茉莉が楽屋で愛萌と二人きりになった時に起こりそうなこと
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茉莉ちゃん…これはもう完全に愛萌女子に手篭めにされてるやん… 「はぁ〜」
いつも履いている穴あきローファーのみたいに心にポッカリ穴が空き、口からはため息が漏れる。ため息つく度、スノウ君が心配そうに覗き込むんでくる。彼が人間で彼氏だったらきっと悩み事を聞いてくるのだろうが、残念ながら犬だ。
愛萌ちゃんとの関係は先輩後輩の垣根は超えたが、友達以上何とか未満という感じで有耶無耶なまま。気づけば季節は移り変わり、緑の葉が色を変え焦げ茶色へ変化するのでさえ嫉妬を感じてしまう。
「君はどうして犬なんだい?」
問いかけても白い毛並みの彼は相槌のように吠えるだけだった。そりゃそうか、自分に言い聞かせてレッスンへ向かう準備をすることにした。今日は愛萌ちゃんがいないのはスケジュールカレンダーで確認済み。落ちる気持ちを奮い立たせるように玄関のドアを押し開けた。タータンチェックのマフラーを巻き付けて代わり映えのない景色と吹き付ける風を受けながら駅へ向かった。
この時は知らなかったんだ私。今日がいつもよりちょっと特別な日になることを。 ひなあいのOAを見ながら、愛萌は怪しくほほえんだ。
「ねえ茉莉、今、どんな、気持ちいい?」 #2
凍えるような駅のホームへ見飽きたデザインの電車が停まる。ここから7つ先の駅がレッスン場最寄り駅だ。運良く車内はガラガラ、風が直接当たらない長椅子のど真ん中に陣取ることにした。足元からは温風が出ており、段々と眠気が襲ってくるのを感じた。寝過ごさなければいいんだし、体力温存しておいた方がいいし、茉莉は自分にそう言い聞かせ瞼を閉じることにした。
「お客様、お客様」
問いかける声が茉莉の瞼を押し上げる。朧気に見えた人影は何秒か後に車掌さんだとはっきり見えた。やばい、寝過ごした!ここはどこだ、今は何時だ、遅刻しちゃう!頭の中を様々な考えが駆け巡る。
「ここどこですか?」車掌さんにそう問いかけた直後、それが見慣れたよく知る人物であることに気付いた。
「さ、紗理菜さん?」 #3
「何処かでお会いしたことがありましたでょうか?」潮紗理菜さんに瓜二つな女性は首をかしげ私の問いかけに不思議そうに答えた。反応を見る限り私のことを知り合いとして認識してないことは直ぐにわかった。
もしかして他人なのかなという思いがこみ上げ、思わず「あっいえごめんなさい」と何に謝ってるかわからない謝罪を口にして焦って下車してしまった。
「あっお客様!」声まで紗理奈さんにそっくりな呼びかけを背にしてホームの駅名を確認したら、下車する予定の駅を5つ過ぎていた。向かいのホームに下りの電車が来ていたので、ドアが閉まる前に駆け込んだ。プシューという音と共にドアが閉まり、ガラス越しに先程の女性が私に何か呼びかけるのが見えた。
それにしてもそっくりだったな、世の中にそっくりな人が3人はいるとはいうけどそれなんだろうか。いやいや、それより遅刻しそうなんだよ。まずは連絡しなきゃ!そう思ってLINEをみたらあるはずの日向坂ライングループとメンバーがいない。なんでだ?今日は不思議なことばかりだ、目的地駅まで気が気じゃなかった。
駅に到着してレッスン場まで猛ダッシュ、ついてすぐマネージャーさんの姿が視界に入った。「遅れました申し訳ありません」下げた頭を上げると、マネージャーさんが今朝見た紗理奈さんそっくりな女性と同じ表情をしていた。
「乃木坂5期オーディションの希望者の方ですか?」 #4
「えっ森本です。森本茉莉!」問いかけに対し的外れな自己紹介はよりマネージャーさんの眉間に皺を寄せさせた。私のことを知っている反応で無いのは明らかだったが、後ずさりする気持ちをどうにか押し込めて私は続けた。「今日、日向坂のレッスン日ですよね?」不安と探究心が入り混じりつつも言葉を振り絞る。
「ひなたざか?、、、ちょっとわからないですけど別の場所と勘違いされてませんか?」不審な目ではあるが社会人として失礼の無いよう私の質問に返してくれた。初めて聞いた単語だったのだろうか、日向坂のアクセントが違っていた。「申し訳無いですが、関係者以外立入禁止ですのでお引取り下さい」そういった後、私は建物入り口まで追い返された。
なんだ、なんなんだ、日向坂46が存在していない。だとしたらメンバーは何処にいったんだ、私の知っている世界と私が直面している現実との違いに混乱した。ホームで出会った紗理奈さんそっくりな女性はもしかして、、、、考えを張り巡らしていたその時、スマホへLINEのメッセージが届いた。
「学校始まってるよ、今どこにいるの?」メッセージの主は私の知っている世界と唯一合致するメンバー、高橋未来虹からの連絡だった。 #5
高橋未来虹と私は同学年だが通う高校は違う。その高橋からのメッセージはあたかも同じ学校の同級生に当てたかのような内容だった。やっぱりおかしい、これが事実なら私が体感しているこの世界はまるでパラレルワールドというしか説明がつかない。釈然としない思いのまま一度帰宅した。
日向坂高校、それがこの世界での私の通っている高校のようだ。制服は「ってか」の時のものでグレーのブレザーにスカイブルーのシャツ、学校生活で着るのは違和感を感じるがクラスメイト達も全員着用しているので溶け込んではいる。
「一体何をしてたの?大胆な遅刻じゃない。」目の前にいる高橋は私の知っている高橋未来虹ではあった、ただ日向坂のメンバーではないようだ。「日向坂46 ?乃木坂が好きすぎて自分で作ったの?」笑いながら茶化している様子から、日向坂はこの世に存在していないと考えるのが自然だ。じゃあ、メンバーはそれぞれどうしているんだ?そう思い高橋に次々とメンバー名をあげて質問した。
「斎藤さんだとか、河田さんはわからないけど菜緒さん金村さん濱岸さんは学校の先輩じゃん、あと上村さんってあの一学年下の美少女でしょ」思わぬ反応に鼓動があがる、やっぱりいるんだ!しかもこんな近くに!「先輩3人はこの学校じゃ知らないひといないでしょ、かの有名なF3」高橋の言葉に反応した「F3って何それ?」私の返しに高橋は口を大きく開けて笑った「寝ぼけるの?花の3人娘。略してFLOWERスリー。茉莉もきゃあきゃあ言ってたじゃない」
どっかの少女漫画と酷似しているなぁと思って苦笑いした。ひなのも居るようだし、改めて不思議な世界だ。現実と少し異なる世界に前の世界の記憶があるメンバーはいないのだろうか、そう考えていたらチャイムが鳴り先生が入ってきた。
「は〜い。みんな席について、明日から転校して入ってくる生徒を紹介します」教室内がざわついた、こんな年末でも転校生なんて来るもんだな。「はい、じゃあ入ってきて」先生の呼びかけに小柄な少女が入ってきた。
「島根から転校してきました、山口陽世です。よろしくおねがいします」陽世だ!びっくりしたが、驚いたのは私だけではなかった。「茉莉ちゃん?美来虹ちゃんも!?」そう陽世は呼びかけてきた。 >>380
まりぃちゃんを奥に座らせて逃がさないように通路側に座る愛萌
一枚目、愛萌の右手は、まりぃちゃんの脚をスリスリしてんのか? #6
「あらっ知り合いなの?」先生の呼びかけに高橋は首を横に振ったが私は大きく首を縦に振って反応した。私のことを認識している、日向坂のある世界線の記憶がありそうなメンバーに出会えた喜びが抑えきれなかった。
「茉莉ちゃん私のことわかるの?」放課後帰り際に捕まえた陽世も嬉しそうに問いかけてきた。元の世界で数日前に一緒に過ごして居るはずなのに、夏休み明けにやっと出会えたクラスメイトに再開した感覚と重なるほど懐かしかった。「アザトカワイイ踊れる?」私の要求に軽やかなステップで1小節文の振りで陽世は返した、そこには日向坂がハッピオーラが確実に存在していた。
「茉莉ちゃんいつからこの変な世界に来た?」喜ぶ私を制して真剣な目で陽世が問いかける。今日気づいたら世界が変わっていたというと「わたしもう一週間はいるよ、電車でウトウトしてたら気づいたら島根の実家にいて東京に転校することになってた」衝撃の事実だ、寝ても元の世界には帰れない。監禁されたようなものじゃないか。
「日向坂は存在しないし、日向坂メンバーも他人になっちゃってるし」えっ私と高橋以外にすでに陽世は会ってるんだ、誰と会ったんだろう。その答えは陽世の手に持つスマホにあった。パリピすーじーチャンネルと銘打ったYou Tubeチャンネル内では陽気にラップを刻む富田さんがいた、登録者数39万人。結構な人気YouTuberだ。他にも顔出ししていないが歌い手キョンコの奏でる低音ボイスは京子さんのそれでしかない、登録者数46万人。極めつけはインスタグラマーAya、美容と料理の綺羅びやかな写真をアップするインフルエンサーは間違いなく高本さんだ、登録者77万人。各々が舞台は違えど活躍していた。
「あと駅前のパン屋、通学前に寄ったら店員さんで美玲さんと美穂さんがいた。レジを打ってもらったけど私には気づいてなくて、、、」怒涛の情報に頭が追いつかない。ただ確かなことは日向坂が無いもう一つの未来であること。きっと朝出会った紗理奈さんそっくりな女性もそっくりじゃなくこの世界の紗理奈さんだと確信した。
「茉莉、早くダンス部のレッスン行こう。山口さんももし良かったら見学にくる」少しよそよそしそうに高橋がきた。私ダンス部なんだという少しの驚き、そして高橋と話していて気づいた。この世界の私達は高3ではなく高2らしい。ということは、、、「菜緒さん達の卒業公演のレッスン遅刻するよ」高橋の口ぶりから小坂さん金村さん濱岸さんも在席しているらしい。横にいる陽世と目を合わせお互い頷いた。まだ記憶のあるメンバーがいるかも知れない。元の世界に戻るきっかけを掴めるかもしれない。そんな根拠の無い希望に縋るよう体育館へ向かった。 #7
体育館への渡り廊下は今季一番の寒さの影響で氷の床かと勘違いしてしまいそうだ。吐く息は白く消えてはまた吐く息で視界の端にかかるほどだった。体育館の入口は外気とは正反対の人の熱気に包まれていた。その中心にいたのは、あの三人。
右を見ればスラッと伸びた身長、こぶし大ほどしかない小顔、絹のようなロングヘアー。無邪気な笑顔で濱岸さんはそこにいた。「お人形さんみたい」そんな声が後輩たちからも見学者からも漏れる。
左を見れば端正な顔立ちに綺麗な頃髪のボブ、ダンス部のメンバーがうっとりするな表情で美玖さんを見つめている。美玖さんが手をふれば黄色い声援がこだましていた
正面には外気にぴったりなクールな面持ちで、流れている時間が止まっているかと勘違いしてしまいそうな高貴な絵画と見間違う美少女がストレッチをしていた、間違いない小坂さんだ。
先輩とはいえ改めてすごいメンバーだなと感心してしまう。いやいや待て声をかけなきゃ、とはいえ人だかりが凄くて近づけない。そんなとき小坂さんから声をかけてきた。「未来虹、茉莉お疲れ様、遅いよ」 #8
「菜緒さ〜ん」好意のオーラを全身に身に纏い高橋が小走りでかけていく、おいおいもう少し隠せないもんかねと思いつつ後をついていった。
「この前教えてもらった漫画面白かったよ、春と嵐」なる程、これが高橋を沼に引きずり込む美少女スマイルか。後ろからカワイ過ぎるとダンス部後輩部員からの心の声が呟きとなり耳に届く。「続き持ってきますね」高橋の言葉に音符がついている。「受験勉強の合間の息抜きに丁度いいから助かるよ」返答を横で聞く限り小坂さんにも日向坂の記憶は無さそうだ。
「ねぇ、あそこにいる二人茉莉の知り合い?」金村さんに後ろから声をかけられた。金村さんの人差し指の先には色黒と色白の対象的な二人の男の子がいた。「さっきからずっと茉莉ちゃんのこと見てるよ」濱岸さんも会話に加わってきた。確かに私の事をずっと見ている。
「いや知らないです」そうは答えたものの不思議と懐かしさを感じる。どこかで会ったことがあるのだろうか、昔から知っている幼馴染のような感覚を感じていた。誰だろう、、、思い出そうとしていたその時「は〜い、みんな集まったかな。練習はじめるよ」聞き覚えのある声がこだました。
「おはよう御座います」そう皆が挨拶する相手先はまたしてもよく知っている人物、佐々木久美さんだった。 #9
「久美先生よろしくおねがいします」部員が声を揃えて挨拶をした。立場がキャプテンから先生になっていたが、こっちの世界でも久美さんがいるとピシっとした空気に一変するのは変わりがない。
「なお、みく、ひより中心にフォーメーションの確認をするよ」そういった久美さんの号令でレッスンが始まった。振り付けも日向坂でよく踊った振り付けがふんだんに盛り込まれていて、慣れしたじんだ感覚とちょっとした違和感が入り混じった。
「茉莉いつの間にこんな上達したの、凄いね」レッスン終わり高橋と小坂さんが少し驚いていた、そりゃいつも踊ってるしといいかけたが面倒なことになりそうなので止めた。「さっきの茉莉の美少年ファンいなくなっちゃったね」美玖さんが少し残念そうに言えば「彼氏?彼氏なの?二股?」ひよりさんは少し嬉しそうにはしゃいでた。どうやらここにいるメンバーは元の世界の記憶は無さそうだ。振り出しに戻ってしまった。
「まりぃ〜茉莉宛にお客さん来てるよ」同級生だろうか、少し離れた所から呼びかけられる。誰だろうと思って体育館の入り口に赴くとそこには今朝見かけた駅員の格好をした紗理奈さんが居た。 #10
「良かったぁ会えて、これを落としていたから」そういった紗理奈さんの手には私の学制手帳があった。わざわざ届けに来てくれたんだ、こちらでも変わらず聖母の佇まいなことに妙に安心してしまった。お礼を言って手帳を受け取った。
「そういえば何処かであったことあるのかしら」じっと目を見つめながら紗理奈さんは心底不思議そうに問いかけてくる。他人の空似というか、まぐれで名前があっていたというか、どちらにせよ説得力にかける返答になってしまう。少し困っていると紗理奈さん続く問いかけに困りは驚きに変わった。
「前の日にも私の名前を言い当てた大学生の女のコがいるのよね、あざとカワイイ感じの素敵な子だったんだけと」すぐにピンときた、間違いない。紗理奈さんのことを一方的に知っているあざとカワイイ女子大生など一人しかいない。
「その人どこで会ったんですか?」私は即座に問いかける。気圧された感じであったが紗理奈さんの回答で次の目的地が決まった。「渋谷駅です。なんでも通っている大学の最寄り駅だったみたいで」 #10.5(筆者余談)
スレとあまり乖離しないよう推し出すので勘弁して下さい。
あと暇な時書いてるので不定期連載なのもすいません。
そもそも内容つまらないというのもお許しを。 #11
「ねぇこんな人が多い場所で本当に会えるの?」陽世は少しぼやき気味だ。確かにスクランブル交差点には人が山程いるし、このご時世だからマスクをしていない人など皆無で近づかない限り顔の判別は難しい。
「そもそも元の世界の記憶あるのかなぁ、紗理奈さんの証言しか根拠もないし」ぼやきから愚痴へと変化して半ば諦めの様子を陽世は見せていた。「でもそれしか望みないじゃん」諭すというより叱りつける口調になってしまったことを言葉にしてから反省した。陽世もは〜い、と返事はしたが若干不貞腐れてしまった。
埒が明かない現実から私達は作戦会議をするため、スタバにはいった。もう少しポイントを絞ろう、立ち寄りそうな場所や時間帯を定めて探すことにした。
立ち寄りそうなのは駅の改札、本屋、大学。駅の改札は野鳥の会でもない私たちには難易度が高すぎる。本屋も渋谷には数が多すぎて絞れそうにない。となると大学なんだけど居そうな時間には私達も学校がある。どうしたもんかと頭を掻きむしっていると陽世がスマホ片手にこれだ!と大きな声をあげた。
スマホの画面には「國學院大學オープンキャンパス」と大きな字で表示されていた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています