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虚堂和尚三轉語 1/3
己眼未明底     こがんいまだ明らかならざるてい、   
因甚将虚空作布袴着 なにによってかこくうをもってふことなしてつく

畫餅冷腸飢未盈 がびょうれいちょううえいまだみたず
娘生巳眼見如盲 にょうじょうのこがん見てもうのごとし  
寒堂一夜思衣意 かんどういちやころもを思ふ意
羅綺千重暗現成 らきせんじゅうあんにげんじょう 

くま訳(観念的理解へのこだわり)
いまだに見性できないでいる者は、なぜ虚空を衣服にしようとしているのか。

絵に描いた餅ちでは、わびしかろう、いまだ飢えを満たせまい。
少女が見性者を見ても見分けがつかない様なものである。
寒いお堂で一夜を過ごすときに衣のことを考えるようなものである。
美しい薄絹の衣(美辞麗句)をいくら重ねても闇が深まるばかりである。

*虚堂智愚:1185―1269南浦紹明 (大応国師) は虚堂の法脈を受けた臨済禅を日本に伝えた。
*転語:迷いを転じて悟りに至らしめる言葉

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虚堂和尚三轉語 2/3
劃地爲牢底因甚 透者箇不過  地に画して牢と為す底、 なにによってかしゃこをとほり過ぎざる

何事春遊興未窮 何事ぞ   いまだきわまらず
人心尤是客盃弓 じんしんはもっともこれかくはいのきゅう
天堂成就地獄滅    成就し地獄滅す
日永落花飛絮中 日は永しらっかひじょのうち

くま訳(錯覚)
地面を区切って牢としている、何でそこを通りすぎないのだ。

のどかな(言葉の)お遊びにいまだ飽き足らない
人の心は、盃に写る弓の影を見て、蛇だと錯覚したりする。
極楽浄土へ行けば、地獄は滅する
いつまでも、花が落ち、風に舞う綿毛のようであることだ。

*飛絮漂花(ひじょ):遊女などに身を落とすこと、女性がつらい境遇で、見込みもないまま苦労すること。
(´・(ェ)・`)
(つづく)