
各クラス、スキルの数は五つです。スキルの強化がどれだけあるのかはわかりませんが私は追加1、強化1です
凛「んー、でも凛もにこちゃんみたいに色々やりたいにゃ…」
ことり「あ、ことりも追加されてたっ」
絵里「あ、そうだことりにお願いがあったのよ」
ことり「ん?」
私達は毎食、ことりちゃんのスキルでスタミナを強化し探索に役立てています
半日ひたすら歩くというのもこのスキルによる補助がとても大きかったと思います
絵里ちゃんは今作っているおにぎりに付与するスタミナの効果を、いくつか変えて欲しいと言います
ことり「えっと、タフネスじゃなくてパワーを付ければいいの?」
絵里「ええ、おねがい」
穂乃果「パワーって筋力だっけ?」
絵里「そう、それでちょっと考えがあるのよ」
絵里ちゃんはやれる事、可能性の一つとして決めた事がありました
凛「絵里ちゃんも戦うの?」
絵里「戦うって言うより、自衛手段として出来るならいいでしょ?」
穂乃果ちゃんや希ちゃんのスキル、プロテクトを使って丸めたシーツや釣り竿を武器にするという案です
武器だけあってもそれを扱う筋力がなくては意味がないので、そこをパワーによって得ると、絵里ちゃんは考えました
海未「振り回すだけならそれも可能だとは思いますが、扱うというとまた別の話になりますよ、絵里」
絵里「技術的な事もわかってるわ。だから防御に適した武器を牽制に使うくらいで考えているの」
絵里ちゃんが言う、防御に適した武器としてあげられたのが…
穂乃果「薙刀?」
絵里「前に映画で見たことがあるのよ。あれなら一定の距離で牽制、攻撃するのにピッタリかなと思って」
にこ「槍とか、そういう長物ね。確かに振り回してるだけでも効果はありそうだけど…」
海未「実際に扱うとなると自傷の可能性も高く、危ないですよ?」
絵里「とりあえず、一回やってみて考えたいわね」
絵里ちゃんは絵里ちゃんの出来る事で私達に道を示してくれています。頼りになります
だけどどこか、戦えないという事に後ろめたさを感じているのでしょうか……そんな事はないと思うけど
それともハイエナとの戦いにおいて戦闘クラス以外にも危険は迫るという事を身をもって味わったからこそ、なのかな?
ことり「じゃあおにぎりの内、三つほどパワーにかえておくね」
絵里「何か目印になるようなものもお願いできる?」
にこ「だったらこっちのタッパーに入れておけばいいわ」
海未「もう釣りをする必要もありませんし、絵里に預けます…」スッ
絵里「そんな寂しそうな顔しないでよ。帰ったら釣りはじめて見れば?」
海未「それはもう心に決めています!」
3段階に伸縮する釣り竿をビシっと伸ばし、先端にタオルをグルグルまいて厚みをだす
そして少し尖らせて殺傷力をだし、それをプロテクトで硬化すれば立派な武器の出来上がりです!
絵里「しっかりと堅くなってるのに重さはそんなにないのね」コンコン
ことり「絵里ちゃんちょっとカッコイイ、映画の女戦士みたいっ」
にこ「釣り竿だけどね」
凛「武器に名前つける?」
絵里「え、いいわよそんなの…」
希「エリチランスとか?」
真姫「釣り竿だけどね」
穂乃果「希ちゃんのプロテクトと違ってこっちは効果時間10分ほどだから気を付けてね」
希「うちのは5分。スキルで延長して20分かな」
絵里「わかったわ」
お昼ご飯をしっかり食べ、いよいよ未知なる世界へ突入です!
絵里「…………………」
ずっとその入り口は傍に感じていました。だけど光も満足に刺さない薄暗い空間に自ら足を運ぼうとは思いません
私が暗い森の中といってすぐに連想したのが富士樹海です
海未「どうですか?」
絵里「中は…そうね、思っていたより道がないわけじゃないけど……それでも不安定ね」
穂乃果「着替え完了っ!」
凛「なんだかしっくりくるにゃ〜」
島の気候はかなり暖かく、南の島を思わせるほどだったので私達は基本半袖でした
しかし森の中は肌の露出を極力減らす事も大事という海未ちゃんの指示のもと、私達は全員同じ服に着替えました
ことり「みんなで音ノ木坂のジャージ着てると、遠足にきたみたいだね」
にこ「その場合、仲良く全員遭難してることになるけどね」
絵里ちゃんが入り口で最初のサーチを使い、進むべき方向を決めます
絵里「では予定通りまずは川を目指しましょうか。その川が中央に向かってくれていればいいのだけど」
穂乃果「綺麗な水だったら水浴びしたい……」
ことり「それっ!!」
海未「絵里……あちらはどうしますか?」チラ
絵里「ほっとけばいいわ。どのみち森に入ればそう簡単に後を追えないでしょ」
海未ちゃんの見上げる先に、あの鳥がいました。もしかしたら私達を偵察しているかもしれない鳥
森の中にはいれば上空からは確認しにくく、中を飛空するにも容易ではなくなります
正直なところあの鳥をどうにかしようかというとそれも特になく、結局のところは放置するしかありません
凛「絵里ちゃん、木の上にはもう登っていた方がいい?」
絵里「とりあえずまだいいわ。中の雰囲気次第かな」
凛「りょ〜か〜い」
凛ちゃんはどこか楽しそうです。きっと戦う事以外でなにかできることが純粋に嬉しいんだと思います
私からすれば凛ちゃんはとても頼りになる存在です。むしろ私こそもっとみんなの役に立てるようにがんばらないと
/
ハイエナやジュナのような獣が闊歩する薄暗い山道とか、そういうのを想像していたのですが…
絵里「外から見ていた印象よりは明るいわ」
真姫「林道みたいなのがあるわね、もっと深い樹海みたいなのを想像してた」
ことり「あ、どこかで鳥の鳴き声もきこえる」
穂乃果「川が見えるよ〜」
木漏れ日が心地よく感じるほどに、そこは長閑でした
獣道のようなものもありますが、所々ひらけた場所もあるので視界が悪いという事もありません
絵里「植物がまた初めて見るものばかりね」
ことり「あ、絵里ちゃん、ユーユーの木ってあるかな?」
絵里「ユーユー?」
ことり「その木に生ってる実がね、いろいろな調合の材料になりそうなの」
にこ「調合?」
ことり「新しく使えるようになったスキルだよ」
穂乃果「ことりちゃんいつのまに錬金術師に!?」
ことり「錬金術?」
・プレパレーション:異なる材料を組み合わせて薬品を生成する
絵里「んー、今見えている中では無いわね…」
海未「樹木の種類ですが、かなり日本のものと酷似していますね」
希「でも種類がバラバラで、群生しているというより、なんか適当に置いといたって感じもする」
真姫「あーそれわかる」
希ちゃんの言う、適当に置いたという表現は私もしっくりきます
この森、時間をかけて成長した容としてみるにはかなり不規則で、適当な間隔に木を植えていったという感じがするのです
海未ちゃんが言っていた仮説を思い出します
絵里「本当に海未の言う通りなのかもね…」
海未「昨日のですか?」
絵里「サバイバルのために無人島を利用したというより、サバイバルのために急遽作ったっていうのかな…」
にこ「そんなマネできるの?」
真姫「今さらどんなファンタジーを言われても、ああそうなんだって思うしかないけどね」
勿論今それを議論する必要もないので、ここはこういう森だという事で納得するしかありません
海未ちゃんが想像しているものとは少し違いますが、私はこの無人島のイメージを、箱庭のようだなと考えました
探索に不都合がなければどんな森だろうと大歓迎という事で私達はさらに進みます
凛「絵里ちゃん、木に登っていい?」
絵里「ん…そうね、上から何か見えるか見てくれる?」
凛「わかった〜、んしょっ…」
凛ちゃんは子供の頃よくやっていた木登りの要領で、近くにあったヤマザクラのような木に飛びつきます
凛「……………」
花陽「凛ちゃん?」
てっきりそのまま軽快に登っていくのかと思った凛ちゃんですが、すっと足を下ろします
そして登るつもりだった木と、その上……伸びる木の枝をじっと見つめると…
凛「これくらいなら……えいっ」ドンッ
花陽「凛ちゃん!?」
どうしたのかなーって思っていたら突然凛ちゃんはその場でジャンプしました
そういえば脚力が特に強化されているということでしたが、木の上のほうまで飛んで行ってしまいました
穂乃果「え、凛ちゃんもう上にいるの?」
花陽「すごいジャンプ力でした」
木の枝まで10メートルくらいある気がするんですが、もう凛ちゃんは枝に掴まり周囲を眺めています
絵里ちゃんいわく遠くを見通せるほど視界がいいわけでもないので、とりあえずお宝の光がなければオッケーだそうです
にこ「負けてられないわね、私もちょっといってくるわ」
真姫「新しいスキルってやつ?」
にこ「移動と攻撃、両方かね揃えた便利な技よ、ほっ!」
凛ちゃんから少し離れた場所にある、こっちはヤマモモのような木ににこちゃんが近づきます
そして移動先である枝のほうをじっと見据えて、小さく構える
にこ「あれに…いけっ!」バシュッ
いつもにこちゃんが扱う碧色の光。あれがにこちゃんの足元に発生すると、勢いよくその場からにこちゃんが飛び出します
地面を蹴るというより、カタパルトから撃ちだされるかのような、まさに弾丸の如く飛んでいきました
にこ「ってはやっ! わ〜〜!」
バキ ガサガサガサ……ドサ
真姫「落ちてるじゃないの!」タタッ
穂乃果「にこちゃ〜〜〜ん!!」
絵里「なにやってんのよ」サラサラ
にこ「よ、予想以上の速度だったわ……これは使えるわね……」
真姫「ひっくり返ったままでなにカッコつけてるのよ、ほらっ」サッ
どうやらスキルによる移動で木の枝に飛び乗ろうとしたにこちゃんでしたが、勢いあまって枝を折っちゃったようです
そのまま落下してしまいましたが背の低い木々がクッションになり、丈夫な体とあわさって無傷でした
・燕飛・谷渡り:対象に向かって直線に飛ぶ。効果時間内に最大3回まで連続で飛ぶことが出来る
穂乃果「突進技なんだね」
にこ「あの勢いなら振り抜きと合わせて強力な攻撃ができそうね」
ことり「でも木の上に飛び乗るにはちょっと難しそう」
にこ「そこは慣れればいけそうよ」
にこちゃんが試行錯誤している中、絵里ちゃんが周辺の植物のメモを取り終えます
絵里「覚えやすいのか覚えにくいのか、ややこしいわね…」
希「植物の名前?」
絵里「ええ。それ単体はすごく覚えやすいんだけど、類似のものがとにかく多いのよ」
海未「法則性があるわけでも、物の特徴をとらえているわけでもないですしね…」
逆にハイエナとかがそのまんまというのもよくわかりません
もしかして名付け親さんはかなりテキトーにつけたのでしょうか?
それから5分ほどして、凛ちゃんが戻ってきました。奇妙なお土産を持って……
凛「木に引っかかってたにゃー」
絵里「え、なにこれ…?」
穂乃果「扇風機?」
希「そんなわけないやん。これ、プロペラとちゃう?」
凛ちゃんが木の上から持ってきたのは、正直よくわからないものでした
しかしこの自然の中にあって、これが人工物であるのは明白です
ものすごく小さい飛行機……と言っていいのかわかりませんが、本体に、4枚のプロペラがついています
接触防止のためか各プロペラは枠で覆われています
にこ「ラジコンじゃないの?」
ことり「かもしれないけど…なんでこんなとこに?」
穂乃果「軽いねー」ヒョイ
海未「さ、触って大丈夫なのですか?」
絵里「この本体の下についてるのって、もしかしてカメラじゃないかしら?」
希「ん、どれどれ……あーホンマやね、これレンズやわ」
ことり「ま、まさか盗撮に使っていたの?」
凛「斬新な手口だにゃー」
にこ「ここで誰を盗撮するっていうのよ」
真姫「ってゆーか、これドローンじゃないの?」
穂乃果「どろーん?」
凛「ドロン?」
謎の物体の正体を真姫ちゃんがドローンと呼びます。なんでしょうか?
海未「ドローンにしてはえらく軽量ですが…」
真姫「パパが似たような物を持ってはいたけど、確かにここまで小型化してなかったわね」
絵里「なんなのそのドローンって?」
この物体がドローンかどうかは確定しませんが、かなり高い確率でそうかもというのが真姫ちゃんの見解
ドローン……ううん、あまり聞き覚えがありません
真姫「一般的にはひろまってないからね。もともとは軍事利用の目的で開発されていたものだし」
ことり「へ、兵器とかそういうの?」
海未「このサイズでそれは難しいと思いますが……」
真姫「昔のものって爆弾投下用の自立式が主だったのよ。でも無線技術の向上で、より精密な偵察用のドローンも多く開発されたって聞いたわ」
穂乃果「じゃあこれって、偵察用ドローンってこと?」
凛「そんなのがなんでここに…?」
絵里「単純な話、誰かがサバイバルに持ち込んだって事じゃない?」
にこ「なんか話きいてるだけでもこれがすんごい高価なものだっていうのはわかるわ」
凛「そんなものを持ってくるなんて、すごい人?」
真姫「普通じゃなかなか買えないものだし、そうなのかもね」
その普通じゃ買えないものを持ってる真姫ちゃんのお父さんって……
絵里「実際これが稼働していたのだとしたら、それはすごく便利でしょうね」
海未「絵里のスキルと似たような事が手軽にできるわけですからね」
にこ「でもラジコンなんてこんな森の中でそうそう飛ばせないでしょ?」
凛「ん、だから引っかかってたのかなー?」
穂乃果「ねえねえ、本体の横に書いてあるこれって、名前じゃないかな?」
絵里「ん、どれ?」
偵察用ドローン(かもしれない)の横に、黄色いマジックでそれは書いてありました
ことり「シャイニー号?」
穂乃果「シャイニー号」
海未「シャイニー号……ですね」
にこ「変な名前ね」
偵察用ドローン(かもしれない)シャイニー号。凛ちゃんが見つけてきた物の名称が判明しました
絵里「持っていくの?」
凛「もし無くして困ってるんだったら返してあげたいし…ダメかな?」
海未「嵩張ってジャマになったりしませんか?」
凛「倉庫のどれかにはいらないかな?」
絵里「入るとは…思うけど……」
凛ちゃんのお願いに絵里ちゃんはしばらく考えます
このドローンが生きていたとして、突然動きだすことはないのか?
偵察用だとすると、こちらの映像、音声等が相手に知られる可能性もあるんじゃないか?
さらには、爆発したりしないか?
真姫「さすがに爆発はしないんじゃない?」
絵里「可能性としてよ。実際持って行く事による利点がないわけだし……」
凛「ん……そっか………」
ことり「凛ちゃん……」
絵里ちゃんに断られ俯く凛ちゃん。私も絵里ちゃんの言いたい事はわかりますし、慎重なのは大事です
だけど、それによって削られたのが……凛ちゃんの気持ち、凛ちゃんらしさです……
花陽「あ、あのっ…!」
凛「かよちん?」
花陽「私からもお願いします、これを持って行く事を許してください」
絵里「花陽……」
花陽「絵里ちゃんの言う事もとても大事だし、わかるんですけど、その、それを理由に私達らしさを抑え込んでいたら、きっと心に余裕がなくなっちゃうと思うんです」
海未「………」
花陽「困っている人がいるかもしれない、それだったら助けになってあげたい。きっと普段の私達ならみんながそうする事だって、思うんです」
そこには疑う余地はありません。みんなだってそうです……それをそうさせないのは今のサバイバルという環境のせいです
その環境ばかりに合わせていくのって、大事だとは思いますけど、でも…それだけじゃない気もして……っ
花陽「真姫ちゃん!」
真姫「あ、は、はいっ」
花陽「ドローンを動かしてるのって、電波とかそういうものですか?」
真姫「え…そ、そうね、主要なのはリモコンでの遠隔操作だから…」
花陽「だ、だったら倉庫にいれておけば無線も届かないし、いきなり動き出すなんてこともないんじゃないかなって…」
にこ「たしかに、あそこ閉じちゃえば別空間ぽいしね」
花陽「それに、利点という意味では、落とし主さんが困っていたら助けになりますし、それがきっかけで仲良くなれるかもって…」
思いつく限りの言葉を並べ、私の気持ちを…凛ちゃんの気持ちを代弁しました
正直説得力があるかどうかなんて知りません、だけど……ぅぅぅ…
海未「絵里?」
絵里「ふ、ふふ……所持することでの危険に対して、所持することの利点が……ふふ」
にこ「仲良くなれるかもって……ま、花陽らしいけどね」
花陽「あ、あの……」
絵里「いいわ、持って行きましょ」
凛「絵里ちゃんっ! いいの?」
絵里「凛はそれ、持ち主に返してあげたいんでしょ?」
凛「うん!」
絵里「そうまで強くお願いされたら、どのみち断ることもしないわよ」
穂乃果「あれ、でもさっき…」
海未「あれは現実としてある危険性をだして、それでも持って行くかというのを凛に聞いていたのですよ」
ことり「わかりにく〜い」
絵里「えっと、雑貨用の倉庫なら入るスペースあったわよね」
希「うん、いちおう毛布かなんかにくるんどく?」
凛「ありがとう、おねがいするにゃ〜」
こうして凛ちゃんが持ち帰ったドローンを倉庫に保管することになりました
凛「かよちん……」
花陽「ん?」
凛「ありがと…」ギュッ
花陽「り、凛ちゃん」
絵里「私もちょっと教えられたわ」
ことり「私達らしさって、やっぱり大事だもんね」
穂乃果「でもサバイバル生活の中で、どれとどれを天秤にかけるかっていう部分では、難しいもんね」
凛「凛はただ、難しく考えるのが苦手なだけで…」
真姫「凛も花陽も、それでいいと思うわよ」
花陽「えーそれって何も考えなくてもいいって事ですか?」
希「あはは、気楽でいいやん?」
その後、凛ちゃんは木の枝から枝に器用に飛び移りながら周囲を探索します
にこちゃんはやはりまだ調整がうまくいかないのか、突撃しては枝を破壊しています
真姫「あきらめたほうがいいんじゃないの?」
にこ「ぬうぅ…」
海未「木の枝を狙うからダメなのでは?」
希「その少し上を狙ったら?」
にこ「少し上って、どれを対象にとるのよ……」
絵里「対象に向かって飛んでいくってことは、確実にぶつかるって事じゃないの」
ことり「あんまり壊すとかわいそうだよ?」
どうしても軽快に飛び回りたいのか、次に考えたのは、木の幹に突撃し、着地と同時に枝に飛び移るという荒業でした
にこ「いてっ、って、わ〜〜〜!」
バキィ ギシギシ…
ことり「折っちゃった〜〜!!」
絵里「終了ーー!」
元々のスキル特性が攻撃タイプであるためか、突進そのものの威力がどうしても加減できそうにありませんでした
これではやみくもに自然破壊するだけだと、絵里ちゃんから禁止令がでちゃいました
にこ「絶対なにか上手くやる方法あると思うんだけど……」
絵里「じゃあそれが確立するまで大人しくしてなさい」
と、こんなやり取りをしつつもついに目的の川辺に到着したのでした
更新乙!
記憶の引き継ぎある以上らしさはどうしても大事だよね
いまさらながら花陽ちゃんが狂言回しなのが良い感じ よくよく考えるとAquors(未来人)が参戦しているってことは、A-RISEとかも同じ時間軸とは限らないってことだよな 乙です
ドローンなんて今更って思ったが、確かにμ'sの時代は全然話題なかったな 島の外周探索時に少しだけ見えていた川の端、下流の麓までやってきました
川に名前がついているのかはわかりませんが、この川、端へいくほど狭くなり最後は森を少しでたところで途切れています
海には続いていないのか、それとも地面の下で繋がっているのかよくわからない構造をしています
しかしそんな事なんてお構いなしに私達ははしゃぎます……おもにことりちゃんを筆頭に!
ことり「すっごく綺麗だよ、水あびできるよね? ね?」
穂乃果「おーすごい、透き通ってるよー」
幅およそ3メートル……これは小川のようでした。それでも上流に向かうにつれ大きくなっているようです
つまりもうちょっと広いところにでれば、十分な水浴びができるのです!
ことり「いま水質みるね」ササッ
凛「素早いにゃー」
絵里「山からの湧水なのかしら、ほんとに綺麗ねー」
真姫「すごい、底が見えるわ……」
ことり「あ、お魚がいる!」
海未「!?」バッ
穂乃果「海未ちゃん……」
海未「どこですかことり?」
ことり「えっと、あ、ほらあそこ!」
海未「おお、けっこう大きいのがいますね!」
希「小さいのもちらほらいるね。この感じやと上流にはもっと色々おるんとちゃう?」
にこ「どうやら普通の川っぽいわね」
絵里「水質はどうなの?」
ことり「んと、すっごく綺麗で、私達が飲んでも大丈夫。ミネラルもたくさん含んでるね」
絵里「淡水…よね?」
ことり「うん」
目的の一つである水源の確保もうまくいきそうな予感です
しかし今はそんなことより、水浴びするかどうかが先なのです! 絵里ちゃんはやくっ!
絵里「じゃあこのまま川を登っていきましょ」
ことり「えぇ!?」
花陽「絵里ちゃん?」
絵里「気持ちはわかるけど、もう少し開けた場所を探しましょ」
海未「周囲の安全を確保するためにもそれがいいですね」
ことり「えー……」
ぅぅ、ようやく水源が見つかったのにまだしばらくはガマンしなければいけないようです…
ことり「もう今日絶対入ろうね、絶対だよ?」
花陽「はい!」
絵里「私もできればそうしたいし、がんばりましょ」
周囲の探索と合わせて川沿いを上流に向かって進む
凛ちゃんが得意の脚力で川の対岸まで飛び越えて反対側も調べます
海未ちゃんはじっと川を睨みながら歩いてます
海未「いえ、川底に宝が沈んでいる可能性もあるかもしれませんので」
穂乃果「うん、まぁそれも大事だよ」
希「でもあれ、獲物を見る目やね」
真姫「楽しそうね」
そして進む事十分ほどして、絵里ちゃんがその足を止めました
絵里「………ふむ」
周辺のサーチをした直後だと思うので、なにか見えたのかもしれません
次に絵里ちゃんは背負っていたリュックからタッパーを取り出す
絵里「みんな、警戒してっ」
海未「猿…ですか?」
絵里「この先に多数いるわね。群れのようだけど…あむ…」モグモグ
穂乃果「凛ちゃ〜ん、戻ってきて〜!」
<リョウカイニャー
ことり「おサルさんか〜、かわいいかなー」
真姫「どうせ普通の猿じゃないんでしょ?」
絵里ちゃんがサーチで見つけたのは、私達の進路上に多数見える猿の群れでした
このままいくとちょうど鉢合わせになる状況ですが、もうこの島でのんびりと構えることはありません
絵里「もう少し近づけばエネミーサーチもできると思うけど…」
希「エリチランスの出番?」
絵里「その名前はともかく、ドローできる?」
希「はいよ、ほっ」パッパッパッ
凛「戦闘にゃ?」
海未「……?」
ことり「海未ちゃん?」
希ちゃんが引いたカードはドレインとムーブの二枚でした
どちらも使い方によっては戦闘の支援に十分な効果です
絵里「戦闘がはじまってからじゃ遅いから、視界にはいったら穂乃果、お願いできる?」
穂乃果「まかせて! でもあんまり無茶しないでね?」
海未「絵里、木の上から迫っています、数は……4体!」
絵里「あっちの木々にも隠れてるわ。こっちは5……多いわね」
ことり「か、囲まれちゃう?」
凛「凛は後ろを見てるね!」
接近しているという猿の群れが私にも見える範囲に現れました
それは1メートルほどある、ニホンザルに似た動物でした。しかしその顔はやっぱり凶悪そうです
なにより目が真っ赤です。これは間違いなく挨拶しにきたとかそういう雰囲気じゃありません
絵里「ニザキ……? よくわからない名前ね」
海未「確実に私達を狙っています」
にこ「うっわ、睨んでるわね」
穂乃果「わかった! ニホンザルモドキ、略してニザキじゃない?」
希「あははー、そんな安直な……」
これまでの適当具合からするとハズレではないかもしれません
絵里「えっと、つねに群れで行動し、集団で襲い掛かる……ふむ」
ことり「おサルさん……」
凛「あれはさすがに可愛くないよ?」
絵里「強い者には近づかない習性もある…か、なるほど」
にこ「ってことは、最初が肝心って事?」
希「どっちが強いかハッキリさせとけば襲われないってことかな」
硬派というかなんといいますか、強さを示せばオッケーということらしいです
しかし示すと言っても代表者同士の直接対決〜なんて事もなく、おそらく群れの長みたいなのにそう思わせるのが正解?
絵里「ってどれがボスザルなのかわかんないわね」
真姫「近づいてくるのをかたっぱしからやっつければいいんじゃない?」
にこ「どのみちそうなりそうね」
徐々に近づく猿の群れは軽く見える範囲でも十体以上見えます。木の上にもまだいるそうで、
ハイエナとの戦いでみんなそれぞれ自信をつけ、レベルアップした私達ですがこれはこれで新たな脅威です
ことり「はっ、あのまま水浴びしていたらおサルさんに覗かれてたの!?」
穂乃果「危ないとこだったね……」
安心できる状況ではないけど、どこかやんわりしているこの空気を引き裂くように、猿達が一斉に騒ぎだしました
ギャー! ギャッギャ! ギャギャッ!
海未「来ます!」
絵里「みんな、上からの奇襲にも注意して! 穂乃果お願い!」
穂乃果「うん、えいっ」パァ
方角としては北からくるのには海未ちゃんが対応し、東をにこちゃん、南が凛ちゃん
西は川が流れているのでそこを背に、中央に集まる私達を絵里ちゃんが守ってくれます
しかし今回は上からも猿が迫っています。いつ飛んでくるかわからないので注意が必要です
そして戦闘開始を意味するのか、ひと際大きな声が森に響き渡りました
絵里「希、カードは使いどころでどんどん使って、はやめにリキャまわしといて」
希「う、うん!」
ギャー! ギャッギャッ!
ことり「き、きた〜!」
海未「ふんっ!」バシ!
にこ「ちぇいっ!」バキ!
ハイエナ達のような統率なんてまるでない、まさに集団で襲い掛かる猿達を海未ちゃんもにこちゃんも素手で迎撃します
海未ちゃんは先の戦闘のように右手をすっと伸ばした、剣道と合気道を融合させたかのようなスタイル
にこちゃんはおそらく数が多いので、スキルを温存しているのだと思います
にこ「って弱っ! 一撃でのびちゃったわ」
穂乃果「にこちゃんが強いんだよ」
絵里「バカ力ねー」
しかし数による攻めは衰えず、猿達は仲間が倒れようがお構いなしに次々襲い掛かります
凛「って、こっちこないにゃ〜!」
絵里「凛、そっちは私が見るから海未達の援護にまわってあげて!」
凛「うんっ!」
南からの攻撃がなさそうだったのでポジションをチェンジ、
何を目的にしているのかわかりませんが、猿達は海未ちゃんの横をすり抜けようと波状攻撃をしかけます
海未「通しません!」バッ
ギャギャッ!
迫る猿を手刀で叩き落し、その横からくるのには左手で薙ぎ払う。その直後迫ってくるのにもすぐさま対応する海未ちゃん
しかし徐々にその数が増えると、どうしても防ぎきれません!
にこ「海未!」ゲシッ
海未「くっ…こざかしい…!」バンッ
にこちゃんにも同様に襲い掛かる猿が後を絶ちません。よくみると最初に倒した猿も起き上がり、再び襲い掛かってきます
その姿にどこか異様な雰囲気を感じます。目が真っ赤なのも不気味さを加速させている気がします
しかしこの状況においてまだ木の上からこちらを見ている猿達は動こうとしません
これのせいで絵里ちゃんも視線を外せない。一見すると無鉄砲な突撃のように見えて、何かを狙っているのでしょうか?
真姫「海未、コンディションの低下がみられるわよ、無理はしないで!」
海未「はぁ…ふぅ……わかっています…」
希「ちょっと待ってな、適当なやつからドレインで体力奪ったるわ」
海未「お願いします、くっ!」ドン!
ここで持久戦になる危険性を考慮し、絵里ちゃんが決断します
この決断が出来る意志を、私達は手に入れました
絵里「にこ、相手のペースになる前に決めましょう!」
にこ「それがいいみたいね……恨まないで……よっ!」
脅威を撃退できないなら、排除するしかありません
にこ「そーーっれ!」バシュッ!
ギャギャ! ギャウ!!
固まって襲い掛かる猿達を、にこちゃんのスキル、飛騨燕岳が弾き飛ばします
にこちゃんを中心に横一列に伸びた碧の刃が壁になるスキル。この前のよりさらに大きいサイズでした
それを飛び越えようとする者にはにこちゃんの斫り刃によって斬り伏せられる、鉄壁の壁
しかし、それでも猿は止まりませんでした
にこ「はぁ!? 今斬られたでしょ?」
凛「な、なんだかおかしい気がする…」
にこちゃんに斬られ、肩からバッサリと血を流した猿がまるで表情をかえないままに再び襲い掛かる
もうなりふり構ってはいられませんでした
希「見たらアカン」
ことり「えっえっ?」
にこちゃんが迫る猿を確実に止めるため、刃を少し大きくしさらに斬りつけます
カニの堅い甲殻をも容易に切り裂くにこちゃんの刃をまともに受けると、それはもう……
真姫「ほら、見ないのっ」サッ
花陽「え、真姫ちゃん?」
真姫ちゃんによって目隠しされてしまいました。でもちょっと遅くて、ハッキリと目にしちゃいました
猿の一匹がにこちゃんによって一刀両断される姿を……。覚悟をしていたことですから、大きなショックはありません
慣れてはいけないこの世界の現実ですが、目を反らすわけにもいかないことなのです
にこちゃんが本格的に脅威を排除するのを見て、海未ちゃんもまたスキルを使います
迎撃に振るっていた体術から、相手を動けなくするものへと構えを変化させる
海未「はぁっ!」ゴキ!
ギャッ…… ギャギャ!
穂乃果「ひぃ、なんかあれほのかにも使ってなかった?」
海未「穂乃果におしおきする時はもっと本気ですよ?」
絵里「普段なにしてるのよ…」
猿を地面に撃ち伏せるとそのまま拳を振り落とします。どこの骨が折れたかなんて考えたくありません…
確実に動けなくなる仲間を見てもなお、猿達の襲撃は収まりません
真姫「もう十分強さを示した事にならない?」
絵里「習性としてあるだけで、実際はどうなのかしらね…」
仕方がないとはいえ、このままだとここにいる猿達、全部倒す事になりそうです
凛「凛はちょっと上で見てるヤツんとこ行くね!」
絵里「凛、危険よ!」
凛「大丈夫! 凛だってみんなを守りたいし、あの程度の猿なら負けないよ!」
絵里「…………」
この状況でもなお上で様子を窺うようにこちらを見下ろす猿達がいます
いつ奇襲してくるかわからないという状況は確かに気持ち的にも焦りを生み出す原因になりかねない
凛ちゃんはそれならと、こちらから突撃する提案をします
相変わらず南方面からの襲撃はなさそうなのを確認し、絵里ちゃんは無理だけはしないようにと凛ちゃんの作戦を了承します
凛「ちゃちゃっといってすぐ帰ってくるからね!」
花陽「気をつけて、凛ちゃん!」
こちらを安心させる満面の笑みを見せて凛ちゃんが木の上にいる猿のもとまで一気にジャンプします
これを猿達が狙っていたのかはわかりません。だけど、凛ちゃんがその場を離れた瞬間、それはおこったのです
聞こえたのは水の跳ねる音……
ことり「え……?」
花陽「!?」
意識していなかった西の方角。川の中から突然飛び出してきた一匹の猿
海未ちゃんもにこちゃんも、絵里ちゃんも……誰もそれを予見していなかった
猿は近くにいたことりちゃんに飛びつき、その体重で強引に姿勢を崩すと、
ことり「っっっっ!?」
花陽「ことりちゃん!!」
私が叫ぶのを聞いて絵里ちゃん達が振り返る。だけどそれは少し遅く、私も動き出した時には遅かったのです
再び響く水の跳ねる音……
花陽「ことりちゃーーーーん!!」
誰が戦えるのか、誰が戦えないのか、それが猿達に知られているなんて考えもしませんでした
だけどまるで狙っていたかのように、猿はことりちゃんを強引に……川底に引きずり込んだのです
続きま〜す〜……長文書くと書きすぎだよ?ってエラーがでるようになってきました… 文字数制限ではじめってことはそろそろ次スレ考え方ほうがいいね
それはそうと乙! 絵里「ことりっ!?」
花陽「絵里ちゃん、ことりちゃんが!!」
ギャー ギャギャッ!
花陽「え!?」
その鳴き声は上から。凛ちゃんが対応していた木の上の猿達が一斉に降下してきました
このタイミング……ほんとに何か作戦があったのではないでしょうか…
凛「凛を無視して〜!!」ダン
続き、上で猿と戦っていた凛ちゃんもすぐに降りてきます。しかしすでにこちらの隊形は崩れてしまっています
ギャギャギャ!
花陽「わっ…」
絵里「ん…のっ!!」ゴン
私に襲い掛かってきた猿を絵里ちゃんが手にした武器で打ち払ってくれます
花陽「え、絵里ちゃんありが……」
絵里「凛! ことりが川に落とされたの! すぐに救出に行って!!」
凛「え!? わ、わかったーー!!」ダダ
希「くっ、ムーブのカードは水の中には飛ばないか……!」
凛ちゃんが川に落ちたことりちゃんの救出に向かう。しかし木の上の猿達の相手をするには手数がどうしても足りません
私も……私もなにか……できること……
海未「絵里! 森の奥、後方から別の群れが来ました!」
絵里「なんですって!?」
にこ「穂乃果、ちょっと無茶するからフォローお願い!」
穂乃果「う、うん!」
私も……戦わないと……でも……
希「エリチ、真姫ちゃんのナイフ貸して!」
絵里「希……」
希「おにぎりももらうで!」ガサッ
さらに迫る猿の群れ……崩れた陣形……フォローしたくても……私にできることが……ありません
凛「ぶはっ!!」ザバ
ことりちゃんを救出に向かった凛ちゃんが水面に顔をだします。右手にはしっかりとことりちゃんを抱えています
そうか、スキルの射程内に捉えれば引き寄せる事ができるのです
凛「だ、誰かことりちゃんをお願い! 痛い! このっ!」バシャ
花陽「凛ちゃん!?」
見るとことりちゃんを引きずり込んだ猿が凛ちゃんの足に噛みついています。あれじゃことりちゃんを引き上げられません
花陽「わ、私が……」
希「凛ちゃんそのまま! いま入れ替えるから!」シュッ
凛「うん、このー!」ゲシ
私が手をかそうとした横で、希ちゃんがムーブのカードでことりちゃんと近くに落ちていた石ころを入れ替えました
それを確認した凛ちゃんはすぐさま水中の猿を排除するために潜ります
絵里「真姫! ことりをお願い!」
真姫「うん!」
花陽「こ、ことりちゃん……」
水中に引きずり込まれたことりちゃんは気を失っているようでした
暴れた際に水をたくさん飲んでしまったのか、それとも首すじに見える猿の爪痕か、理由はわかりません
にこ「どおおおりゃあっ!!」ズシャッ!
穂乃果「にこちゃん!」
にこ「特大の壁つくったから、今のうちに回復頼むわ…ふぅ…」
穂乃果「うん、いま渡すね…」パァ
体力の消費によって威力が変わるスキルが斫り刃と飛騨燕岳です。その一つ飛騨燕岳を特に強力にした碧の刃
その形状をUの字に発生させ、防御壁として機能させる
消費した体力を穂乃果ちゃんが自身の体力を分け与える事で回復させます
今私のスキル、アサイラムシートを使えば……えっと、穂乃果ちゃんが回復して、にこちゃんはもとより回復していて…
じゃあ次ににこちゃんが消耗した時にとっておいたほうがいいのかな……それとも二人まとめて私が……
絵里「花陽、穂乃果とことりが入るようにシートをだして!」
花陽「え……あ、は、はいっ!」
そうだ、ことりちゃん……ダメだ、落ち着け私……出来る事をちゃんとしないと……
真姫「気道確保……ことり、ゴメン……っ」スッ
ことり「………………」
真姫ちゃんがことりちゃんに人工呼吸をします。それほどに緊急事態だという事です
アサイラムシートを展開させ、ことりちゃんと穂乃果ちゃんの体力を回復させます
ホントなら海未ちゃんや絵里ちゃんも回復したいのですが、それぞれ対応に追われているので無理そうでした
凛「にゃ〜〜〜!!」バシャーン
花陽「凛ちゃん!?」
川の中で戦っていた凛ちゃんが再び水面に顔をだします。よかった……
凛「かよちん、ことりちゃんは無事!?」
花陽「今真姫ちゃんが見てくれてる!」
凛「ん、わかった〜」バシャ
花陽「凛ちゃん、どこいくの?」
凛「海未ちゃんの援護に行ってくる!」
海未ちゃんは強いです。しかしその戦闘スタイルは1対多数には向いていません
もうすでに何体の猿を仕留めたかわからないほど、海未ちゃんの周りには横たわる猿達が見えます
それでもまだ、終わらない
海未「くっ、せい!」ダン
ギャッ ギャギャ ギャギャー
凛「海未ちゃん!」
海未「凛、大丈夫ですか?」
凛「海未ちゃんこそ、手…血が出てる……」
海未「どうにも相打ち覚悟で特攻されると、捌くにしても限界があるようです」
ギャギャッ! ギャー
凛「加勢する!」
海未「はいっ」
猿達の援軍なのか、森の奥からさらに出現する数……もうそれは群れというより大軍でした
一体どこに潜んでいたのか、それともこの騒ぎに集まってきたのか、気が付けば周囲を取り囲まれていました
絵里「なんなのよ、この数……」
にこ「絵里……」
穂乃果「はぁ、お、終わらないよ……」
希「エリチ……撤退…考えた方がいいんとちゃう?」
絵里「そうね…でもどこに行けばいいのかしら?」
真姫「ことり……おねがい……すー……っ」
ことり「…………」
どうしよう……どうしよう………敵が来ます……みんなこんなにがんばってるのに、全然いなくなってくれません
あの海未ちゃんですらすでに呼吸が乱れてます。凛ちゃんもにこちゃんも小さな傷がたくさんです…平気なわけがありません
戦闘クラスじゃない絵里ちゃんや希ちゃんも武器を手にして戦い、穂乃果ちゃんがフォローする
真姫ちゃんもことりちゃんを救うためにやれることを必死でやっています
私は?
アサイラムシートはさっき使ったので、次に使えるのは5分後です…
そして追加されたスキルも合わせて私が今使えるのは……
・ミリーベル:対象のクラスを識別する
・ディスペル:スキルによって干渉した現象すべてを解除する
こんなスキルじゃあの猿達は倒せません。逆にみんなの邪魔をしてしまうだけ……
私にも……戦うための術が欲しいです……みんなを、助けたい……
絵里「あぅっ、いった……!」
希「エリチ!」ザシュ
さらに木の上から振ってきた猿が絵里ちゃんの肩に噛みつきました。それを排除したのがパワーで筋力を向上した希ちゃん
その手に真姫ちゃんのナイフを持って戦っています。だけど……
希「つ、こ、このっ…あう」
ギャーギャー ギャッギャッ!
穂乃果「まだ木の上にいるよ……このままじゃ……」
にこ「穂乃果、あきらめるんじゃないわよ!」
絵里「でも、いよいよ本格的にまずいわね……」
単純な物量……これほどわかりやすく、恐ろしいものはありません
ちょっと多いくらいならがんばれます。だけど、すでに猿の数は最初の何倍もいて…こっちは疲弊していくばかりです
周りにたくさんの猿と、同じくらいみんなに倒された猿の死体……
徐々にですが獣特有の鼻につく臭いも充満してきました
今すぐになんとかしないと……この状況を打開できる策を考えないと……みんなが……
なにかないかと周囲を見渡すけど、すでに一面猿達の赤い目がこちらを捉えています
すぐ足元に転がる仲間の死体さえも気に留めることなく……ん?
花陽「…………………」
あちこちに飛び散っていて、それが誰に倒された猿なのかはわかりませんが、私は死んだ猿と目があいました
目をあけたまま死んじゃった猿です。もちろん動く事はありません……そしてその目は私の良く知るニホンザルのような目をしています
花陽「ね、ねえ絵里ちゃん…?」
絵里「どうしたの?」
花陽「襲い掛かってくる猿達って、目は何色ですか?」
絵里「はぁ? ごめんいまはそれどころじゃ……」
花陽「答えてください、大事な事かもしれません!」
私の気迫に怯んだ絵里ちゃんがわけもわからないまま答えてくれます
ゴメンね、でも……もしかしてこれって……
絵里「何色って……ニホンザルと同じような、茶色か、ちょっと薄目の黒か……花陽?」
そう……一面真っ赤に見えているのは私だけ……この現象に理由を……意味を見出さないと!
それで…私にしかできない事を……
続くっ!&訂正 それで…私にしかできない事を=そして…私にしかできない事を
長文が書きづらくなってきたので次の更新でNOVA Rを終えて、次スレR2立てます お疲れさまです。
リアルタイム更新でドキドキしながら読んでました。
もし次スレになるなら、最初にみんなの職業、スキル説明のコピペがあると嬉しいかも…
もしムリなら、こちらで貼らせていただいてもよいですか? 異様な特攻と作戦じみた襲い方はそういうことか
次回かよちん一番の見せ場になりそうだな! 前スレはすぐ終わっちゃったからな
ここまで続くとは!
今日も更新あると嬉しい! 次スレ超待機
凄い長編になりそうだけど最後まで追っていきたい
もっと意識を集中させて、赤い目をじっと見つめます
にこちゃんのスキルは誰にでも見える碧の光。具現化された色です
凛ちゃんのように対象に直接干渉するスキルには色はない……ほんとに?
今まで気にも留めなかったけど、真姫ちゃんのように集中すれば見えるという言葉を思い出します
そして"それ"を強く意識して相手を……視る
花陽「あ……」
希「エリチうしろ!」
絵里「く、このっ!」ガン
穂乃果「にこちゃん、回復もう一回いけそう」
にこ「わかったわ、じゃあまたデッカイのを…!」
絵里ちゃんと希ちゃんの体がぼんやりとだけど、オレンジ色に輝いています
あれはきっと体内で効果を発揮しているパワーのスキルです……
そしてにこちゃんに体力を分け与える穂乃果ちゃんの手も、集中して視るとちゃんと色がついてました
やっぱりそうです。私が見ている色って、スキルの効果によるものです
じゃあこの猿達は……みんなスキルの影響下にあるということ?
花陽「うぅ…だ、だったら……」タッ
にこちゃんの言葉を思い出します。それは私達を監視しているかもしれない鳥の事…
動物を操ったり使役したりするクラスがいるかもしれない
花陽「はぁ、はぁ…」タッタッタッ
海未「花陽!? ダメです、前にでてはいけません!」
凛「かよちん! なにしてるの!!」
もうスキルの使い方は頭にあります。効果範囲もおおよそですが把握しています
だからこのスキルをちゃんと使うために……この戦場の中心にいく必要があります
ギャー!ギャギャギャ ギャッギャ!
花陽「わあっ!」ドン
凛「かよちん!!」
当然ですが私に飛び掛かってくる猿達。だけど止まっていられません…!
凛「まっててかよちん、すぐ引き戻すから!」
花陽「凛ちゃんまって! 考えがあるの!!」
凛「かよちん、なにいってるの!」ダッ
ギャーッ ガシ
凛「このっ!」ドカ
花陽「凛ちゃん」
凛「理由があるんだね?」
花陽「うん、だから…」
凛「だったら凛が守るから、なんかするなら早めにお願い!」ガッ
ギャギャ! ギャッ!
無数に飛び掛かる猿達を凛ちゃんが力まかせに薙ぎ払う。ありがとう…もう少しだよ
絵里「海未、花陽を援護してあげて!」ガッ ギャギャ
海未「し、しかしここを離れては…」
真姫「あの子があんな無茶するんだから、きっとなにかあるんでしょ!?」
穂乃果「ここは大丈夫! にこちゃんが守ってくれるから!」
にこ「守ってやるわよ!」ドス ギャー!
海未「わ、わかりましたっ」ダッ
奥からやってきた猿の援軍もすべて視界に入るところまで来ました
周囲を見渡します。右も左も猿だらけです。きっと上にもたくさんいると思います
凛「くっ、この、この! いたっ、もうっ! あっちいけ!」ガシッ ガッ!
海未「凛、上です!」ヒュッ ドス
凛「海未ちゃん? たすかったー!」ドッ
後方に流れた猿達もにこちゃんくが食い止めています。さらに後ろに回り込んだ猿には絵里ちゃん希ちゃんが…
みんなの姿も良く見えます。たくさんの色が見えます……ここで……
凛「あっ…つぅ…!」
海未「凛、大丈夫ですか?」バッ
凛「手数がたりな〜〜い!」ガガッ
海未「花陽の後ろは私が、くっ、あう!?」ドドドド ドサドサ
凛「海未ちゃん!? めっちゃ降ってきた!」
綺麗なみんなの色を包み込む…一面の赤……狂気に染まった真っ赤な世界を……壊してやるのです!
花陽「お願いします………んんんんん!!」ググッ
ディスペル……スキルによって干渉された現象すべてを解除するスキル
きっと絵里ちゃん希ちゃんにかかっているパワーもこれで消してしまうと思います
だけど躊躇いません……これしかきっと道はない気がするからです
花陽「んんん……き、消えてくださーーーい!!!」バッ
凛「かよちん!?」
海未「っ!」
スキルを使うという意識があれば十分だったと思いますが、強い意志を現すため、両手を広げて叫びました
そうして視えた私自身のスキルの色……一つの光が目の前に現れて、すぐにはじけるように消えます
それから少しの静寂……そして…
パキッ…
ピシ… ギシ…
ガキンッ… ギギィィィィィィィィィィィィン!!! バキッ ドン ガラガラガラ…!!
絵里「うあっ、な、なにこの音!?」キー
希「み、耳が…っ!」ー
凛「かよちーん!!」ーン
小さく響く、何かが割れる音。そして次に響き渡る、金属が崩れ去ったような音
周囲にあるスキルがすべて解除された音……だけどこれだけ大きく響くのは……
花陽「はぁ、はぁ……」
一つの音だけじゃなく、たくさんいた猿達すべてから響いた音。だからこんなにも大きく響きます
その音に怯んだのは他のみんなと、たくさんの猿達……これで元に戻ると言うのなら…
花陽「っと……」フラフラ…
海未「な、なにがおきたのですか?」
凛「猿が硬直してる…?」
使役されていたのか操られていたのかはもうわかりませんが、猿達が普通ではなかったのは明白です
ではそれを元に戻すという事は、この惨状に……ちゃんと示さないといけません
みんなが唖然としている中、私は近くに横たわっていた猿の死体に近づく
花陽「ごめんね、でも……ちゃんとしないといけないから……」グッ
凛「な、なにして……」
ホントは片手で持ち上げられればよかったのですが、私にそんな力はありません
だから、両手で…猿の首を掴むと乱暴に持ち上げます。ごめんなさい……
そしてそれを、呆然としている猿達に見えるように掲げ、私は力強く言い放ちます
花陽「ほ、ほらっ! 私達は強いんです!! あなた達よりも!!」
絵里「花陽………」
習性として強い者には近づかないというなら……認識してください
ほんとならこんなにも仲間が殺されたら、怒りますよね…理不尽ですよね……でも……
花陽「これ以上まだ争うなら、容赦しませんよ!!」
猿達にしてみれば、突如現れた私達にたくさん仲間を殺されただけ……けれど示します
私達が強いという事。それで、諦めてもうらうしかありません
強さを強烈に印象づけるように、私は手にしていた猿の死体を乱暴に放り投げます
それが呆然としていた猿達の群れに転がる
まだです………まだ…折れちゃいけません……
ギャ…… ギャッギャッギャ…… キー キキー!
低く鳴いていた猿の声が、聞きなれたかん高いものに変わっていきました
それから群れの端にいた猿がゆっくりと後ろを向くと、その場から去っていきます
あの猿がボスザルだったのかどうかはわかりませんが、それに続くように、猿達が一斉に立ち去ります
花陽「…………っ」グッ
途中振り返る猿もいましたが、私が睨むと怯えるように消えていきます
それから1分もたたないうちに…すべての猿はいなくなったのです
凛「か、かよちん……すごい……」
海未「これは一体…?」
花陽「ぅ………」ドサ
凛「かよちん?」
すべて去った時……ここまで気を張っていた私の心は、あっさりと折れてしまいます
その場でへたり込み、酷い扱いをしてしまった子に、ただ巻き込まれただけで死んでいった猿達に、
もっと早く気づいていれば誰も傷つく事はなかったはずのこの結末に、
私は大声をあげて、ただ泣き叫ぶことしかできませんでした……
SS ラブライブ N◎VA R -end-
NEXT → SS ラブライブ N◎VA R2 に続く……Zzz……
零式来る前に更新期待したけどこなかったか
しばらく零式漬けかな この作者が別スレで保守してる奴らウザいって嘆いてたぞ、お前ら外野の声とか迷惑なんだから黙るか消えるかどっちかにしろ 新スレ立てたら告知来ると思って保守してたんだが落とした方がいいの? 別スレ立ててまたひっそりとやるのでここは落としてくださいな ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています