「思いっきり陽気で派手で華やか好みの女の子が、猛勉強のあげくハーバード・ロウ・スクールに入学、弁護士をめざす」(中野翠「クロワッサン」2002年)
この文章を読んでどう感じただろうか。「あげく」という語の使い方に違和感を覚えた方が大勢いらっしゃるのではないだろうか。

以上『悩ましい国語辞典』

全体としてまあまあ穏健な立場ですが、この章全体を読むと指摘不足も感じます。

件の文は人物のアクティブな熱気を伝えるものなので過剰さや唐突なイメージを少々外連味のある文体として表現しているのではないかと思います。

作文してみます。
「下町生まれの札付きの不良少女が、1日20時間勉強したあげくに最年少総理大臣にまで上り詰めた」

これを総理大臣は栄達なのだから、結果が悪いことに使う「あげく」はおかしい、というのは、文章の機微への感性が鈍いかもしれません。

また、基本的にネガティブな表現と過剰さの強調が、共通しているということは日本語に限らず普遍的です。