ぼくはこれまでに数え切れないくらいのキャンプをしてきた。そのほとんどが川のほとりや海岸だ。そしてそのほとんどが一人ぼっちでのキャンプだった。
それはそのキャンプが、翌日朝いちばんで釣りをするためのものだからだ。ぼくは徒歩と電車で釣り場へ行くので、始発電車じゃいちばん乗り出来ないんだ。
出かける前はとてもわくわくする。その気持ちはいくつになっても変わらない。
キャンプ道具や釣り道具を100リットルリュックに詰めながら、大きな魚が釣れることを考える。
自分のからだほどもある100リットルリュックの重さを心地よく感じるのは行きだけだ。
渓流で岩を登ったり転んだり、散々遊んだ帰り道は地獄を見る。それでもぼくにはうれしいのだ。この100リットルリュックとともに川に来られたことが。
帰りの電車では、昨夜、焚き火をしながら木々の間から見た綺麗な月や、川の流れの音を思い出しながら心地よい眠りに落ちる。座った足の間にリュックを挟むようにして。
今年ぼくはリュックを替えた。東京を離れ、生まれ故郷の函館へ戻ったのを機に80リットルリュックに替えた。