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梨子「熱帯雨林」 [無断転載禁止]©2ch.net

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0003名無しで叶える物語(地図に無い島)@無断転載は禁止
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2017/06/15(木) 20:49:11.33ID:hIn4jgmt
 東京に比べて沼津は雨が強い。天が癇癪でも起こしたかのような勢いで雨滴をアスファルトに叩きつけてくる。
雨が地を叩く音を聞くのももう慣れたが、転入して初めて迎えた梅雨期には桜内梨子も強雨の洗礼を受けていた。
 今日も大雨が西伊豆を襲っている。恋人の渡辺曜と会う予定があったが、雨を理由に変更しようとは思わなかった。
自分にとっては大雨でも、地元の人間にとっては日常でしかない。梨子にしても、身を濡らしてでも押しかけたい気持ちが勝っている。
だから怖じる心を抑え込んでバスに乗り込み、沼津港に設置された大型展望水門までやってきた。
 この施設はびゅうお、と言うらしい。梨子が目指すのは最上階の展望台である。
晴れた日なら富士山も臨めただろうが、激しい雨と雲が邪魔をして今日の見通しは著しく悪い。
「わっ、梨子ちゃん濡れちゃってるよ?やっぱり別の日にした方が良かったかな?
それとも私が梨子ちゃんの家に行った方が良かったかなー」
 そう言いながら梨子を迎える曜も、袖や裾を濡らしていた。
髪も水泳部の活動後に見るのと同様、毛先のウェーブが強めに出ている。
0004名無しで叶える物語(地図に無い島)@無断転載は禁止
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2017/06/15(木) 20:50:40.33ID:hIn4jgmt
「私の家の方に来たって何もないわよ。お母さんだって居るし」
 言いながら、梨子は曜の隣に腰掛ける。
「雨の日のこっちだって何もできないよ。船も欠航だし」
 本当ならば、遊覧船でクルーズする予定だった。
そのデートのプランを考えていた時点の天気予報は雨ではなかったが、伊豆は天気が変わりやすい。
一昨日の時点で、既に雲行きは怪しくなっていた。
「改めてになるけど、凄い雨よ。これが地域性ってものなのね。引っ越してくる前は想定外だったわ」
 お洒落なアパレルがないことも、バスの運行間隔が長いことも、遊ぶ施設が少ないことも、
田舎に引っ越すと分かった時点で全て想定のうちである。だが、天候の違いまでは考慮していなかった。
0005名無しで叶える物語(地図に無い島)@無断転載は禁止
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2017/06/15(木) 20:51:59.40ID:hIn4jgmt
「らしいね。パパや年配の船員さんからよく聞くもん、昔から雨が強くて、狩野川の流域はよく荒れたって。
因みにね、沼津の雨量はまだマシな方なんだよ。
あっちのお山の、狩野川の源流がある天城連山の方はもっと凄いんだって」
 曜が南東に指を向けながら言った。雨と霧で視界が悪いが、普段ならば山まで覗けているのだろう。
伊豆は雨が降ると霧も濃く立ち込める日がある。山に向かうほどその傾向は顕著だった。
梨子の母親も自家用車で雨天の運転時に“文字通りの五里霧中”を受けて懲りたらしく、
今では雨の日の車の運転を控えている。
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2017/06/15(木) 20:53:08.71ID:hIn4jgmt
「山の方はそんなに凄いんだ。私としてはこの辺りでも吃驚するくらい強い雨だと思っちゃうな。
その中でも今日は特別に凄いけど、普段の雨だって東京と比べるとかなり強いわよ」
 豊富な雨量と多湿な気候のせいか、アスファルトの歩道の所々に苔が群生している。
山側に至っては、苔一面で覆われている壁も珍しくはない。今日の強烈な雨もまた、苔を潤していくのだろう。
「まー今日は強い方だね。台風でもないのに降り過ぎかな、って私でも思うもん」
 言葉とは裏腹に曜の口調は呑気に響き、より過酷な環境を乗り越えてきた者の持つ余裕が感じられた。
「ねぇ、台風の日はもっと凄いの?」
 堪らず梨子は問う。分かりきった事ではあるが、確認もなしに風雨の激しい日を迎えるのも恐ろしい。
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2017/06/15(木) 20:54:29.04ID:hIn4jgmt
「うん。台風が来ると凄いね。川の上流域とか物凄い事になるみたい」
「今日も、凄いけど」
 沼津港の直前、狩野川に架けられた橋を梨子の乗るバスも通っていた。
だが、川を凝視した訳ではない。車内から瞥見しただけでも、川は土石流でも下っているような迫力があった。
現に南方に見下ろす狩野川河口でも、茶色の流れが海へと凄まじい勢いで呑まれている。
「台風の日はもっと大変なの。昔も狩野川台風とかあって、凄い大変だったみたい。
あれはパパより上の世代の話だけどね。でもその前から大雨で流域には被害を出してたから。
治水工事とかやってはいたんだ。狩野川台風には間に合わなかったけど、今は完成してるよ。
今日も通ったんじゃないかな?ほら、三本の穴」
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2017/06/15(木) 20:56:20.36ID:hIn4jgmt
「もしかして、あの三本のトンネルみたいな?
PV撮った時に長岡まで自転車で行った時、交差点の下にあったあれ?」
 地理を思いだしながら梨子は言う。伊豆は道路がひどく単純で、梨子もすぐに土地勘を備える事ができた。
内浦から沼津駅に向かう際、長岡方面に向かうトンネルと道路がある。
直下の海が、水中に浸る三本のトンネルと繋がっていた。
 PV撮影を兼ねたサイクリングで初めて見た時は、洞窟の奥を満たす水の暗さが怖かった思いがある。
トンネルの反対側もその際に目に収めたが、
橋と道路の下に通されたコンクリートの道は干上がった人造湖を見ているようだった。
気になったが強行軍の最中とあって聞く余裕はなく、またその後も用途を尋ねる機会もなく、今日に至っている。
「そうそう、それ。放水路なんだ。
狩野川の増水時には長岡側で開門して、川が氾濫しないよう放流しているの。
この辺、山というか岩というか崖というか、如何にも丘って感じでしょ?大きな工事になったみたい」
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2017/06/15(木) 20:57:32.63ID:hIn4jgmt
「そうなの。それで、今日は放流しているの?」
 今日も放水路の前は通ったが、気に留める程の強い関心を向けていなかった。
その時にバスの車中で梨子が視線を向けていたのは、海の方かスマホの画面かである。
「いや。この程度の雨じゃ開門しないと思うよ。台風の時くらいかな」
 この程度、と苦もなく言ってのける曜に、梨子は隔世の感を抱く。
「このびゅうおも、確か津波対策っていう自然災害防止の側面も持っているのよね。
そういう話聞くと思っちゃうな。私、温室育ちだなって。
やっぱりこっちの人って、そういう過酷な自然環境の中で生き抜いてきたのね」
 胸の逼迫に耐えかねた梨子は、切なる思いを吐き出した。こんなに近くに居る曜が、酷く遠い存在に思える。
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2017/06/15(木) 20:58:54.45ID:hIn4jgmt
「え?それを言ったら私だって、そういう治水工事とかが終わった後に生まれた世代だよ?
まぁ、びゅうおが出来た頃には生まれていたけど」
「そういう防災インフラ構築どうこうの話じゃなくって。
例えば雨一つ取っても、私なんかとは耐性が全然違うわ。
こっちの人って、自然と戦う気質が備わっているんだなって。私にはないものよ」
 梨子が疎外感を口に出すのは初めての事だ。
曜と付き合う前も後も、今に至るまで口にした事のない衷情だった。
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2017/06/15(木) 21:00:00.12ID:hIn4jgmt
「んー、そうかなぁ?まぁ来て半年も経ってないんだし、慣れてないのはしょうがないんじゃないかな?
大体、都会での生活だって田舎とは違う大変さが色々とあるんじゃないの?
それに対する耐性こそ私達にはないものだよ」
 曜の言う私“達”に、自分が含まれていない。それこそが疎外感の元だった。
容姿と性格が良いのみならず、高飛び込みでも秀でた結果を出す曜は、
同性異性を問わずに多くの地元の者から好意を寄せられている。
その中には単純な好意に収まらず、恋情を抱く者も数多居るに違いない。
梨子はそんな恋人を誇らしく思うより前に、不安になってしまうのだ。
曜に思いを寄せる彼等彼女等は、自分よりも曜の多くを理解している。
地質的にも曜の感覚に沿う事が出来ている、と。
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2017/06/15(木) 21:01:10.61ID:hIn4jgmt
 曜を盗られてしまうとの危惧まではない。曜は安易に自分を捨てるような人間ではないと分かっている。
だが、自分にない感覚を曜と共有している者達の存在が、日常の中で梨子の目に嫌でも入ってきてしまう。
それを見せつけられる日々は、梨子に嫉妬と疎外感を植え付けるには充分だった。
曜には分かるまい。曜より梨子を知っている人間が彼女の日常には居ないのだから。
「その大変さに私は耐えきれなかった。そして逃げ出した。
どんなにプレッシャーを負っても結果を出し続ける曜ちゃんとは違うわ。
人の波にも負けて、自然にも勝てそうにない。負け続ける私とは大違いよ」
 自然、梨子の返答も自嘲めいたものとなった。
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2017/06/15(木) 21:03:34.58ID:hIn4jgmt
「梨子ちゃんは負け続けてなんかいないよ。ちょっと不安になっちゃってるだけなんだよ。
やっぱりこっちの自然み溢れる生活はまだ不安なんでしょ?
自然の脅威に晒されて、っていうと大袈裟かもだけど、
何でもある都会から山と海に挟まれての生活だと落差も激しいし、気弱になるのも無理ないんじゃないかな」
 曜が心配そうに顔を覗き込んできた。同時に、手に温もりも感じる。曜が握ってくれているのだ。
「不安ってほどでもないわ。ちょっと、心細くなることはあるけど。
今日も、土砂降りの中、沼津の道に出かけるのは正直に言って怖かったかも」
 山の側からは砂利とともに水が流れ落ち、もう片側には荒れる海が君臨している。
だが、それで怖じていては、この環境下で育ってきた曜との間の距離も広がってしまう。
少なくとも、現地の同世代の子達よりも曜とのギャップが大きくなってしまう。
曜の一番傍に居たい。その一心で梨子は恐怖をかなぐり捨て、大雨の中を強行してきた。
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2017/06/15(木) 21:04:48.54ID:hIn4jgmt
「怖かったのなら言ってくれれば良かったのに。迎えに行ったよ?」
 梨子の手を握る曜の手に力が篭った。
「そんな。悪いわ。私だって慣れなきゃいけないことだもの。あまり甘えてばかりもいたくないし」
「んー、私は梨子ちゃんにいつも甘えてるから、甘えてきてくれると嬉しいけどな。
だって私なんかが梨子ちゃんの力になれることなんて滅多にないし。えへへ、こういう雨の日はチャンスかも」
 曜が嬉しそうに笑いながら続けて言う。
「そうだ。うちに移動しない?家近いんだ。気候が荒いから、私が守ってあげるね。
終バスまでには雨も止むみたいだけど、どうせ此処に居てもやることないし。
服も濡れてるから乾かさないと風邪引いちゃうしね。
今日もだけど、パパの居ない日が多いから雨の日は私も寂しいんだ」
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2017/06/15(木) 21:06:40.75ID:hIn4jgmt
 魅力的な誘いだった。曜の家に行くことも、守ってもらうことも。
遊覧船に乗る予定には穴が空いてしまっているが、埋めて満ちるに余りある。
「そうね。私も曜ちゃんの家に行きたいわ。
ふふっ、遊覧船には乗れなかったけど、
曜ちゃんの家にお邪魔できるなんて、雨も悪いことばかりじゃないわね」
「よーし、決まりっ」
 曜が梨子の手を握ったまま勢いよく立ち上がる。
連れて梨子も立ち上がったが、曜はすぐには歩き出さなかった。まだ、言いたい事があるらしい。
「後ね。梨子ちゃんにだって、戦うDNAはあると思うよ。相手は自然に限った話じゃないんだよ。
歴史で勉強した話だけど、東京の人も戦後の復興期を支えてきた訳だし、
その後の政争や経済の中心地だった訳だしね。
梨子ちゃんは逃げた訳じゃなくって、別種の闘志を持ってきてくれたんだって私は思ってるの」
 穏やかに紡がれる曜の声を、梨子は天地の反転する思いで聞いた。
そうだ。梨子が逃げ出したと内心で恥じていたとしても、曜から見れば梨子は“やって来た”人間になるのだ。
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2017/06/15(木) 21:08:15.75ID:hIn4jgmt
 そういえば、と梨子は思い出す。
自分がかつて一年間籍を置いていた音ノ木坂も、数年前には廃校の危機に瀕していたらしい。
それを救ったのは、今の自分と変わらない年齢の少女達の奮闘だ。
一年で逃げ出したと思うよりも、その闘志のDNAだけでも持ち込んできたと思った方が遥かに格好は付く。
少なくとも、自分よりも遥かに曜と付き合いが深かったであろう沼津の人間にはないものだ。
それを曜が特別だと思ってくれるのであれば、
この地で曜の傍にあってなお自分のアイデンティティは確立できる。
「ふふっ、別種のDNAを持って来てくれたとか、まるで外来種と交わるみたいに言うのね。
交配の行方が楽しみよ」
「ふぇっ?
いやっ、シナジー効果とかそういう積もりで、別種とかDNAとかの持ち込みの例えを出しただけだよぉっ。
後っ、別種の闘志って言ったんだしっ」
 慌てる曜が可愛らしい。
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2017/06/15(木) 21:09:21.93ID:hIn4jgmt
「分かってるわよ。でも、私を家に呼んだのは?その下心も分かって乗ってるの。期待していいのかしら?」
「うー。まぁ、パパの居ない日に家に呼んだのは、そういうのに持ち込む目的もあったけど。
だって、濡れて透けてる梨子ちゃん色っぽいし」
 曜の凝視を身体に感じては、梨子の身も火照る。濡れた身体の奥が滾って仕方がない。
「曜ちゃんだって色っぽいわ。さ。行きましょ」
「うん」
 梨子が促すと、梨子の手を握る曜も歩き出した。
そうしてびゅうおを降り、傘を翳す。
びゅうおで語らう内に、雨足も弱まってきていたらしい。
地を打つ雨声は幾分か和らいでいた。
「ねぇ、曜ちゃん。確か曜ちゃんの家って、川沿いよね?」
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2017/06/15(木) 21:10:44.45ID:hIn4jgmt
「うん。あっ、でも大丈夫だよ。高い堤防があるから、今日の雨程度で氾濫したりはしないよ」
 地震と大雨が重なって津波が逆流してくれば別だけど、と曜は笑う。
いつ来るとも知れない東海地震の恐怖とも彼女達は共存しているのだ。
メメント・モリ。その実感を自然が迫ってくる土地だ。
 だが、もう怖くはなかった。自分にだって別種の闘志がある。
ダイバーシティは有効な生存戦略だ。
それに、何より──
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2017/06/15(木) 21:11:26.77ID:hIn4jgmt
「そうじゃなくって。いえ、その心配がないなら尚更ね、お願いがあるの。
川沿いに歩いて曜ちゃんの家に行かない?」
「んー、いいけど、怖いんじゃないの?」
「もう怖くないわ、大丈夫よ。だって、守ってくれるんでしょう?」
 何より、曜が守ってくれるから。そう信じられるから、自然の脅威とも共存できる。
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2017/06/15(木) 21:12:34.90ID:hIn4jgmt
「うんっ、任せて。なんか嬉しいな。
梨子ちゃんみたいな綺麗な子をエスコートできるなんて、自慢しながら行列組んでる気分」
 曜が照れたように笑う。
「私だって自慢してる気分よ」
 今までは、恐怖と不安と嫉妬から、曜の隣に居場所を確保せんと固執していた。
まるで縄張りを主張する鳥獣のように。だが今は、この居場所を何らの外患も感ぜずに高らかに誇れる。
玉座に腰掛ける気分だった。
「梨子ちゃんにとって自慢できるなら嬉しいな。あっ、ほら、あれあれ」
 話しながら歩いているうちに、堤防の近くまで来ていた。
曜が駆け寄りながら指を向ける。そこに着く前から、川より響いてくる轟音が梨子の耳に届いていた。
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2017/06/15(木) 21:14:16.95ID:hIn4jgmt
「わぁっ」
 首を傾けて覗き込んだ梨子は、一言だけ発して絶句する。
弱まりつつある雨の中にあっても、川は苛烈な力で暴れていた。
川幅狭しと荒れ狂う茶色い奔流が、絶え間なく下流へと押し流されてゆく。
いつもなら見えているだろう川岸の草むらも川原も、
濁った激流に飲み込まれてしまって何処にも見当たらない。
噴火口付近のマグマを連想させるほどに、川の全てが激しく移ろう。
呑まれたら一巻の終わりとはこの事だ。
「これ、台風の時はもっと凄くなるの?」
 堤防沿いを歩きながら、梨子は尋ねた。これ以上、となると想像もできない。
「んーん。まぁ上流は違いが出るだろうけど。
ほら、台風とかで今日以上の雨量になると、放水路が開門するから。
そっちから放流されていくから、この辺りの下流域は今と同じくらいかな」
 そこまで言って、曜は台風の時は決して近づかないようにと念を押してきた。
風も凄いので万が一飛ばされたら大変、と真顔で迫っている。
地元の人間には言わない事であろうが、梨子は疎外感を覚えなかった。
寧ろ、恋人から身を案じられる嬉しさと優越感で心が満ちる程に、心の余裕も生まれていた。
0023名無しで叶える物語(地図に無い島)@無断転載は禁止
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2017/06/15(木) 21:15:32.19ID:hIn4jgmt
「ふふっ、約束するわ。
じゃあ、今日は曜ちゃんが許してくれる中で、丁度ピークの狩野川を見る事ができたのね」
 梨子は言いながら再び川に視線を転じた。
自然の営む迫力には驚嘆を禁じ得ないが、曜が傍に居るためか恐怖はなかった。
この安堵が、梨子に確信を齎す。もう曜と地元を同じくする友人達に嫉妬することはないだろう、と。
この自然の脅威から守ってもらえるのは、余所者と恋人を兼ねる自分だけなのだから。
 曜の家も見えてきていた。着いたらまずは母親に連絡しよう、と梨子は思った。
大雨の後で連絡がなければ心配もするだろう。外泊の連絡も入れたかった。
この雨も終バスまでには止んでしまうらしいが、止んでなお、自分達は互いの身を潤し合う大雨の渦中に違いないのだから。

<Fin.>
0025名無しで叶える物語(禿)@無断転載は禁止
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2017/06/15(木) 21:19:37.88ID:FKxlOUsm
外来種との交配は?
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2017/06/16(金) 01:33:55.18ID:/Pdu4wip
回りくどい文体と物理的な読みにくさが相まってなんとも言えん味が出てると思いました(褒めてます)
SSばっか読んでたから新鮮だった


でも頑張って読んだのに交配がないのは酷いと思うのではよして
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