愛萌と菜緒の物語
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「ねぇ、ここさ、誰もいないじゃん…メッチャさ、ふたりだけの、なんか…」と彼女は囁いた。 野蛮な埼玉人たちの狂気じみた怒号に怯え、彼女は私の手を強く握った。 愛萌の手が菜緒の肩をそっと包み込む
気付くと愛萌の手は小坂の胸の膨らみにまで到達していた
「菜緒 私‥菜緒のことを‥ずっと‥」
「えっ!?」
菜緒の透き通った瞳の奥に波紋が広がった 先輩にかわいがられて嬉しそう。笑顔を取り戻してくれてよかった。
でも、今週のshowroomも来てくれないんだろうな。
showroomなんて、菜緒と一緒にいる時間を作る口実作りでしかないのに。 河田陽菜は咆哮した。己れの不出来を嘆いたのではなく、己の不義理を嘆いたのだ。
濱岸は私の成功を信じたのではなく、河田陽菜という人間こそを深く信じていたのだ。 二期生バス旅見ると、小坂はまなもとべみほ以外ほぼ話してないんだが…
他のメンバーもにこやかなんだけど実は色々あるんだとしたら(なかったらそれも逆に変)ほんとマジで女の感覚ってわからん >>9
河田とも仲良さそうにしてたって書き込みあったけど。 >>11
バス旅見もしないでそんなことは気になるの? 愛萌は趣味を、とても嬉しそうに私に話す。
でも、自分の弱いところや本当に大切なことは話してくれないし、私も聞けない。なにかが壊れてしまいそうだから。
いつも断ってばかりだったからか、今日も隣にいるのに金曜のshowroomに誘われない。誘われるとつい断っちゃうのに、誘われないと不安になる。気圧のせいかな。 バス特典は丹生ちゃんとは距離を感じたね、隣に座った時に距離が離れてた、河田さんには頭をポンポンしてた 小坂の家に遊びに行ったことがあるのは加藤だけだから宮田とも本当に仲がいいかはわからない ここのところ、ちょっと頑張りすぎちゃってるんじゃないかって、少し心配だった。私の元気じゃ弱すぎるかもしれないけど、いくらでもあげるから今夜はゆっくり休んでほしい。
菜緒は元気なくなると、いつも私に甘える。それを少し嬉しく感じてしまう自分が嫌い。 明日も仕事だから早く寝よう、と考えるほど眠れなくなる。
ついスマホに手を伸ばしてしまうけど、今夜は愛萌からのLineが来てない。
愛萌は私より体弱いのに、いつも私に明るく接してくれる。帰り際、疲れた顔してる私に「無理しないでね」って言ってくれた時、私は明るく返せてたかな?愛萌の優しさに甘えてばかりだ。
雨音を聞きながら、次に愛萌に会ったら私からじゃれついてみよう、なんて考える。 もしかしたら、菜緒が休んでた時期の方が仲良かったかもしれない。
菜緒の時間は止まっていて、私はいつでも思う存分心配できた。
ゆったりとまどろんでいた菜緒は私たちの元に戻ってきて、頑張って笑ったり疲れたりと揺れている。
「愛萌やみんなも頑張ってるから」なんて呪いのような言葉を菜緒の口から聞きたくはなかった。全部私のわがままだってことは分かってる。
私の弱さが詰まった永遠に口に出せないであろう言葉たちは、青いインクでモレスキンのノートに封じ込めて、お母さんも開けない鍵付きの引き出しにしまう。 綺麗になったね、と言ってくれたおじさんは、昔、握手会でナウシカみたい、と言ってくれたよね?と話すと、とても喜んでくれて、そのまま画面の奥に消えて行った。
同い年くらいの地味な男の子は、顔を硬直させたまま、とてもよくできた私のイラストを見せてくれた。もう少し上に上げて、と頼むと、一言も話さないまま、彼は消えて行った。
昨日の配信からはしゃぎっぱなしだった愛萌は、最後ガソリン切れしちゃった、と笑いながら帰って行った。
部屋に帰り明かりを付けると、さっきまでの高揚感もゆっくりと消えていく。お風呂が沸くまでの間、鏡を見て、笑ってみたり、鼻をつまんでみたりしてみる。
愛萌は結局、昨日自分の配信を見たか私に聞いてこなかったな。 誰とでも楽しく喋れるとこに憧れる、と言う彼女は、いつも誰も傷つけない言葉をゆっくり探す自分の美しさにまるで気づいていない。私が疲れていると、子供を寝かしつけるように、背中をぽんぽんと優しく叩く。
昨夜の寝不足を引きずった私は、胸に手を当てて自分の鼓動を確かめる。
ふたりで水族館に行くことも、もう一度ディズニーへ行くこともない気がする。そんな予感はおくびにも出さず、夢みたいなことを語り合って、私たちは何度も笑い合う。
その先になにもない関係は、とても私を安心させてくれる。 まなも「わたしのSHOWROOMの誘いはつれなく断り続けて美穂のSHOWROOMには二つ返事で出るってどういうことさ、なお」 私はとても幼稚で残酷な人間だ。約束は破るし、甘えてばかりのくせに誰かに縋られるのは煩わしく思ってしまう。そんな私を猫みたい、と笑って明るく振る舞う愛萌に、上手く笑い返すことすらできなかった。
随分前に貸すと約束したマンガを、明日こそ持っていこう。いつもそう思うのに、朝が来るとそんな約束自体忘れたことにしてしまう。マンガは、もう3ヶ月も紙袋に入れたままだ。 “私たちはただの同期だったけど
私たちの中には独特の関係性が漂っていたのだと思っています。”
まなも「独特の関係性?だって私と美穂は菜緒を取り合うバッチバチのライバルですから」 こしゃかなって、まなもやべみほみたいに癖のある話し方する子といるのが、居心地いいんだな。包容力ありそう アイドルの序列は残酷だ。
ポジションひとつでメディアへの露出度が変わるのだ。センターである菜緒を見ていると、とても同じグループに所属している人間だとは信じられなくなる時がある。
もちろん自分にもいくつか長所はあるんだろうけど、アイドルである以上は彼女の背を追わねばならない。
でもどうだろう?序列があるから今の関係性た持てているのではないだろうか。だとすればずっとこのまま…
なんてのは甘いのかもしれない。 耳がくすぐったい、そして身震いがする。直後全身の力が抜ける。
滑らか且つ真芯を突く繊細な加減は、天使の息吹か。
衛生かの如く付き纏い、愛萌を捉えるその瞳は茶目っ気に満ちている。
「菜緒!わたしやっぱり…」
そこまで言いかけて自分の口を必死に抑える。
重くなりかけた空気を無邪気に彼女の笑い声が取っ払った。
「あの、もう一回…して?」
愛萌の声は何かを誤魔化していた。 菜緒とはあれからあまり話してない。
顔を合わせばいつものように笑い合って2人だけの馬鹿な挨拶をするけど、それだけ。
その時その時、菜緒が甘えたがる相手の基準は、誰にも分からない。
多分菜緒自身も分かってないんだろう。ただ、甘えられるとみんな、少し嬉しそうに菜緒を受け入れる。
私は私で、ため息をついたり、はしゃいだりと忙しい。なにかを振り払うように、私の夏は慌ただしい。 ハッピーオーラなんて果たしてこの私にあるんだろうか?なんて思いを巡らせることが多々ある。
どうもグループの方向性と私の向く方向が違う気がしてならない。
そんな風に途方に暮れる時、決まって愛萌を見る。
多分私と同じこと考えているんだろうけど、彼女の場合は表面で上手く処理できている。
器用だなと思う。
一度コツを聞いてみようかとも思ったけど、頭で理解してどうこうできるなら、すでにやっている。
やっぱり自分なりに誤魔化し続けるしか道は無いのかしれない。 「ここは削ろうか」と言われて、後ろめたさとともに黙って頷くのが私で「えー、でもやっぱそれも出たいですね」と笑って駄々をこねるのが愛萌だ。
愛萌は私のことを猫みたい、と言うけど、私からしたら、ミニチュアフィギュアを持ってはしゃぐ愛萌はまるで仔犬だ。
最近の愛萌は、ちょっと張り切りすぎてる気がする。こんな私に心配されるなんて、ちょっといかがなものかなー。
愛萌は人に心配されるのを嫌がるから、今日もおどけた挨拶しかしなかったけど。 「みんとちゃんは元気?」
菜緒の声はとても小さいから、いつも以上に騒がしい楽屋の喧騒に掻き消された。
「子供の時と比べたら寝てること多いけど、元気だよ」
「そっかー」と言いながら、菜緒は久しぶりに私の隣に座った。
嬉しくなってみんとのムービーを見せびらかす私は、まるでお馬鹿な犬みたいだ。
「愛萌は?元気?」みんとを見ながら、菜緒が言う。
周りのみんなは優しすぎるから、直接元気か尋ねられることなんてここ1年なかった。まして菜緒から尋ねられるなんて。
「元気だよ、菜緒は?」
「お客さんが入ってくるとこ見てたら元気になった」
雨が降る夏の夕方、ウイルスが蔓延しているであろう楽屋で、弱小チームが笑いながら元気をかたり合った。
鼓動が高鳴るのは、もうすぐライブが始まるから。 「みんとちゃんは元気?」
菜緒の声はとても小さいから、いつも以上に騒がしい楽屋の喧騒に掻き消された。
「子供の時と比べたら寝てること多いけど、元気だよ」
「そっかー」と言いながら、菜緒は久しぶりに私の隣に座った。
嬉しくなってみんとのムービーを見せびらかす私は、まるでお馬鹿な犬みたいだ。
「愛萌は?元気?」みんとを見ながら、菜緒が言う。
周りのみんなは優しすぎるから、直接元気か尋ねられることなんてここ1年なかった。まして菜緒から尋ねられるなんて。
「元気だよ、菜緒は?」
「お客さんが入ってくるとこ見てたら元気になった」
雨が降る夏の夕方、ウイルスが蔓延しているであろう楽屋で、弱小チームが笑いながら元気をかたり合った。
鼓動が高鳴るのは、もうすぐライブが始まるから。 菜緒の写真集パラッとめくる。
美しさと可愛さに一瞬目眩がする。
そのまま仰向けになって、腕を伸ばして紙面の菜緒を天井に向ける。
「上から目線…」なんて呟いてみたけど、威圧的な雰囲気は微塵もない。
だから少しずつ腕を曲げて、自分の顔に近付ける。
開いた本を顔にかぶせると、真っ暗になる。
このまま眠ってしまおうかしら。
目を閉じたけど、さっきの残像がはっきりと、だけど儚く揺れている。
部屋の外からわちゃわちゃとした声が近づいてきた。
「みんなに勘違いされちゃうね」
至近距離の厚紙が少し湿る。
唇を尖らせてたてた音が、無人の楽屋に響く。
白い水着に薄っすら残るリップグロスは、動かぬ菜緒との秘密のあかし。 同じ学校、同じクラス、性格もそれほど違わない。それでもって席は隣。
そんな状況になってさえも、愛萌には中々話し掛けられないだろうなと思う。
クラスの皆が仲良くなるなか、消去法で二人だけ浮く。
ようやく挨拶を交わすようになって、孤独を避ける。
そこで気付くのだ。
ああこの人とはずっと親友同士ででいられるのだと。
直感でしかないけれど、愛萌とはそういう関係性なんだと思う。
あまりにも脆弱な関係だから、ちょっとした不条理でバラバラになる。
やがて愛萌が居なくなって、またすぐに親友ぐらい見つかるだろうと高を括る。
やがて、思い知らされる。
やはり彼女しか居なかったのだと。 夏の甲子園にあれだけのお客さんが集まるのは、球児の“負け”を見たいがためだと思う。
負けた彼らは高校野球から退き、美しく散る。
確かに熱中させる要素を感じるけど、いいとこだけ見て感動して、何だかずるい様な気もする。
愛萌に対してどう接すればいいのだろう。
辞めると言った瞬間に擦り寄ってくる人ほど厚かましいものはない。
でも、何でもないふりを出来るほど私は強くもない。
やっぱり普通にしているのがいいのかな。
正解なんて分かりゃしない。 「そっか…お互い頑張ろうね」
彼女が求めている言葉はきっと違うものだって分かってたけど、どんな言葉だったら喜んでくれたのかな?それは私には言えない言葉なんじゃないかな?
一瞬の空白の後に「菜緒も頑張りなよ」と肩をぽんと叩かれた時、無意識に縮こまってしまって、きっと私は彼女を傷つけた。
茉莉と未来虹は泣いていて、それを彩ねえさんが慰めている。彼女はその輪に入り「なんで泣くのよ、これからも遊んでよ」と笑ってる。そんな言葉さえ私への当てつけに聞こえて、そんな風に思う自分が嫌だ。
史帆さんと影山さんが「写真撮ろう」と声をかけてきて、私は無理に笑顔を作る。
『ねぇ、ここさ、誰もいないじゃん…メッチャさ、ふたりだけの、なんか…』
彼女に囁いた甘い世界はとっくに壊れて、今ではみんなが入ってくる。
彼女が帰って、すべてが終わった時、気づけばさっきまで泣いていたはずの未来虹が隣に座っていた。「菜緒さん、借りてたコナン今度返しに行きますね」
私は泣いてしまった。愛萌がほしいのは、きっとそんなどうでもいい一言だったのだ。 続けて欲しいけどスレ立てしてくれた方は、閉めるつもりで最初のセリフを持って来たんだと思う
愛萌さんの卒業までは続いて欲しい ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています