私の通う学校には井戸がある。

呪われているらしく、毎夜毎夜、その井戸から手が出てきて「助けて」と悲しい声がするそうだ。

学校の七不思議なんて、正直信じない人のほうが多い。そうなれば当然、肝試しのネタになる。友人たちと一人ずつ、井戸へ向かう。

「タスケテ……」

本当に声がした。井戸を覗き込もうとしたら、白い手が出てきた。

悲鳴を上げて手を振り払い、仲間のもとへと走った。

「ほ、本当に出たー!」

先に肝試しを終えていた皆が、「幽霊なんていねーよ」と笑うが、ふと真顔になった。

「お前の前に井戸に行った良江はどこにいった?」