マナとカナという名前の双子がいた。5歳児である彼女たちは虐待環境の元で育ってきた。
まともに言葉も教わらず、彼女たちに喋れるのは自分の名前と「はい」の返事のみであった。

ある日二人を知る賊が、富豪に双子で売りつけるために二人を誘拐した。
賊はトラックの荷台に双子を乗せて山中を走らせていた。が、道中で目の前に何かがよぎり、雨によるスリップ事故を起こしてしまった。賊が荷台に乗せていた双子を確認しに行くと、二人のうち片方は頭が真っ二つに割れ、息絶えていた。
雨が山道に降りしきり、霧が辺りに立ち込めている。
賊は仕方がなく死んだ方を土の中に埋めると共に、ふと死んだのがどちらの方か気になったので、死体の遺棄を終えたタイミングで生きている方に尋ねた。

「おい片割れ。今埋めたコイツの名前はマナか?カナか?ええ?どうなんだ?」

雨がざあざあと降っていた。

「マナ」

「じゃあお前はカナの方か。よく聞けカナ。今から素直に俺の指示に従っていれば解放してやる。だから黙って大人しく言う通りにしろ。いいな、カナちゃんよ?」

「はい」

返事がカナから返ってきた。